説明

光学機器及びカメラシステム

【課題】撮像におけるピント振れの影響を低減する。
【解決手段】光学機器200は、撮像光学系201〜204と、該撮像光学系に含まれるフォーカスレンズ203の光軸方向での移動を制御する制御手段207と、光軸方向における該光学機器の振れを検出する振れ検出手段212と、該振れ検出手段により順次検出された複数の振れを記憶する記憶手段208とを有する。制御手段は、撮像のための露光の開始が指示されたことに応じて、記憶手段に記憶された、該指示の後に検出された振れ量を少なくとも含む複数の振れ量に基づいて、露光時における振れを予測振れとして露光が開始される前に算出し、さらに該予測振れに基づいて、フォーカスレンズを露光が開始される前に移動させる。制御手段は、露光の開始が指示されてから露光時までの遅延時間を判定し、該遅延時間の長さに応じた予測値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや交換レンズ等の光学機器に関し、特に光軸方向でのピント振れ低減するためにフォーカスレンズを光軸方向に移動させる機能を有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像に用いられる光学機器には、手振れ等のカメラ振れに起因する像振れを低減するために、いわゆる防振機能を有するものが多い。カメラ振れは、角速度センサや加速度センサ等の振れ検出センサにより検出され、その検出結果に応じて撮像光学系の一部を光軸に直交する方向にシフトさせることで、カメラの角度振れ(ピッチ方向及びヨー方向での振れ)による像振れを低減させる。
【0003】
また、カメラを手に持ってマクロ撮像等の撮像倍率が高い撮像を行う場合には、被写界深度が浅くなるために、カメラのわずかな光軸方向での振れ(シフト振れ)により、被写体に対するピントがずれてしまうことがある。このようなピント振れを回避するためには、焦点検出ユニットにより検出される焦点状態の変化に応じてフォーカスレンズを光軸方向に移動させればよい。
【0004】
ただし、クイックリターンミラーを有する一眼レフカメラでは、露光開始を指示するスイッチ操作(レリーズボタンの第2ストローク操作)の後、シャッタが開動作して露光が開始されるまでの間に、クイックリターンミラーが撮像光路外に退避する。これにより、撮像光路内に配置されたクイックリターンミラーから被写体光が導かれていた焦点検出ユニットに被写体光が到達しなくなるため、焦点状態の検出を行えない。
【0005】
特許文献1には、カメラの光軸方向の変位を検出する変位センサを有し、焦点検出ユニットによる検出結果に基づいてフォーカスレンズを移動させた後、変位センサによる検出結果に基づいて露光中にもフォーカスレンズを移動させるカメラが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、露光開始の指示がなされる前に、焦点検出ユニットによる焦点検出を複数回行い、最後の焦点検出の結果に基づいて、フォーカスレンズの駆動を露光開始よりも早く開始させるカメラが開示されている。
【特許文献1】特許3799666号
【特許文献2】特開2006−162682号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にて開示されたカメラのように、露光中にもフォーカスレンズを移動させるためには、撮像光学系の倍率がフォーカスレンズの移動によって変動しないことが必要となる。つまり、特許文献1にて開示された方法は、フォーカスレンズの移動によって撮像倍率が変動する光学機器には使用することができない。
【0008】
また、特許文献2にて開示されたカメラのように、露光開始が指示される前に行った複数回の焦点検出のうち最後の焦点検出の結果を用いても、露光開始までにピント振れが生じることで、ピント振れの影響を受けた画像が得られる可能性がある。
【0009】
本発明は、フォーカスレンズの移動による倍率変動の有無にかかわらず、撮像により取得された画像におけるピント振れの影響をより低減することができるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての光学機器は、フォーカスレンズを含む撮像光学系と、該撮像光学系の光軸方向におけるフォーカスレンズの移動を制御する制御手段と、光軸方向における該光学機器の振れ量を検出する振れ検出手段と、該振れ検出手段により順次検出された複数の振れ量を記憶する記憶手段とを有する。そして、制御手段は、撮像のための露光の開始が指示されたことに応じて、記憶手段に記憶された、該指示の後に検出された振れ量を少なくとも含む複数の振れ量に基づいて、露光が開始される前に露光時における振れ量の予測値を算出し、該予測値に応じた位置にフォーカスレンズを露光が開始される前に移動させる。さらに、制御手段は、露光の開始が指示されてから露光時までの遅延時間を判定し、該遅延時間の長さに応じた予測値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、露光の開始が指示されたことに応じて、露光が開始される前に露光時における光学機器の振れ量の予測値を算出し、露光の開始前に該予測値に応じた位置にフォーカスレンズを移動させる。このため、本発明によれば、フォーカスレンズの移動による倍率変動の有無にかかわらず、撮像におけるピント振れの影響を低減することができる。
【0012】
しかも、本発明では、露光の開始が指示されてから露光時までの遅延時間に応じた予測値を算出するので、該遅延時間の長短にかかわらず良好なピント振れの影響の低減効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1には、本発明の実施例1である光学機器としてのレンズ装置を含むカメラシステムの構成を示している。
【0015】
