説明

光学異方性膜、その製造方法、及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】液晶表示装置の光学補償等に有用な、新規な光学異方性膜を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学異方性膜である。式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を表し;Xは、単結合、−O−、−CO−、−NR6−(R6は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR7)−(R7はアルキル基又はアリール基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し;Aは−COO−、−OCO−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基、オキサジアゾール基又はアルキニレン基を表し;Zは、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し;n1、n2及びn3は0〜4の整数を表し;ならびにl、m及びnは0〜4の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜、その製造方法、及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、種々のモードの液晶表示装置が提案されている。中でもVA(Vertically Aligned)モードは、広視野角モードとして全方位にわたり広いコントラスト視野角特性を有するようになり、テレビ用途として既に家庭に普及しており、さらには近年30インチを超える大サイズディスプレイも登場してきた。VAモード液晶表示装置では、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及びカラーシフトを軽減するため、種々の特性の光学異方性膜等が光学補償に利用されている。
【0003】
例えば、VAモード液晶表示装置の色視野角特性の改善に寄与する光学補償シートとして、所定の光学特性を満足する位相差板が提案され、その材料として変性ポリカーボネートが用いられている(特許文献1)。
また、R、G、Bの3色に対して独立に補償する方式も提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。これは主に液晶セル内にカラーフィルタなどと一緒に位相差層をパターニングする方法により実現される。しかしながら、液晶セル内で位相差層をパターニングするためには、例えば、セル内で配向膜層の形成、ラビング処理、重合性液晶組成物の塗布、配向、固定化、及びレジスト層の形成、エッチング処理、レジスト層の剥離除去など煩雑な操作が必要であり、そのため、光学的に均一な位相差特性を有する光学異方性層を形成することは困難である。また、レジストパターンを形成する際にもたらされる熱やフォトレジスト溶媒のため、位相差層の位相差がエッチングの前後で変化してしまう場合があり、問題があった。
【0004】
一方、位相差フィルムの材料として、光照射と加熱による分子運動とそれに基づく分子配向により複屈折を誘起する材料であって、ナフチルアクリロイルまたはその誘導体、もしくはビフェニルアクリロイルまたはその誘導体を含有することを特徴とする複屈折誘起材料が提案されている(特許文献9、特許文献10)。
【特許文献1】特開2004−37837号公報
【特許文献2】GB2394718
【特許文献3】特開2004−240102号公報
【特許文献4】特開2005−4124号公報
【特許文献5】特開2005−24919号公報
【特許文献6】特開2005−24920号公報
【特許文献7】特開2006−78647号公報
【特許文献8】特開2006−64858号公報
【特許文献9】特開2004−258426号公報
【特許文献10】特開2006−308878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この複屈折誘起材料を用いれば、パターニング技術を利用しなくても、液晶セル内の、各画素に対応する微細領域に、所望の光学特性の位相差層を形成できる。
しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記特許文献9及び10で提案されている材料では、光学補償に必要な所望の位相差が得られない場合があり、また、液晶セルの作製工程中に施される加熱処理、溶媒処理等の種々の処理によって、位相差が変化してしまうという問題があることがわかった。
本発明は、液晶表示装置の光学補償等に有用な、新規な光学異方性膜、及びその製造方法、及びその作製に用いられる高分子化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶セル内に容易に形成可能であり、しかも光学特性の変動が軽減された光学異方性膜を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶セルが正確に光学的に補償され、且つ生産性に優れ、色視野角特性が改善された液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 下記式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学異方性膜。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を表し;Xは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し;Aは−COO−、−OCO−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基、オキサジアゾール基又はアルキニレン基を表し;Zは、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し;n1、n2及びn3は0〜4の整数を表し;ならびにl、m及びnは0〜4の整数を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR6−(R6は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR7)−(R7はアルキル基又はアリール基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。)
【0007】
[2] 前記化合物が、前記一般式(1)で表される部分構造を側鎖中に有する高分子化合物であることを特徴とする[1]の光学異方性膜。
[3] 前記高分子が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする[1]の光学異方性膜。
【化2】

(式中、R4は、水素原子又は置換基を表し、その他の記号については、前記一般式(1)中のそれぞれと同義である。)
【0008】
[4] 前記高分子化合物が、下記一般式(5)及び/又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする[2]又は[3]の光学異方性膜。
【化3】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基を表す。)
【化4】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基を表し、S6は二価の連結基を表し、P1は重合性基を示す。)
【0009】
[5] 前記化合物を含有する組成物に少なくとも偏光を照射して形成されたことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学異方性膜。
[6] 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20nm〜300nmであることを特徴とする[5]の光学異方性膜。
[7] 正のAプレートであることを特徴とする[5]又は[6]の光学異方性膜。
[8] Nz値(但し、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5;Rth(550)は波長550nmの厚み方向のレターデーションであり、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーションである)が1.1〜7.0であることを特徴とする[5]又は[6]の光学異方性膜。
[9] ラビング処理面上で前記化合物を含有する組成物に少なくとも偏光を照射して形成されたことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学異方性膜。
[10] Nz値が1.1〜7.0であることを特徴とする[9]の光学異方性膜。
[11] Nz値が0.1〜0.9であることを特徴とする[5]又は[6]の光学異方性膜。
[12] 基板と、該基板上に[1]〜[11]のいずれかの光学異方性膜とを有する液晶セル用基板。
[13] [1]〜[11]のいずれかの光学異方性膜を有する液晶表示装置。
[14] VAモード液晶表示装置であることを特徴とする[13]の液晶表示装置。
[15] IPSモード液晶表示装置であることを特徴とする[13]の液晶表示装置。
[16] 前記光学異方性膜を、液晶セル内に有することを特徴とする[13]〜[15]のいずれかの液晶表示装置。
[17] 前記光学異方性膜が、液晶セル内の各画素に対応する各領域に配置されていることを特徴とする[16]の液晶表示装置。
[18] [7]の光学異方性膜からなる第1の光学異方性層と、Rth(550)が20〜300nmである第2の光学異方性層とを有することを特徴とする[13]〜[17]のいずれかの液晶表示装置。
[19] [1]中に記載の一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも含有する組成物に、少なくとも偏光を照射することで複屈折を発現させることを含む光学異方性膜の製造方法。
[20] [1]中に記載の一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも含有する組成物を、ラビング処理面上に配置すること、及び該ラビング処理面のラビング方向と異なる方向から偏光を照射することにより複屈折を発現させることを含む光学異方性膜の製造方法。
【0010】
[21] 下記一般式(2)で表される繰り返し単位を少なくとも有する重合体。
【化5】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を表し;R4は、水素原子又は置換基を表し;Xは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し;Zは、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し;n1、n2及びn3は0〜4の整数を表し;ならびにl、m及びnは0〜4の整数を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR6−(R6は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR7)−(R7はアルキル基又はアリール基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。)
【0011】
[22] 下記一般式(5)及び/又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位をさらに有することを特徴とする[21]の重合体。
【化6】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基を表す。)
【化7】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基を表し、S6は二価の連結基を表し、P1は重合性基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液晶表示装置の光学補償等に有用な、新規な光学異方性膜、及びその製造方法、及びその作製に用いられる高分子化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、液晶セル内に容易に形成可能であり、しかも光学特性の変動が軽減された光学異方性膜を提供することができる。
また、本発明によれば、液晶セルが正確に光学的に補償され、且つ生産性に優れ、色視野角特性が改善された液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において、重合体には、1種類のモノマーからなる重合体のほか、2種類以上のモノマーからなるいわゆる共重合体も含む趣旨である。また、本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。よって、例えば、「炭素数A〜Bのアルキル基」と言う場合、該アルキル基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、置換基を有する場合は、該置換基中の炭素数も、炭素数A及びBに含まれると解釈する。
【0014】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーション(nm)及び厚さ方向のリターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定するができる。測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
【0015】
【数1】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表し、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0016】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0017】
また、Rthの符号は面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+20°傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて測定した位相差がReを超える場合を正とし、Reを下回る場合を負とする。但し、|Rth/Re|が9以上の試料では、回転自由台座付きの偏光顕微鏡を用いて、面内の進相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した状態で、偏光板の検板を用いて決定できる試料の遅相軸がフィルム平面に平行にある場合を正とし、また遅相軸がフィルムの厚み方向にある場合を負とする。
【0018】
また、本明細書におけるλは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmを指し、特に色に関する記載がなければ545±5nm又は590±5nmを指す。
また、本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、Reが0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、波長550nmを指す。また、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0019】
[光学異方性膜]
本発明は、下記式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学異方性膜に関する。下記部分構造は偏光照射によって配向し、複屈折を発現する。したがって、配向膜がなくても、所望の光学特性を示す光学異方性膜を形成することができ、例えば、パターニングなどの技術を利用せずに、微細な光学異方性膜を形成可能である。
【0020】
【化8】

