説明

光学式エンコーダおよびこれを備えた装置

【課題】光学式エンコーダにおいて、スケールと受光部とが周期パターンの周期方向に直交する方向に相対変位しても、良好な精度で位置検出を行えるようにする。
【解決手段】エンコーダは、光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケール2と、該スケールとの第1の方向での相対移動が可能であり、光源1から射出されて光学部を介した検出光を光電変換して第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部3とを有する。光学部は、第2の方向にて隣り合う複数の部分e〜hが互いに第1の方向にシフトしたパターン形状を、第2の方向に第2の周期tで有する。光源の第2の方向での幅wが、w=(a+b)/b・ntなる条件を満足する。nは自然数であり、光源から周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部までの距離との比をa:bとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケールに形成された周期パターンを光学的に読み取って、該周期パターンに応じた信号を出力する光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式エンコーダは、周期パターンが形成されたスケールと、該スケールとの相対移動が可能なセンサとを有する。センサ(受光部)は、光源から射出されて周期パターンの光学部(光を反射または透過する部分)を介した検出光を光電変換して、周期パターンに応じた変化周期を有する信号(以下、周期信号という)を出力する。この周期信号を用いてスケールおよびセンサの相対移動量(相対位置)を検出したり、スケールおよびセンサのうち一方の絶対位置を検出したりすることができる。さらに、周期信号を内挿することにより、周期パターンの周期よりも細かい分解能で位置検出を行うことができる。
【0003】
ただし、周期信号には、周期パターンの周期の整数倍の周期成分である高次成分も含まれており、内挿数を増やした場合に高次成分による誤差が無視できなくなる。特許文献1には、周期信号に含まれる高次成分を抑制する光学式エンコーダが開示されている。このエンコーダでは、基準パターンと該基準パターンに対して位相が1/6ずれたパターンとが周期パターンの周期に沿った方向(以下、周期方向という)に直交する方向に隣接して設けられている。そして、該2つのパターンからの透過光を受光部で合わせて受光することで3次の高次成分を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−048122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スケールとセンサはそれぞれ、エンコーダが搭載される装置を構成する別々の部材に取り付けられるのが通常であり、これらの部材の機械的なガタによって、スケールとセンサとが周期パターンの周期方向に直交する方向に相対変位する場合がある。特許文献1にて開示されたエンコーダでは、スケールと受光部とが周期方向に直交する方向に相対変位すると、スケール上での受光部による検出範囲内での2つのパターンの割合が変化する。その結果、周期信号の基本波の位相が変化したり、高次成分の除去効果が低下したりし、良好な精度で位置検出を行うことができなくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、スケールとセンサ(受光部)とが周期パターンの周期方向に直交する方向に相対変位しても、良好な精度で位置検出を行えるようにした光学式エンコーダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての光学式エンコーダは、光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、該スケールとの第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて光学部を介した検出光を光電変換して第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有する。周期パターンにおける第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、光学部は、第2の方向にて隣り合う複数の部分が互いに第1の方向にシフトしたパターン形状を、第2の方向に第2の周期tで有している。そして、光源の前記第2の方向での幅wが以下の条件を満足することを特徴とする光学式エンコーダ。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、光源から周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部までの距離との比をa:bとする。
【0008】