図1において、100は一眼レフデジタルカメラ(撮像装置:以下、単にカメラという)であり、200はカメラ100に対して着脱が可能な交換レンズ(レンズ装置)である。これらカメラ100と交換レンズ200とによってカメラシステムが構成される。なお、カメラは、フィルムカメラでもよい。
【0016】
被写体300からの光束は、交換レンズ200内に収容された撮像光学系(201〜204)によって結像される。撮像光学系は、第1の光学系201と、撮像光学系の光軸xに対して直交する方向にシフト可能な防振光学系202と、焦点調節のために光軸xの方向(光軸方向)に移動するフォーカスレンズ203と、光量を調節するための絞り204とを含む。
【0017】
本実施例における交換レンズ200は、焦点距離が100mm、開放Fナンバーが2.8の単焦点の防振機能付きマクロレンズである。
【0018】
交換レンズ200内には、フォーカスレンズ203を光軸方向に駆動するフォーカス駆動部(モータ及びその駆動回路)209と、防振光学系202を光軸直交方向に駆動する防振駆動部(アクチュエータ及びその駆動回路)211とが設けられている。フォーカス駆動部209及び防振駆動部211は、レンズCPU207からの信号に応じて動作する。
【0019】
また、205は絞り駆動部であり、レンズCPU207からの信号に応じて、絞り204を駆動し、その開口径を変化させる。
【0020】
206は操作部であり、オートフォーカスとマニュアルフォーカスとを切り替えるAF/MFスイッチや、防振機能のON/OFFを切り替えるISスイッチ等を含む。
【0021】
レンズCPU207は、レンズ通信部214とカメラ100内に設けられたカメラ通信部103を介してカメラCPU111とコマンドや情報の通信を行いながら、交換レンズ200内の各部の動作を制御する。
【0022】
210はフォーカスレンズ位置検出部であり、フォーカスレンズ203の光軸方向での位置を検出する。具体的には、フォーカスレンズ位置検出部210は、フォーカス駆動部209内のモータの回転に伴ってパルス信号を出力するパルス発生器を含む。レンズCPU207において、フォーカスレンズ203を所定の基準位置に移動させた後、パルス発生器からのパルス信号のパルス数をカウントすることで、フォーカスレンズ203の位置を検出することができる。
【0023】
また、レンズCPU207は、フォーカスレンズ203の位置の変化に基づいて、フォーカスレンズ203の移動速度を検出することもできる。レンズCPU207は、検出したフォーカスレンズ203の位置や移動速度をモニタしながらフォーカスレンズ203の移動を制御する。
【0024】
208はROM等で構成されたメモリ(記憶手段)である。該メモリ208は、交換レンズ200の固有識別情報(ID)、焦点距離情報、フォーカスレンズ203の移動量に対する像面移動量の比であるフォーカス敏感度情報を記憶している。また、メモリ208は、交換レンズ200が装着されているカメラ100における後述する露光遅延情報や、後述するシフト振れ量を記憶することができる。メモリ208に記憶された情報は、レンズCPU207によって随時読み出される。
【0025】
212は加速度センサであり、交換レンズ200(カメラシステム全体)の光軸方向での加速度を検出する。交換レンズ200の光軸方向での振れであるシフト振れに応じて出力された加速度センサ212からの信号を2回積分することによって、交換レンズ200の光軸方向での変位(シフト振れ量)を算出できる。なお、加速度センサ212として、光軸方向を含む3軸方向での加速度を検出するセンサを使用してもよく、光軸方向以外の2軸方向での加速度を2回積分した変位を、光軸xと直交する平面内のシフト振れ補正に利用してもよい。
【0026】
213は別の振れ検出手段としての角速度センサであり、光軸xに直交し、かつ互いに直交する2軸方向(ピッチ方向及びヨー方向)での角速度を検出する。交換レンズ200(カメラシステム全体)のピッチ方向及びヨー方向での振れである角度振れに応じて出力された角速度センサ213からの信号を積分することで、ピッチ方向及びヨー方向での変位(角度振れ量)を算出することができる。また、前述した光軸xに直交した平面内のシフト振れ補正と合わせた駆動制御を行ってもよい。
【0027】
レンズCPU207は、角度振れ量に応じて防振光学系202を防振駆動部211を通じて光軸直交方向に移動させる。これにより、角度振れによる像振れを低減するための角度振れ補正(角度防振)が行われる。
【0028】
また、レンズCPU207は、シフト振れ量に応じてフォーカスレンズ203をフォーカス駆動部209を通じて光軸方向に移動させる。これにより、シフト振れによるピントの変動であるピント振れを低減するためのピント振れ補正(ピント防振)が行われる。
【0029】
撮像光学系からデジタルカメラ100内に入射した光束は、撮像光路内に配置されたクイックリターンミラー101によって、後述するファインダ光学系に向かう光束と、図示しないサブミラーを介して焦点検出ユニット104に向かう光束とに分割される。クイックリターンミラー(以下、QRミラーという)101が撮像光路外に退避した状態では、撮像光学系からの光束は、CCDセンサ又はCMOSセンサにより構成される撮像素子102上に結像する。
【0030】
本実施例のカメラ100は、撮像素子102での露光時間(電荷蓄積時間)を増減させることで露出を制御する電子シャッタを採用している。このため、フォーカルプレンシャッタ等の機械的なシャッタは搭載していない。ただし、交換レンズ200が装着されるカメラは、機械的なシャッタを搭載していてもよい。
【0031】
ファインダ光学系は、不図示のピント板と、ペンタプリズム108と、接眼レンズ114とにより構成され、ピント板に結像した被写体像を接眼レンズ114を通じて撮影者に観察させる。
【0032】
109はクイックリターンミラー制御部であり、QRミラー101の撮像光路に対するアップ(退避)/ダウン(進入)動作を、カメラCPU111からの信号に応じて制御する。
【0033】
