説明

光学フィルム用粘着剤組成物および粘着シート、ならびにこれを用いた光学部材

【課題】耐久性と光漏れ防止性を良好に維持しつつ、再剥離時の汚染や過酷な条件下での剥がれを抑制できる光学フィルム用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】その光学フィルム用粘着剤組成物は、(A)少なくとも次の単量体成分(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)を共重合してなる重量平均分子量が80万〜160万であり、且つ共重合体の重量平均分子量を数平均分子量で割った値(Mw/Mn)が10〜50であるアクリル系ポリマー;(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(a2)芳香環含有モノマー、(a3)水酸基含有モノマー、(a4)カルボキシル基またはアミノ基含有モノマー、(B)イソシアネート系架橋剤、および(C)シランカップリング剤、を含有する光学フィルム用粘着剤組成物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関するものであり、更に詳細には、耐久性と光漏れ防止性を両立しつつ、リワーク性に優れ、光学フィルム等用の粘着剤として有利に用いられる粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム用の粘着剤には、光学部材を被着体に貼り合わせたときに高温高湿雰囲気下においても光学フィルムの発泡、浮き、ハガレ等が起こらないための耐久性や、高温雰囲気下における光学フィルムの寸法変化に柔軟に追従し、例えば光学フィルムが偏光フィルムの場合には、2枚の偏光フィルムを偏光軸を直角に粘着剤で粘着させ高温、高温高湿下に放置した場合に光漏れを生じさせないための光漏れ防止性が必要とされている。また、光学フィルムを液晶パネル等の被着体へ粘着する時に、位置がずれてしまった場合でも、被着体を汚染させることなく、光学部材(光学フィルムの上に粘着剤を有するもの)を被着体から再剥離するためのリワーク性も求められている。
【0003】
このような光学フィルム用の粘着剤としては、従来からアクリル系粘着剤が主に使用されている。そして、上記要求を満たすものとして、高分子量のアクリルポリマーと中低分子量体をブレンドし架橋したアクリル系粘着剤が知られている。これは、高分子量のアクリルポリマーを架橋することで凝集力を向上させ、浮き、ハガレが起きないような耐久性を付与し、さらに中低分子量体を含有させることで、光漏れが起きないようにするというものである。
【0004】
しかしながら、近年のディスプレイの大型化に伴って、高温雰囲気下での光学フィルム特に偏光フィルムの寸法変化に起因する光漏れがより大きな問題となり、光学フィルム用の粘着剤には、更なる柔軟性が求められるようになってきている。また、過酷な条件下においては、光漏れ防止性を上げるために添加されている低分子量体がブリードし、再剥離時に被着体を汚染したり、ハガレが生じるという問題が生じている。
【0005】
例えば、加熱耐久性、応力緩和性を改良するために、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を4以上とする技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら、Mw/Mnを単に4以上とするだけでは、大型ディスプレイに要求される応力緩和性が不十分であった。
【0006】
また、この(メタ)アクリル系重合体として、重量平均分子量が20万以上のものと20万未満のものを混合して用いることによって、高温高湿下でのプラスチックへの密着性を向上させることも知られているが(特許文献2)、この方法では、重量平均分子量の小さい成分が表面にブリードし、再剥離時の汚染、過酷な使用環境下での剥離等の問題が解決できていなかった。
【0007】
また、光学フィルム用粘着剤として、芳香族含有モノマーを共重合させたポリマーを用いることが知られている(特許文献3及び特許文献4)。しかしながら、これらの粘着剤は、偏光板や位相差板などの光学部材と粘着剤との間及び粘着剤と被着体との間の界面反射を抑制するために、粘着剤の屈折率を調整することを目的とするものであった。また、貼り付け直後から強い接着性を示すように設計されているため、貼り付けミスをしても貼り直しができる性能(リワーク性)に劣るという問題点があった。
【0008】
また、低極性フィルム用粘着剤として、脂環式モノマー又は芳香族含有モノマーを共重合成分とする高分子量ポリマーを用いることが知られている(特許文献5)。しかしながら、この粘着剤では、共重合体の重量平均分子量を数平均分子量で割った値(Mw/Mn)が比較的小さい設計であるため、貼り付け面積の大きい偏光フィルム等に使用した場合には、偏光フィルム等の寸法変化による応力が緩和しきれず、充分な光漏れ防止性が得られないという問題があった。さらに、脂環式モノマーを共重合しても、光漏れ防止性は不十分であった。
【特許文献1】特開2002−341141号公報
【特許文献2】特開2002−107507号公報
【特許文献3】特開2002−173656号公報
【特許文献4】特開2003− 13029号公報
