説明

光学材料形成用シリコーン樹脂組成物及び光学材料

【解決手段】加水分解性シラン化合物(A)を含むケイ素系単量体を加水分解・縮合して得られるケイ素系高分子化合物を含む光学材料形成用シリコーン樹脂組成物であって、加水分解性シラン化合物(A)は、脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子には合計で3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物であり、上記ケイ素系単量体は、加水分解性シラン化合物(A)をケイ素基準で70モル%以上含み、芳香族骨格を含むケイ素原子の置換基の割合が、ケイ素原子に結合した置換基全体の30%モル以下である光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
【効果】本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物は、透明性に優れ、熱衝撃等のストレスに強い硬化物を与えることができる。従って、光学材料の用途に好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイス・光学部品用材料等として有用な光学材料形成用シリコーン樹脂組成物及びそれを加熱硬化して得られる光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学デバイス・光学部品用材料、特に発光ダイオード(LED)素子の封止材料として、一般的にエポキシ樹脂が用いられてきた。また、シリコーン樹脂に関しても、LED素子のモールド材料等として用いること(特許文献1:特開平10−228249号公報、特許文献2:特開平10−242513号公報)や、カラーフィルター材料として用いること(特許文献3:特開2000−123981号公報)が試みられているが、実際上の使用例は少ない。
【0003】
近年、白色LEDが注目される中で、これまで問題とされなかったエポキシ樹脂封止材の紫外線等による黄変や、小型化に伴う発熱量の増加によるクラックの発生等に対する対応が急務となっている。これらの対応策としては、分子中に多量のフェニル基を有するシリコーン樹脂を封止材として用いることが検討されている(特許文献4:特開2010−180323号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【特許文献2】特開平10−242513号公報
【特許文献3】特開2000−123981号公報
【特許文献4】特開2010−180323号公報
【特許文献5】特開2010−43211号公報
【特許文献6】特開2008−19423号公報
【特許文献7】特表2009−506195号公報
【特許文献8】特表2009−538839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシリコーン樹脂組成物の硬化物の多くは、高い成形性を得るためにハイドロシリレーションを中心とした付加重合によって製造されてきた(例えば、特許文献4:特開2010−180323号公報)。しかし、発光素子に対する適用のような長時間の耐光性等を考えた場合、シリコーン樹脂組成物の硬化物中に光励起能を有するような金属触媒が残存することは好ましくない。
【0006】
また、熱によるクラック等の発生を防止するためにケイ素原子の置換基としてフェニル基が多量に導入されてきた。しかし、高濃度のフェニル基を含有するシリコーン樹脂組成物の硬化物は、熱衝撃等のストレスに対する耐性を低下させ、更に紫外線の強い吸収を持つため、紫外部領域の透明性に劣り、長時間使用した場合、耐光性に問題がでるケースもあった。特に、照明等に用いられる可視光を放射するLEDでは、LEDにより紫外線領域を含む光を放射させ、それを可視光に変換して使用するが、この場合、紫外線による光学材料の劣化は特に問題であった。
【0007】
一方、脂肪族基を置換基として有するケイ素系高分子材料の主要な原料として用いられる単核の加水分解性シラン化合物(ケイ素原子1つを持つ加水分解性シラン化合物)を加水分解して得たケイ素系高分子化合物は、次のような理由から光学材料として用いることが難しかった。即ち、加水分解基について3価以上の加水分解性シラン化合物を主たる材料として用いた場合には、熱による応力に耐性のある材料とすることが難しく、一方、ジアルコキシジアルキルシランのような2価の加水分解性シランを用いた場合には、300℃を超えるような高温条件では部分的に環状シロキサン化合物を形成して樹脂から脱離し、重量減少を示すという問題があった。これらの材料は、大きな温度変化があり、かつ長時間高温条件で光が照射されるような光学材料としては用い難い材料であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、耐熱性が高く、熱衝撃等のストレスに強く、耐光性に優れる光学材料形成用シリコーン樹脂組成物及びそれを加熱硬化して得られる光学材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意努力を行ったところ、複数のケイ素原子間が架橋基で結ばれた、特定の構造のケイ素原子に関する多核の加水分解性シラン化合物を含むケイ素系単量体を加水分解・縮合して得られるケイ素系高分子化合物を含有する組成物を調製し、溶剤の除去、あるいは硬化温度以下の温度で塑性変形させて1次成形した後、熱硬化を行ったところ、熱変形を要求レベル以下に抑制しつつ、高い耐熱性、熱衝撃等のストレス耐性及び耐光性を有する光学材料が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物及び光学材料を提供する。
請求項1:
加水分解性シラン化合物(A)を含むケイ素系単量体を加水分解・縮合して得られるケイ素系高分子化合物を含有する光学材料形成用シリコーン樹脂組成物であって、
上記加水分解性シラン化合物(A)は、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子には合計で3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物であり、
上記ケイ素系単量体は、上記加水分解性シラン化合物(A)をケイ素基準で70モル%以上含むと共に、上記ケイ素系単量体が有する上記架橋基を含むケイ素原子の置換基のうち、芳香族骨格を含む置換基の割合が、上記ケイ素原子に結合した置換基全体に対して30%モル以下である
ことを特徴とする光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
請求項2:
上記脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、合計で3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Qは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基であり、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基であるが、Q1、Q2、Q3のうち1つ以上及びQ4、Q5、Q6のうち1つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれ、更にQ1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6のうち3つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれる。)
