説明

光学用感圧粘着剤組成物

【課題】プラスチック材料だけでなく、無機材料に対する粘着力、耐熱性および耐湿熱性などの耐久性、並びにせん断変形率に優れており、また別途の溶媒を含有しないので、厚膜型粘着剤フィルムの製造が可能な光学用感圧粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】単官能ウレタンアクリレート系オリゴマー40〜80重量%、イソボルニル(メタ)アクリレート第1単官能希釈モノマー1〜55重量%、ガラス転移温度(Tg)が1℃以上であり、エチレン不飽和基を持つ第2単官能希釈モノマー1〜55重量%、およびフリーラジカル光開始剤0.1〜5重量%を含有する光学用感圧粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料だけでなく、無機材料に対する粘着力、耐熱性および耐湿熱性などの耐久性、並びにせん断変形率に優れた光学用感圧粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、急速に発達したディスプレイ産業においては、タッチパネルまたはタッチスクリーンを搭載することや、高輝度および高透過性を得るために光学的に透明な感圧粘着剤を使用することが頻繁に行われている。
【0003】
タッチパネル、タッチスクリーンとは、ペンや指などのような所定の入力手段によって発生された電位差の変化を認識して位置座標を探す装置である。具体的に、上部基板のある一地点を加圧すると、上記上部基板の下部に透明導電フィルムで形成された上部電極と下部基板に透明導電フィルムで形成された下部電極が相互接触することにより電位差を発生させ、発生された電位差の変化を認識することである。
最近、上記タッチパネルまたはタッチスクリーンは、ディスプレイ装置と結合して情報を入力する装置として用いられている。
【0004】
このようなタッチスクリーンまたはタッチパネルの透明導電性フィルムを取り付けるために使用される感圧粘着剤には、各種基材に対する粘着性とともに高温、高湿条件などのような苛酷条件に露出された場合にもカール(curl)や気泡などの発生が抑制できる耐久性が求められる。
【0005】
一般的に、ディスプレイの視認性を確保するためにアクリル系またはウレタンアクリル系の感圧粘着剤が使用される。これら感圧粘着剤は別途の厚膜化工程(厚み:50μm〜1000mm)が要求され、苛酷条件で粘着力など粘着層として物性および耐熱性などの耐久性が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウレタンアクリレート系オリゴマーを使用して、プラスチック材料だけでなく、無機材料に対する粘着力、耐熱性および耐湿熱性などの耐久性、並びにせん断変形率に優れた光学用感圧粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーに、単官能希釈モノマーとしてイソボルニル(メタ)アクリレートと特定範囲のガラス転移温度(Tg)および特定の構造を持つ化合物を一定範囲で含有させると、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどのプラスチック材料だけでなく、ガラス(Glass)などの無機材料に対する粘着力、耐久性およびせん断変形率に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
よって、本発明は、単官能ウレタンアクリレート系オリゴマー40〜80重量%と、イソボルニル(メタ)アクリレート第1単官能希釈モノマー1〜55重量%と、ガラス転移温度(Tg)が1℃以上であり、エチレン不飽和基を持つ第2単官能希釈モノマー1〜55重量%、およびフリーラジカル光開始剤0.1〜5重量%を含有する光学用感圧粘着剤組成物を提供する。
【0009】
上記単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、エステル主鎖、エーテル主鎖またはこれらの混合構造の主鎖を含むことができる。
【0010】
上記第2単官能希釈モノマーは、ガラス転移温度(Tg)が1〜150℃であることができる。
【0011】
また、本発明は、上記粘着剤組成物が硬化された光学用感圧粘着剤を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、透明基材フィルムと、上記透明基材フィルムの片面に形成された上記粘着剤を含む粘着フィルムを提供する。
【0013】
上記粘着剤は、厚さ25〜1000μmを有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、プラスチック材料だけでなく、無機材料に対する粘着力に優れるとともに、耐熱性および耐湿熱性などの耐久性およびせん断変形率に優れたメリットがある。
また、本発明の粘着剤組成物は、別途の溶媒を含有しないので、厚膜型粘着フィルムの製造が可能である。
また、本発明の粘着剤組成物は、せん断変形率に優れているので、タッチスクリーン、タッチパネルなどに有用に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、プラスチック材料だけでなく、無機材料に対する粘着力、耐熱性および耐湿熱性などの耐久性、並びにせん断変形率に優れた光学用感圧粘着剤組成物に関する。