また、本発明の他の一側面としての光学式エンコーダは、光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、該スケールとの第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて光学部を介した検出光を光電変換して第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有する。周期パターンにおける第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、周期パターンにおける第2の方向での光学部と該光学部ではない部分との割合が第1の方向において変化し、かつ周期パターンは、光学部および光学部ではない部分からなるパターンを第2の方向に第2の周期tで有している。そして、光源の第2の方向での幅wが以下の条件を満足することを特徴とする。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、光源から周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部までの距離との比をa:bとする。
【0009】
本発明の他の一側面としての光学式エンコーダは、光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、該スケールとの第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて光学部を介した検出光を光電変換して第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有する。周期パターンにおける第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、第1の方向における光学部と非光学部との割合(デューティ比)が第2の方向において変化し、かつ周期パターンは、光学部と光学部ではない部分からなるパターンを第2の方向に第2の周期tで有している。そして、光源の第2の方向での幅wが以下の条件を満足することを特徴とする。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、光源から周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部までの距離との比をa:bとする。
【0010】
本発明の他の一側面としての光学式エンコーダは、光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、該スケールとの第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて光学部を介した検出光を光電変換して第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有する。周期パターンにおける第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、光学部と該光学部ではない部分からなるパターンを第2の方向に第2の周期tで有する。そして、光源の第2の方向での幅wが以下の条件を満足することを特徴とする。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、光源から周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部までの距離との比をa:bとする。
【0011】
本発明の他の一側面としての光学式エンコーダは、光を反射または透過する光学部が第1の方向に互いに異なる周期で形成された複数のパターンが、第1の方向に直交する第2の方向に多重に設けられた多重周期パターンを有するスケールと、該スケールとの第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて光学部を介した検出光を光電変換して、複数のパターンのうち特定のパターンの周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有する。多重周期パターンは、光学部と該光学部ではない部分からなるパターンを第2の方向に第2の周期tで有する。そして、光源の第2の方向での幅wが以下の条件を満足することを特徴とする。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、光源から周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部までの距離との比をa:bとする。
【0012】
なお、上記光学式エンコーダと、該エンコーダを用いて位置が検出される可動部材とを有する装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スケールと受光部とが第2の方向に相対変位しても、受光部から出力される信号の基本波の位相が変化したり高次成分の除去効果が低下したりすること等を抑制でき、精度良く位置検出を行うことが可能な光学式エンコーダを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1である光学式エンコーダの斜視図。
【図2】実施例1における光源の光量分布特性を示す図。
【図3】実施例1においてスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図4】実施例1における受光部の構造を説明する図。
