説明

光学用積層シート及び画像表示装置

【課題】透明度が高く、かつ耐傷性に優れる光学用途の積層シートを提供する。
【解決手段】2軸延伸されたポリエステルからなる支持体11の一方の面に、光学機能層12を形成する。支持体11の他方の面に保護層13を形成する。保護層13は、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダと、有機又は無機の微粒子と、滑り剤とを含む。滑り剤によって滑り性が向上する。滑り性が向上した分だけ微粒子の添加量が少なくなり、透明度の低下が抑えられる。透明度が高く耐傷性に優れる積層シートが得られる。この積層シートを拡散シートに用いることにより、輝度ムラが少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用積層シート、及びこの積層シートを構成部材とする液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、或いは表面電界ディスプレイ(SED)、並びにCRTディスプレイ等の画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高画質を実現する画像表示装置として、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、有機EL表示装置等が注目されている。中でもLCDは、他の画像表示装置に比べて薄くて軽いため、大画面テレビ、携帯用電子機器への使用等、その需要拡大は著しい。LCDは、ガラス板の間に特殊な液体を封入した液晶セルと偏光板とを主要構成部材とし、液晶セルに電圧をかけて液晶分子の向きを変化させることにより光の透過率を増減させて像を表示させる。また、LCDには、高画質を確保する為、光の反射や散乱等を防止したり、偏光板を保護したりすることを目的として、プリズムシートや、光拡散シート、反射防止シート、ハードコートシート等の光学機能を有する光学シートが使用されている。例えば、特許文献1には、光拡散シートについて詳細に記載されている。
【0003】
一般に、光学シートは、透明な樹脂からなる支持体の表面に光拡散性や集光性を有する光拡散層、反射防止層、ハードコート層等の光学機能層が設けられた積層シートが主流とされ、搬送する支持体の表面に光学機能層形成用の材料を塗布し、乾燥させることで製造される。
【0004】
このような積層シートには、高い透明度が要求される。また、表面に微小な傷が付いていると表示のコントラストが低下したり、輝度ムラが発生したりして画像品質が低下するため、表面に傷が極力少ないこと、また表面に傷が付きにくいことが望まれる。ただし、積層シートを製造するとき、支持体の表面に材料を塗布したり、積層シートを搬送したり、或いは、完成した積層シートを集積したりする折に、支持体の表面に擦り傷が生じやすい。この場合に、光学機能層に微粒子を添加して滑り性を改善し、傷の発生を抑制する方法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献2には、ポリエステルポリオール又はアクリルポリオールと微小な無機微粒子とを含むポリマー組成物からなる光学機能層を設けることで、透明度が高く、かつ輝度ムラの発生を低減させた積層シートが提案されている。また、特許文献3には、支持体の少なくとも一方の面に有機又は無機微粒子、バインダ、及び滑り剤を含有させた塗布層を備えることで、透明度が高く、傷が付きにくい積層シートが提案されている。
【特許文献1】特開2006−095980号公報
【特許文献2】特開2004−004598号公報
【特許文献3】特願2005−354908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2では、熱や紫外線等を受けて撓みや変色の発生により生じる輝度ムラを低減させることはできるものの、搬送時等で生じる傷を低減することができない。また、多量の微粒子を添加させるので、透明度の低下や微粒子が浮く等して傷が発生するおそれがある。そして、特許文献3では、光学機能層を設けた側の耐傷性しか向上させることができないので、支持体のもう一方の面における耐傷性の向上が課題として残る。
【0007】
そこで、本発明は、透明度が高く、かつ表面に傷が付きにくい、すなわち耐傷性に優れる光学用積層シート及び画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学用積層シートは、ポリエステルからなる支持体と、前記支持体の一方の面に配される光学機能層と、前記支持体の他方の面に配され、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機の微粒子、及び滑り剤を含む保護層とを有することを特徴とする。
【0009】
なお、支持体は2軸延伸されたシートであることが好ましい。また、滑り剤は、ワックス、シリコーン化合物、下記の化2に示される一般式I、II、IIIのいずれかに表される化合物のうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
【化2】

ただし、Rは置換又は無置換のアルキル基、nは3から20の整数、Mは一価の金属原子を表す。
【0011】
また、微粒子は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカのうち少なくとも1つからなることが好ましい。さらには、微粒子の平均粒径は、0.05μm以上20.0μm以下であることが好ましい。
【0012】
また、微粒子は、異なる平均粒径を有する単分散微粒子を2種以上混合したものであることが好ましい。
【0013】
また、保護層は、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機の微粒子を含む微粒子含有層と、その上にバインダ、滑り剤を含む表面層の2層の積層体であることが好ましい。
【0014】
本発明の画像表示装置は、上記いずれか1つの積層シートを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層シートによれば、光学シートとして光学機能層を備えたポリエステルからなる支持体のもう一方の面に、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機微粒子、及び滑り剤を含む保護層を設けるようにしたので、例えば、光学機能層として光拡散層を設けると、LCDのバックライト方式の主要構成部材であり、ライト側の耐傷性に優れる拡散シートとして利用することができる。また、2軸延伸させた支持体を使用することで、機械強度を向上させることができる。更には、滑り剤により滑り性を向上させることができるので、微粒子の添加量を少なくすることが可能となり、滑り性を確保しつつ透明度の低下を抑制することができる。これにより、透明度が高く、耐傷性に優れる積層シートを提供することができると共に、この積層シートを利用することで高画質の画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る積層シートについて、実施形態を挙げながら詳細に説明する。ただし、本実施形態は本発明に係る好適な適用例の一つであって、本発明を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明に係る積層シート10の一例の概略を示す断面図である。積層シート10は、ポリエステルからなる支持体11と、この支持体11の一方の面に設けられる光学機能層12と、支持体11の他方の面に設けられる保護層13とを有する。なお、図1に示す1層構造の保護層13の他に、図2に示すように、微粒子含有層14と表面層15の2層構造の保護層16を有する積層シート17としてもよい。
