説明

光学式角度測定装置

【課題】少なくとも一つの走査検知格子および少なくとも一つの測定目盛を有する目盛板の間の相対移動を検出するための光学式角度測定装置を提供する。
【解決手段】その走査検知格子は直線走査検知格子として構成されており、目盛板には測定目盛として、第一および第二組合せラジアル円環格子を含み、そしてミラーを有している。それにより入射する光束が走査検知格子で、まず二つの分光光束に分割される。その分光光束が、第一組合せラジアル円環格子の方向に進み、そこで回折される。その回折された分光光束が、ミラーの方向に進み、そこで第二組合せラジアル円環格子の方向に反射される。その分光光束が、引き続いて第二組合せラジアル円環格子の方向に進み、そこで回折される。その回折された分光光束が走査検知格子の方向に進み、そこで分光光束の重ね合わせが生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式角度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
干渉による走査検知原理をベースにしている高分解能の光学式角度測定装置は、上に測定目盛を配設した目盛板に対して有する取り付け許容度は極く僅かである。この問題を解決する測定装置は、本出願人によるDE 10 2010 029 211.7号で開示されている。ラジアル目盛の走査検知から生じると共に取り付け許容度が小さいことの原因となる光波前面歪みは、リフレクタと光波前面補正器を意図して使用することにより最小化できる。しかしながら、そのために必要な光波前面補正器は基本的に、走査検知する測定目盛の特定目盛半径ないし完全に特定された測定用途に対して最適化する。従って、その光学式角度測定装置の該当走査検知光学系は走査検知する色々な目盛半径に万能でない、ないし色々な測定用途に万能で使用することができないということが、問題として起きる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、高い分解能および大きな取付許容度を有する光学式角度測定装置を提供することであり、走査検知する測定目盛の異なった目盛半径と関連して、ないし異なった測定用途において万能で使用できるが、そのために走査検知光学系の著しい適合化を必要とするものではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を本発明に従って、請求項1の特徴を有する光学式角度測定装置により解決する。
本発明による光学式角度測定装置の利点ある実施方法は、従属請求項に記載の処置で得られる。
【0005】
本発明による光学式角度測定装置は、少なくとも一つの走査検知格子および少なくとも一つの測定目盛を有する目盛板の間の相対移動を検出するために使用される。そのとき走査検知格子が、直線走査検知格子として構成されている。目盛板には測定目盛として、第一および第二組合せラジアル円環格子を含み、そしてミラーを有している。それにより入射する光束が走査検知格子で、まず二つの分光光束に分割される。その分光光束が、第一組合せラジアル円環格子の方向に進み、そこで回折される。その回折された分光光束が、引き続いてミラーの方向に進み、そこで第二組合せラジアル円環格子の方向に反射される。そしてその分光光束が、第二組合せラジアル円環格子の方向に進み、そこで回折される。その回折された分光光束が最終的に、走査検知格子の方向に進み、そこで分光光束の重ね合わせが生じる。
【0006】
組み合された第一および第二ラジアル円環格子が、少なくとも一つの方位方向光学的屈曲作用を、リング状に曲げられたラジアル方向円筒レンズの光学的作用と一緒に備えていると好ましい。
【0007】
そこで第一組合せラジアル円環格子が、分光光束に対する長手方向および横方向の屈曲作用の他に、更にミラーへの分光光束の集束を生じるように構成されていることがある。
第二組合せラジアル円環格子が、分光光束に対する長手方向および横方向の屈曲作用の他に、走査検知格子の方向に進む分光光束の再平行光線化が生じるように構成されていると利点がある。
【0008】
可能性ある実施形態では、組み合わされた第一および第二ラジアル円環格子が、目盛板の全周に亘ってリング状で配設されており、リング全周に亘って一定の方位方向格子周期を有し、そしてラジアル方向では変化するラジアル格子周期を有している。
【0009】
ミラーが、目盛板の全周に亘ってリング状で配設されていると好ましい。
可能性のあることは、目盛板が透明な材料で出来ており、第一側には組み合わされた第一および第二ラジアル円環格子が配設されており、反対側の第二側にはミラーが配設されており、その反射面が第一側に向けられていることである。
【0010】
可能性のある実施形態では、走査検知格子が、反射性走査検知格子として構成されている。
光源および複数の光電子式ディテクタ要素が、走査検知ユニットに配設されており、そこで光源から発せられた光束を走査検知格子に送ることができ、重ね合わされた分光光束を光電子式ディテクタ要素に送ることができると好ましい。
【0011】
別の実施形態では、走査検知ユニットに更に走査検知格子が配設されており、目盛板が走査検知ユニットに対して可動で配設されている。
それに対する代替として走査検知格子に対して、少なくとも一つの走査検知ユニットがスライド自在で、そして目盛板が回転自在で配設されているようにしていることがある。
【0012】
別の変形例では少なくとも一つの走査検知ユニットが、走査検知格子と一緒に目盛板に対して、目盛板の中心を通過する軸に沿って相対的に可動で配設されていることがある。
更に、複数の走査検知ユニットおよびその走査検知ユニットに関連配置された複数の走査検知格子が設けられ、その走査検知ユニットと走査検知格子が、色々な方位方向位置で目盛板に対して相対的に配設されていることがある。
【0013】
更に、目盛板が複数の目盛板セグメントで出来ていることがある。
最後に、走査検知ユニットから来る光束を、屈曲ユニットを介して目盛板の方向に向けることができ、そして目盛板から来る光束を、屈曲ユニットを介して走査検知ユニットの方向に向けることができるようにしていることもある。
【0014】
本発明による光学式角度測定装置は、異なった目盛半径を有する彎曲した測定目盛を高分解能且つ万能で走査検知するために適しており、そのために走査検知光学系をそれぞれ適合化する必要がない。それどころか基本的に、本発明による光学式角度測定装置の走査検知光学系を、直線測定目盛を走査検知するためにも使用することができる。
【0015】
更に本発明による光学式角度測定装置は、回転角検出のための一般的な用途にも、以下において更に詳細に説明する特殊な機械運動における位置検出のためにも使用することができる。即ち、本発明による光学式角度測定装置は、異なった用途に関しても万能で使用可能である。それにより例えば、直線テーブル上で横方向に沿ってスライド自在で配設されている回転テーブルの回転角を、高精度で特定できる。そのとき同時に、直線テーブルのガイド偏差も検出する。更に本発明による光学式角度測定装置は、当該種類の運動において回転角検出の他に、スライド自在である回転テーブルの横方向XY位置の特定も可能にする。回転角の検出もオプションとしての横方向XY位置検出も、即ち、組み合わされた回転および直線運動の検出は、従来技術とは違ってシーケンシャルではなく、直接且つ小さな測定サークルで行う。
【0016】