【図5】実施例1における光源、スケールおよび受光部の相対位置関係を示す図。
【図6】実施例1における光源、スケールおよび受光部の相対位置関係を示す図。
【図7】本発明の実施例2である光学式エンコーダのスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図8】本発明の実施例3である光学式エンコーダの斜視図。
【図9】本発明の実施例4である光学式エンコーダのスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図10】本発明の実施例4である光学式エンコーダのスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図11】本発明の実施例5である光学式エンコーダのスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図12】本発明の実施例5である光学式エンコーダのスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図13】本発明の実施例6である光学式エンコーダのスケールに設けられた周期パターンを示す図。
【図14】本発明の実施例7である撮像装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1には、本発明の実施例1である光学式エンコーダの構成を示す。本実施例のエンコーダは、光源1と、スケール2と、受光部3と、信号処理部4とにより構成され、スケール2と受光部3との相対移動量(相対位置)またはスケール2と受光部3のうち一方の絶対位置を検出する反射型光学式リニアエンコーダである。本実施例において、光源1と受光部3は、センサ5に一体的に設けられている。また、本実施例では、リニア型エンコーダについて説明するが、ロータリー型エンコーダも本実施例と同様に構成することができる。
【0017】
スケール2には、詳しくは後述するが、光を反射する光学部(反射部)と該光学部ではない部分である非光学部(非反射部)とを図中の位置検出方向(第1の方向)に交互に有する周期パターンが設けられている。位置検出方向は、周期パターンの周期方向ということもできる。周期パターンに沿った方向のうち位置検出方向に対して直交する方向を、以下の説明ではY方向(第2の方向)という。
【0018】
受光部3は、スケール2との位置検出方向での相対移動が可能である。該受光部3は、光源1から射出されて光学部を介した検出光を光電変換するフォトダイオード等の光電変換素子(受光素子)を有し、周期パターンに応じた変化周期を有する信号(以下、周期信号という)を出力する。
【0019】
光源1は、電流狭窄型LED等の発光素子により構成されており、長方形の発光面を有する。光源1(発光面)は、Y方向に長辺が延びるように配置されており、Y方向の幅はwである。光源1は、位置検出方向での任意の位置におけるY方向での光量分布が、図2に示すようにほぼ矩形となる発光特性を有する。図2に示すような発光特性を有するものであれば、電流狭窄型LED以外の発光素子を光源1として用いることができる。
【0020】
図3には、スケール2に設けられた周期パターンの詳しい形状を示している。図中に黒色で示した部分が光学部であり、ここでは反射部として説明する。また、図中に白色で示した部分が非光学部であり、ここでは非反射部として説明する。
【0021】
周期パターンは、位置検出方向において周期(第1の周期)λで反射部を有する。各反射部は、Y方向にて隣り合う複数(ここでは4つ)の部分e〜hが互いに位置検出方向にシフトしたパターン形状を、Y方向に周期(第2の周期)tで有している。具体的には、周期t内に、位置検出方向での基準部分eと、該基準部分eに対してそれぞれ位置検出方向に反射部の周期λの1/6、4/15および1/10だけずれたシフト部分f,g,hとを含む。そして、各反射部において、この周期tのパターン形状が、Y方向に複数周期分、繰り返し形成されている。言い換えれば、ある周期tのシフト部分hに対して隣の周期tの基準部分eが隣接するように、部分e〜hが循環的に設けられている。
【0022】
このようなY方向でのパターンは、主として、受光部3から出力される周期信号における高次成分の抑制を目的として設けられている。図3に示したパターンでは、基準部分eとシフト部分fとのずれ量(シフト量)は周期λの1/6であり、またシフト部分gとシフト部分hとのずれ量も周期λの1/6であるため、3次の高次成分を抑制することができる。また、基準部分eとシフト部分hとのずれ量は周期λの1/10であり、シフト部分fとシフト部分gとのずれ量も周期λの1/10であるため、5次の高次成分も抑制することができる。
【0023】
受光部3は、図4に示すように、Y方向に幅vを、位置検出方向に幅λ/2をそれぞれ有する長方形のフォトダイオード(PD)が位置検出方向に4つ並んだ構成を持つ。各PDは、該PD上に照射された検出光の光量の総和を電気信号に変換する。本実施例において、光源1からスケール2上の周期パターンまでの距離と周期パターンから受光部3までの距離との比は、
a:b=1:1