【0018】
〔支持体〕
支持体11の形成に用いられるポリエステルは特に制限されるものではなく、光学用途に用いることができるポリエステルとして公知のものを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられるが、コストや機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0019】
本発明の支持体11は、2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸とは、支持体11の幅方向及び長手方向をそれぞれ1軸とみなして両方向に延伸させることである。これにより支持体11の2軸での分子配向が十分に制御されるので、機械強度が向上する。延伸倍率は特に制限されるものではないが、一方向に対する延伸倍率が1.5〜7倍であることが好ましく、より好ましくは2〜5倍である。特に、1軸方向あたりの延伸倍率を2〜5倍として2軸延伸させることが好ましい。ここで、支持体11の延伸倍率が1.5倍よりも小さいと充分な機械的強度が得られず、その一方で、延伸倍率が7倍を超えると均一な厚みを得ることが難しくなる。
【0020】
支持体11の厚みt1(μm)は、延伸倍率を制御して30μm以上400μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、t1が35μm以上350μm以下である。このような支持体11は、高い透明度を有しながら、軽量かつ取り扱い性に優れる。ただし、t1が30μm未満だと薄すぎるので取り扱いが難しく、その一方で、t1が400μmを超えると厚すぎるために、画像表示装置の小型化や軽量化が困難となる上に、製造コストの増大を引き起こすため不適である。
【0021】
〔光学機能層〕
光学機能層12としては、光拡散層、反射防止層、プリズム層、防眩層等が挙げられ、適宜選択することにより所望の光学機能を有するシートが形成される。この積層シート10は、LCDの他に、PDP、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイ等の他の表示装置にも用いられる。また、ハードコート層等、機械強度に優れる光学機能層12を形成することで、光学機能を損なわずに硬度を付与したり、汚れを付きにくくすることができる。
【0022】
光学機能層の形成方法は特に制限されるものではなく、公知である塗布方法を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター等が挙げられる。いずれの方法も、光学機能層を形成させる材料を含む溶液を所望とする面に塗布した後、これを乾燥させることで層を形成させる。ここで乾燥方法は特に制限されるものではなく、通常使用される方法を適宜選択することができる。このとき、乾燥温度を90℃以上130℃以下とすると、光学機能層等に加熱による損傷を与えることなく短時間で乾燥を行なうことができるので好ましい。より好ましくは100℃以上120℃以下である。乾燥温度が90℃未満の場合には、乾燥時間が長くなるおそれがある。その一方で、130℃を超えると、光学機能層等に損傷を与えるおそれがあるので好ましくない。また、熱ダメージを与えず、短時間で乾燥を促進させる為にも、適度な温度条件下で乾燥時間を10秒以上5分以下とすることが好ましく、より好ましくは1分以上2分以下である。
【0023】
光学機能層12の厚みt2(μm)は、塗布量を調整することにより制御することができる。透明度が高く、優れた所望の光学特性や耐傷性を持たせる為に、t2は1μm以上10μm以下とすることが好ましい。より好ましくはt2が2μm以上5μm以下である。ここで、t2が1μm未満だと薄すぎるので所望の光学特性等を発現させることが難しく、その一方で、t2が10μmを超えると支持体11との界面における接着強度が低く、更には、製造コストの増大を引き起こすため不適である。なお、光学機能層12は、単層でも、2層以上の複層であっても良い。ここで複層の場合には、全総数を併せての膜厚をt2とみなす。
【0024】
〔保護層〕
保護層13は、バインダ、有機又は無機微粒子、及び滑り剤を含有している。保護層13に使用されるバインダは、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーを用いる。ガラス転移温度とは、ポリマーのような高分子物質を加熱した場合にガラス状の硬い状態からゴム状の軟らかい状態に変わるときの温度をいう。ポリマーの種類は、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等、特に制限はない。これにより、耐傷性に優れる保護層13を得ることができる。ただし、ガラス転移温度が40℃未満の場合には、十分な耐傷性を確保することが困難である。上記のポリマーの中でも、分子内にカルボキシル基を有するものを使用すると、支持体11との界面における接着強度を向上させることができるので特に好ましい。また、バインダとして用いるポリマーは、所定のガラス転移温度を満足するものであれば1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。例えば、分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン系のポリマーと、ポリエステル系のポリマーとを混合して使用すると、耐傷性に優れると共に、接着強度が高い保護層13を得ることができる。なお、ポリマーの分子量は特に限定されるものではなく、通常、バインダとして利用されているものが使用可能である。
【0025】
保護層13に用いることができる有機又は無機微粒子の素材は特に限定されるものではない。有機微粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられ、無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。中でも、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカは、滑り性を向上させる効果に優れると共に、低コストであるため好ましい。
【0026】
素材に係らず微粒子の平均粒径は、0.05μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.5μm以上15μm以下である。これにより、微粒子が凝集して高い透明度を確保しながら、滑り性を向上させることができる。ここで、平均粒径が0.05μm未満の微粒子を使用すると、滑り性を向上させる効果が弱く、その一方で、平均粒径が20μmを超える微粒子を使用すると、透明度が低下したり、表示品質の低下を招くおそれがあるので不適である。また、微粒子の添加量は、平均粒径によっても異なるが、0.1mg/m以上30mg/m以下が好ましく、より好ましくは0.5mg/m以上20mg/m以下である。ここで、微粒子の添加量が0.1mg/m未満では、滑り性を向上させる効果が弱く、その一方で、30mg/mを超えると、透明度の低下や、表示品質の低下を招くおそれがある。本発明における微粒子の粒径とは、微粒子を走査型電子顕微鏡で撮影した時の微粒子と同面積の円の直径をいう。そして、平均粒径は、任意の50個の微粒子について求めた粒径の平均値をいう。
【0027】
