説明

光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物の製造方法

【課題】取扱いに注意を要するトリフルオロメチルジアゾメタンを単離して用いることなく、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】光学活性コバルト錯体の存在下、オレフィン化合物(1)


(式中、R1、R、RおよびRは明細書で定義した通りである。)、2,2,2−トリフルオロエチルアミンまたはその塩および亜硝酸塩を混合する工程を含む、光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)


(式中、R1、R、RおよびRは明細書で定義した通りである。)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物は、医農薬の原料または中間体として有用な化合物であることが知られている(例えば特許文献1参照)。
かかる化合物の製造方法として、蒸留により単離されたトリフルオロメチルジアゾメタンと、オレフィン化合物とを、ジクロロメタン中、光学活性ポルフィリンを配位子とする鉄錯体の存在下で反応させる方法が開示されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−15468号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Synthesis 2006,10,1701−1704
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載される方法では、取扱いに注意を要するトリフルオロメチルジアゾメタンを単離して用いる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる状況下、上記課題を解決し得る製造方法について検討した結果、トリフルオロメチルジアゾメタンを単離して用いることなく、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物を製造する新規な方法を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
[1]光学活性コバルト錯体の存在下、式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、
およびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC2−6アルケニル基、置換基を有していてもよいC6−12アリール基、置換基を有していてもよい5または6員芳香族複素環基(当該芳香族複素環基はベンゼン環または5または6員芳香族複素環と縮合していてもよい)、置換基を有するアミノ基、置換基を有するヒドロキシ基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C1−6アルコキシ−スルホニル基、ニトロ基またはシアノ基を表すか、或いは
1とRとが一緒になって、C4−8ポリメチレン基(当該ポリメチレン基中の−CH−は−O−または−NR−(式中、Rは、C1−6アルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基またはC7−14アラルキル−オキシカルボニル基を表す)に置き換わっていてもよい)を表し;
およびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC2−6アルケニル基、置換基を有していてもよいC6−12アリール基、置換基を有していてもよい5または6員芳香族複素環基(当該芳香族複素環基はベンゼン環または5または6員芳香族複素環と縮合していてもよい)、置換基を有するアミノ基、置換基を有するヒドロキシ基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C1−6アルコキシ−スルホニル基、ニトロ基またはシアノ基を表す。
但し、RとRとは互いに異なる基を表し、RとRとが同一の基を表す場合は、RとRとは互いに異なる基を表す。)
で示されるオレフィン化合物(以下、オレフィン化合物(1)ともいう)、2,2,2−トリフルオロエチルアミンまたはその塩および亜硝酸塩を混合する工程を含む、光学活性な式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1、R、RおよびRは上記で定義した通りである。)
で示されるトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(以下、光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)ともいう)の製造方法;
[2]混合が、水中で行われる、上記[1]記載の製造方法;
[3]光学活性コバルト錯体が、光学活性な式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12アルキル基または置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基を表し、
、X’、X、X’、XおよびX’はそれぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、但し、X、X’、X、X’、XおよびX’のうち少なくとも1つはハロゲン原子であり、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基を表すか、或いはRとR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す。)
で示される化合物(以下、光学活性なコバルト錯体(3)ともいう)である、上記[1]記載の製造方法;
[4]光学活性な式(3)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12アルキル基または置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基を表し、
、X’、X、X’、XおよびX’はそれぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、但し、X、X’、X、X’、XおよびX’のうち少なくとも1つはハロゲン原子であり、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基を表すか、或いはRとR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す。)
で示されるコバルト錯体;
[5]RおよびR’が、共にイソブチル基である、上記[4]記載の光学活性コバルト錯体;
[6]X、X’、XおよびX’が、いずれも塩素原子である、上記[4]または[5]記載の光学活性コバルト錯体;
[7]XおよびX’が、共に水素原子である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の光学活性コバルト錯体;
[8]RとR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す、上記[4]〜[7]のいずれかに記載の光学活性コバルト錯体;
[9]式(4)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、
は、置換基を有していてもよいC1−12アルキル基または置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基を表し、
、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、
但し、X、XおよびXのうち少なくとも1つはハロゲン原子である。)
で示される化合物(以下、化合物(4)ともいう)と、光学活性な式(5)
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、RおよびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基を表すか、或いはRおよびR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す。)
で示されるジアミン化合物(以下、光学活性なジアミン化合物(5)ともいう)と、酢酸コバルトとを反応させる工程を含む、光学活性な式(3’)
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、R、X、X、X、RおよびR’は上記で定義した通りである。)
で示されるコバルト錯体(以下、光学活性なコバルト錯体(3’)ともいう)の製造方法;