【特許文献5】特開2005−053976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる技術背景に鑑みてなされたものであり、特に貼り付け面積の大きい、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム等の部材の寸法変化による応力を緩和し、再剥離時の汚染や高湿熱条件下で剥がれや発泡を防止するだけでなく、光漏れによる色むらを抑制する光学フィルム用アクリル系粘着剤組成物を提供すること、及び、該粘着剤組成物を用いた光学部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、芳香族含有モノマーを共重合成分とする重量平均分子量80万〜160万で、共重合体の重量平均分子量を数平均分子量で割った値(Mw/Mn)が10〜50である特定の(メタ)アクリル系重合体を選択、使用することによって、上記課題が解決できることを見出し本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、次の成分(A)、成分(B)及び成分(C)
(A)少なくとも次の成分(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)を共重合してなる重量平均分子量が80万〜160万であり、且つ共重合体の重量平均分子量を数平均分子量で割った値(Mw/Mn)が10〜50であるアクリル系ポリマー
(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル4.5〜89重量%、
(a2)芳香環含有モノマー10〜85重量%、
(a3)水酸基含有モノマー0.5〜10重量%、
(a4)カルボキシル基またはアミノ基含有モノマー0.05〜0.5重量%、
(B)官能基と架橋反応をする架橋剤をアクリル系ポリマー100重量部に対し0.005〜5重量部
(C)シランカップリング剤をアクリル系ポリマー100質量部に対し0.05〜1.0重量部、を含有する光学フィルム用粘着剤組成物を提供するものである。
また、支持体上の少なくとも片面に、上記粘着剤組成物より得られる粘着剤層を設けた粘着シートを提供するものである。
更に、光学フィルムの少なくとも片面に、上記粘着剤組成物より得られる粘着剤層を設けた光学部材を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性と光漏れ防止性を両立しつつ、低分子量成分のブリードがなく、再剥離時の汚染、過酷な条件下での剥がれを抑制でき、リワーク性にも優れた粘着剤組成物を提供することができる。
偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルムに本発明の光学部材用粘着剤からなる粘着剤層を形成した光学部材は、ガラス基板などに貼着したときに、粘着剤層が熱応力を十分緩和するために、光漏れなどが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(成分(A))、架橋剤(成分(B))およびシランカップリング剤(成分(C))を含有するものである。
【0014】
このアクリル系ポリマーの成分(A)を構成する共重合成分の一つである(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(成分(a1))は、鎖状のアルキル基を有し、芳香環をその構造中に有さない(メタ)アクリル酸エステルである。
【0015】
このうち(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好ましい例としては、炭素数1〜12の分岐していてもよいアルキル基を有するものが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の両方を意味し、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両方を意味する。
【0016】
また、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの好ましい例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0017】
また、成分(A)の別の必須共重合成分である芳香環含有モノマー(成分(a2))は、その構造中に芳香族基を含む共重合可能な化合物である。単量体混合物の成分(a2)芳香環含有モノマーの例としては、フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0018】
また、成分(A)の別の必須共重合成分である分子内に水酸基を有するモノマー(成分(a3))の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等を挙げることができる。
【0019】
更に、単量体混合物の成分(a4)分子内にカルボキシル基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び無水マレイン酸などを挙げることができる。また、アミノ基含有モノマーの例としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどを挙げることができる。
【0020】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物の成分(A)の単量体混合物の配合量は、成分(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル4.5〜89重量%、(a2)芳香環含有モノマー10〜85重量%、成分(a3)1〜10重量%、成分(a4)0.05〜0.5重量%であるが、好ましくは、成分(a1)22.7〜69重量%、(a2)芳香環含有モノマー30〜70重量%、成分(a3)1〜7重量%、成分(a4)0.05〜0.3重量%である。
