説明

光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物の製造方法

【課題】光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物を製造できる新たな方法を提供する。
【解決手段】光学活性ピロリジン化合物(5)の存在下、クロロアセトアルデヒドとアルデヒド化合物(1)を反応させる工程を含む、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)の製造方法。


(式中の各記号は明細書で定義した通りである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(2)
【0003】
【化1】

【0004】
(式中の各記号は後述の通りである。)
で示される光学活性化合物は、例えば光学活性ヘキサヒドロフロフラノール誘導体に変換できることから、医薬、農薬等の製造中間体として有用であることが知られている。
式(2)で示される光学活性化合物の製造方法として、非特許文献1には、例えば、酵素の存在下でクロロアセトアルデヒドとプロパナールとを反応させることにより、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシ−2−メチルブタナールを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,第112巻,2013−2014頁,1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、酵素を用いることなく、式(2)で示される光学活性化合物を製造できる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる状況下、酵素を用いることなく、式(2)で示される光学活性化合物の新たな製造法について検討した結果、特定の不斉触媒の存在下での反応が、式(2)で示される光学活性化合物の製造に優れていることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]式(5):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、以下の群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基、C−C12鎖式炭化水素基、C−C12脂環式炭化水素基又は水素原子を表し、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基、C−C12アルコキシ基、C−C12フッ化アルキルオキシ基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基又はC−C20アリール基を表す。)で示される基を表し、*は、不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性化合物(以下、ピロリジン化合物(5)ともいう)の存在下、クロロアセトアルデヒドと、式(1):
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、Rは以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基又は水素原子を表す。)
で示される化合物(以下、アルデヒド化合物(1)ともいう)とを反応させる工程を含む、式(2):
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、Rは上記で定義した通りであり、**は、不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性化合物(以下、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)ともいう)の製造方法。
<群G1>:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子、オキソ基及びトリC−C12アルキルシリル基からなる群
<群G2>:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
[2]反応が、有機溶媒を含む溶媒中で行われる、上記[1]記載の製造方法。
[3]Rが水素原子ではなく、かつ反応が、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる有機溶媒と水との混合溶媒中で行われる、上記[1]記載の製造方法。
[4]Rが水酸基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]Rが水酸基であり、かつAr及びArがそれぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]Rが水酸基であり、かつAr及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を得る工程;及び
当該工程で得られる光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)をアセタール化する工程;
を含む、式(3):
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、Rおよび**は上記[1]で定義した通りであり、RはC−C10アルキル基を表すか、或いは、互いに結合して以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C10アルカンジイル基を表す。)
で示される光学活性化合物(以下、光学活性なアセタール化合物(3)ともいう)の製造方法。
<群G1>:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子、オキソ基及びトリC−C12アルキルシリル基からなる群
<群G2>:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
[8]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を得る工程;
当該工程で得られる光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)をアセタール化する工程;及び
当該工程で得られる光学活性なアセタール化合物(3)と塩基とを反応させる工程;
を含む、式(6):
【0016】
【化6】

【0017】
(式中、Rおよび**は上記[1]で定義された通りであり、Rは上記[7]で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物(以下、光学活性なエポキシ化合物(6)ともいう)の製造方法。
<群G1>:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子、オキソ基及びトリC−C12アルキルシリル基からなる群
<群G2>:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
[9]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を得る工程;及び
当該工程で得られる光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)と、PhP=C(R)CO10(式中、Phはフェニル基を表し、Rは水素原子又はC−Cアルキル基を表し、R10はC−Cアルキル基を表す。)とを反応させる工程;
を含む、式(4):
【0018】
【化7】

【0019】
(式中、Rおよび**は上記[1]で定義された通りであり、R及びR10は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物(以下、光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)ともいう)の製造方法。
[10]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を得る工程;
当該工程で得られる光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)と、PhP=C(R)CO10(式中、Phはフェニル基を表し、Rは水素原子又はC−Cアルキル基を表し、R10はC−Cアルキル基を表す。)とを反応させる工程;及び
当該工程で得られる光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)と塩基とを反応させる工程;
を含む、式(7):
【0020】
【化8】

