説明

光学素子操作装置

【課題】望ましくない変形の発生を可能な限り妨げることにより、6自由度までの光学素子またはアセンブリの正確な操作を可能とする、光学素子操作装置を提供する。
【解決手段】少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学素子を6自由度まで操作する装置であって、各アクチュエータデバイス9が、少なくとも2つの力制御アクチュエータを備え、各力制御アクチュエータが、1自由度の有効な力を生成すると共に、アクチュエータデバイス9の連結点11が、光学素子7に直接作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学素子を6自由度まで操作するための装置に関する。本発明は同様に、光学素子または光学アセンブリを直接連結するためのアクチュエータデバイスに関する。本発明はまた、少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学アセンブリを6自由度まで操作するための装置に関する。さらに、本発明は、力制御アクチュエータ及び力制御アクチュエータデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学素子を操作するための装置が、ヨーロッパ特許公報EP1312965A1から知られている。
光学素子、特にミラーは、たいていの場合、3自由度で操作されており、例えばピエゾアクチュエータがこのために使用されている。
【0003】
米国特許5,986,827は、光学素子を3自由度で操作するための装置を開示している。
【0004】
しかしながら、投射照明システムにおける光学素子、光学アセンブリ、または、ウエハテーブルの正確な位置決め等、特にEUVL分野での特別な応用には、6自由度までの操作または位置決め操作(xyz置換及びxyz軸についての回転の両方)が必要であり、同時に高い精度が要求される。
【0005】
光学素子を6自由度まで減衰するための減衰制御アクチュエータは、ハイブリッドアクチュエータという呼び名で知られている。このようなハイブリッドアクチュエータは、「第2世代ハイブリッドDストラット」;ハニウェルマサチューセッツ工科大学;SPIEスマート構造体及び素材会議、1995年2月、カリフォルニア州サンディエゴ、の記事において、ポーター・デイビス等により記載されている。その記事では、減衰システムを備えたロレンツアクチュエータが、ハイブリッドアクチュエータを形成している。これらのハイブリッドアクチュエータの6脚構成の配置もまた記載されている。この構成が、アクティブ減衰の問題に重点を置いている一方で、本発明は、アクチュエータまたはアクチュエータシステムによるサポートまたは調整により、寄生的な力がほとんど光学素子に伝達されないアクチュエータまたはアクチュエータシステムに関連している。
【0006】
表示自由度は、機械的な意味で理解されるべきであるため、剛体の運動学的動作の可能性のそれぞれが、それぞれの自由度を表す独立した座標により記載されている。自由度の例は、すでに述べたように、転換と回転である。
【0007】
1自由度の動きを生成するアクチュエータ、具体的にはピエゾアクチュエータは、操作のために、通常、光学素子または光学アセンブリに連結されている。この連結は、作用の方向において剛性が高くなければならず、残りの自由度においてはほとんど剛性があってはならない。なぜなら、ピエゾアクチュエータは、その連結部で変位力を生成するからである。高精度の応用においては、この連結は、通常、ソリッドボディ要素を使用して達成されるが、それにより望ましくない寄生的な力が発生することがある。したがって、変形が光学素子または光学アセンブリに及ぶのを防ぐために、補正目的で、ソケットが付加的に必要になる。ソケットのような中間要素は、正確な操作に必要とされる高レベルの軸受の剛性を大いに減少させるため、上記で必要とされる位置決め精度を達成できないという不都合な結果を生む。
【0008】
一般的な従来技術に関しては、力制御アクチュエータ、具体的にはロレンツアクチュエータを開示するヨーロッパ特許公報EP1001512A2を参照されたい。そこで記述されているロレンツアクチュエータは、電流が流れる要素が配置された磁界を生成する永久磁石を備えている。結果として生じるロレンツ力は、ロレンツアクチュエータの可動部間の運動または力を生成するために使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1312965号明細書
【特許文献2】米国特許第5,986,827号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1001512号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、望ましくない変形の発生を可能な限り妨げることにより、6自由度までの光学素子またはアセンブリの正確な操作を可能とする、冒頭に記載のタイプの装置を提供することである。
【0011】
本発明によると、本目的は、各アクチュエータデバイスが、少なくとも2つの力制御アクチュエータを備え、各力制御アクチュエータが、1自由度の有効な力を生成すると共に、アクチュエータデバイスの連結点が、光学素子に直接作用することにより達成される。