を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法によれば、取扱いに注意を要するトリフルオロメチルジアゾメタンを単離して用いることなく、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本明細書中、「C1−6アルキル(基)」は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「C2−6アルケニル(基)」は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。
【0026】
本明細書中、「C6−12アリール(基)」としては、例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられ、中でも、フェニルが好ましい。
【0027】
本明細書中、「5または6員芳香族複素環基」は、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する5または6員芳香族複素環基であり、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル等が挙げられる。
上記「5または6員芳香族複素環基」は、ベンゼン環または5または6員芳香族複素環と縮合してもよい。当該「5または6員芳香族複素環」は、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する5または6員芳香族複素環であり、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。上記縮合基の具体例としては、例えば、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、チエノピリジル、ピラゾロピリジル等が挙げられる。
【0028】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
本明細書中、「C1−6アルコキシ(基)」は、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0030】
本明細書中、「C1−6ハロアルキル基」は、上記「ハロゲン原子」で置換された上記「C1−6アルキル基」であり、例えば、フルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3−フルオロプロピル、3−クロロプロピル、3−ブロモプロピル、4−フルオロブチル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル、5−フルオロペンチル、5−クロロペンチル、6−ブロモペンチル、6−フルオロヘキシル、6−クロロヘキシル、6−ブロモヘキシル等が挙げられる。
【0031】
本明細書中、「C1−6ハロアルコキシ基」は、上記「ハロゲン原子」で置換された上記「C1−6アルコキシ基」であり、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2−クロロエトキシ、2−ブロモエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、3−フルオロプロポキシ、3−クロロプロポキシ、3−ブロモプロポキシ、4−フルオロブトキシ、4−クロロブトキシ、4−ブロモブトキシ、5−フルオロペンチルオキシ、5−クロロペンチルオキシ、4−ブロモペンチルオキシ、6−フルオロヘキシルオキシ、6−クロロヘキシルオキシ、6−ブロモヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0032】
本明細書中、「C7−14アラルキル(基)」は、上記「C6−12アリール(基)」で置換された上記「C1−6アルキル(基)」のうち炭素数が7〜14個のものであり、例えば、ベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、ナフチルメチル等が挙げられる。
【0033】
本明細書中、「C1−12炭化水素基」としては、「C1−12アルキル基」、「C2−12アルケニル基」、「C2−12アルキニル基」、「C3−12シクロアルキル基」、「C3−12シクロアルケニル基」、「C6−12アリール基」、「C7−12アラルキル基」が挙げられる。
【0034】
本明細書中、「C1−12アルキル基」は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。
【0035】
本明細書中、「C2−12アルケニル基」は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、1−ウンデセニル、1−ドデセニル等が挙げられる。
【0036】
本明細書中、「C2−12アルキニル基」は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1,1−ジメチルプロパ−2−イン−1−イル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル、1−ウンデシニル、1−ドデシニル等が挙げられる。
【0037】
本明細書中、「C3−12シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等が挙げられる。
【0038】
本明細書中、「C3−12シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル(例、2−シクロプロペン−1−イル)、シクロブテニル(例、2−シクロブテン−1−イル)、シクロペンテニル(例、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル)、シクロヘキセニル(例、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル)、シクロヘプテニル(例、2−シクロヘプテン−1−イル、3−シクロヘプテン−1−イル)、シクロオクテニル(例、2−シクロオクテン−1−イル、3−シクロオクテン−1−イル)、シクロデセニル(例、2−シクロデセン−1−イル、3−シクロデセン−1−イル)等が挙げられる。当該「C3−12シクロアルケニル基」は、二重結合を複数含んでいてもよく、そのような例としては、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル等が挙げられる。
【0039】
本明細書中、「C6−12アリール基」としては、例えば、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、ビフェニリル等が挙げられる。
【0040】
本明細書中、「C7−12アラルキル基」は、上記「C6−12アリール(基)」で置換された上記「C1−6アルキル(基)」のうち炭素数が7〜12個のものであり、例えば、ベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、ナフチルメチル等が挙げられる。
【0041】
以下、式(1)〜(5)の各基について説明する。
〜Rで表される「置換基を有していてもよいC1−6アルキル基」および「置換基を有していてもよいC2−6アルケニル基」の「置換基」、並びにRまたはR’で表される「置換基を有していてもよいC1−12アルキル基」の「置換基」としては、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、置換基が2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0042】
〜Rで表される「置換基を有していてもよいC6−12アリール基」および「置換基を有していてもよい5または6員芳香族複素環基(当該芳香族複素環基は縮合していてもよい)」の「置換基」、並びにRまたはR’で表される「置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基」の「置換基」としては、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、置換基が2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0043】
またはR’で表される「置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基」の「C1−12炭化水素基」が、「C1−12アルキル基」、「C2−12アルケニル基」または「C2−12アルキニル基」である場合、当該「置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基」の「置換基」としては、ハロゲン原子、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、置換基が2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0044】