で示されるシラン化合物である請求項1記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
請求項3:
上記ケイ素系高分子化合物は、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Vは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基、W1、X1、Y1及びZ1はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子を示すと共に、W1、X1、Y1及びZ1のうち必ず1以上は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基、及びSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子より選ばれるが、W1、X1、Y1及びZ1全てがSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子となることはない。)
で示される繰り返し単位を上記ケイ素系高分子材料を構成する全繰り返し単位中70モル%以上含有するケイ素系高分子化合物である請求項1又は2記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
請求項4:
更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
請求項5:
上記無機充填剤は、シリル化剤又はシランカップリング剤により表面処理された無機充填剤である請求項4記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
請求項6:
請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物を加熱硬化して得られる光学材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物は、ジアルキルシロキサン鎖を主体としないために熱分解によるシロキサン汚染の心配が無く、透明性に優れ、熱衝撃等のストレスに強く、耐熱性や耐光性に優れた硬化物を与えることができる。従って、発光ダイオード素子の保護、封止、接着、波長変更又は波長調整用材料、レンズ等のレンズ材料、光学デバイス・光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の光学材料の用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学材料を使用したLEDランプの一実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物は、加水分解性シラン化合物(A)を含むケイ素系単量体を加水分解・縮合して得られたケイ素系高分子化合物を含有するものである。なお、ここでケイ素系単量体とは、加水分解性シラン化合物を加水分解・縮合する条件により縮合体を与える単量体であり、加水分解性シラン化合物やシリケート類の総称である。
【0014】
ここで、上記ケイ素系高分子化合物を得るための加水分解・縮合反応に用いるケイ素系単量体に含まれる加水分解性シラン化合物(A)は、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子に3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物である。また、全ケイ素系単量体中、加水分解性シラン化合物(A)は、ケイ素基準で70モル%以上含有され、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは全てを占める。上記シラン化合物の割合が70モル%より低くなると、本発明の効果である熱衝撃等のストレス耐性が低下してしまうことがある。
【0015】
上記1対以上のケイ素原子とは、2つのケイ素原子が上記架橋基により結合されているものでもよく、3つ又はそれ以上のケイ素原子が上記架橋基を介して直鎖状に結合されているものや、1つのケイ素原子より3つのケイ素原子に対して上記架橋基を介して結合されているようなものでもよく、更に上記架橋基を介して直鎖状に連結したケイ素原子による連結鎖に含まれるケイ素原子より更に分岐して、上記架橋基により上記直鎖に含まれないケイ素原子と連結された分岐鎖を持つものでもよい。
【0016】
また、上記ケイ素系高分子化合物を得るための加水分解・縮合反応に用いるケイ素系単量体に含まれる、上記加水分解性シラン化合物(A)が有する架橋基を含む、ケイ素原子の全置換基に占める芳香族骨格を含む置換基の割合は30%モル以下である。芳香族骨格を含む置換基の割合が全置換基の30%を超えた場合、熱衝撃等のストレス耐性の不足によるクラックの発生、経時での黄変、耐光性の低下のおそれがある。なお、本発明において、置換基とはケイ素原子に直接結合している原子又は基を示し、かかる点から架橋基も含むが、シロキサン結合の酸素原子は含まれないものとする。
【0017】
上記脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子上に3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物が有する1対以上のケイ素原子を結ぶ架橋基は、上述の通り炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香環含有炭化水素基より選択される。上記炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基としては、2価の基が好ましく、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等を例示することができるが、これらに限定されない。また、上記炭素数6〜12の芳香環含有炭化水素基としては、2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、キシリレン基等を例示することができるが、これらに限定されない。このうち、特に好ましい架橋基としてはジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができ、これらを選択することにより、特に、耐熱性が良好で、弾性率が低く、熱衝撃等のストレス耐性の高い硬化物を得ることができる。
【0018】