である。このため、受光部3上に投影される周期パターンの像は、スケール2上の周期パターンの2倍の大きさを持つことになる。したがって、スケール2と受光部3とが位置検出方向に相対移動したときに4つのPDから得られる4つの電気信号は、基準位相の擬似正弦波信号と、この基準位相信号に対してそれぞれ、π/2、πおよび3π/2の位相ずれを有する3つの擬似正弦波信号となる。そして、基準信号とこれに対してπだけ位相がずれた信号の差をとるとともに、基準信号に対して位相がπ/2と3π/2だけずれた2つの信号の差をとることで、互いにπ/2だけ位相がずれた2相の擬似正弦波信号を生成することができる。
【0024】
受光部3は、このようにして生成される2相の擬似正弦波信号(以下、2相信号)を周期信号として出力する。なお、スケール2と受光部3が変位検出方向にλの距離、相対変位すると1周期の信号が検出される。
【0025】
信号処理部4は、受光部3から出力された2相信号の周期をカウントし、さらに2相信号の値を逆正接演算することにより、2相信号の1周期内での位相を0〜2πの中で求める。そして、カウントした周期数と1周期内での位相とから相対移動量を求める。
【0026】
相対移動量dは、カウントした周期数をcとし、1周期内での位相をpとすると、周期パターンの光学部の周期λを用いて、以下の式(1)で表される。
【0027】
d=(c+p/(2π))・λ …(1)
本実施例では、光源1から受光部3上の任意の1点に到達する検出光の光路が、周期パターン上でY方向にnt(ただし、nは自然数)の幅を持つように構成する。この構成を採用することで、光源1(および受光部3)とスケール2がY方向に相対変位したとしても、積分される成分が一定に保たれ、2相信号の基本波の位相が変化したり、高次成分の除去効果が低下したりすることを抑制できる。このとき、光源1のY方向の幅wは、以下の式(2)で示す条件を満足する。
w=(a+b)/b・nt …(2)
(a:b=1:1のとき、w=2nt)
式(2)の条件について、図5を用いて説明する。図5には、光源1とスケール2上の周期パターンと受光部3との相対位置関係を示している。図5の上下方向がY方向に相当する。図5に示す三角形は、光源1のY方向全体(幅w)から受光部3上の任意の1点に到達する検出光の光路を示している。光源1と周期パターンとの間の距離と、周期パターンと受光部3との間の距離の比は、前述したようにa:b(例えば、1:1)である。そして、光源1のY方向の幅wを底辺とする三角形と、周期パターン上のntの幅を底辺とする三角形とは相似の関係にあるため、式(2)が導出される。
【0028】
さらに、本実施例において、光源1上の任意の1点から受光部3上に到達する検出光の光路が、スケール2の周期パターン上でmt(ただし、mは自然数)の幅を持つように構成することが望ましい。この構成を採用することで、受光部3のY方向に、ちょうどm周期の周期パターン像が投影される。このため、スケール2と受光部3がY方向に相対変位したとしても、積分される成分が一定に保たれ、基本波の位相が変化したり高次成分の除去効果が低下したりすることをより効果的に抑制することができる。このとき、受光部3のY方向の幅vは、mを自然数として、式(3)により表される。
v=(a+b)/a・mt …(3)
(a:b=1:1のとき、v=2mt)
式(3)の条件について、図6を用いて説明する。図6には、光源1とスケール2上の周期パターンと受光部3との相対位置関係を示している。図6の上下方向がY方向に相当する。図6中の三角形は、光源1の任意の1点から受光部3のY方向全体(幅v)に到達する検出光の光路を示している。光源1と周期パターンとの間の距離と、周期パターンと受光部3との間の距離との比は、前述したようにa:b(例えば、1:1)である。そして、受光部3のY方向幅vを底辺とする三角形と、周期パターン上のmtの幅を底辺とする三角形とは相似の関係にあるため、式(3)が導出される。
【0029】
本実施例の構成において、光源1のY方向での光量分布が不均一である場合には、tを小さくしたり、nを大きくしたりすることで、誤差を抑制することが可能である。
【0030】
本実施例では、周期パターンのY方向での1周期t内に互いに位置検出方向にシフトした4つの部分e〜hが含まれる場合について説明したが、1周期t内に設ける互いにシフトした部分の数は4つに限られない。
【0031】
また、本実施例では、受光部3が4つのPDにより構成される場合について説明したが、PDの数は4つに限定されない。例えば、基準信号とこれに対してπ/2だけ位相がずれた信号のみを出力できるように2つのPDにより構成したり、基準信号とこれに対して2π/3および4π/3だけそれぞれ位相がずれた信号を出力できるように3つのPDにより構成してもよい。さらに、2つから4つのPDの組を複数組並べた構成としてもよい。このようにPDの組を複数使用すると、PDを1組のみ使用する場合に比べて、ノイズの影響を抑制することができる。また、周期パターンの周期誤差、スケールの傷や汚れ等による誤差も抑制することが可能である。
【実施例2】
【0032】
図7には、本発明の実施例2である光学式エンコーダのスケール上に設けられた周期パターンを示している。実施例1では、特に高次成分の抑制を目的とした周期パターンの形状について説明したが、本実施例では、実施例1とは異なる目的を有する周期パターンの形状について説明する。本実施例のエンコーダの構成は、以下に説明する周期パターンを除いて、図1に示した実施例1のエンコーダと同じである。