またはR’で表される「置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基」の「C1−12炭化水素基」が、「C3−12シクロアルキル基」、「C3−12シクロアルケニル基」、「C6−12アリール基」または「C7−12アラルキル基」である場合、当該「置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基」の「置換基」としては、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、置換基が2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0045】
〜Rで表される「置換基を有するアミノ基」の「置換基」としては、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C6−12アリール基、C7−14アラルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C2−6アルケニル−カルボニル基、C2−6アルケニル−オキシカルボニル基、C6−12アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−12アリール−オキシカルボニル基、C7−14アラルキル−オキシカルボニル基、C6−12アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−6アルキルシリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基等が挙げられる。上記の置換基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基、またはニトロ基でそれぞれ置換されていてもよい。
当該置換基の具体例としては、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンズヒドリル、トリチル、フタロイル、アリルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0046】
〜Rで表される「置換基を有するヒドロキシ基」の「置換基」としては、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C6−12アリール基、C7−14アラルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C2−6アルケニル−カルボニル基、C2−6アルケニル−オキシカルボニル基、C6−12アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−12アリール−オキシカルボニル基、C7−14アラルキル−オキシカルボニル基、C6−12アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−6アルキルシリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。上記の置換基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基、またはニトロ基でそれぞれ置換されていてもよい。
当該置換基の具体例としては、メチル、メトキシメチル、エトキシエチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリチル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、2−テトラヒドロピラニル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル等が挙げられる。
【0047】
〜Rで表される「C1−6アルキル−カルボニル基」は、上記「C1−6アルキル基」が結合したカルボニル基であり、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソブタノイル、ピバロイル、ペンタノイル、イソペンタノイル、ヘキサノイル等が挙げられる。
【0048】
〜Rで表される「C1−6アルコキシ−カルボニル基」は、上記「C1−6アルコキシ基」が結合したカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
【0049】
〜Rで表される「C1−6アルコキシ−スルホニル基」は、上記「C1−6アルコキシ基」が結合したスルホニル基であり、例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、プロピルオキシスルホニル、イソプロピルオキシスルホニル、ブチルオキシスルホニル、イソブチルオキシスルホニル、sec−ブチルオキシスルホニル、tert−ブチルオキシスルホニル、ペンチルオキシスルホニル、イソペンチルオキシスルホニル、ネオペンチルオキシスルホニル、ヘキシルオキシスルホニル、イソヘキシルオキシスルホニル等が挙げられる。
【0050】
1とRとが一緒になって表される「C4−8ポリメチレン基」は、例えば、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン等が挙げられる。当該「C4−8ポリメチレン基」中の−CH−は−O−または−NR−(式中、Rは、C1−6アルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基またはC7−14アラルキル−オキシカルボニル基を表す)と置き換わっていてもよく、その具体例としては、
−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−、−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−O−CH−CH−CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−O−CH−CH−CH−、−CH−N(CH)−CH−CH−、−CH−CH−N(CH)−CH−CH−、−CH−N(CH)−CH−CH−、−CH−CH−N(CH)−CH−CH−、−CH−N(Ac)−CH−CH−、−CH−CH−N(Ac)−CH−CH−、−CH−N(Boc)−CH−CH−、−CH−CH−N(Boc)−CH−CH−、−CH−N(Z)−CH−CH−、−CH−CH−N(Z)−CH−CH−等が挙げられる。なお、具体例中のAcはアセチル、Bocはtert−ブトキシカルボニル、Zはベンジルオキシカルボニルを意味する。
【0051】
は、好ましくは、置換基を有していてもよいC6−12アリール基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基およびニトロ基から選ばれる置換基を有していてもよいC6−12アリール基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、C1−6ハロアルコキシ基およびニトロ基から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基である。
は、好ましくは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−6アルキル基であり、より好ましくは、水素原子またはC1−6アルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
は、好ましくは水素原子である。
は、好ましくは水素原子である。
【0052】
およびR’は、好ましくは、共に置換基を有していてもよいC1−12アルキル基であり、より好ましくは、共にC1−12アルキル基であり、さらに好ましくはC1−6アルキル基、特に好ましくはイソブチル基である。
およびX’は、好ましくは共に水素原子である。
、X’、XおよびX’は、好ましくはいずれもハロゲン原子であり、より好ましくは、いずれも塩素原子である。
およびR’は、好ましくは、一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表し、より好ましくは、一緒になって−(CH−を表す。
【0053】
本発明では、光学活性コバルト錯体の存在下、オレフィン化合物(1)、2,2,2−トリフルオロエチルアミンまたはその塩および亜硝酸塩を混合する工程を含むことにより、光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)を製造する。
【0054】
2,2,2−トリフルオロエチルアミンまたはその塩の使用量は、オレフィン化合物(1)1モルに対して、好ましくは1〜5モル、より好ましくは2.5〜3.5モルである。2,2,2−トリフルオロエチルアミンは、操作性の点で、好ましくは塩の形態、より好ましくは塩酸塩の形態で使用される。
【0055】
亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等が挙げられるが、経済性の観点から、亜硝酸ナトリウムが好ましい。亜硝酸塩の使用量は、オレフィン化合物(1)1モルに対して、好ましくは1〜5モル、より好ましくは3〜4モルである。
【0056】
光学活性コバルト錯体は、反応性およびエナンチオ選択性の観点から、光学活性なコバルト錯体(3)
【0057】
【化8】