【0012】
アクチュエータデバイスのアクチュエータの有効な力が、光学素子の異なる自由度の方向に向けられるのが好ましい。アクチュエータの力から生じる、アクチュエータデバイスのこのような有効な力は、アクチュエータデバイスのアクチュエータの個々の力を調整することによって、アクチュエータの有効な力により規定される一平面内で調整されてもよい。
【0013】
さらに、アクチュエータデバイスと光学素子との間の連結点におけるアクチュエータデバイスから光学素子への(アクチュエータデバイスのアクチュエータによりもたらされる)有効な力には、有効な力に垂直な力がほとんどない。これは、この自由度において、剛性がほとんどないためである。しかしながら、アクチュエータデバイスのアクチュエータによりもたらされる、有効な力の方向への剛性は最大である。上述したような剛性状態を達成するために、本発明に基づくアクチュエータは、1自由度の有効な力を生成する力制御アクチュエータである。このアクチュエータは、第1及び第2要素を備える。要素は、相互運動が可能であり、第1要素及び第2要素は、第1及び第2要素間にガスまたは真空のみが存在するように機械的に分断されている。
【0014】
このような力制御アクチュエータ、望ましくはロレンツ型アクチュエータは、ほとんど剛性を生じず、またほとんど要素間に減衰を有しない。これは、例えば磁界の方向及び大きさと電流の方向及び大きさとにより規定されるロレンツ力のような、アクチュエータのそれぞれの自由度における制御力を除き、他の力が第1要素から第2要素へほとんど伝達されないという点で有利である。
【0015】
本発明に基づくアクチュエータデバイスを形成するために、上述したような第1力制御アクチュエータの要素は、連結要素を介して、同じタイプの第2力制御アクチュエータの要素に連結される。連結要素は、光学素子またはその一部であってもよく、これは、アクチュエータデバイスの各アクチュエータが、少なくともその第1または第2要素の1つを使って光学素子に機械的に連結されることを意味する。代わりに、連結要素が、直接、光学素子に連結され、アクチュエータデバイスの各アクチュエータが、少なくともその第1または第2要素の1つを使って連結要素に機械的に接続されてもよい。
【0016】
本発明に基づくアクチュエータデバイスにおいて、少なくとも一方の力制御アクチュエータが作動している場合、連結要素は、少なくとも1自由度の動きが可能である。アクチュエータデバイスの両方の力制御アクチュエータが作動し、所定の力を生成している場合、連結要素は、2自由度の動きが可能であるのが好ましい。
【0017】
さらに、アクチュエータデバイスの連結点は、アクチュエータデバイスのアクチュエータの可動部が、光学素子に直接接触するようにできる。ここでは、すでに上述したように、連結要素は、光学素子である。接触が、大体において点接触であるのが好ましく、これは、アクチュエータデバイスのアクチュエータ全てが光学素子の同一点に作用することを意味する。しかしながら、アクチュエータデバイスのアクチュエータが、光学素子の異なる点に作用するような、その他の接触形態もまた可能である。アクチュエータデバイスに2つ以上のアクチュエータが備えられている場合、一部のアクチュエータが光学素子の同一点に作用し、その他のアクチュエータがその他の点で作用するといった組み合わせも可能である。上述したように、代わりにあるいは付加的に、アクチュエータデバイスの複数のアクチュエータまたは少なくとも1つのアクチュエータが、アクチュエータデバイスの一部であり、アクチュエータデバイスの光学素子への連結点を備えるまたは形成する、別個の連結要素を介して、光学素子に作用してもよい。連結要素は、光学素子の(アクチュエータによりもたらされる)動きが、アクチュエータデバイスの2つのアクチュエータの自由度により規定される空間(通常は、あらゆる自由度により規定される空間の副空間)内で行われるように、2つのアクチュエータと接続されるのが好ましい。別個の連結要素により、アクチュエータデバイスと光学素子との間に、より点に近い連結点が形成されるという利点がある。
【0018】
さらに、本発明によると、本目的は、請求項2及び18により達成される。アクチュエータデバイスについては、本目的は、請求項33により達成される。
本発明に基づく手段は、6自由度までの光学素子または光学アセンブリの正確かつ迅速な操作性能を提供する。力制御アクチュエータの使用により、作用の方向と異なる残りの自由度をほとんど変える必要がなく、このことは、寄生的な力を補正するために中間弾性要素あるいはソケットの必要としないことを意味し、したがって、例えば作用力の方向における、配置の全体の剛性を増加し、位置決め精度を向上する。
【0019】
本発明はまた、それぞれが1自由度の少なくとも2つの力制御アクチュエータを備える、3つのアクチュエータデバイスを備える。
異なるアクチュエータデバイスにより提供される少なくとも2自由度について、少なくとも2つのアクチュエータデバイスの自由度が、線形独立になるように、アクチュエータデバイスが、互いについて配置されていると好ましい。
【0020】
これらの手段により、光学素子は、6自由度までの操作または位置決めを可能にする配置に、有利に取り付けられる。この場合、光学素子は、付加的なソケットなしで取り付けられる。すなわち、アクチュエータデバイスは、光学素子に直接作用する。