【0021】
式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を表し;Xは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し;Aは−COO−、−OCO−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基、オキサジアゾール基又はアルキニレン基を表し;Zは、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し;n1、n2及びn3は0〜4の整数を表し;m及びnは0〜4の整数を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR6−(R6は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR7)−(R7はアルキル基又はアリール基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
【0022】
1、R2及びR3で表される置換基としては以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0023】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0024】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0025】
1、R2及びR3で表される置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、又はハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。R1、R2及びR3は、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であるのが好ましい。
n1、n2及びn3はそれぞれ0〜3であるのが好ましく、0〜2であるのが好ましい。即ち、R1、R2及びR3が存在しない(n1、n2又はn3は0)か、又はR1、R2及びR3がそれぞれ存在する場合は、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であるのが好ましい。
【0026】
Xは、−O−、−CO−、−NR6−、アルキレン基、又はアリーレン基を含むことが好ましく、−O−、−CO−、−NR6−、アルキレン基を含んでいることが特に好ましく、−O−、−CO−、アルキレン基を含んでいることがよりさらに好ましい。Xがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例には、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基が含まれる。Xが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。Xが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Xとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。
lは、0〜4の整数を表し、好ましくは0又は1である。
【0027】
Aは−COO−、−OCO−、フェニレン基、オキサジアゾール基、アルキニレン基を表す。nは0〜4の整数を表し、好ましくは0又は1である。nが0の場合は、二つのベンゼン環は、単結合によって結合したビフェニル構造となる。フェニレン基は置換基を有していてもよく、該置換基の例は、R1、R2及びR3の例と同様であり、好ましい例も同様である。
【0028】
また、Zは、置換もしくは無置換の、アルキル基又はアリール基を表す。Zで表されるアルキル基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。アルキル基は、分岐していてもまた環状であってもよい。Zで表されるアリール基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリール基の具体例として、フェニル基、ナフタレン基等が挙げられる。Zは好ましくはアルキル基である。Zで表されるアルキル基、アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、R1、R2及びR3の例が含まれる。Zが置換基を有するアルキル基又はアリール基である場合は、該置換基は、重合性基を含んでいてもよい。重合性基を含んでいると、硬膜性が高くなり、また光学特性の変動もより軽減できるので好ましい。また、前記化合物は重合性基を2以上含んでいてもよく、例えば、一方の末端であるZ中に重合性基を含むとともに、他末端であるX側の末端部にも重合性基を有していてもよい。
重合性基としては特に限定されないが、付加重合(開環重合を含む)反応又は縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0029】
【化9】

【0030】
重合性基としては、ラジカル重合又はカチオン重合する重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、(メタ)アクリレート基を挙げることができる。カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。なかでも脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。上記した通り、前記化合物は、重合性基を2種以上含んでいてもよく、その場合は、ラジカル重合性基とカチオン重合性基等、重合反応機構が異なる重合性基を有しているのが好ましい。
【0031】
mは0〜4の整数を表し、好ましくは0又は1である。
【0032】
以下に、前記一般式(1)の構造を有する化合物の具体例を挙げるが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
本発明の光学異方性膜の形成には、A−1〜A−10に示す様な重合性モノマーを、そのまま用いてもよいし、一旦、単独で重合させた重合体もしくは他の重合性モノマーと共重合させた重合体を用いてもよい。また、上記具体例中、例えばA−10の様に、2種の重合性基、例えば、一方はラジカル重合性基で他方はカチオン重合性基、を有するモノマーについて、一般式(1)の部分構造には含まれない重合性基(例示化合物A−10ではラジカル重合性基)を重合させて得られた重合体を、光学異方性膜の形成に用いると、前記式(1)の部分構造を偏光照射等によって配向させた後、他の重合性基(例示化合物A−10ではカチオン重合性基)を重合させることで、より耐久性に優れた光学異方性膜が得られるので好ましい。
【0036】
本発明の光学異方性膜の形成に用いられる化合物の一例は、前記一般式(1)で表される部分構造を側鎖中に有する高分子化合物であり、具体的には、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む重合体である。好ましくは、下記一般式(1)’で表される繰り返し単位を有する重合体であり、より好ましくは、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体である。
【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
前記式中、R4は、水素原子又は置換基を表し、その他の記号については、前記一般式(1)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
4が表す置換基の例は、R1、R2及びR3が表す置換基の例として上記で例示したものと同様である。R4は、水素原子又はアルキル基であるのが好ましく、水素原子又はメチル基であるのがより好ましい。
【0040】
前記重合体は、前記一般式(1)’又は(2)で表される繰り返し単位の1種のみからなっていてもよいし、2種以上からなっていてもよい。また、前記重合体は、前記一般式(1)’又は(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、種々のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位から選択するのが好ましい。
以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。
【0041】
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
【0042】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
【0043】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
【0044】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
【0045】
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
【0046】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
【0047】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;及び
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
【0048】
特に好ましくは、下記一般式(5)で表される繰り返し単位である。
【0049】
【化14】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基を表す。)
5が表す置換基の例には、前記一般式(1)中のR1等の置換基の例として例示したものが含まれる。中でも、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。
5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、塩素原子がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましい。
【0050】
5は、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環残基、−CO−、−NR15−(R15は炭素数が1〜6のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、可能であれば、置換基(アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基等)によって置換されていてもよいが、無置換であることが好ましい。
5としては、−O−、−CO−、−NR15−(R15は炭素数が1〜6のアルキル基又は水素原子)、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいることが好ましく、−O−、−CO−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。さらに、S5は、−O−、−CO−、アルキレン基又はアリーレン基のみから構成されていることが好ましい。
【0051】
5で表されるメソゲン基としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)などに記載の構造を用いることができる。
より好ましくは、下記一般式(6)で表されるメソゲン基である。
【0052】
【化15】

【0053】
一般式(6)中、L1及びL2は、それぞれ、単結合又は二価の連結基を表し、Cy1、Cy2及びCy3は、それぞれ、二価の環状基を表し、pは0〜2の整数を表す。pが2の場合、2つのL2は同じであっても異なっていてもよく、2つのCy2も同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
一般式(6)中、L1又はL2は、好ましくは、それぞれ、−O−、−S−、−CO−、−NR16−、二価の鎖状基、二価の環状基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基、又は、単結合である。上記R16は、炭素数1〜7のアルキル基又は水素原子であり、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基又は水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
二価の鎖状基は、アルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基が好ましく、これらは、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子が好ましい。アルキレン基又はアルケニレン基が好ましく、無置換のアルキレン基又は無置換のアルケニレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、分岐を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
【0055】
アルキニレン基は、分岐を有していてもよい。アルキニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
二価の鎖状基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、2−メチル−テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2−ブテニレン基、2−ブチニレン基などが挙げられる。
二価の環状基は、後述するCy1、Cy2及びCy3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0056】
一般式(6)においてpは、0又は1であることが好ましい。
【0057】
一般式(6)において、Cy1、Cy2及びCy3は、それぞれ独立に二価の環状基である。環状基に含まれる環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。環状基に含まれる環は、単環でも縮合環でもよく、単環が好ましい。環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環及び複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環及びナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環及びピリミジン環が含まれる。ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素数が2〜6のアシルアミノ基が含まれる。
【0058】
上記一般式(5)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(7)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0059】
【化16】