上記脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子上に3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物が有することができる上記加水分解性基は、典型的にはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、アルコキシ基の場合、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族アルコキシ基であることが好ましい。好ましい加水分解基としては、塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0019】
また、上記脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子上に3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物に含まれるケイ素原子は、側鎖として水素原子、水酸基及び/又は加水分解性基以外の有機基を有しても良く、該有機基として好ましくは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香環含有炭化水素基等を挙げることができる。なお、環状とは単環状でも多環状でもよい。上記アルキル基として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、ビシクロノニル基、デカリニル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、上記芳香環含有炭化水素基として好ましくは、フェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。芳香環含有炭化水素基を用いる場合には、高屈折率の硬化物が得られ、成型時の形状安定性を高めることができるが、上述のように、本発明の耐光性に対する効果を十分に得るためには、架橋基を含めた全てのケイ素原子の置換基に対し、30モル%以下である必要があり、特に紫外線への耐光性を高める設計にする場合には、20%以下、特に10%以下することが好ましく、実質的に含まないものが最も高い耐光性を与える。
【0020】
上述の架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有すると共に、該1対以上のケイ素原子に3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物として、好ましくは、例えば、下記一般式(3)〜(5)示される加水分解性シラン化合物を挙げることができる。
【化3】

(式中、aは1〜20の整数、rはそれぞれ独立に1〜3の整数であり、sは0〜2の整数であり、しかし全てのrが1の時は全てのsが0にはならない。また、bは2〜6の整数であり、tは0〜2の整数であると共に、全てのtが0にはならない。cは1〜4の整数であり、cが1の場合、全てのrは1にはならない。Rは炭素数1〜12の置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基である。Yはそれぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基から選択され、またZalは2価の炭素数1〜10の環状構造を含んでいてもよい直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、Zxは炭素数1〜10の環状構造を含んでいてもよく、炭素原子に結合した水素原子がハロゲン原子や炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されてもよい直鎖状、分岐状又は環状の(c+1)価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の(c+1)価の芳香環含有炭化水素基を示す。)
【0021】
これらのシラン化合物を加水分解・縮合させることによって、得られるケイ素系高分子化合物中に、上記脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基との直接の結合を持つケイ素原子を導入することができる。
【0022】
上記式(3)及び(4)中のZalである脂肪族炭化水素基としては、鎖状の好ましく選択されるものとして、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、ペンテン基、ヘキセン基及びその異性体等を挙げることができる。環状の好ましく選択されるものとしては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環及び更にシクロペンタン環、シクロヘキサン環にメチレン鎖を介してケイ素原子に結合する架橋基等を挙げることができる。また、上記一般式(3)中のZxとして好ましく選択されるものとして、Zalとして例示した脂肪族鎖状及び環状の炭化水素基のほか、芳香環含有炭化水素基として、ベンゼン環及びジメチレン鎖を介してベンゼン環とケイ素原子が結合される架橋基等を挙げることができる。
【0023】
上記式(3)、(4)及び(5)中のRとして選択される1価の脂肪族炭化水素基として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基及びその異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビシクロノニル基、デカリニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。また、1価の芳香環含有炭化水素基として好ましくは、フェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等を挙げることができる。なお、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全てがフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基等で置換されていてもよい。
【0024】
また、上記式(3)において少なくとも1つのrが2又は3であり、かつ少なくとも1つのsが1又は2である場合、上記式(4)において2つ以上のtが1又は2である場合、上記式(5)において少なくとも1つのrが2又は3である場合には、特に高い耐熱性が期待できる。
【0025】
上述のケイ素系高分子化合物は、本発明者らにより特許文献5(特開2010−43211号公報)で耐熱性接着剤として有用な材料として提案されたものであるが、ケイ素原子1つによる単核の加水分解性シランを用いた場合には、3価以上の加水分解性シランを多量に用いると、熱衝撃等によるストレスへの耐性が低下し、2価の加水分解性シランを多量に用いた場合には、上述のように熱耐性が低下してしまう。そこで、上述のようなケイ素原子間を炭化水素基で架橋され、熱硬化後に3つ以上のSi−O−Si結合を形成する繰り返し単位を多量に含むケイ素系高分子化合物とすることで、単核の加水分解性シランを多量に用いた場合にはトレードオフとなる耐熱性と熱衝撃等のストレスへの耐性を同時に得ることができる材料とすることができる。この材料は、熱硬化時に水又はアルコールの脱離を伴う縮合メカニズムにより硬化するものであるが、処理シリカ等の充填剤を混合しても保存安定性や透明性、硬化特性に問題は無く、成形性、チキソ性の向上が得られ、光学材料として1mm以上の厚さを持つような硬化物を得ようとした場合にも成形性に問題なく成形体を得ることができ、熱変形に対する要求レベルを満たすことができる。