【0058】
(式中の各記号は前記と同義である。)
が好ましい。光学活性なコバルト錯体(3)とは、光学活性コバルト錯体(3SS)
【0059】
【化9】

【0060】
(式中の各記号は前記と同義である。)
または光学活性コバルト錯体(3RR)
【0061】
【化10】

【0062】
(式中の各記号は前記と同義である。)
を意味する。
【0063】
光学活性なコバルト錯体(3)の好適な具体例としては、
【0064】
【化11】

【0065】
および
【0066】
【化12】

【0067】
が挙げられ、反応性およびエナンチオ選択性の観点から、
【0068】
【化13】

【0069】
が特に好ましい。
【0070】
光学活性コバルト錯体の使用量は、オレフィン化合物(1)に対して、好ましくは0.1〜20モル%、より好ましくは5〜15モル%である。
【0071】
上記混合は、水とメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶媒との混合溶媒中で行われることが好ましく、グリーンケミストリーの点で、水中で行うことが特に好ましい。
【0072】
上記混合は、反応促進の観点から、酸および塩基の存在下で行うことが好ましい。当該酸としては、硫酸、酢酸、塩酸等が挙げられ、中でも硫酸が好ましい。当該塩基としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、中でも酢酸ナトリウムが好ましい。これらは緩衝作用を発現するため、その使用量は反応系によって適宜選択することができる。酸の使用量は、オレフィン化合物(1)1モルに対して、例えば0.01〜1モル、より好ましくは0.05〜0.3モルであり、塩基の使用量は、オレフィン化合物(1)1モルに対して、例えば0.02〜1モル、より好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0073】
また、光学活性コバルト錯体として、光学活性なコバルト錯体(3)を使用する場合、配位子を添加することが好ましい。当該配位子としては、AsPh、N−メチルイミダゾール(NMI)等が挙げられ、AsPhが好ましい。
配位子の使用量は、光学活性なコバルト錯体(3)1モルに対して、例えば0.5〜5モル、好ましくは1〜4モルである。
【0074】
上記混合は、オレフィン化合物(1)の種類にもよるが、エネルギー効率の観点から、−30℃〜0℃の範囲内で行うことが好ましく、−20℃〜−10℃の範囲内で行うことがより好ましい。
上記混合では、溶媒として水を用いる場合、水に塩化ナトリウムを溶解させて使用することが好ましい。塩化ナトリウムは、例えば5〜25%水溶液となるように使用される。
【0075】
混合時間は、オレフィン化合物(1)の種類および混合温度にもよるが、例えば1〜30時間であり、好ましくは10〜20時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0076】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理により行うことができる。
【0077】
光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)の絶対配置は、例えば1つの光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)をX線解析による構造決定可能な誘導体に導いた後、その絶対配置を決定し、他の光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)については、当該絶対配置に基づき、類似性および旋光度の相関関係により決定することができる。例えば、
【0078】
【化14】

【0079】
を、4−クロロベンズアミドと反応させてアミド化した後、X線解析によりその絶対配置を決定する。
【0080】
本発明では、例えば、オレフィン化合物(1)が、オレフィン化合物(1a)
【0081】
【化15】

【0082】
(式中、R1aは、置換基を有していてもよいC6−12アリール基を表し、R2aは、水素原子または置換基を有していてもよいC1−6アルキル基を表す。)
であるとき、光学活性なコバルト錯体(3)として、光学活性コバルト錯体(3SS)
【0083】
【化16】

【0084】
(式中の各記号は前記と同義である。)
を用いると、光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)として、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2a−RR)
【0085】
【化17】

【0086】
(式中、R1aおよびR2aは上記で定義した通りである。)
が優先的に得られる。
一方、光学活性なコバルト錯体(3)として、光学活性コバルト錯体(3RR)
【0087】
【化18】

【0088】
(式中の各記号は前記と同義である。)
を用いると、光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2)として、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物(2a−SS)
【0089】
【化19】

【0090】
(式中、R1aおよびR2aは上記で定義した通りである。)
が優先的に得られる。
【0091】
光学活性なコバルト錯体(3)は、化合物(4)
【0092】
【化20】

【0093】
(式中の各記号は前記と同義である。)
と、光学活性なジアミン化合物(5)
【0094】
【化21】

【0095】
(式中の各記号は前記と同義である。)
と、酢酸コバルトとを反応させる工程を含む方法により製造される。
【0096】
ここで、光学活性なジアミン化合物(5)とは、光学活性ジアミン化合物(5SS)
【0097】
【化22】

【0098】
(式中の各記号は前記と同義である。)
または光学活性ジアミン化合物(5RR)
【0099】
【化23】

【0100】
(式中の各記号は前記と同義である。)
を意味する。
【0101】
光学活性なジアミン化合物(5)の使用量は、化合物(4)1モルに対して、例えば0.3〜3モルである。
酢酸コバルトの使用量は、化合物(4)1モルに対して、例えば0.3〜3モルである。
【0102】
上記反応は溶媒中で行われる。溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒が挙げられる。
【0103】
上記反応は、化合物(4)と光学活性なジアミン化合物(5)の混合物に酢酸コバルトを添加する方法;光学活性なジアミン化合物(5)と酢酸コバルトの混合物に化合物(4)を添加する方法等により行われるが、化合物(4)と光学活性なジアミン化合物(5)の混合物に酢酸コバルトを添加する方法により行うことが好ましい。
【0104】
上記反応は、化合物(4)と光学活性なジアミン化合物(5)の種類にもよるが、20℃〜120℃の範囲内で行うことが好ましい。
反応時間は、化合物(4)と光学活性なジアミン化合物(5)の種類および反応温度にもよるが、例えば10分〜24時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0105】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性なコバルト錯体(3)の単離は、ろ過および溶媒洗浄により行うことができる。またその精製は光学活性なコバルト錯体(3)を再結晶処理により行うことができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
全ての反応をアルゴン雰囲気下で行った。
クロマトグラフィー精製として、Brunschwigシリカ32−63、60Åを用い、溶離液としてペンタン/ジエチルエーテルを用い、0.3−0.5bar圧でフラッシュクロマトグラフィーを行った。
TLCは、Merckシリカゲル60 F254 TLCガラスプレート上で行い、UV光およびモリブデン酸アンモニウムセリウム(CAM)により可視化した。
H−NMRスペクトルは、クロロホルム−d中、VARIAN Mercury 300MHz分光計で測定した。7.26ppmでの内部クロロホルムシグナルを標準として、全てのシグナルをppmで示した。データは、(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、m=マルチプレットまたは非分離、br=ブロードシグナル、Hzでのカップリング定数、積分)として示した。
13C−NMRスペクトルは、クロロホルム−d中、Bruker 100MHz分光計を用い、H−デカップリングを行い測定した。77.0ppmでの内部クロロホルムシグナルを標準として、全てのシグナルをppmで示した。
赤外線スペクトルは、Perkin−Elmer spectrum RX−I FT−IR分光計を用いてneatで測定した。データは、最大吸収(n、cm−1)として示した。
質量分析測定は、電子衝突イオン化(EI)用のVG−TRIBRID、およびMALDI用のIon spec Ultima 4.7分光計を用いたETHZでのLOCの質量分析サービスにより行った。
元素分析は、Mikroelementaranalytisches Laboratorium der ETHZにより行った。
鏡像体過剰率は、Jasco2080Plus SFCまたはMerck−Hitachi D−7000システム HPLCにより決定した。
旋光度[α]25は、Jasco DID−1000旋光計、10cm、2mLセルを用いて測定した。
絶対配置は、1つの生成物について、その誘導体の絶対配置をX線解析により決定し、他の生成物については、当該絶対配置に基づき、類似性および旋光度の相関関係により決定した。
【0107】
参考例1 2−ヒドロキシ−3−イソブトキシベンズアルデヒド
【0108】
【化24】