なお、単一の平均粒径の微粒子のみを用いると、粒径の大きな微粒子を多量に用いることになり、微粒子の膜からの脱落が生じやすくなる。このため、平均粒径の異なる複数の単分散微粒子を用いることが好ましい。また、単一の平均粒径の微粒子のみを用いると、粒径分布が広くなり、平均粒径の2倍以上ある一部の粗大な粒子が存在し、膜から脱落したり、他の接触する表面あるいは他の光学部材を傷つけたりし易くなるので、この点からも平均粒径の異なる複数の単分散微粒子を用いることが好ましい。なお、すべり性を得るために、平均粒径の異なる微粒子を少量ずつ混合することが好ましい。
【0028】
本発明での滑り剤とは、積層シートの最外層に添加した際に積層シートと他の素材との滑り性を向上させる物質を言う。滑り剤は、合成又は天然ワックスの分散物、シリコーン化合物、下記一般式I、II、またはIIIで表される化合物のうち、少なくとも1つであることが好ましい。
【0029】
ワックスとは本来高級脂肪酸と高級アルコールのエステルであるが、本発明ではこれ以外の広義のワックス、すなわち炭化水素、ケトン、第一級及び二級アルコール、テルペノイドなどを含めてワックスという。本発明のワックスには、合成ワックスと天然ワックスとがある。合成ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、石油ワックス、一価又は多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどがある。天然ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、蜜ロウ、ラノリン(羊毛脂)、モンタンワックスなどが挙げられる。
【0030】
これらワックスの詳細については、例えば「油化学便覧−脂質・界面活性剤−(第4版)、日本油化学会編、丸善(株)、平成13年発行」の40ページから44ページ、又は「改定ワックスの性質と応用、府瀬川 健蔵監修、(株)幸書房、1983年発行」に記載されている。本発明で用いられるワックスとしては、例えば、カルナバラックス、パラフィンワックス、高級脂肪酸ワックス、脂肪酸アマイドワックス、エステル系ワックスなどが挙げられる。これらの好ましい具体例としては、セロゾール524、428、732−B、920、B−495、ハイドリンP−7、D−757、Z−7−30、E−366、F−115、D−336、D−337、ポリロンA、393、H−481、ハイミクロンG−110F、930、G−270(以上、中京油脂(株)製)、ケミパールW100、W200、W300、W400、W500、W950(以上、三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0031】
本発明で使用するワックスは、その平均粒径が20nm以上5000nm以下程度の分散物の形で用いることが好ましい。また、ワックスの添加量は、0.1mg/m以上50mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは1mg/m以上50mg/m以下である。ワックスの添加量が0.1mg/m未満と少ない場合には、滑り性を確保することが難しく、その一方でワックスの添加量が50mg/mを超えて多すぎる場合には、面状の悪化が起こるおそれがある。
【0032】
〔シリコーン化合物〕
本発明の滑り剤として作用するシリコーン化合物とは、シロキサン結合(Si−O)の繰り返し単位を主鎖として、側鎖にアルキル基、アリール基を持つ化合物である。具体例としては下記のものを挙げることができる。
【0033】
【化3】

【0034】
ただし、上記のうち、n、mは3から3000の自然数を表す。この他に、上記の化合物の末端又は側鎖に、アルキル基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、アクリル基、アルコキシ基、フッ素置換アルキル基、高級脂肪酸エステルなどを結合せしめた変性シリコーンオイルを挙げることができる。変性シリコーンオイルの具体例としては、KF−412、413、414、393、859、8002、6001、6002、857、410、910、851、X−22−162A、X−22−161A、X−22−162C、X−22−160AS、X−22−164B、X−22−164C、X−22−170B、X−22−800、X−22−819、X−22−820、X−22−821、(以上、信越化学工業(株))等を挙げることができる。
【0035】
本発明のシリコーン化合物は、平均粒径が20nm以上5000nm程度の分散物の形で用いることが好ましい。また、これらシリコーン化合物の添加料は、0.1mg/m以上50mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは1mg/m以上20mg/m以下である。シリコーン化合物の添加量が0.1mg/m未満と少ない場合には、滑り性が不充分になるおそれがあり、逆に50mg/mを超えて多すぎる場合には、隣接する層との接着性が確保できないおそれがある。なお、ワックス及びシリコーン化合物の平均粒径は、微粒子と同じように測定すれば良く、ここでの説明は省略する。
【0036】
次に、下記の一般式I、II、またはIIIで表される化合物について述べる。ここで、Rは置換又は無置換のアルキル基、nは3から20の自然数、Mは一価の金属原子を表す。また、一般式I〜IIIのRは、炭素数10から30の直鎖アルキル基が特に好ましく、Mは、ナトリウム、カリウム、リチウムが好ましい。
【0037】
【化4】

【0038】
これらの化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0039】
【化5】

【0040】
上記化合物の添加量は、0.1mg/m以上50mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは1mg/m以上20mg/m以下である。この添加量が0.1mg/m未満と少ない場合には、滑り性が不充分になるおそれがあり、逆に50mg/mを超えて多すぎる場合には、面状の悪化が起こるおそれがある。
【0041】
本発明の保護層13は、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機の微粒子、及び滑り剤が必須成分として含有するが、これ以外に必要に応じて架橋剤、界面活性剤、帯電防止剤などを添加してもよい。
【0042】
架橋剤としてはエポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系などの架橋剤を用いることができる。
【0043】
界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤についてはたとえば「界面活性剤便覧」(西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。
【0044】
帯電防止剤としてはポリアニリン、ポリピロールなどの電子伝道系のポリマー、分子鎖中にカルボキシル基やスルホン酸基を有するイオン伝道系ポリマー、導電性微粒子などがある。これらのうち特に、特開昭61−020033号公報に記載の導電性酸化錫微粒子は導電性と透明性の観点から好ましい。
【0045】
保護層13の厚みt3は、0.02μm以上20μm以下が好ましく、特に好ましくは、0.05μm以上10μmである。t3が0.02μm未満であると、保護層13と隣接する層との接着性が不充分になるおそれがあり、その一方で、t3が20μmを超えると面状が悪化するおそれがある。なお、保護層13は、1層でもよいし、2層以上を積層させてもよい。2層以上を積層させる場合には、全層の厚みの合計が、前述の範囲を満たすことが好ましい。
【0046】
