光学装置
【課題】 撮像面に結像させる被写体光の光量を平準化することのできる光学装置を提案すること。
【解決手段】 光学装置10は、レンズ群14と、このレンズ群14によって被写体光が撮像面151に結像される撮像素子15とを有している。レンズ群14を構成している2枚のメニスカス凸レンズ11、12のうち、正のパワーが大きくて、像側のメニスカス凸レンズ12には、レンズ材に吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤が含まれている。従って、可視光がメニスカス凸レンズ12を通過する際、中心側での吸収が大であるので、撮像素子45に到達する光量の中心側と周辺との間の差を圧縮することができる。
【解決手段】 光学装置10は、レンズ群14と、このレンズ群14によって被写体光が撮像面151に結像される撮像素子15とを有している。レンズ群14を構成している2枚のメニスカス凸レンズ11、12のうち、正のパワーが大きくて、像側のメニスカス凸レンズ12には、レンズ材に吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤が含まれている。従って、可視光がメニスカス凸レンズ12を通過する際、中心側での吸収が大であるので、撮像素子45に到達する光量の中心側と周辺との間の差を圧縮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸レンズを含む複数枚のレンズを有する光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラや携帯電話用カメラなどといった光学装置では、図12(a)に示すように、CCDやC−MOS等といった撮像素子101の撮像面101aに、凸レンズ102を備えた複数枚のレンズ(図示せず)によって被写体光Lが結像されるように光学系が構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような光学系について光線追跡を行うと、図12(b)に示すように、撮像面101aに到達する被写体光Lの光量(強度)は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。このため、撮像素子101で撮像された画像において周辺部の像が中心部の像に比べて暗くなってしまうという問題点がある。このような明暗は、光学系を構成しているレンズの枚数が少なくなるほど顕著になるため、デジタルカメラや携帯電話用カメラなどといった光学装置においては、小型化、低コストとともに、画像品質の向上を図るには大きな障害となる。
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、新たな光学素子を追加することなく、像側での光量分布を改善することのできる光学装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明では、少なくとも1枚の凸レンズを含む複数枚のレンズを有する光学装置において、前記凸レンズには、可視領域に吸収帯を有する可視光吸収剤をレンズ材料中に含む凸レンズが含まれていることを特徴とする。
【0006】
本発明において、「可視領域」とは約400nmから約750nmの波長領域を意味する。また、本発明において、「可視領域に吸収帯を有する」とは、吸収帯が可視領域の少なくとも一部に重なっている構成、吸収帯が可視領域の全体と重なっている構成、吸収帯が可視領域以外の領域とも重なっている構成を含む意味である。さらに、本発明において、「可視光吸収剤をレンズ材料中に含む凸レンズ」とは、かかる凸レンズが単体で使用されている形態の他、他のレンズと接合された接合レンズとして使用されている形態の双方を含む意味であり、後者の場合、接合レンズ全体として正のパワーおよび負のパワーのいずれのパワーを有していてもよい。
【0007】
本発明において、凸レンズを含むレンズ群に対する光線追跡を行うと、かかるレンズ群を介して撮像素子に到達する光量は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。一方、凸レンズは、光軸の中心側で肉厚が大で、周辺に向かうにしたがって薄くなっている。従って、凸レンズを構成するレンズ材料に可視光吸収剤を含ませておくと、可視光が凸レンズを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となるため、撮像素子に到達する可視光の光量は、その中心側と周辺とで差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子側での可視光の光量分布を改善することができる。
【0008】
本発明において、前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、当該複数枚の凸レンズのうち、中央部分の肉厚と周辺部分の肉厚の比が最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることが好ましい。このような凸レンズに可視光吸収剤を含ませておけば、撮像素子に到達する光量において、中心側と周辺との差を効率よく圧縮することができる。
【0009】
本発明において、前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれている場合、当該複数枚の凸レンズのうち、パワーが最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることが好ましい。凸レンズでは、パワーが大きいほど、中心の肉厚が大で、周辺に向かうにしたがって薄くなるため、パワーが最大の凸レンズに可視光吸収剤を含ませておけば、撮像素子に到達する光量において、中心側と周辺との差を効率よく圧縮することができる。
【0010】
本発明において、前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれている場合、当該複数枚の凸レンズのうち、最も像側に配置された凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることが好ましい。小型の撮像装置においては、最も像側に配置した凸レンズのパワーが最大に設計されることが多いので、このような凸レンズに可視光吸収剤を含ませておけば、撮像素子に到達する光量において、中心側と周辺との差を効率よく圧縮することができる。
【0011】
本発明が適用される光学装置は、例えば、前記複数枚のレンズを介して像が結像される撮像素子を有する撮像装置であり、かかる撮像装置のうち、デジタルカメラや携帯電話用カメラなどに搭載される撮像装置では、小型化、低コストを図るためにレンズ枚数を極力、少なく抑える傾向がある一方、画像品質の向上が強く求められていることから、本発明を適用したときの効果が顕著である。
【発明の効果】