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の光学用感圧粘着剤組成物は、単官能ウレタンアクリレート系オリゴマー、イソボルニル(メタ)アクリレート第1単官能希釈モノマー、ガラス転移温度(Tg)が1℃以上であり、エチレン不飽和基を持つ第2単官能希釈モノマー、およびフリーラジカル光開始剤を含有する。
【0017】
単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、基本的に粘着剤の物性と柔軟性を付け加えて粘弾性および保存弾性率を維持する役目をする。このとき、上記ウレタンアクリレート系オリゴマーが多官能である場合は、表面滑沢性が落ち、かつ凝集力が高過ぎて粘着物性の発現が容易ではないデメリットがある。
【0018】
上記単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリオールの分子構造に起因する主鎖部分と、イソシアネートとポリオールの反応で生成されるウレタン結合基、および水酸基を含むアクリレートモノマーを結合させて末端にアクリロイル基の反応性基を生成させて製造することが一般的である。
【0019】
上記主鎖は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレートおよびポリカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも1種の分子構造を持つポリオールから由来することができる。価格および粘度調節の容易性面から、好ましくはポリエステル、ポリエーテルまたはこれらの混合構造を持つポリオールから由来したものが良い。
【0020】
オリゴマーは、通常、重量平均分子量(Mw)が1,000〜40,000、好ましくは1,000〜35,000の低分子量の重合体化合物を意味する。
【0021】
本発明の単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリオールとジイソシアネート化合物を重合する公知の方法で製造することができる。ポリオールは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはテトラヒドロフランなどのようなオキシランなどの環状エーテル単量体を用いると、エーテル主鎖を持つオリゴマーを製造することができる。また、ε−カプロラクトンまたはピバロラクトンのような環状エステルを用いると、エステル主鎖を持つオリゴマーを製造することができる。
【0022】
製造されたポリオールにジイソシアネート化合物を反応させると、ウレタン結合基を持つポリオール構造が得られる。上記ジイソシアネート化合物は1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキセン−1,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,2−ジフェニルプロパン−4,4'−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4'−ジイソシアネート、m−またはp−テトラメチルキシレンジイソシアネート、および1−クロロベンゼン−2,4−ジイソシアネートからなる群から選ばれる脂肪族ジイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
上記ポリオールとジイソシアネートは当量比で反応され、通常、反応の効率性を高めるためにジイソシアネートを過量で含有することが好ましい。
【0023】
また、上記の反応物にアクリロイル基を更に連結するために、水酸基を持つ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させてウレタンアクリレートオリゴマーを製造することができる。上記反応時、適量のアルコール(主にブタノール)を添加すると、一方は2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートからアクリロイル基が形成され、他方はアルコールで終結された単官能ウレタンアクリレートオリゴマーを製造することができる。
【0024】
上記単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ガラス転移温度(Tg)が −60〜50℃、好ましくは−60〜20℃を維持することが良い。
【0025】
このような単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%を含有することができる。含量が40重量%未満であれば、粘着剤組成物の粘度が低いため塗工が難しい問題があり、80重量%を超過する場合は、粘着剤組成物の粘度と光学物性の均衡を調節し難い問題がある。
【0026】
第1単官能希釈モノマーであるイソボルニル(メタ)アクリレートは、イソボルニル基が立体的形状の脂環基であり、ガラス転移温度(Tg)が約96℃以上であるので、ウレタンアクリレートオリゴマーが主成分である粘着剤に使用されると粘着力を向上することができる。特に、ガラス(Glass) などのような無機材料に対する粘着力を向上することができる。さらに、相対的にガラス転移温度(Tg)が低いアクリレートモノマーと比べると、同一オリゴマーとの硬化時、硬化率が高いというメリットがある。