【0026】
上記ケイ素系高分子化合物を得るための加水分解・縮合反応に用いるに好ましい、上述の、脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子上に3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合した加水分解性シラン化合物としては、特に下記一般式(1)
【化4】

(式中、Qは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基であり、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基であるが、Q1、Q2、Q3のうち1つ以上及びQ4、Q5、Q6のうち1つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれ、更にQ1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6のうち3つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれる。)
で示されるシラン化合物が好ましい。
【0027】
上記式(1)中、Qは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基より選択される。上記炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等を例示することができるが、これらに限定されない。また、炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、キシリレン基等を例示することができるが、これらに限定されない。特に好ましくは、Qは炭素数1〜6の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基から選ばれ、これらを選択することにより、熱衝撃等のストレスに対する高い耐性を得ることができる。
【0028】
上記式(1)中、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、及び炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基より選ばれる。上記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、ビシクロノニル基、デカリニル基、アダマンチル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。更に、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
なお、Q1、Q2、Q3のうち1つ以上及びQ4、Q5、Q6のうち1つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれ、更にQ1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6うち3つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれる。これによって、一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合により得られるケイ素系高分子化合物の主鎖中に、Qで示される架橋単位を組み込むことができる。
【0030】
本発明において、加水分解性シラン化合物(A)は、1種単独でも又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
上記一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の好ましい具体例としては、1,2−ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1−(メチルジメトキシシリル)−2−(ジメチルメトキシシリル)エタン、1,3−ビス(メチルジメトキシシリル)プロパン、1−(メチルジメトキシシリル)−3−(ジメチルメトキシシリル)プロパン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1−(メチルジメトキシシリル)−4−(トリメトキシシリル)ブタン、1,5−ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1−(メチルジメトキシシリル)−5−(トリメトキシシリル)ペンタン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1−(メチルジメトキシシリル)−6−(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,2−ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、及び上記具体例中のメトキシ基をエトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びそのアルキル異性体等、又は水素原子としたもの等を挙げることができる。
【0032】
また、ケイ素系単量体として、上記のもの以外の加水分解性シラン化合物(B)を用いることができる。ここで用いることができる上記のもの以外の加水分解性シラン化合物(B)としては、ケイ素原子1つを持つ加水分解性シラン化合物を挙げることができ、具体的には下記一般式(6)
nSiL4-n (6)
(上記式中、Rは炭素数1〜12の置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基を示し、Lは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基を示す。nは0〜2の整数である。)
で示される加水分解性シラン化合物を挙げることができる。
【0033】
上記式(6)中、Rで示された基の好ましい具体例としては、上記式(3)〜(5)のRに対して挙げられたものと同一の置換基を挙げることができる。また、Lで示されたもののうち、アルコキシ基の好ましい具体例としては、上述のQ1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6に対して挙げられたものと同一の置換基を挙げることができる。
【0034】
本発明の材料の熱特性を得るためには、上記その他の加水分解性シラン化合物(B)の含有率は、全ケイ素系単量体中30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。30モル%を超えると、上記式(6)中のnが0又は1の加水分解性シラン化合物(B)を用いた場合は熱衝撃等のストレスに対する耐性が低下する傾向を示す場合があり、また、nが2の加水分解性シラン化合物(B)を用いた場合は耐熱性が低下するおそれがある。
【0035】
上述の加水分解性シラン化合物を含むケイ素系単量体を加水分解して得られる本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物に用いるケイ素系高分子化合物の好ましい具体例として、下記一般式(2)