【0012】
撮像装置などの光学装置では、撮像素子に到達する光量は、その中心が最も高く、周辺に向かうにしたがって低くなるが、本発明では、凸レンズを構成するレンズ材料に可視光吸収剤を含ませているため、可視光が凸レンズを通過する際、その中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子に到達する光量は、その中心側と周辺とで差が圧縮されるので、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子側での光量分布を改善することができる。それ故、デジタルカメラや携帯電話用カメラなどの撮像装置において、小型化、低コストとともに、画像品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した光学装置の一例を説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る光学装置の概略構成図、および撮像面に結像される被写体光の強度分布を示す説明図である。図2は、本形態で可視光吸収剤として用いた鉄イオンの吸収帯を示す説明図である。なお、図1(a)には、表1に示すレンズデータにおける面ナンバーr11〜r14、および面間隔d11〜d15を括弧内に示してある。
【0015】
図1(a)に示すように、本形態の光学装置10は、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ11、および像側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ12を備えたレンズ群14と、このレンズ群14によって被写体光が撮像面151に結像される撮像素子15とを有している。レンズ群14において、メニスカス凸レンズ11とメニスカス凸レンズ12との間には絞り16が配置されている。
【0016】
このように構成した光学装置10において、メニスカス凸レンズ11および12は、いずれもレンズ面が非球面となっており、レンズデータは表1に示す通りである。
【0017】
【表1】
【0018】
レンズ群14において、メニスカス凸レンズ11、12はいずれも、モールドプレス成形により製造したガラスレンズである。本形態では、メニスカス凸レンズ11、12を製造するにあたって、屈折率nd=1.58913のガラス材からなるモールドプレス成形用のプリフォームファインゴブを用いている。
【0019】
このように構成した光学装置10において、本形態では、メニスカス凸レンズ11、12のうち、像側に位置するメニスカス凸レンズ12を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含むプリフォームファインゴブを用いたため、メニスカス凸レンズ12を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。
【0020】
本形態においては、メニスカス凸レンズ12がガラスレンズであるので、可視光吸収剤としては、鉄イオンが用いられており、かかる鉄イオンは、レンズ材料に還元剤とともに配合することにより、2価の状態となる。2価の鉄イオンは図2に示す吸収特性を有しており、図2から分かるように、本形態の可視光吸収剤は、可視領域における吸収率が約10%である。
【0021】
このように構成した光学装置10において、メニスカス凸レンズ12が可視光吸収剤を含んでいない場合に撮像素子15に到達する光量を光線追跡により求めると、図1(b)に実線L1で示すように表され、撮像素子15に到達する光量は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。ここで、メニスカス凸レンズ12は、光軸の中心側で肉厚が大で、周辺に向かうにしたがって薄くなっており、本形態では、かかるメニスカス凸レンズ12に可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ12を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子15に到達する光量は、図1(b)に点線L2で示すように、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子15側での光量分布を改善することができる。
【0022】
また、本形態では、2枚のメニスカス凸レンズ11、12のうち、最も像側に配置されたメニスカス凸レンズ12において、レンズ材料中に可視光吸収剤が含まれ、かかるメニスカス凸レンズ12は、メニスカス凸レンズ11よりも大きな正のパワーを有している。このため、メニスカス凸レンズ12は、メニスカス凸レンズ11よりも、中心側と周辺側との間の肉厚の比が大きいため、撮像素子15に到達する光量の中心側と周辺との間の差を効率よく圧縮することができる。
【0023】
さらに、本形態では、撮像素子15として、CCD、C−MOSなどといったシリコンフォトダイオードが用いられ、かかるシリコンフォトダイオードは、感度範囲が可視領域から近赤外領域までの広範囲に渡っているので、撮像素子15に赤外光が届くと、コントラストが低下するなど、画像の品質が低下する。しかるに本形態で用いた可視光吸収剤は、図2からも分かるように、赤外領域にも吸収帯を備えている。従って、本形態によれば、メニスカス凸レンズ12が赤外線をカットするため、高価なIRカットフィルターを用いなくても、撮像素子15に赤外光が届くことによる画像品位の低下を防止できる。それ故、光学装置10のコストを低減できる。また、本形態によれば、IRカットフィルターを保持するための機構が不要であるため、光学装置10の小型化を図ることもできる。
【0024】
[実施の形態1の変形例]
図3は、本発明の実施の形態1の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図3には、表2に示すレンズデータにおける面ナンバーr11′〜r16′、および面間隔d11′〜d17′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0025】
上記実施の形態1では、可視光吸収剤として、図2に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図3に示すメニスカス凸レンズ12aに含ませてある。従って、本形態の光学装置10の光学系は、メニスカス凸レンズ12aと撮像素子15の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ17が配置されている。IRカットフィルタ17としては、例えば、SiO2(屈折率nd=1.46)とTa2O5(屈折率nd=2.3)をガラス基板にそれぞれ13層重ねて蒸着したものを用いることができる。
【0026】