このような第1単官能希釈モノマーは、1〜55重量%、好ましくは5〜40重量%を含有することができる。
【0027】
第2単官能希釈モノマーは粘着剤組成物の粘度を調節して塗工が容易になるようにし、上記第1単官能希釈モノマーとともに使用されてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどのようなプラスチック材料との密着力もしくは粘着力を向上させる役目をする。
【0028】
上記第2単官能希釈モノマーは、ガラス転移温度(Tg)が1℃以上であるものを使用する。ガラス転移温度(Tg)が1℃未満であれば粘着力が低下され、ガラス(Glass)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどに対する粘着力が低下される問題が生じる場合がある。よって、被粘着面との粘着力などを考慮したとき、ガラス転移温度(Tg)は1〜150℃であることが好ましい。
【0029】
また、希釈モノマーは、エチレン不飽和基を持つ単官能性アクリル系単量体を使用することができる。具体的に、エチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アリルメタクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシルチオエチルメタクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、オキタデシルメタクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、およびアクリロイルモルホリンからなる群から選ばれた少なくとも1種を使用することができる。
【0030】
好ましくは、ガラス転移温度(Tg)を考慮すると、アクリロイルモルホリン、アクリル酸、t−ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ラウリル(C12)アクリレートおよびシクロヘキシルアクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種を使用することが良い。
【0031】
このような第2単官能希釈モノマーは、1〜55重量%、好ましくは5〜40重量%を含有することができる。含量が1重量%未満であれば、プラスチック材料との粘着力上昇を期待し難く、55重量%を超過する場合は、硬化収縮が酷くなったり、製造された粘着剤が固くなることがある。
【0032】
また、本発明は、目的とする効果を脱しない範囲内で2官能以上の希釈モノマーをさらに含むことができる。2官能以上の希釈モノマーは硬化率を制御する役目をするものであって、本発明の目的とする効果および制御範囲の硬化率を考慮して適量で使用することが好ましい。
【0033】
具体的に、2官能以上の希釈モノマーとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロフェンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロフェンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、アダマンタンジアクリレートなどの2官能性単量体と、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能性単量体と、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能性単量体と、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能性単量体と、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能性単量体などを使用することができる。
【0034】
このような2官能以上の希釈モノマーは、全体組成物100重量%のうち、5重量%以内で含有することが好ましい。
【0035】
フリーラジカル光開始剤は、粘着剤の内部および表面硬化を充分に進行させる役目をするものであって、当分野に公知のものであれば、その種類は特に限定されない。
【0036】
フリーラジカル光開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−クロロアセトフェノン、4,4−ジメトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−ヒドロキシシクロフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタル、ジフェニルケトンベンジルジメチルケタル、アセトフェノンジメチルケタル、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、フルオレン、トリフェニルアミン、カルバゾールなどが挙げられる。また、市販されている製品としては、商品名Darocur 1173、Igacure184、Igacure 907(BASF社(旧Ciba社)製)なども使用することができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記フリーラジカル光開始剤は光源の放射特性、強度、各成分の含量などを考慮して適切な範囲で使用することができ、粘着剤組成物の総含量(100重量%)に対して0.1〜5重量%を含有することが好ましい。