【0060】
式中、前記一般式(5)中の記号と同一の記号は、それぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。S6は二価の連結基を表し、前記一般式(5)中のS5と同義であり、好ましい範囲も同様である。P1は重合性基を示す。P1で表される重合性基の例には、前記一般式(1)中のZに含まれる重合性基の例として例示したものが含まれ、その好ましい範囲も同一である。
【0061】
以下に、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げるが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0062】
【化17】

【0063】
【化18】

【0064】
前記重合体中、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位は、全繰り返し単位の総量の3mol%以上であるのが好ましく、5mol%以上であるのが特に好ましく、10mol%以上であるのがさらに好ましい。勿論、該繰り返し単位が100モル%であってもよいが、光学異方性の発現性の点では他の繰り返し単位を含んでいるのが好ましく、具体的には、他の繰り返し単位を10〜97モル%程度含んでいるのが好ましい。
特に、後述するNz値を高めるためには、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位のmolを上げてゆけばよい。該Nz値が1.1〜7.0である光学異方性膜の形成に用いる重合体は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を、16〜75mol%含有しているのが好ましい。
【0065】
以下に、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位(一般式(1)’及び(2)で表される繰り返し単位)を含む重合体の具体例を挙げるが、以下の具体例に制限されるものではない。尚、式中の数字は各繰り返し単位のモル百分率を示す。
【0066】
【化19】

【0067】
【化20】

【0068】
【化21】

【0069】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する重合体、例えば、一般式(1)’及び(2)で表される繰り返し単位を有する重合体は、種々の方法で製造することができる。例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、又は、アニオン重合などの重合方法を用いることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用でき、特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤やラジカル光重合開始剤などの公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなど)ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなど)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなど)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなど)パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレートなど)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルなど)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなど)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、一種を単独で使用することもできるし、或いは二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
上記ラジカル重合方法は、特に制限されるものではなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などを取ることができる。典型的なラジカル重合方法である溶液重合については、さらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子化学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)などに記載されている。
【0071】
上記溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機溶媒が望ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、一種単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0072】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で10分〜30時間加熱することが望ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも不活性ガスパージを行うことが望ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0073】
前記重合体を好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法を利用するのが有効である。上記連鎖移動剤としては、メルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノールなど)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなど)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され、精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01mol%〜50mol%程度であり、好ましくは0.05mol%〜30mol%、特に好ましくは0.08mol%〜25mol%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
【0074】
前記重合体の分子量については特に制限はないが、一般的に高分子として認識される分子量10000以上の範囲であるのは勿論のこと、分子量が1000以上10000未満の準高分子として認識される範囲、及び重合度が2〜20程度のオリゴマーとして認識される範囲も含むものとする(岩波理化学辞典、第3版増補版、玉虫文一ら編集、449頁、岩波書店、1982)。即ち、本明細書で「高分子」及び「重合体」というときは、分子量が1000以上で、かつ重合度が20以上であるものを意味するものとする。前記重合体は、質量平均分子量は1,000〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることが特に好ましく、5,000〜100,000であることがよりさらに好ましい。上記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定できる。
特に、後述するNz値を上げるためには、一般式(1)で表される部分構造を有する重合体の分子量を上げて行けばよい。該Nz値が1.1〜7.0である光学異方性膜の形成に用いられる重合体は、その質量平均分子量が、20000〜250000であることが好ましい。
【0075】
本発明の光学異方性膜は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物のみからなっていてもよいし、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物以外の材料を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。前記光学異方性膜中、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物の含有量は、50〜100質量%であるのが好ましく、80〜100質量%であるのがより好ましい。
前記光学異方性膜は、例えば、液晶性化合物の少なくとも一種を含んでいてもよい。
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本態様では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、重合性基を有する棒状液晶性化合物がより好ましく、2種以上を併用する場合、少なくとも1つは1液晶分子中の重合性基が2以上あることがさらに好ましい。
【0076】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の重合性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の重合性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
【0077】
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表すが、L3及びL4の少なくとも一方は、−O−又はO−CO−O−が好ましい。A1及びA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
【0078】
以下に、上記一般式(I)で表される重合性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、重合性基である。重合性基は付加重合反応又は縮合重合反応が可能な重合性基であることが好ましい。例えば、前記一般式(1)の部分構造中(具体的にはZ中)に重合性基を有する場合は、該重合性基と重合反応可能な重合性基であってもよい。以下に重合性基の例を示す。
【0079】
【化22】

【0080】
1、L2、L3及びL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、及びNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基又は水素原子である。この場合、L3及びL4の少なくとも一方は、−O−又はO−CO−O−(カーボネート基)であることが好ましい。前記式(I)中、Q1−L1及びQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−及びCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0081】
1及びA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12の脂肪族基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子又は硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
【0082】
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5n−W2
式中、W1及びW2は各々独立して、二価の環状脂肪族基、二価の芳香族基又は二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合又は連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、及びO−CH2−が挙げられる。nは1、2又は3を表す。
【0083】
1及びW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体及びシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1及びW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
【0084】
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0085】
【化23】

【0086】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報に記載の方法で合成することができる。
【0087】
【化24】

【0088】
【化25】

【0089】
【化26】

【0090】
【化27】

【0091】
【化28】

【0092】
【化29】

【0093】
前記光学異方性膜中の棒状液晶化合物の添加量は、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%程度以上であり、特に好ましくは10質量%程度以上である。
【0094】
前記光学異方性膜は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物の配向性、所望により添加される液晶性化合物の配向性の改善のために、配向剤を含有していてもよい。例えば、下記一般式(11)〜(13)で表される化合物の少なくとも一種を含有させることで、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を実質的に水平配向させることができる。
以下、下記一般式(11)〜(13)について、順に説明する。
【0095】
【化30】

【0096】
式中、R11、R12及びR13は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X11、X12及びX13はそれぞれ単結合又は二価の連結基を表す。R11〜R13で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X11、X12及びX13で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0097】
【化31】

【0098】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R11、R12、及びR13で表される置換基の好ましい範囲として挙げてものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0099】
【化32】