また、110は測光ユニットであり、ファインダ光学系内を進む光束(つまりは交換レンズ200からの光束)の一部を受光して被写体輝度(測光情報)を測定する。測光情報は、カメラCPU111に伝達される。カメラCPU111は、測光情報に基づいて、絞り204の開口径(目標絞り値)や撮像素子102の露光時間(電荷蓄積時間)を決定する。
【0034】
104は焦点検出ユニットであり、TTL位相差検出方式にて撮像光学系の焦点状態(2像の位相差)を検出する。位相差の情報はカメラCPU111に入力され、カメラCPU111は該位相差から求めたデフォーカス量と、レンズCPU207から受け取ったフォーカス敏感度情報に基づいて、合焦状態を得るためのフォーカスレンズ203の駆動量を算出する。レンズCPU207は、該駆動量の情報をカメラ通信部103及びレンズ通信部214を介してカメラCPU111から受け取り、フォーカス駆動部209を通じてフォーカスレンズ203を光軸方向に駆動する。これにより、AFが行われる。
【0035】
本実施例では、AFにおいては、カメラCPU111とレンズCPU207とが一体となってフォーカスレンズ203の移動(駆動)を制御する。一方、ピント振れ補正については、レンズCPU207が、カメラCPU111から必要な情報を得ながらフォーカスレンズ203の移動(駆動)を制御する。
【0036】
113は2段スイッチで構成されたレリーズスイッチであり、第1ストローク(第1段)操作によって測光、焦点検出及びAFを行う露光準備動作(撮像準備動作ともいう)を指示する露光準備開始(SW1)信号が出力される。また、レリーズスイッチ113の第2ストローク(第2段)操作によって、QRミラー101のアップ動作と、撮像のための撮像素子102の露光の開始とを指示する露光開始(SW2)信号が出力される。これらSW1信号及びSW2信号は、カメラCPU111に入力される。
【0037】
なお、本実施例での「露光」とは、記録用の静止画像を取得するための撮像素子102の電荷蓄積の開始から終了までの動作に相当する。
【0038】
撮像素子102において被写体像の光電変換により得られた出力信号は、不図示の画像処理回路で各種処理を受けてデジタル映像信号としてカメラCPU111に入力される。カメラCPU111は、この映像信号を用いて静止画像又は動画像を生成する。
【0039】
また、カメラCPU111は、レンズCPU207との通信や、LCD等の表示ユニット112の制御や、各種動作モードを設定するための設定部107からの入力に対する制御や、電源106の残容量チェックや、電力供給制御等の各種制御を行う。
【0040】
生成された静止画像又は動画像は、記録部105において不図示の記録媒体(半導体メモリや光ディスク等)に記録される。
【0041】
次に、カメラCPU111及びレンズCPU207で行われる動作を図2のタイムチャートを用いて説明する。
【0042】
レリーズスイッチ113の第1ストローク操作によってSW1信号がカメラCPU111に入力されると、カメラCPU111は、焦点検出ユニット104に焦点検出を行わせる。そして、焦点検出ユニット104により得られたデフォーカス量情報とレンズCPU207を通じてメモリ208から読み出したフォーカス敏感度情報とに基づいてフォーカスレンズ203の駆動量を算出する。レンズCPU207は、カメラCPU111から駆動量情報を受け取り、その駆動量情報に基づいて、フォーカス駆動部209を通じてフォーカスレンズ203を移動させ、合焦状態を得る。
【0043】
また、SW1信号を受けたカメラCPU111は、測光ユニット110に測光動作を行わせ、測光ユニット110からの測光情報に基づいて、絞り値と露光時間を決定する。
【0044】
さらに、SW1信号を受けたカメラCPU111は、レンズCPU207を通じて、加速度センサ212及び角速度センサ213を起動させる。角速度センサ213の出力信号に基づいて、防振光学系202の駆動が開始される。また、レンズCPU207は、加速度センサ212からの出力信号を所定周期で2回積分して変位量(シフト振れ量)に換算し、順次得られる複数のシフト振れ量をメモリ208に記憶(蓄積)する。
【0045】
図2の下側に示す曲線は、加速度センサ212からの出力信号に基づいて得られる実際のシフト振れ量(実測値)の例を示している。
【0046】
ここで、メモリ208に蓄積するシフト振れ量は、今回検出されたシフト振れ量とそれよりも過去に検出された少なくとも1つのシフト振れ量を含む、所定周期ごとに連続して検出された所定数(複数:例えば、5つ)のシフト振れ量とする。メモリ208に既に所定数のシフト振れ量が蓄積されている場合には、該シフト振れ量のうち最も過去に記憶されたシフト振れ量をメモリ208から消去して、今回のシフト振れ量をメモリ208に記憶させる。
【0047】
その後、SW2信号がカメラCPU111に入力されると、カメラCPU111は、QRミラー101のアップ動作を開始し、SW2信号が入力されたことを示すSW2入力情報と目標絞り値の情報をレンズCPU207に送信する。SW2入力情報を受けたレンズCPU207は、絞り204の現在の絞り位置(開放絞り位置)から目標絞り値に対応する絞り位置への駆動を開始する。QRミラー101のアップ動作により焦点検出ユニット104による焦点検出及びAFを行うことができなくなるが、加速度センサ212は動作しているので、シフト振れは検出されている。
【0048】
また、レンズCPU207は、絞り204を現在の絞り位置(開放絞り位置)から目標絞り値に対応する絞り位置まで駆動するのに要する時間(絞り駆動時間)を算出する。目標絞り値に対応する開口径が小さいほど、開放絞り位置からの絞り駆動時間が長くなる。
【0049】
レンズCPU207は、絞り駆動時間と、カメラ100から受け取る等してメモリ208に記憶された、交換レンズ200が装着されたカメラ100に関する情報とに基づいて、露光遅延時間tr1を判定(決定又は算出)する。カメラ100に関する情報は、予め該交換レンズ200が装着可能な複数のカメラの機種情報としてメモリ208に記憶されたものの中から選択的に読み出されてもよい。
【0050】
