説明

光学フィルム用粘着剤、粘着型光学フィルム、その製造方法および画像表示装置

【課題】耐久性が高く、かつ加工性の良好な粘着剤層を形成することができる、光学フィルム用粘着剤を提供すること。
【解決手段】モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および不飽和二重結合を有する重合性の官能基と前記官能基とは異なる光架橋性の部位を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなることを特徴とする光学フィルム用粘着剤により、光学フィルムの少なくとも片側に粘着剤層を形成し、かつ、当該粘着剤中の(メタ)アクリル系ポリマー中の光架橋性の部位は活性エネルギー線照射によって架橋されているものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が必要とされる光学フィルム用粘着剤および当該粘着剤組により光学フィルムの少なくとも片面に粘着剤層が形成されている粘着型光学フィルムおよびその製造方法に関する。さらには、本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光板が貼着されている。また液晶パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0003】
前記光学フィルムを液晶セルに貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セル、または光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片側に予め粘着剤層として設けられた粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。
【0004】
前記粘着型光学フィルムに用いる光学フィルムは、加熱や加湿の条件下で収縮、膨張しやすいため、前記粘着型光学フィルムを、液晶セルに貼り合せた後には、浮きや剥がれが生じやすい。そのため、前記粘着剤層には、加熱および加湿等に対する耐久性が求められる。また、前記粘着剤層には、光学フィルムに粘着剤層を形成した後に、粘着剤の汚れや欠落などを生じることなく加工できる加工性が求められる。
【0005】
前記耐久性に対しては、粘着剤に架橋剤を添加して、架橋処理を施した粘着剤層を形成することで対処している。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が用いられているが、これら架橋剤を用いると塗工乾燥した後においても架橋が完了しておらず、その後に、熟成(エージング)期間が必要となる。エージング期間は通常1日から1週間程度必要であり、一方、エージングせずに切断加工などを行うと、切断刃に粘着剤が付着したり、切断したものを重ね合わせたときに上下でくっついたりする不具合が生じて、製造工程での歩留まりが低下する。さらに、エージング期間中は、製造品の物流が滞り、デリバリー面でも好ましくない。また、エージング促進のために加熱処理を行うと、光学フィルムの寸法変化、光学特性の低下が生じやすく好ましくない。
【0006】
また、粘着型光学フィルムの粘着剤層の形成を、例えば、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーに、光架橋剤を加えた粘着剤組成物に、紫外線照射をすることにより行うことが開示されている(特許文献1)。かかる粘着剤組成物によれば、エージングが不要であり、加工性が良好であるものの、十分な耐久性を満足するまでには至っていない。
【0007】
【特許文献1】特開2005−48003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐久性が高く、かつ加工性の良好な粘着剤層を形成することができる、光学フィルム用粘着剤を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、当該光学フィルム用粘着剤により粘着剤層を形成した粘着型光学フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記光学フィルム用粘着剤等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および不飽和二重結合を有する重合性の官能基と前記官能基とは異なる光架橋性の部位を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなることを特徴とする光学フィルム用粘着剤、に関する。
【0013】
前記光学フィルム用粘着剤において、光架橋性モノマーとしては、光架橋性の部位が、シンナモイル基またはベンゾフェノン基を有するものが好適である。
【0014】
前記光学フィルム用粘着剤において、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、さらに官能基含有モノマー10重量%以下を含有することができる。
【0015】
前記光学フィルム用粘着剤において、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらに、シランカップリング剤0.01〜2重量部含有してなることが好ましい。
【0016】
前記光学フィルム用粘着剤において、前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が70万以上であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、前記光学フィルム用粘着剤により形成されており、かつ、当該粘着剤中の(メタ)アクリル系ポリマー中の光架橋性の部位は活性エネルギー線照射によって架橋されていることを特徴とする粘着型光学フィルム、に関する。
【0018】
前記粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層は、活性エネルギー線照射後、23℃で1時間放置した後のゲル分率および23℃で7日間放置した後のゲル分率が、いずれも50〜95重量%であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムの粘着剤層に剥離ライナーが設けられている剥離ライナー付き粘着型光学フィルムの製造方法であって、
モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および光架橋性の部位および光架橋性の部位とは異なる部位に不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなるアクリル系粘着剤を、剥離ライナー上に塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する工程(1a)、
前記未架橋の粘着剤層に、当該粘着剤層の側から活性エネルギー線照射をして、剥離ライナー上に架橋された粘着剤層を形成する工程(2a)、および、
前記剥離ライナー上に形成されている架橋された粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(3a)、を含むことを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法、に関する。
【0020】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムの粘着剤層に剥離ライナーが設けられている剥離ライナー付き粘着型光学フィルムの製造方法であって、
モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および光架橋性の部位および光架橋性の部位とは異なる部位に不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなるアクリル系粘着剤を、剥離ライナー上に塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する工程(1b)、
前記剥離ライナー上に形成されている未架橋の粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(2b)、および、
前記未架橋の粘着剤層に、剥離ライナーが設けられている側から活性エネルギー線照射をして、架橋された粘着剤層を形成する工程(3b)、を含むことを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法、に関する。
【0021】
前記製造方法において、活性エネルギー線が紫外線であり、積算光量が10〜1500mJ/cmであることが好ましい。
【0022】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明の光学フィルム用粘着剤は、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーが、光架橋性モノマーを、モノマー単位として、0.01〜30重量%含有してなる。また、本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層は、前記粘着剤により形成される粘着剤層中において、前記(メタ)アクリル系ポリマー中の光架橋性の部位は、活性エネルギー線によって架橋されている。即ち、粘着剤層を形成する(メタ)アクリル系ポリマーは、当該(メタ)アクリル系ポリマー中に組み込まれている、光架橋性の部位の架橋によって、架橋構造が形成されている。
【0024】
かかる架橋構造は、活性エネルギー線の照射により形成されるため、エージングの必要がなく、加工性、作業性に優れている。このように加工性が良好な粘着剤層を有することから、粘着型光学フィルムの打ち抜き、スリットなどの加工作業において、またパネルメーカーにおける粘着型光学フィルムの貼り合せまでの移動工程において、糊の欠け、はみ出し、はみ出した糊による光学フィルムの汚れを防止できる。
【0025】
また(メタ)アクリル系ポリマー中に架橋部位を有することから、光架橋剤を用いた場合のように、未反応の架橋剤が粘着剤層中に残存することによって、ブリードすることがなく、満足する耐久性を有する。耐久性を良好であることから、粘着型光学フィルムを液晶セルに貼り合せて液晶パネルを形成した、当該液晶パネルを、加熱、加湿環境下に置いた場合にも、液晶パネルから、粘着型光学フィルムが剥がれたり、浮きが発生したりすることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の光学フィルム用粘着剤は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および光架橋性の部位および光架橋性の部位とは異なる部位に不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなる。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は2〜18程度のものである。アルキル基は直鎖、分岐鎖のいずれでもよい。前記アルキル基の平均炭素数は2〜14であるのが好ましく、さらには平均炭素数3〜12が好ましく、さらには平均炭素数4〜9のものが好ましい。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどを例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0029】
本発明において、前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50〜99.99重量%である。アルキル(メタ)アクリレートは、60重量%以上であるのが好ましく、さらには70重量%以上、さらには80重量%以上、さらには90重量%以上であるのが好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合モノマーが、光架橋性モノマーのみの場合には、アルキル(メタ)アクリレートは、70〜99.99重量%であることが好ましく、80〜99.95重量%である、さらには、90〜99.95重量%であることがより好ましい。上記(メタ)アクリル系モノマーが少なすぎると接着性に乏しくなり好ましくない。
【0030】
また、光架橋性モノマーとしては、不飽和二重結合を有する重合性の官能基と前記官能基とは異なる光架橋性の部位を有するものが用いられる。不飽和二重結合を有する重合性の官能基としては、(メタ)アクリロイル基やビニル基等があげられる。
【0031】
光架橋性の部位は、前記重合性の官能基とは、別に光架橋性を示す部位である。前記重合性の官能基は、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合に用いられ、一方、光架橋性の部位は、得られる(メタ)アクリル系ポリマー中において側鎖として存在する。前記光架橋性の部位としては、活性エネルギー線の照射によって、光二量化することができる官能基を有する部位である。かかる光架橋性の部位としては、例えば、シンナモイル基、ベンゾフェノン基、シンナモイル基、シンナミリデン基、カルコン残基、2,5−ジメトキシスチルベン残基、スチリルピリジニウム残基、アントラセン残基、イソクマリン残基、2−ピロン残基、α−フェニルマレイミド基、チミン残基およびこれらの誘導体があげられる。これらのなかでも、シンナモイル基、ベンゾフェノン基が好ましい。光架橋性モノマーの具体例としては、例えば、シンナモイル基含有モノマーとして,下記化1で表される、ARモノマー(日本シイベルヘグナー(株)製):
【0032】
【化1】

【0033】
ベンゾフェノン基含有モノマーとして,下記化2で表される、EBECRYL P36(ダイセルユーシーピー(株)製):
【0034】
【化2】



【0035】
等があげられる。
【0036】
前記光架橋性モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して0.01〜30重量%の割合で用いられる。光架橋性モノマーの割合は、0.05〜20重量%であるのが好ましく、さらには0.05〜10重量%であるのがより好ましい。光架橋性モノマーの割合が0.01重量%よりも少ないと、活性エネルギー線照射による側鎖における架橋点が少なくなり、耐久性、加工性の点で好ましくない。一方、光架橋性モノマーの割合が多くなると、アルキル(メタ)アクリレートの割合が少なくなり、粘着剤としての機能を果たさなくなるため、光架橋性モノマーの割合は、30重量%以下に制御される。
【0037】
また、(メタ)アクリル系ポリマーには、光架橋性モノマーの他に、共重合モノマーとしては、各種の官能基含有モノマーを用いることができる。官能基含有モノマーとしては。例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー等があげられる。なお、官能基含有モノマーは、末端に位置する官能基を優先させて分類している。
【0038】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等があげられる。これらのなかで、(メタ)アクリル酸、特にアクリル酸が好ましい。