【0100】
式中、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R14、R15、R16、R17、R18及びR19でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(7)におけるR11、R12及びR13で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−099248号公報の[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0101】
前記一般式(11)〜(13)のいずれかで表される化合物の添加量としては、前記一般式(1)の部分構造を有する化合物の全質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(11)〜(13)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明の光学異方性膜の製造方法の一例は、前記一般式(1)の部分構造を有する化合物を含有する組成物を調製し、該組成物を表面に塗布・乾燥した後、偏光照射して、前記式(1)の部分構造を配向させて、複屈折を発現することを含む方法である。前記式(1)の部分構造は、偏光照射によって、光配向し、面内レターデーションを発現する。前記化合物を含有する組成物を塗布、乾燥した後、他の処理(例えば、硬化処理等)をする前に、偏光照射最初に行うことが好ましい。該偏光照射の照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。
照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0103】
偏光照射後に加熱すると、配向が熟成されて、より大きな面内レターデーションを得ることができる。
加熱温度は50℃〜250℃であることが好ましく、より好ましくは50℃〜200℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。
加熱時間については特に制限はない。一例としては、後述するNz値が1.1〜7.0である光学異方性膜を形成する際には、加熱時間は1秒〜5分であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0104】
偏光照射し複屈折を発現させた後、好ましくはさらにその後加熱熟成させた後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射して、含有されるいずれかの成分が有する重合性基の反応を進行させ、さらに硬化させるのが好ましい。硬化させると、さらに耐熱性を高めることができる。硬化のための照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0105】
上記した通り、前記化合物等のいずれかの成分が重合性基を有し、前記組成物が硬化性である場合は、複屈折を発現させた後に、重合反応を進行させるのが好ましい。利用される重合反応は、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応のいずれでもよいが、光重合反応がより好ましい。重合反応を進行させるためには、前記組成物は重合開始剤を含有しているのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
【0106】
光重合開始剤の使用量は、前記化合物を含有する組成物中、固形分として0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0107】
本発明の光学異方性膜を形成するのに用いる組成物は、塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)、1,4−ブタンジオールジアセテートが含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
前記組成物の表面への塗布は、従来公知の種々の方法で行うことができる。後述する様に、本発明の光学異方性膜を液晶セル内に配置して、各画素に対応する領域ごとに形成する場合は、インクジェット方式を利用して、表面に塗布するのが好ましい。
【0108】
また、前記組成物をラビング処理面へ塗布して、一旦所定の方向に液晶分子を配向させた後、偏光を照射して、所望の光学特性を発現させてもよい。この方法では、ラビング方向とは異なる角度から偏光を照射することが好ましい。
【0109】
本発明の光学異方性膜の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0110】
[光学異方性膜の光学特性及び用途]
本発明の光学異方性膜は、面内レターデーションReが発現しているので、例えばAプレート等の一軸性フィルム、又は二軸性フィルムに要求される特性を満足し得る。
Aプレートは、一般的には、nx>ny=nzの光学特性を満足するものと理解されているが、本明細書では、Re(550)が20〜300nm程度であり、Nz値(但し、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5)が0.9〜1.1程度の特性を示すものは、Aプレートの範囲に含まれるものとする。本発明の光学異方性膜は、Aプレートして機能し得るので、例えば、従来用いられているAプレートの代替として、液晶表示装置の光学補償に利用することができ、特にVAモードの液晶表示装置の光学補償に用いるのに適する。本発明の光学異方性膜をAプレートして(例えば、VAモードの液晶表示装置の光学補償に)利用する場合は、Re(550)は、50〜200nmであるのが好ましく、70〜200nmであるのがより好ましい。
二軸性フィルムは、一般的には、nx、ny及びnzが全て異なるものと理解されている。一例としては、nx>ny>nzを満足する光学特性を示すものが挙げられる。本発明の光学異方性膜は、Re(550)が20〜300nm程度であり、Nz値(但し、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5)が、1.1〜7.0程度の特性を示す二軸性フィルムとして機能し得る。即ち、本態様の本発明の光学異方性膜は、従来用いられている二軸性フィルムの代替として、液晶表示装置の光学補償に利用することができ、特にVAモードの液晶表示装置の光学補償に用いるのに適する。本発明の光学異方性膜を二軸性フィルムとして(例えば、VAモードの液晶表示装置の光学補償に)利用する場合は、Nzは、1.5〜7.0であるのが好ましく、2.0〜6.0であるのが好ましい。また、Re(550)は、20〜300nmであることが好ましく、20〜200nmであるのがより好ましく、20〜100nmであるのがよりさらに好ましい。
また、二軸性フィルムの他の例として、nx>nz>nyを満足する光学特性を示すものが挙げられる。本発明の光学異方性膜は、作製に用いる前記重合体の共重合比や分子量を調整することで、この性質を満足する二軸性フィルムとしても機能し得る。即ち、即ち、本態様の本発明の光学異方性膜は、従来用いられているnx>nz>nyを満足する二軸性フィルムの代替として、液晶表示装置の光学補償に利用することができ、特にIPSモードの液晶表示装置の光学補償に用いるのに適する。IPSモードの液晶表示装置の光学補償に用いる光学異方性膜は、Nzは0.1〜0.9であるのが好ましく、
0.3〜0.7であるのがより好ましい。また、Re(550)が200〜400nmであるのが好ましい。
【0111】
本発明の光学異方性膜は、配向膜を必要とせずに、偏光を利用して、所望の光学特性を発現できるので、微細な領域ごとに形成するのに有利であり、特に、液晶セル内の各画素に対応した領域に形成するのに有利である。勿論、液晶セル内の各画素に対応した領域に本発明の光学異方性膜を形成する場合も、上記した通り、各領域に配向膜を形成し、配向膜上で一旦液晶分子を配向させた後、偏光照射を行ってもよい。
液晶セル内に形成する態様では、前記光学異方性膜の光学特性は、R光、G光及びB光が入射した際の視野角補償に最適な光学特性にそれぞれ調整されているのが好ましい。即ち、カラーフィルタ層のR層に対応する領域に形成する光学異方性膜は、その光学特性が、R光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整され、G層に対応する領域に形成する光学異方性膜の光学特性は、G光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整され、かつB層に対応する領域に形成する光学異方性膜の光学特性は、B光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整されているのが好ましい。光学異方性膜の光学特性は、例えば、前記式(1)の部分構造を有する化合物の種類や、配向制御剤の種類又はその添加量、膜厚、及び偏光照射条件のいずれかによって好ましい範囲に調整することができる。
また、光学異方性膜そのものをカラーフィルタとしても機能させてもよい。その場合は、光学異方性膜形成用の組成物中に、R色、G色及びB色それぞれの顔料等を添加する。
【0112】
本発明の光学異方性膜を、液晶セル基板の表面上に、各画素に対応する領域ごとに形成する方法の一例として、インクジェット方式を利用する方法が挙げられる。より具体的には、前記式(1)の部分構造を有する化合物を含有する流体を、ブラックマトリクスによって隔てられた領域内にインクジェット方式で塗布し、その後、偏光照射によって所望の光学特性を発現させた後、所望により加熱熟成して作製することができる。より耐久性を改善するために、電離放射線を照射して、膜中の成分の重合反応を進行させて、該配向状態を固定するのが好ましい。
【0113】
以下に、本発明の光学異方性膜を内部に有する液晶セルの作製方法の一例を、図1を参照して詳細に説明する。
ガラス等からなる透明基板11上に、例えば、ネガ型ブラックマトリクスレジスト材料を使用し、フォトリソ法を用いてドットパターンのブラックマトリクス12(隔壁)を形成し、隔壁12によって隔てられた複数の微細領域aを形成する(図1(a))。尚、ブラックマトリクス12の形成においては、ブラックマトリクスの形成材料及び形成プロセスについては特に限定はなく、レジスト材料によるフォトリソ法を利用する方法以外の方法であっても、ブラックマトリクスパターンが形成できれば問題ない。ブラックマトリックス12のパターンは、ドットパターンに限定されるものではなく、形成するカラーフィルタの配列については特に制限はなく、ドット配列、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等いずれであってもよい。
【0114】
ブラックマトリックス12は、パターン形成後にF原子を含むガス(CF4等)でプラズマ処理され、その表面が撥インク化処理されるのが好ましい。ブラックマトリクス12の撥インク化処理は、上記プラズマ処理以外に、ブラックマトリクス材料中に撥インク剤を含有させてもよいし、ブラックマトリックスを、ガラス基板11に対して撥インク性を示す材料から形成してもよい。
【0115】
次に、所望により撥インク化処理したブラックマトリクス12で隔てられた微細領域aへ、前記式(1)の部分構造を有する化合物を含有する流体13’を、インクジェット装置を用いて吐出して、微細領域a内に前記流体からなる層(図1(b))を形成する。前記溶液の吐出が完了した後、偏光照射することによって、複屈折を発現し、光学異方性膜13を形成する(図1(c))。偏光照射前、偏光照射中、又は偏光照射後に所望により加熱してもよく、その場合は、加熱装置を使用してもよい。
【0116】
このようにして形成された1層目の光学異方性膜13の上に、カラーフィルタ用インク液14’によって2回目のインク吐出を行い(図1(d))、これを乾燥、及び所望により露光等して、2層目のカラーフィルタ層14が形成される((e))。
【0117】