【0021】
アクチュエータデバイスが、重力補正装置をそれぞれ備えると有利である。電流が流れていないとき、力制御アクチュエータの可動部には、何ら力が生成されない。これは、アクチュエータが、物体の重力を支えなくてはならない場合に特に問題である。なぜなら、この目的には永久電流が必要であり、したがって、継続的に熱も生成されるからである。これは、熱に敏感な装置において使用するには、非常に不都合である。重力補正により、いわば、光学素子の全重量を支える力制御アクチュエータに、電流を永久に流す必要がなくなる。これは、電力消費量を有利に減少させ、結果として生じる熱エネルギーを縮小する。
【0022】
本発明の1展開において、アクチュエータデバイスの連結点によりカバーされる平面を、光学素子の少なくともほぼ中立面上に置くことも可能である。連結点が、中立面の近くの平面を規定するのが好ましい。平面は、光学素子内部における平面の最大距離が、光学素子の厚みの最大値の20%未満になるように、配置されるのが好ましい。
【0023】
例えば光学素子のような剛体の内部または外部の表面または面は、中立面と称され、中立面においては、例えばマニピュレータ等を使用した力及びモーメントの発生が、光学面にもたらす変形が最小である。同様に、例えば、ワークピースが曲げられたときに圧力がかからないワークピースのファイバは、中性ファイバと称される。対照的に、外部及び内部ファイバは、曲げ加工の間に引き伸ばされたり圧縮されたりする。アクチュエータデバイスの連結点は、中間ソケットなしで、光学素子に直接作用することで、軸受または発生する変形についての光学素子の操作をさらに改良し、アクチュエータデバイスは、光学素子の中立面に有利に作用する。
【0024】
本発明の1設計改良において、製造段階及びその後の使用における重力方向及び作用点を一致させることにより、製造目的で、アクチュエータデバイスをパッシブ代替モジュールに置換することも可能である。
【0025】
アクチュエータデバイスをパッシブ代替モジュールに置換できるため、光学素子は、具体的には重力により光学素子にもたらされる変形の補正に関し、その後の操作時と同じ力関係に基づいて、製造段階でも設計されることができる。これは、操作時の重力が、正確に決められた点に作用する力により補正されることを意味する。アクチュエータデバイスをパッシブ代替モジュールに置換する際、重力は、再び、同一点に作用しなければならない。
【0026】
アクチュエータデバイスの2つの力制御アクチュエータの有効な力のそれぞれが、共有点を通り、重力補正装置の有効な力が、アクチュエータデバイスの2つの力制御アクチュエータの有効な力のそれぞれの共有点を通ると有利である。
【0027】
具体的には、これらの手段は、発生するモーメントによりもたらされる光学素子の変形を縮小する。
請求項2,18,33に関する利点は、請求項1について、また明細書から、すでに記載されている利点と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】光源と、照射システムと、投影レンズとを備えたEUV投射照明システムの基本構成を示す。
【図2】光学素子の操作のための本発明に基づく装置の基本説明図を示す。
【図3】アクチュエータデバイスの基本説明図を示す。
【図4】投影レンズのハウジングにミラーを取り付けるための本発明に基づく装置の簡略平面図を示す。
【図5】ミラーを取り付けるための本発明に基づく装置の斜視図を示す。
【図6】アクチュエータデバイスの斜視図を示す。
【図7】力制御アクチュエータを概略的に示す。
【図8】図3及び図6に示したものと類似のアクチュエータデバイスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の有利な改良と展開は、その他の従属請求項に示されている。実施例は、原則として、以下に図面に基づいて記載されている。
図1からわかるように、EUV投射照明システム1は、光源2と、構造化マスクが配置されている平面4のフィールドを照明するためのEUV照射システム3と、平面4の構造化マスクを感光基板上に結像するための投影レンズ5とを備える。このようなEUV投射照明システムは、ヨーロッパ特許公報EP1278089A2により知られている。
【0030】
投影レンズ5のハウジング8に関連して、ミラー7あるいは光学アセンブリ(図示せず)等の、光学素子を操作するための投影レンズ5には、通常、ある程度の性能が必要とされる。この目的のために、投影レンズ5のハウジング8に対し、ミラー7とアクチュエータデバイス9とが適切に連結されている(これに関しては、具体的には、図4及び図5を参照)。別の実施例においては、光学素子は、センサフレームあるいは投影レンズ5の測定構造体について操作されることもできる。このような測定構造体は、ドイツ特許公報DE10134387A1により知られている。
【0031】
図2は、簡略形式で、3つのアクチュエータデバイス9の使用による、6自由度のミラー7の操作を示している。アクチュエータデバイス9は、力制御ロレンツアクチュエータ10、すなわち力制御ループを介して制御され、それぞれが1自由度のアクチュエータを備える。アクチュエータデバイス9は、構造体に接続されている(図2には表示せず)。図3、図4、図5に示すように、この構造体は、投射照明システム1の投影レンズ5のハウジング8であってもよい。