本発明による光学式角度測定装置の更なる利点として挙げられることは、可能性ある高分解能の他に、加えて測定目盛の側で走査検知面が比較的大きい時に、同時に目盛板に対して大きな取り付け許容度を有していることである。
【0017】
本発明の更なる利点および詳細は、添付の図面を使った以下の実施例についての説明で分かる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による光学式角度測定装置の構成要素の、種々の幾何形状量を含む概略図示。
【図2】それぞれ本発明による光学式角度測定装置の、第一実施形態の走査検知光路を有する断面外観。
【図3】それぞれ本発明による光学式角度測定装置の第一実施形態の、展開された走査検知光路。
【図4】図4aは上にミラーが配設された本発明による光学式角度測定装置の、第一実施形態における目盛板の下側の部分外観であり、図4bは上にラジアル円環格子が配設された本発明による光学式角度測定装置の、第一実施形態における目盛板の上側の部分外観であり、図4cは本発明による光学式角度測定装置の、第一実施形態の走査検知格子の部分外観である。
【図5】本発明による光学式角度測定装置の、第一実施形態のラジアル円環格子の寸法を説明するための図示。
【図6】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第二実施形態が使用される極座標運動を有する機械の外観。
【図7】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第二実施形態が使用される極座標運動を有する機械の外観。
【図8】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の、第二実施形態の走査検知光路を有する断面外観。
【図9】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第二実施形態の、展開された走査検知光路。
【図10】図10aは上にミラーが配設された本発明による光学式角度測定装置の、第二実施形態の目盛板の下側の部分外観であり、図10bは上にラジアル円環格子が配設された本発明による光学式角度測定装置の、第二実施形態の目盛板の上側の部分外観であり、図10cは本発明による光学式角度測定装置の、第二実施形態の走査検知格子の部分外観である。
【図11】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の、第三実施形態の走査検知光路を有する断面外観。
【図12】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第三実施形態の、展開された走査検知光路。
【図13】図13aは上にミラーが配設された本発明による光学式角度測定装置の、第三実施形態の目盛板の下側の部分外観であり、図13bは上にラジアル円環格子が配設された本発明による光学式角度測定装置の、第三実施形態の目盛板の上側の部分外観であり、図13cは本発明による光学式角度測定装置の第三実施形態の、走査検知格子の部分外観である。
【図14】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の、第四実施形態の走査検知光路を有する断面外観。
【図15】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の、第四実施形態の走査検知光路を有する断面外観。
【図16】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第五実施形態を有する測定配設の外観。
【図17】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第五実施形態を有する測定配設の外観。
【図18】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第六実施形態が使用され極座標運動を有する別の機械の外観。
【図19】それぞれ、本発明による光学式角度測定装置の第六実施形態が使用され極座標運動を有する別の機械の外観。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による光学式角度測定装置について、以下において種々の具体的な実施例ないし用途例を詳細に説明する前に、ある程度の基本的な考え方をまず図1を使って説明することにする。図1においては更に、以下の説明経過の中で使う個々の幾何形状量を分かるようにしている。
【0020】
本発明による光学式角度測定装置は、干渉による走査検知原理をベースにしており、それに含まれるのは、走査検知ユニット20および、これに対して相対的にXY面で回転すると共に上に測定目盛が配設された目盛板10である。ここで図1においては測定目盛を図示していない。走査検知ユニット20に対して相対的な目盛板10の回転角Θを特定するために、測定目盛としてラジアル格子が目盛板10上に設けられている。走査検知光路においてラジアル格子が、回折された光束の光波前面を歪ませる。よって、二つの分光光束を干渉させて高変調度の走査検知信号を生成するためには、走査検知ユニット20において補正性のある走査検知格子が不可欠である。目盛板10と走査検知ユニット20の相対位置に関して、組み付けおよび運転許容度が大きいことを望む場合には、追加の逆反射要素および光波前面補正器を走査検知光路で走査検知ユニット20に配設することが、基本的に可能である。そのためには、例えば本出願人による最初に言及したDE 10 2010 029 211.7号を参照されたい。その場合には基本的に、目盛板10の測定目盛の目盛半径Rに走査検知ユニット20の光学要素を特別に適合化することが不可欠である。
【0021】
本発明は一つの走査検知光学系を提案しており、それはDE 10 2010 029 211.7号による光波前面補正器と逆反射要素の機能を、目盛板10上に組合せラジアル円環格子として構成されている測定目盛で実施するものである。走査検知格子としては走査検知ユニット20において必要となるのは直線格子のみである。このようにすることにより、一つの同じ走査検知ユニット20を、上に測定目盛が配設され異なった目盛半径Rを有する色々な目盛板10を走査検知するために使用することができる。それどころか更に、本発明による光学式角度測定装置の走査検知ユニット20を、直線測定目盛(R→∞)を備えた基準尺体を走査検知するためにも使用することが可能である。これに適した基準尺体は、例えば本出願人によるWO 2008/138502 A1号で開示されている。
【0022】
走査検知格子が直線格子として構成されているので、この走査検知格子の横方向スライド量が走査検知信号の信号強度に影響を与えない。よって、それを走査検知ユニット20から空間的に分離して配設し、その長手または横方向の大きさを任意に大きくすることもできる。即ち、本発明による角度測定装置を介することにより、走査検知格子および上に測定目盛が配設された目盛板との間、ないし走査検知格子と目盛板と繋がる機械構成部品間の相対移動を特定することができる。このようにすることにより、本発明による光学式角度測定装置の特別な実施形態では、走査検知格子に対して相対的に目盛板の横方向XYスライドが大きい時にも、角度測定を実施することが可能である。その場合に許容できる横方向XYスライド量は、走査検知ユニット20が目盛板10と一緒にスライドするが一緒に回転しない時、走査検知格子の大きさによってのみ制限されている。走査検知信号の信号強度は、この範囲内で変わらず高い。よって、本発明による光学式角度測定装置のこの実施形態は、上記で言及した特殊な運動をする機械に特に適している。ここで複数の走査検知ユニットを、場合により複数の走査検知格子も配設することにより、横方向XYスライド量の同時特定も可能である。