なお、表2には本形態のレンズデータを示してある。表2において、IRカットフィルタ17の基材を構成する「BK7」はBK7ガラスを示している。
【0027】
【表2】
【0028】
このように構成した光学装置10Aでも、メニスカス凸レンズ12aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ12aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子15に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子15側での光量分布を改善することができる。また、2枚のメニスカス凸レンズ11、12aのうち、最も像側に配置されたメニスカス凸レンズ12aが可視光吸収剤を含んでいる。ここで、メニスカス凸レンズ12aは、メニスカス凸レンズ11よりも、正のパワーが大きく、中心側と周辺側との間の肉厚の差が大きい。このため、撮像素子15に到達する光量の中心側と周辺との間の差を効率よく圧縮することができる。
【0029】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係る光学装置の概略構成図である。図5は、本形態で可視光吸収剤として用いたKAYASORB IRG−002の吸収帯を示す説明図である。図6は、本形態で可視光吸収剤として用いたルモゲンIR765およびルモゲンIR788の吸収帯を示す説明図である。なお、図4には、表3に示すレンズデータにおける面ナンバーr21〜r24、および面間隔d21〜d24を括弧内に示してある。
【0030】
図4に示すように、本形態の光学装置20は、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ21、および像側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ22を備えたレンズ群24と、このレンズ群24によって被写体光が撮像面251に結像される撮像素子25とを有している。レンズ群24において、メニスカス凸レンズ21より物体側には絞り26が配置されている。
【0031】
このように構成した光学装置20において、メニスカス凸レンズ21および22は、いずれもレンズ面が非球面となっており、レンズデータは表3に示す通りである。
【0032】
【表3】
【0033】
レンズ群24において、メニスカス凸レンズ21、22はいずれも、プラスチックレンズであり、射出成形により製造したものである。本形態では、メニスカスレンズ21および22のうち、像側のメニスカスレンズ22を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含む成形材料を用いたため、メニスカス凸レンズ22を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。
【0034】
本形態において、メニスカス凸レンズ22がプラスチックレンズであるので、可視光吸収剤としては、アルミニウム系化合物であるKAYASORB IRG−002(日本化薬(株)の登録商標)や、クオタリルイミドであるルモゲンIR765およびルモゲンIR788(BASF−JAPAN(株)の登録商標)などを用いることができる。
【0035】
これらの可視光吸収剤のうち、KAYASORB IRG−002は、図5に示すように、可視領域である400nm〜700nmの波長を僅かに吸収する特性を有している。また、ルモゲンIR765およびルモゲンIR788も、可視領域である400nm〜700nmの波長を僅かに吸収する特性を有している。
【0036】
このように構成した光学装置20において、メニスカス凸レンズ22が可視光吸収剤を含んでいない場合に撮像素子25に到達する光量を光線追跡により求めると、撮像素子25に到達する光量は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。しかるに本形態では、メニスカス凸レンズ22に可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ22を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子25に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子25側での光量分布を改善することができる。
【0037】
また、本形態では、2枚のメニスカス凸レンズ21、22のうち、大きな正のパワーを有し、かつ、像側に配置されたメニスカス凸レンズ22において、レンズ材料中に可視光吸収剤が含まれているため、撮像素子25に到達する光量の中心側と周辺との間の差を効率よく圧縮することができる。
【0038】
さらに、本形態で用いた可視光吸収剤は、図5および図6から分かるように、赤外領域にも吸収帯を備えている。従って、本形態によれば、メニスカス凸レンズ22が赤外線をカットするため、高価なIRカットフィルターを用いなくても、撮像素子25に赤外光が届くことによる画像品位の低下を防止できる。
【0039】
[実施の形態2の変形例]
図7は、本発明の実施の形態2の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図7には、表4に示すレンズデータにおける面ナンバーr21′〜r26′、および面間隔d21〜d26′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態2と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0040】
上記実施の形態2では、可視光吸収剤として、図5および図6に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図7に示すメニスカス凸レンズ22aに含ませてある。従って、本形態の光学装置20Aの光学系は、メニスカス凸レンズ22aと撮像素子25の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ27が配置されている。なお、表4には本形態のレンズデータを示してある。
【0041】
【表4】
【0042】
このように構成した光学装置20Aでも、メニスカス凸レンズ22aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ22aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子25に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子25側での光量分布を改善することができる。
【0043】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3に係る光学装置の概略構成図である。なお、図8には、表5に示すレンズデータにおける面ナンバーr31〜r36、および面間隔d31〜d37を括弧内に示してある。