図2に示すように、保護層16は、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機の微粒子を含む微粒子含有層14と、その上にバインダ、滑り剤を含む表面層15の2層の積層体であってもよい。保護層16を微粒子含有層14と表面層15に分離することにより、微粒子の脱落を1層の場合に比べてより一層抑制することができる。
【0047】
保護層13,16のバインダとして用いるポリマーは、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、SBR樹脂等が使用可能である。
【0048】
保護層13の厚みt3は、0.02μm以上20μm以下が好ましく、特に好ましくは、0.05μm以上10μmである。t3が0.02μm未満であると、保護層13と隣接する層との接着性が不充分になるおそれがあり、その一方で、t3が20μmを超えると面状が悪化するおそれがある。なお、保護層13は、1層でもよいし、2層以上を積層させてもよい。2層以上を積層させる場合には、全層の厚みの合計が、前述の範囲を満たすことが好ましい。
【0049】
本発明の保護層13の塗布方法には、特に制限はない。塗布方法としては、バーコーター塗布、スライドコーター塗布などの公知の方法を用いることができる。前述の必須成分と混合して使用される塗布溶媒も特に限定されるものではなく、水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなど、及びこれらの混合系などの水系、有機溶剤系の溶剤を用いることができる。
【0050】
塗布は、支持体11を一軸方向に延伸した後に行ってもよいし、二軸延伸した後に行ってもよい。しかし、横延伸後のベース耳部の回収を可能にするため、二軸延伸後に塗布することが好ましい。
【0051】
本発明によれば、図3に示すような拡散シート20を容易に形成することができる。この拡散シート20は、ポリエステルからなる支持体21と、支持体21の一方の面上に配される光拡散層22と、この光拡散層22と対向する支持体21の他方の面に配される保護層23とを有する。支持体21と光拡散層22との間には下塗り層24が設けられている。このように下塗り層24を設けると、下塗り層24を介して支持体21と光拡散層22との接着性を向上させることができるので好ましい。各層の厚みは、図1で説明した範囲を満たすように設計する。また、光拡散層22と下塗り層24とを併せてt2とみなす。
【0052】
下塗り層24はバインダを含む層である。下塗り層24のバインダとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などの公知のポリマーを用いることができる。また、下塗り層24には、必要に応じてエポキシ系、イソシアネート系、カルボジイミド系などの架橋剤や、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤、及び有機または無機のマット剤などを含有させても良い。下塗り層24の形成方法も特に制限されるものでなく、例えば、下塗り層24を形成させるための材料と水系または有機溶剤系の溶媒とを混合させた混合液を、公知の塗布方法により塗布した後、乾燥させることで容易に形成することが可能である。
【0053】
光拡散層22は、バインダ及び微粒子を含有する。ここで、取り扱い時の耐傷性、表面についたゴミや汚れを拭き取るための耐溶剤性、及びこの積層シート11を所定の形態に打ち抜き加工する場合もあるので、支持体11との高い接着強度を確保することを目的として、架橋剤を含有させることが好ましい。なお、光拡散層22は1層でも良いし、所望に応じて2層以上の積層構造としても良い。2層以上とする場合には、同一の光学機能を有する層を形成する必要はなく、適宜選択することができる。
【0054】
光拡散層22に使用されるバインダは、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。好適な例としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の公知のポリマーを用いることができる。中でも、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくとも1つをモノマーの成分として含む単独重合体、或いは共重合体を使用すると、優れた光学特性及び、透明度の高さを確保することができるので好ましい。
【0055】
上記の単独重合体又は共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、ロジン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、有機粒子を溶解したり、膨潤させたりするおそれが少ないことから、(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。さらに前述の架橋剤と反応しうるポリマーを用いることは好ましい。例えば、架橋剤がイソシアネート系架橋剤の場合水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを有するポリマーを用いることができる。なお、これらのバインダは単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
【0056】
光拡散層22には、透過した光を拡散させる光拡散剤として作用する微粒子を含有させる。微粒子は特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、好適な具体例としては、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子などの有機粒子が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。この有機粒子は、架橋構造を有するものが好ましく、特に、架橋構造を有するポリメチルメタクリレート樹脂粒子が好ましい。
【0057】
微粒子の平均粒径は、5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上25μm以下であることがより好ましい。平均粒径が5μm未満であると、光拡散能が不十分になる。その一方で、平均粒径が100μmを超えると大きすぎるので、かえって光の透過を妨げるおそれがある他、光拡散剤としての機能を果たすことが困難である。また、塗布液中において微粒子の沈降速度が大きくなるので、送液に使用する配管やバッファタンク中で微粒子の沈降が生じてしまう。なお、平均粒径の求め方は前述と同じであるため、説明は省略する。
【0058】
微粒子の添加量は、100質量部のバインダに対して、100質量部以上500質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは200質量部以上400質量部以下とする。微粒子の添加量が100質量部未満であると、光拡散剤としての機能を果たせなくなることがあり、その一方で、500質量部を超えると、微粒子が分散しにくくなるおそれがある。また、本発明では前述の微粒子に加えて別の微粒子を併用してもよい。例えば、前記の10μm以上25μmのポリメチルメタクリレート樹脂粒子に対して、平均粒径が1μm以上5μm以下であるシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニアを併用することは好ましい。併用する微粒子の添加量としては主成分となる微粒子の1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0059】