【0021】
(式中、Rおよび**は上記[1]で定義された通りであり、R及びR10は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物(以下、光学活性なエポキシ化合物(7)ともいう)の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法によれば、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0025】
本明細書中、「C−C20炭化水素基」とは、C−C20脂肪族炭化水素基又はC−C20芳香族炭化水素基を意味する。
【0026】
本明細書中、「C−C20脂肪族炭化水素基」とは、C−C20鎖式炭化水素基又はC−C20脂環式炭化水素基を意味する。
本明細書中、「C−C12脂肪族炭化水素基」とは、C−C12鎖式炭化水素基又はC−C12脂環式炭化水素基を意味する。
【0027】
本明細書中、「C−C20鎖式炭化水素基」とは、C−C20アルキル基、C−C20アルケニル基又はC−C20アルキニル基を意味する。
本明細書中、「C−C12鎖式炭化水素基」とは、C−C12アルキル基、C−C12アルケニル基又はC−C12アルキニル基を意味する。
【0028】
本明細書中、「C−C20アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。中でも、C−C12アルキル基、特にC−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜12のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル基が好ましく、特にC−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜8のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜4のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられる。
【0029】
本明細書中、「C−C20アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜20のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、1−ウンデセニル、1−ドデセニル、1−トリデセニル、1−エイコセニル等が挙げられる。中でも、C−C12アルケニル基、特にC−Cアルケニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜12のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、1−ウンデセニル、1−ドデセニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルケニル基が好ましく、特にC−Cアルケニル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。中でも、特にC−Cアルケニル基が好ましい。
【0030】
本明細書中、「C−C20アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜20のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル、1−ウンデシニル、1−ドデシニル、1−トリデシニル、1−エイコシニル等が挙げられる。中でも、C−C12アルキニル基、特にC−Cアルキニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜12のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル、1−ウンデシニル、1−ドデシニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキニル基が好ましく、特にC−Cアルキニル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキニル基が好ましい。
【0031】
本明細書中、「C−C20脂環式炭化水素基」とは、C−C20シクロアルキル基又はC−C20シクロアルケニル基を意味する。
本明細書中、「C−C12脂環式炭化水素基」とは、C−C12シクロアルキル基又はC−C12シクロアルケニル基を意味する。
【0032】
本明細書中、「C−C20シクロアルキル基」としては、炭素原子数3〜20の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロエイコシル等が挙げられる。中でも、C−C12シクロアルキル基、特にC−Cシクロアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12シクロアルキル基」としては、炭素原子数3〜12の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等が挙げられる。中でも、C−Cシクロアルキル基が好ましい。
【0033】
本明細書中、「C−C20シクロアルケニル基」としては、炭素原子数4〜20の環状アルケニル基を意味し、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、2−シクロノネン−1−イル、2−シクロデセン−1−イル、2−シクロドデセン−1−イル、2−シクロエイコセン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル等が挙げられる。中でも、C−C12シクロアルケニル基、特にC−Cシクロアルケニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12シクロアルケニル基」としては、炭素原子数4〜12の環状アルケニル基を意味し、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、2−シクロノネン−1−イル、2−シクロデセン−1−イル、2−シクロドデセン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル等が挙げられる。中でも、C−Cシクロアルケニル基が好ましい。
【0034】
本明細書中、「C−C20シクロアルキル基」、「C−C12シクロアルキル基」、「C−C20シクロアルケニル基」及び「C−C12シクロアルケニル基」は、ベンゼン環と縮合してもよい。このような基としては、1,2−ジヒドロナフタレン−1−イル、1,2−ジヒドロナフタレン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−イル、フルオレン−9−イル、インデン−1−イル等が挙げられる。
【0035】
本明細書中、「C−C20芳香族炭化水素基(C−C20アリール基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜20の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、アントリル、アセナフチレニル、ナフタセニル、ビフェニリル、ビフェニレニル等が挙げられる。中でも、C−C14芳香族炭化水素基(C−C14アリール基)、特にC−C10芳香族炭化水素基(C−C10アリール基)が好ましい。
本明細書中、「C−C12芳香族炭化水素基(C−C12アリール基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜12の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチレニル、ビフェニリル、ビフェニレニル等が挙げられる。中でも、C−C10芳香族炭化水素基(C−C10アリール基)が好ましい。
本明細書中、「C−C10アリール基」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜10の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
【0036】
本明細書中、「C−C14アラルキル基」とは、「C−Cアルキル基」に「C−C10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル等が挙げられる。
【0037】
本明細書中、「C−C12アルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜12のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシ基、特にC−Cアルコキシ基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシ基が好ましい。
【0038】
本明細書中、「芳香族複素環基」とは、環構成原子として炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する、芳香族性を示す単環式又は多環式(縮合)複素環基を意味する。
本明細書中、「単環式芳香族複素環基」としては、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル)、トリアゾリル(1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル)、テトラゾリル、トリアジニル等が挙げられる。中でも、5又は6員の単環式芳香族複素環基が好ましい。
本明細書中、「縮合芳香族複素環基」とは、上記単環式芳香族複素環基が、単環式芳香族環(好ましくは、ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)と縮合した基を意味し、例えば、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリル、ピロロピリジル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル、チエノピリジル、ピロロピラジニル、ピラゾロピラジニル、イミダゾピラジニル、チエノピラジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロチエニル等が挙げられる。
本明細書中、「単環式芳香族複素環」としては、例えば、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール(1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール)、チアジアゾール(1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール)、トリアゾール(1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール)、テトラゾール、トリアジン等が挙げられる。中でも、5又は6員の単環式芳香族複素環が好ましい。
【0039】
本明細書中、「C−C12フッ化アルキル基」とは、フッ素原子で置換された「C−C12アルキル基」を意味する。フッ素原子の数は特に限定されず、ペルフルオロ置換であってもよい。具体的には、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシル、7−フルオロヘプチル、8−フルオロオクチル、9−フルオロノニル、10−フルオロデシル、11−フルオロウンデシル、12−フルオロドデシル等が挙げられる。
【0040】
本明細書中、「C−C12フッ化アルキルオキシ基」とは、フッ素原子で置換された「C−C12アルコキシ基」を意味する。フッ素原子の数は特に限定されず、ペルフルオロ置換であってもよい。具体的には、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、3−フルオロプロポキシ、4−フルオロブトキシ、5−フルオロペンチルオキシ、6−フルオロヘキシルオキシ、7−フルオロヘプチルオキシ、8−フルオロオクチルオキシ、9−フルオロノニルオキシ、10−フルオロデシルオキシ、11−フルオロウンデシルオキシ、12−フルオロドデシルオキシ等が挙げられる。
【0041】
本明細書中、「C−C13アルコキシカルボニル基」とは、−C(=O)−に「C−C12アルコキシ基」が結合した基、即ち、「C−C12アルコキシ−カルボニル基」を意味し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシカルボニル基、特にC−Cアルコキシカルボニル基が好ましい。
【0042】
本明細書中、「C−C13アシル基」とは、C−C13カルボン酸から水酸基を除いた原子団であり、「C−C13脂肪族アシル基」又は「C−C13芳香族アシル基」を意味する。
本明細書中、「C−C13脂肪族アシル基」とは、−C(=O)−に「C−C12脂肪族炭化水素基」が結合した基、即ち、「C−C12脂肪族炭化水素−カルボニル基」を意味し、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、アクリロイル、メタアクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、プロピオノイル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等が挙げられる。中でも、C−C13アルキルカルボニル基が好ましく、特にC−Cアルキルカルボニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C13芳香族アシル基」とは、−C(=O)−に「C−C12芳香族炭化水素基(C−C12アリール基)」が結合した基、即ち、「C−C12芳香族炭化水素(C−C12アリール)−カルボニル基」を意味し、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられる。
【0043】
本明細書中、「保護されたアミノ基」は、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C6−10アリール基、C7−14アラルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C2−6アルケニル−オキシカルボニル基、C6−10アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−10アリール−オキシカルボニル基、C7−14アラルキル−オキシカルボニル基、C6−10アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−6アルキルシリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基等が挙げられる。上記の置換基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基又はニトロ基でそれぞれ置換されていてもよい。
当該保護基の具体例としては、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンズヒドリル、トリチル、フタロイル、アリルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0044】
本明細書中、「C1−6アルキル−カルボニル基」とは、−C(=O)−に「C1−6アルキル基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C1−6アルコキシ−カルボニル基」とは、−C(=O)−に「C1−6アルコキシ基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C2−6アルケニル−オキシカルボニル基」とは、−C(=O)O−の酸素原子に「C2−6アルケニル基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C6−10アリール−カルボニル基」とは、−C(=O)−に「C6−10アリール基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C7−14アラルキル−カルボニル基」とは、−C(=O)−に「C7−14アラルキル基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C6−10アリール−オキシカルボニル基」とは、−C(=O)O−の酸素原子に「C6−10アリール基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C7−14アラルキル−オキシカルボニル基」とは、−C(=O)O−の酸素原子に「C7−14アラルキル基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「C6−10アリールスルホニル基」とは、−S(=O)−に「C6−10アリール基」が結合した基を意味する。
本明細書中、「トリC1−6アルキルシリル基」とは、「C−Cアルキル基」でトリ置換された−SiHを意味する。
【0045】
本明細書中、「トリC−C12アルキルシリル基」とは、「C−C12アルキル基」でトリ置換された−SiHを意味する。
【0046】
以下、式(1)〜(7)の各基について説明する。
【0047】
は、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基又は水素原子を表す。ここで、C−C20炭化水素基の置換基の数は好ましくは1乃至3個であり、2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
は、
好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アルケニル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アルキニル基又は水素原子であり、
より好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルケニル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルキニル基又は水素原子であり、
さらに好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルケニル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキニル基又は水素原子であり、
さらにより好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルケニル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキニル基又は水素原子であり、
さらに一層好ましくは、C−Cアルキル基、C−C10アリール−C−Cアルキル基(C−C14アラルキル基)、C−Cアルケニル基、トリC−Cアルキルシリル置換C−Cアルキニル基又は水素原子であり、
特に好ましくは、C−Cアルキル基、C−C10アリール−C−Cアルキル基(C−C14アラルキル基)、C−Cアルケニル基又はトリC−Cアルキルシリル置換C−Cアルキニル基である。
【0048】
Ar及びArはそれぞれ独立に、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基、C−C12鎖式炭化水素基、C−C12脂環式炭化水素基又は水素原子を表す。ここで、フェニル基の置換基の数は好ましくは1乃至3個であり、2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
Ar及びArは、
好ましくは、それぞれ独立に、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基であり、
より好ましくは、それぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、
さらに好ましくは、それぞれ独立に、C−Cフッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、
さらに一層好ましくは、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基を有していてもよいフェニル基であり、
さらにより一層好ましくは、共にフェニル基であるか、又は共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であり、
特に好ましくは、共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である。
【0049】
は、水素原子、フッ素原子、水酸基、C−C12アルコキシ基、C−C12フッ化アルキルオキシ基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基又はC−C20アリール基を表す。)で示されるシリルオキシ基を表す。
は、
好ましくは、水酸基又は−OSiR(式中、R、R及びRは上記で定義された通りである。)で示されるシリルオキシ基であり、
より好ましくは、水酸基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基(好ましくはメチル基)である。)で示されるシリルオキシ基であり、
特に好ましくは、水酸基である。
【0050】
Ar及びArとRの好適な組み合わせは以下のとおりである。
(1)Ar及びArがそれぞれ独立に、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(2)Ar及びArがそれぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(3)Ar及びArがそれぞれ独立に、C−Cフッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(4)Ar及びArがそれぞれ独立に、トリフルオロメチル基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(5)Ar及びArが共にフェニル基であるか、又は共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(6)Ar及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
【0051】
は、C−C10アルキル基を表すか、或いは、互いに結合して群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルカンジイル基を表す。
は、好ましくは、C−Cアルキル基(特にメチル)である。
【0052】
は、水素原子又はC−Cアルキル基を表す。
は、好ましくは、水素原子又はC−Cアルキル基(特にメチル)である。
【0053】
10は、C−Cアルキル基を表す。
10は、好ましくは、C−Cアルキル基(特にエチル)である。
【0054】
本発明では、触媒としての光学活性なピロリジン化合物(5)の存在下、クロロアセトアルデヒドとアルデヒド化合物(1)とを反応させる工程(アルドール反応工程)を含むことにより、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を製造する。
【0055】
クロロアセトアルデヒドは、水溶液の状態で使用してもよい。なお、クロロアセトアルデヒドは、水溶液の状態で市販されているので、それをそのまま使用してもよい。
【0056】
アルデヒド化合物(1)の使用量は、収率、選択性及び経済性の点から、クロロアセトアルデヒド1モルに対して、好ましくは0.3〜3モル、より好ましくは0.5〜2.2モルである。
【0057】
触媒である光学活性なピロリジン化合物(5)において、アルデヒド化合物(1)の種類にもよるが、ジアステレオ選択性(アルデヒド化合物(1)中のRが水素原子以外である場合)の点から、式(5a):
【0058】
【化9】