【実施形態1】
【0023】
図2aと2bは、それぞれ本発明による光学式角度測定装置の第一実施形態の走査検知光路を有する断面外観を示している。
走査検知ユニット20に配設された平行光線光源21、例えば適切なレーザ光源が光学軸Zに沿って、走査検知プレート24の下側に設けられている第一直線格子23.1を照らす。ここで走査検知プレート24の下側として解釈するのは、走査検知プレート24で走査検知される目盛板10に対向している側とする;走査検知プレートのそれとは反対の側を上側と表すことにする。入射する光束は、走査検知格子24の位置P3で二つの分光光束に分割される。そして二つの分光光束は測定目盛の、第一組合せラジアル円環格子11.1として構成されていると共に目盛板10の前側に配設されている第一部分の方向に進む。そこで分光光束が、位置P4aないしP4bで第一組合せラジアル円環格子11.1に当たる。
【0024】
第一組合せラジアル円環格子11.1は、目盛板10の全周に亘ってリング状に配設されており、透過光格子として構成されている。それは、本発明により複数の光学的機能を合わせ持っている;それは、それに衝突する二つの分光光束を、YZ面で再び光学軸Zに平行(長手方向屈曲作用)に屈曲する共に、それらをX方向(横方向屈曲作用)に屈曲する。更にその二つの衝突する分光光束を、ラジアル方向円筒レンズ作用によりラジアル方向で、透明な目盛板10の背面側にあるミラー12に集束する。そのミラーは、−図4aの部分外観で分かるように−目盛板10の全周に亘ってリング状に配設されている。
【0025】
以上により、第一組合せラジアル円環格子11.1により回折された、ないし先に説明したように影響を受けた分光光束はミラー12の方向に進み、そこでミラー12上の位置P5aないしP5bにおいて測定目盛の第二部分の方向へ、即ち、目盛板10上の第二組合せラジアル円環格子11.2に反射される。以上により、ミラー12上の位置P5aないしP5bで反射された後に分光光束は、目盛板10上の第二組合せラジアル円環格子11.2の方向に進む。
【0026】
本発明により第二組合せラジアル円環格子11.2も、複数の光学的機能を合わせ持っている;それは、それに入射する二つの分光光束を、YZ面で再び反対方向に屈曲(長手方向屈曲作用)するので、それらは共通の位置P7において、走査検知プレート24の第二走査検知格子23.2に当たる。二つの分光光束は加えて、XZ面で再び光学軸Zに平行に向けられる(横方向屈曲作用)。その他に光学的な円筒レンズ作用を介して、二つの分光光束の再平行光線化が行われる。
【0027】
呈示の実施例では目盛板10が、透明な材料で出来ている。目盛板10の第一側(上側)には、組み合わされた第一および第二ラジアル円環格子が配設されている;目盛板10で反対側の第二側(下側)にはミラー12が配設されており、その反射面は第一側に向けられている。
【0028】
第二組合せラジアル円環格子11.2で回折ないし影響された後に、分光光束は直線走査検知格子23.3の方向に進み、そこで重ね合わせないし干渉させられて、三つのそれぞれ組み合わされた分光光束に分割される。その三つの組み合わされた分光光束は、結果として0次および±1次回折次数で走査検知格子23.2を出て行き、走査検知ユニット20にある共にスライド量に関係して変調された走査検知信号を出す光電子式ディテクタ要素22.1,22.2,22.3に到達する。第二直線走査検知格子23.2の特別な構成により、走査検知信号が互いの間で120°位相のずれていることを達成できる。そのために公知の方法でそれを、格子線高さを180°に等しくない位相ズレに相当して選び格子線幅が格子周期の半分だけ偏っている位相格子として構成する。走査検知信号は引き続いて、位置の値を生成する評価ユニット−図示していない−に送られる。
【0029】
呈示の第一実施例では、光源21および光電子式ディテクタ要素22.1,22.2,22.3の他に更に、直線走査検知格子23.1,23.2が走査検知ユニット20に配設されている。その場合に光源21から発せられた光束を、第一走査検知格子23.1に送ることができ、重ね合わされた分光光束を、第二走査検知格子23.2から光電子式ディテクタ要素22.1,22.2,22.3に送ることができる。目盛板10は、走査検知ユニット20に対して相対移動できるように配設されている、即ち、目盛板10の中心点を通る光学軸Zに平行に走る目盛板10の中心軸を中心にして回転自在である。
【0030】
図3aと3bではこの実施例の走査検知光路を、引き延ばした又は展開した形態で図示している。図3aで分かることは、位置P4a,P4bとP6a,P6bにおける組合せラジアル円環格子11.1と11.2の横方向屈曲作用であり、それがX方向において分光光束に対する光線ズレとなっている。図3bで図示しているのは、位置P3において第一走査検知格子23.1を介した二つの分光光束への分割、位置P4a,P4bとP6a,P6bにおける組合せラジアル円環格子11.1,11.2を介した長手方向屈曲、そして第二走査検知格子23.2の位置P7における二つの分光光束の重ね合わせである。
【0031】
図4aは、目盛板10の下側にありリング状に曲がったミラー12の上部外観ないし部分外観および、組合せラジアル円環格子11.1の円筒レンズ作用により線状に集束されて位置P5aとP5bで反射される二つの分光光束を示している。
【0032】
図4bにおいては、目盛板10の上側にあるリング状組合せラジアル円環格子11.1と11.2を、概略的な部分外観で示している。これらの格子11.1,11.2の部分的チェス盤状構造は、好ましくは180°の位相高さを有する位相格子として構成されている。それは方位方向で、即ちリング形状に沿って、ラジアル格子のように周期的に光学構造化されている。従って格子11.1は全周に亘ってN1の、そして格子11.2はN2の方位方向格子周期を有している。ラジアル方向では格子構造が、リング状に曲げられた回折円筒レンズのそれに相当している。よってそれを、ラジアル方向格子周期が対応してラジアル方向で変化する円環格子として見なすことができる。
【0033】
図4cは、走査検知プレート24の下側にある二つの直線走査検知格子23.1と23.2の部分外観を示している。この実施形態で二つの走査検知格子23.1,23.2は、同じ格子定数および格子方向を有している。走査検知格子23.2の特別な構成は、既に上記で説明した。走査検知格子23.1は好ましくは、180°の位相変化量および概ね格子定数の半分に等しい格子線幅を有する位相格子として構成されている。走査検知格子23.1に対して、走査検知格子23.2に対するものと同じ格子構造を選択することも基本的に可能であり、それにより二つの走査検知格子を、共通した走査検知格子として実施していることもある。
【0034】
以下においては図5を使って、組み合わされた第一および第二ラジアル円環格子11.1と11.2の特別な寸法を詳細に説明することにする。そのために、二つの分光光束でkベクトルのXとY成分に注目する。位置P4aに入射する分光光束は、格子定数dを有する直線走査検知格子23.1での回折により、
【0035】
【数1】