【0038】
本発明の粘着剤組成物は、硬化して粘着剤を形成することができる。また、透明基材フィルムと、上記透明基材フィルムの片面に形成された上記粘着剤を含めて粘着フィルムを形成することができる。
【0039】
上記粘着剤は、厚さ25〜1000μmを有することができる。
【0040】
上記透明基材フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、遮水性などに優れているものであって、特に制限されない。
【0041】
上記硬化は、当分野に公知のものであって特に限定しないが、紫外線を用いた光硬化が一般的である。
【0042】
上記紫外線を用いた重合時の光源は、発光分布が400nm以下、好ましくは150〜400nm、より好ましくは200〜380nmの波長であるものであって、例えば低圧水銀燈、中圧水銀燈、高圧水銀燈、超高圧水銀燈、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロ波励起水銀燈、およびメタルハライドランプなどを用いることができる。
【0043】
上記光源の光照射の強度は、求められる粘着剤の物性によって適切に調節することが可能であり、フリーラジカル光開始剤の活性に有用な積算光量は10〜5000mJ/cmであることが好ましく、200〜2000mJ/cmであることがより好ましい。上記範囲内で適切な硬化反応時間を持ち、ランプからの輻射熱および重合反応時の発熱によって製造された硬化物の凝集力の低下、黄変または保持体の劣化を発生させないので好ましい。
【0044】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、かかる変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(1) 粘着剤組成物
単官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名DFCN−5、根上化学社製、重量平均分子量=31,000)60重量%、第1単官能希釈モノマーとしてイソボルニルアクリレート(Tg=94℃)28重量%、第2単官能希釈モノマーとしてt−ブチルアクリレート(Tg=41℃)10重量%、フリーラジカル光開始剤(BASF社製、Darocur−1173)2重量%を混合して粘着剤組成物を製造した。
【0046】
(2) 粘着フィルムの製造
上記(1)で製造された粘着剤組成物をシリコーン離型剤がコーティングされた透明基材フィルム上に厚みが300μmになるように塗布し、4m/分の速度(600mJ/cm)で紫外線を照射した後、その上に同じ透明基材フィルムを積層して、さらに4m/分の速度(600mJ/ cm)で紫外線を照射して完全硬化して粘着剤を形成した。
【0047】
(実施例2−9および比較例1−8)
各成分の組成物を下記の表1に示すように使用した以外は、上記実施例1と同様に実施した。
【0048】
【表1】

【0049】
上記実施例および比較例で製造された粘着剤組成物および粘着フィルムの物性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0050】
(試験方法)
1.粘着力(N/25mm)
(1) ガラス(Glass)粘着力
粘着フィルムの上に積層された離型剤がコーティングされた基材フィルムを剥離した後、離型処理されていないPET基材フィルムを積層した。上記粘着シートをスーパーカッターを用いて25mm×250mmの大きさで切断して試料片とし、ガラスに接合した後、(株)島津製作所製のオートグラフに取り付けて固定して、剥離速度300m/分で180度剥離して粘着力を測定した。
【0051】
(2) トリアセチルセルロース(TAC)フィルム粘着力
ガラスに両面テープを用いてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを接着してTACフィルムが粘着されたガラスを準備した。上記製造した粘着フィルム上の離型剤がコーティングされた基材フィルムを剥離した後、TACフィルムに積層した。上記粘着シートをスーパーカッターを用いて25mm×250mmの大きさで切断して試料片とし、TACフィルムが粘着されたガラスに接合した後、オートグラフに取り付けて固定して、剥離速度300m/分で180度剥離して粘着力を測定した。
【0052】
(3) ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム粘着力
ガラスに両面テープを用いてPETフィルムを接着してPETフィルムが粘着されたガラスを準備した。上記製造した粘着フィルム上の離型剤がコーティングされた基材フィルムを剥離した後、PETフィルムに積層した。上記粘着シートをスーパーカッターを用いて25mm×250mmの大きさで切断して試料片とし、PETフィルムが粘着されたガラスに接合した後、オートグラフに取り付けて固定して、剥離速度300m/分で180度剥離して粘着力を測定した。
【0053】
2.耐熱性