【0059】
(式中、Ar及びArは上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)で示されるピロリジン化合物が好ましく、中でも、Ar及びArがそれぞれ独立に、C−Cフッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であるピロリジン化合物が好ましく、さらには、Ar及びArがそれぞれ独立に、トリフルオロメチル基を有していてもよいフェニル基であるピロリジン化合物が好ましく、さらには、Ar及びArが共にフェニル基であるか、あるいは共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であるピロリジン化合物が好ましく、特に、Ar及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であるピロリジン化合物が好ましい。
【0060】
光学活性なピロリジン化合物(5)の使用量は、収率及び経済性の点から、アルデヒド化合物(1)に対して、好ましくは0.5〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%である。
【0061】
本発明におけるアルドール反応は、好ましくは、有機溶媒を含む溶媒中で行われる。本発明で使用される有機溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒(例、トルエン、ベンゼン、キシレン);アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール);ハロゲン化炭化水素溶媒(例、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素);エーテル溶媒(例、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン);ニトリル溶媒(例、アセトニトリル);非プロトン性極性溶媒(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)等が挙げられる。中でも、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましく、収率、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性が特に良好である点から、エーテル溶媒が特に好ましい。
反応溶媒は、アルデヒド化合物(1)の種類により選択されるが、アルデヒド化合物(1)中のRが水素原子である場合は、エナンチオ選択性の点から、溶媒中に水を含まないことが好ましい。この場合、水を含まないクロロアセトアルデヒドを使用すること好ましく、市販品のクロロアセトアルデヒド水溶液から水を除去したものを使用する。水の除去方法としては、ディーンスタークを用いた加熱還流等の常法が採用される。
アルデヒド化合物(1)中のRが水素原子以外である場合は、反応溶媒が水を含んでいてもエナンチオ選択性及びジアステレオ選択性が良好であり、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる有機溶媒と水との混合溶媒が好ましく、収率、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性が特に良好である点から、エーテル溶媒と水との混合溶媒が特に好ましい。エーテル溶媒と水との混合溶媒の場合、水の使用量は、エーテル溶媒1mLに対し、好ましくは0.01〜1mL、より好ましくは0.1〜0.5mLである。なお、反応溶媒が水を含む場合はクロロアセトアルデヒドを水溶液の状態で使用する。
溶媒の使用量は、アルデヒド化合物(1)1gに対して、好ましくは1〜50mL、より好ましくは3〜20mLである。
【0062】
本発明におけるアルドール反応は、クロロアセトアルデヒドを溶媒に溶解した溶液に、アルデヒド化合物(1)、光学活性なピロリジン化合物(5)及び溶媒を添加して混合する方法;クロロアセトアルデヒドを溶媒に溶解した溶液に、光学活性なピロリジン化合物(5)及び溶媒を混合し、そこへアルデヒド化合物(1)を添加する方法;等により行われ、収率及び選択性の点から、クロロアセトアルデヒドを溶媒に溶解した溶液に、アルデヒド化合物(1)、光学活性なピロリジン化合物(5)及び溶媒を添加して混合する方法が好ましく、クロロアセトアルデヒドの水溶液に、アルデヒド化合物(1)、光学活性なピロリジン化合物(5)及び有機溶媒(好ましくは、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる有機溶媒、より好ましくはエーテル溶媒)を添加して混合する方法が特に好ましい。
【0063】
本発明におけるアルドール反応は、アルデヒド化合物(1)の種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは0〜40℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、アルデヒド化合物(1)の種類及び反応温度にもよるが、好ましくは1〜100時間、より好ましくは10〜50時間、特に好ましくは20〜40時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0064】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0065】
4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)は、反応混合物からの単離及び/又は精製の間に異性化する場合がある。従って、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)のジアステレオ比(シン/アンチ比)及びエナンチオマー過剰率(ee(%))の測定は、アルドール反応終了後の単離及び/又は精製を行わず、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を、反応中かつ単離及び精製中に異性化が生じない化合物に変換した後に行うことが望ましい。本発明では、対応する光学活性なアセタール化合物(式(3):
【0066】
【化10】

【0067】
(式中、R、Rおよび**は上記で定義された通りである。)で示される光学活性アセタール化合物)、又は対応する光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(式(4):
【0068】
【化11】

【0069】
(式中、R、R、R10および**は上記で定義された通りである。)で示される光学活性α,β−不飽和エステル化合物)に変換する。
【0070】
光学活性なアセタール化合物(3)は、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)をアセタール化する工程(アセタール化反応工程)を含むことにより製造される。
具体的には、光学活性なアセタール化合物(3)は、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)と、Rに対応するアセタール化剤(例えば、ROH、HC(OR、(CHC(OR)とを酸触媒の存在下で反応させる工程を含むことにより製造される。
好ましくは、光学活性なアセタール化合物(3)は、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物と、Rに対応するアセタール化剤(例えば、ROH、HC(OR、(CHC(OR)とを酸触媒の存在下で反応させる工程を含むことにより製造される。
より好ましくは、光学活性なアセタール化合物(3)は、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物と、HC(OR(式中、RはC−Cアルキル基を表す。)とを酸触媒の存在下で反応させる工程を含むことにより製造される。
【0071】
HC(ORの使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)1モルに対して、好ましくは1〜20モル、より好ましくは3〜10モルである。
【0072】
使用される酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸又はその水和物(一水和物)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウムが挙げられ、収率及び経済性の点から、p−トルエンスルホン酸又はその水和物(一水和物)が好ましい。
酸触媒の使用量は、反応速度の点から、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)1モルに対して、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.01〜0.1モルである。
【0073】
上記アセタール化反応は、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物に、HC(OR及び酸触媒を添加して混合する方法;アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物に酸触媒を添加し、その後、HC(ORを添加して混合する方法;等により行われ、操作を簡便にする点から、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物に、HC(OR及び酸触媒を添加して混合する方法により行うことが好ましい。
【0074】
上記アセタール化反応は、HC(OR及び酸触媒の種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは10〜40℃の範囲内、特に好ましくは20〜30℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、HC(OR及び酸触媒の種類、及び反応温度にもよるが、好ましくは10分〜50時間、より好ましくは30分〜20時間、特に好ましくは1〜10時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0075】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性なアセタール化合物(3)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性なアセタール化合物(3)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0076】
光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)は、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)と、PhP=C(R)CO10(式中、Ph、R及びR10は上記で定義した通りである。)とを反応させる工程(ウィッティッヒ反応工程)を含むことにより製造される。
好ましくは、光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)は、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物と、PhP=C(R)CO10(式中、Ph、R及びR10は上記で定義した通りである。)とを反応させる工程を含むことにより製造される。
【0077】
PhP=C(R)CO10の使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)1モルに対して、好ましくは0.01〜5モル、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0078】
上記ウィッティッヒ反応は、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物に、PhP=C(R)CO10を添加して混合する方法;PhP=C(R)CO10に、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物を添加して混合する方法;等により行われ、操作を簡便にする点から、アルドール反応終了後の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を含む反応混合物に、PhP=C(R)CO10を添加して混合する方法により行うことが好ましい。
【0079】
上記ウィッティッヒ反応は、PhP=C(R)CO10の種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは10〜40℃の範囲内、特に好ましくは20〜30℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、PhP=C(R)CO10の種類及び反応温度にもよるが、好ましくは10分〜50時間、より好ましくは30分〜20時間、特に好ましくは1〜10時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0080】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0081】
得られた光学活性なアセタール化合物(3)又は光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)について、ジアステレオ比(シン/アンチ比)及びエナンチオマー過剰率が測定される。測定されたジアステレオ比(シン/アンチ比)及びエナンチオマー過剰率は、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)のそれに対応する。
【0082】
アルデヒド化合物(1)中のRが水素原子以外である場合、本発明におけるアルドール反応工程では、アンチ体の光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)が優先的に得られる。ジアステレオ比(シン/アンチ比)が例えば50/50以上、また例えば20/80以上のジアステレオ選択性が可能となる。
【0083】
本発明におけるアルドール反応工程では、CがS配置であるピロリジン化合物(5a)、即ち、式(5a−S):
【0084】
【化12】