【0036】
のkベクトルkA1を有している。
このkベクトルは、まず第一屈曲関数により、即ち組合せラジアル円環格子11.1の格子定数−kA1により補正する必要がある。そのために、この格子定数−kA1をラジアル方向成分kA1rと方位方向成分kA1aに分解する。ラジアル方向成分kA1rは対応するラジアル方向格子定数により、そして方位方向成分kA1aは対応する方位方向格子定数により得ることができる。第一屈曲関数だけなら、入射する分光光束を光学軸Zに対して平行に向けるであろう。それにラジアル方向円筒レンズ作用を重ね合わせるが、その作用は次の関係に従って相当する格子位相Φ(r)により説明される:
【0037】
【数2】

【0038】
そこで
λ レーザ光源の波長
目盛板の屈折率
R 目盛板の目盛半径
Δ 焦点位置の方位方向スライド量(下記を参照)
目盛板の厚み
この円筒レンズの焦点位置は、目盛半径Rにある。目盛半径Rからの衝突点P4aの間隔により、この円筒レンズが分光光束をラジアル方向に屈曲する。この屈曲の付属する格子ベクトルは、kL1で表される:
【0039】
【数3】

【0040】
そこで、 rP4a 衝突位置P4aの半径
この実施例におけるように、円筒レンズ作用がX方向での屈曲のみを起こす時には、格子ベクトルkL1のY成分を相当方位方向格子ベクトルkL1aにより補正せねばならない。この方位方向格子ベクトルkL1aが、焦点位置で相当する方位方向スライド量Δaを示している。円筒レンズの結像品質を最適にするためには、上記の式に従った格子位相Φ(r)におけるこの方位方向スライド量Δaを考慮する必要があろう。
【0041】
組合せラジアル円環格子11.1の構造は、全ての方位方向とラジアル方向の屈曲作用および円筒レンズ作用重ね合わせから得られる。得られる方位方向格子ベクトルkA1a+kL1aは、全周に亘る周期N1の方位方向数に換算することができる。
【0042】
【数4】

【0043】
そこでラウンド関数roundによる誤差は、無視することができる。付属する方位方向格子位相Φ1a(Θ)は、次のように得られる:
【0044】
【数5】

【0045】
ラジアル方向屈曲作用を説明するラジアル方向格子ベクトルkA1rおよび円筒レンズ作用に対する格子位相Φ(r)使って、ラジアル方向格子位相Φ1r(r)が得られる:
【0046】
【数6】

【0047】
この格子位相を定量化することにより、組合せラジアル円環格子11.1の相当する位相格子構造を計算することができる。例えば二元格子構造に対して定量化を、
【0048】
【数7】

【0049】
の全ての位置に格子線を、そして他の全ての位置で対応して隙間を設けていることにより行う。勿論、別の定量化方法も可能である。格子構造の局所的な周期性は最終的に、関数cos(Φ1r(r))とcos(Φ1a(Θ))の周期性により規定されていなければならない。ラジアル方向格子位相Φ1r(r)をブレーズタイプの格子構造により近似する時、特に大きな走査検知信号を得ることができる。
【0050】
組合せラジアル円環格子11.2の構造は、類似の方法で計算できる。円筒レンズ作用は同じ格子位相Φ(r)により説明する。そのラジアル方向屈曲は格子ベクトルkL2により説明する:
【0051】
【数8】

【0052】
そこで rP6a 衝突位置P6aの半径
同じく円筒レンズ作用がX方向での屈曲のみを起こす時には、方位方向成分を対応する方位方向格子ベクトルkL2aにより補正せねばならない。方位方向格子ベクトルkL2aと格子位相Φ(r)の組み合わせ作用により、入射する分光光束が再び平行光線化され、光学軸Zに対して平行に向けられる。そして、格子ベクトルkA2を有する第二走査検知格子23.2により二つの分光光束の重ね合わせを行えるように、分光光束の次の屈曲が行われねばならない。よって、この屈曲の付属する格子ベクトルは−kA2でなければならない。この実施形態では二つの走査検知格子23.1と23.2が、同じ格子定数を有しているので、kA2=kA1が当て嵌まる。同じく格子ベクトル−kA2を、方位方向成分kA2aとラジアル方向成分kA2rに分解する。よって上記と同様に、第二組合せラジアル円環目盛11.2に対して、周期の方位方向数N2、および方位方向格子位相Φ2a(Θ)とラジアル方向格子位相Φ2r(Θ)が、
【0053】
【数9】

【0054】
【数10】

【0055】
【数11】

【0056】
で得られる。
格子構造の計算に対して、同じくこの格子位相の定量化が必要であり、上記に記載のように行う。
【0057】
位置P4bで第一組合せラジアル円環格子11.1に、そして位置P6bで第二組合せラジアル円環格子11.2に当たる第二分光光束も、第一分光光束に対して対称的に伝えられねばならない。よって方位方向格子周期は、ラジアル方向対称軸を有していなければならない。上記の定量化は、そのようなラジアル方向対称軸を自動的に決める。
【0058】
二つの走査検知格子23.1と23.2の格子ベクトルkA1とkA2を、勿論、異なって選ぶこともできる。それが、上記の式に従った組合せラジアル円環格子11.1,11.2の適合化された格子構造に相当して条件になる。非常に大きく異なった格子ベクトルを選ぶ時には、二つの分光光束が再び同じ位置P7で合流するように、衝突点P4aとP6aないしP4bとP6b間でのY方向において光線がずれる必要があろう。そして方位方向格子ベクトルkA1とkA2を対応して合わせるが、それは専門家には容易に可能である。
【0059】
二つの円筒レンズ作用の結像品質を改良することは、レイトレーシングモデルを使った最適化により達成することができる。そして、Δaのようなモデルパラメータおよび二つの円筒レンズ作用に対する焦点半径Rは、別々に最適化できる。
【0060】
色々な光学的屈曲作用および円筒レンズ作用の上記計算は、まず分光光束の主光線のみを考慮する。しかしながら、分光光束の横方向拡がりを超える光波前面変形が、実際では走査検知光学系の使用性を左右する。この光波前面変形が極端に小さい時にのみ、良好な変調度を有する評価可能な走査検知信号が生成される。この光波前面変形が実際に極端に小さいことが存在しているのは、本発明による走査検知光学系の二つの特別性である。一つには二つの組合せラジアル円環格子11.1と11.2が、入射する平坦な光波前面を再び平坦な光波前面に変換する。この驚くべき特性は、−1の結像尺度を生じるそのラジアル方向の円筒レンズ作用による結像と関連している。それにより格子11.1の(小さい方の半径に向かう)内側で小さい方の方位方向格子周期が、対応して方位方向格子周期の大きい格子11.2の外側に結像される。反対に、格子11.1の外側の大きい方の方位方向格子周期は、小さい方の方位方向格子周期を有する格子11.2の内側に結像される。第一格子11.1のラジアル方向で変化する方位方向屈曲作用が結像により、そして第二格子11.2のラジアル方向で変化する方位方向屈曲作用が補正される。以上により、半径Rに最早近似的に関係しない方位方向屈曲作用が得られる。よって平行光線化された分光光束が、再びそのようなものに移行する。それにより、−1の結像尺度でラジアル方向において円筒レンズ作用により生成される反射および光波前面補正が、目盛板の格子11.1と11.2自体により行われ、DE 10 2010 029 211.7号のように走査検知ユニット20の該当光学的要素によるものではない。
【0061】
本発明による角度測定装置で利点がある別の特別性は、他の角度測定装置では一般的なラジアル方向走査検知格子の代わりに、直線走査検知格子23.1と23.2を使用することにある。それにより分光光束の光波前面が、走査検知ユニット20から目盛板10に進む時に平坦であり、この平坦な光波前面を走査検知間隔の変化時にも保持している。目盛板10から逆に走査検知ユニット20に進むことに対しても、このことが当て嵌まる。よって、その走査検知光学系には走査検知間隔に関して特に大きな許容度がある。このことは今まで公知の走査検知光学系とは対照的であるが、その場合には分光光束が走査検知ユニットから目盛板に向かって時または逆に進む時に、平坦でなく歪んだ光波前面を有している。進む時に光波前面歪みが変化するので、この公知の走査検知光学系は本質的に、走査検知間隔の変化に対して敏感である。対応する組込許容度が小さい。
【0062】
本発明による角度測定装置で完全な360°回転に亘る信号周期の数NSPは、方位方向周期の数N1とN2により特定される:
【0063】
【数12】