【0039】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、その他、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。これらのなかでもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好適である。
【0040】
またアミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつアミド結合を有するものを特に制限なく用いることができる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドN−ビニルカプロラクタム、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等のN−置換アミド系モノマー、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド等があげられる。
【0041】
またアミノ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有し、かつアミノ基を有するものを特に制限なく用いることができる。アミノ基含有モノマーとしては、第3級アミノ基を有するモノマーが好ましい。また、第3級アミノ基としては、第3級アミノアルキル基であることが好ましい。かかる第3級アミノ基含有モノマーとしては、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートがあげられる。第3級アミノ基含有モノマーの具体例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドがあげられる。また、第2級アミノ基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等があげられる。
【0042】
上記以外の官能含有モノマーとしては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、イタコンイミドなどのイミド基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマーなどがあげられる。
【0043】
さらに、上記以外の官能含有モノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0044】
前記官能基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して10重量%以下の割合で用いるのが好ましい。官能基含有モノマーの割合は、0.01〜5重量%であるのが好ましく、さらには0.05〜3重量%、さらには0.05〜1重量%であるのがより好ましい。官能基含有モノマーは、耐久性、加工性等を向上させることができるが、その割合が多くなると、粘着特性が低下したり、耐久性の低下によって剥離が生じたりするため、官能基含有モノマーの割合は、10重量%以下に制御される。
【0045】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としては、前記モノマーの他に、本発明の目的と損なわない範囲で、前記以外のモノマーを、モノマー全量の40重量%以下の範囲で用いることができる。任意モノマーの割合は、さらには20重量%以下、さらには10重量%以下であるのが好ましい。かかる任意モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーがあげられる。芳香族環含有モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0046】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー等があげられる。
【0047】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が70万以上であるのが好ましい。さらに好ましくは100万〜300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は150万〜250万であるものを用いるのが好ましい。さらに、180万〜250万であることがより好ましく、200万〜250万であることがさらに好ましい。重量平均分子量が150万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が250万よりも大きくなると貼り合せ性、粘着力が低下する点でも好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0048】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。(メタ)アクリル系ポリマーの製造にあたって、光架橋性モノマーの光架橋性の部位が反応しないような条件下、例えば、活性エネルギー線が当たらないようにして行う。
【0049】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0050】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0051】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0053】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
【0054】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0055】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0057】
また、本発明のアクリル系粘着剤には接着力、耐久力を上げる目的でシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを特に制限なく適宜用いることができる。
【0058】
具体的には、たとえば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのインシアネート基含有シランカップリング剤などがあげられる。このようなシランカップリング剤を使用することは、耐久性の向上に好ましい。
【0059】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.02〜0.6重量部含有してなることがより好ましく、0.05〜0.3重量部含有してなることがさらに好ましい。0.01重量部未満では、耐久性を向上させるには不十分である。一方、2重量部を超えると、液晶セル等の光学部材への接着力が増大しすぎて、リワーク性が低下するおそれがある。
【0060】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0061】
本発明の粘着型光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも片面に、前記光学フィルム用粘着剤(アクリル系粘着剤)により粘着剤層を形成したものであり、かつ、当該粘着剤中の(メタ)アクリル系ポリマー中の光架橋性の部位は活性エネルギー線照射によって架橋されているものである。
【0062】
前記粘着型光学フィルムは、例えば、粘着型光学フィルムの粘着剤層に剥離ライナーが設けられている剥離ライナー付き粘着型光学フィルムを製造することにより得ることができる。当該剥離ライナー付き粘着型光学フィルムを製造方法としては、下記製造方法(A)および製造方法(B)を採用できる。