【0032】
図3は、ミラー7への連結点11を1つと、構造体、すなわち投影レンズ5のハウジング8への連結を2つ備えたアクチュエータデバイス9の基本説明図である。2つのロレンツアクチュエータ10は、共に1自由度をサポートし、ミラー7の操作に使用される。ロレンツアクチュエータ10のエネルギー消費を最小化するために、アクチュエータデバイス9は、ハウジング8に同様に連結された重力補正装置12を付加的に備えている。本実施例においては、ばね要素12がミラー7の重力を補正するための反力要素として使用されている。アクチュエータデバイス9において発生する力は、重力補正装置12及び2つのロレンツアクチュエータ10から、共有点を通って有利に伝達され、それにより、具体的にはモーメントが発生するときに、ミラー7の光学表面の変形を最小化する。ロレンツアクチュエータ10は、1つの平面内に配置されていて、互いに90°の角度にある。本実施例における重力補正装置12の有効な力の方向は、重力に平行であり、ロレンツアクチュエータ10は、重力補正装置12の両側に対称的に位置している。他の実施例において、例えばミラー7が斜めに配置された場合、アクチュエータデバイス9は、必ずしも対称的である必要はない。
【0033】
別の実施例における連結点11は、(例えば磁力による連結力により)ミラー7から機械的に分断されてもよい。
図7は、本発明に基づく力制御アクチュエータを概略的に示している。アクチュエータ10は、第1要素10a及び第2要素10bを備える。要素10a及び10bは、相互運動が可能である。要素10a及び10bの両方が、部品A及びBに接続されており、本発明の応用例においては、一方の部品が光学素子であり、他方の部品がハウジングのような構造体である。第1及び第2要素10a、10bは、両方の要素間の間隙10cに、ガスまたは真空しか存在しないように、機械的に分断されている。要素10a、10bのうちの一方の要素が、ソレノイド10dを備えるのが好ましい。ソレノイド10dに電流が流されると、間隙10cまたは間隙10cの一部が変更され、要素10a、10bは、部品A,Bと共に、相互運動する。間隙10cが、x及び/またはz方向に、+/−300マイクロメートルの動きが可能な大きさであると好ましい。
【0034】
図8は、本発明に基づくアクチュエータデバイス9を形成する、同様のタイプの力制御アクチュエータを概略的に示している。アクチュエータ10は、共に、図7に関連して記載されたタイプであるが、連結要素15と機械的に連結されている。記載の実施例において、各アクチュエータ10の一方の要素10aは、基本構造体Aに接続され、両方のアクチュエータの他方の要素10bは、連結要素15に接続されている。両方のアクチュエータ10の間隙10cは、例えば連結要素が、xz平面内の任意の方向に、約+/−300マイクロメートル動くことができるように設けられるため、各アクチュエータ10の第1及び第2要素10a及び10bは、直接接触することがない。
【0035】
図7に基づくアクチュエータが、ロレンツアクチュエータである場合、図7のアクチュエータの力は、zの方向に作用する。可動要素、つまり要素10bを、運動の方向に垂直な平面であるyz平面内に固定するには、通常、軸受が必要である。本発明による軸受は、機械的ではない。なぜなら、力制御アクチュエータ10の第1及び第2要素10a、10bが、機械的に分断されているからである。軸受は、電磁気または磁気的であるのが好ましい。
【0036】
図8のアクチュエータデバイス9において、例えば図7に関連して記載されているように、両方のアクチュエータがロレンツタイプである場合、xz平面(アクチュエータデバイスを形成する2つの力制御アクチュエータの力により規定される平面)の連結要素15(それ自身が光学素子であってよい)の軸受に、磁気軸受を使用してもよい。しかしながら、軸受磁石もまたこの方向のために使用されている場合を除き、yz平面(アクチュエータデバイスを形成する2つの力制御アクチュエータの力により規定される平面に垂直な平面)には軸受はない。このため、力制御アクチュエータ10の第1及び第2要素10a、10bは、機械的に分断されている。yz平面の磁気軸受の代わりにあるいはそれに付加して、第3の力制御アクチュエータが、連結要素15に接続されてもよい。この第3のアクチュエータは、xz平面(アクチュエータデバイスを形成する2つの力制御アクチュエータの力により規定される平面)以外の平面に配置される。このような配置により、連結要素(光学素子であってもよい)は、機械軸受なしで保持され、5自由度の動きが可能になる。
【0037】
図4は、投影レンズ5のハウジング8におけるミラー7のための本発明に基づく軸受の簡略図を示している。ミラー7は、それぞれがハウジング8について2自由度の3つのアクチュエータデバイス9により操作される。図5からわかるように、アクチュエータデバイス9は、ミラー7の下に配置されているため、点線により示されている。アクチュエータデバイス9は、ミラー7の周囲に120°の均等間隔で配置されている。アクチュエータデバイス9のうちの1つの各力制御アクチュエータ10によりカバーされる3つの平面は、重力に平行であるのが好ましいが必ずしもそうである必要はなく、平面図で見ると、3角形を形成している(図4にアクチュエータデバイス9について拡張された点線により示されている)。アクチュエータデバイスは、図8に関連して記載されたように形成されるのが好ましい。