【0109】
水素化ナトリウム(0.700g,29.2mmol)を乾燥ジメチルスルホキシド(25mL)に懸濁した。この懸濁液に、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2.00g,14.5mmol)のジメチルスルホキシド溶液を0℃で徐々に加えた。得られた混合物を室温で3時間攪拌し、再び0℃まで冷却し、臭化イソブチル(1.98g,14.5mmol)を徐々に加えた。室温で24時間攪拌した。その後、塩化アンモニウムを徐々に加えて反応混合物をクエンチし、塩化メチレンで3回抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン=1:1)で精製して、目的化合物(1.90g,68%)を黄色油状物として得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 10.96 (s, 1H), 9.88 (s, 1H), 7.25-6.85 (m, 3H), 3.78 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 2.25-2.20 (m, 1H), 1.03 (d, J = 4.5 Hz, 6H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ = 196.4, 152.7, 148.4, 124.3, 121.6, 119.8, 119.5, 75.3, 28.2, 19.2.
HRMS (EI):C11H14O3+(M)+ 計算値 194.0938, 実測値 194.0937.
IR (neat):3352, 1655, 1256, 631.
【0110】
参考例2 2,3−ジクロロ−6−ヒドロキシ−5−イソブトキシベンズアルデヒド
【0111】
【化25】

【0112】
2−ヒドロキシ−3−イソブトキシベンズアルデヒド(1.0g,5.2mmol)を酢酸(20mL)に溶解し、N−クロロコハク酸イミド(1.4g,11mmol)を全て一度に加えた。反応混合物を80℃で終夜攪拌後、室温まで冷却した。その後、水および塩化メチレンを加えて分液し、水層をさらに塩化メチレンで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒留去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(塩化メチレン/ヘキサン)で精製して、目的化合物(1.2g,89%)を黄色固体として得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 12.27 (s, 1H), 10.39 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 3.76 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 2.25-2.20 (m, 1H), 1.03 (d, J = 4.5 Hz, 6H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ = 195.9, 153.8, 147.6, 125.4, 122.9, 120.0, 117.0, 76.1, 28.1, 19.1.
HRMS (EI):C11H12Cl2O3+(M)+ 計算値 262.0158, 実測値 262.0158.
IR (neat):3262, 1626, 1296, 1173, 980, 631.
MP:90℃
【0113】
参考例3 光学活性なコバルト錯体(触媒1)
【0114】
【化26】

【0115】
2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(152mg,1.00mmol)および(S,S)−シクロヘキシルジアミン(1当量)をエタノールに溶解し、8時間攪拌した。その後、アルゴンで15分間パージして反応混合物を脱気した。乾燥酢酸コバルト(1.1当量)を加え、混合物を終夜還流した。生じた沈殿物をろ取し、洗浄液が透明になるまで冷エタノールで洗浄し、減圧下で12時間乾燥して、目的化合物(150mg,68%)を褐色固体として得た。
元素分析:C22H24CoN2O4 計算値:C 60.14, H 5.51, N 6.38 実測値:C 59.36, H 5.75, N 6.30.
HRMS (MALDI):C22H24CoN2O4Na+(M+Na)+ 計算値 462.0960, 実測値 462.0968.
IR (neat):2907, 2359, 1597, 1538, 1318, 982, 720.
MP:>300℃
【0116】
参考例4 光学活性なコバルト錯体(触媒2)
【0117】
【化27】

【0118】
2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(166mg,1.0mmol)を用いたこと以外は、参考例3と同様の方法により、目的化合物(165mg,71%)を褐色固体として得た。
元素分析:C24H28CoN2O4 計算値:C 61.67, H 6.04, N 5.99, 実測値:C 61.47, H 6.17, N 5.98.
HRMS (MALDI):C24H28CoN2O4Na+(M+Na)+ 計算値 490.1273, 実測値 490.1273.
IR (neat):2907, 2348, 1594, 1537, 1318, 1120, 982, 721.
MP:>300℃
【0119】
参考例5 光学活性なコバルト錯体(触媒3)
【0120】
【化28】