【0063】
製造方法(A)では、前記調製したアクリル系粘着剤を、剥離ライナー上に塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する工程(1a)、
前記未架橋の粘着剤層に、当該粘着剤層の側から活性エネルギー線照射をして、剥離ライナー上に架橋された粘着剤層を形成する工程(2a)、および、
前記剥離ライナー上に形成されている架橋された粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(3a)、を含む。
【0064】
製造方法(B)では、前記調製したアクリル系粘着剤を、剥離ライナー上に塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する工程(1b)、
前記剥離ライナー上に形成されている未架橋の粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(2b)、および、
前記未架橋の粘着剤層に、剥離ライナーが設けられている側から活性エネルギー線照射をして、架橋された粘着剤層を形成する工程(3b)、を含む。
【0065】
上記工程(1a)及び工程(2a)では、剥離ライナー上にアクリル系粘着剤を塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する。
【0066】
剥離ライナーの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0067】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を形成し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0068】
前記剥離ライナーの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記剥離ライナーには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記剥離ライナーの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0069】
なお、上記の粘着型光学フィルムを作製した後には、剥離ライナーは、そのまま粘着型光学フィルムのセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0070】
上記剥離ライナー上へのアクリル系粘着剤の塗布は各種方法を採用できる。例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター、ファンウテンコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0071】
前記塗布により、上記剥離ライナー上に塗膜が形成される。前記アクリル系粘着剤は、通常、溶液として用いられるため、その場合には、前記塗膜には、通常、乾燥が施される。前記塗布にあたっては、適宜に、溶剤を新たに加えてもよい。乾燥温度は、溶液に用いている溶剤により決定されるが、通常は、40〜120℃であるのが好ましく、さらに好ましくは40〜100℃であり、特に好ましくは45から85℃である。乾燥時間は、適宜に適切な時間が採用される。乾燥時間は5秒間〜20分間が好ましく、さらに好ましく5秒間〜10分間であり、特に好ましくは10秒間〜5分間である。乾燥温度、乾燥時間を上記範囲とすることにより、副反応を起こすこともなく塗布膜の溶剤乾燥を行うこととができ、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0072】
次いで、製造方法(A)では、前記工程(1a)の後に、前記未架橋の粘着剤層に、当該粘着剤層の側から活性エネルギー線照射をして、剥離ライナー上に架橋された粘着剤層を形成する工程(2a)を施す。活性エネルギー線としては電子線、紫外線等を用いることができるが、紫外線を用いるのが好ましい。
【0073】
紫外線源には、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀ランプ、中・高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの照射装置が用いられる。紫外線の照射量は積算光量が10〜1500mJ/cmであることが好ましく、さらには50〜1000mJ/cmで、さらには100〜500mJ/cm、さらには100〜350mJ/cmであることが好ましい。前記積算光量が大きくなりすぎると、剥離ライナーからの剥離が困難になり、また耐久性が低下するおそれがあり好ましない。一方、前記積算光量が小さすぎると、架橋が十分に進行せず、耐久性、加工性を満足できなくなる。なお、紫外線照射にあたっては、アクリル系粘着剤の調製にあたり、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して光重合開始剤を1重量部以下の範囲で含有させることができる。
【0074】
活性エネルギー線としては電子線の場合には、その照射量は、2〜100kGyであるのが好ましく、さらに好ましくは2〜70kGyであり、特に好ましくは5〜50kGyである。
【0075】
活性エネルギー線照射では、架橋反応を優先させるように条件設定を行うことが好ましい。かかる条件としては、例えば、加熱しながら活性エネルギー線照射を行う方法、水の共存下で活性エネルギー線を照射する方法、酸素の供給されにくい状態(例えば、窒素パージした状態)で活性エネルギー線照射を行う方法等があげられ、これらを適宜に選択して行うことが好ましい。本発明においては、その簡便性から、酸素の供給されにくい状態で行うのが好ましい。
【0076】
次いで、製造方法(A)では、前記剥離ライナー上に形成されている架橋された粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(3a)、を施して、剥離ライナー付き粘着型光学フィルムが得られる。前記貼り合せる工程(3a)に際して、光学フィルムの表面には、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施してもよい。粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0077】
一方、製造方法(B)では、前記工程(1b)の後に、前記剥離ライナー上に形成されている未架橋の粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(2b)を施す。工程(2b)においても、上記同様に光学フィルムおよび/または接着剤層に易接着処理を施すことができる。
【0078】
次いで、製造方法(B)では、前記粘着剤層に、剥離ライナーが設けられている側から電子線照射をして、架橋された粘着剤層を形成する工程(3b)、を施して、剥離ライナー付き粘着型光学フィルムが得られる。活性エネルギー線の照射量は、前記同様であるのが好ましい。
【0079】
なお、上記の製造方法の他、例えば、前記アクリル系粘着剤を光学フィルムに塗布し、溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を光学フィルムに形成した後に活性エネルギー線照射する方法を採用ことも可能である。
【0080】