光学異方性膜13及びカラーフィルタ層14を形成する際のインク等の射出条件については特に制限されないが、光学異方性膜形成用の流体やカラーフィルタ層形成用のインクの粘度が高い場合は、室温あるいは加熱下(例えば、20〜70℃)において、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。インク等の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク等の温度を出来るだけ一定に保つのが好ましい。
【0118】
前記インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)は、特に制限されず、公知の種々のものを使用することができる。コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号公報に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドは組成物の温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sとなるよう射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるよう組成物温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動すること
が好ましい。
【0119】
なお、光学異方性膜13及びカラーフィルタ層14は、その形成順序が入れ替わっていてもよく、即ち、カラーフィルタ層14の上に光学異方性膜13が積層された構成であってもよい。かかる態様は、前記製造方法例において、光学異方性膜13を形成する工程とカラーフィルタ層14を形成する工程の順番を入れ替えることにより作製することができる。
また、カラーフィルタ形成用インクに前記式(1)の部分構造を有する化合物を混合して用いてもよい。
【0120】
光学異方性膜13は、同一種の溶液等の流体を用いて形成されていてもよいし、その上に形成されるカラーフィルタ層14の色相に応じて、それぞれ最適な光学異方性を発現するように、互いに異なる材料を含む及び/又は配合量が互いに異なる流体を用いて形成されていてもよい。光学異方性膜13の形成時において、カラーフィルタ層の色相に応じて異なる溶液等を用いる場合は、それぞれの溶液を全て吐出した後、同時に乾燥を行ってもよいし、1種ずつ吐出及び乾燥のプロセスを行ってもよい。また、カラーフィルタ層14の形成時においても、例えば、R層、G層、及びB層それぞれの形成用のインク液を全て吐出した後、同時に乾燥を行ってもよいし、1種ずつ吐出及び乾燥のプロセスを行ってもよい。また、カラーフィルタの色も、赤、緑、青の3色に限定される必要はなく、多原色のカラーフィルタであってもよい。
【0121】
このようにして、第一の基板の各画素に相当する、ブラックマトリックス12で隔てられた領域毎に、光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成した後、この第1の基板と、第2の基板とを貼り合わせる。貼り合わせる前に、カラーフィルタ層14の上に、透明電極層及び/又は配向層を形成してもよい。例えば、特開平11−248921号公報、特許3255107号公報に記載のように、カラーフィルタを形成する着色樹脂組成物を重ねることで土台を形成し、その上に透明電極を形成し、更に必要に応じて分割配向用の突起を重ねることでスペーサを形成することが、コストダウンの観点で好ましい。
【0122】
第1の基板と第2の基板の対向面間の空壁に、液晶材料を注入して液晶層を形成して、液晶セルを作製することができる。第一の基板は、前記光学異方性膜とカラーフィルタ層が形成された面を内側にして、即ち、対向面にして配置するのが好ましい。その後、双方の基板の外側表面に、それぞれ偏光板、光学補償フィルム等を貼り付けて、液晶表示装置を作製することができる。
【0123】
前記製造方法の例では、光学異方性膜形成用の流体、及びカラーフィルタ層形成用のインク液を所定の位置に配置するにあたって、隔壁であるブラックマトリクスを形成した後、インクジェット方式を利用しているので、第一の基板上の所定の領域に正確に光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成することができる。従って、構造を複雑化することなく、少ない工程数で製造することができる。
【0124】
なお、前記方法では、インクジェット法によるインク吐出を利用して、各微細領域に光学異方性層及びカラーフィルタ層を形成する例を説明したが、インクジェット法以外の、例えば印刷法等を利用して形成してもよい。
【0125】
[液晶セル用基板]
本発明は、基板と、その上に、本発明の光学異方性膜とを有する液晶セル用基板にも関する。本発明の液晶セル用基板の一態様は、基板と、液晶セルの視野角補償のための本発明の光学異方性膜と、カラーフィルタ層とを有し、該光学異方性膜が、その下又は上に配置されたカラーフィルタ層の色相に応じて(例えば、R、G、Bの色ごとに)、液晶セルの視野角補償に最適な光学特性を有する液晶セル用基板である。基板の材料としては透明であれば特に限定はなく、例えば、金属性支持体、金属張り合わせ支持体、ガラス、セラミック、合成樹脂フィルム等を使用することができる。複屈折が小さいことが望ましく、ガラスや低複屈折性ポリマー等が好ましい。その他、前記基板の表面には、液晶材料に対して配向規制能を有する配向膜、及び透明電極層が形成されていてもよい。
【0126】
本発明の液晶セル用基板は、前記光学異方性膜が形成された側と反対外の表面(液晶表示装置内に組み込まれるときは、液晶セル外として配置される側の表面)に、さらに第2の光学異方性層を有していてもよい。第2の光学異方性層は、液晶セル内に配置される本発明の光学異方性膜とともに、液晶セルの光学補償に寄与する。第二の光学異方性層の光学特性は、用いられる液晶表示装置のモードによって好ましい範囲が異なる。例えば、VAモード用の液晶セル基板とする場合は、基板の内側表面に、Aプレートとしての光学特性を満足する本発明の光学異方性膜を配置し、基板外側表面に負のC−プレートとして機能し得る第2の光学異方性層を配置してもよい。
【0127】
図2に本発明の液晶セル基板を有する液晶セルの一例の概略断面図を示す。
図2(a)に示す液晶セル用基板は、透明基板21上に、隔壁としてブラックマトリクス22が形成され、隔壁で隔てられた微細領域内にインクジェット方式により吐出して形成された、パターン状のカラーフィルタ層23及び光学異方性膜27が形成されている。さらにその上に透明電極層25と配向層26とを有する。図2には、R、G、Bのカラーフィルタ層23を形成した態様を示したが、R、G、B、W(白)の層からなるカラーフィルタ層を形成してもよい。光学異方性膜27はr、g、b領域に分割され、R、G、Bそれぞれのフィルタ層23の色相に対して、それぞれ最適な位相差特性を有している。
【0128】
さらに、図2(b)のように光学異方性膜27とともに光学補償に寄与する第2の光学異方性層24を液晶セル基板の外側表面に配置してもよい。第2の光学異方性層24をセル内の光学異方性膜27と同じカラーフィルタ側基板側に配置してもよいし、図は省略するが対向基板側に配置してもよい。対向基板側には一般にTFTアレイなどの駆動用電極が配置されていることが多く、対向基板上であればどの位置に配置されてもよいが、TFTを有するアクティブ駆動型の場合、光学異方性層の耐熱性からシリコン層よりも上であることが好ましい。
【0129】
[液晶表示装置]
本発明は、本発明の光学異方性膜を有する液晶表示装置に関する。前記光学異方性膜は、液晶セルの外側であって、液晶セルと偏光子との間に配置してもよいし、上記した通り、液晶セル内に配置してもよい。また、本発明の光学異方性膜とともに光学補償に寄与する第2の光学異方性層をさらに有していてもよい。
図3は本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。
図3(a)及び(b)の例はそれぞれ、図2(a)及び(b)の基板を上側基板として用い、TFT32付の透明電極層25及びその上に配向層26を有するガラス基板21を対向基板として配置し、その間に液晶31を挟んだ液晶セル37を有する液晶表示装置である。液晶セル37の両側には、セルロースアセテート(TAC)フィルム等からなる保護層34及び35に挟まれた偏光層33からなる偏光板36が配置されている。液晶セル側の保護層35は光学補償シートとしての光学特性を満足するTACフィルム等の高分子フィルムであってもよいし、保護層34と同一の高分子フィルムからなっていてもよい。図には示さないが、反射型液晶表示装置の態様では偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セルの背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を設置する。もちろんフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。さらに、表示装置の1画素内に、透過部と反射部を設けた半透過型も可能である。本液晶表示装置の表示モードは特に制限がなく、全ての透過型、半透過型、及び反射型液晶表示装置に用いることが可能である。中でも色視野角特性改良が望まれるVAモードに対して、本発明は効果を発揮する。
【0130】
本発明の液晶表示装置の一例は、VAモード液晶表示装置である。VAモード液晶表示装置には、負のC−プレート及びAプレートを光学補償に利用する方式と、二軸性フィルムを一枚光学補償に利用する方式が知られている。本発明の光学異方性膜は、いずれの方式にも利用することができ、前者ではAプレートして、後者では二軸性フィルムとして利用することができる。前者の態様で、本発明の光学異方性膜と組み合わせて利用される負のC−プレートは、一般的には、nx=ny>nzを満足する光学特性を有するものとして理解される。VAモードの液晶表示装置の光学補償に利用する負のC−プレートは、Rth(550)が、20〜300nmであることが好ましく、50〜250nmであるのがより好ましく、100〜250nmであるのがさらに好ましい。前記負のC−プレートは、いずれの材料からなっていてもよい。複屈折性ポリマーフィルムや硬化性液晶組成物から形成された光学異方性層等、いずれも使用することができる。より具体的には、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルム;液晶ポリマーなどの液晶化合物からなる配向フィルム;液晶材料の配向層をフィルムにて支持した積層体;などが挙げられる。また、二軸延伸処理や直交する二方向に延伸処理等された複屈折を有するフィルム、傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。
【0131】
上記では、VAモード液晶表示装置の例を説明したが、本発明の光学異方性膜は、他のモードの液晶表示装置の光学補償にも利用することができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモード又はFLCモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモード又はHANモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、米国特許第5805253号明細書及び国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特許第2866372号公報に記載がある。これらの光学補償シートの代替として利用することができる。
さらにエレクトロルミネセンス装置やフィールドエミッション表示装置などの反射防止の目的にも偏光板と組み合わせて、本発明の光学異方性膜の使用が効果がある。
【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[合成例1:例示化合物A−1の合成例]
4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル23.4gとアクリル酸n−ブチル15.05を炭酸カリウム16.5g、酢酸パラジウム22.5mg存在下、ジメチルアセトアミド75ml中130℃で反応させた。反応後、酢酸エチルで希釈し、酢酸エチル相を水洗、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、C−1を得た。
【0133】
【化33】