【0085】
(式中、Ar及びArは上記で定義された通りである。)
で示されるピロリジン化合物を触媒として使用した場合、C**がR配置である光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)、即ち、式(2R):
【0086】
【化13】

【0087】
(式中、Rは上記で定義された通りである。)
で示される光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物が優先的に得られる。
【0088】
一方、CがR配置であるピロリジン化合物(5a)、即ち、式(5a−R):
【0089】
【化14】

【0090】
(式中、Ar及びArは上記で定義された通りである。)
で示されるピロリジン化合物を触媒として使用した場合、C**がS配置である光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)、即ち、式(2S):
【0091】
【化15】

【0092】
(式中、Rは上記で定義された通りである。)
で示される光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物が優先的に得られる。
【0093】
このように、本発明におけるアルドール反応工程では、エナンチオマー過剰率が例えば50ee%以上、また例えば80ee%以上のエナンチオ選択性が可能となる。
【0094】
光学活性なアセタール化合物(3)及び光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)においては、塩素原子とヒドロキシ基とが隣接する炭素原子に結合している。従って、光学活性なアセタール化合物(3)及び光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)を塩基と反応させることにより、対応する光学活性なエポキシ化合物(6)または(7)を容易に製造することが可能である。光学活性なエポキシ化合物(6)または(7)は、反応性の中間体として医薬品の製造において非常に有用な化合物である。
【0095】
光学活性なエポキシ化合物(6)
光学活性なアセタール化合物(3)と塩基とを反応させる工程を含むことにより、対応する光学活性なエポキシ化合物(式(6):
【0096】
【化16】

【0097】
(式中、R、Rおよび**は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性エポキシ化合物)を製造する(エポキシ化反応工程)。
【0098】
塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメチラート等の金属アルコラート等が挙げられる。中でも、収率及び経済性の点から、炭酸カリウムが好ましい。
塩基の使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性なアセタール化合物(3)1モルに対して、好ましくは0.8〜2モル、より好ましくは1〜1.5モルである。
本発明におけるエポキシ化反応は、好ましくは溶媒中で行われる。溶媒としては、アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール);エーテル溶媒(例、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン)等が挙げられる。中でも、収率の点から、アルコール溶媒が好ましい。
【0099】
本発明におけるエポキシ化反応は、操作を簡便にする点から、光学活性なアセタール化合物(3)を溶媒に溶解した溶液に塩基を添加する方法により行なうことが好ましい。塩基の添加は、好ましくは−20〜20℃の範囲内、より好ましくは−10〜10℃の範囲内で行われる。
また、本発明におけるエポキシ化反応は、操作を簡便にする点から、アセタール化反応終了後の光学活性なアセタール化合物(3)を含む反応混合物と塩基とを反応させることにより行うことが好ましい。
【0100】
本発明におけるエポキシ化反応は、光学活性なアセタール化合物(3)の種類にもよるが、好ましくは0〜120℃の範囲内、より好ましくは40〜80℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、光学活性なアセタール化合物(3)の種類及び反応温度にもよるが、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜20時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0101】
光学活性なエポキシ化合物(7)
光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)と塩基とを反応させる工程を含むことにより、対応する光学活性なエポキシ化合物(式(7):
【0102】
【化17】

【0103】
(式中、R、R、R10および**は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性エポキシ化合物)を製造する(エポキシ化反応工程)。
【0104】
塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメチラート等の金属アルコラート等が挙げられる。中でも、収率及び経済性の点から、炭酸カリウムが好ましい。
塩基の使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)1モルに対して、好ましくは0.5〜2モル、より好ましくは0.8〜1.3モルである。
本発明におけるエポキシ化反応は、好ましくは溶媒中で行われる。溶媒としては、アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール);エーテル溶媒(例、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン)等が挙げられる。中でも、収率の点から、アルコール溶媒が好ましい。
【0105】
本発明におけるエポキシ化反応は、操作を簡便にする点から、光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)を溶媒に溶解した溶液に塩基を添加する方法により行なうことが好ましい。塩基の添加は、好ましくは−20〜20℃の範囲内、より好ましくは−10〜10℃の範囲内で行われる。
また、本発明におけるエポキシ化反応は、操作を簡便にする点から、アセタール化反応終了後の光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)を含む反応混合物と塩基とを反応させることにより行うことが好ましい。
【0106】
本発明におけるエポキシ化反応は、光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)の種類にもよるが、好ましくは0〜120℃の範囲内、より好ましくは40〜80℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、光学活性なα,β−不飽和エステル化合物(4)の種類及び反応温度にもよるが、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜20時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
TCI(東京化成工業株式会社)より購入したクロロアセトアルデヒド(水中で約40%,約6.1mol/L)(カタログ番号:C0083)を直接用いた。
クロロアセトアルデヒド以外の全ての液体アルデヒド及び溶媒は、使用前に蒸留した。
全ての反応をアルゴン雰囲気下で行い、Merck 60 F254 プレコートシリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。分取薄層クロマトグラフィーは、和光純薬工業株式会社(日本、東京)より購入したWakogel B−5Fを用いて行った。フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。
FT−IRスペクトルは、JASCO FT/IR−410分光計で記録した。
H及び13C−NMRスペクトルは、Bruker AM400(H−NMRでは400MHz、13C−NMRでは100MHz)装置で記録した。H−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。13C−NMRについてのデータは、化学シフトとして報告する。
高分解能質量スペクトル解析(HRMS)は、Bruker ESI−TOF MSを用いて実行した。
HPLC解析は、HITACHI Elite LaChrom Series HPLCにより、UV検出をそれぞれ適切な波長でモニターしながら、CHIRALCEL OD−H(0.46cm×25cm)、CHIRALCEL OJ−H(0.46cm×25cm)、CHIRALPAK IA(0.46cm×25cm)、CHIRALPAK IC(0.4cm×1cm)、CHIRALPAK AD−H(0.46cm×25cm)及びCHIRALPAK AS−H(0.46cm×25cm)を用いて行った。
【0108】
実施例1−1〜1−4
【0109】
【化18】

【0110】
クロロアセトアルデヒドの40%水溶液(0.75mmol,123μL)に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(0.05mmol,3−フェニルプロパナールに対して10mol%)、表1に示す溶媒(0.5mL)及び3−フェニルプロパナール(アルデヒド化合物(1),0.5mmol)を加えた。反応混合物を23℃で表1に示す時間攪拌後、オルトギ酸トリメチル(6.0mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(0.1mmol)を加えて、23℃で1時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の添加により、アセタール反応を停止した。有機物をクロロホルムで3回抽出し、無水MgSOで乾燥し、濾過後に減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)で精製して、(2R,3S)−3−ベンジル−1−クロロ−4,4−ジメトキシブタン−2−オールを得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表1に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。また、エナンチオマー過剰率は、対応する3,5−ジニトロベンゾエートに変換後、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:100)、(0.25mL/min、副エナンチオマーの保持時間=32.1分、主エナンチオマーの保持時間=41.8分)により測定した。
【0111】
【表1】

【0112】
実施例2−1〜2−8
【0113】
【化19】

【0114】
表2に示す量(X)のクロロアセトアルデヒドの40%水溶液に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(0.05mmol、但し、実施例2−4、2−6及び2−7では0.075mmol)、THF(0.5mL)及び表2に示す量(Y)のアルデヒド化合物(1)を加えた。反応混合物を23℃で表2に示す時間攪拌後、オルトギ酸トリメチル(492μL,4.5mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(19.0mg,0.1mmol)を加えて、23℃で1時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の添加により、反応を停止した。有機物を、クロロホルムで3回抽出し、無水MgSOで乾燥し、濾過後に減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)での精製により、アセタール化合物(3)(R=メチル)を得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表2に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。エナンチオマー過剰率は、必要に応じて、対応するp−ニトロベンゾエートまたは3,5−ジニトロベンゾエートに変換後、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0115】
(2R,3S)−1−クロロ−4,4−ジメトキシ−3−メチルブタン−2−オール(実施例2−1)
【0116】
【化20】

【0117】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.88:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.94 (3H, d, J = 6.8 Hz), 2.08-2.16 (1H, m), 3.40 (3H, s), 3.45 (3H, s), 3.61 (1H, dd, J = 5.2, 11.6 Hz), 3.66 (1H, br-s), 3.74 (1H, dd, J = 3.2, 11.6 Hz), 3.82-3.86 (1H, m), 4.36 (1H, d, J = 5.2 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ11.0, 38.7, 48.6, 54.1, 56.3, 72.3, 108.1;
IR (neat):νmax 3456, 2935, 2835, 1459, 1384, 1281, 1194, 1107, 1060, 943, 751, 536 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C7H15ClO3Na]+として):205.0602, 実測値:205.0593;エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物のp−ニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:80)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=20.2分、副エナンチオマーの保持時間=23.6分)により測定した。
【0118】
(2R,3S)−1−クロロ−3−(ジメトキシメチル)ペンタン−2−オール(実施例2−2)
【0119】
【化21】