【0064】
本発明による走査検知光学系の別の変形例は、二つの直線走査検知格子23.1と23.2の格子方向の回転(等しくなくても)によりつくることができる。それにも拘わらず、付属する組合せラジアル円環格子11.1と11.2は、上記の式に従って計算することができる。
【実施形態2】
【0065】
本発明による角度測定装置は、異なった目盛半径を有する測定目盛を万能で走査検知する他に、特殊な機械運動を有する用途での使用することも可能にする。この種の機械運動およびそこで生じる位置検出に関する要求を、以下において簡単に説明することにする。
【0066】
精密機械は多くの場合に、一つの平面にある工具またはセンサに対して相対的に、対象物を位置決めすることを必要とする。そのために大抵、XとY方向でスライド自在であると共に対象物か工具ないしセンサが付いているテーブルを使用する。そのために、回転テーブルを使って対象物を回転し、加えて直線テーブルにより直線的にスライドする。そのような機械構成はないしそのような運動は、例えばUS 6,320,609 B1号で公知であり、以下において極座標運動としても表す。
【0067】
一定の回転運動は、この種の運動で一定の加速力になり、それにより較正可能な一定の変形になる。尤も、高い精度要求に対して現在まで、対象物と工具ないし対象物とセンサの相対位置を特定するための適切な測定手段がない。
【0068】
今まではそのような極座標運動で、大抵は光学式位置測定装置として構成されている二つの位置測定装置を使用する。そこでは直線テーブルの位置を、直線的な位置測定装置を使って特定する;直線テーブルに取り付けられた回転テーブルの回転角の検出は、角度測定装置を使って行う。その場合に位置測定と角度測定を一般的にシーケンシャルで行う。よって、対応して測定サークルが大きくドリフトに敏感である。加えて、直線テーブルと回転テーブルのガイド偏差は検出されない。従って、そのような測定コンセプトを介して達成できる精度は、大きく制限を受ける。本発明による光学式角度測定装置は、一般的な回転角検出用途の他に、当該種類の機械構造において位置検出するために使用できるものである。
【0069】
図6と7において、先に言及した極座標運動を有する機械を概略的に図示しており、その中で本発明による光学式角度測定装置の第二実施形態が組み込まれている。図8a,8b,9a,9bおよび10a,10bを使って、これを第一実施例の説明に類似して説明する。
【0070】
呈示の第二実施例でも後に記載の実施例でも、それぞれ先に説明した第一実施例ないし他の実施例に対する重要な差異のみを説明することにする。
位置固定された機械のベット30上に、X方向に沿ってスライド自在である直線テーブル31が配設されている。そのために必要なガイド要素も駆動要素も、ここでは図に示していない。直線テーブル31上には、中央の回転軸Rを中心にして回転自在である回転テーブル35が固定されている。対象物33を有する回転テーブル35は、直線運動と回転運動の重ね合わせにより、位置固定されたセンサ32、例えば顕微鏡に対して螺旋状に移動することができる。機械ベット30と接続している位置固定のブリッジ34上にはセンサ32の他に、直線走査検知格子123を有する走査検知プレート124も設けられている。回転テーブル35上には対象物33に隣接して、測定目盛の付いた目盛板110が配設されている。走査検知ユニット120が目盛板110と走査検知プレート124の交点で、その上にある二つの目盛を走査検知して走査検知信号を生成し、それにより直線テーブル31の各X位置で回転テーブルの回転角を特定する。そのために走査検知ユニット120は、直線テーブル31上に固定されている。
【0071】
本発明による角度測定装置の第二実施形態の走査検知光路ないし走査検知光学系を、図8aと8bで示している;同じく光線経路を引き延ばした図示は、図9aと9bにある。
第一実施形態との違いとして、走査検知プレート124ないし走査検知格子123が、ここでは走査検知ユニット120の外側に配設されている。従って、この実施例で走査検知ユニット120に含まれるのは、光源および複数の光電子式ディテクタ要素であり、それらは図においてそれぞれ図示していない。
【0072】
図6と7から分かるように、走査検知格子ないし走査検知プレート124に対向して、少なくとも一つの走査検知ユニット120がスライド自在で、そして目盛板110が更に回転自在で配設されている。ここで回転テーブル35には目盛板110が、直線テーブル31上には走査検知ユニット120が、そして位置固定された機械ベット30には走査検知格子を備えた走査検知プレート124が配設されている。
【0073】
走査検知プレート124には、反射性の直線走査検知格子123が付いており、それが直線テーブル31の移動方向Xで伸びている、即ち、目盛線の長手方向が直線テーブルの移動方向に沿って延伸している。光源−図示していない−の平行光線光束がXZ面において、まず位置P1で傾斜して目盛板110に当たる。位置P2を介して目盛板110が光束を透過するので、その光束が位置P3で反射性の直線走査検知格子123に当たり、それが二つの分光光束に分割してY方向に屈曲する。それらはX方向でずれて位置P4a,P4bで、目盛板110の第一組合せラジアル円環格子111.1に到達する。これが二つの分光光束をYZ面で再び光学軸Zに対して平行に向け、そして重ね合わされた円筒レンズ作用により、それらを目盛板110の背面側にあるミラー112上の位置P5a,P5bにX方向で集束する。分光光束は反射後に、第二組合せラジアル円環目盛111.2上にある位置P6a,P6bに到達し、それが再び円筒レンズ作用によりX方向で再平行光線化すると共に、重ね合わされた屈曲作用によりYZ面で入射する分光光束に対して反対に逆屈曲する。それにより二つの分光光束は、反射性の走査検知格子123上の共通点P7に当たり、そこで重ね合わされて、重ね合わされた分光光束として、走査検知プレート124の位置P8a,P8b,P8cおよびP9a,P9b,P9cを経て、結果として0次および±1次回折次数で出て行く。走査検知ユニット120における光電子式ディテクタ要素による検知は第一実施例に相当しており、この実施例に対する図においては図示していない。
【0074】
図10aは、リング状ミラー112を有する目盛板110の下側を示している。図10bでは、リング状の組合せラジアル円環目盛111.1と111.2を図示している。図10cでは、走査検知プレート124の延ばされた直線走査検知格子123が分かる。これらの図においても同じく、分光光束が走査検知光路の色々な要素に衝突する位置を図示している。
【0075】
本発明による角度測定装置のこの実施形態で、平行光線化されたレーザ光束がXZ面で傾いていることにより、目盛板110に当たる分光光束の分離が達成されるので、分光光束は、位置P2,P8a,P8b,P8cにおいて透過され、そして位置P4a,P4b,P6a,P6bにおいて格子111.1と111.2で回折される。先に記載している式に従って格子111.1と111.2の格子構造を計算するとき、この光線傾斜によるkベクトルの横方向成分を考慮せねばならない。それが、対応して適合化された方位方向格子ベクトルkA1aおよびラジアル方向格子ベクトルkA1rになる。XZ面における光線傾斜は、第二組合せラジアル円環格子110.2に向かう更なる光線経過で保持される。そのために、方位方向格子ベクトルkA2aおよびラジアル方向格子ベクトルkA1rを対応して選択する。
【0076】