露光遅延時間tr1は、カメラ100においてSW2信号の発生後、すなわち露光の開始が指示された時点から実際に露光が開始されるまでの時間である。
【0051】
ここで、「カメラ100に関する情報」には、カメラの機種(種類)の情報が含まれる。QRミラー101のアップ動作に要する時間(ミラー駆動時間)は、カメラの機種ごとに異なる各機種に固有の情報である。すなわち、交換レンズ200が装着されるカメラの機種が異なれば、ミラー駆動時間が異なるので、露光遅延時間tr1を判定する要素となる。
【0052】
また、「カメラ100に関する情報」には、カメラ100における撮像モードの情報も含まれる。カメラ100の撮像モードには、ファインダ光学系による被写体観察状態からQRミラー101をアップ動作させて撮像を行う通常撮像モードがある。また、QRミラー101をアップ状態のままライブビュー画像(電子ファインダ画像)を表示部112に表示させた状態から撮像を行うライブビュー撮像モードがある。そして、通常撮像モードでは、ライブビュー撮像モードに対して、QRミラー101をアップ動作させる時間分、SW2信号の発生から露光が開始されるまでの時間が長くなる。したがって、撮像モードの情報も露光遅延時間tr1を判定する要素となる。
【0053】
例えば、カメラ100に関する情報から得られる遅延時間が60msecで、絞り駆動時間が35msecである場合には、それらのうち長い方の時間である60msecを露光遅延時間trと判定する。また、例えば、カメラ100に関する情報から得られる遅延時間が35msecで、絞り駆動時間が40msecである場合には、それらのうち長い方の時間である40msecを露光遅延時間trと判定する。
【0054】
このように、露光開始指示に応じて露光の開始までに動作する要素(絞りやQRミラー)の動作に要する時間、及び撮像モードのうち少なくとも1つに基づいて、露光遅延時間tr、つまりは予測シフト振れ量の算出対象時点である露光開始時を判定する。これにより、露光開始時の予測シフト振れ量を精度良く算出することができる。
【0055】
また、メモリ208には、撮像倍率(言い換えれば、フォーカスレンズ203の位置)及び絞り値ごとのピント振れ補正駆動時間tpの情報も記憶されている。ピント振れ補正駆動時間tpは、SW2信号の発生時におけるフォーカスレンズ203の位置から、予め想定された最大のピント振れ量を補正する位置にフォーカスレンズ203を駆動するのに必要な時間である。つまり、ピント振れ補正駆動時間tpは、露光遅延時間trにおいて発生する可能性のあるピント振れ量に対応した位置へのフォーカスレンズ203の駆動が可能な時間を表している。
【0056】
SW2入力情報を受けたレンズCPU207は、その時点でフォーカスレンズ位置検出部210により検出されたフォーカスレンズ203の位置を取得し、その位置に応じたピント振れ補正駆動時間tpをメモリ208から読み出す。そして、レンズCPU207は、露光遅延時間trからピント振れ補正駆動時間tpを除いた時間Δtの間、それまでにメモリ208に順次記憶された所定数のシフト振れ量を読み出す。
【0057】
さらに、レンズCPU207は、該読み出した所定数のシフト振れ量に基づいて、露光遅延時間trの経過時、つまりは露光開始時におけるシフト振れ量の予測値である予測シフト振れ量を所定周期で順次算出する。予測シフト振れ量の算出方法については、後述する。
【0058】
時間Δtが経過した時点(露光開始前)で、レンズCPU207は、このタイミングにおいて最新の予測シフト振れ量に応じた位置、すなわち該予測シフト振れ量により生ずるピントずれを補正するための位置へのフォーカスレンズ203の駆動を開始する。前述したように、このときのフォーカスレンズ203の駆動は、時間tp内に終了する。つまり、露光の開始時におけるシフト振れ補正のためのフォーカスレンズ203の駆動は、露光が開始される前に開始され、かつ完了する。
【0059】
フォーカスレンズ203の駆動が完了して露光遅延時間trが経過すると、カメラCPU111は、撮像素子102の露光を開始させる。そして、設定された露光時間tsの経過後に、露光を完了させる。露光が完了すると、カメラCPU111は、QRミラー101のダウン動作を開始させる。
【0060】
ここで、露光中(露光の開始後)も加速度センサ212の出力からのシフト振れ量の算出とメモリ208への記憶(蓄積)が所定周期で続行される。そして、露光開始時の予測シフト振れ量の算出と同様の方法で、QRミラー101のダウン動作が完了することで次の露光が可能となる時点(露光可能時点)における予測シフト振れ量(以下、ミラーダウン完了時の予測振れという)を逐次算出する。
【0061】
露光の完了からミラーダウン完了時までの遅延時間を、露光後遅延時間trとする。露光後遅延時間trも、前述したカメラ100に関する情報から判定される。
【0062】
このとき、露光完了から時間Δt(<tr)の経過後に、ミラーダウン完了時の予測シフト振れ量に応じた位置へのフォーカスレンズ203の駆動を開始する。このときのフォーカスレンズ203の駆動も時間tp内で完了するため、露光後遅延時間trの経過時、つまりはミラーダウン完了時よりも前に完了する。
【0063】
これにより、ファインダ光学系を使用して撮像を行っている撮影者は、ファインダ光学系により被写体が見えている間はピントが合った被写体を観察することができるので、違和感なく次の撮像に移行することができる。このことは、特に連写(連続撮像)時に有効である。
【0064】
次に、露光時の予測シフト振れ量の算出方法について説明する。ここでは、レンズCPU207による時間tp後の予測シフト振れ量を算出するために、今回及び過去に連続して検出された5つのシフト振れ量を用いる場合について説明する。
【0065】
5つのシフト振れ量を用いることで、4次の多項式による近似計算により予測シフト振れ量を算出することができる。
【0066】
なお、予測シフト振れ量の算出に用いるシフト振れ量の数は複数であればいくつであってもよい。シフト振れ量の数を増やすほど、より高次の多項式による近似計算を行うことができ、予測精度を上げることができる。
