説明

光学的特性および加工特性が改良されたポリカーボネート中実成形物品

本発明は光学的特性および加工特性が改良されたポリカーボネート中実成形物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は光学的特性および加工特性が改良されたポリカーボネート中実成形物品に関する。
【0002】
ポリカーボネート中実成形物品、特にポリカーボネート中実シート、は押出成形または射出成形によって製造される。比較的大きな成形物品(例えば広い面積の自動車のグレイジング(glazing)または屋根材(roofing)のシートおよび他の建築的な使用)は押出成形によって製造されなければならない。なぜならば技術的理由から射出成形による製造が行えないか、または少なくとも経済的に行えないからである。
【0003】
押出では、ポリカーボネートグラニュールが押出機に供給され、押出機の可塑化システムで溶融される。プラスチックの溶融物はシート押出ダイに押し込まれ、その結果成形され、仕上げカレンダーのニップで所望の最終形状にされ、艶出スタック(polishing stacks)上および周囲空気中でのレシプロ的冷却(reciprocal cooling)によって形状に固定される。押出に用いられる高い溶融粘度のポリカーボネートは慣例的に260〜320℃の溶融温度で処理され、可塑化バレルのバレル温度および押出ダイ温度はそれに応じて調節される。
【0004】
この処理によれば、製造されるシートの表面は完全に平坦ではなく、凹凸を有する。これらは光学的ひずみを引き起こす。種々の使用(例えば自動車のスクリーン)に関して上記の光学的ひずみは好ましくなく、このために押出ポリカーボネート成形物品の光学的特性の改良に関する多数の方法が過去に提案されてきた。
【0005】
構造化された、耐候性シートの反射および光学的障害を減らすために、EP 0 275 252 Aは複合シートの表面にメタクリレートコポリマーを含有する保護被膜を適用したポリカーボネート複合シートを提案している。
【0006】
EP 0 114 290 Aは1〜15 wt.%の枝分れポリカーボネートおよび15〜99 wt.%のコポリエステル-カーボネート樹脂を含有する熱可塑性樹脂コポリエステル-カーボネート成形組成物を記述している。この混合物は加工特性および加水分解抵抗並びに衝撃強さを改良すると述べられている。ポリマーの光学的な透明度はこの成形組成物の使用によって実質上損なわれないと述べられている。
【0007】
EP 1 265 943は平均分子量Mw 25,000〜40,000の枝分れポリカーボネートから得られる光学的特性が改良されたポリカーボネート中実造形品を記述している。目標を達成する他の可能性は挙げられていない。
【0008】
すでに記述した押出方法において、揮発成分は溶融物がシート押出ダイから出てくるとすぐにプラスチックの溶融物から揮発する。特に、これらは紫外線吸収剤であり、同時押出シートの場合シート表面の同時に押し出された薄層に比較的高い濃度で含まれている。これらの揮発成分は幾分仕上げカレンダーのロール上に沈着し、そこに時間が経つにつれて増加する付着物を作り上げ、製造されるシートの表面の質をだんだん低下させる。
【0009】
EP 0 649 724は27,000〜29,500の平均分子量Mwを有する枝分れポリカーボネートからのプラスチックの多層シートの製造方法を記述しており、そこでは外層は1〜15 wt.%の紫外線吸収剤を含有するが、紫外線吸収剤の揮発は減少し、その結果、押出が間断なく比較的長時間行われ得る。紫外線吸収剤の揮発の減少についての他の可能性は述べられていない。
【0010】
従って、本発明が基礎とした目的は、例えば自動車での使用が認められる程光学的特性が改良された透明なポリカーボネート中実造形品、特にポリカーボネート中実シートの押出による供給を含む。揮発成分の揮発がさらに減り、ポリカーボネート中実成形物品の表面の品質がそれゆえに改良されなければならない。
【0011】
驚くべきことに、この目的は実質的に25,000〜31,000、好ましくは28,000〜30,000の分子量Mwを有する直鎖状ポリカーボネートを含有する成形組成物の押出によって達成されることが解った。今のところ押出シートの上面および下面に働く異なる力によって生じる常套のシートの光学的ひずみはこの方法によって実質上減少され得る。
【0012】
本発明による上述の成形組成物から得られる押出ポリカーボネート中実シートはDIN 52305-A-ASによる偏差角αε(min) ≦2.0、好ましくは≦1.7および、DIN 52305-A-AZによる屈折力Dε(min) ≦0.05、好ましくは≦0.04を有する。
【0013】
常套の方法で得られるシートと比較して、偏差角αεは30%より多く減少し、屈折力Dεは50%より多く減少することが解った。
【0014】
これらの大きく改善した光学的特性によって、本発明によるシートを自動車のグレイジングとして用いることが可能である。
【0015】
本発明によるポリカーボネート中実成形物品はさらにセイフティスクリーニング(safety screening)(例えば機械におよびスタジアム(stadia)に)として、ルーフ、防音壁および広告表面のスクリーンとして用いられる。それらは好適な光学的特性をもつことが所望される広範囲のスクリーンで全ての場合で好適である。