【0121】
2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−3−イソブトキシベンズアルデヒド(194mg,1.00mmol)を用いたこと以外は、参考例3と同様の方法により、目的化合物(146mg,56%)を褐色固体として得た。
元素分析:C28H36CoN2O4 計算値:C 64.24, H 6.93, N 5.35, 実測値:C 63.65, H 7.03, N 5.35.
HRMS (MALDI):C28H36CoN2O4Na+(M+Na)+ 計算値 546.1899, 実測値 546.1905.
IR (neat):2907, 2284, 1601, 1316, 1153, 993, 721.
MP:>300℃
【0122】
参考例6 光学活性なコバルト錯体(触媒4)
【0123】
【化29】

【0124】
工程1
水素化ナトリウム(0.700g,29.2mmol)を乾燥ジメチルスルホキシド(25mL)に懸濁した。この懸濁液に、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド(2.00g,14.5mmol)のジメチルスルホキシド溶液を0℃で徐々に加えた。得られた混合物を室温で3時間攪拌し、再び0℃まで冷却し、2−ブロモプロパン(1.78g,14.5mmol)を徐々に加えた。室温で24時間、攪拌し続けた。その後、塩化アンモニウムを徐々に加えて反応混合物をクエンチし、クロロホルムで3回で抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/CHCl=1:1)により、2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシベンズアルデヒド(1.75g,69%)を黄色油状物として得た。
工程2
2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドの代わりに2−ヒドロキシ−3−イソプロポキシベンズアルデヒド(180mg,1.00mmol)を用いたこと以外は、参考例3と同様の方法により、目的化合物(180mg,72%)を褐色固体として得た。
元素分析:C26H32CoN2O4 計算値:C 63.03, H 6.51, N 5.65, 実測値:C 63.13, H 6.68, N 5.70.
HRMS (MALDI):C26H32CoN2O4+(M)+ 計算値 495.1689, 実測値 495.1683.
IR (neat):2911, 2208 1609, 1154, 993, 825.
MP:>300℃
【0125】
参考例7 光学活性なコバルト錯体(触媒5)
【0126】
【化30】

【0127】
2−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドの代わりに2,3−クロロ−6−ヒドロキシ−5−イソブトキシベンズアルデヒド(753mg,2.86mmol)を用いたこと以外は、参考例3と同様の方法により、目的化合物(757mg,80%)を褐色固体として得た。
元素分析:C28H32CoCl4N2O4 計算値:C 64.24, H 6.93, N 5.35, 実測値:C 63.65, H 7.03, N 5.35.
HRMS (MALDI):C28H32CoN2O4Cl4Na+(M+Na)+ 計算値 682.0340, 実測値 682.0340.
IR (neat):2909, 2205, 1609, 1317, 1152, 995, 823.
MP:>300℃
【0128】
参考例8 光学活性なコバルト錯体(触媒6)
【0129】
【化31】

【0130】
参考例7で得られた触媒5を、塩化メチレン/メタノールで再結晶することにより、目的化合物を琥珀色結晶として得た。
【0131】
実施例1
【0132】
【化32】

【0133】
光学活性なコバルト錯体、表1に示す添加物およびトリフルオロエチルアミン塩酸塩(90mg,0.66mmol,3当量)を脱気水(1.8mL)に溶解した。その後、p−メトキシスチレン(30mg,0.22mmol,1当量)を加え、反応混合物を表1に示す温度で5分間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウムを表1に示す手法により添加した。混合物をヘキサンで3回抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、SFC分析にそのまま付し、eeおよび変換率を決定した。結果を表1に示す。なお、実施例1g−1jでは、脱気水の代わりに脱気した20%塩化ナトリウム水溶液を使用した。
【0134】
【表1】

【0135】
実施例2
【0136】
【化33】

【0137】
触媒5(14mg,22μmol)、AsPh(13mg,44μmol)、酢酸ナトリウム(3.6mg,44μmol)およびトリフルオロエチルアミン塩酸塩(90mg,0.66mmol)を、脱気した20%塩化ナトリウム水溶液(1.8mL)に溶解した。その後、硫酸(1.2μL,22μmol)を加えた。続いて、表2に示すアルケン(0.22mmol)を加え、混合物を−15℃で5分間攪拌し、亜硝酸ナトリウム(54mg,0.70mmol)を全て一度に加えた。14時間後、水を加え、水層を塩化メチレンで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。粗生成物のジアステレオ比(dr)をF19−NMRにより決定した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペンタン/ジエチルエーテル)で精製して、対応する光学活性なトリフルオロメチルシクロプロパン化合物を得た。SFCまたはHPLC分析によりeeを決定した。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
実施例2a (−)−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0140】
【化34】

【0141】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.33-7.20 (m, 3H), 7.15-7.10 (m, 2H), 2.38 (dt, J = 9.6, 5.4 Hz, 1H), 1.88- 1.72 (m, 1H), 1.38 (dt, J = 9.6, 5.7 Hz, 1H), 1.22-1.12 (m, 1H).
αD25:-42 (c=1, CHCl3).
【0142】
実施例2b (−)−1−クロロ−4−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0143】
【化35】