【0038】
図5は、図4に示した装置の斜視図である。アクチュエータデバイス9の連結点11によりカバーされる平面は、ミラー7の中立面上に有利に存在し、それにより、ミラー表面の変形が縮小されている。本実施例においては、光学素子7の軸受として3つのアクチュエータデバイスを使用することにより、力制御アクチュエータの固定要素と可動要素との間には機械的連結または接続が存在せず有利である。さらに重要なのは、図4の実施例においては、3つのアクチュエータデバイス9を使用することにより、ほとんど剛性及び減衰がないにも関わらず、力制御アクチュエータデバイス9の力の方向には剛性があることである。
【0039】
図6は、ロレンツアクチュエータ10及び重力補正スプリング12を備えたアクチュエータデバイス9の斜視図である。アクチュエータデバイス9は、連結点11でミラー7に接続されている(図4参照)。連結点11は、図8に関連して記載されているように、連結要素15上に形成されてもよい。
【0040】
さらに、ミラー7の位置は、センサ(図示せず)により決定されている。
パッシブ代替モジュールは、その後の操作時の関係と同じ力関係に基づいたミラー7の設計を可能にし、重力(図示せず)から生じるミラー変形を補正するために、製造段階で使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学素子を6自由度まで操作する装置であって、各アクチュエータデバイス(9)が、少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)を備え、各力制御アクチュエータ(10)が、1自由度の有効な力を生成すると共に、アクチュエータデバイス(9)の連結点(11)が、光学素子(7)に直接作用することを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学素子を6自由度まで操作する装置であって、アクチュエータデバイス(9)の連結点(11)が、光学素子(7)に直接作用すると共に、光学素子(7)上の、アクチュエータデバイス(9)の連結点(11)によりカバーされる平面が、少なくともほぼ光学素子(7)の中立面上にあることを特徴とする装置。
【請求項3】
3つのアクチュエータデバイス(9)が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
各アクチュエータデバイス(9)が、少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)を備え、各力制御アクチュエータ(10)が、1自由度の有効な力を生成することを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
アクチュエータデバイス(9)の少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)のそれぞれが、1つの平面内に配置されていて、互いについて、およそ60°から120°、好ましくは90°の角度にあることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
各アクチュエータデバイス(9)が、光学素子(7)の重力を補正するための反力要素として重力補正装置を備えることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
アクチュエータデバイス(9)の各力制御アクチュエータ10によりカバーされる3つの平面は、重力に平行であり、重力に平行な投影において、3角形を形成することを特徴とする、請求項1、3ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
アクチュエータデバイス(9)は、光学素子(7)の周囲にほぼ均等の間隔、好ましくは120°の3つの間隔で、配置されていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
光学素子(7)上の、アクチュエータデバイス(9)の連結点(11)によりカバーされる平面が、少なくともほぼ光学素子(7)の中立面上にあることを特徴とする、請求項1、3ないし8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
アクチュエータデバイス(9)の少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれが、好ましくは光学素子(7)上の共有点を通ることを特徴とする、請求項1、3ないし9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
重力補正装置(12)の有効な力が、重力にほぼ平行であり、好ましくはアクチュエータデバイス(9)の2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれの共有点を通ることを特徴とする、請求項6ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