【0044】
図8に示すように、本形態の光学装置30は、物体側から順に、正のパワーを有する両凸レンズ31、負のパワーを有する両凹レンズ32、および正のパワーを有する両凸レンズ33がこの順番に配置された3枚構成のレンズ群34と、このレンズ群34によって被写体光が撮像面351に結像される撮像素子35とを有している。また、両凹レンズ32と両凸レンズ33との間には絞り36が配置されている。
【0045】
レンズ群34において、レンズ31〜33はいずれもプラスチックレンズであり、射出成形により製造したものであり、本形態でも、実施の形態2と同様、両凸レンズ31,33のうち、像側の両凸レンズ33を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含む成形材料を用いたため、両凸レンズ33を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。本形態において、両凸レンズ33がプラスチックレンズであるので、可視光吸収剤としては、実施の形態2と同様、アルミニウム系化合物であるKAYASORB IRG−002(日本化薬(株)の登録商標)や、クオタリルイミドであるルモゲンIR765およびルモゲンIR788(BASF−JAPAN(株)の登録商標)などを用いることができる。
【0046】
このように構成した光学装置30において、両凸レンズ31の入射面、および両凸レンズ33の両面はそれぞれ非球面となってなっており、レンズデータは表5に示す通りである。また、表5において、「ゼオネックス480R」は、日本ゼオン株式会社製のシクロオレフィンポリマーの商標名である。
【0047】
【表5】
【0048】
このように構成した光学装置30においても、両凸レンズ33に可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ33を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子35に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子35側での光量分布を改善することができるなど、実施の形態1と略同様な効果を奏する。
【0049】
[実施の形態3の変形例]
図9は、本発明の実施の形態3の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図9には、表6に示すレンズデータにおける面ナンバーr31′〜r38′、および面間隔d31′〜d39′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0050】
上記実施の形態3では、可視光吸収剤として、図5および図6に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図9に示す両凸レンズ33aに含ませてある。従って、本形態の光学装置30Aの光学系は、両凸レンズ33aと撮像素子35の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ37が配置されている。なお、表6には本形態のレンズデータを示してある。
【0051】
【表6】
【0052】
このように構成した光学装置30Aでも、両凸レンズ33aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ33aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子35に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子35側での光量分布を改善することができる。
【0053】
[実施の形態4]
図10は、本発明の実施の形態4に係る光学装置の概略構成図である。なお、図10には、表7に示すレンズデータにおける面ナンバーr41〜r46、および面間隔d41〜d46を括弧内に示してある。
【0054】
図10に示すように、本形態の光学装置40は、物体側から順に、正のパワーを有する両凸レンズ41、負のパワーを有する両凹レンズ42、および正のパワーを有する両凸レンズ43がこの順番に配置された3枚構成のレンズ群44と、このレンズ群44によって被写体光が撮像面451に結像される撮像素子45とを有している。また、本形態では、レンズ群44の前(物体側)に絞り46が配置されている。
【0055】
レンズ群44において、両凸レンズ41および両凹レンズ42はいずれもプラスチックレンズであり、射出成形により製造したものである。一方、両凸レンズ43はガラスレンズであり、モールドプレス成形により製造したものである。
【0056】
本形態では、正のパワーを有する両凸レンズ41、43のうち、像側の両凸レンズ43を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含むプリフォームファインゴブを用いたため、両凸レンズ43を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。本形態において、両凸レンズ43がガラスレンズであるので、可視光吸収剤としては、実施の形態1と同様、鉄イオンなどを用いることができる。
【0057】
このように構成した光学装置40において、両凸レンズ41の入射面、両凹レンズ42の両面、および両凸レンズ43の両面はそれぞれ非球面となってなっており、レンズデータは表7に示す通りである。
【0058】
【表7】
【0059】
このように構成した光学装置40においても、両凸レンズ43に可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ43を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子45に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子45側での光量分布を改善することができるなど、実施の形態1と略同様な効果を奏する。
【0060】
[実施の形態4の変形例]
図11は、本発明の実施の形態4の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図11には、表8に示すレンズデータにおける面ナンバーr41′〜r48′、および面間隔d41′〜d48′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0061】