【0134】
公知の合成法で合成した下記の公知化合物C−2 2.53gをテトラハイドロフランに溶解させた後、5℃まで冷却。メタンスルホニルクロリド1.15g及びジイソプロピルエチルアミン1.30を滴下、室温で1時間半攪拌した後、再び5℃まで冷却。化合物C−12.70g及びジイソプロピルエチルアミン1.30g及び4−ジメチルアミノピリジン0.13gを添加した。室温で1時間半攪拌した後、反応溶液を酢酸エチルで希釈、水洗した。酢酸エチル相の固形分をカラムクロマトグラフィーで精製し、例示化合物A−1を得た。同定は、NMRにより行った。
化合物A−1の1H−NMR(CDCl3,ppm):0.9−1.1、1.3−1.8、1.8−2.1、4.0−4.4、5.7−6.6、6.9−7.1、7.2−7.4、7.5−7.8、8.1−8.3。
【0135】
【化34】

【0136】
[合成例2:例示化合物P−1の合成例]
上記で合成した例示化合物A−1と、例示化合物B−2とを、アゾイソブチロ二トリル(AIBN)の存在下、ジメチルアセトアミド中で重合することにより、例示化合物P−1を得た。P−1の質量平均分子量は45000であった。また同定は、NMRにより行った。
化合物A−1の1H−NMR(CDCl3,ppm):0.9−1.1、1.3−2.1、3.6−3.9、4.0−4.4、6.3−6.6、6.7−7.4、7.4−7.8、8.1−8.3。
【0137】
[実施例1]
(液晶セル用基板の作製)
無アルカリガラス基板上に、ブラックマトリクスを形成した基板を準備した。
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1はTetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法準じて合成した。
──────────────────────────────────――
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────――
光配向性高分子材料P−1 25.0
1.4−ブタンジオールジアセテート 74.98
水平配向剤(LC−1−1) 0.02
──────────────────────────────────――
【0138】
【化35】

【0139】
(カラーフィルタ用組成物)
表2に示す組成の各RGB画素用組成物をそれぞれ調製した。
【0140】
【表1】

【0141】
表2中の組成物の組成は以下の通りである。
[R顔料分散物−1組成]
──────────────────────────────────――
R顔料分散物−1組成(質量%)
──────────────────────────────────――
C.I.ピグメント・レッド254 8.0
5−[3−オキソ−2−[4−[3,5−ビス(3−ジエチルアミノプロピルアミノカルボニル)フェニル]アミノカルボニル]フェニルアゾ]−ブチロイルアミノベンズイミダゾロン 0.8
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、(重量平均分子量3.7万) 8.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 83.2
──────────────────────────────────――
【0142】
[R顔料分散物−2組成]
──────────────────────────────────――
R顔料分散物−2組成(質量%)
──────────────────────────────────――
C.I.ピグメント・レッド177 18.0
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、
(重量平均分子量3.7万) 12.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70.0
──────────────────────────────────――
【0143】
[G顔料分散物組成]
──────────────────────────────────――
G顔料分散物組成(質量%)
──────────────────────────────────――
C.I.ピグメント・グリーン36 18.0
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、
(重量平均分子量3.7万) 12.0
シクロヘキサノン 35.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 35.0
──────────────────────────────────――
【0144】
[バインダ1組成]
──────────────────────────────────――
バインダ1組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量4万) 27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────――
【0145】
[バインダ2組成]
──────────────────────────────────――
バインダ2組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート=
38/25/37モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3万)27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────――
【0146】
[バインダ3組成]
──────────────────────────────────――
バインダ3組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート=
36/22/42モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3万)27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────――
【0147】
[DPHA組成]
──────────────────────────────────――
DPHA溶液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 76.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24.0
──────────────────────────────────――
【0148】
(R層形成用液PP−R1の調製)
R層形成用液PP−R1は、まず表2に記載の量のR顔料分散物1、R顔料分散物2、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ2、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のED152をはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm20分間攪拌し、更に、表2に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm30分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0149】
(G層形成用液PP−G1の調製)
G層形成用液PP−G1は、まず表2に記載の量のG顔料分散物、CFイエローEX3393、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダ1、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm30分間攪拌し、更に、表2に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0150】
(B層形成用液PP−B1の調製)
B層形成用液PP−B1は、まず表2に記載の量のCFブルーEX3357、CFブルーEX3383、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ3、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、フェノチアジンをはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌し、更に、表2に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0151】
(光学異方性層の作製)
R用光学異方性層R−1として、上記で得られた光学異方性層用塗布液LC−1をピエゾ方式のヘッドを用いてブラックマトリックス(遮光性隔壁)に囲まれたR層が形成される予定の凹部に打滴し、140℃で2分間加熱乾燥した。さらに熟成後、直ちにこの層に対して偏光UVを照射(照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2)した後、130℃加熱熟成し、厚さ2.62.8μmの光学異方性層R−1を形成した。
同様にして、G層及びB層用光学異方性層G−1及びB−1をそれぞれ、G層及びB層が形成される予定の微細領域に形成した。打滴量をかえることで、光学異方性層G−1及びB−1のそれぞれの厚みを、2.9μm及び2.6μmとした。
なお、本実施例では、R、G、B各画素に対応する部分に、搬送速度、駆動周波数を制御し、所望するR、G、Bに対応する凹部に各光学異方性層用塗布液を打滴した。
【0152】
(カラーフィルタ層の作製)
上記で得られたR、G及びB層形成用液である、PP−R1、PP−G1及びPP−B1を、ピエゾ方式のヘッドを用いて遮光性隔壁に囲まれた凹部のあらかじめ決められた位置に、打滴を行い、R層、G層及びB層をそれぞれ形成した。
なお、本実施例では、R、G、B各画素に対応する部分にR、G、Bそれぞれ搬送速度、駆動周波数を制御し、所望するR、G、Bに対応する凹部に各R、G及びB層形成用液PP−R1、PP−G1及びPP−B1を打滴した。
その後、100℃にて乾燥させ、さらに200℃にて1時間熱処理を実施し、光学異方性層上にカラーフィルタ画素を形成した。
【0153】
(位相差測定)
ファイバ型分光計を用いた平行ニコル法により、任意の波長λにおける面内レターデーションRe(λ)、及び遅相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときのレターデーションをそれぞれ測定し、Rth(λ)を算出し、Nz値も求めた。R、G、Bに対して波長λは、それぞれ611nm、545nm、435nmとして、レターデーションを測定した。
光学異方性層の位相差は、あらかじめ測定した光学異方性層のない基板の透過率データで較正を行うことにより、光学異方性層の位相差のみを求めた。位相差測定結果を表3に示す。表3の値から、形成されたR−1、G−1及びB−1の光学異方性層は、二軸性であることが理解できる。
【0154】
【表2】