この走査検知光学系により、直線テーブル31の各X位置での角度Θを測定できる。走査検知ユニット120の位置は、走査検知プレート124と目盛板110の規定交点の下側に近似的に保持されねばならないのみである。走査検知ユニット120の小さいズレまたは傾きは、角度の特定に影響を与えない。より正確に考察すると、この特性にとって重要なことは、逆反射と光波前面補正が走査検知ユニット120で行われず、目盛板上のラジアル円環格子により行われることである。よって出力される角度の値にとって、走査検知プレート124と目盛板110の相対的な位置のみが重要である。目盛板110の直線および回転移動が重ね合わされているにも拘わらず、位置固定された走査検知プレート124に対して相対的な直接位置測定を行うことができる。図7で概略的に示している測定サークル40は対応して小さい。センサ32に対して特にドリフトの少ない対象物33の測定が、小さい測定サークル40により利点のある方法として可能になる。
【実施形態3】
【0077】
図11a,11b,12a,12bおよび13a,13b,13cにおいて、本発明による角度測定装置の第三実施形態を図示している。この変形例は同じく、先に言及した極座標運動に使用することができる。
【0078】
第二実施例との違いとして、第二組合せラジアル円環格子210.2の特別な構成により、XZ面における分光光束の光線の傾きが回転されるので、二つの分光光束は引き続いて例えば−X方向に傾いている。よって、間隔が狭いことにより光源およびディテクタ要素を、走査検知ユニットにコンパクトに収容することができる。第二組合せラジアル円環格子210.2の特別な構成は、X方向で対応する格子ベクトルにより得られ、それが方位方向およびラジアル方向成分に分割されると共に、方位方向格子ベクトルkA2aないしラジアル方向格子ベクトルkA2rに加えられる。
【実施形態4】
【0079】
本発明による光学式角度測定装置ないし走査検知光路の第四実施形態を、図14と15で概略的に図示している;この変形例も同じく、極座標運動を有する機械での使用に適している。
【0080】
この実施形態で特別なことは、位置固定されて配設されている走査検知ユニット320にあり、それには直線偏光された平行光線光源321およびディテクタ要素322.1,322.2,322,3を含んでいる。直線偏光された光源の光束は、X方向に対して反対側で屈曲ユニットの方向転換ミラー60.1の方に送られ、そこで反射により目盛板310の方に向けられる。続く光線進路において光束は、反射性の走査検知格子323で二つの分光光束に分割され、引き続いてλ/8位相差プレート70.1ないし70.2を通過する。第一ラジアル円環格子311.1での回折、ミラー312での反射、そして第二ラジアル円環格子311.2での回折の後に、λ/8位相差プレート70.1ないし70.2を改めて通過する。それにより分光光束の直線偏光が、右ないし左円偏光に変換される。反射性の走査検知格子323における第二回折が、互いの間で直角に偏光された分光光束を重ね合わせて、結果として0次回折次数で出て行く合成分光光束にする。それが屈曲ユニットの第二方向転換ミラー60.2により、X軸に対して平行に向けられ、走査検知ユニット320の方向に進む。この中には分光格子81があり、それが合成分光光束を三つの合成光束に分割する。それらが、それぞれポラライザ80.1,80.2ないし80.3を通過する。これらは、ディテクタ要素322.1,322.2ないし322,3による後続の検知が互いの間で120°位相がずれた走査検知信号を出すように、異なって方向付けられている。
【0081】
それぞれ入射する光束に対して屈曲ユニットとして作用する二つの方向転換ミラー60.1と60.2、そしてλ/8位相差プレート70.1と70.2も、既に述べているように直線テーブルに配設されており、直線テーブルを介して規定のX方向でスライド自在である。よって、直線テーブルのX位置に関係なく不変の光線進路が保証されている。走査検知ユニット320は著しいロス出力を生むことがあるので、空間的に離れて配設することが、問題となる部品、特に目盛板310および走査検知プレート324の熱的な負荷を最小にする。それにより測定精度を更に向上することができ、そして出力される位置の値のドリフトが著しく減少する。
【0082】
従って呈示の実施例において目盛板310は、位置固定された走査検知ユニット320および位置固定された走査検知プレート324ないしその上に配設された走査検知格子に対して、相対的に可動自在で配設されている。ここでは走査検知格子と走査検知ユニット320が、目盛板310の中心を通る軸に沿って目盛板310に対して可動自在である。そのために、回転軸Rを中心に回転自在である機械の回転テーブルに、目盛板310が円周方向に配設されているのに対して、位置固定された機械ベットに、走査検知ユニット320と走査検知格子ないし走査検知プレート324が配設されている。
【0083】
勿論、直角の直線変更または円偏光を達成するために、本発明による光学式角度測定装置のこの実施形態を更に変形して、別の偏光光学構成要素を分光光束の光路に嵌め込むこともある。それに相当して専門家には、合成光束をスライド量に関係して位相のずれた走査検知信号に変換するために、走査検知ユニット320における偏光光学構成要素の別の配設もある。
【実施形態5】
【0084】
本発明による光学式角度測定装置の第五実施形態を、図16と17で大きく概略化して図示している;この実施形態も、極座標運動を有する機械で使用するために適している。
当該機械には同じく、回転軸Rを中心に回転自在の回転テーブル−図示していない−を含んでおり、それが直線テーブル−同じく図示していない−に、X方向に沿ってスライド自在で配設されている。回転テーブルの内側範囲には、内側第一目盛板410が配設されており、それを、三つの走査検知プレート424.1,424.2,424.3およびそれに関連配置された三つの走査検知ユニット420.1,420.2,420.3を使って走査検知する。ここで走査検知プレート424.1,424.2,424.3と走査検知ユニット420.1,420.2,420.3は、目盛板410に対して相対的に色々な方位方向位置で配設されている。走査検知プレート424.1,424.2,424.3が、静止した機械ベースに繋がっているのに対して、走査検知ユニット420.1,420.2,420.3は、X方向でスライド自在の直線テーブルに配設されている。その他に回転テーブルの外周に更に、複数の目盛板セグメントに細分化された外側第二目盛板410.1が設けられており、その動きが追加の走査検知プレート424.4と追加の走査検知ユニット420.4を介して検出される;走査検知プレート424.4は同じく、静止した機械ベースと繋がっており、走査検知ユニット420.4は、直線テーブル上に配設されている。
【0085】
四つの走査検知ユニット全て420.1〜420.4が、回転テーブルの回転角Θに関係する位置信号を出す。しかし、より正確に観察すると走査検知ユニット420.1〜420.4により、目盛板410ないし410.1で方位方向に対して平行な直線スライド量を、走査検知プレート424.1,424.2,424.3と424.4に対して相対的に測定する。即ち、この構成を介することにより、XY面で移動する対象物の全自由度を検出することができる。
【0086】
走査検知ユニット420.2と420.3のプラス測定方向を+X方向で示し、走査検知ユニット420.1と420.4のそれを+Y方向で示すと、付属する走査検知信号ξとξないしξとξに対して、次の関係が得られる:
【0087】
【数13】