上記のようにして得られる、粘着型光学フィルムの粘着剤層の厚さは、通常、2〜50μm程度であり、好ましくは、2〜40μm、さらに好ましくは5〜35μmである。
【0081】
前記粘着剤層は、電子線照射後、23℃で1時間放置した後のゲル分率および23℃で7日間放置した後のゲル分率が、いずれも50〜95重量%であることが好ましく、さらに好ましくは60〜95重量%であり、特に好ましくは70〜95重量%である。
【0082】
一般に、粘着剤層のゲル分率は大きすぎても、小さすぎても耐久性に不具合が生じやすい。即ち、ゲル分率が大きくなると、特に加湿条件下での光学フィルムの収縮、膨張による寸法変化に耐えることができず、液晶セルから剥がれるなどの不具合が生じやすくなる。一方、ゲル分率が小さくなると、特に加熱条件下での液晶セルと粘着剤層との間で発生する発泡などの不具合が生じやすくなる。かかる耐久性の観点から、本発明の粘着型光学フィルムの粘着剤層のゲル分率は上記範囲であることが好ましく、また、経時的にも、ゲル分率の変化が少ないものが好ましい。
【0083】
光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0084】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0085】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0086】
本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムとしては、例えば、偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0087】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0088】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0089】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0090】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0091】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0092】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0093】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0094】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等があげられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0095】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0096】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0097】
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0098】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
【0099】
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロものフィルムを得ることができる。
【0100】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
【0101】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
【0102】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0103】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
【0104】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化1)で表される環擬構造を有する。
【0105】
【化1】

【0106】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0107】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
【0108】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
【0109】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性などの観点から、好ましくは170℃以下である。
【0110】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
【0111】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0112】
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0113】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0114】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0115】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0116】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0117】
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
【0118】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足するものを用いることができる。
【0119】
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(VerticalAlignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(ポジティブAプレート,二軸,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。VA型では、ポジティブAプレートとネガティブCプレートの組み合わせ、または二軸フィルム1枚で用いるのが好ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
【0120】
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にnx>nz>nyの関係を満足する二軸フィルム、下側に位相差なしの場合や、上側にポジティブAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(ポジティブAプレート,二軸,ポジティブCプレート)が望ましい。
【0121】
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
【0122】
前記透明保護フィルムは、接着剤を塗工する前に、偏光子との接着性を向上させるために、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などがあげられる。また適宜に帯電防止層を形成することができる。
