説明

光学ユニット、撮影装置、および光学式ファインダ

【課題】 屈折力を自在に変化させることができ、且つ性能の劣化が抑えられた光学ユニット、その光学ユニットを用いた撮影レンズを備えた撮影装置、および上記光学ユニットを用いた光学式ファインダを提供する。
【解決手段】 光学ユニットが、容器内に封入された光透過性の分散媒内に分散した、光透過性であって分散媒の屈折率とは異なる屈折率を有する分散質を電磁気力で泳動させることにより焦点距離を変化させる電磁場発生器を有するレンズ体と、電磁場発生器で発生される電磁場を制御することによりレンズ体の焦点距離を3段階に変化させる焦点距離可変部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離を変化させることができる光学ユニット、光学ユニットを用いた撮影レンズを備えた撮影装置、および光学ユニットを用いた光学式ファインダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦点距離が可変な可変焦点レンズとして、液晶の電気光学効果を利用して焦点距離を変化させる液晶レンズが知られている。例えば、特許文献1には、平板状の第1,第2の光透過性基板と、両面が凹状に形成されて第1,第2の光透過性基板間に配備された第3の光透過性基板とを備えるとともに、第1の光透過性基板と第3の光透過性基板とに挟まれた空間および第2の光透過性基板と第3の光透過性基板とに挟まれた空間に封入された液晶を有する液晶レンズが提案されている。この液晶レンズでは、印加される電圧の大きさに応じて液晶分子の配向が変化し、これにより液晶レンズの屈折率が変化してレンズとしての焦点距離が変化する。
【0003】
また、可変焦点レンズとして、電圧を印加して形状を変化させることにより焦点距離を変化させる液体レンズも知られている。例えば、非特許文献1には、内壁が撥水性のコーティングで覆われたチューブ内に、非導電性のオイルと導電性の水性溶液からなる不混和性液体が封入された液体レンズが提案されている。この液体レンズでは、電圧が印加されていない状態では、不混和性液体を構成する水性溶液は半球状の固まりとなっており、水性溶液の、オイルとの界面は凸状である。この界面は、印加された電圧の大きさに応じて、凸状から凹状まで変化する。このため、レンズとしての曲率半径が変化することとなり、従って焦点距離を自在に可変することができる。
【特許文献1】特開2002−341311号公報
【非特許文献1】“Philips’Fluid Lenses”、[online]、March 03,2004、Royal Philips Electronics、[平成16年3月31日検索]、インターネット<URL:http://www.dpreview.com/news/0403/04030302philipsfluidlens.asp>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に提案された技術では、液晶分子の長軸方向の屈折率(n‖)と短軸方向の屈折率(n⊥)との差分Δn(n‖−n⊥)を利用することで液晶レンズの焦点距離を変化させるということが行なわれる。しかし、この差分Δnが小さ過ぎレンズとしての屈折力を自在に変化させることができないという問題がある。
【0005】
また、非特許文献1に提案された技術では、不混和性液体に電圧を印加することで液晶レンズの焦点距離を変化させるということが行なわれる。ここで、不混和性液体に電圧が印加されると、その不混和性液体を構成する導電性の水性溶液に電流が流れるため、その水性溶液が電気分解されて水素と酸素が発生する恐れがある。従って、長期にわたって使用すると、それら水素と酸素からなる気体が溜まって気泡化してしまい、光の散乱が起こってレンズとしての性能が劣化するという問題がある。
【0006】
尚、上述した問題は、レンズのみに限らず、並行平面板などにも一般的に生じる問題である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、屈折力を自在に変化させることができ、且つ性能の劣化が抑えられた光学ユニット、その光学ユニットを用いた撮影レンズを備えた撮影装置、および上記光学ユニットを用いた光学式ファインダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の光学ユニットは、少なくとも光通過領域が光透過性を有する容器と、
容器内に封入された光透過性の分散媒と、
分散媒内に分散した、光透過性であって分散媒の屈折率とは異なる屈折率を有する分散質と、
分散媒内に分散した分散質を電磁気力で泳動させることにより、光通過領域の焦点距離を変化させる電磁場発生器とを有する光学素子、および
電磁場発生器で発生される電磁場を制御することにより光通過領域の焦点距離を少なくとも3段階以上に変化させる焦点距離可変部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の光学ユニットは、容器内に封入された光透過性の分散媒内に分散した、光透過性であってその分散媒の屈折率とは異なる屈折率を有する分散質を、電磁気力で泳動させることにより、光通過領域の焦点距離を少なくとも3段階以上に変化させるものである。このため、分散媒と、分散質の、泳動により光通過領域に移動した量とにより定まる屈折率に応じた、少なくとも3段階以上に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変な光学ユニットが得られることとなる。また、分散媒内に分散した分散質は、電磁場発生器で生じた電場や磁場により移動するものであって、そこに電流は発生せず、従って非特許文献1に提案された、導電性の水性溶液に電流が流れる技術と比較し、電気分解する恐れは少なく、従って長期にわたってレンズとしての性能の劣化を抑えることができる。
【0010】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記電磁場発生器は、電圧の印加を受けて分散質を電気泳動させる電極であり、
焦点距離可変部は、電極に印加する電圧を制御するものであることが好適である。
【0011】
このような電気泳動タイプの光学ユニットによると、電極から印加される電界によって分散質が電気泳動し、焦点距離が制御される。電気泳動により移動する分散質の量は、電極に印加される電圧の波形や印加パターン、電極の配置,形状,構造等により、自在に制御することができる。従って、特許文献1に提案された、液晶分子の屈折率を利用して光の屈折を制御する技術と比較し、柔軟な屈折率分布を得ることもできる。
【0012】
また、本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記分散質が、酸化チタンからなることが好ましい。
【0013】
分散質が酸化チタンからなるものであると、屈折率の高い光学部材を実現することができる。また、酸化チタンは入手が容易である。
【0014】
また、本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記分散質が、アルミナからなることも好ましい態様である。
【0015】
分散質がアルミナからなるものであると、分散質のコストが安価で済む。
【0016】
また、本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記分散媒が、有機分散媒であることも好ましい態様である。
【0017】
本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記分散媒が、炭化水素系有機分散媒であることも好ましい。
【0018】
分散媒が炭化水素系有機分散媒であると、官能基を持つ有機分散媒と比較して、さらに電気的に安定である。
【0019】
また、本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記電極は、内側の面に絶縁膜がコーティングされ、該絶縁膜が前記分散媒に接して配置されていることも好ましい。
【0020】
このようにすると、分散質の、電極への凝集を防止することができる。
【0021】
また、本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記絶縁膜が、ポリイミド絶縁膜であることも好ましい。
【0022】
このようにすると、耐熱性および耐久性に優れた電極を得ることができる。
【0023】
また、本発明の電気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記分散質が、磁性を有するものであり、
電磁場発生器は、分散質を磁気泳動させる磁場発生器であり、
焦点距離可変部は、磁場発生器で発生される磁場を制御するものであることも好適である。
【0024】
このような磁気泳動タイプの光学ユニットによると、分散媒内に分散した磁性を有する分散質を、電気泳動ではなく磁気泳動させることによって、焦点距離を制御する。分散質を電気泳動させるためには、電場を制御する必要があるが、磁性を有する分散質を磁気泳動させるためには、電場よりも制御が容易な磁場を制御すればよく、焦点距離を確実に調整することができる。
【0025】
また、本発明の磁気泳動タイプの光学ユニットにおいて、上記分散質が、酸化チタンコバルトからなるなることが好ましい。
【0026】
酸化チタンコバルトは、高い光透過性を有する磁性粒子であり、製造が容易である。
【0027】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記分散質が、ナノ粒子からなることが好ましい。
【0028】
分散質がナノ粒子であっても電気泳動させることができる。
【0029】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記分散質が、5nm〜100nmの粒径を有するナノ粒子であることも好ましい。
【0030】
分散質が、5nm〜100nmの粒径を有するナノ粒子であると、光の散乱が生じにくく光の透過性が維持され、かつこの範囲の粒径であっても取り扱いが容易である。
【0031】
さらに、本発明の光学ユニットにおいて、上記分散媒が、水であることも好ましい。
【0032】
分散媒が水であると、分散質の分散性に優れるとともに分散媒のコストも安価で済む。
【0033】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記容器がレンズ形状を有するものであることが好ましい。
【0034】
容器がレンズ形状を有することによって、光学ユニットをフォーカスレンズやズームレンズなどとして使用することができる。
【0035】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記容器の、少なくとも前記光通過領域が、正の屈折力を有するレンズ形状を有する容器であってもよい。
【0036】
このようにすると、本発明の光学ユニットを、凸状の可変焦点レンズとして使用することができる。
【0037】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記容器の、少なくとも前記光通過領域が、負の屈折力を有するレンズ形状を有する容器であってもよい。
【0038】
このようにすると、本発明の光学ユニットを、凹状の可変焦点レンズとして使用することができる。
【0039】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記容器の、少なくとも前記光通過領域が、非球面レンズ形状を有する容器であってもよい。
【0040】
このようにすると、本発明の光学ユニットを、非球面状の可変焦点レンズとして使用することができる。
【0041】
また、本発明の光学ユニットにおいて、上記容器が板形状を有するものであってもよい。
【0042】
容器が板形状を有することによって、被写体までの光学距離を変えることができる。
【0043】
また、上記目的を達成する本発明の第1の撮影装置は、本発明の光学ユニットをピント調整レンズとして用いた撮影レンズを備え、撮影レンズを経由して入射してきた被写体光を捉えて撮影を行なうことにより画像信号を生成することを特徴とする。
【0044】
本発明の第1の撮影装置は、本発明の光学ユニットをピント調整レンズとして用いた撮影レンズを備えたものであるため、従来の、ピント調整用のレンズを駆動する機構を必要とする撮影装置と比較し、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性の高められた撮影装置が実現する。
【0045】
また、本発明の第1の撮影装置において、上記ピント調整レンズでピントを変化させて被写体像のコントラストの変化を検知することにより撮影レンズの合焦位置を検出するピント検出部を備えたことが好適である。
【0046】
本発明の第1の撮影装置における好適な形態によると、長期にわたって光学ユニットの焦点距離を精度良く制御して、高画質な撮影画像を取得することができる。