光拡散層22には、耐溶剤性や、支持体との密着性を付与する目的で架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤は、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、オキサゾリン系、カルボジイミド系などを用いることができる。中でも、上記の目的から、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。光拡散層22における架橋剤の含有量は、100質量部のバインダに対して、10質量部以上とすることが好ましく、30質量部以上400質量部以下とすることがより好ましい。架橋剤の含有量が10質量部未満であると、光拡散層22が傷つきやすくなるおそれがある。また、架橋剤の質量をa、バインダの質量をbとするとき光拡散層22における架橋剤とバインダとの質量比であるa/bは、1以上20以下であることが好ましく、より好ましくは3以上15以下であり、特に好ましくは、5以上10以下である。
【0060】
光拡散層24を形成する場合、バインダ等の材料と混合させる溶媒は特に制限されるものではない。好適な溶媒の例としては、(a)ケトン類、(b)エーテル類、(c)アルコール類、(d)エステル類、(e)多価アルコール誘導体類、(f)カルボン酸類などを挙げることができる。これらの好ましい具体例について、以下、比重(g/cm)と共に列挙する。比重とは、対象物質の質量と、それと同体積の水の質量との比であり、ここでは、化合物名の後にかっこ書きで記し、単位の記載は省略する。
【0061】
(a)ケトン類としては、例えば、アセチルアセトン(0.975)、シクロヘキサノン(0.945)、メチルシクロヘキサノン(0.921)アセトン(0.791)、ジエチルケトン(0.816)、メチルエチルケトン(0.805)、メチル−n−ブチルケトン(0.821)、メチル−n−プロピルケトン(0.806)などが挙げられる。
【0062】
(b)エーテル類としては、例えば、1,4−ジオキサン(1.039)、テトラヒドロフラン(0.889)、などが挙げられる。
【0063】
(c)アルコール類としては、例えば、シクロヘキサノール(0.949)、3−ペンタノール(1.046)、2−メチルシクロヘキサノール(0.925)、イソプロピルアルコール(0.785)、エタノール(0.791)、n−ブタノール(0.810)、t−ブタノール(0.787)、1−プロパノール(0.804)、メタノール(0.792)などが挙げられる。
【0064】
(d)エステル類としては、例えば、ギ酸イソアミル(0.877)、ギ酸イソブチル(0.885)、ギ酸エチル(0.917)、ギ酸ブチル(0.892)、ギ酸プロピル(0.901)、ギ酸ヘキシル(0.990)、ギ酸ベンジル(1.081)、ギ酸メチル(0.987)、酢酸アリル(0.927)、酢酸イソアミル(0.871)、酢酸イソブチル(0.873)、酢酸イソプロピル(0.877)、酢酸エチル(0.901)、酢酸2−エチルヘキシル(0.872)、酢酸シクロヘキシル(0.97)、酢酸n−ブチル(0.876)、酢酸s−ブチル(0.875)、酢酸プロピル(0.887)、酢酸メチル(0.934)、ポロピオン酸エチル(0.896)、プロピオン酸ブチル(0.877)、プロピオン酸メチル(0.916)、などが挙げられる。
【0065】
(e)多価アルコール誘導体類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(0.975)、エチレングリコールモノメチルエーテル(0.964)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1.009)、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル(1.04)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(0.898)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(0.923)、などが挙げられる。
【0066】
(f)カルボン酸類としては、例えば、イソ酪酸(0.948)、カプロン酸(1.049)、などが挙げられる。
【0067】
これらの中でも、塗布後に乾燥しやすい観点から、沸点150℃以下の有機溶媒が好ましく、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0068】
上記のような拡散シート20は、LCDを構成するバックライトユニットの主要構成部材として好適に利用することができる。図4は、一般的なバックライトユニット30の概略を示す斜視図である。なお、図面の煩雑さを避けるため、主要構成部材のみを示すが、実際には、この他にも複数の部材を有する。バックライトユニット30を構成する部材のうち、反射シート32が内側に貼られたフレーム33の内部には複数のランプ35が配されており、これが液晶セルを照らす光源となる。このランプ35のすぐ上には、拡散板36が設置されており、更に、その上に拡散シート20、プリズムシート38が順に配されている。各部材は後フレーム33と前フレーム39とで挟み込まれた状態で固定される。本発明により得られる拡散シート20は、優れた光拡散機能を有すると共に、光拡散層とは反対の支持体面の耐傷性に優れるため、コントラストの低下や輝度ムラがなく高品質の画像を提供することができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に係る実験を行った。ただし、本発明はここに示す形態に限定されるものではない。なお、実験1〜5は本発明に係る実施例であり、実験6〜9は比較例である。
【0070】
〔実験1〕
実験1では、ポリエステルからなる支持体の一方の面に下塗り層を形成し、更に、下塗り層とは対向する支持体の他方の面に保護層を設けた積層シートを作製した。
【0071】
〔支持体〕
Geを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載)樹脂を含水率50ppm以下になるまで乾燥した後、ヒーター温度が280〜300℃の範囲で略一定となるように調整された押出機の内部で溶融させた。次に、この溶融したPET樹脂を、静電印加されたチルロール上にダイから吐出させて、非結晶のフィルムとした後、これをフィルムの搬送方向に向かって3.1倍に延伸し、続けて、その幅方向に3.9倍に延伸し、厚さ188μmの支持体を得た。
【0072】
〔下塗り層〕
上記の支持体を搬送速度70m/分条件で搬送する間に、その表面を727J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、この処理面に、下記組成からなる塗布液をバーコート法により塗布して下塗り層を形成した。ここで、塗布量は4.4cc/mとし、180℃で1分乾燥した。
【0073】
〔下塗り層用塗布液〕
・バインダ(ポリエステル樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ファインテックス ES−650、固形分29%) 44.9質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2) 1.3質量部
・シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX−50、固形分10%)
1.4質量部
・滑り剤(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分3%) 8.5質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.2質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