【0021】
成分(a2)芳香環含有モノマーの量が逸脱して少ないと、光漏れを充分に防止できなくなることがあり、また逸脱して多いとリワーク性が悪化することがある。また、成分(a3)の量が逸脱して少ないと耐久性能レベルが低くなることがあり、また、多すぎる場合には耐久性能と光漏れ防止性のバランスがとれなくなる。さらにまた、成分(a4)の量が逸脱して少ないと、長いエージング時間が必要であったり、高温又は高湿熱条件下での剥がれや発泡が生じる場合があり、逸脱して多いと過エージングとなり、貼付け面積が大きい場合においての光漏れ防止性が十分でなくなることがある。
【0022】
前記単量体混合物には、必要に応じて、その他の単量体を混合させても良い。その他の単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、塩化ビニル並びに(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができる。その他の単量体の混合比は、0〜10重量%の割合で含ませることができる。
【0023】
本発明の光学部材用粘着剤に使用する前記アクリル系ポリマーは、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法及び懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができるが、乳化剤や懸濁剤等の重合安定剤を含まない溶液重合法及び塊状重合法により製造したものが好ましい。また、前記アクリル系ポリマーのゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、80万〜160万であり、好ましくは80万〜150万である。Mwが、80万未満であると、硬化剤配合を好適な範囲に調製しても、熱時の粘着剤の凝集力が十分でなく、高温条件下での発泡が生じやすく、160万を超えると、粘着剤の応力緩和性が低下して、例えばガラス基板と偏光板の貼り合わせに使用する場合には、貼付面周端部での光漏れ現象が生じやすい。
【0024】
更に、前記アクリル系ポリマーは、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が10〜50であることが必要であり、分子量分布が広く、低い引張り弾性率を有するものである。この低い引張り弾性率により良好な応力緩和性が奏され、表示ムラを有効に防止する。かかる観点より前記比(Mw/Mn)は、さらに20〜50であるのが好適である。本発明では、前記比(Mw/Mn)が適当な範囲にあり、さらに芳香環含有モノマーが適量共重合されていることにより、相乗効果で光漏れ防止性が顕著に向上する。この理由は、分子量分布を広くすることおよび芳香環含有モノマーの共重合により、熱収縮時のフィルムへの応力緩和が改善されるのに加え、さらに芳香環含有モノマーの共重合による粘着剤層の複屈折の低減により光漏れ防止性が著しく改善されるものと考えられる。しかし、前記比(Mw/Mn)が大きくなりすぎると、低分子量ポリマーが増加し、発泡が生じやすくなるり、逆に前記比(Mw/Mn)が小さくなりすぎると、応力緩和性が低下し、貼付け面積が大きい場合において光漏れが発生しやすくなる。
【0025】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、成分(A)のアクリル系ポリマー100重量部と、成分(B)のイソシアネート化合物0.005〜5重量部、および成分(C)のシランカップリング剤0.05〜1.0重量部とからなる。
【0026】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に使用できるイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。
【0027】
このようなイソシアネート化合物による架橋構造を迅速に形成するために、本発明では架橋促進剤を使用することができる。一般には水酸基とイソシアネート化合物の架橋反応は触媒が不要な場合もあるが、本発明で必須成分として共重合されている芳香環含有モノマーは嵩高いため、カルボキシル基やアミノ基等の架橋反応促進触媒がポリマー中に少ない場合は架橋反応の進行には長い時間が必要となることがあり、これを解決するため架橋促進剤を使用することができる。
【0028】
この架橋促進剤の例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチルアミン、イミダゾールのようなアミノ化合物;ナフテン酸コバルト、ジブチルすずジアセテート、ジブチルすずジアセチルアセトナート、テトラ−n−ブチルすず、トリメチルすずヒドロキシド、ジブチルすずジラウレート等のような有機金属化合物が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。このような架橋促進剤を使用する場合、架橋促進剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、通常は0.001〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.3重量部の量で使用される。
【0029】