【0033】
本実施例の周期パターンも、光を反射または透過する光学部(反射部)と非光学部(非反射部)とを図中の位置検出方向(第1の方向)に交互に有する。光学部は、Y方向(第2の方向)に延びる棒状(細い長方形状)に形成されている。そして、本実施例では、周期パターンにおけるY方向での光学部と非光学部との割合が、位置検出方向において変化している。言い換えれば、光学部および非光学部のY方向での長さが、位置検出方向において変化している。さらに、位置検出方向における任意の位置において、光学部および非光学部からなるパターンのY方向の周期がtとなっている。 この周期パターンに光源1から検出光を照射し、光学部での反射光を受光部3で受光すると、受光部3から出力される信号の振幅が変化するため、該振幅によりスケール2と受光部3との相対移動量を検出することができる。
【0034】
本実施例では、位置検出方向での任意の位置において総受光量を一定に保つことができるため、スケール2および受光部3(光源1)間でY方向の相対変位が発生しても、受光部3から出力される信号の振幅の変化を抑制することができる。このように、目的にかかわらず、Y方向に周期的なパターン形状を有する周期パターンを使用することができる。
【実施例3】
【0035】
図8には、本発明の実施例3である光学式エンコーダの構成を示している。本実施例のエンコーダは、光源1と、スケール2と、受光部3と、信号処理部4とにより構成され、スケール2と受光部3との相対移動量(相対位置)またはスケール2と受光部3のうち一方の絶対位置を検出する透過型光学式リニアエンコーダである。本実施例では、リニア型エンコーダについて説明するが、ロータリー型エンコーダも本実施例と同様に構成することができる。
【0036】
本実施例において、スケール2には、光を透過する光学部(透過部)と非光学部(非透過部)とを図中の位置検出方向(第1の方向)に交互に有する周期パターンが設けられている。周期パターンに沿った方向のうち位置検出方向に対して直交する方向は、実施例1と同様にY方向(第2の方向)という。周期パターンの形状は、実施例1において図3に示したものと同じである。
【0037】
受光部3は、スケール2との位置検出方向での相対移動が可能である。該受光部3は、スケール2を挟んで受光部3とは反対側に配置された光源1から射出されて光学部を介した検出光を光電変換し、周期パターンに応じた変化周期を有する周期信号を出力する。
【0038】
本実施例でも、実施例1で説明した式(2)の条件を満足する。また、本実施例でも、実施例1で説明した式(3)の条件を満足することが望ましい。
【0039】
そして、本実施例でも、実施例1と同様に、光源1、スケール2および受光部3間でY方向の相対変位が発生しても、図5および図6に示す相対位置関係が維持されるため、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0040】
図9は、本発明の実施例4である光学式エンコーダのスケール上に設けられた周期パターンを示している。本実施例の周期パターンも、実施例1と同じく、高次成分の抑制を目的とした形状を有する。本実施例のエンコーダの構成は、以下に説明する周期パターンを除いて、図1に示した実施例1のエンコーダと同じである。
【0041】
本実施例の周期パターンも、光を反射または透過する光学部(反射部)と非光学部(非反射部)とを図中の位置検出方向(第1の方向)に交互に有する。そして、Y方向(第2の方向)において、位置検出方向における光学部と非光学部との割合(デューティ比)が変化している。この割合は、抑制したい高調波次数成分に併せて任意に決定することができる。例えば、実施例1と同様に、3次と5次の高次成分を抑制する場合には、図10に示すように、7λ/30,13λ/30,17λ/30,23λ/30とすればよい。
【0042】
図10に示すパターンは、光学部と非光学部の割合が1:1であるが、この割合を変化させることにより、本実施例におけるデューティ比を任意に変化させることができる。
【0043】
本実施例においても、実施例1から3と同じく、Y方向(第2の方向)において、光学部と非光学部とからなるパターンが周期tで形成されており、光源1、スケール2および受光部3間でY方向の相対変位が発生しても、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0044】
図11は、本発明の実施例5である光学式エンコーダのスケール上に設けられた周期パターンを示している。本実施例の周期パターンも、実施例1,4と同じく、高次成分の抑制を目的とした形状を有する。本実施例のエンコーダの構成は、以下に説明する周期パターンを除いて、図1に示した実施例1のエンコーダと同じである。
【0045】
本実施例の周期パターンも、光を反射または透過する光学部(反射部)と非光学部(非反射部)とを図中の位置検出方向(第1の方向)に有する。そして、Y方向(第2の方向)においても、光学部と非光学部とからなるパターンが周期的に変化している。ところで、受光部3において光電変換された信号に含まれる高次成分は、光源1の光量分布、スケール2のパターン形状、受光部3の形状、受光部3を構成する受光素子の配列・特性、光源・スケール・受光部の距離関係などの組み合わせで変化する。そこで、本実施例においては、図12に示すパターンを周期的に構成し、光源とスケールおよびスケールと受光部が約1mmの間隔のときに、2次、3次、5次および7次の高次成分を抑制する構成としている。