【0016】
驚くべきことに、同時押出による紫外線吸収剤を含有する機能的層によって保護されている中実成形物品の製造で31,000までの平均分子量Mwを有する直鎖状ポリカーボネートの使用によって紫外線吸収剤の揮発が減少し、押出シートの品質の劣化がそれゆえに減少することが解った。今までの方法では概して、もはや許容できないロール上の付着物がすでに4時間の押出時間後に見つかるが、本発明による解決では付着物の形成は4時間後、ロールの端にのみ見いだされるだけだった。
【0017】
従って、本発明はまた紫外線吸収剤を含有する機能的層によって保護されている同時押出による中実成形物品の製造方法(25,000〜31,000の平均分子量Mwを有する直鎖状ポリカーボネートが用いられており、同時押出が少なくとも四時間絶え間なく行われることで特徴づけられる)を提供する。
【0018】
小さすぎる分子量(例えば25,000よりも小さい)を有するポリカーボネートは衝撃強さの不足のため、もはやPCシートへの使用に好ましくない。
【0019】
本発明による好適な直鎖状ポリカーボネートは既知の方法によって製造されてもよい。ポリカーボネートの調製の好適な方法は、例えば、ビスフェノールとホスゲンから相界面法(phase interface process)による、またはビスフェノールとホスゲンから均質相での方法、いわゆるピリジン法による、またはビスフェノールと炭酸エステルから溶融エステル交換法による調製である。調製方法は、例えば、H. Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Polymer Reviews, volume 9, p. 31-76, Interscience Publishers, New York, London, Sydney, 1964に記述されている。言及される調製方法は"Polycarbonates" in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, volume 11, second edition, 1988, pages 648 to 718および"Polycarbonate" in Becker, Braun, Kunststoff-Handbuch, volume 3/1, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1992, pages 117 to 299にも記述されている。
【0020】
溶融エステル交換法は特にH. Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Polymer Reviews, volume 9, p. 44 to 51, Interscience Publishers, New York, Sydney, 1964およびDE 1 031 512 A、US 3 022 272、US 5 340 905およびUS 5 399 659に記述されている。
【0021】
本発明による用いられる直鎖状ポリカーボネートはここでホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方またはそれらの混合物であってもよい。ポリカーボネートは部分的にまたは完全に芳香族ポリエステル-カーボネートに置換されてもよい。
【0022】
本発明による用いられる直鎖状ポリカーボネートの調製に関する出発化合物として好ましく用いられる化合物は一般式(I)
HO-Z-OH (I)
(式中、
Zは6〜30の炭素原子を有する、一以上の芳香族基を含む二価の有機基である。)
のビスフェノールである。
【0023】
そのような化合物の例はジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、インダンビスフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトンおよびα,α'-ビス(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピルベンゼンの群に属するビスフェノールである。
【0024】
上述の群に属する化合物の特に好ましいビスフェノールは2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)、テトラアルキルビスフェノールA、4,4-(メタ-フェニレンジイソプロピル)ジフェノール(ビスフェノールM)、4,4-(パラ-フェニレンジイソプロピル)-ジフェノール、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)およびそれらの混合物である。
【0025】
本発明による使用されるポリカーボネートの平均分子量は例えば、対応する量の連鎖停止剤による既知の方法で調節され得る。該連鎖停止剤は個々にまたは種々の連鎖停止剤の混合物として用いられる。
【0026】