0.1質量部
上記の各種材料を混合した液の中に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加して下塗り層用の塗布液とした。
【0074】
〔保護層〕
ついで、この支持体を搬送速度70m/分条件で搬送しながら、下塗り層が形成された面とは対向する支持体の面に、727J/m条件でコロナ放電処理を行った。そして、バーコート法により、下記組成からなる塗布液を塗布量が13.8cc/mとなるよう塗布した後、これを180℃/1分乾燥することで膜厚t3が2μmの保護層を形成し、積層シートを得た。
【0075】
〔保護層用塗布液〕
・バインダ(ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ハイドラン AP40F、固形分22%、ガラス転移温度50℃) 659質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
36.3質量部
・架橋PMMA微粒子(綜研化学(株)製、MX−300、平均粒径3μm)1.5質量部
・滑り剤(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分30%) 7.3質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.0質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
1.0質量部
上記の各種材料を混合した液の中に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加して保護層用の塗布液とした。
【0076】
完成した積層シートについて下記の測定により、ヘイズ及び保護層の耐傷性を測定した。また、保護層に使用したバインダのガラス転移温度を測定した。
【0077】
〔ヘイズ測定〕
ヘイズメーター(NDH−1001P、日本電色工業(株))を用いて、完成した積層シートの光拡散性の指標であるヘイズを、JIS−K−6714−1977の曇価に記載の方法に基づいて測定した。
【0078】
〔保護層の耐傷性〕
完成した積層シートを25℃、60%RHの雰囲気下で24時間調湿させたものをサンプルとし、次の方法によりその引っかき強度を測定した。先ず、0.5mmRのサファイア針で加重を0〜100gに変化させながら、速度1cm/秒の条件でサンプルの保護層の表面を引っかいた。この時、その表面についた傷の有無を調べ、目視により最初に傷が観察される荷重を最低荷重として、この値を引っかき強度の指標とした。このとき、製品レベルを満足する引っかき強度の場合は○とし、製品レベルを満足することができない場合を×とした。
【0079】
〔ガラス転移温度〕
DSC(TA Instrument社製 Q−1000)を用いて、乾燥させた保護層用のバインダのガラス転移温度を昇温速度5℃/min.の条件下で測定した。
【0080】
〔実験2〕
実験2では、保護層のバインダを、実験1とは異なるポリエステル樹脂(互応化学工業(株)製、プラスコートZ687、固形分25%、ガラス転移温度110℃)にした以外は、全て実験1と同様に積層シートを作製した。
【0081】
〔実験3〕
実験3では、下記の条件により保護層を形成した以外は、全て実験1と同様に積層シートを作製した。
【0082】
〔保護層用塗布液〕
・モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 145質量部
・重合開始剤(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル)−s−トリアジン) 4.4質量部
・ベンゾグアナミン樹脂微粒子(日本触媒(株)製、エポスターM−30、平均粒径3μm)
1.5質量部
・滑り剤(信越化学工業(株)製、KF−412) 7.3質量部
・界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、F780F、メチルエチルケトン30質量%溶液) 1.0質量部
上記の各種材料を混合した液に、メチルエチルケトンを総量が1000質量部になるよう添加し、これを塗布液とした。
【0083】
実験1と同様の支持体を作製した後、バーコート法により下塗り層とは反対側の支持体面に上記の塗布液を塗布した。そして、これを100℃で1分間乾燥させた後、全面を超高圧水銀灯で500mJ/mの強度で露光して層を硬化させてバック層を形成した。なお、保護層用の塗布液の塗布量は13.8cc/mになるよう塗布した。
【0084】
なお、実験3では、バインダのガラス転移温度を測定する際、モノマー、重合開始剤及び溶剤のみを用いて保護層を形成したものをサンプルとして、実験1の方法で測定した。
【0085】
〔実験4〕
実験4では、下記の保護層用塗布液を使用した以外は、全て実験1と同様にして積層シートを作製した。
【0086】
〔保護層用塗布液〕
・バインダ(ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ハイドラン AP40F、固形分22%) 659質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
36.3質量部
・シリコーン微粒子(東芝シリコーン(株)製、トスパール120、平均粒径2μm)
1.5質量部
・滑り剤(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分30%) 7.3質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.0質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
1.0質量部
上記の各種材料を混合した液に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加し、これを塗布液とした。
【0087】
〔実験5〕
実験5では、ポリエステルからなる支持体の一方の面に下塗り層1、その上に下塗り層2を形成し、更に、下塗り層1,2とは対向する支持体の他方の面に保護層を微粒子含有層と表面層の2層に分けて塗布して形成した以外は、実験1と同様に積層シートを作製した。
【0088】
〔下塗り層1〕
上記の支持体を搬送速度70m/分条件で搬送する間に、その表面を727J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、この処理面に、下記組成からなる塗布液をバーコート法により塗布して下塗り層を形成した。ここで、塗布量は7.1cc/mとし、180℃で1分乾燥した。
【0089】
〔下塗り層用塗布液1〕
・ポリエステル樹脂バインダ 118質量部
(互応化学工業(株)製、プラスコートZ687、固形分25%、ガラス転移温度110℃)
・架橋剤 14.5質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・界面活性剤1 0.1質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90、アニオン性)
・界面活性剤2 0.24質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95、ノニオン性)
・蒸留水 合計が1000質量部になるよう添加
【0090】
〔下塗り層2〕