【0046】
本実施例においても、実施例1から4と同じく、Y方向(第2の方向)において、光学部と非光学部とからなるパターンが周期tで形成されており、光源1、スケール2および受光部3間でY方向の相対変位が発生しても、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0047】
図13は、本発明の実施例5である光学式エンコーダのスケール上に設けられた周期パターンを示している。本実施例の周期パターンは、位置検出方向における周期が互いに異なり、それぞれ高次成分の抑制を目的とした形状を有する複数のパターンをY方向にて多重化して形成した多重周期パターンとなっている。本実施例のエンコーダの構成は、周期パターンを除いて、図1に示した実施例1のエンコーダと同じである。
【0048】
本実施例の多重周期パターンを構成する各パターンも、光を反射または透過する光学部(反射部)と非光学部(非反射部)とを図中の位置検出方向(第1の方向)に交互に有する。そして、本実施例では、信号処理部4において、多重周期パターンを構成する複数のパターンのうち特定の(任意に選択された)パターンの周期に対応する周期変化を有する信号を検出することができる構成となっている。
【0049】
本実施例においても、実施例1から5と同じく、Y方向(第2の方向)において、光学部と非光学部とからなるパターンが周期tで形成されており、光源1、スケール2および受光部3間でY方向の相対変位が発生しても、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例7】
【0050】
図14には、上述した実施例1で説明したエンコーダを搭載した装置の一例として、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置(光学機器)を示している。この撮像装置では、エンコーダをレンズ鏡筒内での可動レンズの位置を検出するために用いている。なお、実施例1のエンコーダに代えて、実施例2から6のエンコーダを用いることもできる。
【0051】
図14において、2はスケール、5はセンサ(光源1および受光部3)、4は信号処理部である。これらによってエンコーダが構成される。スケール2は、レンズ鏡筒内において光軸回りで回転する円筒形状の可動部材としてのカム環50の内周面に取り付けられている。カム環50は、不図示のアクチュエータによって回転駆動される。
【0052】
レンズ鏡筒内には、撮影光学系51が収容されている。撮影光学系51は、カム環50が回転することで、該カム環50に形成されたカムによって光軸方向に移動可能な可動レンズ(例えば、変倍レンズやフォーカスレンズ)52を含む。
【0053】
55は撮像装置のシステム全体を制御するCPUである。56は撮影光学系51により形成された被写体像を光電変換するイメージセンサ(撮像素子)であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成されている。
【0054】
可動レンズ52を移動させるためにカム環50が回転すると、エンコーダによりカム環50の回転位置(つまりは可動レンズ52の光軸方向での位置)が検出され、その情報がCPU24に出力される。
【0055】
CPU24は、その位置情報に基づいてカム環50を回転させるアクチュエータを駆動し、可動レンズ52を目標とする位置に移動させる。
【0056】
本発明のエンコーダは、上述した撮像装置に限らず、プリンタ(光学機器)における印字ヘッドや給紙ローラの位置検出、複写機(光学機器)の感光ドラムの回転位置検出をはじめ、ロボットアームの位置検出等、様々な装置に適用することができる。
【0057】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
スケールと受光部とが周期パターンの周期方向とは異なる方向に相対変位しても良好な精度で位置検出を行える光学式エンコーダを提供できる。
【符号の説明】
【0059】
1 光源
2 スケール
3 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、
該スケールとの前記第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて前記光学部を介した検出光を光電変換して前記第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有し、
前記周期パターンにおける前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、
前記光学部は、前記第2の方向にて隣り合う複数の部分が互いに前記第1の方向にシフトしたパターン形状を、前記第2の方向に第2の周期tで有しており、
前記光源の前記第2の方向での幅wが、以下の条件を満足することを特徴とする光学式エンコーダ。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、前記光源から前記周期パターンまでの距離と前記周期パターンから前記受光部までの距離との比をa:bとする。