【0123】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0124】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
【0125】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0126】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0127】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0128】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、前記位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0129】
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視覚補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0130】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0131】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0132】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0133】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵電源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵電源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0134】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0135】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0136】
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0137】
視覚補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視覚補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視覚補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどがあげられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0138】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコチック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0139】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性よっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一反反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0140】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0141】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0142】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0143】
可視光域等の広い波長で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0144】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0145】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていても良い。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであっても良い。
【0146】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0147】
なお、本発明の粘着型光学フィルムの光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0148】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
【0149】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0150】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。本発明の光学フィルム(偏光板等)は、有機EL表示装置においても適用できる。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組合せをもった構成が知られている。
【0151】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0152】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0153】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0154】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0155】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0156】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0157】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0158】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0159】
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエー
ション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をジメチルホルムアミドに溶解して0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、Super AWM−H、AW4000、AW2500
・カラムサイズ;各6.0mmφ×150mm
・溶離液:30mM−臭化リチウム、30mM−リン酸のジメチルホルムアミド溶液
・流量:0.4ml/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度:40℃
・注入量:20μl
【0160】
(偏光板の作成)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い偏光子を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光板を作成した。
【0161】
実施例1
<アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート95部、光架橋性モノマー(シンナモイル基含有モノマー,ARモノマー,日本シイベルヘグナー(株)製)5部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル200部と共に、紫外線が当たらない環境下で、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は163万であった。
【0162】
<アクリル系粘着剤の調製>
上記で得られたアクリル系ポリマーに、さらに酢酸エチルを加えて、全固形分濃度30%のアクリル系ポリマー溶液を調製した。次に、このアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、0.1部のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM573)を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0163】
<粘着型偏光板の作製>
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー;三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の剥離処理面に、ファウンテンコーターで均一に塗工した後、75℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、剥離ライナーの表面に、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、剥離ライナーの剥離処理面に形成された粘着剤層に、高圧水銀ランプにて紫外線照射(積算光量:300mJ/cm)を行った。その後、剥離ライナー上の粘着剤層を偏光板に貼り合せて、剥離ライナー付き粘着型偏光板を作製した。
【0164】
実施例2〜9
実施例1において、アクリル系ポリマーの調製の際のモノマー成分の種類および使用量のいずれか少なくも一つ、または粘着型偏光板の作製の際の粘着剤層の乾燥温度もしくは電子線照射の照射量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル系ポリマー溶液を調製し、同様にアクリル系粘着剤を調製し、また紫外線照射の積算光量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に剥離ライナー付き粘着型偏光板を作製した。なお、各例で得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量を表1に示す。
【0165】
比較例1
<アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル200部と共に、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は186万であった。
【0166】
<アクリル系粘着剤の調製>
上記で得られたアクリル系ポリマーに、さらに酢酸エチルを加えて、全固形分濃度30%のアクリル系ポリマー溶液を調製した。次に、このアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、0.5部のトリメチロールトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製,コロネートL)と、0.1部のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM573)を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0167】
<粘着型偏光板の作製>
上記で調製したアクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー;三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の剥離処理面に、ファウンテンコーターで均一に塗工した後、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、剥離ライナーの表面に、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。その後、剥離ライナー上の粘着剤層を偏光板に貼り合せて、剥離ライナー付き粘着型偏光板を作製した。
【0168】
比較例2
<アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、4−ヒドロキシブチルアクリレート部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル200部と共に、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は186万であった。
【0169】
<アクリル系粘着剤の調製>
上記で得られたアクリル系ポリマーに、さらに酢酸エチルを加えて、全固形分濃度30%のアクリル系ポリマー溶液を調製した。次に、このアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、光架橋剤として0.3部の2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと、0.1部のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,KBM573)を配合したアクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0170】
<粘着型偏光板の作製>
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離ライナー;三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の剥離処理面に、ファウンテンコーターで均一に塗工した後、75℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、剥離ライナーの表面に、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、剥離ライナーの剥離処理面に形成された粘着剤層に、高圧水銀ランプにて紫外線照射(積算光量:300mJ/cm)を行った。その後、剥離ライナー上の粘着剤層を偏光板に貼り合せて、剥離ライナー付き粘着型偏光板を作製した。
【0171】
上記実施例および比較例で得られた、剥離ライナー付き粘着型偏光板から剥離ライナーを除去したもの(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0172】
<ゲル分率>
粘着剤層のゲル分率の測定は、粘着剤層の乾燥重量W1(g)を酢酸エチルに浸漬した後、前記粘着剤層の不溶分を酢酸エチル中から取り出し、乾燥後の重量W2(g)を測定し、(W2/W1)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。より具体的には、架橋後の粘着剤層をW1(g)(約500mg)採取した。次いで、前記粘着剤層を酢酸エチル中に23℃下で7日間浸漬し、その後、前記粘着剤層を取り出し、130℃で2時間乾燥し、得られた粘着剤層のW2(g)を測定した。このW1およびW2を上記の式に当てはめることにより、ゲル分率(重量%)を求めた。