【0067】
加速度センサ212の出力のサンプリングは、例えば0.5msecごとに行い、2回の加速度の平均値(平均加速度)を求め、該平均加速度を2回積分することによってシフト振れ量を算出する。つまり、1msec(所定周期)ごとに新たなシフト振れ量が算出(検出)される。
【0068】
ここで、順次検出される5つのシフト振れ量のうち今回(最新)のシフト振れ量をdとし、該dよりも1回前に検出されたシフト振れ量をdとし、以下それぞれ、d,d,dとする。また、シフト振れ量d,d,d,d,dを検出した時刻(1msec間隔)をそれぞれ、t,t,t3,,tとする。
【0069】
なお、図2に示すt1は、SW2入力信号の受信(SW2信号の発生)後、時間Δtが経過する直前の時刻である。
【0070】
シフト振れ量d〜d及び検出時刻t〜tから、最小二乗法を用いた以下の(1)式に示す4次の多項式による近似計算によって、予測シフト振れ量を算出することができる。ここで、yは予測シフト振れ量を示し、xは時刻を示す。また、a,a,a,a,aは定数である。
【0071】
y=f(x)=a+ax+a+a+a…(1)
シフト振れ量d〜dと検出時刻t〜tを上記(1)式に代入して、定数a〜aを求め、xの値をピント振れ補正駆動時間tpとしたときのyの値を求める。つまり、時間Δtの経過時までに検出された5つのシフト振れ量に基づいて、時間Δtの経過時からピント振れ補正駆動時間tpが経過した時点での予測シフト振れ量を算出する。
【0072】
SW2信号の発生時に実際に生じたシフト振れ量と露光開始時に実際に生じたシフト振れ量との差をΔHとする。この場合、露光開始時における予測シフト振れ量の算出とそれに基づくフォーカスレンズ203の駆動(以下、これらをまとめてフォーカス予測駆動という)が露光開始前に行われていないと、ΔHに相当する大きなピントずれが発生する。
【0073】
しかし、フォーカス予測駆動を露光開始前に行い、そのときの予測シフト振れ量がQであれば、実際のシフト振れ量の差はΔHよりもかなり小さいΔH′となり、大きなピントずれのない状態で露光を行うことができる。
【0074】
なお、図2では、予測シフト振れ量の算出に用いる全てのシフト振れ量がSW2信号の発生後に検出及び記憶された場合について説明したが、必ずしも全てのシフト振れ量をSW2信号の発生後に検出及び記憶する必要はない。つまり、一部のシフト振れ量がSW2信号の発生後に検出及び記憶されたものであれば、他はSW2信号の発生前に検出及び記憶されたものであってもよい。言い換えれば、予測シフト振れ量の算出に用いる全てのシフト振れ量の一部に、少なくともSW2信号の発生後に検出された値が含まれていればよい。
【0075】
ところで、上記算出方法では、露光遅延時間trがそれほど長くない場合には良好な精度で露光時の予測シフト振れ量を算出することができる。しかし、ピント振れ補正駆動時間tpが長く、露光遅延時間trが長くなる場合には、良好な精度の予測シフト振れ量を算出することが難しい。特に、発明者らの実験の結果から、予測演算に用いる多項式が高次であるほど、露光遅延時間trが長くなるに従って予測シフト振れ量の精度が低下する(実測値との差が大きくなる)傾向があることが分かった。これは、露光遅延時間trが長くなるほど、高周波のシフト振れの影響よりも低周波のシフト振れの影響を強く受けるためであると考えられる。
【0076】
このため、本実施例では、露光遅延時間trが所定の閾値(例えば、65msec)より長い場合には、(1)式に代えて、(2)式を用いて予測シフト振れ量を算出する。
【0077】
y=f(x)=b+bx …(2)
yは予測シフト振れ量、xは時刻を示す。また、b,bは定数である。
【0078】
(2)式は、(1)式に比べて、低次の多項式である。また、このときの予測シフト振れ量の算出に用いる検出済みの(メモリ208に記憶された)シフト振れ量の数である所定数は、(1)式を用いる場合に比べて多い。つまり、(1)式による予測シフト振れ量の算出に用いる検出済みのシフト振れ量は5つであったが、本実施例では6つ以上のシフト振れ量を用いる。
【0079】
このように、本実施例では、露光遅延時間の長さに応じて予測シフト振れ量の算出方法(算出に使用する演算式及び記憶されたシフト振れ量の数)を変更する。これにより、露光遅延時間の長さに応じた良好な精度の予測シフト振れ量を算出することができる。
【0080】
図3には、(2)式を用いて算出した予測シフト振れ量を示している。図3中の曲線は、加速度センサ212からの出力信号に基づいて得られる実際のシフト振れ量(実測値)である。
【0081】
シフト振れ量d〜d10と検出時刻t〜t10を上記(2)式に代入して、定数b,bを求め、xの値をピント振れ補正駆動時間tpとしたときのyの値を求める。つまり、時間Δtの経過時までに検出された10個のシフト振れ量に基づいて、時間Δtの経過時からピント振れ補正駆動時間tpが経過した時点での予測シフト振れ量を算出する。
【0082】
(2)式を用いて算出された露光開始時の予測シフト振れ量Q′は、露光開始時のシフト振れ量の実測値に対して大きな差を持たない。また、露光開始時の予測シフト振れ量Q′が露光開始時の実際のシフト振れ量に対して有する差ΔF′は、予測シフト振れ量を算出しない場合のSW2信号の発生時の実際のシフト振れ量と露光開始時での実際のシフト振れ量との差ΔFに比べて、かなり小さい。したがって、(2)式を用いても、良好な精度の露光開始時の予測シフト振れ量Q′を算出することができ、大きなピントずれのない状態で露光を行うことができる。
【0083】
また、予測シフト振れ量を算出する場合において、露光遅延時間tr>ピント振れ補正駆動時間(レンズ移動時間)tpであれば問題はない。ただし、カメラ100の機種や撮像モード、撮像倍率等によっては、露光遅延時間tr<ピント振れ補正駆動時間tpとなる場合がある。この場合は、SW2信号の発生後にシフト振れ量を検出及び記憶する時間が確保できないため、マクロ撮像ではない通常撮像においてはフォーカス予測駆動を行わずに露光を行ってもよい。