【0088】
そこで R 内側目盛板410の目盛半径
外側目盛板410.1の目盛半径
以上から、角度ΔΘおよび回転テーブル中心のスライド量ΔxとΔyを特定することができる:
【0089】
【数14】

【0090】
回転テーブル中心のこのテーブルスライド量を、機械のセンサの位置におけるそれに変換することは、勿論、容易に可能である。よって、この配設を介して基本的に、回転テーブル上にある一つまたは複数の対象物の横方向自由度Δx,ΔyとΘ全てを、センサに対して相対的に特定できる。走査検知ユニット420.1,420.2,420.3と420.4が更に−図示していない方法で−、目盛板410ないし410.1と付属する走査検知プレート424.1,424.2,424.3ないし424.4の交点で、XY面に対して直角、即ちZ方向でのスライド量を測定できるように構成されていると、当該対象物の6自由度全てを、位置固定されたセンサに対して相対的に測定できる。
【0091】
先に言及したようにこの測定は、位置固定された機械ベースから直線テーブルに、そして直線テーブルから回転テーブルにシーケンシャルで行うのではない;本発明による角度測定装置の図示した配設では、寧ろ直接の測定ないし位置特定が可能になる。Zスライド用の適切な測定装置は、例えば平面ミラー干渉計、焦点センサのような光学式センサが好ましい;これに対する代替として、Z方向で走査検知測定するための容量式測定装置も適しているであろう。
【0092】
この実施例においては三つの横方向自由度を測定するために、四つの走査検知ユニット420.1,420.2,420.3,420.4が設けられている。即ち、一つの冗長走査検知ユニットがある。それにより、外側の目盛板410.1の僅かな中断を許容すること、これを複数の目盛板セグメントで構成することが可能である。よって、外側の目盛板410.1をセグメント化することに利点があり、それは、セグメントは例えば一個体の大きな目盛板と較べて、その制限されたサイズにより明らかに容易且つコスト的に有利に製造可能であるからである。セグメントの境界およびそれにより信号の中断は、センサ432が回転テーブル上の二つの対象物の間にある位置で行うと好ましい。そこでは、走査検知ユニット420.4のインクリメントカウンタが無効である。目盛板410.1の次のセグメントが、外側の走査検知ユニット420.4の範囲に回転すると、別の三つの走査検知ユニット420.1,420,2,420.3の横方向の位置特定を使うことにより、外側の走査検知ユニット420.4のインクリメントカウンタ値を、十分に正確に評価すると共に対応して設定することもできる。更に精度向上するために、外側の目盛板410.1のセグメント間の更に小さい位相オフセットを検出し補正することがある。
【実施形態6】
【0093】
図18と19では、本発明による光学式角度測定装置の第六実施形態を示している;意図しているのは、同じく極座標運動を有する機械への使用である。
目盛板510が、ここでは四つの走査検知ユニット520.1,520.2,520.3,520.4および、付属する位置固定された走査検知プレート524.1,524.2,524.3,524.4により走査検知される。走査検知プレート524.1,524.2,524.3,524.4は、同じく直線格子として構成されているが、方位方向で大きな拡がりを有しており、この方向でも走査検知位置がある程度のスライドすることも可能である。それにより、X方向でもY方向でもスライド自在である回転テーブル531も使用することが可能である。テーブル531上には、走査検知ユニット520.1,520.2,520.3,520.4が固定されている。
【0094】
この本発明による光学式角度測定装置の実施形態は同じく、横方向自由度X,YとΘ全てでの測定を可能にし、非常に大きなスライド量も全てのこの自由度で可能であるという特別性を有している。加えて、走査検知ユニット520.1,520.2,520.3,520.4に同じくZスライド用の測定機構を含む時に、回転テーブル531の六つの自由度全てを、位置固定された走査検知プレート524.1,524.2,524.3,524.4に対して相対的に特定することができる。
【更に別の実施形態】
【0095】
勿論、本発明による光学式角度測定装置の別の変形体において、十字格子、即ち二次元目盛を走査検知格子として使用することもできるであろう。それにより、回転テーブルで特に大きな直線または平面のスライドも検出できるであろう。また、対応する大きな一つだけの十字格子を、走査検知ユニット全てに対する共通の走査検知格子として設けることも可能である。更に走査検知ユニットの方位方向位置を、目盛板上で任意にそして極座標運動を有する機械における直線ないしXYテーブルの移動方向とは関係なく、選択することができる。そのとき走査検知格子の方向は、走査検知位置での方位方向と一致していなければならない。
【0096】
更に、二つの組合せラジアル円環格子を目盛板の下側で反射格子として、そしてミラーをその上側に構成することも可能である。それにより光線の進み方が、目盛板内部でW状等になる。
【符号の説明】
【0097】
10 目盛板
11 組合せラジアル円環格子
12 ミラー
20 走査検知ユニット
21 光源
22 光電子式ディテクタ要素
23 直線走査検知格子
24 走査検知プレート
30 機械ベット
31 直線テーブル
32 センサ
33 対象物
34 ブリッジ
35 回転テーブル
40 測定サークル
60 方向転換ミラー
70 λ/8位相差プレート
80 ポラライザ
81 分光格子
110 目盛板
111 組合せラジアル円環格子
112 ミラー
120 走査検知ユニット
123 直線走査検知格子
124 走査検知プレート
210 組合せラジアル円環格子
310 目盛板
311 ラジアル円環格子
312 ミラー
320 走査検知ユニット
321 光源
322 ディテクタ要素
323 走査検知格子
324 走査検知プレート
410 目盛板
420 走査検知ユニット
424 走査検知プレート
432 センサ
510 目盛板
520 走査検知ユニット
524 走査検知プレート
531 回転テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの走査検知格子(23.1,23.2;123;223;323)および少なくとも一つの測定目盛を有する目盛板(10;110;210;310;410;510)の間の相対移動を検出するための光学式角度測定装置において、
−走査検知格子(23.1,23.2;123;223;323)が、直線走査検知格子として構成されており、そして
−目盛板(10;110;210;310;410;510)には測定目盛として、第一および第二組合せラジアル円環格子(11.1,11.2;111.1,111.2;211.1,211.2;311.1,311.2)を含み、そしてミラー(12;112;212;312)を有しており、それにより、
−入射する光束が走査検知格子(23.1,23.2;123;223;323)で、まず二つの分光光束に分割され、
−その分光光束が、第一組合せラジアル円環格子(11.1;111.1;211.1;311.1)の方向に進み、そこで回折され、