好適な連鎖停止剤はモノフェノールおよびモノカルボン酸の両方である。好適なモノフェノールは例えばフェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール、クミルフェノールまたは2,4,6-トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール(例えば4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール)、またはアルキル置換基の中に総数8〜20のC原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール(例えば3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチル-ヘプチル)-フェノールまたは4-(3,5-ジメチル-ヘプチル)-フェノール)である。好適なモノカルボン酸は安息香酸、アルキル安息香酸およびハロゲノ安息香酸である。
【0027】
所望の分子量範囲を達成するための相界面法での連鎖停止剤の量は慣習的にはビスフェノールのモルに基づいて2〜4 mol%の連鎖停止剤である。
【0028】
エステル交換法による調製の場合、連鎖停止剤の量は、炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)が用いられる蒸留塔に依存してビスフェノールに関して過剰に(例えば100 molのビスフェノールあたり102〜108 molのジフェニルカーボネート)用いられるように選択される。
【0029】
ポリエステル-カーボネートは好ましくはすでに述べたビスフェノール、少なくとも一つの芳香族ジカルボン酸および任意に炭酸当量でもよい、の反応によって得られる。好適な芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3'-または4,4'-ジフェニルジカルボン酸およびベンゾフェノンジカルボン酸である。ポリカーボネートの中のカーボネート基の一部、80 mol%まで、好ましくは20〜50 mol%は芳香族ジカルボン酸エステル基によって置換されてもよい。
【0030】
本発明による好ましいポリカーボネートはビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネートおよび二つのモノマービスフェノールAと1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくコポリカーボネートおよび二つのモノマービスフェノールAおよび4,4'-ジヒドロキシジフェニル(DOD)に基づくコポリカーボネートである。
【0031】
ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートは特に好ましい。
【0032】
本発明による用いられる成形組成物は直鎖状ポリカーボネートに加えて添加剤(例えば紫外線吸収剤および他の常套の加工助剤、特に離型剤および流動剤、並びに常套のポリカーボネートの安定剤、特に熱安定剤、並びに帯電防止剤、着色剤、蛍光増白剤および無機顔料)を含有する。
【0033】
紫外線吸収剤は本発明による用いられるポリカーボネートの重量に基づいて0.05〜15 wt.%、好ましくは0.1〜8 wt.%の量で含まれる。
【0034】
好適な紫外線吸収剤はその400 nmより下の吸収度に基づいて効果的にポリカーボネートを紫外線から保護する能力のある化合物であり、370よりも大きい、好ましくは500以上の分子量を有する。
【0035】
好適な紫外線吸収剤は、特に、WO 99/05205に記述されている式(II)
【化1】

(式中、
R1およびR2は同一または異なって、H、ハロゲン、C1〜C10-アルキル、C5〜C10-シクロアルキル、C7〜C13-アラルキル、C6〜C14-アリール、-OR5または-(CO)-O-R5(R5 = HまたはC1〜C4-アルキル)を示し、
R3およびR4は同様に同一または異なって、H、C1〜C4-アルキル、C5〜C6-シクロアルキル、ベンジルまたはC6〜C14-アリールを示し、
mは1、2または3であり、
nは1、2、3または4である。)
の化合物、並びに式(III)
【化2】

(式中、bridgeは
【化3】

を示し、
R1、R2、mおよびnは式(II)に与えられた意味を有し、
式中、さらにpは0〜3の整数であり、
qは1〜10の整数であり、
Yは-CH2-CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-またはCH(CH3)-CH2-であり、
R3およびR4は式(II)に与えられた意味を有する。)
の化合物である。
【0036】
さらに好適な紫外線吸収剤は置換トリアジン(例えば2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(CYASORB(登録商標) UV-1164)または2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシル)オキシフェノール(Tinuvin(登録商標) 1157))である。Tinuvin(登録商標) 360またはAdeka Stab(登録商標) LA 31の名の下で商業的に市場で取引されている2,2-メチレンビス-(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾ-トリアゾール-2-イル)-フェノール)は紫外線吸収剤として特に好ましい。一般式(IV)