【0084】
しかし、マクロ撮像においては、撮像倍率が等倍近くである状態でピント振れ補正駆動時間tpとして35msec程度必要となる。この場合、露光遅延時間trが30msec程度と判断されれば、露光遅延時間tr<ピント振れ補正駆動時間tpとなり、フォーカス予測駆動が行われない。したがって、このままでは、マクロ撮像においてピント振れの影響を受ける可能性がある。
【0085】
そこで、本実施例においては、例えば、撮像倍率が0.8倍以上(又はピント振れ補正駆動時間tpが30msec以上)である場合には、それらの差分である(tp−tr1)だけ露光の開始を待つ。そして、露光開始時での予測シフト振れ量を算出してフォーカス予測駆動を行う。
【0086】
図4には、露光遅延時間tr1<ピント振れ補正駆動時間tpとなる場合におけるSW1信号の発生からミラーダウン完了までの動作のタイムチャートを示している。前述したように、例えば、撮像倍率が0.8倍以上(ピント振れ補正駆動時間tpが30msec以上)の場合には、その差分の時間であるtz1(tp−tr1)時間だけ露光遅延時間tr1の経過後に待ってから露光を開始する。このときの露光開始時の予測シフト振れ量の算出は、(2)式を用いて行う。
【0087】
また、露光完了後は、露光後遅延時間tr2の経過後、tz2(tp−tr2)時間だけ待ってQRミラー101をダウン動作させる。該ミラーダウン完了の前には、ミラーダウン完了時の予測シフト振れ量の算出と該予測シフト振れ量に応じた位置へのフォーカスレンズ203の駆動が行われる。これにより、ファインダ光学系を使用して撮像を行っている撮影者は、ファインダ光学系により被写体が見えている間はピントが合った被写体を観察することができるので、違和感なく次の撮像に移行することができる。
【0088】
次に、図5のフローチャートを用いて、図2〜図4に示したフォーカス予測駆動を含むカメラシステム全体の動作の流れについて説明する。なお、この動作は、カメラCPU111及びレンズCPU207内に格納されたコンピュータプログラムに従って実行される。
【0089】
ステップS01でカメラ100の電源がONされると、カメラ100から交換レンズ200に電源が供給され、カメラCPU111とレンズCPU207との間の通信が開始される。このとき、カメラCPU111とレンズCPU207は、互いに装着された交換レンズ200とカメラ100を認識して必要な情報をやり取りする。また、ライブビュー撮像モードでは、表示部112に撮像素子102を用いて得られた画像を表示する。
【0090】
ステップS02では、カメラCPU111は、レリーズスイッチ113からSW1信号が入力されたか否かを判定し、SW1信号が入力されていればステップS03に進む。
【0091】
ステップS03では、カメラCPU111は、AF及び測光を行い、測光結果に基づいて目標絞り値を決定する。レンズCPU207は、角速度センサ213及び加速度センサ212を起動する。そして、角速度センサ213の出力に基づいて角度振れ補正動作を開始し、加速度センサ212の出力から得られたシフト振れ量のメモリ208への記憶も開始する。
【0092】
次に、ステップS04では、カメラCPU111は、AFにより合焦状態が得られたか否かを判定し、合焦状態が得られたと判定したときは、ステップS05に進む。また、レンズCPU207は、そのときにフォーカスレンズ位置検出部210から取得したフォーカスレンズ203の位置から撮像倍率を算出する。
【0093】
ステップS05では、レンズCPU207は、ステップS04で算出した撮像倍率が第1の所定値(例えば、0.5)より大きいか否かを判定する。撮像倍率が第1の所定値より大きければステップS06に進み、撮像倍率が第1の所定値より小さいときはステップS33に進む。
【0094】
なお、第1の所定値の例として0.5を挙げたが、該所定値は交換レンズ200の焦点距離等によって決まるフォーカス敏感度に応じて変更してもよい。また、第1の撮像倍率が所定値より小さいとき(フォーカス予測駆動を行わないとき)は、従来のAFを行ってもよい。
【0095】
ステップS06では、レンズCPU207は、ステップS04で算出した撮像倍率が第2の所定値(例えば、0.8)より大きいか否かを判定する。撮像倍率が第2の所定値より大きければステップS20に進み、撮像倍率が第2の所定値より小さいときはステップS07に進む。
【0096】
ステップS07では、カメラCPU111は、SW2信号が入力されたか否かを判定し、SW2信号が入力されたときはステップS07に進むとともに、SW2入力情報をレンズCPU207に送信する。SW2信号が入力されていないときはステップS02に戻る。
【0097】
ステップS08では、カメラCPU111は、ステップS03での測光結果に基づいて決定した目標絞り値をレンズCPU207に送信する。これにより、レンズCPU207は、絞り204を現在の絞り位置から目標絞り値に対応する絞り位置まで駆動する。また、カメラCPU111は、クイックリターンミラー制御部109にQRミラー101のアップ動作を行わせる。
【0098】
ステップS09では、レンズCPU207は、ステップS04で算出した撮像倍率と絞り値とに応じたピント振れ補正駆動時間tpをメモリ208から読み出す。また、レンズCPU207は、目標絞り値に基づいて絞り駆動時間を算出し、該絞り駆動時間と前述したカメラ100の情報とに基づいて露光遅延時間tr1を判定(算出)する。さらに、露光遅延時間tr1とピント振れ補正駆動時間tpとから時間Δtも算出する。
【0099】
このとき、レンズCPU207は、露光遅延時間tr1が所定時間(閾値)より短いか否かを判定し、所定時間より短い場合は(1)式を、所定時間より長い場合は(2)式を、予測シフト振れ量を算出する演算式として選択する。
【0100】