架橋促進剤の量が逸脱して少ないと、長いエージング時間が必要であったり、高温又は高湿熱条件下での剥がれや発泡が生じる場合があり、逸脱して多いと過エージングとなり、貼付け面積が大きい場合においての光漏れ防止性が充分でなくなることがある。また、ブリードアウトして再剥離時に汚染が残る場合がある。
【0030】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に使用できるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)−3アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
成分(C)としては、イソシアネート基、カルボキシル基、アルコキシ基を有するものが特に好ましい。
【0032】
成分(C)を使用する場合は、成分(A)100重量部に対して、0.05〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.6重量部の範囲とすることが好ましい。これらシランカップリング剤は、その含有量が少なすぎると、ハガレ防止の効果を発揮できず、多すぎるとブリードしてハガレやアワが発生する場合がある。
【0033】
前記アクリル系ポリマー、前記イソシアネート化合物および前記シランカップリング剤の混合は、前記アクリル系ポリマーを溶液重合により調製した場合は、重合完了後のアクリル系ポリマー溶液にイソシアネート化合物およびシランカップリング剤を添加すれば良く、前記アクリル系ポリマーを塊状重合により調製する場合は、重合完了後では均一混合が困難になるため、重合の途中で混合することが好ましい。
【0034】
また、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で有れば酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、可塑剤等を配合しても良い。
【0035】
本発明の光学部材用粘着シートは、支持体の片面あるいは両面に、前記光学フィルム用粘着剤組成物からなる粘着剤層を設けたものである。粘着剤層は、従来公知の方法で設ければよい。
【0036】
また、本発明の光学部材は、光学フィルムの少なくとも片面に、上記粘着剤組成物より得られる粘着剤層を設けたものである。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、ガラス飛散防止及び表面保護フィルム等が挙げられるが、特に、支持体が偏光フィルム、位相差フィルム、または、楕円偏光フィルムとした場合に、前記光学フィルム用粘着剤の応力緩和性がより発揮できる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
製造例 1〜3、7〜21、25〜28、31
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、それぞれ表1に示す重量部(以下、実施例又は表で、「部」と略記することがある)の共重合性モノマーと酢酸エチルを仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(大塚化学社製)(以下「AIBN」と略記する)0.2部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら60℃に昇温した後、1.5時間反応させた。その後、酢酸エチル50部を50分かけて滴下しながら、滴下開始から30分後に過酸化物系重合開始剤であるパーヘキシルPV(日本油脂株式会社製)(以下、「PHPV」と略記する)0.2部を添加し80℃まで昇温させて、20分反応させた。次いでPHPV0.3部を添加し40分反応させ、更にPHPV1.0部を添加し3時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0039】
製造例 4
製造例1において、滴下の酢酸エチル50部を、65部に変更した以外は同様にして、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0040】
製造例 5
製造例1において、滴下の酢酸エチル50部を、80部に変更した以外は同様にして、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0041】
製造例 6
製造例1において、滴下の酢酸エチル50部を、95部に変更した以外は同様にして、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0042】
製造例 22
製造例1において、滴下の酢酸エチル50部を、110部に変更した以外は同様にして、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0043】
製造例 23及び24
製造例1において、滴下の酢酸エチル50部を、20部に変更した以外は同様にして、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0044】
製造例 29、33
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、表1に示す共重合性モノマーと酢酸エチルを仕込み、AIBN0.1部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら68℃に昇温した後、8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0045】