−その回折された分光光束が、ミラー(12;112;212;312)の方向に進み、そこで第二組合せラジアル円環格子(11.2;111.2;211.2;311.2)の方向に反射され、
−その分光光束が、第二組合せラジアル円環格子(11.2;111.2;211.2;311.2)の方向に進み、そこで回折され、
−その回折された分光光束が、走査検知格子(23.1,23.2;123;223;323)の方向に進み、そこで分光光束の重ね合わせが生じる、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式角度測定装置において、
組み合された第一および第二ラジアル円環格子(11.1,11.2;111.1,111.2;211.1,211.2;311.1,311.2)が、少なくとも一つの方位方向光学的屈曲作用を、リング状に曲げられたラジアル方向円筒レンズの光学的作用と一緒に備えている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学式角度測定装置において、
第一組合せラジアル円環格子(11.1,11.2;111.1,111.2;211.1,211.2;311.1,311.2)が、分光光束に対する長手方向および横方向の屈曲作用の他に、更にミラー(12;112;212;312)への分光光束の集束を生じるように構成されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光学式角度測定装置において、
第二組合せラジアル円環格子(11.1,11.2;111.1,111.2;211.1,211.2;311.1,311.2)が、分光光束に対する長手方向および横方向の屈曲作用の他に、走査検知格子(23.1,23.2;123;223;323)の方向に進む分光光束の再平行光線化が生じるように構成されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学式角度測定装置において、
組み合わされた第一および第二ラジアル円環格子(11.1,11.2;111.1,111.2;211.1,211.2;311.1,311.2)が、目盛板(10;110;210;310;410;510)の全周に亘ってリング状で配設されており、リング全周に亘って一定の方位方向格子周期を有し、そしてラジアル方向では変化するラジアル格子周期を有している、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光学式角度測定装置において、
ミラー(12;112;212;312)が、目盛板(10;110;210;310;410;510)の全周に亘ってリング状で配設されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項7】
請求項5と6に記載の光学式角度測定装置において、
目盛板(10;110;210;310;410;510)が透明な材料で出来ており、第一側には組み合わされた第一および第二ラジアル円環格子(11.1,11.2;111.1,111.2;211.1,211.2;311.1,311.2)が配設されており、反対側の第二側にはミラー(12;112;212;312)が配設されており、その反射面が第一側に向けられている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかに記載の光学式角度測定装置において、
走査検知格子(123;223;323)が、反射性走査検知格子として構成されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の光学式角度測定装置において、
光源(21;321)および複数の光電子式ディテクタ要素(22.1〜22.3;322.1〜322.3)が、走査検知ユニット(20;120;320;420.1〜420.4;520.1〜520.4)に配設されており、光源(21;321)から発せられた光束を走査検知格子(23.1,23.2;123;223;323)に送ることができ、重ね合わされた分光光束を光電子式ディテクタ要素(22.1〜22.3;322.1〜322.3)に送ることができる、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光学式角度測定装置において、
走査検知ユニット(20)に更に走査検知格子(23.1,23.2)が配設されており、目盛板(10)が走査検知ユニット(20)に対して可動で配設されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項11】
請求項9に記載の光学式角度測定装置において、
走査検知格子(123;223)に対して、少なくとも一つの走査検知ユニット(120;420.1〜420.4;520.1〜520.4)がスライド自在で、そして目盛板(110;210;410;510)が回転自在で配設されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項12】
請求項9に記載の光学式角度測定装置において、
少なくとも一つの走査検知ユニット(320)が、走査検知格子(323)と一緒に目盛板(310)に対して、目盛板(310)の中心を通過する軸(X)に沿って相対的に可動で配設されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項13】
請求項9に記載の光学式角度測定装置において、
複数の走査検知ユニット(420.1〜420.3)およびその走査検知ユニット(420.1〜420.3)に関連配置された複数の走査検知格子(424.1〜424.3)を有しており、その走査検知ユニット(420.1〜420.3)と走査検知格子(424.1〜424.3)が、色々な方位方向位置で目盛板に対して相対的に配設されている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項14】
請求項9に記載の光学式角度測定装置において、
目盛板(410.1)が複数の目盛板セグメントで出来ている、ことを特徴とする光学式角度測定装置。
【請求項15】
請求項9に記載の光学式角度測定装置において、
−走査検知ユニット(320)から来る光束を、屈曲ユニットを介して目盛板(310)の方向に向けることができ、そして
−目盛板(310)から来る光束を、屈曲ユニットを介して走査検知ユニット(320)の方向に向けることができる、ことを特徴とする光学式角度測定装置。

【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−98287(P2012−98287A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241359(P2011−241359)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(501232827)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】