【化4】

のWO 96/15102、実施例1、に従って得られる紫外線吸収剤Uvinol(登録商標) 3030はさらに好適である。
【0037】
EP 0500496 A1で言及されている紫外線吸収剤はさらに好適である。
【0038】
本発明による用いられるポリカーボネートに関する好適な安定剤は、例えば、ホスフィン、ホスフィットまたはSiを含有する安定剤およびEP 0 500 496 A1に記述されているさらなる化合物である。言及されてもよい例はトリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス-(ノニルフェニル)ホスフィット、テトラキス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホニト(tetrakis-(2,4-di-tert-butylphenyl)4,4'-biphenylene-diphosphonite)およびトリアリールホスフィットである。トリフェニルホスフィンおよびトリス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットは特に好ましい。
【0039】
本発明による用いられるポリカーボネートはさらにグリセロールモノ-脂肪酸エステルを含有してもよい。これらは成形組成物の重量に基づいて好ましくは0.01〜1 wt.%、特に好ましくは0.02〜0.3 wt.%の量で用いられる。グリセロールモノ-脂肪酸エステルはグリセロールと飽和脂肪族C10〜C26-モノカルボン酸との、好ましくは飽和脂肪族C14〜C22-モノカルボン酸とのエステルである。グリセロールモノ-脂肪酸エステルはグリセロールの第一級OH官能基と第二級OH官能基の両方、並びにこれらの二つの異性の級の化合物の混合物の意味として理解されている。グリセロールモノ-脂肪酸エステルの調製のため、グリセロールモノ-脂肪酸エステルは50%より少ない種々のグリセロールのジエステルおよびトリエステルを含有してもよい。
【0040】
10〜26のC原子を有する飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸およびセロチン酸である。好ましい14〜22のC原子を有する飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸である。特に好ましい飽和脂肪族モノカルボン酸はパルミチン酸およびステアリン酸である。
【0041】
本発明による用いられるポリカーボネートはさらに四〜六価アルコール、特にペンタエリトリトールの(部分)エステル0.01〜0.5 wt.%を含有する。
【0042】
四価アルコールは、例えば、ペンタエリトリトールおよびメソエリトリトールである。五価アルコールは、例えば、アラビトール、リビトールおよびキシリトールである。六価アルコールは、例えば、マンニトール、グルシトール(ソルビトール)およびズルシトールである。
【0043】
エステルは飽和の脂肪族C10〜C26-モノカルボン酸、好ましくは飽和の脂肪族C14〜C22-モノカルボン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、任意にペンタエステルおよびヘキサエステル、またはそれらの混合物、特にランダム混合物である。それらの調製のために、商業的に入手可能な脂肪酸エステル、特にペンタエリトリトールの脂肪酸エステルは種々の部分エステル60%未満を含有してもよい。
【0044】
10〜26のC原子を有する飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸およびセロチン酸である。
【0045】
14〜22のC原子を有する好ましい飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸である。
【0046】
飽和脂肪族モノカルボン酸(例えばパルミチン酸およびステアリン酸)は特に好ましい。
【0047】
飽和脂肪族C10〜C26-カルボン酸および脂肪酸エステルは文献からそれなりに知られているか文献から知られている方法によって調製されることができるかどちらかである。ペンタエリトリトール脂肪酸エステルの例は特に好ましい上述のモノカルボン酸のエステルである。
【0048】
ペンタエリトリトールとステアリン酸およびパルミチン酸とのエステルは特に好ましい。
【0049】
一般式(V)
【化5】

(式中、AはC10〜C40-脂肪酸基、好ましくはC22〜C34-脂肪酸基を示し、Bは3〜20、好ましくは5〜10の炭素原子を有する三価アルコールを示し、Cは4〜40、好ましくは5〜10の炭素原子を有するカルボン酸基を示し、nは0〜15の整数を示す。)の化合物を本発明による用いられるポリカーボネートに加えることが好都合であることがさらに判明した。これらの化合物は商業的に入手可能である。
【0050】
それらは本発明による用いられるポリカーボネートと問題なく加工され得、製品として得られる成形物品に損傷を示さない。ポリカーボネート成形組成物の中の式(V)の濃度は成形組成物の重量に基づいて好ましくは0.02〜1 wt.%、特に0.05〜0.6 wt.%であってもよい。