【0155】
(透明電極の形成)
上で作製したカラーフィルタ上に透明電極膜(膜厚2000Å)をITOのスパッタリングにより形成した。
【0156】
(配向層の形成及び液晶セル形成)
更にその上にポリイミドの配向膜を設けた。次に粒子径5μmのガラスビーズを散布した。さらにカラーフィルタの画素群の周囲に設けられたブラックマトリックスの外枠に相当する位置に、スペーサ粒子を含有するエポキシ樹脂のシール剤を印刷し、カラーフィルタ基板を対向基板と10kg/cmの圧力で貼り合わせた。次いで、貼り合わされたガラス基板を150℃、90分で熱処理し、シール剤を硬化させ、2枚のガラス基板の積層体を得た。このガラス基板積層体を真空下で脱気し、その後大気圧に戻して2枚のガラス基板の間隙に液晶を注入し、液晶セルを得た。この液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0157】
(VA−LCDの作製)
カラー液晶表示装置用冷陰極管バックライトとしては、BaMg2Al1627:Eu,Mnと、LaPO4:Ce,Tbとを重量比50:50で混合した蛍光体を緑色(G)、Y23:Euを赤色(R)、BaMgAl1017:Euを青色(B)として、任意の色調を持つ白色の三波長蛍光ランプを作製した。このバックライト上に上記偏光板を付与した液晶セルを設置しVA−LCDを作製した。
【0158】
[実施例2]
光学異方性層R−1、G−1、B−1がなく、代わりに下側偏光板の液晶セル側の保護フィルム上に、塗布液LC−1を用いて光学異方性層G−1を作製したのと同様の方法によって、厚み2.7μmの光学異方性層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のVA−LCDを作製した。
【0159】
[実施例1及び2のVA−LCDの評価]
作製した液晶表示装置の黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを観察した。
作製した実施例1及び2の液晶表示装置を観察した結果、正面方向及び視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現することが確認できた。特に実施例1は、視野角方向から観察した際の着色が全くなく、優れていた。
【0160】
[実施例3]
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
実施例1の光学異方性層用塗布液LC−1の調製に用いた例示化合物P−1を、質量平均分子量が15000のP−1に変更した以外は同様にして、光学異方性層用塗布液LC−2を調製した。
【0161】
(光学異方性層の作製)
実施例1と同様にして、上記で得られた光学異方性層用塗布液LC−2をピエゾ方式のヘッドを用いて遮光性隔壁に囲まれたR、G、及びB層に対応する凹部に打滴し、140℃2分間加熱乾燥した。さらに直ちにこの層に対して、偏光照射(照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2)した後、130℃で再び加熱し、光学異方性層R−2、G−2、B−2を形成した。
【0162】
実施例1と同様にして、カラーフィルタ層、及び透明電極層を形成した。
更にその上にポリイミドの配向膜を設けた。次に粒子径5μmのガラスビーズを散布した。さらにカラーフィルタの画素群の周囲に設けられたブラックマトリックスの外枠に相当する位置に、スペーサ粒子を含有するエポキシ樹脂のシール剤を印刷し、カラーフィルタ基板を対向基板と10kg/cmの圧力で貼り合わせた。次いで、貼り合わされたガラス基板を150℃、90分で熱処理し、シール剤を硬化させ、2枚のガラス基板の積層体を得た。このガラス基板積層体を真空下で脱気し、その後大気圧に戻して2枚のガラス基板の間隙に液晶を注入し、液晶セルを得た。
この液晶セルの上側偏光板(観察者側)には、特開2005−173567号公報に記載の方法に従い作製した負のC−プレート付き偏光板を用いた。下側偏光板(バックライト側)には、サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。負のC−プレートのReは0nm、Rthは200nmであった。
【0163】
(VA−LCDの作製)
カラー液晶表示装置用冷陰極管バックライトとしては、BaMg2Al1627:Eu,Mnと、LaPO4:Ce,Tbとを重量比50:50で混合した蛍光体を緑色(G)、Y2O3:Euを赤色(R)、BaMgAl1017:Euを青色(B)として、任意の色調を持つ白色の三波長蛍光ランプを作製した。このバックライト上に上記偏光板を付与した液晶セルを設置しVA−LCDを作製した。
【0164】
(位相差測定)
作製した光学異方性層R−2、G−2及びB−2のそれぞれの面内レターデーションを上記と同様にして測定した。測定結果を下記表4に示す。表4の値から、形成されたR−2、G−2及びB−2の光学異方性層は、Aプレート様であることが理解できる。
【0165】
【表3】

【0166】
[実施例4]
光学異方性層R−2、G−2、B−2がなく、代わりに下側偏光板の液晶セル側の保護フィルム上に、塗布液LC−2を用いてG−2の光学異方性層を作製したのと同様の方法によって、光学異方性層を形成した以外は実施例と同様にして、実施例4のVA−LCDを作製した。
【0167】
[実施例3及び4のVA−LCDの評価]
作製した液晶表示装置の黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを観察した。
作製した実施例3及び4の液晶表示装置を観察した結果、正面方向及び視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現することが確認できた。特に実施例3は、視野角方向から観察した際の着色が全くなく、優れていた。
【0168】
[実施例5]
実施例3光学異方性層用塗布液LC−2に、カチオン光重合開始剤を添加し、光配向性高分子材料としてP−1の代わりにP−6を用いた以外は同様にして、光学異方性層用塗布液LC−4を調製した。以下に組成を示す。
─────────────────―――─────────────―――
光配向性高分子材料P−6 25.0 質量%
1.4−ブタンジオールジアセテート 74.58質量%
水平配向剤(LC−1−1) 0.02質量%
カチオン光重合開始剤
(Cyracure UVI6974、ダウ・ケミカル) 0.40質量%
─────────────────―――─────────────―――
【0169】
実施例1と同様にして、上記で得られた光学異方性層用塗布液LC−4を用い、ピエゾ方式のヘッドを用いてR層が形成される予定の遮光性隔壁に囲まれた凹部に打滴し、140℃2分間加熱乾燥した。さらに熟成後直ちにこの層に対して偏光UVを照射(照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2)した後、130℃加熱熟成し、その後、非偏光UVを照射して硬化させて、厚さ2.6μmの光学異方性層R−4を形成した。
同様にして、G層及びB層用光学異方性層G−4及びB−4をそれぞれ、G層及びB層が形成される予定の微細領域に形成した。打滴量をかえることで、光学異方性層G−4及びB−4のそれぞれの厚みを、2.7μm及び2.9μmとした。
その後、実施例1と同様にして、カラーフィルタ層を形成した後、熱処理を230℃で行った。その後、実施例1と同様にして、光学異方性層R−4、G−4及びB−4の面内レターデーションを測定した。結果を下記表に示す。
【0170】
【表4】

【0171】
[比較例1]
実施例5の塗布液LC−4の調製において、P−6の代わりに、特開2004−258426号公報に記載の化合物を用い、実施例1と同様にして、光学異方性層を作製した。カラーフィルタ形成後の熱処理を230℃で行った後、光学異方性層の位相差を測定したが、位相差が消失していた。
【0172】
[実施例6]
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────――
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────――
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.1
メタノール 43.21
──────────────────────────────────――
(配向層の作製)
上記で得られた配向層用塗布液AL−1をピエゾ方式のヘッドを用いて、遮光性隔壁に囲まれた凹部に打滴、乾燥した。配向層は1.6μmであった。続いて、形成した配向層を左右方向0度に対して斜め45度方向にラビング処理した。
【0173】
(光学異方性層の作製)
実施例1の光学異方性層用塗布液LC−1の調製に用いた例示化合物P−1を、例示化合物P−16に代えた以外は同様にして、光学異方性層用塗布液LC−5を調製した。
実施例1と同様にして、上記で得られた光学異方性層用塗布液LC−5をピエゾ方式のヘッドを用いて遮光性隔壁に囲まれたR、G、及びB層に対応する凹部の配向膜上に打滴し、140℃2分間加熱乾燥した。さらに直ちにこの層に対して、フィルムに対して左右の方向から偏光照射(照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2)した後、130℃で再び加熱し、光学異方性層R−5、G−5、B−5を形成した。
【0174】
実施例1と同様にして、カラーフィルタ層、及び透明電極層を形成した。
更にその上にポリイミドの配向膜を設けた。次に粒子径5μmのガラスビーズを散布した。さらにカラーフィルタの画素群の周囲に設けられたブラックマトリックスの外枠に相当する位置に、スペーサ粒子を含有するエポキシ樹脂のシール剤を印刷し、カラーフィルタ基板を対向基板と10kg/cmの圧力で貼り合わせた。次いで、貼り合わされたガラス基板を150℃、90分で熱処理し、シール剤を硬化させ、2枚のガラス基板の積層体を得た。このガラス基板積層体を真空下で脱気し、その後大気圧に戻して2枚のガラス基板の間隙に液晶を注入し、液晶セルを得た。この液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0175】
(VA−LCDの作製)
カラー液晶表示装置用冷陰極管バックライトとしては、BaMg2Al1627:Eu,
Mnと、LaPO4:Ce,Tbとを重量比50:50で混合した蛍光体を緑色(G)、
Y2O3:Euを赤色(R)、BaMgAl1017:Euを青色(B)として、任意の色調を持つ白色の三波長蛍光ランプを作製した。このバックライト上に上記偏光板を付与した液晶セルを設置しVA−LCDを作製した。
【0176】
(位相差測定)
作製した光学異方性層R−5、G−5及びB−5のそれぞれの面内レターデーションを上記と同様にして測定した。測定結果を下記表4に示す。表4の値から、形成されたR−5、G−5及びB−5の光学異方性層は、2軸性を有することが理解できる。
【0177】
【表5】