アクチュエータデバイス(9)の少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれ、及び/または、重力補正装置(12)が、好ましくは磁力により、光学素子(7)から機械的に分断されていることを特徴とする、請求項6ないし11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
光学素子(7)の位置決めのために、センサが設けられていることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
製造段階及びその後の使用における力方向及び作用点を一致させることにより、アクチュエータデバイス(9)を、製造目的で、パッシブ代替モジュールに置換することができることを特徴とする、請求項1ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
力制御アクチュエータが、電磁気または静磁気的な形態、具体的にはロレンツアクチュエータ(10)であることを特徴とする、請求項1,3ないし14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
光学素子が、ミラー(7)の形態であることを特徴とする、請求項2ないし15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
構造体が、投影レンズ(5)、具体的にはEUV範囲において半導体部品を製造するためのマイクロリソグラフィのための投射照明システム(1)のハウジング(8)またはセンサフレームであることを特徴とする、請求項1ないし16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
少なくとも3つのアクチュエータデバイスを介して、構造体について、光学素子を6自由度まで操作する装置であって、各アクチュエータデバイス(9)が、少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)を備え、各力制御アクチュエータ(10)が、1自由度の有効な力を生成することを特徴とする装置。
【請求項19】
3つのアクチュエータデバイス(9)が設けられていることを特徴とする、請求項18に装置。
【請求項20】
アクチュエータデバイス(9)の少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)のそれぞれが、1つの平面内に配置されていて、互いについて、およそ60°から120°、好ましくは90°の角度にあることを特徴とする、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
各アクチュエータデバイス(9)が、光学素子(7)の重力を補正するための反力要素として重力補正装置を備えることを特徴とする、請求項18または19または20に記載の装置。
【請求項22】
アクチュエータデバイス(9)の各力制御アクチュエータ10によりカバーされる3つの平面は、重力に平行であり、重力に平行な投影において、3角形を形成することを特徴とする、請求項18ないし21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
アクチュエータデバイス(9)は、光学素子(7)の周囲にほぼ均等の間隔、好ましくは120°の3つの間隔で、配置されていることを特徴とする、請求項18ないし22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
アクチュエータデバイス(9)の少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれが、好ましくは光学アセンブリ上の共有点を通ることを特徴とする、請求項18ないし23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
重力補正装置(12)の有効な力が、重力にほぼ平行であり、好ましくはアクチュエータデバイス(9)の2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれの共有点を通ることを特徴とする、請求項18ないし24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
アクチュエータデバイス(9)の少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれ、及び/または、重力補正装置(12)が、好ましくは磁力により、光学アセンブリから機械的に分断されていることを特徴とする、請求項18ないし25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
光学アセンブリの位置決めのために、センサが設けられていることを特徴とする、請求項18ないし26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