【化5】

(式中、Vは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基、W1、X1、Y1及びZ1はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基、又はSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子を示すと共に、W1、X1、Y1及びZ1のうち必ず1以上は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、及びSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子より選ばれるが、W1、X1、Y1及びZ1の全てがSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子となることはない。)
で示される繰り返し単位を、上記ケイ素系高分子材料を構成する全繰り返し単位中、ケイ素基準で70モル%以上含有するケイ素系高分子化合物を挙げることができる。ただし、該ケイ素系高分子化合物が有する芳香環を含有する炭化水素基の含有量は、シロキサン結合の酸素原子を除いたケイ素原子に結合する全置換基(この置換基には上記架橋基Vも含まれる)中、30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下、特に好ましくは0モル%である。このようなケイ素系高分子化合物を含有する光学材料形成用シリコーン樹脂組成物を用いることにより、より高い耐熱性、熱衝撃等のストレス耐性、及び耐光性を有する光学材料を得ることができる。
【0036】
上記式(2)中、Vは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基であり、炭素数1〜6の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。Vの具体例としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、キシリレン基等を挙げることができ、好ましくは、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等であるが、これらに限定されない。
【0037】
また、上記式(2)で示される繰り返し単位中、W1、X1、Y1及びZ1は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基、又はSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子を示す。ここで、W1、X1、Y1及びZ1として選択し得るアルコキシ基の好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、W1、X1、Y1及びZ1として選択し得るアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、ビシクロノニル基、デカリニル基、アダマンチル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。更に、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、トルイル基、キシリル基、メシチル基等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
また、光学材料形成用シリコーン樹脂組成物用のケイ素系高分子化合物として、該高分子化合物を構成する繰り返し単位が有する架橋度が高すぎるものであると、溶剤溶解性が低くなり、使用し難いものになったり、成形時の可塑性が失われる場合がある。そのため、上記式(2)中のW1、X1、Y1及びZ1の全てがSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子となることはない。特に好ましいW1、X1、Y1及びZ1の選択としては、W1、Y1より1つ以上、X1、Z1より1つ以上が水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、又はSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子であり、かつ、W1、X1、Y1及びZ1のうち水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、又はSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子であるものが3個以下の場合である。
【0039】
本発明の上記式(2)で示される繰り返し単位をケイ素系高分子材料を構成する全繰り返し単位中70モル%以上含有するケイ素系高分子化合物を含有する光学材料形成用シリコーン樹脂組成物は、耐熱性が高く、熱衝撃等のストレスに強いうえ、更に耐光性に優れる光学材料を与える。
【0040】
上記式(2)で示されるケイ素系高分子化合物に含まれる特に好ましい繰り返し単位の具体例を下記に示す。
【化6】

【0041】
上記式(2)で示される繰り返し単位が上記式(7)で示される繰り返し単位の場合には、上記式(7)〜(9)で示される繰り返し単位の中で最も硬い材料とすることができ、上記式(2)で示される繰り返し単位が上記式(9)で示される繰り返し単位の場合には、最も熱衝撃によるストレスに強い材料とすることができる。また、上記式(2)で示される繰り返し単位が上記式(8)で示される繰り返し単位の場合には、水酸基が1つ含まれる繰り返し単位と2つ含まれる繰り返し単位の組成を調整することにより、上記物性を調整して好ましい特性を得ることができる。
【0042】
また、上記ケイ素系高分子化合物は、その他の繰り返し単位を含むことができる。上記その他の繰り返し単位としては、例えば、上記式(6)で示されるケイ素原子を1つ持つ加水分解性シラン化合物に由来する繰り返し単位を挙げることができる。
【0043】
本発明の材料の熱特性を得るためには、上記その他の繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。30モル%を超えると、上記式(6)中のnが0又は1の加水分解性シラン化合物に由来する繰り返し単位を用いた場合には熱衝撃等のストレスに対する耐性が低下する傾向を示す場合があり、また、nが2の加水分解性シラン化合物に由来する繰り返し単位を用いた場合には、熱耐性が低下するおそれがある。
【0044】
上記加水分解・縮合により得られる本発明のケイ素系高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは500〜5,000である。
【0045】