ステップS10では、レンズCPU207は、メモリ208に蓄積された5回((1)式を用いる場合)又はそれよりも多い回数((2)式を用いる場合)のシフト振れ量の検出結果に基づいて、露光開始時の予測シフト振れ量の算出を開始する。この後、露光開始時の予測シフト振れ量の算出を所定周期で逐次行う。
【0101】
ステップS11では、レンズCPU207は、ステップS06でのSW2入力情報の受信から時間Δt1が経過したか否かを判定し、時間Δt1が経過した時点で、ステップS12に進む。
【0102】
ステップS12では、レンズCPU207は、時間Δt1が経過した時点での最新の露光開始時の予測シフト振れ量に基づいて、該予測シフト振れ量に応じた位置へのフォーカスレンズ203の駆動をピント振れ補正駆動時間tp内で行う。フォーカスレンズ203の駆動が完了すると、レンズCPU207は、カメラCPU111にフォーカスレンズ203の駆動が完了したことを示す情報を送信してステップS13に進む。
【0103】
ステップS13では、カメラCPU111は、撮像素子102の露光を開始し、ステップS14では、露光時間tsが経過したか否かを判定する。露光時間tsが経過していない場合は本判定を繰り返し、露光時間tsが経過したときはステップS15に進む。
【0104】
ステップS15では、レンズCPU207は、カメラCPU111からの露光完了を示す情報を受信したことに応じて、絞り204を開放側に駆動する。また、カメラCPU111は、QRミラー101をダウン動作させる。
【0105】
ステップS16では、レンズCPU207は、露光後遅延時間trとピント振れ補正駆動時間tpとの差である時間Δtの間、ミラーダウン完了時の予測シフト振れ量を逐次算出する。
【0106】
そして、ステップS17では、レンズCPU207は、時間Δtが経過したか否かを判定し、その経過の判定を待ってステップS18に進む。
【0107】
ステップS18では、レンズCPU207は、最新のミラーダウン完了時の予測シフト振れ量に基づいて、該予測シフト振れ量に応じた位置にフォーカスレンズ203を駆動する。フォーカスレンズ203の駆動が完了した後に、ミラーダウンが完了し、絞り204の開放側への駆動も完了する。このため、撮影者はピントが合った被写体像をファインダ光学系を通して観察することができる。
【0108】
ステップS19では、カメラCPU111は、撮像により取得された画像を記録部105に記録して本シーケンスを終了する。
【0109】
ステップS05で撮像倍率が第1の所定値より小さいと判定された場合に行なわれるステップS33〜S37での処理は、ステップS07〜S18のうちフォーカス予測駆動を行わない処理に相当する。
【0110】
ステップS33での処理は、ステップS07での処理と同様であり、ステップS34での処理は、ステップS08での処理と同様である。
【0111】
また、ステップS35では、カメラCPU111は、ステップS13と同様に撮像素子102の露光を行い、露光完了をステップS36で検出すると、ステップS37で、絞り204を開放側に駆動するとともに、QRミラー101をダウン動作させる。その後、ステップS19へと進む。
【0112】
次に、ステップS06で撮像倍率が第2の所定値より大きいと判定された場合に行なわれるステップS20〜S32について説明する。
【0113】
ステップS20での処理は、ステップS07での処理と同様であり、ステップS21での処理はステップS08での処理と同様である。
【0114】
また、ステップS22では、レンズCPU207は、ステップS04で算出した撮像倍率と絞り値とに応じたピント振れ補正駆動時間tpをメモリ208から読み出す。また、レンズCPU207は、目標絞り値に基づいて絞り駆動時間を算出し、該絞り駆動時間と前述したカメラ100の情報とに基づいて露光遅延時間tr1を判定(算出)する。
【0115】
ステップS23では、レンズCPU207は、露光遅延時間trとピント振れ補正駆動時間tpとを比較する。tr<tpの場合はステップS24に進み、tr<tpではない場合は、露光遅延時間tr1とピント振れ補正駆動時間tpとから時間Δtを算出してステップS10に進む。
【0116】
ステップS24では、レンズCPU207は、図3に示したピント振れ補正駆動時間tpの予測シフト振れ量を算出し、ステップS25にて該予測シフト振れ量に応じた位置へのフォーカスレンズ203の駆動を行う。
【0117】
ステップS26では、レンズCPU207は、ステップS25で開始されたフォーカスレンズ203の駆動が完了したか否かを判定する。この時点では、露光遅延時間trは経過しているが、フォーカスレンズ203の駆動完了が確認されていないので、露光開始を待っている状態である。フォーカスレンズ203の駆動が完了すると、レンズCPU207は、カメラCPU111にフォーカスレンズ203の駆動が完了したことを示す情報を送信してステップS27に進む。
【0118】
ステップS27では、カメラCPU111は、ステップS13と同様に撮像素子102の露光を行い、露光完了をステップS28で検出すると、ステップS29で、絞り204を開放側に駆動する。そして、ステップS30へと進む。
【0119】
ステップS30では、レンズCPU207は、ミラーダウン完了の前にミラーダウン完了時の予測シフト振れ量を算出する。そして、ステップS31では、レンズCPU207は、該予測シフト振れ量に応じた位置にフォーカスレンズ203を駆動する。
【0120】
次に、ステップS32では、レンズCPU207は、フォーカスレンズ203の駆動完了(時間tz2の経過)を待ってQRミラー101をミラーダウン動作させる。そして、ステップS19に進む。
【0121】
以上説明したように、本実施例によれば、露光の開始が指示されたことに応じて、露光が開始される前に、露光時(本実施例では露光開始時)における予測シフト振れを算出し、露光の開始前に該予測シフト量に応じた位置にフォーカスレンズを移動させる。このため、本実施例によれば、フォーカスレンズ203の移動による倍率変動の有無にかかわらず、撮像におけるピント振れの影響を低減することができる。