【0047】
また、上記目的を達成する本発明の第2の撮影装置は、本発明の光学ユニットによって焦点距離を変化させる撮影レンズを備え、撮影レンズを経由して入射してきた被写体光を捉えて撮影を行なうことにより画像信号を生成することを特徴とする。
【0048】
本発明の第2の撮影装置は、本発明の光学ユニットによって焦点距離を変化させる撮影レンズを備えたものであるため、従来の、焦点距離を変化させるための機構を必要とする撮影装置と比較し、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性の高められた撮影装置が実現する。
【0049】
また、上記目的を達成する本発明の第3の撮影装置は、本発明の光学ユニットを収差補正レンズとして用いた撮影レンズを備え、撮影レンズを経由して入射してきた被写体光を捉えて撮影を行なうことにより画像信号を生成することを特徴とする。
【0050】
本発明の第3の撮影装置は、本発明の光学ユニットを収差補正レンズとして用いた撮影レンズを備えたものであるため、その撮影レンズ特有の収差に見合った収差補正を自在に行なうことができる。
【0051】
また、上記目的を達成する本発明光学式ファインダは、本発明の光学ユニットを視度補正レンズとして用いたことを特徴とする。
【0052】
本発明の光学式ファインダは、本発明の光学ユニットを視度補正レンズとして用いたものであるため、従来の、視度補正のために光学系の一部を駆動する機構を必要とする光学式ファインダと比較し、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性の高められた光学式ファインダが実現する。
【発明の効果】
【0053】
本発明の光学ユニットによれば、屈折力を自在に変化させることができ、且つ性能の劣化を抑えることができる。また、本発明の光学ユニットをピント調整レンズとして用いた撮影レンズを備えた撮影装置によれば、ピント調整用のレンズを駆動する機構を必要としないため、構成が簡素化されて小型化を図ることができるとともに耐衝撃性を高めることができる。さらに、本発明の光学ユニットによって焦点距離を変化させる撮影レンズを備えた撮影装置によれば、焦点距離を変化させるための機構を必要としないため、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性を高めることができる。また、本発明の光学ユニットを収差補正レンズとして用いた撮影レンズを備えた撮影装置によれば、その撮影レンズ特有の収差に見合った収差補正を自在に行なうことができる。また、本発明の光学式ファインダは、本発明の光学ユニットを視度補正レンズとして用いたものであるため、従来の、視度補正のために光学系の一部を駆動する機構を必要とする光学式ファインダと比較し、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0055】
本発明の光学ユニットは、分散媒内に分散した分散質を電気泳動させて焦点距離を変える電気泳動タイプと、分散質を磁気泳動させて焦点距離を変える磁気泳動タイプとに大別される。初めに、電気泳動タイプの光学ユニットについて説明する。
【0056】
まず、電気泳動タイプであり、レンズ形状を有する光学ユニットについて説明する。
【0057】
図1は、本発明の一実施形態の可変焦点レンズの断面形状を示す図である。
【0058】
図1に示す可変焦点レンズ1には、レンズ体2および焦点距離可変部3が備えられている。レンズ体2には、少なくとも光通過領域10aが光透過性であってレンズ形状を有する容器11が備えられている。この容器11は、本発明にいう容器の一例に相当する。ここで、容器11の、少なくとも光通過領域10aは、外に向かって凸のレンズ形状を有する。
【0059】
また、このレンズ体2には、容器11内に封入された光透過性の分散媒12が備えられている。この分散媒12は、本発明にいう分散媒の一例にあたる。
【0060】
さらに、このレンズ体2には、分散媒12内に分散した、光透過性であって分散媒12の屈折率よりも高い屈折率を有する分散質13が備えられている。一般に、分散された状態は、分散媒と分散質から構成されており、分散質は、粒子であったりする。具体的には、この分散質13は、マイナスに帯電されたナノ粒子13bである。この分散質13は、本発明にいう分散質の一例にあたる。
【0061】
また、このレンズ体2には、分散媒12内に分散した分散質13を電気泳動させることにより光通過領域10aを通過する光の屈折を制御する第1の電極151,第2の電極152が備えられている。第1の電極151は、容器11の、光通過領域10aを取り巻く位置に配置されている。また、第2の電極152は、容器11の、光通過領域10aにおける背面に配置されている。この第2の電極152は、複数の電極部152aから構成されている。第1の電極151および第2の電極152は、本発明にいう電磁場発生器の一例にあたるとともに、本発明にいう電極の一例に相当する。
【0062】
一方、焦点距離可変部3は、第1,第2の電極151,152に印加する電圧を制御することにより上記光通過領域10aの焦点距離を少なくとも3段階以上に変化させる調整部である。この焦点距離可変部3は、本発明にいう焦点距離可変部の一例に相当する。
【0063】
ここで、焦点距離可変部3から第1,第2の電極151,152にマイナスの電圧,プラスの電圧が印加された場合は、第1,第2の電極151,152は陰極,陽極の役割を担うこととなる。一方、第1,第2の電極151,152にプラスの電圧,マイナスの電圧が印加された場合は、第1,第2の電極151,152は陽極,陰極の役割を担うこととなる。
【0064】
この可変焦点レンズ1は、レンズ体2が有する容器11内に封入された光透過性の分散媒12内に分散した、光透過性であってその分散媒12の屈折率よりも高い屈折率を有する分散質13を、第1,第2の電極151,152との間に印加される電圧を焦点距離可変部3で制御して電気泳動させることにより、光通過領域10aを通過する光の屈折を制御し、これにより光通過領域10aの焦点距離を少なくとも3段階以上に変化させるものである。このため、分散媒12と、分散質13の、電気泳動により光通過領域10aに移動した量とにより定まる屈折率に応じた、少なくとも3段階以上に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズが得られることとなる。ここで、可変焦点レンズ1の動作について説明する前に、レンズ体2の動作原理について説明する。ここでは、説明を簡単にするために、図2に示すレンズ体を参照して説明する。
【0065】
図2は、レンズ体の動作原理を説明するための図である。
【0066】
図2のパート(a)および図2のパート(b)に示すレンズ体10には、少なくとも光通過領域10aが光透過性であってレンズ形状を有する容器11が備えられている。ここで、容器11の、少なくとも光通過領域10aは、外に向かって凸のレンズ形状を有する容器である。
【0067】
また、このレンズ体10には、容器11内に封入された光透過性の分散媒12が備えられている。
【0068】
さらに、このレンズ体10には、分散媒12内に分散した、光透過性であって分散媒12の屈折率よりも高い屈折率を有する分散質13が備えられている。
【0069】
また、このレンズ体10には、分散媒12内に分散した分散質13を電気泳動させることにより光通過領域10aを通過する光の屈折を制御する電極である陰極14および陽極15が備えられている。詳細には、上記分散質13は、プラスに帯電されたナノ粒子13aとマイナスに帯電されたナノ粒子13bであって、容器11の、光通過領域10aを取り巻く位置に、分散質13を引き寄せる負極性の電極である陰極14および正極性の電極である陽極15が配置されている。
【0070】
ここで、上述したナノ粒子の材質はいかなるものであってもよい。例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウムなどが挙げられる。好ましくは、酸化チタン、シリカゲル(SiO2)、アルミナ、ポリマー粒子である。ナノ粒子の調整法は、固相法、液相法、気相法いずれでもよく、好ましくは、液相法と気相法である。その詳細は、文献「ナノ微粒子の調整および分散・凝集コントロールとその評価、技術情報協会、2003年」に記載されている。粒子サイズは、100nm以下が好ましい。粒子サイズが100nmを越えると、光の散乱が生じ、透明性(光透過性)が損なわれることとなる。
【0071】
また、ナノ粒子は、分散媒12(分散媒)への分散安定性を高める目的で、表面を修飾することが好ましい。表面を修飾する方法としては、チタンカップリング剤(イソプロピルトリイソステアロイルチタネートなど)、シランカップリング剤(ペンタデカフルオロデシルトリメチルシランなど)、アルミニウムカップリング剤(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなど)、グラフト重合などが挙げられる。グラフト重合は、酸化チタンに対してはポリエチレングラフト重合、ポリスチレングラフト重合が、シリガゲルに対してはシラノール基を利用したグラフト重合が利用できる。
【0072】
ナノ粒子を分散させる分散媒12としては、水あるいは非水系有機分散媒を用いることができる。また、水と有機分散媒を混合して用いてもよい。非水系有機分散媒としては、好ましくは、炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、オクタン、アイソパー(エクソン社)など)、炭化水素系芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなど)、ハロゲン系炭化水素(ジフルオロプロパン、ジクロロエタン、クロロエタン、ブロモエタンなど)、ハロゲン系炭化水素系芳香族化合物(クロロベンゼンなど)、エーテル系化合物(ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなど)、アルコール系化合物(グリセリンなど)、カルボニル基を有する化合物(プロピレンカーボネートなど)、ニトロ系化合物(ニトロメタンなど)、ニトリル系化合物(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)である。
【0073】
分散媒12については、レンズ体10の用途との関連において、屈折率、比重、粘度、抵抗率、誘電率などを調整することが好ましい。この調整には、複数の分散媒を混合して行なうことができる。
【0074】
また、この分散媒12には、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができる。
【0075】
容器11としては、ガラス基板、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフイルムや板状基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好適に用いられる。少なくとも50%以上の光透過率を有する容器11が好ましく、さらに好ましくは80%以上の光透過率を有するものである。
【0076】
さらに、陰極14や陽極15の電極部材としては、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、プラチナ、カーボン、導電性高分子、酸化錫一酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が形成されたものが好適に用いられる。また、後述するように、電極を光の透過する部位に設置する場合には、いわゆる透明電極を用いることが好ましい。酸化錫一酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物が好ましい。
【0077】
図2に示すレンズ体10は、レンズ形状を有する容器11内に封入された光透過性の分散媒12内に分散した、光透過性であってその分散媒12の屈折率とは異なる屈折率を有する分散質13を、陰極14と陽極15との間に印加される電圧に応じて電気泳動させることにより光通過領域10aを通過する光の屈折を制御するものである。このため、分散媒12と、分散質13の、電気泳動により光通過領域10aに移動した量とにより定まる屈折率に応じた焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズが得られることとなる。以下、詳細に説明する。
【0078】
陰極14と陽極15との間に電圧が印加されていない状態では、図2のパート(a)に示すように、分散媒12内には分散質13が一様に分散されている。この分散質13は、プラスに帯電されたナノ粒子13aとマイナスに帯電されたナノ粒子13bとからなるものである。このような状態におけるレンズ体10の屈折率は、分散媒12の屈折率と、その分散媒12内に一様に分散された分散質13の量(個数)により定まる屈折率とからなる、比較的大きな屈折率となっている。