製造例 30
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、表1に示す重量部の共重合性モノマーと酢酸エチル及びトルエンを仕込み、AIBN0.2部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら70℃に昇温した後、2時間反応させた。その後、過酸化物系重合開始剤であるPHPV0.2部を添加し80℃まで昇温させて、20分反応し、次いでPHPV0.3部を添加し40分反応させ、更にPHPV1.0部を添加し3時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0046】
製造例 32
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、表1に示す重量部の共重合性モノマーと酢酸エチルを仕込み、AIBN0.2部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。次いで、窒素雰囲気下で撹拌しながら60℃に昇温した後、3時間反応させた。その後、酢酸エチル20部を50分かけて滴下しながら、PHPV0.2部を添加し80℃まで昇温させて、5時間反応した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系重合体溶液を得た。
【0047】
製造例1〜33で製造した(メタ)アクリル系重合体のGPC測定から得られた重量平均分子量(Mw)および共重合体の重量平均分子量を数平均分子量で割った値(Mw/Mn)の数値を表1に示す。
【0048】
<GPC測定条件>
測定装置 :HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H (ガードカラム)
(2)TSK−GEL G7000HXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.0mg/cm となるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0cm/min
カラム温度 :40℃
【0049】
実施例 1
製造例1により得られた(メタ)アクリル系重合体溶液中の(メタ)アクリル系重合体(固形分)100部に対して、イソシアネート系架橋剤TD−75(綜研化学社製)0.2部、シランカップリング剤KBE−9007(信越化学工業社製)0.1部を添加し、粘着剤組成物の溶液を得た。
【0050】
この粘着剤組成物の溶液を剥離処理したポリエステルフィルムの表面に塗布して乾燥させることにより、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。この粘着シートを偏光フィルムの片面に貼り付け、温度23℃、湿度65%RHの条件で7日間熟成させて光学部材を得た。
【0051】
実施例 2〜25、比較例1〜14
実施例1と同様にして、表2に示すように製造例2〜32の重合体溶液中の(メタ)アクリル系重合体(固形分)100部に対して、イソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤および架橋促進剤を添加し粘着剤組成物の溶液を得た。
【0052】
また、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様にして光学部材を得た。
【0053】
上記実施例及び比較例で得られた光学部材について、その耐久性、リワーク性および光漏れ防止性を以下の評価方法で評価した。この結果を表2にまとめて示す。
【0054】
<耐久性の評価方法>
光学部材を、それぞれ所定の大きさに裁断し、無アルカリガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。
同様の試験板を2枚作成し、それぞれ、温度60℃、湿度95%RHの条件下で500時間放置、及び温度85℃の条件下で500時間放置し、以下の基準で、発泡、はがれ、亀裂の発生等を目視で観察し評価した。
○:発泡、はがれ、亀裂等の外観不良が認められなかった
△:発泡、はがれ、亀裂等の外観不良がわずかに認められた
×:発泡、はがれ、亀裂等の外観不良が明らかに認められた
【0055】
<冷熱サイクル耐久性の評価方法>
光学部材を、無アルカリガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。こうして作成した試験板をエスペック株式会社製 冷熱衝撃装置TSA−71L−Aを用いて、−40℃で30分、80℃で30分を1サイクルとする冷熱サイクルを200回繰り返し、光学部材の発泡、浮き、ハガレの有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:発泡、浮き、ハガレ等の外観不良が見られなかった
△:発泡、浮き、ハガレ等の外観不良がわずかに見られた
×:発泡、浮き、ハガレが確認された
【0056】
<リワーク性試験>
光学部材を25mm幅に裁断した後、ポリエステル製剥離フィルムを剥がしてガラス板に粘着フィルムを介して偏光フィルムを粘着した。これを温度50℃、圧力5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、偏光フィルムとガラス板とを接着して試験片を得た。
【0057】