【0178】
[実施例6のVA−LCDの評価]
作製した液晶表示装置の黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを観察した。
作製した実施例6の液晶表示装置を観察した結果、正面方向及び視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現することが確認できた。
【0179】
[実施例7]
(光学異方性層の作製)
実施例1の光学異方性層用塗布液LC−1の調製に用いた例示化合物P−1を、例示化合物P−2に代えた以外は同様にして、光学異方性層用塗布液LC−3を調製した。
実施例1と同様にして、上記で得られた光学異方性層用塗布液LC−2をピエゾ方式のヘッドを用いて遮光性隔壁に囲まれたR、G、及びB層に対応する凹部に打滴し、140℃2分間加熱乾燥した。さらに直ちにこの層に対して、偏光照射(照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2)した後、130℃で再び加熱し、光学異方性層R−3、G−3、B−3を形成した。
【0180】
(位相差測定)
作製した光学異方性層R−3、G−3及びB−3のそれぞれの面内レターデーションを上記と同様にして測定した。測定結果を下記表5に示す。表5の値から、形成されたR−3、G−3及びB−3の光学異方性層は、nx>nz>nyであることが理解できる。
【0181】
【表6】

【0182】
(IPSモード液晶セルの作製)
上記のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。
別に用意した一枚のガラス基板上に、液晶素子画素領域に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
【0183】
(光学異方性膜B−1の作製)
<セルロースアセテート溶液の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
<セルロースアセテート溶液A組成>
酢化度2.86のセルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0184】
<マット剤分散液の調製>
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤分散液を調製した。
<マット剤分散液組成>
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート溶液A 10.3質量部
【0185】
<添加剤溶液の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0186】
<添加剤溶液組成>
光学異方性を低下させる化合物(A−01) 49.3質量部
波長分散調整剤(UV−01) 7.6質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液A 12.8質量部
なお、A−01のLogP値はそれぞれ2.9である。
【0187】
【化36】

【0188】
<セルロースアセテートフィルムの作製>
上記セルロースアセテート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、ドープを調製した。このドープ中、光学異方性を低下させる化合物及び波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ12%、1.8%であった。
このドープを、流延機を用いてバンド上に流延し、残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。得られたセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μmであった。
また、このフィルムのRe(630)は0.3nm、Rth(630)は3.2nm、|Re(400)−Re(700)|は1.2nm、|Rth(400)−Rth(700)|は7.5nm、フィルムのTgは134.3℃、フィルムのヘイズは0.34%、ΔRth(10%RH−80%RH)は24.9nmであった。このフィルムを光学異方性膜B−1とした。
【0189】
(光学異方性膜B−1つき偏光板1の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、市販のセルロースアセテートフィルム(富士フイルム(株)製、フジタックTD80UF)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、この偏光膜の一方に貼り付け、もう片方に光学異方性膜B−1を貼り付け偏光板1を形成した。
【0190】
(IPS−LCDの作製)
前記で作製したIPSモード液晶セルの一方に、偏光板1の偏光膜の透過軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように貼り付け、及びIPSモード液晶セルのもう一方の側に偏光板1を貼り付け、液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置の黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを観察した。
作製した実施例7のIPS−LCDを観察した結果、正面方向及び視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示が実現することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の光学異方性膜の製造方法の一例を説明するのに用いた概略模式図である。
【図2】本発明の液晶セル用基板を有する液晶セルの一例の概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0192】
11 透明基板
12 ブラックマトリックス(隔壁)
13 光学異方性層
14 カラーフィルタ層
21 被転写基板
22 ブラックマトリクス(隔壁)
23 カラーフィルタ層
24 ベタ光学異方性層
25 透明電極層
26 配向層
27 パターニング光学異方性層
31 液晶
32 TFT
33 偏光層
34 セルロースアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)
35 セルロースアセテートフィルム、又は光学補償シート
36 偏光板
37 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学異方性膜。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を表し;Xは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し;Aは−COO−、−OCO−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基、オキサジアゾール基又はアルキニレン基を表し;Zは、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し;n1、n2及びn3は0〜4の整数を表し;ならびにl、m及びnは0〜4の整数を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR6−(R6は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR7)−(R7はアルキル基又はアリール基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。)
【請求項2】
前記化合物が、前記一般式(1)で表される部分構造を側鎖中に有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光学異方性膜。
【請求項3】
前記高分子が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載の光学異方性膜。
【化2】

(式中、R4は、水素原子又は置換基を表し、その他の記号については、前記一般式(1)中のそれぞれと同義である。)
【請求項4】
前記高分子化合物が、下記一般式(5)及び/又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の光学異方性膜。
【化3】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基を表す。)
【化4】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基
を表し、S6は二価の連結基を表し、P1は重合性基を示す。)
【請求項5】
前記化合物を含有する組成物に少なくとも偏光を照射して形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
【請求項6】
波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20nm〜300nmであることを特徴とする請求項5に記載の光学異方性膜。
【請求項7】
正のAプレートであることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学異方性膜。
【請求項8】
Nz値(但し、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5;Rth(550)は波長550nmの厚み方向のレターデーションであり、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーションである)が1.1〜7.0であることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学異方性膜。
【請求項9】
ラビング処理面上で前記化合物を含有する組成物に少なくとも偏光を照射して形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学異方性膜。
【請求項10】
Nz値が1.1〜7.0であることを特徴とする請求項9に記載の光学異方性膜。
【請求項11】
Nz値が0.1〜0.9であることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学異方性膜。
【請求項12】
基板と、該基板上に請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学異方性膜とを有する液晶セル用基板。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学異方性膜を有する液晶表示装置。
【請求項14】
VAモード液晶表示装置であることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
IPSモード液晶表示装置であることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記光学異方性膜を、液晶セル内に有することを特徴とする請求項13〜14のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記光学異方性膜が、液晶セル内の各画素に対応する各領域に配置されていることを特徴とする請求項16に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
請求項7に記載の光学異方性膜からなる第1の光学異方性層と、Rth(550)が20〜300nmである第2の光学異方性層とを有することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
請求項1中に記載の一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも含有する組成物に、少なくとも偏光を照射することで複屈折を発現させることを含む光学異方性膜の製造方法。
【請求項20】
請求項1中に記載の一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を少なくとも含有する組成物を、ラビング処理面上に配置すること、及び該ラビング処理面のラビング方向と異なる方向から偏光を照射することにより複屈折を発現させることを含む光学異方性膜の製造方法。
【請求項21】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を少なくとも有する重合体。
【化5】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を表し;R4は、水素原子又は置換基を表し;Xは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表し;Zは、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し;n1、n2及びn3は0〜4の整数を表し;ならびにl、m及びnは0〜4の整数を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR6−(R6は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR7)−(R7はアルキル基又はアリール基
を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。)
【請求項22】
下記一般式(5)及び/又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位をさらに有することを特徴とする請求項21に記載の重合体。
【化6】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基
を表す。)
【化7】

(式中、R5は水素原子又は置換基を表し、S5は二価の連結基を表し、M5はメソゲン基
を表し、S6は二価の連結基を表し、P1は重合性基を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−98596(P2009−98596A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59161(P2008−59161)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】