【0079】
ここで、陰極14と陽極15との間に所定の電圧が印加される。すると、図2のパート(b)に示すように、分散媒12内に一様に分散されていた分散質13のうちのプラスに帯電されたナノ粒子13aが陰極14側に引き寄せられるとともに、マイナスに帯電されたナノ粒子13bが陽極15側に引き寄せられる。このため、レンズ体10の屈折率は、分散媒12の屈折率のみにより定まる比較的小さな屈折率となる。尚、陰極14,陽極15間への電圧の印加を中止すると、再び図2のパート(a)に示す状態に落ち着く。
【0080】
ここで、光通過領域10aに位置する分散質13の、電気泳動により移動する量は、陰極14および陽極15に印加される電圧の波形や印加パターン、陰極14および陽極15の配置,形状,構造等により、自在に制御することができる。従って、特許文献1に提案された、液晶分子の屈折率を利用して光の屈折を制御する技術と比較し、柔軟な分布率を得ることもできる。また、分散媒12内に分散した分散質13は、陰極14および陽極15に電圧を印加することによって生じた電界により移動するものであって、そこに電流は発生せず、従って非特許文献1に提案された、導電性の水性溶液に電流が流れる技術と比較し、電気分解する恐れは少なく、従って長期にわたってレンズとしての性能の劣化を抑えることができる。
【0081】
次に、電気泳動により屈折率を段階的に変化する方法について説明する。電気泳動で前述したプラスやマイナスに帯電されたナノ粒子(荷電微粒子と称する)を移動させる際、印加する電圧の波形や印加パターンにより移動する荷電粒子の量を変化させることができる。レンズ体10における光通過領域10aに位置する荷電粒子の量を変化させると、結果的に屈折率が段階的に変化する光学素子が得られることとなる。ここで、荷電粒子の量を変化させるためには、矩形波を印加する方法が好ましい。文献「IDWO3(Proceedings of the 10th international Display Workshops)予稿集、第239頁、2003年」には、電気泳動による4階調表示の報告例が、また、「同第243頁、2003年」には、8階調表示の報告例が記載されている。これらに記載されている印加方法を採用することで、荷電粒子の量を段階的に変化させることが可能である。
【0082】
次に、レンズ体の実施例について説明する。
【0083】
本実施例では、分散質13として酸化チタンのナノ粒子を用いた。この酸化チタンのナノ粒子は、含水酸化チタンをアルカリで無定形としたのち、塩酸中で熟成させて、加熱処理により粒子サイズ10nmのものとし、その粒子表面をチタンカップリング剤(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート)の溶液で処理した。このようにして得られた酸化チタンのナノ粒子をアイソパー(エクソン社製)に分散して、光学素子であるレンズ体10を作製した。
【0084】
アイソパー(屈折率1.48)中に、酸化チタンのナノ粒子(屈折率2.30)を20体積%程度混入した場合、屈折率は1.48から1.644に変化した。また、30体積%程度混入した場合、屈折率は1.48から1.726に変化した。これらを用いて図3に示す形状のレンズ(ナノ粒子を含む媒質)を作成した。
【0085】
図3は、ナノ粒子を含む媒質を有するレンズの曲率および厚さを示す図である。
【0086】
レンズの曲率R1 5.00mm
レンズの厚さD1 3.00mm
レンズの曲率R2 無限大
(1_1)アイソパー(屈折率1.48)のみの場合
焦点距離 10.42mm
バックフォーカス 8.39mm
フロントフォーカス −10.42mm
(1_2)酸化チタンのナノ粒子を20%混入した(屈折率1.644)場合
焦点距離 7.76mm
バックフォーカス 5.94mm
フロントフォーカス −7.76mm
(1_3)酸化チタンのナノ粒子を30%混入した(屈折率1.726)場合
焦点距離 6.89mm
バックフォーカス 5.15mm
フロントフォーカス −6.89mm
このように焦点距離を、10.42→7.76または10.42→6.89と変化させることができた。
【0087】
図4は、屈折率が1.48,1.644,1.726と変化した場合の可変焦点レンズのバックフォーカスを示す図である。
【0088】
上述したように、屈折率が1.48,1.644,1.726と変化した場合のレンズ体の焦点距離は、10.42,7.76,6.89となる。これらをバックフォーカスで表わすと、図4のようになる。図4に示すように、屈折率が1.48のときのバックフォーカスBf’(8.39)が最も大きく、以下、屈折率が1.644のときのバックフォーカスBf’(5.94)、屈折率が1.726のときのバックフォーカスBf’(5.15)の順に小さくなっている。
【0089】
次に、通常のガラス(BK7;屈折率1.51633)と組み合わせたレンズ(ナノ粒子を含む媒質)を作成した。
【0090】
図5は、通常のガラスと組み合わせたレンズの曲率および厚さを示す図である。
【0091】
ガラスの曲率R1 無限大
ガラスの厚さD1 1.00mm
レンズの曲率R2 5.00mm
レンズの厚さD2 3.00mm
レンズの曲率R3 無限大
(2_1)アイソパー(屈折率1.48)のみの場合
焦点距離 −137.6mm
バックフォーカス −133.7mm
フロントフォーカス 138.3mm
(2_2)酸化チタンのナノ粒子を20%混入した(屈折率1.644)場合
焦点距離 39.2mm
バックフォーカス 37.3mm
フロントフォーカス −38.5mm
(2_3)酸化チタンのナノ粒子を30%混入した(屈折率1.726)場合
焦点距離 23.8mm
バックフォーカス 22.1mm
フロントフォーカス −23.2mm
以上のように焦点距離を、−137.6→39.2または−137.6→23.8と変化させることができた。
【0092】
さらに、通常のガラス(BK7;屈折率1.51633)にナノ粒子を封入したレンズを作成した。
【0093】
図6は、通常のガラスにナノ粒子を封入したレンズの曲率および厚さを示す図である。
【0094】
第1のガラスの曲率R1 無限大
第1のガラスの厚さD1 1.00mm
第2のガラスの曲率R2 13.634mm
第2のガラスの厚さD2 2.00mm(ナノ粒子を含む媒質)
第3のガラスの曲率R3 −20.2mm
第3のガラスの厚さD3 1.00mm
第4のガラスの曲率R4 無限大
(3_1)アイソパー(屈折率1.48)のみの場合
焦点距離 −223.7mm
バックフォーカス −225.2mm
フロントフォーカス 224.9mm
(3_2)酸化チタンのナノ粒子を20%混入した(屈折率1.644)場合
焦点距離 64.1mm
バックフォーカス 62.7mm
フロントフォーカス −62.9mm
(3_3)酸化チタンのナノ粒子を30%混入した(屈折率1.726)場合
焦点距離 39.1mm
バックフォーカス 37.7mm
フロントフォーカス −38.0mm
以上のように焦点距離を、−223.7→64.1または−223.7→39.1と変化させることができた。
【0095】
次に、図1に示す可変焦点レンズ1の動作について、図7を参照して説明する。
【0096】
図7は、図1に示す可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【0097】
尚、焦点距離可変部3は、図面を簡略化するために図示省略する。
【0098】
先ず、焦点距離可変部3から、図7のパート(a)に示すレンズ体2が有する第1,第2の電極151,152にマイナスの電圧,プラスの電圧が印加されるものとする。すると、第1,第2の電極151,152は、陰極,陽極の役割を担うこととなる。ここで、第2の電極152を構成する複数の電極部152aそれぞれには、同じ値のプラスの電圧が印加されるものとする。従って、この場合は、複数の電極部152aそれぞれに同量のナノ粒子13bが引き寄せられる。
【0099】
次いで、図7のパート(b)に示すように、第2の電極152を構成する両端側の電極部152aに最も大きな値のプラスの電圧が印加されるとともに、中央の電極部152aに最も小さな値のプラスの電圧が印加され、さらに両端側の電極部152aと中央の電極部152aとの間に位置する電極部152aには中間の値のプラスの電圧が印加されるものとする。すると、両端側の電極部152aに最も多量のナノ粒子13bが引き寄せられるとともに中央の電極部152aには少量のナノ粒子13bが引き寄せられる。また、両端側の電極部152aと中央の電極部152aとの間に位置する電極部152aには中程度の量のナノ粒子13bが引き寄せられる。
【0100】
さらに、図7のパート(c)に示すように、第1,第2の電極151,152にプラスの電圧,マイナスの電圧が印加される。すると、第1,第2の電極151,152は、陽極,陰極の役割を担うこととなり、第1の電極151にナノ粒子13bが引き寄せられる。このようにして、ナノ粒子13bの分布が制御されて光通過領域10aの焦点距離が3段階に変化する。従って、分散媒12と、ナノ粒子13bの、電気泳動により光通過領域10aに移動した量とにより定まる正の屈折率に応じた、3段階に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズが得られることとなる。
【0101】
図8は、電極の内側の面に絶縁膜がコーティングされたレンズ体の断面形状を示す図である。
【0102】
図8に示すレンズ体4は、図7に示すレンズ体2と比較し、電極151の内側の面に絶縁膜153がコーティングされ、それら絶縁膜153が分散媒12に接して配置されている点が異なっている。このレンズ体4では、電極151の内側の面に絶縁膜153がコーティングされているため、ナノ粒子13bの、電極151への凝集を防止することができる。ここで、絶縁膜153は、ポリイミド絶縁膜である。このため、電極151は、優れた耐熱性および耐久性を有する。このように構成されたレンズ体4で、電極151,152に印加する電圧を制御することにより光通過領域10aの焦点距離を3段階に変化させてもよい。
【0103】
図9は、プラスチックで形成された容器を備えたレンズ体の断面形状を示す図である。
【0104】
図9に示すレンズ体5には、少なくとも光通過領域10aが光透過性であってレンズ形状を有する容器31が備えられている。この容器31の、少なくとも光通過領域10aにおける部分は、プラスチックから形成されている。このため、軽量で耐衝撃性の高い容器31が実現されている。このような容器31を備えたレンズ体5で、電極151,152に印加する電圧を制御することにより光通過領域10aの焦点距離を3段階に変化させてもよい。尚、プラスチックに代えてガラスで容器を形成してもよい。
【0105】
図10は、電極の配置の一例を示す図である。
【0106】
図10に示す電極1_141,1_151は、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く上側面,下側面に配置されている。このように電極1_141,1_151を配置し、例えば電極1_141,1_151にマイナスの電圧,プラスの電圧を印加して、容器の上側面,下側面にプラスのナノ粒子,マイナスのナノ粒子を引き寄せてもよい。
【0107】
図11は、電極の配置の他の一例を示す図である。
【0108】
図11には、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く左右の位置に、第1,第2の電極1_142,1_142が配置されている。また、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く上下の位置に、第3,第4の電極1_152,1_152が配置されている。このような電極を配置するとともに分散媒内にマイナスのナノ粒子1_13bを分散しておき、第1,第2の電極1_142,1_142を陰極とするとともに第3,第4の電極1_152,1_152を陽極とし、例えば第3の電極1_152に印加されるプラスの電圧の値よりも第4の電極1_152に印加されるプラスの電圧の値を大きく設定することにより、それら第3,第4の電極1_152,1_152に引き寄せられるナノ粒子1_13bの量を振り分けてもよい。
【0109】
図12は、電極の配置のさらなる他の一例を示す図である。
【0110】
図12には、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く側面に、陰極1_143と陽極1_153とが交互に配置されている。このように陰極1_143と陽極1_153を交互に配置して、プラスのナノ粒子,マイナスのナノ粒子1_13bの分布を自在に制御してもよい。
【0111】
図13は、負の屈折力を有するレンズ体を備えた可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【0112】