製造段階及びその後の使用における重力方向及び作用点を一致させることにより、アクチュエータデバイス(9)を、製造目的で、パッシブ代替モジュールに置換することができることを特徴とする、請求項18ないし27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
力制御アクチュエータが、電磁気または静磁気的な形態、具体的にはロレンツアクチュエータ(10)であることを特徴とする、請求項18ないし28に記載の装置。
【請求項30】
構造体が、投影レンズ(5)、具体的にはEUV範囲において半導体部品を製造するためのマイクロリソグラフィのための投射照明システム(1)のハウジング(8)またはセンサフレームであることを特徴とする、請求項18ないし29のいずれかに記載の装置。
【請求項31】
光学アセンブリが、少なくとも1つの光学素子と、少なくとも1つのソケット要素とを備えることを特徴とする、請求項18ないし30のいずれかに記載の装置。
【請求項32】
投影レンズ(5)、具体的にはEUV範囲において半導体部品を製造するためのマイクロリソグラフィのための投射照明システム(1)であって、ハウジング(8)に配置された2つ以上の光学素子(7)を備え、少なくとも1つの光学素子(7)が、請求項1ないし17のいずれかに記載の装置により、ハウジング(8)について操作されることができるように取り付けられていることを特徴とする投影レンズ。
【請求項33】
構造体(8)に光学素子(7)または光学アセンブリを直接連結するためのアクチュエータデバイスであって、それぞれ1自由度の有効な力を生成し、互いについて、およそ60°ないし120°、好ましくは90°の角度で1つの平面内に配置されている少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)を備えることを特徴とするアクチュエータデバイス。
【請求項34】
少なくとも2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力のそれぞれが、好ましくは光学素子(7)上または光学アセンブリ上の共有点を通ることを特徴とする、請求項33に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項35】
光学素子(7)または光学アセンブリの重力を補正するための反力要素として重力補正装置により特徴付けられ、重力補正装置の有効な力が、重力にほぼ平行であり、好ましくは2つの力制御アクチュエータ(10)の有効な力の共通の交点を通ることを特徴とする請求項33または34に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項36】
光学素子(7)上の連結点(11)が、少なくともほぼ光学素子(7)の中立面上にあることを特徴とする、請求項33または34または35に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項37】
相互運動が可能な第1要素10a及び第2要素10bを備え、第1要素10a及び第2要素10bが、第1及び第2要素10a、10b間にガスまたは真空のみが存在するように機械的に分断されていることを特徴とする、1自由度の有効な力を生成する力制御アクチュエータ10。
【請求項38】
一方の要素10bが、同じタイプの第2力制御アクチュエータ10の一方の要素10bに、連結要素15により機械的に連結されていることを特徴とする、請求項37に記載の第1力制御アクチュエータ10。
【請求項39】
少なくとも1つのアクチュエータが作動している場合、連結要素15が少なくとも1自由度の動きが可能であることを特徴とする、請求項38に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項40】
2つの力制御アクチュエータが作動している場合、連結要素15が2自由度の動きが可能であることを特徴とする、請求項39に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項41】
請求項37に記載の力制御アクチュエータを備えた請求項33ないし36のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項42】
請求項37に記載の力制御アクチュエータを備えた請求項1ないし31のいずれかに記載の装置。
【請求項43】
請求項37に記載の力制御アクチュエータを備えた請求項32に記載の投影レンズ。
【請求項44】
請求項1ないし31に記載の装置または請求項32の投影レンズにおける請求項37ないし40のいずれかに記載の力制御アクチュエータの応用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190041(P2012−190041A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113006(P2012−113006)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2006−525734(P2006−525734)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】