上記ケイ素系高分子化合物は、ケイ素系単量体として上述した加水分解性シラン化合物等を適宜選択して、1種単独で又は2種以上の混合物を、酸又は塩基性触媒を用いて加水分解・縮合させることで得ることができる。上記加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合方法としては、多数の公知例(例えば特許文献6:特開2008−19423号公報)が知られており、基本的にはいずれの方法を用いてもよい。なお、Si−H結合よりSi−O−Si結合を形成するためには、塩基性触媒を用いることが好ましいが、縮合状態をコントロールするために焼結時までSi−Hを保存しておき、焼結時にSi−H結合をSi−O−Si結合に変換するという設計も可能である。
【0046】
例えば、酸触媒を用いる場合には、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸や、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸誘導体、又は比較的酸性度の高いシュウ酸やマレイン酸のような有機酸等が使用される。酸触媒を用いる場合、その使用量は、全ケイ素系単量体に含まれるケイ素原子1モルに対して10-6モル〜10モル、好ましくは10-5モル〜5モル、より好ましくは10-4モル〜1モルである。
【0047】
酸触媒を用いる場合、上記加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合反応によりケイ素系高分子化合物を得るときの水の添加量は、加水分解性シラン化合物に結合している加水分解性置換基1モル当たり、好ましくは0.01〜100モル、より好ましくは0.05〜50モル、更に好ましくは0.1〜30モルである。100モルを超える添加は、反応に使用する装置が過大になり、不経済となることがある。
【0048】
操作方法としては、酸触媒水溶液に加水分解性シラン化合物を添加して加水分解・縮合反応を開始させる。このとき、酸触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、加水分解性シラン化合物を有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。加水分解性シラン化合物の滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0049】
酸触媒水溶液に加えることができ、かつ加水分解性シラン化合物を希釈することができる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0050】
これらの溶剤の中で好ましいものは水可溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、4−メチル−2−ペンタノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0051】
なお、酸触媒を用いる場合の有機溶剤の使用量は、加水分解性シラン化合物1モルに対して0〜1000mL、特に0〜500mLが好ましい。有機溶剤の使用量が多いと反応容器が過大となり、不経済となることがある。
【0052】
一方、塩基性触媒を用いる場合、使用される塩基性触媒として具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。塩基性触媒を用いる場合、その使用量は、全ケイ素系単量体1モルに対して10-6モル〜10モル、好ましくは10-5モル〜5モル、より好ましくは10-4モル〜1モルである。
【0053】
塩基性触媒を用いる場合、上記加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合反応によりケイ素系高分子化合物を得るときの水の添加量は、加水分解性シラン化合物に結合している加水分解性置換基1モル当たり、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは0.3〜50モル、更に好ましくは0.5〜30モルである。100モルを超える添加は、反応に使用する装置が過大になり、不経済となることがある。
【0054】
操作方法として、塩基性触媒水溶液に加水分解性シラン化合物を添加して加水分解・縮合反応を開始させる。このとき、塩基性触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、加水分解性シラン化合物を有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。加水分解性シラン化合物の滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0055】
塩基性触媒水溶液に加えることができ、かつ加水分解性シラン化合物を希釈することのできる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0056】
これらの溶剤の中で好ましいものは水可溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0057】
なお、塩基性触媒を用いる場合の有機溶剤の使用量は、加水分解性シラン化合物1モルに対して0〜1000mL、特に0〜500mLが好ましい。有機溶剤の使用量が多いと反応容器が過大となり、不経済となることがある。
【0058】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解・縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸性物質の量は、触媒として使用された塩基に対して0.1〜2当量が好ましい。この酸性物質は水中で酸性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0059】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物は、上記ケイ素系高分子化合物を溶解可能な溶剤を含有することができる。上記溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン(THF)、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PnP)等のエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類を使用することができる。
【0060】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物を調整する際、ケイ素系高分子化合物と溶剤の割合は、用途によって調整することができる。例えば、塗布成膜用の組成物として調製する場合には、ケイ素系高分子化合物の濃度が1〜50質量%程度となるように調整することができる。また、塑性変形させて望みの形状とした後硬化させる形成法を行う場合には、ケイ素系高分子化合物にもよるが、例えば、ケイ素系高分子化合物の濃度が30質量%以上とすることができ、また実質的には溶剤を含まない組成物とすることもできる。