図13には、少なくとも光通過領域10aが、負の屈折力を有するレンズ形状を有する容器31を備えたレンズ体6が示されている。先ず、図13のパート(a)に示すレンズ体6が有する第1,第2の電極151,152にマイナスの電圧,プラスの電圧が印加されるものとする。すると、第1,第2の電極151,152は、陰極,陽極の役割を担うこととなる。ここでは、第2の電極152を構成する複数の電極部152aそれぞれには、同じ値のプラスの電圧が印加されるものとする。従って、この場合は、複数の電極部152aそれぞれに同量のナノ粒子13bが引き寄せられる。
【0113】
次いで、図13のパート(b)に示すように、第2の電極152を構成する両端側の電極部152aに最も大きな値のプラスの電圧が印加されるとともに、中央の電極部152aに最も小さな値のプラスの電圧が印加され、さらに両端側の電極部152aと中央の電極部152aとの間に位置する電極部152aには中間の値のプラスの電圧が印加されるものとする。すると、両端側の電極部152aに最も多量のナノ粒子13bが引き寄せられるとともに中央の電極部152aには少量のナノ粒子13bが引き寄せられる。また、両端側の電極部152aと中央の電極部152aとの間に位置する電極部152aには中程度の量のナノ粒子13bが引き寄せられる。
【0114】
さらに、図13のパート(c)に示すように、第1,第2の電極151,152にプラスの電圧,マイナスの電圧が印加される。すると、第1,第2の電極151,152は、陽極,陰極の役割を担うこととなり、第1の電極151にナノ粒子13bが引き寄せられる。このようにして、ナノ粒子13bの分布が制御されて光通過領域10aの焦点距離が3段階に変化する。従って、分散媒12と、ナノ粒子13bの、電気泳動により光通過領域10aに移動した量とにより定まる負の屈折率に応じた、3段階に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズが得られることとなる。
【0115】
図14は、非球面レンズ形状を有する容器を有するレンズ体を備えた可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【0116】
図14には、少なくとも光通過領域10aが、非球面レンズ形状を有する容器41を備えたレンズ体7が示されている。尚、このレンズ体7を備えた可変焦点レンズの動作は、前述した図13に示すレンズ体6を備えた可変焦点レンズの動作と同じであるため、説明は省略する。このような非球面レンズ形状を有する容器41を有するレンズ体7を備えた可変焦点レンズで3段階に焦点距離を変化させてもよい。
【0117】
図15は、外に向かって双方が凸のレンズ形状を有する容器を有するレンズ体を備えた可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【0118】
図15には、外に向かって双方が凸のレンズ形状を有する容器51を備えたレンズ体8が示されている。尚、このレンズ体8を備えた可変焦点レンズの動作は、前述した図13に示すレンズ体6を備えた可変焦点レンズの動作と同じであるため、説明は省略する。このような、外に向かって双方が凸のレンズ形状を有する容器51を有するレンズ体8を備えた可変焦点レンズで3段階に焦点距離を変化させてもよい。
【0119】
図16は、電極パターンが工夫された第1のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0120】
図16に示すレンズ体180には、容器の、光通過領域を取り巻く位置に、陰極14が配置されている。また、このレンズ体180には、容器の、光通過領域10aにおける前面に、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン181aを有する陽極181が配置されている。さらに、このレンズ体180には、容器の、光通過領域における背面に、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン182aを有する陽極182が配置されている。このレンズ体180は、陽極181,182の電極パターン181a,182aが対称的であるため、例えば電極パターン181a,182aの上部から下部にかけて共に値が徐々に小さく(もしくは大きく)なるような電圧を印加することにより、プリズム効果を実現することができる。このようなレンズ体180を手ぶれ補正用の加速度センサとともにカメラに備え、加速度センサからの信号に応じてそのカメラに備えられたレンズの上下方向に対する手ぶれ補正を行なってもよい。また、このようなレンズ体180をカメラのファインダに備えてパララックス(視差)補正してもよい。
【0121】
図17は、電極パターンが工夫された第2のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0122】
図17に示すレンズ体190は、図16に示すレンズ体180と比較し、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン182aを有する陽極182に代えて、垂直方向に形成されたストライプ状の電極パターン191aを有する陽極191が配置されている点が異なっている。ここで、電極パターン181aで上下の屈折率を制御するとともに、電極パターン191aで左右の屈折率を制御することにより、レンズの上下方向および左右方向に対する手ぶれ補正やパララックス補正を行なってもよい。
【0123】
図18は、電極パターンが工夫された第3のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0124】
図18に示すレンズ体200は、図17に示すレンズ体190と比較し、垂直方向に形成されたストライプ状の電極パターン191aを有する陽極191に代えて、複数の同心円状の電極パターン201aを有する陽極201が配置されている点が異なっている。ここで、電極パターン201aで凸状のレンズを実現するとともに、電極パターン181aでプリズム効果を実現することにより、1つのレンズ体200で手ぶれ補正やピント調節を兼ねた撮影レンズを実現してもよい。また、ズームレンズを備えたカメラにおいて、そのカメラのファインダ光学系にこのレンズ体200を採用して、そのズームレンズにより変化する視野に応じて変化するズームファインダを実現してもよい。さらに、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン181aを有する陽極181に代えて、複数の同心円状の電極パターン201aを有する陽極201と同じ陽極を配置し、例えば正の屈折力を高めるにあたり、上記陽極201と相俟ってナノ粒子を迅速に移動させることもできる。
【0125】
図19は、マトリックス状の電極パターンを有する陽極を示す図である。
【0126】
図19に示す電極210は、周辺領域に配置された電極パターン部211と中央領域に配置された電極パターン部212からなるマトリックス状の電極パターンを有する。ここで、周辺領域に配置された電極パターン部211は陰極の役割を担うとともに、中央領域に配置された電極パターン部212は陽極の役割を担う。このような電極210を備えたレンズ体を通常のレンズに隣接して配置するとともに、そのレンズの収差を補正するためのデータからなる収差補正用テーブルを用意しておき、上記電極210に、収差補正用テーブルのデータに応じた電圧を印加してナノ粒子の分布を制御することにより、その光学部材の屈折率を制御することにより、上記レンズの収差を補正してもよい。
【0127】
以上で、電気泳動タイプでレンズ形状を有する光学ユニットの説明を終了し、以下では、電気泳動タイプで板形状を有する光学ユニットについて説明する。尚、上述したレンズ形状を有する光学ユニットと同様の要素については同じ符号を付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0128】
図20は、外形が板形状のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0129】
図20のパート(a)および図20のパート(b)に示すレンズ体310には、少なくとも光通過領域310aが光透過性であって外形が板形状を有する容器311が備えられている。容器311には、図2に示すレンズ体10と同様に、分散媒12と、分散質13(プラスに帯電されたナノ粒子13aとマイナスに帯電されたナノ粒子13b)とが封入されている。
【0130】
陰極14と陽極15との間に電圧が印加されていない状態では、図20のパート(a)に示すように、分散媒12内には分散質13が一様に分散されている。この分散質13は、プラスに帯電されたナノ粒子13aとマイナスに帯電されたナノ粒子13bとからなるものである。このような状態におけるレンズ体310の屈折率は、分散媒12の屈折率と、その分散媒12内に一様に分散された分散質13の量(個数)により定まる屈折率とからなる、比較的大きな屈折率となっている。
【0131】
ここで、陰極14と陽極15との間に所定の電圧が印加される。すると、図20のパート(b)に示すように、分散媒12内に一様に分散されていた分散質13のうちのプラスに帯電されたナノ粒子13aが陰極14側に引き寄せられるとともに、マイナスに帯電されたナノ粒子13bが陽極15側に引き寄せられる。このため、レンズ体310の屈折率は、分散媒12の屈折率のみにより定まる比較的小さな屈折率となる。尚、陰極14,陽極15間への電圧の印加を中止すると、再び図20のパート(a)に示す状態に落ち着く。
【0132】
図21は、外形が板形状のレンズ体における結像位置のずれを説明するための図である。
【0133】
図21のパート(A)には、凸状のレンズからの被写体光の結像位置が示されている。ここで、図21のパート(B)に示すように、厚さd,屈折率nのレンズ体を像空間に挿入する。このレンズ体の空気換算長は、厚さdを屈折率nで割った値(d/n)で表わされる。このため、結像位置は、d(1−1/n)だけ後方(図21の左側)にずれることとなる。
【0134】
また、図21のパート(C)に示すように、像空間において、ともに厚さdであって屈折率が異なる2枚のレンズ体(屈折率はそれぞれn1,n2とする)を用意し、それらのレンズ体を入れ替えた場合、それらレンズ体の結像位置のずれΔdは、d(1/n1−1/n2)となる。焦点距離fのレンズ系における、物体距離D時の結像位置の後側焦点からの距離は、f2/Dであるので、屈折率の異なるレンズ体の出し入れによって、無限遠物体と、f2/Dで示される距離の物体への焦点調節が可能になる。ここで、2枚のレンズ体の出し入れに代えて、前述した図20に示すレンズ体310を用いて分散質13を電気泳動させて光の屈折を制御することにより、焦点距離の調節を行なうことができる。
【0135】
次に、屈折率可変板の動作について、図22を参照して説明する。
【0136】
図22は、屈折率可変板の動作を説明するための図である。
【0137】
先ず、図1に示す焦点距離可変部3から、図22のパート(a)に示すレンズ体320が有する第1,第2の電極151,152にマイナスの電圧,プラスの電圧が印加されるものとする。すると、第1,第2の電極151,152は、陰極,陽極の役割を担うこととなる。ここで、第2の電極152を構成する複数の電極部152aそれぞれには、同じ値のプラスの電圧が印加されるものとする。従って、この場合は、複数の電極部152aそれぞれに同量のナノ粒子13bが引き寄せられる。
【0138】
次いで、図22のパート(b)に示すように、第2の電極152を構成する両端側の電極部152aに最も大きな値のプラスの電圧が印加されるとともに、中央の電極部152aに最も小さな値のプラスの電圧が印加され、さらに両端側の電極部152aと中央の電極部152aとの間に位置する電極部152aには中間の値のプラスの電圧が印加されるものとする。すると、両端側の電極部152aに最も多量のナノ粒子13bが引き寄せられるとともに中央の電極部152aには少量のナノ粒子13bが引き寄せられる。また、両端側の電極部152aと中央の電極部152aとの間に位置する電極部152aには中程度の量のナノ粒子13bが引き寄せられる。
【0139】
さらに、図22のパート(c)に示すように、第1,第2の電極151,152にプラスの電圧,マイナスの電圧が印加される。すると、第1,第2の電極151,152は、陽極,陰極の役割を担うこととなり、第1の電極151にナノ粒子13bが引き寄せられる。このようにして、ナノ粒子13bの分布が制御されて光通過領域310aの焦点距離が3段階に変化する。従って、分散媒12と、ナノ粒子13bの、電気泳動により光通過領域10aに移動した量とにより定まる正の屈折率に応じた、3段階に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズが得られることとなる。
【0140】
図23は、電極の内側の面に絶縁膜がコーティングされたレンズ体の断面形状を示す図である。
【0141】