【0120】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=9.0:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.97 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.47-1.55 (2H, m), 1.91 (1H, ddt, J = 4.4, 6.4, 12.0 Hz), 3.41 (3H, s), 3.45 (3H, s), 3.67 (1H, dd, J = 6.2, 11.4 Hz), 3.72 (1H, dd, J = 4.4, 11.2 Hz), 3.95 (1H, dd, J = 5.6, 10.8 Hz), 4.43 (1H, d, J = 4.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ11.7, 19.7, 44.2, 48.6, 54.8, 56.6, 71.2, 107.8;
IR (neat):νmax 3483, 2964, 2834, 1465, 1374, 1281, 1176, 1140, 1068, 845, 683, 405 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C8H17ClO3Na]+として):219.0758,実測値:219.0760;エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:50)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=38.3分、副エナンチオマーの保持時間=42.2分)により測定した。
【0121】
(2R,3S)−1−クロロ−3−(ジメトキシメチル)ヘキサン−2−オール(実施例2−3)
【0122】
【化22】

ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.88 : 1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.92 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.32-1.45 (4H, m), 1.96-2.02 (1H, m), 3.41 (3H,s), 3.44 (3H,s), 3.51 (1H, d, J = 5.2 Hz), 3.71 (1H, dd, J = 4.8, 11.2 Hz), 3.92 (1H, quin., J = 5.2 Hz), 4.40 (1H, d, J = 4.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.3, 20.5, 28.8, 42.4, 48.5, 55.1, 56.5, 72.0, 108.0;
IR (neat):νmax 3481, 2959, 1457, 1377, 1190, 1109, 1063, 967, 732, 437, 419 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C9H19ClO3Na]+として):233.0915,実測値:233.0926;エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:50)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=35.1分、副エナンチオマーの保持時間=39.6分)
により測定した。
【0123】
(2R,3S)−1−クロロ−3−(ジメトキシメチル)−4−メチルペンタン−2−オール(実施例2−4)
【0124】
【化23】

【0125】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=9.09:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.97 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.03 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.74-1.78 (1H, m), 1.93-2.02 (1H, m), 3.39 (3H, s), 3.45 (3H, s), 3.72 (2H, d, J = 6.0 Hz), 4.00 (1H, ddd, J = 4.0, 6.0, 14.2 Hz), 4.50 (1H, d, J = 4.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ20.3, 20.6, 26.9, 47.6, 49.6, 54.6, 56.5, 71.2, 107.5;
IR (neat):νmax 3485, 2962, 2839, 2360, 1459, 1112, 1061, 916, 428, 414 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C9H19ClO3Na]+として):233.0915,実測値:233.0924;エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:50)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=28.6分、副エナンチオマーの保持時間=30.7分)
により測定した。
【0126】
(2R,3S)−3−ベンジル−1−クロロ−4,4−ジメトキシブタン−2−オール(実施例2−5)
【0127】
【化24】

【0128】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=3.85:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ2.30-2.36 (1H, m), 2.75 (1H, dd, J = 8.0, 14.0 Hz), 2.81 (1H, dd, J = 8.0, 13.6 Hz), 3.36 (3H, s), 3.45 (3H, s), 3.58 (1H, d, J = 5.2 Hz), 3.68 (1H, d, J = 2.0 Hz), 3.70 (1H, s), 3.91 (1H, quin., J = 5.2 Hz), 4.28 (1H, d, J = 2.8 Hz), 7.20-7.32 (5H, m);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ33.0, 44.6, 48.5, 55.6, 56.8, 71.4, 107.4, 126.3, 128.6, 129.1, 139.6;
IR (neat):νmax 3493, 3027, 2946, 2834, 2360, 1603, 1496, 1454, 1370, 1281, 1189, 1123, 1060, 963, 752, 702, 499 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C13H19ClO3Na]+として):281.0915,実測値:281.0926;
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:100)(0.25 mL/min、副エナンチオマーの保持時間=32.1分、主エナンチオマーの保持時間=41.8分)により測定した。
【0129】
(2R,3S,Z)−1−クロロ−3−(ジメトキシメチル)ノナ−6−エン−2−オール(実施例2−6)
【0130】
【化25】

【0131】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.88:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.97 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.44-1.55 (2H, m), 1.99-2.17 (5H, m), 3.41 (3H, s), 3.45 (3H, s), 3.51 (1H, d, J = 5.6 Hz), 3.65-3.74 (2H, m), 3.94 (1H, quin., J = 5.4 Hz), 4.41 (1H, d, J = 4.0 Hz), 5.27-5.44 (2H, m);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.4, 20.7, 24.8, 26.5, 42.1, 48.4, 55.3, 56.5, 71.9, 108.0, 128.5, 132.6;
IR (neat):νmax 3734, 3648, 3500, 2963, 2361, 1558, 1541, 1457, 1067, 668, 484, 463, 420 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C12H23ClO3Na]+として):273.1228,実測値:273.1228;
エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物のp−ニトロベンゾイル化後にCHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:80)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=33.4分、副エナンチオマーの保持時間=37.4分)により測定した。
【0132】
(2R,3S)−1−クロロ−3−(ジメトキシメチル)−6−(トリメチルシリル)ヘキサ−5−イン−2−オール(実施例2−7)
【0133】
【化26】

【0134】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=3.0:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.15 (9H, s), 2.18 (1H, ddd, J = 6.0, 8.0, 10.0 Hz), 2.43 (2H, d, J = 6.4 Hz), 3.42 (3H, s), 3.47 (3H, s), 3.62 (1H, d, J = 4.0 Hz), 3.73 (1H, dd, J = 5.6, 11.6 Hz), 3.79 (1H, dd, J = 4.0, 11.6 Hz), 4.62 (1H, d, J = 5.6 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ0.00, 18.1, 42.0, 48.1, 54.7, 56.1, 71.3, 97.0, 101.4, 106.4;
IR (neat):νmax 3447, 2954, 2925, 2175, 1714, 1457, 1281, 1250, 1178, 1141, 1069, 844, 760, 683, 419, 405 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C12H23ClO3SiNa]+として):301.0997,実測値:301.0986;
エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=15.1分、副エナンチオマーの保持時間=17.0分)により測定した。
【0135】
(R)−1−クロロ−4,4−ジメトキシブタン−2−オール(実施例2−8)
【0136】
【化27】

【0137】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.86-1.90 (2H, m), 3.05 (1H, br-d, J = 3.2 Hz), 3.38 (3H, s), 3.38 (3H, s), 3.53-3.57 (2H, m), 4.00-4.02 (1H, m), 4.61 (1H, t, J = 5.6 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ36.8, 49.4, 53.5, 53.9, 68.4, 103.3;
IR (neat): νmax 3450, 2963, 2835, 1727, 1648, 1447, 1374, 1281, 1189, 1128, 1057, 962, 902, 822, 745, 683, 409 cm-1;
HRMS (ESI): [M+Na]+ 計算値([C6H13ClO3Na]+として):191.0445, 実測値:191.0441;
[α]D22 = -9.72°(c = 1.80, CHCl3);
エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=17.4分、副エナンチオマーの保持時間=12.9分)により測定した。
【0138】
【表2】

【0139】
実施例3−1〜3−6
【0140】
【化28】

【0141】
表3に示す量(X)のクロロアセトアルデヒドの40%水溶液に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(0.05mmol、但し、実施例3−4及び3−6では0.075mmol)、THF(0.5mL)及び表3に示す量(Y)のアルデヒド化合物(1)を加えた。反応混合物を23℃で表3に示す時間攪拌後、ウィッティヒ試薬(435mg,1.25mmol)を加えて、23℃で1時間攪拌した。シリカゲルパッドを通過させることにより、ウィッティヒ反応を停止し、減圧濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)での精製により、α,β−不飽和エステル化合物(4)(R=水素原子またはメチル、R10=エチル)を得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表3に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。エナンチオマー過剰率は、対応する3,5−ジニトロベンゾエートに変換後、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0142】
(4R,5R,E)−エチル 6−クロロ−5−ヒドロキシ−4−メチルヘキサ−2−エノエート(実施例3−1)
【0143】
【化29】