【請求項2】
光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、
該スケールとの前記第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて前記光学部を介した検出光を光電変換して前記第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有し、
前記周期パターンにおける前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、
前記周期パターンにおける前記第2の方向での前記光学部と該光学部ではない部分との割合が前記第1の方向において変化し、かつ前記周期パターンは、前記光学部と前記光学部ではない部分からなるパターンを前記第2の方向に第2の周期tで有しており、
前記光源の前記第2の方向での幅wが、以下の条件を満足することを特徴とする光学式エンコーダ。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、前記光源から前記周期パターンまでの距離と前記周期パターンから前記受光部までの距離との比をa:bとする。
【請求項3】
光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、
該スケールとの前記第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて前記光学部を介した検出光を光電変換して前記第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有し、
前記周期パターンにおける前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、
前記周期パターンにおける前記第1の方向での前記光学部と該光学部でない部分との割合が前記第2の方向において変化し、かつ前記周期パターンは、前記光学部と前記光学部ではない部分からなるパターンを前記第2の方向に第2の周期tで有しており、
前記光源の前記第2の方向での幅wが、以下の条件を満足することを特徴とする光学式エンコーダ。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、前記光源から前記周期パターンまでの距離と前記周期パターンから前記受光部までの距離との比をa:bとする。
【請求項4】
光を反射または透過する光学部が第1の方向に第1の周期で形成された周期パターンを有するスケールと、
該スケールとの前記第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて前記光学部を介した検出光を光電変換して前記第1の周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有し、
前記周期パターンにおける前記第1の方向に直交する方向を第2の方向とするとき、
前記光学部と該光学部ではない部分からなるパターンを前記第2の方向に第2の周期tで有しており、
前記光源の前記第2の方向での幅wが、以下の条件を満足することを特徴とする光学式エンコーダ。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、前記光源から前記周期パターンまでの距離と前記周期パターンから前記受光部までの距離との比をa:bとする。
【請求項5】
光を反射または透過する光学部が第1の方向に互いに異なる周期で形成された複数のパターンが、前記第1の方向に直交する第2の方向に多重に設けられた多重周期パターンを有するスケールと、
該スケールとの前記第1の方向での相対移動が可能であり、光源から射出されて前記光学部を介した検出光を光電変換して、前記複数のパターンのうち特定のパターンの周期に応じた変化周期を有する信号を出力する受光部とを有し、
前記多重周期パターンは、前記光学部と該光学部ではない部分からなるパターンを前記第2の方向に第2の周期tで有しており、
前記光源の前記第2の方向での幅wが、以下の条件を満足することを特徴とする光学式エンコーダ。
w=(a+b)/b・nt
ただし、nは自然数であり、前記光源から前記周期パターンまでの距離と前記周期パターンから前記受光部までの距離との比をa:bとする。
【請求項6】
前記受光部の前記第2の方向での幅vが、以下の条件を満足することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光学式エンコーダ。
v=(a+b)/a・mt
ただし、mは自然数である。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光学式エンコーダと、
該エンコーダを用いて位置が検出される可動部材とを有することを特徴とする光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−108911(P2013−108911A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255597(P2011−255597)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】