図23に示すレンズ体330は、図22に示すレンズ体320と比較し、電極151の内側の面に絶縁膜153がコーティングされ、それら絶縁膜153が分散媒12に接して配置されている点が異なっている。このレンズ体330では、電極151の内側の面に絶縁膜153がコーティングされているため、ナノ粒子13bの、電極151への凝集を防止することができる。ここで、絶縁膜153は、ポリイミド絶縁膜である。このため、電極151は、優れた耐熱性および耐久性を有する。このように構成されたレンズ体4で、電極151,152に印加する電圧を制御することにより光通過領域10aの焦点距離を3段階に変化させてもよい。
【0142】
図24は、プラスチックで形成された容器を備えたレンズ体の断面形状を示す図である。
【0143】
図24に示すレンズ体340には、電極151の周囲を囲むように配置された円筒形状の部材、およびその部材の前面および背面に嵌め込まれるともに少なくとも光通過領域10aが光透過性であって外形が円板形状の部材からなる容器341が備えられている。この容器341は、プラスチックから形成されている。このため、軽量で耐衝撃性の高い容器341が実現されている。このような容器341を備えたレンズ体340で、電極151,152に印加する電圧を制御することにより光通過領域310aの焦点距離を3段階に変化させてもよい。尚、プラスチックに代えてガラスで容器を形成してもよい。
【0144】
図25は、電極パターンが工夫された第1のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0145】
図25に示すレンズ体410には、容器の、光通過領域を取り巻く位置に、陰極14が配置されている。また、このレンズ体410には、容器の、光通過領域410aにおける前面に、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン411aを有する陽極411が配置されている。さらに、このレンズ体410には、容器の、光通過領域における背面に、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン412aを有する陽極412が配置されている。このレンズ体410は、陽極411,412の電極パターン411a,412aが対称的であるため、例えば電極パターン411a,412aの上部から下部にかけて共に値が徐々に小さく(もしくは大きく)なるような電圧を印加することにより、プリズム効果を実現することができる。このようなレンズ体410を手ぶれ補正用の加速度センサとともにカメラに備え、加速度センサからの信号に応じてそのカメラに備えられたレンズの上下方向に対する手ぶれ補正を行なってもよい。また、このようなレンズ体410をカメラのファインダに備えてパララックス(視差)補正してもよい。
【0146】
図26は、電極パターンが工夫された第2のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0147】
図26に示すレンズ体420は、図25に示すレンズ体410と比較し、水平方向に形成されたストライプ状の電極パターン412aを有する陽極412に代えて、垂直方向に形成されたストライプ状の電極パターン421aを有する陽極421が配置されている点が異なっている。ここで、電極パターン411aで上下の屈折率を制御するとともに、電極パターン421aで左右の屈折率を制御することにより、レンズの上下方向および左右方向に対する手ぶれ補正やパララックス補正を行なってもよい。
【0148】
図27は、電極パターンが工夫された第3のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0149】
図27に示すレンズ体430は、図26に示すレンズ体420と比較し、垂直方向に形成されたストライプ状の電極パターン421aを有する陽極421に代えて、複数の同心円状の電極パターン431aを有する陽極431が配置されている点が異なっている。ここで、電極パターン431aで凸状のレンズ機能を実現するとともに、電極パターン411aでプリズム効果を実現することにより、1つのレンズ体430で手ぶれ補正やピント調節を兼ねた撮影レンズを実現してもよい。また、ズームレンズを備えたカメラにおいて、そのカメラのファインダ光学系にこのレンズ体430を採用して、そのズームレンズにより変化する視野に応じて変化するズームファインダを実現してもよい。
【0150】
図28は、マトリックス状の電極パターンを有する陽極を示す図である。
【0151】
図28に示す陽極432は、マトリックス状の電極パターン432aを有する。このような陽極432を備えたレンズ体を通常のレンズに隣接して配置するとともに、そのレンズの収差を補正するためのデータからなる収差補正用テーブルを用意しておき、上記マトリックス状の電極パターン432aに、収差補正用テーブルのデータに応じた電圧を印加してナノ粒子の分布を制御することにより、そのレンズ体の屈折率を制御することにより、上記レンズの収差を補正してもよい。
【0152】
図29は、電極の配置の一例を示す図である。
【0153】
図29には、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く外周の上側面,下側面に、陽極2_141,2_151が配置されている。また、この容器の、光通過領域を取り巻く内周の全面にかけてメッシュ状の陰極2_161が配置されている。このため、陽極2_141,2_151に独立に電圧を印加することができるとともに、陰極2_161の、メッシュ状の所望の座標や領域に電圧を印加することができる。従って、分散媒内に分散されているナノ粒子の分布を自在に制御することができる。
【0154】
図30は、図29に示す陽極とは異なる陽極の配置例を示す図である。
【0155】
図30には、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く外周面に、4分割されてなる陽極2_152が配置されている。このような陽極2_152を図29に示すメッシュ状の陰極2_161とともに配置し、それら陽極2_152に独立に電圧を印加するとともに、陰極2_161の、メッシュ状の所望の座標や領域に電圧を印加すると、分散媒内に分散されているナノ粒子の分布をさらに自在に制御することができる。
【0156】
図31は、図29,図30に示す陽極とは異なる陽極の配置例を示す図である。
【0157】
図31には、レンズ体を構成する容器の、光通過領域を取り巻く外周面に、ストライプ状の陽極2_143が配置されている。このような陽極2_143を図29に示すメッシュ状の陰極2_161とともに配置し、それら陽極2_143に独立に電圧を印加するとともに、陰極2_161の、メッシュ状の所望の座標や領域に電圧を印加して、分散媒内に分散されているナノ粒子の分布をさらに自在に制御してもよい。
【0158】
以上で、分散媒中に分散された分散質を電気泳動させて光の屈折を制御する電気泳動タイプの光学ユニットの説明を終了し、続いて、分散媒中に分散された磁性を有する分散質を磁気泳動させて光の屈折を制御する磁気泳動タイプの光学ユニットについて説明する。
【0159】
図32は、分散質を磁気泳動させて光の屈折を変化させる可変焦点レンズにおける、レンズ体の断面形状を示す図である。
【0160】
図32に示すレンズ体510は、図2に示すレンズ体10の容器11と同様のレンズ形状を有し、少なくとも光通過領域510aが光透過性を有する容器511内に、透明な分散媒520と、磁性を有する透明なナノ粒子530が封入されている。この分散質520としては、図2に示すレンズ体10の分散媒12と同様な流体を適用することができ、透明な磁性ナノ粒子530としては、二酸化チタンコバルトなどを適用することができる。
【0161】
また、このレンズ体510には、、図2に示すレンズ体10の電極(陰極14、陽極15)に替えて、磁性ナノ粒子530を磁気泳動させるための磁場を発生するコイル540が備えられている。コイル540は、本発明にいう電磁場発生器の一例にあたるとともに、本発明にいう磁場発生器の一例に相当する。
【0162】
図33は、図32に示すレンズ体510の概略構成図である。
【0163】
図33のパート(a)には、レンズ体510の上面図が示されている。
【0164】
容器511の上面および下面には、巻回された3つのコイル540が並べて配置されている。また、コイル540には、コイル540に電流を印加して、コイル540で発生される磁場を制御する磁場調整部550が接続されている。
【0165】
図33のパート(b)には、レンズ体510の、コイル540付近の拡大図が示されている。
【0166】
例えば、図33のパート(a)に示す磁場調整部550によって、3つのコイル540それぞれに同じ方向の電流が印加されると、3つのコイル540それぞれで磁場が発生し、図33のパート(b)に示すように、容器511に、N極とS極とが交互に並んだ磁場が印加される。磁性ナノ粒子530を磁気泳動させるためには、コイル540から容器511に印加される磁場の極性はN極、およびS極のいずれでも良く、3つのコイル540それぞれに印加される電流の向きはそれぞれに異なる方向でも良い。3つのコイル540それぞれに印加される電流の向きや大きさを個別に調整することによって、磁場発生部540から容器511に印加される磁場の大きさや、磁場が印加される領域を精度良く制御することができる。
【0167】
図32に戻って説明する。
【0168】
コイル540で磁場が発生していない状態では、図32のパート(a)に示すように、分散媒520内には磁性ナノ粒子530が一様に分散されている。
【0169】
図33のパート(a)に示す磁場調整部550によってコイル540に電流が印加されると、コイル540では、印加された電流の方向や大きさに応じた磁場が発生する。その結果、図32のパート(b)に示すように、分散媒520内に一様に分散されていた磁性ナノ粒子530がコイル540の磁力に引き寄せられて、レンズ体510の屈折率が減少する。
【0170】
このように、分散媒内に分散した分散質を電気泳動ではなく磁気泳動させることによっても、レンズ体510を通過する光の屈折を制御することができる。
【0171】
図34は、分散質を磁気泳動させて光の屈折を変化させる、板形状のレンズ体の断面形状を示す図である。
【0172】
図34に示すレンズ体550には、図20に示すレンズ体310の容器311と同様の板形状を有する容器511が備えられており、その容器511には、図32に示すレンズ形状のレンズ体510と同様に、透明な分散媒520と磁性を有する透明なナノ粒子530とが封入されている。
【0173】
また、容器551の、光通過領域550aを取り巻く位置には、図32に示すレンズ状のレンズ体510と同様に、ナノ粒子530を磁気泳動させる磁場を発生するコイル540が配置されている。
【0174】
コイル540で磁場が発生していない状態では、図34のパート(a)に示すように、分散媒520内にはナノ粒子530が一様に分散されており、レンズ体550の屈折率は、分散媒520の屈折率と、その分散媒520内に一様に分散されたナノ粒子530の量(個数)により定まる屈折率とからなる、比較的大きな屈折率となっている。
【0175】
ここで、コイル540に電流が印加されると、コイル540では磁場が発生し、図34のパート(b)に示すように、磁性を有するナノ粒子530がコイル540の磁場に引き寄せられる。このため、レンズ体550の屈折率は、分散媒520の屈折率のみにより定まる比較的小さな屈折率となる。尚、コイル540への電流の印加を中止すると、再び図34のパート(a)に示す状態に落ち着く。
【0176】
このように、磁気泳動タイプの光学素子においても、焦点距離が可変な屈折率可変板を形成することができる。
【0177】
尚、微小な複数のコイルをストライプ状に配置することで、図18に示す陽極181の電場パターンと同様の磁場パターンを形成することができ、大きさの異なる複数のコイルを同心円上に配置することで、図18に示す陽極201の電場パターンと同様の磁場パターンを形成することができ、微小なコイルをマトリクス状に配置することによって、図19に示す電極210の電場パターンと同様の磁場パターンを形成することができる。
【0178】
また、上記では、本発明にいう磁場発生器の一例として、電流の印加を受けて磁場を発生するコイルが示されているが、本発明にいう磁場発生器は、自力で磁場を発生する永久磁石であってもよい。この場合、分散質の磁気泳動は、永久磁石自体の移動によって実現される。
【0179】
ここで、上記では、本発明の概念を実現するための基本的な実施形態について説明したが、本発明に採用するレンズ体である光学素子を実用するにあたっては、光路上にゴミや水滴などが付着してレンズ性能が劣化してしまう不具合を防止するための工夫を施すことが好ましい。
【0180】
例えば、液体が収容された容器の光路と交わる外面(以下では、この面を光透過面と称する)に撥水性膜を付設することが好ましい。光透過面に撥水性を付与することによって、ゴミや水滴の付着などが防止され、光学素子の高い光透過性を維持することができる。この撥水性膜を構成する材料としては、シリコーン樹脂、オルガノポリシロキサンのブロック共重合体、フッ素系ポリマー、およびポリテトラフルオロエタンなどが好ましい。