上記の下塗り層1を塗布した支持体を搬送速度70m/分条件で搬送する間に、下塗り層1の表面を727J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、この処理面に、下記組成からなる塗布液をバーコート法により塗布して下塗り層2を形成した。ここで、塗布量は7.1cc/mとし、150℃で1分乾燥した。
【0091】
〔下塗り層用塗布液2〕
・ウレタン樹脂バインダ 24.3質量部
(三井化学(株)製、オレスターUD350、固形分38%)
・架橋剤 4.6質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・添加剤(フィラー) 0.15質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX−50、固形分10%)
・添加剤(フィラー) 0.39質量部
(日産化学(株)製、スノーテックスXL、固形分40%)
・ 添加剤(すべり剤) 0.16質量部
(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分30%)
・界面活性剤1 0.12質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90、アニオン性)
・界面活性剤2 0.15質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95、ノニオン性)
・蒸留水 合計が1000質量部になるよう添加
【0092】
〔微粒子含有層〕
ついで、この支持体を搬送速度70m/分条件で搬送しながら、下塗り層が形成された面とは対向する支持体の面に、727J/m条件でコロナ放電処理を行った。そして、バーコート法により、下記組成からなる塗布液を塗布量が9.9cc/mとなるよう塗布した後、これを180℃/1分乾燥することで膜厚0.3μmの保護層の第1層である微粒子含有層を形成した。
【0093】
〔微粒子含有層用塗布液〕
・ポリエステル樹脂バインダ 118質量部
(互応化学工業(株)製、プラスコートZ687、固形分25%、ガラス転移温度110℃)
・架橋剤 14.5質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・アクリル微粒子 0.54質量部
(綜研化学(株)製、MX−501、平均粒径5.4μm、CV値9.0)
・ポリスチレン微粒子分散液 2.7質量部
(日本ゼオン(株)製、UNF1008、平均粒径1.8μm、固形分20%)
・界面活性剤1 0.1質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90、アニオン性)
・界面活性剤2 0.24質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95、ノニオン性)
・蒸留水 合計が1000質量部になるよう添加
【0094】
〔表面層〕
ついで、この支持体を搬送速度70m/分条件で搬送しながら、下塗り層が形成された面とは対向する支持体の面に、727J/m条件でコロナ放電処理を行った。そして、バーコート法により、下記組成からなる塗布液を塗布量が9.9cc/mとなるよう塗布した後、これを180℃/1分乾燥することで膜厚0.1μmの保護層の第2層である表面層を形成し、積層シートを得た。
【0095】
〔表面層用塗布液〕
・ウレタン樹脂バインダ 24.3質量部
(三井化学(株)製、オレスターUD350、固形分38%)
・架橋剤 4.6質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・添加剤(フィラー) 0.15質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX−50、固形分10%)
・添加剤(フィラー) 0.39質量部
(日産化学(株)製、スノーテックスXL、固形分40%)
・ 添加剤(すべり剤) 0.5質量部
(中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分30%)
・界面活性剤1 0.12質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90、アニオン性)
・界面活性剤2 0.15質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL−95、ノニオン性)
・蒸留水 合計が1000質量部になるよう添加
【0096】
〔実験6〕
下記の保護層用塗布液を使用した以外は全て実験1と同様に積層シートを作製した。
【0097】
〔保護層用塗布液〕
・バインダ(ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ハイドラン AP40F、固形分22%) 659質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
36.3質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.0質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
1.0質量部
上記の各種材料を混合した液に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加して、これを塗布液とした。
【0098】
〔実験7〕
下記の保護層用塗布液を使用した以外は、全て実験1と同様に積層シートを作製した。
【0099】
〔保護層用塗布液〕
・バインダ(ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ハイドラン AP40F、固形分22%) 659質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
36.3質量部
・架橋PMMA微粒子(綜研化学(株)製、MX−300、平均粒径3μm) 1.5質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.0質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
1.0質量部
上記の各種材料を混合した液に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加して、これを塗布液とした。
【0100】
〔実験8〕
保護層用のバインダを、ポリエステル樹脂バインダ(大日本インキ化学工業(株)製、ファインテックス ES−650、固形分29%、ガラス転移温度30℃)に変える以外は、全て実験1と同様に積層シートを作製した。
【0101】
〔実験9〕
下記の保護層用塗布液を使用する以外は、全て実験1と同様に積層シートを作製した。なお、保護層を形成する際には、実験1と同様に下塗り層を設けた支持体を搬送速度70m/分条件で搬送しながら、下塗り層とは対向する支持体の面に対し、727J/m条件下でコロナ放電処理を行った。そして、下記組成からなる塗布液をバーコート法により、塗布量13.8cc/mとなるよう塗布した後、これを180℃で1分乾燥することにより乾燥膜厚2μmの保護層を形成して、これを積層シートとした。
【0102】
〔保護層用塗布液〕
・バインダ(ポリエステル樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、ファインテックス ES−650、固形分29%、ガラス転移温度30℃) 500質量部
・架橋剤(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
36.3質量部