【0144】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=4.19:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.14 (3H, t, J = 6.8 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.2 Hz), 2.25 (1H, d, J = 4.8 Hz), 2.58-2.64 (1H, m), 3.53 (1H, dd, J = 7.4, 11.4 Hz), 3.63 (1H, dd, J = 3.6, 11.2 Hz), 3.72-3.77 (1H, m), 4.19 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.90 (1H, dd, J = 1.0, 15.8 Hz), 6.96 (1H, dd, J = 8.4, 15.6 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.4, 16.0, 40.2, 48.4, 60.6, 74.5, 122.7, 149.0, 166.6;
IR (neat):νmax 3462, 2982, 2927, 2876, 1702, 1652, 1370, 1280, 1183, 1034, 985, 869 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C9H15ClO3Na]+として):229.0602,実測値:229.0593;エナンチオマー過剰率は、ウィッティヒ生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK IAカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:10)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=12.9分、副エナンチオマーの保持時間=16.4分)により測定した。
【0145】
(4R,5R,E)−エチル 6−クロロ−5−ヒドロキシ−2,4−ジメチルヘキサ−2−エノエート(実施例3−2)
【0146】
【化30】

【0147】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.65:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.10 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.30 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.88 (3H, d, J = 1.2 Hz), 2.75-2.84 (1H, m), 3.52 (1H, dd, J = 7.2, 11.2 Hz), 3.62 (1H, dd, J = 3.6, 11.2 Hz), 3.73-3.77 (1H, m), 4.20 (2H, dq, J = 1.2, 7.2 Hz), 6.69 (1H, dd, J = 1.4, 10.2 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ13.1, 14.7, 16.5, 36.8, 48.3, 60.9, 74.7, 129.9, 141.4, 168.3;
IR (neat):νmax 3484, 2979, 1708, 1648, 1369, 1280, 1139, 1094, 1005, 750, 405 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C10H17ClO3Na]+として):243.0758,実測値:243.0754;
エナンチオマー過剰率は、ウィッティヒ生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK AS−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=11.2分、副エナンチオマーの保持時間=13.4分)により測定した。
【0148】
(4R,5R,E)−エチル 6−クロロ−4−エチル−5−ヒドロキシヘキサ−2−エノエート(実施例3−3)
【0149】
【化31】

【0150】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.88:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.91 (3H, t, J = 7.4 Hz), 1.30 (3H, t, J = 3.2 Hz), 1.50-1.68 (2H, m), 2.18 (1H, d, J = 4.4 Hz), 2.27-2.34 (1H, m), 3.49 (1H, dd, J = 7.6, 11.2 Hz), 3.56 (1H, dd, J = 4.0, 11.2 Hz), 3.83-3.87 (1H, m), 4.19 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.88 (1H, dd, J = 0.6, 15.8 Hz), 6.84 (1H, dd, J = 9.8, 15.6 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ11.8, 14.0, 24.1, 47.8, 48.4, 60.3, 73.4, 124.5, 146.9, 166.3;
IR (neat):νmax 3480, 2965, 1703, 1651, 1371, 1281, 1239, 1180, 1138, 1038, 991, 404 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C10H17ClO3Na]+として):243.0758,実測値:243.0757;
エナンチオマー過剰率は、ウィッティヒ生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:50)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=23.6分、副エナンチオマーの保持時間=32.0分)により測定した。
【0151】
(4R,5R,E)−エチル 6−クロロ−5−ヒドロキシ−4−イソプロピルヘキサ−2−エノエート(実施例3−4)
【0152】
【化32】

【0153】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=8.72:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.86 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.96 (3H, d, J = 6.4 Hz), 1.27 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.87-1.96 (1H, m), 1.98-2.03 (1H, m), 2.06 (1H, d, J = 3.6 Hz), 3.43 (1H, dd, J = 7.8, 11.0 Hz), 3.48 (1H, dd, J = 4.2, 11.0 Hz), 3.96-4.01 (1H, m), 4.17 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.82 (1H, d, J = 15.6 Hz), 6.87 (1H, dd, J = 10.2, 15.8 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.4, 20.2, 20.9, 28.5, 49.1, 52.7, 60.7, 71.4, 125.1, 146.2, 166.0;
IR (neat):νmax 3444, 2961, 2876, 1702, 1651, 1371, 1177, 1038, 995, 429, 412 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C11H19ClO3Na]+として):257.0915,実測値:257.0926;
エナンチオマー過剰率は、ウィッティヒ生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALCEL OJ−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、副エナンチオマーの保持時間=23.0分、主エナンチオマーの保持時間=26.7分)により測定した。
【0154】
(4R,5R,E)−エチル 4−ベンジル−6−クロロ−5−ヒドロキシヘキサ−2−エノエート(実施例3−5)
【0155】
【化33】

【0156】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=6.90:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.28 (3H, t, J = 7.2 Hz), 2.58-2.64 (1H, m), 2.78 (1H, dd, J = 7.2, 13.6 Hz), 2.98 (1H, dd, J = 3.8, 13.4 Hz), 4.17 (2H, dq, J = 0.8, 6.0 Hz), 5.78 (1H, dd, J = 6.0, 15.8 Hz), 6.96 (1H, dd, J = 9.6, 15.6 Hz), 7.15-7.31 (5H, m);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.2, 37.3, 47.7, 48.9, 60.5, 71.8, 124.3, 126.4, 128.4, 129.3, 138.5, 146.2, 165.9;
IR (neat):νmax 3421, 2927, 2356, 1699, 1653, 1496, 1456, 1371, 1280, 1161, 1033, 988, 701, 419 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C15H19ClO3Na]+として):305.0915,実測値:305.0901;
エナンチオマー過剰率は、ウィッティヒ生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK IAカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=27.3分、副エナンチオマーの保持時間=40.6分)により測定した。
【0157】
(R,2E,7Z)−エチル 4−((R)−2−クロロ−1−ヒドロキシエチル)デカ−2,7−ジエノエート(実施例3−6)
【0158】
【化34】

【0159】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.88:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ0.95 (3H, t, J = 7.4 Hz), 1.30 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.97-2.06 (4H, m), 2.20 (1H, d, J = 3.6 Hz), 2.40-2.47 (1H, m), 3.49 (1H, dd, J = 8.0, 11.2 Hz), 3.55 (1H, dd, J = 4.0, 11.2 Hz), 3.81-3.85 (1H, m), 4.20 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.23-5.43 (2H, m), 5.88 (1H, dd, J = 0.6, 15.8 Hz), 6.85 (1H, dd, J = 9.8, 15.8 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.7, 20.8, 24.8, 45.3, 48.7, 60.7, 124.3, 127.9, 133.1, 147.1, 166.3;
IR (neat):νmax 3464, 2964, 1710, 1702, 1652, 1372, 1280, 1162, 1036, 991, 727, 420 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C14H23ClO3Na]+として):297.1228,実測値:297.1235;
エナンチオマー過剰率は、ウィッティヒ生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:100)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=51.7分、副エナンチオマーの保持時間=64.3分)により測定した。
【0160】
【表3】

【0161】
実施例4−1〜4−5
【0162】
【化35】

【0163】
表4に示す量(X)のクロロアセトアルデヒドの40%水溶液に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(0.05mmol、但し、実施例4−3及び4−5では0.075mmol)、THF(0.5mL)及び表4に示す量(Y)のアルデヒド化合物(1)を加えた。反応混合物を23℃で表4に示す時間(時間−1)攪拌後、オルトギ酸トリメチル(492μL,4.5mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(19.0mg,0.1mmol)を加えて、23℃で1時間攪拌した。その後、KCO(173mg,1.25mmol)及びMeOH(0.5mL)を0℃で加えた。反応混合物を65℃で表4に示す時間(時間−2)攪拌した後、冷水を23℃で加えた。有機物をクロロホルムで3回抽出し、無水MgSOで乾燥し、濾過後に減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)で精製して、エポキシ化合物(6)(R=メチル)を得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表4に示す。収率は3工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。エナンチオマー過剰率は、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0164】
(R)−2−((S)−1,1−ジメトキシプロパン−2−イル)オキシラン(実施例4−1)
【0165】
【化36】