【0181】
また、レンズ体を構成する容器の光透過面に、親水性膜を付設することも好ましい。光透過面に親水撥油性を付与することによっても、ゴミの付着を防止することができる。この親水性膜としては、アクリレート系ポリマーで構成されたものや、非イオン性オルガノシリコーン系界面活性剤などといった界面活性剤を塗布したものなどが好ましく、親水性膜の作製方法としては、シラン系モノマーのプラズマ重合や、イオンビーム処理などを適用することができる。
【0182】
また、レンズ体を構成する容器の光透過面に、酸化チタンなどといった光触媒を付設することも好ましい。光と反応した光触媒によって汚れなどが分解され、光透過面をきれいに保つことができる。
【0183】
また、レンズ体を構成する容器の光透過面に、帯電防止膜を付設することも好ましい。容器の光透過面に静電気が溜まったり、電極によって帯電してしまうと、光透過面にゴミや埃がくっついてしまう恐れがある。光透過面に帯電防止膜を付設することによって、このような不要物の付着を防止し、レンズ体の光透過性を維持することができる。この帯電防止膜は、ポリマーアロイ系の材料で構成されていることが好ましく、このポリマーアロイ系が、ポリエーテル系や、ポリエーテルエステルアミド系や、カチオン性基を有するものや、レオミックス(商品名、第一工業製薬株式会社)であることが特に好ましい。また、この帯電防止膜が、ミスト法によって作製されたものであることが好ましい。
【0184】
また、レンズ体を構成する容器に、防汚性素材を適用しても良い。防汚性素材としてはフッ素樹脂が好ましいが、具体的には、含フッ素アルキルアルコキシシラン化合物や、含フッ素アルキル基含有ポリマー、オリゴマー等が好ましく、上記硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有するものが特に好ましい。また、防汚性素材の添加量は、防汚性を発現する必要最低量であることが好ましい。
【0185】
続いて、上述した各種光学ユニットが内蔵されたデジタルカメラについて説明する。
【0186】
図35は、本発明の第1の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラの外観図である。
【0187】
図35のパート(a)には、本発明の第1の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラ600の、ズームレンズを内蔵するレンズ鏡胴610の沈胴状態が示されており、図35のパート(b)には、デジタルカメラ600の、レンズ鏡胴610の繰出し状態が示されている。また、図35のパート(c)には、デジタルカメラ600の背面が示されている。
【0188】
図35に示すデジタルカメラ600のレンズ鏡胴610には、光軸方向前方から順に、前群レンズ、後群レンズ、およびフォーカスレンズの3群で構成されてなる撮影レンズが内蔵されている。ここで、フォーカスレンズには、図1に示すレンズ体2を有する可変焦点レンズ1が用いられている。即ち、この撮影レンズでは、ピント調節にあたり、フォーカスレンズが移動することなくピント調節が行なわれる構成となっている。
【0189】
また、このデジタルカメラ600は、後述するが、沈胴時に、後群レンズを撮影光軸上から退避させることで薄型化が実現されてなるカメラである。
【0190】
図35に示すデジタルカメラ600の正面上部には、補助光発光部612およびファインダ対物窓613aが配置されている。また、このデジタルカメラ600の上面には、シャッタボタン614が配置されており、このシャッタボタン614は、半押しと全押しとの2段階になっており、半押しによって上述のピント調節が行なわれ、全押しによって撮影が行なわれる。
【0191】
このデジタルカメラ600の背面には、電源スイッチ615、ファインダ接眼窓613b、画像モニタ620、設定表示ボタン616、記録指示ボタン617、画像表示オンオフボタン620a、十字キー619、ズーム操作切替ボタン618が備えられており、ズーム操作切替ボタン618を所定時間押下し続けることでズーム操作モードに入ると、十字キー619の‘上’を指し示すマークを押し続けている間、レンズ鏡胴610が望遠側(テレ側)に移動し、十字キー619の‘下’を指し示すマークを押し続けている間、レンズ鏡胴610が広角側(ワイド側)に移動する。ズーム操作モードの解除は、再び、ズーム操作切替ボタン618を所定時間押下し続けることで行なわれる。
【0192】
画像表示オンオフボタン620aは、画像モニタ620に画像表示を行なうか否かを指示するボタンであり、デジタルカメラ600では、例えこの画像表示オンオフボタン620aがオフにされていても、撮影によって得られた画像は画像モニタ620に表示されるようになっている。尚、画像モニタ620がオフ時の撮影は、ファインダ接眼窓613bから被写体を確認して行なわれる。
【0193】
設定表示ボタン616は、現在設定されているシャッタスピードや感度などの値などを表示する際に操作するボタンである。記録指示ボタン617は、撮影した画像をメモリに記録する際に操作するボタンである。
【0194】
ファインダ接眼窓613bは、前面側のファインダ対物窓613aと共に光学式ファインダを形成している。
【0195】
電源スイッチ615は、このデジタルカメラ600を起動させるために操作するスイッチである。このデジタルカメラ600では、メモリなどに記録されている画像を画像モニタ620に表示するためのモードである再生モードを指定するためのポジション「再生」、沈胴撮影を指定するためのポジション「沈胴」、ムービーモードを含む通常の写真撮影を指定するためのポジション「通常」が備えられており、電源をオフするためのポジション「OFF」を含めて電源スイッチ615がスライド可能となっている。尚、図35(c)には、電源スイッチ615がポジション「沈胴」に合わせられている様子が示されている。
【0196】
図36は、図35に示すデジタルカメラの回路構成を示すブロック図、図37は、図36に示す撮影レンズ、シャッタユニット、撮像素子、および駆動回路の配置構成を示す図である。
【0197】
図36に示すデジタルカメラ600には、前述したレンズ鏡胴610に内蔵された撮影レンズ601、シャッタユニット621、および撮像素子(CCD)622が備えられている。撮影レンズ601には、図37に示す前群レンズ601a、後群レンズ601b、およびフォーカスレンズ601cが備えられており、一方駆動回路625には、後群レンズ601bを駆動するためのズームモータ625a、シャッタユニット621を駆動するためのシャッタモータ625c、およびそれらズームモータ625a,シャッタモータ625cに電圧を印加するためのモータドライバ625bが備えられている。また、駆動回路625には、フォーカスレンズ601cに印加する電圧を制御することにより焦点距離を3段階に変化させてピント調節を行なうピント調節部625dと、撮像素子622を駆動するための撮像素子駆動部625eが備えられている。
【0198】
このデジタルカメラ600では、電源スイッチ615によって「通常」が選択された場合には、レンズ鏡胴610は、画角が所定の広角側となるまで繰り出される。一方、電源スイッチ615によって「沈胴」が選択されて沈胴時撮影が選択された場合には、レンズ鏡胴610の繰り出しは行なわれずに前群レンズとフォーカスレンズとにより形成されている固定焦点による撮影が可能となる。
【0199】
撮影レンズ601およびシャッタユニット621を経由して撮像素子622上に結像された被写体像は、撮像素子622により、アナログの画像信号に変換される。ここで、シャッタユニット621は、撮像素子622からアナログ信号を読み出すにあたり、光によるスミアの発生を抑えるためのものである。
【0200】
また、デジタルカメラ600には、前述した補助光発光部612が備えられており、この補助光発光部612は、必要に応じて補助光を発光する。デジタルカメラ600に備えられたファインダ対物窓613aおよびファインダ接眼窓613bを備えたファインダは、前述したように光学式ファインダであり、電源スイッチ615によって「通常」が選択されている場合には、駆動回路625によって焦点距離調節およびピント調節と連動した制御がファインダに対して行なわれる。一方、電源スイッチ615によって「沈胴」が選択されて沈胴時撮影が選択された場合には前述したように固定焦点で、かつカメラから1m〜2m間の距離にピントが合うようなピント調節に応じた制御がファインダに対して行なわれるようになっている。
【0201】
また、このデジタルカメラ600には、アナログ信号処理部623と、A/D部626と、デジタル信号処理部627と、テンポラリメモリ628と、圧縮伸長部629と、内蔵メモリ(またはメモリカード)630と、画像モニタ620(図35参照)と、駆動回路625とが備えられている。撮像素子622は、駆動回路625内のタイミング発生回路(図示せず)によって発生したタイミングで駆動され、アナログの画像信号を出力する。また、駆動回路625には、撮影レンズ601、シャッタユニット621、補助光発光部612等を駆動する駆動部も含まれており、この駆動回路625では、電源スイッチ615によって「通常」が選択されている場合には、前述したフォーカスレンズ(第3群)のピント調整はコントラストに応じて行われるが、電源スイッチ615によって「沈胴」が選択されて沈胴時撮影が選択された場合には、フォーカスレンズ(第3群)はカメラから1m〜2m間の距離にピントが合うように屈折力が制御される。撮像素子622から出力されたアナログの画像信号は、アナログ信号処理部623でアナログ信号処理され、A/D部626でA/D変換されてデジタル信号処理部627でデジタル信号処理される。デジタル信号処理された信号を表わすデータはテンポラリメモリ628に一時的に格納される。テンポラリメモリ628に格納されたデータは、圧縮伸長部629で圧縮されて内蔵メモリ(またはメモリカード)630に記録される。尚、撮影モードによっては、圧縮の過程を省いて内蔵メモリ630に直接記録してもよい。テンポラリメモリ628に格納されたデータは画像モニタ620に読み出され、これにより画像モニタ620に被写体の画像が表示される。
【0202】
さらに、このデジタルカメラ600には、このデジタルカメラ600全体の制御を行なうCPU624と、ズーム操作スイッチ等を含む操作スイッチ群631と、シャッタボタン614とが備えられており、操作スイッチ群631を操作して、所望の画角に設定することを含む所望の撮影状態に設定してシャッタボタン614を押下することにより写真撮影が行なわれる。
【0203】
図38は、図35に示すデジタルカメラの、ワイド側に繰り出された状態にあるレンズ鏡胴を光軸に沿って切断した断面図に主要部品を示した模式図、図39は、図35に示すデジタルカメラの、テレ側に繰り出された状態にあるレンズ鏡胴を光軸に沿って切断した断面図に主要部品を示した模式図、図40は、図35に示すデジタルカメラの、沈胴状態にあるレンズ鏡胴を光軸に沿って切断した断面図に主要部品を示した模式図である。
【0204】
図38に示すレンズ鏡胴610の内部空間610aには、光軸方向前方から順に、前群レンズ(第1レンズ群)601a、後群レンズ(第2レンズ群)601b、およびフォーカスレンズ(第3レンズ群)601cの3群からなる撮影レンズ601が収容されている。ここで、フォーカスレンズ601cには、図1に示すレンズ体2を有する可変焦点レンズが用いられている。フォーカスレンズ601cは、分散媒と、ナノ粒子の、電気泳動により光通過領域に移動した量とにより定まる正の屈折率に応じた、3段階に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズであるため、従来の、フォーカスレンズを光軸方向に移動することによりピント調節を行なう技術と比較し、モータ等の駆動機構は不要である。従って、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性の高められた撮影レンズ601が実現されている。
【0205】
レンズ鏡胴610の内部空間610aの前端には、撮影レンズ601が覗く開口602が形成されており、また後方は、カメラボディに固定された、あるいはカメラボディの一部を構成する壁部材603が配置され、内部空間610aは、その壁部材603、および、図示しない複数の筒体によりその輪郭が画定されている。
【0206】
また、これら複数の筒体のうち外径が最小で、繰り出し時には光軸上最も前方に配置される前群枠680の内側に前群レンズ601aが保持されている。この前群枠680の内径よりも前群レンズ601aの外径が小さいことにより、その前群レンズ601aの脇には、その前群レンズ601aと前群枠680との間に空間が形成されている。ここで、以降の説明では、この前群レンズ601aと前群枠680との間の空間を前群レンズ脇606と称する。