【0051】
性質の改良に関して、別の常套の添加剤が本発明による用いられるポリカーボネートに混合され、および/または表面に適用されてもよい。常套の添加剤は、例えば、充填材、強化材、安定剤(例えば熱安定剤およびγ線安定剤)、帯電防止剤、流動助剤、防炎加工剤、色素および顔料である。上記の添加剤および別の添加剤はGaechter, Mueller, Kunststoff-Additive, 3rd edition, Hanser-Verlag, Munich, Vienna, 1989に記述されている。
【0052】
帯電防止剤の例はカチオン化合物(例えば第四級アンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウム塩)、アニオン化合物(例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフォームの中のアルキルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルホスフェートまたはカルボキシレート)および非イオン性化合物(例えばポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸エステルまたはエトキシル化脂肪族アミン)である。好ましい帯電防止剤は非イオン性化合物である。
【0053】
本発明によるポリカーボネート中実成形物品は0.5 mm〜15 mmの厚さを有してもよい。それらは使用分野に依存してより厚くてもよい。ポリカーボネート中実成形物品は少なくとも二つの中実成形物品の複合成形物品(例えば押出によって製造されたシート)であってもよい。この場合、本発明による中実のポリカーボネート中実成形物品は少なくとも二つのポリマー層から作られる。
【0054】
押出による中実シートの製造に関して、ポリカーボネートグラニュールは押出機のホッパーに供給され、これを通ってスクリューおよびバレルを備える可塑化システムの中に入れる。
【0055】
該材料は可塑化システムの中に運ばれ、溶融される。該プラスチックの溶融物はシート押出ダイに押し込まれる。濾過装置、メルトポンプ(melt pump)、静的混合要素(static mixing element)およびさらなる部品が可塑化システムおよびシート押出ダイの間に配置されてもよい。押出ダイを離れる溶融物は仕上げカレンダーを通る。最終成形は仕上げカレンダーのニップで行われる。最後に行われる形状の固定は冷却によって行われ、特に艶出スタックでおよび周囲空気でレシプロ的に行われる。さらなる装置が押出シートの輸送、保護膜の適用、特定の長さへの切断および積み重ねに使用される。
【0056】
同時押出の場合、同時押出される材料は一以上のさらなる押出機で同じ方法で可塑化される。同時押出溶融物(coex melt)は押出ダイの特殊な同時押出アダプター上流でまたは特殊な同時押出ダイで主材料と共にもたらされる。同時押出層はベース層の一面と両面と両方に適用され得る。次のシート製造の作業は熱成形(thermoforming or hot forming)または表面加工(例えば耐引掻性の皮膜(scratch-resistant coating)、拡水層(water-spreading layer)および他の機能的な層での仕上げ)によって行われてもよい。
【0057】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。
【0058】
実施例1
厚さ6 mm、幅600 mmのポリカーボネート中実シートの押出に関して、直鎖状の高粘度ポリカーボネート、Makrolon(登録商標) 3103 (Mw約32 000)、および直鎖状の低粘度ポリカーボネート、Makrolon(登録商標) 2805 (Mw約29 000)が用いられる。
【0059】
該ポリカーボネートは約6 (Makrolon(登録商標) 3103)および9.5 (Makrolon(登録商標) 2805) cm3/10 min (300℃/1.2 kg)の溶融体積率(melt volume rates) (MVR)を有する(ISO 1133に従って測定された)。
【0060】
用いられる装置は
-直径(D) 75 mmおよび長さ33×Dのスクリューを有する押出機。該スクリューは脱蔵域(devolatilization zone)を有する;
-メルトポンプ;
-クロスヘッド;
-幅600 mmのシート押出ダイ;
-水平のロールが配置されている三本ロール仕上げカレンダー、それは第三のロールを水平位置に関して±45°だけ旋回させることが可能である;
-ローラーコンベヤー;
-両面への保護膜の適用のための装置;
-引取装置;
-特定の長さで切断する装置(のこ);
-段積みテーブル
を備える。
【0061】
溶融物は押出ダイから仕上げカレンダーに渡り、その仕上げカレンダーのロールは表1で提示される温度を有する。材料の最終成形および冷却は仕上げカレンダーで行われる。次にシートは引取装置に輸送され、保護膜が両面に適用され、のこによる特定の長さへの切断およびシートの積み重ねが次に行われる。
【0062】
【表1】

【0063】