【0166】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=4.76:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.88 (3H, dd, J = 3.0, 7.0 Hz), 1.62-1.67 (1H, m), 2.44 (1H, dd, J = 2.8, 4.8 Hz), 2.67 (1H, dt, J = 4.0, 4.8 Hz), 2.86 (1H, ddd, J = 2.8, 3.6, 7.0 Hz), 3.35 (3H, d, J = 3.2 Hz), 3.37 (3H, d, J = 3.2 Hz), 4.25 (1H, dd, J = 3.2, 5.2 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ10.0, 39.5, 44.9, 53.3, 54.6, 54.7, 107.1;
IR (neat):νmax 2929, 1733, 1698, 1558, 1541, 1507, 1457, 1374, 1281, 1175, 1138, 901, 682, 668, 458, 436, 422, 411 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C7H14O3Na]として):169.0835,実測値:169.0837.
【0167】
(R)−2−((S)−1,1−ジメトキシブタン−2−イル)オキシラン(実施例4−2)
【0168】
【化37】

【0169】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=6.67:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.95 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.32-1.47 (2H, m), 1.60-1.66 (1H, m), 2.53 (1H, q, J = 2.4 Hz), 2.78 (1H, dd, J = 4.0, 4.8 Hz), 2.87 (1H, ddd, J = 3.2, 4.0, 7.8 Hz), 3.41 (3H, s), 3.44 (3H, s), 4.38 (1H, d, J = 4.4 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ12.0, 18.8, 46.4, 46.7, 52.3, 55.2, 55.6, 106.6;
IR (neat):ν2965, 1466, 1374, 1281, 1177, 1141, 1073, 968, 844, 683, 419, 402 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C8H16O3Na]として):183.0992,実測値:183.0987.
【0170】
(R)−2−((S)−1,1−ジメトキシ−3−メチルブタン−2−イル)オキシラン(実施例4−3)
【0171】
【化38】

【0172】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=8.33:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.96 (6H, dt, J = 1.2, 7.0 Hz), 1.17-1.22 (2H, m), 1.94-2.04 (1H, m), 2.51 (1H, ddd, J = 1.6, 2.4, 6.0 Hz), 2.75-2.77 (1H, m), 2.86-2.89 (1H, m), 3.62 (3H, s), 3.65 (3H, s), 4.44 (1H, dd, J = 1.4, 5.4 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ19.3, 22.0, 26.6, 46.3, 49.8, 50.6, 54.5, 54.6, 106.2;
IR (neat):ν2960, 1464, 1373, 1281, 1176, 1138, 1074, 682, 419, 410 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C9H18O3Na]として):197.1148,実測値:197.1147.
【0173】
(R)−2−((S)−1,1−ジメトキシ−3−フェニルプロパン−2−イル)オキシラン(実施例4−4)
【0174】
【化39】

【0175】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=8.3:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.67-1.72 (1H, m), 2.00 (1H, dd, J = 2.8, 4.8 Hz), 2.54 (1H, dd, J = 4.4, 4.8 Hz), 2.62 (1H, dd, J = 10.0, 14.0 Hz), 2.88-2.98 (2H, m), 3.45 (3H, s), 3.48 (3H, s), 4.40 (1H, dd, J = 4.4 Hz), 7.15-7.30 (5H, m);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ32.0, 46.4, 47.6, 51.9, 55.3, 55.9, 106.6, 126.1, 128.4, 129.1, 140.6;
IR (neat):ν2832, 1496, 1455, 1361, 1281, 1200, 1136, 1073, 971, 881, 838, 745, 702, 520, 457, 438, 417, 405 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C13H18O3Na]として):245.1148,実測値:245.1143;
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:200)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=8.1分、副エナンチオマーの保持時間=12.0分)により測定した。
【0176】
(R)−2−((S,Z)−1,1−ジメトキシオクタ−5−エン−2−イル)オキシラン(実施例4−5)
【0177】
【化40】

【0178】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.3:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.96 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.37-1.67 (2H, m), 2.01-2.20 (5H, m), 2.52 (1H, dd, J = 2.8, 5.2 Hz), 2.78-2.80 (1H, m), 3.41 (3H, s), 3.45 (3H, s), 4.38 (1H, d, J = 4.4 Hz), 5.29-5.35 (2H, m);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.3, 20.6, 25.0, 26.0, 44.4, 46.5, 52.3, 55.2, 55.7, 128.8, 132.2;
IR (neat):ν3003, 2963, 2931, 2832, 1733, 1457, 1373, 1281, 1188, 1140, 1075, 968, 845, 805, 668, 503, 472, 419, 410, 401 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C12H22O3Na]として):237.1461,実測値:237.1469.
【0179】
【表4】

【0180】
実施例5−1〜5−6
【0181】
【化41】

【0182】
表5に示す量(X)のクロロアセトアルデヒドの40%水溶液に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(0.05mmol、但し、実施例5−4及び5−6では0.075mmol)、THF(0.5mL)及び表5に示す量(Y)のアルデヒド化合物(1)を加えた。反応混合物を23℃で表5に示す時間(時間−1)攪拌後、ウィッティヒ試薬(435mg,1.25mmol)を加えて、23℃で1時間攪拌した。その後、KCO(138mg,1.00mmol)及びEtOH(0.5mL)を23℃で加えた。反応混合物を65℃で表5に示す時間(時間−2)攪拌した。シリカゲルパッドを通過させることにより反応を停止し、減圧濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製して、エポキシ化合物(7)(R=水素原子またはメチル、R10=エチル)を得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表5に示す。収率は3工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。エナンチオマー過剰率は、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0183】
(R,E)−エチル 4−((R)−オキシラン−2−イル)ペンタ−2−エノエート(実施例5−1)
【0184】
【化42】

【0185】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=7.85:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.13 (3H, d, J = 7.2 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.2 Hz), 2.23-2.34 (1H, m), 2.55 (1H, dd, J = 3.2, 4.8 Hz), 2.76-2.78 (1H, m), 2.89 (1H, ddd, J = 3.2, 4.0, 6.8 Hz), 4.20 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.92 (1H, dd, J = 1.5, 16.0 Hz), 6.93 (1H, dd, J = 7.0, 16.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.2, 15.3, 38.5, 45.7, 54.8, 60.4, 121.9, 148.8, 166.5;
IR (neat):νmax 2979, 1719, 1655, 1368, 1269, 1184, 1037, 984, 894, 428, 405 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C9H14O3Na]+として):193.0835,実測値:193.0834.
【0186】
(R,E)−エチル 2−メチル−4−((R)−オキシラン−2−イル)ペンタ−2−エノエート(実施例5−2)
【0187】
【化43】

【0188】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=5.04:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.10 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.30 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.86 (3H, d, J = 1.2), 2.54 (1H, dd, J = 2.8, 4.8 Hz), 2.52-2.60 (1H, m), 2.74 (1H, dd, J = 4.0, 4.8 Hz), 2.90-2.93 (1H, m), 4.17-4.22 (2H, m), 6.59 (1H, dd, J = 1.4, 9.8 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ13.0, 14.6, 16.0, 35.5, 45.5, 55.5, 60.6, 129.3, 141.6, 168.3;
IR (neat):νmax 2979, 2932, 2360, 1712, 1652, 1457, 1367, 1295, 1243, 1175, 1099, 896, 749 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C10H16O3Na]+として):207.0992,実測値:207.0984.
【0189】
(R,E)−エチル 4−((R)−オキシラン−2−イル)ヘキサ−2−エノエート(実施例5−3)
【0190】
【化44】

【0191】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=4.60:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.95 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.46-1.65 (4H, m), 2.01 (1H, quin., J = 7.2 Hz), 2.55 (1H, dd, J = 2.8, 4.8), 2.80 (1H, t, J = 4.4 Hz), 2.91 (1 H, ddd, J = 2.8, 3.8, 6.8 Hz), 4.19 (2H, q, J = 7.0 Hz), 5.92 (1H, dd, J = 0.8, 15.6 Hz), 6.83 (1H, dd, J = 8.4, 16.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ11.6, 14.2, 23.9, 46.1, 46.2, 54.0, 60.3, 123.0, 147.8, 166.2;
IR (neat):νmax 2970, 2361, 1719, 1653, 1368, 1237, 1182, 1038, 984, 668, 422, 413 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C10H16O3Na]+として):207.0992,実測値:207.0992.
【0192】
(R,E)−エチル 5−メチル−4−((R)−オキシラン−2−イル)ヘキサ−2−エノエート(実施例5−4)
【0193】
【化45】