【0207】
壁部材603には、撮像素子(CCD)622が内部空間610aに突出した状態に取り付けられている。この撮像素子622が内部空間610aに突出した位置に配備されていることにより、その撮像素子622の脇には、その撮像素子622と壁部材603とで区画された窪み部分604が形成されている。
【0208】
また、壁部材603には、固定筒640が固定されており、その固定筒640の内側には回転筒650が備えられている。この回転筒650は、図示しない柱状ギアを介して鏡胴駆動モータにより回転駆動され、これにより、その回転筒650が回動する。また、固定筒640の内壁には、カム溝641が形成されており、回転筒650に固定されたカムピン652がそのカム溝641に嵌入しており、したがって、この回転筒650は、柱状ギアを介して回転駆動力を受けると、回転しながら光軸方向に前進あるいは後退する。
【0209】
また、この回転筒650の内側には、回転筒側直進キーリング654が、回転筒650に対し回転自在に、ただし回転筒650に対する光軸方向への相対移動不能に備えられている。さらに、その回転筒側直進キーリング654には、キー板655が固定され、そのキー板655が、固定筒640の内壁に形成された、光軸方向に延びるキー溝642に嵌入し、これにより、その回転筒側直進キーリング654は、固定筒640には光軸方向への移動は自在に回り止めされている。したがって、回転筒650が回転しながら光軸方向に移動すると、回転筒側直進キーリング654は、固定筒640に対し回り止めされていることから回転せずに、ただし光軸方向へは回転筒650とともに移動する。
【0210】
また、回転筒650の内側には、回動自在な中間筒660が備えられている。回転筒650の内壁には、図37の下側に示すカム溝656が形成されており、さらに、回転筒側直進キーリング654にもその外周と内周とに貫通したカム溝657が形成されており、回転筒650のカム溝656には、中間筒660に設けられたカムピン661が、回転筒側直進キーリング654のカム溝657を貫通して嵌入している。したがって、回転筒650が回転しながら光軸方向に移動すると、中間筒660も、回転筒650と回転筒側直進キーリング654のカム溝の形状に従って回転しながら、回転筒650に対しさらに相対的に光軸方向に移動する。
【0211】
この中間筒660の内側には、中間筒側直進キーリング664が配備されている。先に説明した固定筒側直進キーリング654には直進キー溝658が形成されており、中間筒側直進キーリング664は固定筒側直進キーリング654の直進キー溝658に嵌入している。この中間筒側直進キーリング664は、中間筒660に対し相対回転自在であり、一方、その中間筒660に対する光軸方向への相対移動は禁止されている。したがって、中間筒660が回転しながら回転筒650に対し相対的に光軸方向に移動すると、中間筒側直進キーリング664は、回転せずに、中間筒660の光軸方向への移動に伴って光軸方向に直進移動する。
【0212】
この中間筒660の内壁には、後群ガイド枠670を案内するためのカム溝665が形成されており、このカム溝665には、後群ガイド枠670に固設されたカムピン671が、中間筒側直進キーリング664に対し回り止めされた状態で嵌入している。したがって、中間筒660が回転すると、後群レンズガイド枠670は、中間筒660内壁のカム溝665の形状に応じて光軸方向に直進移動する。
【0213】
後群レンズガイド枠670には、シャッタユニット621が備えられた、後群レンズ601bを保持する後群レンズ保持枠672が回転軸673により、この後群レンズガイド枠670に対し回動自在に軸支されている。この後群レンズ保持枠672は、電源スイッチ615によって「OFF」が選択された時には、図40に示すように、後群レンズ601bおよびシャッタユニット621とともに撮像素子622脇の窪み部分604に退避し、電源スイッチ615によって「通常」が選択された時には、使用状況に応じて図38,図39に示すように、後群レンズ601b等とともに光軸上に進出する。この後群レンズ601bの前面に位置するシャッタユニット621には、撮影レンズ601を通過する被写体光の光量を制御する絞り部材と、シャッタ速度を制御することにより撮影レンズ601を通過する被写体光の光量を制御するシャッタ部材との双方が備えられており、これらは、PLZT素子を用いて光量を制御する方式のものである。この後群レンズ保持枠672の回動範囲はその後群レンズ保持枠672に保持された後群レンズ601bが、撮影レンズ601の光軸上に進出した繰出し位置(図38,図39参照)と、撮像素子622脇の窪み部分604に入り込む退避位置(図40参照)との間で旋回する範囲である。また、回転軸673のまわりにはコイルバネ674が備えられており、後群レンズ保持枠672は、そのコイルバネ674により、後群レンズ601bが撮影レンズ601の光軸上に旋回する方向にバネ付勢されるとともに、光軸方向にも付勢されている。
【0214】
中間筒660には、前群レンズ601aを保持した前群枠680を案内するためのもう1つのカム溝666が形成されており、このカム溝666には前群枠680に設けられたカムピン681が入り込んでいる。また、この前群枠680は、中間筒側直進キーリング664に、光軸方向への移動が自在に回わり止めされている。したがって、中間筒660が回転すると、前群枠680は、カム溝666の形状に応じて、その中間筒660に対し光軸方向に直進移動する。
【0215】
このような機構により、図38や図39の繰出し状態にあるときに電源スイッチ615によって「OFF」が選択された時には、柱状ギアを介して回転筒650に沈胴方向への回転駆動力が伝達され、図40の状態にまで沈胴し、逆に、図40に示す沈胴状態にあるときに電源スイッチ615によって「通常」が選択されて回転筒650に繰出し方向への回転駆動力が伝達されると、図40に示す沈胴状態から図38,図39に示す繰出し状態となる。
【0216】
電源スイッチ615によって「通常」が選択されて撮影が行なわれる際は、前述したズーム操作スイッチを操作して後群レンズ601bを光軸方向に移動させることによりテレ端からワイド端との間で焦点距離を調節して、所望の撮影画角に設定する。フォーカスレンズ601cは、光軸方向に移動されることもなく、撮像素子622で得られた画像信号に基づくコントラスト検知により最高のコントラストが得られるように、可変焦点レンズとしての屈折を制御することによりピント調節を行なう。その後、シャッタボタン614が押されると、撮像素子(CCD)622によりそのときの被写体を表わす画像信号が生成され、適切な画像処理が施された後、記録される。
【0217】
図41は、本発明の第2の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラにおいて、撮影レンズを構成する後群レンズとして用いられた可変焦点レンズが有するレンズ体における結像位置を示した図である。
【0218】
尚、本発明の第2の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラの外観は、前述したデジタルカメラ600と同じであるため、図示省略する。
【0219】
本発明の第2の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラに備えられた撮影レンズを構成する後群レンズには、レンズ体700(例えば、図15に示すレンズ体8)を有する可変焦点レンズが用いられている。このレンズ体700は、光の屈折が小さくなるように制御された場合は低屈折率時の結像位置(長焦点)となり、光の屈折が大きくなるように制御された場合は高屈折率時の結像位置(短焦点)となる。撮影レンズを構成する後群レンズに、このようなレンズ体8を有する可変焦点レンズを備えると、分散媒と、ナノ粒子の、電気泳動により光通過領域に移動した量とにより定まる正の屈折率に応じた、テレ端とワイド端との間で焦点距離を調整することができる。このため、後群レンズをテレ端とワイド端との間で光軸方向に移動することにより焦点距離を変化させる技術と比較し、モータ等の駆動機構が不要になる。
【0220】
図42は、本発明の一実施形態の光学式ファインダの断面形状を示す図である。
【0221】
図42に示す光学式ファインダ800には、対物レンズ801と、凸状のレンズ802と、像正立用プリズム803と、屈折率可変な視度補正用の補正板804と、像正立用プリズム805と、接眼レンズ(レンズ体)700とが備えられている。対物レンズ801,凸状のレンズ802を経由した倒立左右の逆像は、像正立用プリズム803,805で正立左右の正像に変更されるとともに補正板804で視度補正されて、レンズ体700に入射される。
【0222】
ここで、操作者が近視の場合には、その操作者の操作に応じて、図42のパート(a)に示すように、補正板804で所定の出射角α1に広げられるように制御される。また、近視でも遠視でもない操作者の場合には、図42のパート(b)に示すように、補正板804で上記出射角α1よりも小さな出射角α2に制御される。さらに、使用者が遠視の場合には、図42のパート(c)に示すように、補正板804で上記出射角α2よりもさらに小さな出射角α3に制御される。このように、本実施形態の光学式ファインダ800は、屈折率可変な補正板804を、視度補正レンズとして用いたものであるため、従来の、視度補正のために、接眼レンズを繰出す機構を備えたり接眼部に補助レンズを付加したりする光学式ファインダと比較し、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性を高めることができる。
【0223】
図43は、本発明の第3の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラの撮影ズームレンズを構成するレンズの収差を補正するための可変焦点レンズを拡大して示す図である。
【0224】
尚、本発明の第3の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラの外観は、前述したデジタルカメラ600と同じであるため、図示省略する。
【0225】
図43に示すズームレンズ900には、光軸方向前方から順に、レンズ911,912からなる第1レンズ群910、レンズ921,922,923からなる第2レンズ群920、およびレンズ931からなる第3レンズ群930が備えられている。
【0226】
ここで、第2レンズ群920を構成するレンズ922に代えてレンズ体901を配置するとともに、第1,第2,第3のレンズ群910,920,930に備えられたレンズの収差を補正するためのデータからなる収差補正用テーブルを用意しておき、この可変焦点レンズが有する電極に、収差補正用テーブルのデータに応じた電圧を印加してナノ粒子の分布を制御することにより、それらレンズの収差を補正してもよい。本実施形態では、このようなレンズ体901を有する可変焦点レンズを用いた撮影レンズが備えられているため、その撮影レンズ特有の収差に見合った収差補正を自在に行なうことができる。
【0227】
また、例えば8段階に焦点距離を変化させることができる可変焦点レンズをデジタルカメラに備えて、自動焦点調節(AF調節)を好適に行なうことができる。
【0228】
図44は、8段階に焦点距離を変化させることができる可変焦点レンズでAF調節が行なわれる様子を説明するための図である。
【0229】
フォーカスレンズとして、分散媒と、ナノ粒子の、電気泳動により光通過領域に移動した量とにより定まる正の屈折率に応じた、8段階に変化する焦点距離を持つ焦点距離可変なレンズ体を有する可変焦点レンズを用いて、以下に説明するようにして、いわゆる「山登り方式」のAF調節を行なうことができる。
【0230】
図44の横軸は被写体距離を示し、縦軸はコントラストを示す。また、図44の横軸には、被写体距離の遠距離から近距離に対応して、可変焦点レンズを構成するレンズ体の屈折率P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8が示されている。ここで、屈折率P1が一番小さく、以下、屈折率P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8の順に大きくなっている。
【0231】
ここでは、レンズ体の屈折率を変化させることによりコントラストの増減方向をチェックしながら、コントラストの最大点を求め、その最大点に焦点を合わせるべき被写体が存在するとして合焦点位置を求める。このように、8段階に変化する焦点距離を持つ可変焦点レンズを用いてAFサーチを行なって合焦点を求めてピント調節することにより、従来の、フォーカスレンズを光軸方向に移動することによりピント調節を行なう技術と比較し、モータ等の駆動機構は不要である。従って、構成が簡素化されて小型化が図られるとともに耐衝撃性の高められた撮影レンズが実現されることとなる。
【0232】