【0122】
しかも、本実施例では、露光の開始が指示されてから露光時までの遅延時間に応じた予測値を算出するので、該遅延時間の長短にかかわらず良好なピント振れの影響の低減効果を得ることができる。
【0123】
また、本実施例では、撮像倍率が所定倍率より大きいことを条件としてフォーカス予測駆動を行う。このため、シフト振れの影響が小さい撮像倍率では、消費電力を削減することができる。
【0124】
また、本実施例では、露光遅延時間tr1を、カメラの機種情報、撮像モード情報、撮影光学系における絞りの設定値、及び露光時間のうち少なくとも1つに基づいて決定するので、フォーカス予測駆動の精度を上げることができる。
【0125】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0126】
例えば、上記実施例では、予測シフト振れ量の算出対象時点を、露光時の1つの時点として露光開始時とした場合について説明したが、露光時の他の1つの時点として露光途中(露光開始時から露光終了時までの間の時点)としてもよい。
【0127】
また、上記各実施例では、振れ検出手段として加速度センサを用いたが、これ以外のセンサを用いてもよい。
【0128】
また、上記実施例では、撮像倍率に関する第1及び第2の所定値をそれぞれ、0.5、0.8とした場合について説明したが、これらの所定値は、撮像光学系の焦点距離等によって決まるフォーカス敏感度に応じて変更してもよい。
【0129】
また、上記各実施例では、レンズ交換式の一眼レフカメラシステムについて説明したが、本発明は、光学機器としてのレンズ一体型デジタルカメラにも適用することができる。この場合、AF及びピント振れ補正の双方をカメラに搭載された同じ又は別々のCPUによってフォーカスレンズの駆動を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施例1である交換レンズを含むカメラシステムの構成を示すブロック図。
【図2】実施例1のカメラシステムにおける露光準備動作の開始からミラーダウン時までの間に(1)式を用いて行われるフォーカス予測駆動とその間のシフト振れ量(実測値)の変化を示す図。
【図3】実施例1のカメラシステムにおける露光準備動作の開始からミラーダウン時までの間に(2)式を用いて行われるフォーカス予測駆動とその間のシフト振れ量(実測値)の変化を示す図。
【図4】実施例1において、ピント振れ補正時間tpが露光遅延時間trより長い場合のカメラシステムの動作を示す図。
【図5】実施例1のカメラシステムの動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0131】
100 カメラ
200 交換レンズ
300 被写体
111 カメラCPU
202 防振光学系
203 フォーカスレンズ
204 絞り
207 レンズCPU
210 フォーカスレンズ位置検出部
212 加速度センサ
213 角速度センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像に用いられる光学機器であって、
フォーカスレンズを含む撮像光学系と、
該撮像光学系の光軸方向における前記フォーカスレンズの移動を制御する制御手段と、
前記光軸方向における該光学機器の振れ量を検出する振れ検出手段と、
該振れ検出手段により順次検出された複数の前記振れ量を記憶する記憶手段とを有し、
前記制御手段は、前記撮像のための露光の開始が指示されたことに応じて、前記記憶手段に記憶された、該指示の後に検出された前記振れ量を少なくとも含む前記複数の振れ量に基づいて、前記露光が開始される前に前記露光時における前記振れ量の予測値を算出し、該予測値に応じた位置に前記フォーカスレンズを前記露光が開始される前に移動させ、
前記制御手段は、前記露光の開始が指示されてから前記露光時までの遅延時間を判定し、前記遅延時間の長さに応じた前記予測値を算出することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記遅延時間を、前記露光の開始が指示されたことに応じて該露光の開始までに動作する要素の動作に要する時間、撮像モード、及び露光時間のうち少なくとも1つに基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記遅延時間に応じて、前記予測値の算出方法を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記露光時とは、前記露光の開始時であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学機器。
【請求項5】
前記露光時とは、前記露光の途中の時点であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光学機器。
【請求項6】
前記制御手段は、判定した前記遅延時間が、前記予測値に応じた位置への前記フォーカスレンズの移動に要するレンズ移動時間よりも短い場合は、該レンズ移動時間が経過した後の前記予測値を算出して、該予測値に応じた位置に前記フォーカスレンズを移動させるとともに、該レンズ移動時間が経過した後に前記露光を開始させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の光学機器。
【請求項7】
撮像を行う撮像装置と、
該撮像装置に対して着脱が可能な請求項1から6のいずれか1つに記載の光学機器としての交換レンズとを有することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−20035(P2010−20035A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179734(P2008−179734)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】