・架橋PMMA微粒子(綜研化学(株)製、MX−300、平均粒径3μm) 1.5質量部
・界面活性剤1(日本油脂(株)、ラピゾールB−90、アニオン性) 1.0質量部
・界面活性剤2(三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、ノニオン性)
1.0質量部
上記の各種材料を混合した液に、総量が1000質量部となるように蒸留水を添加して、これを塗布液とした。
【0103】
各実験の主な製造条件、並びに上記の各評価結果を、表1にまとめて示す。
【0104】
【表1】

【0105】
なお、表1中の符号は、以下の通りである。
A−1:MX−300(綜研化学(株)製、架橋PMMA微粒子)
A−2:エポスターM−30(日本触媒(株)製、ベンゾグアナミン樹脂微粒子)
A−3:トスパール120(東芝シリコーン(株)製、シリコーン微粒子)
A−4:MX−501(綜研化学(株)製、架橋PMMA微粒子)
A−5:UNF1008(日本ゼオン(株)製、ポリスチレン微粒子)
B−1:セロゾール524(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物 固形分30%)
B−2:KF−412(信越化学工業(株)製、変性シリコーンオイル)
【0106】
以上の結果から、実験1〜9により得られる積層シートは、いずれも透明度が高いものであった。また、引っかき強度の指標である最低荷重を測定したところ、実験1〜5では、最低荷重の大きさから、いずれも引っかき強度は高い値を示したが、その一方で、実験6〜9では、最低荷重が非常に小さくなり、引っかき強度は低い値を示した。
【0107】
優れた評価結果が得られた実験1〜5の積層シートの下塗り層の上に、下記の塗布液を使用して光拡散層を設けることにより、図3に示すような拡散シートを作製した。そして、各拡散シートをサンプルとして、後述の方法により光拡散の度合い及び輝度を測定し、光学特性を評価した。
【0108】
〔光拡散層〕
下記組成の光拡散層塗布液及び架橋剤液を、ポンプにより各流量が光拡散層塗布液100gに対し架橋剤液9.98gとなるように送液しながら、両者をスタチックミキサー(φ3.4−N60S−523−F、ノリタケカンパニーリミテッド社製)にて混合した。そして、この混合液を作製してから3分後に、積層シートの下塗り層側に塗布量が64.4cc/mとなるように塗布して、これを120℃で2分間乾燥させることで光拡散層を形成した。
【0109】
〔光拡散層用塗布液〕
・メチルエチルケトン 1,130g
・アクリル樹脂(アクリディックA811BE、大日本インキ化学工業株式会社製)50質量%溶液(水酸基価17、酸価3) 501.6g
・ジュリマーMB−20X(ポリメチルメタクリレート架橋タイプの有機微粒子、日本純薬(株)製、平均粒径18μmの球状微粒子) 421.3g
・F780F(大日本インキ化学工業(株)製、メチルエチルケトンの30質量%溶液)
0.97g
【0110】
〔架橋剤液〕
・メチルエチルケトン 1039g
・イソシアネート化合物(タケネートD110N、三井武田ケミカル(株)製)352g
【0111】
〔光拡散性の測定〕
C光源におけるヘイズ値(%)をヘイズメーター(スガ試験機社製)にて測定した。なお、この値が大きいほど光拡散性に優れることを意味する。
【0112】
〔正面輝度上昇率の評価〕
図4に示すLCD用直下型のバックライトユニットを光源として使用し、このバックライトユニットの拡散板の上に、上記の拡散シ−トを載せて、輝度計(BM−7、トプコン製)により正面輝度(K)を測定した。また、同様に、積層シ−トのない時の正面輝度(K)を測り、K/Kを正面輝度上昇率として求めた。なお、図4のランプ35としては、冷陰極管を使用した。
【0113】
上記の各測定の結果、先ず、実験1〜5の積層シートから得られた拡散シートのヘイズは、順に89.3%、89.1%、89.2%、88.9%、89.7%であり、いずれも優れた光拡散性を示した。また、正面輝度上昇率は、順に1.32、1.31、1.31、1.31、1.34となり、いずれも高画質を提供することができるレベルであった。以上の結果から、所定の成分を含有させた保護層が形成されている面とは反対側である支持体の表面に拡散層のような光学機能層を形成すると、透明度が高く、かつ耐傷性に優れる光学シートを得ることができることを確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る積層シートの一例を示す概略の断面図である。
【図2】保護層を2層構造とした積層シートの一例を示す概略の断面図である。
【図3】光拡散層を有する拡散シートの一例を示す概略の断面図である。
【図4】拡散シートを構成部材とするバックライトユニットを示す概略の斜視図である。
【符号の説明】
【0115】
10,17 積層シート
11、21 支持体
12 光学機能層
13、16、23 保護層
14 微粒子含有層
15 表面層
20 拡散シート
22 光拡散層
30 バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなる支持体と、
前記支持体の一方の面に配される光学機能層と、
前記支持体の他方の面に配され、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機の微粒子、及び滑り剤を含む保護層とを有することを特徴とする光学用積層シート。
【請求項2】
前記支持体が2軸延伸されたものであることを特徴とする請求項1記載の光学用積層シート。
【請求項3】
前記滑り剤が、ワックス、シリコーン化合物、下記の化1に示される一般式I、II、IIIのいずれかに表される化合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2記載の光学用積層シート。
【化1】

ただし、Rは置換又は無置換のアルキル基、nは3から20の整数、Mは一価の金属原子を表す。
【請求項4】
前記微粒子が、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカのうち少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の光学用積層シート。
【請求項5】
前記微粒子の平均粒径が0.05μm以上20.0μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の光学用積層シート。
【請求項6】
前記微粒子が、異なる平均粒径を有する単分散微粒子を2種以上混合したものであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の光学用積層シート。
【請求項7】
前記保護層が、ガラス転移温度が40℃以上のポリマーであるバインダ、有機又は無機の微粒子を含む微粒子含有層と、この微粒子含有層の上にバインダ、滑り剤を含む表面層の2層の積層体からなることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の光学用積層シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載される光学用積層シートを有することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−74083(P2008−74083A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61241(P2007−61241)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】