ここで、上記では、本発明の撮影装置の一実施形態がデジタルカメラに適用される例について説明したが、本発明の撮影装置は、銀塩カメラや、携帯電話などに適用されても良い。
【0233】
また、上記では、レンズ形状や板形状を有する光学素子を備えた光学ユニットの例について説明したが、本発明にいう光学素子は、例えば、プリズム形状を有するものであってもよい。
【0234】
また、上記では、本発明にいう撮影装置および光学式ファインダに、電気泳動タイプでレンズ形状を有する光学ユニットを適用する例について説明したが、本発明にいう撮影装置および光学式ファインダは、例えば、電気泳動タイプで板形状を有する光学式ファインダや、磁気泳動タイプの光学式ファインダなどが適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】本発明の一実施形態の可変焦点レンズの断面形状を示す図である。
【図2】レンズ体の動作原理を説明するための図である。
【図3】ナノ粒子を含む媒質を有するレンズの曲率および厚さを示す図である。
【図4】屈折率が1.48,1.644,1.726と変化した場合の可変焦点レンズのバックフォーカスを示す図である。
【図5】通常のガラスと組み合わせたレンズの曲率および厚さを示す図である。
【図6】通常のガラスにナノ粒子を封入したレンズの曲率および厚さを示す図である。
【図7】図1に示す可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【図8】電極の内側の面に絶縁膜がコーティングされたレンズ体の断面形状を示す図である。
【図9】プラスチックで形成された容器を備えたレンズ体の断面形状を示す図である。
【図10】電極の配置の一例を示す図である。
【図11】電極の配置の他の一例を示す図である。
【図12】電極の配置のさらなる他の一例を示す図である。
【図13】負の屈折力を有するレンズ体を備えた可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【図14】非球面レンズ形状を有する容器を有するレンズ体を備えた可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【図15】外に向かって双方が凸のレンズ形状を有する容器を有するレンズ体を備えた可変焦点レンズの動作を説明するための図である。
【図16】電極パターンが工夫された第1のレンズ体の断面形状を示す図である。
【図17】電極パターンが工夫された第2の光学部材の断面形状を示す図である。
【図18】電極パターンが工夫された第3のレンズ体の断面形状を示す図である。
【図19】マトリックス状の電極パターンを有する陽極を示す図である。
【図20】外形が板形状のレンズ体の断面形状を示す図である。
【図21】外形が板形状のレンズ体における結像位置のずれを説明するための図である。
【図22】屈折率可変板の動作を説明するための図である。
【図23】電極の内側の面に絶縁膜がコーティングされたレンズ体の断面形状を示す図である。
【図24】プラスチックで形成された容器を備えたレンズ体の断面形状を示す図である。
【図25】電極パターンが工夫された第1のレンズ体の断面形状を示す図である。
【図26】電極パターンが工夫された第2のレンズ体の断面形状を示す図である。
【図27】電極パターンが工夫された第3のレンズ体の断面形状を示す図である。
【図28】マトリックス状の電極パターンを有する陽極を示す図である。
【図29】電極の配置の一例を示す図である。
【図30】図29に示す陽極とは異なる陽極の配置例を示す図である。
【図31】図29,図30に示す陽極とは異なる陽極の配置例を示す図である。
【図32】分散質を磁気泳動させて光の屈折を変化させる可変焦点レンズにおける、レンズ体の断面形状を示す図である。
【図33】図32に示すレンズ体510の概略構成図である。
【図34】分散質を磁気泳動させて光の屈折を変化させる屈折率可変板における、レンズ体の断面形状を示す図である。
【図35】本発明の第1の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラの外観図である。
【図36】デジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図37】撮影レンズ、シャッタユニット、撮像素子、および駆動回路の配置構成を示す図である。
【図38】デジタルカメラの、ワイド側に繰り出された状態にあるレンズ鏡胴を光軸に沿って切断した断面図に主要部品を示した模式図である。
【図39】デジタルカメラの、テレ側に繰り出された状態にあるレンズ鏡胴を光軸に沿って切断した断面図に主要部品を示した模式図である。
【図40】デジタルカメラの、沈胴状態にあるレンズ鏡胴を光軸方向から見て主要部品を示した模式図である。
【図41】本発明の第2の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラにおいて、撮影レンズを構成する後群レンズとして用いられた可変焦点レンズが有するレンズ体における結像位置を示した図である。
【図42】本発明の一実施形態の光学式ファインダの断面形状を示す図である。
【図43】本発明の第3の撮影装置の一実施形態であるデジタルカメラの撮影ズームレンズを構成するレンズの収差を補正するための可変焦点レンズを拡大して示す図である。
【図44】8段階に焦点距離を変化させることができる可変焦点レンズでAF調節が行なわれる様子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0236】
1 可変焦点レンズ
1_141,1_142,1_151,1_152,151,152,210 電極
1_143,14 陰極
1_153,15,181,182,191,201 陽極
2,6,7,8,10,180,200,501 レンズ体
3 焦点距離可変部
10a 光通過領域
11,31,41,51 容器
12 分散媒
13 分散質
13a,13b ナノ粒子
153 絶縁膜
152a 電極部
181a,182a,191a,201a 電極パターン
211,212 電極パターン部
600 デジタルカメラ
601 撮影レンズ
601a 前群レンズ
601b 後群レンズ
601c フォーカスレンズ
602 開口
603 壁部材
604 窪み部分
606 前群レンズ脇
610 レンズ鏡胴
610a 内部空間
612 補助光発光部
613a ファインダ対物窓
613b ファインダ接眼窓
614 シャッタボタン
615 電源スイッチ
616 設定表示ボタン
617 記録表示ボタン
618 ズーム操作切替ボタン
619 十字キー
620 画像モニタ
620a 画像表示ボタン
621 シャッタユニット
622 撮像素子(CCD)
623 アナログ信号処理部
624 CPU
625 駆動回路
625a ズームモータ
625b モータドライバ
625c シャッタモータ
625d ピント調節部
625e 撮像素子駆動部
626 A/D(アナログ/デジタル)部
627 デジタル信号処理部
628 テンポラリメモリ
629 圧縮伸長部
630 内蔵メモリ(またはメモリカード)
631 操作スイッチ部
640 固定筒
641 カム溝
642 キー溝
650 回転筒
652 カムピン
654 固定筒側直進キーリング
655 キー板
656 カム溝
657 カム溝
658 直進キー溝
660 中間筒
661 カムピン
664 中間筒側直進キーリング
665、666 カム溝
670 後群レンズガイド枠
671 カムピン
672 後群レンズ保持枠
673 回転軸
674 コイルバネ
680 前群レンズ枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光通過領域が光透過性を有する容器と、
前記容器内に封入された光透過性の分散媒と、
前記分散媒内に分散した、光透過性であって該分散媒の屈折率とは異なる屈折率を有する分散質と、
前記分散媒内に分散した分散質を電磁気力で泳動させることにより、前記光通過領域の焦点距離を変化させる電磁場発生器とを有する光学素子、および
前記電磁場発生器で発生される電磁場を制御することにより前記光通過領域の焦点距離を少なくとも3段階以上に変化させる焦点距離可変部を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記電磁場発生器は、電圧の印加を受けて前記分散質を電気泳動させる電極であり、
前記焦点距離可変部は、前記電極に印加する電圧を制御するものであることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記分散質が、酸化チタンからなることを特徴とする請求項2記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記分散質が、アルミナからなることを特徴とする請求項2記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記分散媒が、有機分散媒であることを特徴とする請求項2記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記分散媒が、炭化水素系有機分散媒であることを特徴とする請求項5記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記電極は、内側の面に絶縁膜がコーティングされ、該絶縁膜が前記分散媒に接して配置されていることを特徴とする請求項2記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記絶縁膜が、ポリイミド絶縁膜であることを特徴とする請求項7記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記分散質が、磁性を有するものであり、
前記電磁場発生器は、前記分散質を磁気泳動させる磁場発生器であり、
前記焦点距離可変部は、前記磁場発生器で発生される磁場を制御するものであることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項10】
前記分散質が、酸化チタンコバルトからなることを特徴とする請求項9記載の光学ユニット。
【請求項11】
前記分散質が、ナノ粒子からなることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項12】
前記分散質が、5nm〜100nmの粒径を有するナノ粒子であることを特徴とする請求項11記載の光学ユニット。
【請求項13】
前記分散媒が、水であることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項14】
前記容器がレンズ形状を有するものであることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項15】
前記容器の、少なくとも前記光通過領域が、正の屈折力を有するレンズ形状を有する容器であることを特徴とする請求項14記載の光学ユニット。
【請求項16】
前記容器の、少なくとも前記光通過領域が、負の屈折力を有するレンズ形状を有する容器であることを特徴とする請求項14記載の光学ユニット。
【請求項17】
前記容器の、少なくとも前記光通過領域が、非球面レンズ形状を有する容器であることを特徴とする請求項14記載の光学ユニット。
【請求項18】
前記容器が板形状を有するものであることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項19】
請求項1記載の光学ユニットをピント調整レンズとして用いた撮影レンズを備え、該撮影レンズを経由して入射してきた被写体光を捉えて撮影を行なうことにより画像信号を生成することを特徴とする撮影装置。
【請求項20】
前記ピント調整レンズでピントを変化させて被写体像のコントラストの変化を検知することにより該撮影レンズの合焦位置を検出するピント検出部を備えたことを特徴とする請求項19記載の撮影装置。
【請求項21】
請求項1記載の光学ユニットによって焦点距離を変化させる撮影レンズを備え、該撮影レンズを経由して入射してきた被写体光を捉えて撮影を行なうことにより画像信号を生成することを特徴とする撮影装置。
【請求項22】
請求項1記載の光学ユニットを収差補正レンズとして用いた撮影レンズを備え、該撮影レンズを経由して入射してきた被写体光を捉えて撮影を行なうことにより画像信号を生成することを特徴とする撮影装置。
【請求項23】
請求項1記載の光学ユニットを視度補正レンズとして用いたことを特徴とする光学式ファインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2006−285185(P2006−285185A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238433(P2005−238433)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】