本発明による押出によって得られる中実シートの改良された光学的特性を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
αεおよびDεに関するより低い値は本発明による得られるMakrolon(登録商標) 2805シートの低下した光学的ひずみを立証している。光学的ひずみはDIN 52305 (ε= 55°)に従って斜めの線の投影の助けを使って視覚的に測定した。
【0066】
実施例2
厚さ2 mmおよび幅320 mmのポリカーボネート中実シートの押出に関して、直鎖状の高粘度ポリカーボネート、Makrolon(登録商標) 3103、および直鎖状の低粘度ポリカーボネート、Makrolon(登録商標) 2805が用いられる。
【0067】
両方のシートがおおよそ7 wt.%の紫外線吸収剤を含むポリカーボネートから作られる紫外線保護層を両側につけて同時押出される。
【0068】
用いられる装置は
-直径(D) 60 mmおよび長さ33×Dのスクリューを有する主押出機。該スクリューは脱蔵域を有する
-主押出機の上流にあるメルトポンプ
-直径35 mmのスクリューを持つ同時押出機(脱蔵なし)
-同時押出アダプター
-幅350 mmのシート押出ダイ
-水平のロールが配置されている三本ロール仕上げカレンダー
-ローラーコンベヤー;
-引取装置;
-特定の長さで切断する装置(のこ);
-段積みテーブル
を備える。
【0069】
溶融物は押出ダイから仕上げカレンダーに渡り、その仕上げカレンダーのロールは表3で提示される温度を有する。溶融物は下部と真ん中のロールの間に導入する。材料の最終成形および冷却は仕上げカレンダーで行われる。該シートは次に引取装置に輸送され、のこによる特定の長さへの切断およびシートの積み重ねが次に行われる。
【0070】
【表3】

【0071】
4時間の押出時間での下部の艶出スタックロール(polishing stack roll) (W1)の付着物の成形が観測され詳細に記録された。Makrolon(登録商標) 2805の場合に非常に少ない付着物の生成が観測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25,000〜31,000の平均分子量Mwを有する直鎖状ポリカーボネートを含有する成形組成物の押出によって得られるDIN 52305-A-ASによる偏差角αε(min)≦2.0およびDIN 52305-A-AZによる屈折力Dε(min)≦0.05を有するポリカーボネート中実成形物品。
【請求項2】
DIN 52305-A-ASによる偏差角αε(min)が≦1.7であり、DIN 52305-A-AZによる屈折力Dε(min)が≦0.04であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項3】
直鎖状ポリカーボネートの平均分子量Mwが28,000〜30,000であることを特徴とする請求項1または2記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項4】
ポリカーボネートシートであることを特徴とする請求項1〜4の一つに記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項5】
少なくとも二つのポリマー層からつくられることを特徴とする請求項1〜4の一つに記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項6】
機能的層がポリカーボネート中実成形物品の少なくとも一つの面に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の一つに記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項7】
少なくとも一つの機能的層が耐引掻性皮膜であることを特徴とする請求項7記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項8】
少なくとも一つの機能的層が紫外線および屋外暴露に対する保護を提供する層であることを特徴とする請求項7または8の一つに記載のポリカーボネート中実成形物品。
【請求項9】
請求項1〜9の一つに記載のポリカーボネート中実成形物品を備える自動車のグレイジング。
【請求項10】
セイフティスクリーンとして、ルーフ、防音壁および広告表面のスクリーンとしての請求項1〜9の一つに記載のポリカーボネート中実成形物品の使用。
【請求項11】
25,000〜31,000の平均分子量Mwを有する直鎖状ポリカーボネートが用いられ、同時押出が少なくとも四時間連続的に行われることを特徴とする同時押出による請求項9記載のポリカーボネート中実成形物品の製造方法。

【公表番号】特表2007−517081(P2007−517081A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540243(P2006−540243)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012645
【国際公開番号】WO2005/049320
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】