【0061】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物は、更に無機充填剤を含むことができる。無機充填剤としては、石英粉、ゼオライト、シリカ、アルミナ、タルク等を用いることができる。また、ケイ素系高分子化合物とのなじみを良くするために、無機充填剤の表面処理を行っていてもよい。ここでケイ素系高分子化合物となじみを良くするための表面処理方法としては、シリル化剤又はシランカップリング剤を挙げることができる。シリル化剤、シランカップリング剤はすでに多数のものが公知であり、何れも使用可能であるが、例えば、加水分解性基を有する、アルキルシラン類、ビニルシラン類、メタクリルシラン類、エポキシシラン類、メルカプト及びサルファーシラン類、アミノシラン類、ウレイドシラン類、イソシアネートシラン類等を挙げることができ、一般的処理法、即ち噴霧等による乾式法でも、溶剤中に無機充填剤を分散させて処理する湿式法で行っても良い。
【0062】
無機充填剤は、上記ケイ素系高分子化合物100質量部に対して1000質量部程度まで加えることができるが、均一性の高い組成物を得るためには100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下とした場合には、より高い成形性とより好ましい光透過性が得られるため、更に好ましい。無機充填剤とケイ素系高分子化合物との混合は、ケイ素系高分子化合物を有機溶剤に溶かした溶液に無機充填剤を混合することによって行ってもよく、ケイ素系高分子化合物を硬化温度以下で加熱、融解させたところに無機充填剤を混合し混練りすることによって行ってもよい。
【0063】
また、本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物には、上記無機充填剤と同様、紫外線を可視光に変換するためのリン光を有する無機及び有機材料を添加することもできる。そのような材料は多数公知であるが、例えば無機材料の例としては、特許文献7(特表2009−506195号公報)で開示された材料等が、有機材料の例としては、特許文献8(特表2009−538839号公報)で開示された材料等が挙げられる。
【0064】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物の硬化物を得る方法としては、溶剤含有タイプの場合は、基板上に塗布したり、上部が開放型の型に流し込み、溶剤を揮発除去し、更に焼成により硬化物を得る方法が挙げられる。溶剤の除去は、200℃以下の温度で徐々に溶剤を揮発させ、同時に組成物の脱水縮合も進行させて、およその形状を決定し、その後、好ましくは250℃以上の温度で焼成を行う。また、上記開放型の型としては、アルミニウム製蒸発皿のような金属製の型を用いることができる。
【0065】
溶剤を含まないタイプの場合は、組成物を50〜200℃に加熱することにより流動性が得られるので、型に流し込み、徐々に脱水縮合を進行させることにより硬化物を得ることができる。この場合も250℃以上の温度で焼成することが好ましい。
【0066】
なお、基板上に強固に接着した硬化物を得たい場合、基板上に上記組成物による薄膜を塗布形成し、250℃以上の焼結を行って硬化物薄膜を形成した後、上記型に流し込んでBステージ化した硬化物前駆体を接着させて焼結を行うと、焼結時に架橋形成反応により発生したガスが薄膜を通じて抜けるため、硬化時に発生ガスにより剥離する問題を回避することができる。
【0067】
本発明の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物からは、上述した方法等を用いることによって、高透明性、高耐熱性、かつ熱衝撃等のストレスに対する高い耐性を有し、黄変等の光劣化を示さず、また、400℃焼成後は低分子量成分の揮発を伴う重量減少が無い光学材料を得ることができる。特に本発明が有用に用いられる光学材料としては、光学素子用封止材、特にLED用の封止材や、光学レンズ、特に、紫外線を含む光に対して用いる光学レンズ等を挙げることができる。
【0068】
図1は、本発明の光学材料を使用したLEDランプの一実施形態を示す。なお、図中1はLEDチップ、2はダイボンド材、3は導電性ワイヤー、4はパッケージ、5はバッファー層、6は封止材、7は蛍光体、8はレンズ材、9は電極を示し、本発明の光学材料は、封止材6のほか、レンズ材8としても用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0070】
[合成例1]ケイ素系高分子化合物BSE−4溶液の製造
100mLフラスコに0.001規定の希硝酸を26.8g仕込み、撹拌しながら1,2−ビス(メチルジメトキシシリル)エタン12.3gとメチルイソブチルケトン(MIBK)1.6gとの混合物を添加し、一晩室温で撹拌した。MIBK14.5gを添加し分液操作を行い、更に酢酸エチル25gを加えて有機相を超純水で、抽出水が中性になるまで洗浄した。エバポレーターにより脱水、濃縮し、BSE−4溶液を得た。なお、この溶液約1gをアルミ皿に測り取り、160℃のオーブンに1時間加熱した後の残重量(NV)は36%であった。また、得られたケイ素系高分子化合物BSE−4のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は2,050であった。
【0071】
[合成例2]ケイ素系高分子化合物BSE−34溶液の製造
100mLフラスコに0.001規定の希硝酸を26.8g仕込み、撹拌しながら1,2−ビス(メチルジメトキシシリル)エタン6.1gと1−(メチルジメトキシシリル)−2−(ジメチルメトキシシリル)−エタン5.7gとMIBK1.6gとの混合物を添加し、一晩室温で撹拌した。以降、合成例1と同様の処理をすることによりBSE−34溶液を得た。この溶液のNVは、38%であった。また、得られたケイ素系高分子化合物BSE−34のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は1,850であった。
【0072】
[合成例3]BSE−4cの製造
合成例1で得たBSE−4のうち、10gを測り取り、エバポレーターで約6割になるまで濃縮し、BSE−4cを得た。濃縮後のNVは68%であった。
【0073】
[合成例4]BSE−34cの製造
合成例2で得たBSE−34のうち、10gを測り取り、エバポレーターで約6割になるまで濃縮し、BSE−34cを得た。濃縮後のNVは66%であった。
【0074】
[合成例5]ケイ素系高分子化合物QT5050溶液の製造
100mLフラスコに0.001規定の希硝酸を26.8g仕込み、撹拌しながらテトラメトキシシラン7.8gとメチルトリメトキシシラン7.0gとMIBK1.6gとの混合物を添加し、一晩室温で撹拌した。MIBK14.5gを添加し分液操作を行い、更に酢酸エチル25gを加えて有機相を超純水で、抽出水が中性になるまで洗浄した。エバポレーターにより脱水、濃縮し、QT5050溶液を得た。なお、この溶液約1gをアルミ皿に測り取り、160℃のオーブンに1時間加熱した後の残重量(NV)は34%であった。また、得られたケイ素系高分子化合物QT5050のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は1,900であった。
【0075】
[実施例1〜16]
合成例1〜4で製造したケイ素系高分子化合物溶液の不揮発分0.5gに対して、表面処理されたシリカ((株)龍森製、MSR−8000)を無添加、又は10質量%、20質量%もしくは50質量%となる量を添加して混合し、下記表1に示すように実施例1〜16の組成物を調製した。次いで、160℃焼成を大気中アルミ皿を用いて、自然対流式の定温乾燥機で行い、400℃焼成を窒素気流中、アルバック理工(株)製RTA装置RTP−6を用いてSiウェハー上にサンプルの切片を並べて行った。焼成後の硬化物の外観を目視にて観測した結果を下記表1に併記する。