この試験片を温度70℃で6時間静置した後、23℃まで放冷した。その後、光学部材をガラス板から180度剥離し、ガラス板表面を目視により観察した。
○:ガラス板表面に汚染、粘着剤の残存は見られなかった
△:ガラス板表面に汚染、粘着剤の残存がわずかに見られた
×:ガラス板表面に汚染、粘着剤の残存が明らかに見られた
【0058】
<光漏れ防止性の評価方法>
光学部材2枚を、無アルカリガラス板の表裏面に相互に直交ニコル位になるようにラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。
作成した試験板を、85℃の条件下で500時間放置し、光漏れ防止性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:光漏れは全く見られなかった
○:光漏れはほぼ見られなかった
△:わずかに光漏れが見られた
×:明らかな光漏れが見られた
【0059】
【表1】

表1中の略号は、以下の通りである。
BA : ブチルアクリレート
2EHA : 2−エチルヘキシルアクリレート
MEA : 2−メトキシエチルアクリレート
BZA : ベンジルアクリレート
PHEA : 2−フェノキシエチルアクリレート
PHDEGA: フェノキシジエチレングリコールアクリレート
PHA : フェニルアクリレート
2HEA : 2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA : 4−ヒドロキシブチルアクリレート
AA : アクリル酸
MAA : メタクリル酸
DM : ジメチルアミノエチルメタクリレート
【0060】
【表2】

表2中、成分(B)、成分(C)および成分(D)の名称は以下の通りである。
TD−75 :綜研化学社製、イソシアネート系架橋剤
D−94 :綜研化学社製、イソシアネート系架橋剤
KBE−9007:信越化学工業社製、イソシアネート型シランカップリング剤
KBM−573 :信越化学工業社製、アミノ型シランカップリング剤
DBTDL :東京化成工業社製、ジブチルすずジラウレート
【0061】
表2に示した評価結果から明らかなように、本発明の粘着剤を用いた粘着シートには、アワ、ハガレが発生せず、耐久性及びリワーク性に優れていた。また、各サイズにおける光漏れ防止性にも優れた粘着剤であることも示された。一方、比較例の粘着シートは、耐久性、リワーク性、光漏れ防止性の何れかに欠点が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、耐久性と光漏れ性を両立しつつ、低分子量成分のブリードがなく、再剥離時の汚染、過酷な条件下での剥がれを抑制でき、リワーク性にも優れた粘着剤組成物を提供することができるので、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム用粘着シート等種々の用途に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、成分(B)及び成分(C)
(A)少なくとも次の単量体成分(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)を共重合してなる重量平均分子量が80万〜160万であり、且つ共重合体の重量平均分子量を数平均分子量で割った値(Mw/Mn)が10〜50であるアクリル系ポリマー;
(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル4.5〜89重量%、
(a2)芳香環含有モノマー10〜85重量%、
(a3)水酸基含有モノマー0.5〜10重量%、
(a4)カルボキシル基またはアミノ基含有モノマー0.05〜0.5重量%
(B)イソシアネート系架橋剤をアクリル系ポリマー100質量部に対し0.005〜5重量部
(C)シランカップリング剤をアクリル系ポリマー100質量部に対し0.05〜1.0重量部
を含有することを特徴とする光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
成分(a2)が、フェニルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β−ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンから選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに、成分(D)として架橋促進剤を含有する請求項1または請求項2記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
支持体上の少なくとも片面に、請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の粘着剤組成物より得られる粘着剤層を設けたことを特徴とする粘着シート。
【請求項5】
光学フィルムの少なくとも片面に、請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の粘着剤組成物より得られる粘着剤層を設けたことを特徴とする光学部材。

【公開番号】特開2007−138056(P2007−138056A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335344(P2005−335344)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】