【0194】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=6.25:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.96 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.01 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.76-1.82 (1H, m), 1.85-1.94 (1H, m), 2.54 (1H, dd, J = 2.8, 4.8 Hz), 2.83 (1H, dd, J = 4.0, 4.8 Hz), 2.96 (1H, ddd, J = 2.8, 4.0, 6.8 Hz), 4.19 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.90 (1H, dd, J = 0.8, 15.6 Hz), 6.86 (1H, dd, J = 8.8, 15.6 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.2, 20.3, 20.5, 30.6, 46.9, 51.7, 53.1, 60.3, 109.6, 123.8, 146.8;
IR (neat):νmax 2963, 2359, 1720, 1652, 1470, 1369, 1280, 1180, 1040, 984, 806, 567, 443, 422 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C11H18O3Na]+として):221.1148,実測値:221.1148.
【0195】
(R,E)−エチル 4−((R)−オキシラン−2−イル)−5−フェニルペンタ−2−エノエート(実施例5−5)
【0196】
【化46】

【0197】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=9.09:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.28 (3H, d, J = 6.8 Hz), 2.32 (1H, q, J = 2.4 Hz), 2.36-2.44 (1H, m), 2.67 (1H, dd, J = 4.2, 4.6 Hz), 2.84 (1H, dd, J = 4.6, 7.4 Hz), 2.94 (1H, ddd, J = 2.8, 4.0, 6.4 Hz), 4.19 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.89 (1H, dd, J = 1.2, 15.6 Hz), 6.90 (1H, q, J = 8.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.2, 37.6, 41.4, 46.4, 53.6, 60.4, 123.2, 126.6, 128.5, 129.0, 138.3, 147.0, 166.1;
IR (neat):νmax 1720, 1651, 1454, 1368, 1269, 1193, 982, 984, 701, 431, 405 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C15H18O3Na]+として):269.1148,実測値:267.1139;
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK ICカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=25.3分、副エナンチオマーの保持時間=27.1分)により測定した。
【0198】
(R,2E,7Z)−エチル 4−((R)−オキシラン−2−イル)デカ−2,7−ジエノエート(実施例5−6)
【0199】
【化47】

【0200】
ジアステレオマー混合物(anti:syn=4.80:1)として;
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ0.96 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.29 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.50-1.67 (2H, m), 1.98-2.19 (5H, m), 2.55 (1H, dd, J = 2.8, 4.8 Hz), 2.79 (1H, dd, J = 4.0, 5.2 Hz), 2.91 (1H, ddd, J = 2.8, 4.0, 6.8), 4.20 (2H, q, J = 7.2 Hz), 5.22-5.43 (2H, m), 5.92 (1H, dd, J = 1.2, 16.0 Hz), 6.83 (1H, dd, J = 8.4, 16.0 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ14.4, 20.7, 24.6, 31.1, 44.1, 46.4, 53.9, 60.1, 123.3, 127.9, 132.8, 147.7, 166.2;
IR (neat):νmax 2964, 1720, 1653, 1464, 1368, 1268, 1191, 1037, 983, 720, 437, 418 cm-1
HRMS (ESI):[M+Na]+ 計算値([C14H22O3Na]+として):261.1461,実測値:267.1457.
【0201】
【表5】

【0202】
実施例6 (R)−1−クロロ−4,4−ジメトキシブタン−2−オール
【0203】
【化48】

【0204】
クロロアセトアルデヒドの40%水溶液(19.6g,0.1mol)にCHCl(18.8mL)を加え、ディーンスタークを用いて65℃で48時間加熱還流した。約10mLの水を除き、CHClを減圧下留去した。残渣(39.3mg,0.5mmol)にTHF(0.5mL)、アセトアルデヒド(アルデヒド化合物(1),1.5mmol)、触媒としてのピロリジン化合物(0.05mmol、アセトアルデヒドに対して10mol%)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌した後、オルトギ酸トリメチル(492μL,4.5mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(19.0mg,0.1mmol)を加えて、23℃で1時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の添加により、反応を停止した。有機物を、クロロホルムで3回抽出し、無水MgSOで乾燥し、濾過後に減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)での精製により、アセタール化合物(3)(R=水素原子、R=メチル)を得た。収率は52%、エナンチオマー過剰率は78%eeであった。なお、収率は2工程の収率として求めた。エナンチオマー過剰率は、対応する3,5−ジニトロベンゾエートに変換後、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0205】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ1.86-1.90 (2H, m), 3.05 (1H, br-d, J = 3.2 Hz), 3.38 (3H, s), 3.38 (3H, s), 3.53-3.57 (2H, m), 4.00-4.02 (1H, m), 4.61 (1H, t, J = 5.6 Hz);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz):δ36.8, 49.4, 53.5, 53.9, 68.4, 103.3;
IR (neat): νmax 3450, 2963, 2835, 1727, 1648, 1447, 1374, 1281, 1189, 1128, 1057, 962, 902, 822, 745, 683, 409 cm-1;
HRMS (ESI): [M+Na]+ 計算値([C6H13ClO3Na]+として):191.0445, 実測値:191.0441;
[α]D22 = -9.72°(c = 1.80, CHCl3);
エナンチオマー過剰率は、アセタール化生成物の3,5−ジニトロベンゾイル化後に、CHIRALPAK AD−Hカラムを備えたHPLC(PrOH:ヘキサン=1:30)(1 mL/min、主エナンチオマーの保持時間=17.4分、副エナンチオマーの保持時間=12.9分)により測定した。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明の製造方法によれば、光学活性な4−クロロ−3−ヒドロキシブタナール化合物(2)を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(5):
【化1】

(式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、以下の群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基、C−C12鎖式炭化水素基、C−C12脂環式炭化水素基又は水素原子を表し、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基、C−C12アルコキシ基、C−C12フッ化アルキルオキシ基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基又はC−C20アリール基を表す。)で示される基を表し、*は、不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性化合物の存在下、クロロアセトアルデヒドと、式(1):
【化2】

(式中、Rは以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基又は水素原子を表す。)
で示される化合物とを反応させる工程を含む、式(2):
【化3】

(式中、Rは上記で定義した通りであり、**は、不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性化合物の製造方法。
<群G1>:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子、オキソ基及びトリC−C12アルキルシリル基からなる群
<群G2>:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
【請求項2】
反応が、有機溶媒を含む溶媒中で行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
が水素原子ではなく、かつ反応が、アルコール溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒及び非プロトン性極性溶媒から選ばれる有機溶媒と水との混合溶媒中で行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
が水酸基である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
が水酸基であり、かつAr及びArがそれぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
が水酸基であり、かつAr及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により式(2):
【化4】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りである。)
で示される光学活性化合物を得る工程;及び
当該工程で得られる式(2)で表される光学活性化合物をアセタール化する工程;
を含む、式(3):
【化5】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義した通りであり、RはC−C10アルキル基を表すか、或いは、互いに結合して以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C10アルカンジイル基を表す。)
で示される光学活性化合物の製造方法。
<群G1>:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子、オキソ基及びトリC−C12アルキルシリル基からなる群
<群G2>:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により式(2):
【化6】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りである。)
で示される光学活性化合物を得る工程;
当該工程で得られる式(2)で表される光学活性化合物をアセタール化する工程;及び
当該工程で得られる式(3):
【化7】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義した通りであり、RはC−C10アルキル基を表すか、或いは、互いに結合して以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルカンジイル基を表す。)
で示される光学活性化合物と塩基とを反応させる工程;
を含む、式(6):
【化8】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りであり、Rは上記で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物の製造方法。
<群G1>:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子、オキソ基及びトリC−C12アルキルシリル基からなる群
<群G2>:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により式(2):
【化9】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りである。)
で示される光学活性化合物を得る工程;及び
当該工程で得られる式(2)で表される光学活性化合物と、PhP=C(R)CO10(式中、Phはフェニル基を表し、Rは水素原子又はC−Cアルキル基を表し、R10はC−Cアルキル基を表す。)とを反応させる工程;
を含む、式(4):
【化10】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りであり、R及びR10は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により式(2):
【化11】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りである。)
で示される光学活性化合物を得る工程;
当該工程で得られる式(2)で表される光学活性化合物と、PhP=C(R)CO10(式中、Phはフェニル基を表し、Rは水素原子又はC−Cアルキル基を表し、R10はC−Cアルキル基を表す。)とを反応させる工程;及び
当該工程で得られる式(4):
【化12】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りであり、R及びR10は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物と塩基とを反応させる工程;
を含む、式(7):
【化13】

(式中、Rおよび**は請求項1で定義された通りであり、R及びR10は上記で定義した通りである。)
で示される光学活性化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−106997(P2012−106997A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230104(P2011−230104)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】