【0076】
【表1】

【0077】
上記表1に示す通り、いずれのケイ素系高分子化合物溶液もケイ素系高分子化合物純分100質量部に対して、無機充填剤であるシリカを50質量部まで、良好な混合性を示し、160℃の焼成により透明〜半透明の硬化物を形成した。更に400℃の焼成を行っても、これらの硬化物は外観に変化は無かった。実施例9及び実施例13のシリカを含まない硬化物は、400℃焼成後はわずかに機械的強度の低下を示したが、シリカを含む実施例10、11、12及び実施例14、15、16の硬化物は400℃焼成後も形状及び強度が維持された。
【0078】
[比較例1〜8]
合成例5で製造したケイ素系高分子化合物溶液の不揮発分0.5gに対して、表面処理されたシリカ((株)龍森製、MSR−8000)を無添加、又は10質量%、20質量%もしくは50質量%となる量を添加して混合し下記表2に示すように比較例1〜8の組成物を調製した。
【0079】
[比較例9〜12]
重量平均分子量20,000のRFオイル(ポリジメチルシロキサン)0.5gにジブチル錫ジラウレート25mgを混合し、それに対して表面処理されたシリカ((株)龍森製、MSR−8000)を無添加、又は20質量%となる量を添加して混合し下記表2に示すように比較例9〜12の組成物を調製した。
【0080】
[比較例13〜16]
重量平均分子量2,000の両末端Si−Hオイル(ポリジメチルシロキサンの末端をジメチルヒドロシランで封止したもの)0.5gとヘキサビニルジシロキサン0.02g及び白金触媒を触媒量混合した組成物に対して表面処理されたシリカ((株)龍森製、MSR−8000)を無添加、又は20%となるように添加して混合し下記表2に示すように比較例13〜16の組成物を調製した。実施例と同様に160℃焼成は大気中アルミ皿を用いて、自然対流式の定温乾燥機で行い、400℃焼成は窒素気流中、アルバック理工(株)製RTA装置RTP−6を用いてSiウェハー上にサンプルの切片を並べて行った。焼成後の硬化物の外観を目視にて観測した結果を下記表2に併記する。
【0081】
【表2】

【0082】
上記表2に示す通り、いずれのケイ素系高分子化合物溶液もケイ素系高分子化合物純分100質量部に対してシリカ50質量部まで、良好な混合性を示し、比較例9、11以外は160℃の焼成により透明〜半透明の硬化物を形成したが、比較例9、11は硬化による十分な強度が得られなかった。一方、何れの例でも400℃の焼成を行うと白濁やひび割れあるいは黄変が起こり、良好な形状を保つことができなかった。
【符号の説明】
【0083】
1 LEDチップ
2 ダイボンド材
3 導電性ワイヤー
4 パッケージ
5 バッファー層
6 封止材
7 蛍光体
8 レンズ材
9 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シラン化合物(A)を含むケイ素系単量体を加水分解・縮合して得られるケイ素系高分子化合物を含有する光学材料形成用シリコーン樹脂組成物であって、
上記加水分解性シラン化合物(A)は、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、該1対以上のケイ素原子には合計で3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物であり、
上記ケイ素系単量体は、上記加水分解性シラン化合物(A)をケイ素基準で70モル%以上含むと共に、上記ケイ素系単量体が有する上記架橋基を含むケイ素原子の置換基のうち、芳香族骨格を含む置換基の割合が、上記ケイ素原子に結合した置換基全体に対して30%モル以下である
ことを特徴とする光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
上記脂肪族炭化水素基又は芳香環含有炭化水素基による架橋基により結ばれた1対以上のケイ素原子を有し、合計で3つ以上の水素原子、水酸基及び加水分解性基から選ばれる置換基が結合したシラン化合物は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Qは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基であり、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基であるが、Q1、Q2、Q3のうち1つ以上及びQ4、Q5、Q6のうち1つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれ、更にQ1、Q2、Q3、Q4、Q5及びQ6のうち3つ以上は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基から選ばれる。)
で示されるシラン化合物である請求項1記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
上記ケイ素系高分子化合物は、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Vは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状の2価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜12の2価の芳香環含有炭化水素基、W1、X1、Y1及びZ1はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子を示すと共に、W1、X1、Y1及びZ1のうち必ず1以上は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、炭素数6〜12の1価の芳香環含有炭化水素基、及びSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子より選ばれるが、W1、X1、Y1及びZ1全てがSi−O−Si架橋の一部構造である酸素原子となることはない。)
で示される繰り返し単位を上記ケイ素系高分子材料を構成する全繰り返し単位中70モル%以上含有するケイ素系高分子化合物である請求項1又は2記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
上記無機充填剤は、シリル化剤又はシランカップリング剤により表面処理された無機充填剤である請求項4記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学材料形成用シリコーン樹脂組成物を加熱硬化して得られる光学材料。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144683(P2012−144683A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6288(P2011−6288)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】