【0144】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.26 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 2.37 (dt, J = 9.6, 5.4 Hz, 1H), 1.82-1.70 (m, 1H), 1.39 (dt, J = 9.6, 5.7 Hz, 1H), 1.18-1.10 (m, 1H).
αD25:-32 (c=1, CHCl3)
【0145】
実施例2c (−)−1−メチル−4−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0146】
【化36】

【0147】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.12 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 2.38-2.28 (m, 4H), 1.82-1.70 (m, 1H), 1.35 (dt, J = 9.3, 5.4 Hz, 1H), 1.20-1.10 (m, 1H).
αD25:-43 (c=1, CHCl3)
【0148】
実施例2d (−)−1−(トリフルオロメチル)−4−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0149】
【化37】

【0150】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.55 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 2.41 (dt, J = 9.6, 5.4 Hz, 1H), 1.92-1.78 (m, 1H), 1.44 (dt, J = 9.9, 5.4 Hz, 1H), 1.26-1.18 (m, 1H).
αD25:-10 (c=0.75, CHCl3)
【0151】
実施例2e (−)−1−メトキシ−4−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0152】
【化38】

【0153】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.06 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 3.79 (s, 3H), 2.32 (dt, J = 9.3, 5.1 Hz, 1H), 1.80-1.65 (m, 1H), 1.33 (dt, J = 9.6, 5.4 Hz, 1H), 1.15-1.05 (m, 1H).
αD25:-35 (c=1, CHCl3)
【0154】
実施例2f (−)−1−ブロモ−4−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0155】
【化39】

【0156】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.32 (dt, J = 9.3, 5.4 Hz, 1H), 1.82-1.75 (m, 1H), 1.40 (dt, J = 9.3, 5.4 Hz, 1H), 1.20-1.10 (m, 1H).
αD25:-28 (c=1, CHCl3)
【0157】
実施例2g (−)−1−メチル−3−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0158】
【化40】

【0159】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.23-6.90 (m, 4H), 2.35-2.30 (m, 4H), 1.85-1.75 (m, 1H), 1.36 (dtd, J = 9.5, 5.6, 0.5 Hz, 1H), 1.20-1.13 (m, 1H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ = 140.0, 139.3, 128.5, 127.5, 127.3, 126.0 (q, J = 269 Hz), 123.4, 23.0 (q, J = 36 Hz), 21.4, 19.5 (q, J = 2 Hz), 10.8 (q, J = 2 Hz).
19F-NMR (282MHz, CDCl3):δ = -66.7 (d, J = 6.7 Hz).
HRMS (EI):C11H11F3+(M)+ 計算値 200.0808, 実測値 200.0811.
IR (neat):3053, 1467, 1335, 1267, 1131, 697.
αD25:-28 (c=1, CHCl3)
【0160】
実施例2h (−)−2,4−ジメチル−1−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0161】
【化41】

【0162】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.03-6.88 (m, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.35-2.25 (m, 4H), 1.75-1.60 (m, 1H), 1.33 (dtd, J = 9.5, 5.4, 0.5 Hz, 1H), 1.20-1.12 (m, 1H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ = 137.9, 136.7, 133.7, 130.9, 126.5, 126.3 (q, J = 269 Hz), 126.3, 21.8 (q, J = 36 Hz), 20.9, 19.3, 17.8 (q, J = 2 Hz), 9.1 (q, J = 2 Hz).
19F-NMR (282MHz, CDCl3):δ = -66.3 (d, J = 6.8 Hz).
HRMS (EI):C12H13F3+(M)+ 計算値 214.0964, 実測値 214.0967.
IR (neat):3053, 2564, 1465, 1417, 1265, 1131, 815, 697.
αD25:-13 (c=1, CHCl3).
【0163】
実施例2i (−)−1−ニトロ−3−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0164】
【化42】

【0165】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 8.15-8.05 (m, 1H), 7.97-7.94 (m, 1H), 7.50-7.45 (m, 2H), 2.51-2.41 (m, 1H), 1.97-1.82 (m, 1H), 1.50 (dt, J = 9.5, 5.8 Hz, 1H), 1.32-1.23 (m, 1H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ = 148.5, 141.2, 133.0, 129.6, 125.4 (q, J = 269 Hz), 121.9, 121.3, 23.5 (q, J = 37 Hz), 19.3 (q, J = 2 Hz), 11.2 (q, J = 2 Hz).
19F-NMR (282MHz, CDCl3):δ = -66.9 (d, J = 6.4 Hz).
HRMS (EI):C10H8NO2F3+(M)+ 計算値 231.0502, 実測値 231.0505.
IR (neat):3072, 1529, 1421, 1350, 1267, 1133, 735, 683.
αD25:-23 (c=0.9, CHCl3)
【0166】
実施例2j (−)−1−クロロ−3−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0167】
【化43】

【0168】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.25-7.01 (m, 4H), 2.38-2.32 (m, 1H), 1.88-1.72 (m, 1H), 1.40 (dtd, J = 9.4, 5.7,0.5 Hz, 1H), 1.22-1.14 (m, 1H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ =141.1, 134.5, 129.8, 127.0, 126.7, 124.8, 123.0 (q, J = 270 Hz), 23.0 (q, J = 37 Hz), 19.3 (q, J = 2 Hz), 10.8 (q, J = 2 Hz).
19F-NMR (282MHz, CDCl3):δ = -66.7 (d, J = 6.6 Hz).
HRMS (EI):C10H8ClF3+(M)+ 計算値 220.0262, 実測値 220.0262.
IR (neat):3065, 1572, 1467, 1266, 1132, 999, 735.
αD25:-12 (c=0.65, CHCl3)
【0169】
実施例2k (−)−1−メチル−2−(1R,2R)−(2−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)ベンゼン
【0170】
【化44】