ゲル分率は、粘着剤層を形成した後、下記エージング後について測定した。
*1:23℃で、1時間放置した後のゲル分率。
*2:23℃で、1週間放置した後のゲル分率。
なお、粘着剤層を形成した後とは、紫外線照射をした場合には、紫外線照射が終了した後、それら以外では、乾燥により粘着剤層を形成した後である。
【0173】
<加工性>
上記サンプルを作成後、24時間以内に1辺の長さが270mmの正方形に打ち抜いたもの100枚について、作業者が目視、手触りで観察して、偏光板側面の粘着感の有無があるか否か。また、偏光板の表面が粘着剤によって汚れているか否かを判断した。粘着感および汚れのいずれもないものが何枚あるかを下記基準で評価した。
○:100枚中0枚。
△:100枚中1〜5枚。
×:100枚中6枚以上。
【0174】
<耐久性>
上記サンプルを420mm×240mmに切断したのち、厚さ0.7mmの無アクリルガラス(コーニング社製、1737)の両面にクロスニコル状態になるように、ラミネーターを用いて貼り合せた。次いで、50℃、0.5Mpaのオートクレーブにて15分間処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、80℃、100℃、60℃/90%RH、60℃/95%RHの条件で500時間処理を施した後、発泡、剥がれ、浮きの状態を下記基準で目視にて評価した。
○:発泡、剥がれ、浮きなどがない。
△:実用上問題ないレベルだが、目視でわすかにレベルが悪い。
×:実用上問題がある。
【0175】
【表1】

【0176】
表1中、BA:ブチルアクリレート、
ARモノマー:シンナモイル基含有モノマー(ARモノマー,日本シイベルヘグナー(株)製)、
P36:ベンゾフェノン基含有モノマー(EBECRYL P36,ダイセルユーシーピー(株)製)、
AA:アクリル酸、4HBA:4‐ヒドロキシブチルアクリレート、DMAEA:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、
光架橋剤:2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、
イソシアネート系化合物:トリメチロールキシレンジイソシアネート(三井武田ポリウレタン(株)製、タケネートD−110N)、である。
【0177】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および不飽和二重結合を有する重合性の官能基と前記官能基とは異なる光架橋性の部位を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなることを特徴とする光学フィルム用粘着剤。
【請求項2】
前記光架橋性モノマーが有する光架橋性の部位が、シンナモイル基またはベンゾフェノン基を有することを特徴とする請求項1記載の光学フィルム用粘着剤。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、さらに官能基含有モノマー10重量%以下を含有することを特徴とする請求項1または2記載の光学フィルム用粘着剤。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、さらに、シランカップリング剤0.01〜2重量部含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の光学フィルム用粘着剤。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が70万以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤。
【請求項6】
光学フィルムの少なくとも片側に、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、
前記粘着剤層は、請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム用粘着剤により形成されており、かつ、当該粘着剤中の(メタ)アクリル系ポリマー中の光架橋性の部位は活性エネルギー線照射によって架橋されていることを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層は、活性エネルギー線照射後、23℃で1時間放置した後のゲル分率および23℃で7日間放置した後のゲル分率が、いずれも50〜95重量%であることを特徴とする請求項6記載の粘着型光学フィルム。
【請求項8】
請求項6または7記載の粘着型光学フィルムの粘着剤層に剥離ライナーが設けられている剥離ライナー付き粘着型光学フィルムの製造方法であって、
モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および光架橋性の部位および光架橋性の部位とは異なる部位に不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなるアクリル系粘着剤を、剥離ライナー上に塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する工程(1a)、
前記未架橋の粘着剤層に、当該粘着剤層の側から活性エネルギー線照射をして、剥離ライナー上に架橋された粘着剤層を形成する工程(2a)、および、
前記剥離ライナー上に形成されている架橋された粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(3a)、を含むことを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項6または7記載の粘着型光学フィルムの粘着剤層に剥離ライナーが設けられている剥離ライナー付き粘着型光学フィルムの製造方法であって、
モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート50〜99.99重量%、および光架橋性の部位および光架橋性の部位とは異なる部位に不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する光架橋性モノマーを0.01〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル系ポリマーを含有してなるアクリル系粘着剤を、剥離ライナー上に塗布して、未架橋の粘着剤層を形成する工程(1b)、
前記剥離ライナー上に形成されている未架橋の粘着剤層を、光学フィルムに貼り合せる工程(2b)、および、
前記未架橋の粘着剤層に、剥離ライナーが設けられている側から活性エネルギー線照射をして、架橋された粘着剤層を形成する工程(3b)、を含むことを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
活性エネルギー線が紫外線であり、積算光量が10〜1500mJ/cmであることを特徴とする請求項8または9記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項6または7記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置。




【公開番号】特開2009−109898(P2009−109898A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284129(P2007−284129)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】