粘着フィルムの上に積層された離型剤がコーティングされた基材フィルムを剥離した後、離型処理されていないPETフィルムの上に積層した。上記粘着シートをスーパーカッターを用いてA4サイズで切断して、ガラスに接合した後、オートクレーブ中(50℃、5気圧条件下)で20分間処理した後80℃の耐熱オーブンに100時間を放置した。
◎:耐熱評価後、気泡などの不良なし。
○:耐熱評価後、外郭に1μm以下の気泡が10個未満で発生。
△:耐熱評価後、外郭に1μm以下の気泡が10個以上発生。
×:耐熱評価後、気泡および浮きの発生が酷い。
【0054】
3.耐湿熱性
粘着フィルムの上に積層された離型剤がコーティングされた基材フィルムを剥離した後、離型処理されていないPETフィルムの上に積層した。上記粘着シートをスーパーカッターを用いてA4サイズで切断して、ガラスに接合した後、オートクレーブ中(50℃、5気圧条件下)で20分間処理した後、60℃、60RH%耐湿熱オーブンに100時間を放置した。
◎:耐湿熱評価後、気泡などの不良なし。
○:耐湿熱評価後、外郭に1μm以下の気泡が10個未満で発生。
△:耐湿熱評価後、外郭に1μm以下の気泡が10個以上発生。
×:耐湿熱評価後、気泡および浮きの発生が激しい。
【0055】
4.せん断変形率(%)
粘着フィルムの上に積層された離型剤がコーティングされた基材フィルムを剥離した後、離型処理されていないPETフィルムの上に積層した。上記粘着シートをスーパーカッターを用いて2.54cm×10cmで切断してガラスに接合面積が2.54cm×1.27cmになるように接合してせん断変形サンプルを製作した。
【0056】
せん断変形率は、引張力試験機(温度調節が可能なオーブン付け)を用いて測定し、これの条件は次のとおりである。3600sec経過後のせん断変形率は下式1で計算した。
静荷重:9.8N
温度:50℃
測定時間:3600sec
【0057】
【数1】

【0058】
ここで、せん断変形率が400%未満であれば高温クリープ(Creep)性が良好なものと見なし、∞は3600sec以前にせん断変形率が急激に増加して凝集破壊が生じる場合を示す。
【0059】
5.硬化率
単官能ウレタンアクリレート系オリゴマー成分および単官能希釈モノマー成分のエチレン系不飽和基中の不飽和C−C二重結合が、硬化途中時間の関数として消耗された程度をフーリエ変換赤外線分光学法(FT−IR)を用いて測定した。
評価器機:FT−IR
測定法:約810cm−1で不飽和C−C二重結合信号の消滅水準を測定。
消耗百分率はUV照射中に消滅された二重結合の百分率であり、照射以前の値は0%である。
【0060】
【表2】

【0061】
上記表から明らかなように、本発明に係る単官能ウレタンアクリレート系オリゴマー、イソボルニル(メタ)アクリレート第1単官能希釈モノマー、ガラス転移温度(Tg)が1℃ 以上であり、エチレン不飽和基を持つ第2単官能希釈モノマー、およびフリーラジカル光開始剤を含有する実施例1乃至9は、粘着力(ガラス、TACフィルム、PETフィルム)、耐久性(耐熱性および耐湿熱性)、およびせん断変形率に優れることが確認できた。特に、粘着力はガラス、TACフィルムおよびPETフィルムでいずれも優秀であった。
【0062】
一方、比較例1乃至8は、ガラス、TACフィルムおよびPETフィルムのそれぞれに対して高い粘着力を有する場合はあるが、これらすべてに対して高い粘着力を有することができず、全般的に耐久性も低いことが確認できた。
【0063】
また、比較例1乃至8は、3600sec以内にすべて凝集破壊が生じて高温せん断変形率が不良であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能ウレタンアクリレート系オリゴマー40〜80重量%と、
イソボルニル(メタ)アクリレート第1単官能希釈モノマー1〜55重量%と、
ガラス転移温度(Tg)が1℃ 以上であり、エチレン不飽和基を持つ第2単官能希釈モノマー1〜55重量%、および
フリーラジカル光開始剤0.1〜5重量%を含有する光学用感圧粘着剤組成物。
【請求項2】
前記単官能ウレタンアクリレート系オリゴマーは、エステル主鎖、エーテル主鎖またはこれらの混合構造の主鎖を含む請求項1に記載の光学用感圧粘着剤組成物。
【請求項3】
前記第2単官能希釈モノマーは、ガラス転移温度(Tg)が1〜150℃である請求項1または2に記載の光学用感圧粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項の粘着剤組成物が硬化された光学用感圧粘着剤。
【請求項5】
透明基材フィルムと、
前記透明基材フィルムの片面に形成された請求項4の粘着剤とを含む粘着フィルム。
【請求項6】
前記粘着剤は、厚さ25〜1000μmを有する請求項5に記載の粘着フィルム。

【公開番号】特開2012−224841(P2012−224841A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67609(P2012−67609)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(503454506)東友ファインケム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】