【0171】
1H-NMR (300MHz, CDCl3):δ = 7.20-7.01 (m, 4H), 2.43 (s, 3H), 2.40-2.33 (m, 1H), 1.78-1.65 (m, 1H), 1.36 (dtd, J = 9.4, 5.4, 0.5 Hz, 1H), 1.25-1.15 (m, 1H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ =138.1, 136.7, 130.0, 127.0, 126.2 (q, J = 270 Hz), 126.2, 126.0, 21.8 (q, J = 36 Hz), 19.4, 18.1 (q, J = 2 Hz), 9.1 (q, J = 2 Hz).
19F-NMR (282MHz, CDCl3):δ = -66.3 (d, J = 6.8 Hz).
HRMS (EI):C11H11F3+(M)+ 計算値 200.0808, 実測値 200.0806.
IR (neat):3065, 1418, 1365, 1266, 1216, 1132, 995, 756.
αD25:-19 (c=0.9, CHCl3)
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の製造方法によれば、取扱いに注意を要するトリフルオロメチルジアゾメタンを単離して用いることなく、光学活性トリフルオロメチルシクロプロパン化合物を製造できる。従って、本発明の製造方法は、医農薬の製造に大きく貢献する製造方法となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性コバルト錯体の存在下、式(1)
【化1】


(式中、
およびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC2−6アルケニル基、置換基を有していてもよいC6−12アリール基、置換基を有していてもよい5または6員芳香族複素環基(当該芳香族複素環基はベンゼン環または5または6員芳香族複素環と縮合していてもよい)、置換基を有するアミノ基、置換基を有するヒドロキシ基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C1−6アルコキシ−スルホニル基、ニトロ基またはシアノ基を表すか、或いは
1とRとが一緒になって、C4−8ポリメチレン基(当該ポリメチレン基中の−CH−は−O−または−NR−(式中、Rは、C1−6アルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基またはC7−14アラルキル−オキシカルボニル基を表す)に置き換わっていてもよい)を表し;
およびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC2−6アルケニル基、置換基を有していてもよいC6−12アリール基、置換基を有していてもよい5または6員芳香族複素環基(当該芳香族複素環基はベンゼン環または5または6員芳香族複素環と縮合していてもよい)、置換基を有するアミノ基、置換基を有するヒドロキシ基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C1−6アルコキシ−スルホニル基、ニトロ基またはシアノ基を表す。
但し、RとRとは互いに異なる基を表し、RとRとが同一の基を表す場合は、RとRとは互いに異なる基を表す。)
で示されるオレフィン化合物、2,2,2−トリフルオロエチルアミンまたはその塩および亜硝酸塩を混合する工程を含む、光学活性な式(2)
【化2】


(式中、R1、R、RおよびRは上記で定義した通りである。)
で示されるトリフルオロメチルシクロプロパン化合物の製造方法。
【請求項2】
混合が、水中で行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
光学活性コバルト錯体が、光学活性な式(3)
【化3】


(式中、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12アルキル基または置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基を表し、
、X’、X、X’、XおよびX’はそれぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、但し、X、X’、X、X’、XおよびX’のうち少なくとも1つはハロゲン原子であり、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基を表すか、或いはRとR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す。)
で示される化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
光学活性な式(3)
【化4】


(式中、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12アルキル基または置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基を表し、
、X’、X、X’、XおよびX’はそれぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、但し、X、X’、X、X’、XおよびX’のうち少なくとも1つはハロゲン原子であり、
およびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基を表すか、或いはRとR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す。)
で示されるコバルト錯体。
【請求項5】
およびR’が、共にイソブチル基である、請求項4記載の光学活性コバルト錯体。
【請求項6】
、X’、XおよびX’が、いずれも塩素原子である、請求項4または5記載の光学活性コバルト錯体。
【請求項7】
およびX’が、共に水素原子である、請求項4〜6のいずれかに記載の光学活性コバルト錯体。
【請求項8】
とR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す、請求項4〜7のいずれかに記載の光学活性コバルト錯体。
【請求項9】
式(4)
【化5】


(式中、
は、置換基を有していてもよいC1−12アルキル基または置換基を有していてもよいC3−12シクロアルキル基を表し、
、XおよびXはそれぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子を表し、
但し、X、XおよびXのうち少なくとも1つはハロゲン原子である。)
で示される化合物と、光学活性な式(5)
【化6】


(式中、RおよびR’はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−12炭化水素基を表すか、或いはRおよびR’とが一緒になって−(CH)n−(式中、nは3〜6の整数を表す。)を表す。)
で示されるジアミン化合物と、酢酸コバルトとを反応させる工程を含む、光学活性な式(3’)
【化7】


(式中、R、X、X、X、RおよびR’は上記で定義した通りである。)
で示されるコバルト錯体の製造方法。

【公開番号】特開2012−36161(P2012−36161A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180644(P2010−180644)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(502079801)
【氏名又は名称原語表記】ERICK M. CARREIRA
【住所又は居所原語表記】LABORATORY OF ORGANIC CHEMISTRY ETH HOENGGERBERG, ZUERICH, SWITZERLAND
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】