上記実施の形態4では、可視光吸収剤として、図2に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図11に示す両凸レンズ43aに含ませてある。従って、本形態の光学装置40Aの光学系は、両凸レンズ43aと撮像素子35の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ47が配置されている。なお、表8には本形態のレンズデータを示してある。
【0062】
【表8】
【0063】
このように構成した光学装置40Aでも、両凸レンズ43aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ43aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子45に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子45側での光量分布を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る光学装置の概略構成図、および撮像面に結像される被写体光の強度分布を示す説明図である。
【図2】可視光吸収剤として用いた鉄イオンの吸収帯を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る光学装置の概略構成図である。
【図5】可視光吸収剤として用いたアルミニウム系化合物であるKAYASORB IRG−002の各波長領域の光の吸収量を示す説明図である。
【図6】可視光吸収剤として用いたクオタリルイミドであるルモゲンIR765およびルモゲンIR788の各波長領域の光の吸収量を示す説明図である。
【図7】実施の形態2の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る光学装置の概略構成図である。
【図9】実施の形態3の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る光学装置の概略構成図である。
【図11】実施の形態4の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図12】(a)および(b)はそれぞれ、従来の光学装置の概略構成図、および撮像面に結像される被写体光の強度分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10、10A、20、20A、30、30A、40、40A 光学装置
14、24、34、44 レンズ群
12、12a、22、22a メニスカス凸レンズ
33、33a、43、43a 両凸レンズ
15、25、35、45 撮像素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸レンズを含む複数枚のレンズを有する光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラや携帯電話用カメラなどといった光学装置では、図12(a)に示すように、CCDやC−MOS等といった撮像素子101の撮像面101aに、凸レンズ102を備えた複数枚のレンズ(図示せず)によって被写体光Lが結像されるように光学系が構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような光学系について光線追跡を行うと、図12(b)に示すように、撮像面101aに到達する被写体光Lの光量(強度)は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。このため、撮像素子101で撮像された画像において周辺部の像が中心部の像に比べて暗くなってしまうという問題点がある。このような明暗は、光学系を構成しているレンズの枚数が少なくなるほど顕著になるため、デジタルカメラや携帯電話用カメラなどといった光学装置においては、小型化、低コストとともに、画像品質の向上を図るには大きな障害となる。
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、新たな光学素子を追加することなく、像側での光量分布を改善することのできる光学装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明では、少なくとも1枚の凸レンズを含む複数枚のレンズを有する光学装置において、前記凸レンズには、可視領域に吸収帯を有する可視光吸収剤をレンズ材料中に含む凸レンズが含まれていることを特徴とする。
【0006】
本発明において、「可視領域」とは約400nmから約750nmの波長領域を意味する。また、本発明において、「可視領域に吸収帯を有する」とは、吸収帯が可視領域の少なくとも一部に重なっている構成、吸収帯が可視領域の全体と重なっている構成、吸収帯が可視領域以外の領域とも重なっている構成を含む意味である。さらに、本発明において、「可視光吸収剤をレンズ材料中に含む凸レンズ」とは、かかる凸レンズが単体で使用されている形態の他、他のレンズと接合された接合レンズとして使用されている形態の双方を含む意味であり、後者の場合、接合レンズ全体として正のパワーおよび負のパワーのいずれのパワーを有していてもよい。
【0007】
本発明において、凸レンズを含むレンズ群に対する光線追跡を行うと、かかるレンズ群を介して撮像素子に到達する光量は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。一方、凸レンズは、光軸の中心側で肉厚が大で、周辺に向かうにしたがって薄くなっている。従って、凸レンズを構成するレンズ材料に可視光吸収剤を含ませておくと、可視光が凸レンズを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となるため、撮像素子に到達する可視光の光量は、その中心側と周辺とで差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子側での可視光の光量分布を改善することができる。
【0008】
本発明において、前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、当該複数枚の凸レンズのうち、中央部分の肉厚と周辺部分の肉厚の比が最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることが好ましい。このような凸レンズに可視光吸収剤を含ませておけば、撮像素子に到達する光量において、中心側と周辺との差を効率よく圧縮することができる。
【0009】
本発明において、前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれている場合、当該複数枚の凸レンズのうち、パワーが最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることが好ましい。凸レンズでは、パワーが大きいほど、中心の肉厚が大で、周辺に向かうにしたがって薄くなるため、パワーが最大の凸レンズに可視光吸収剤を含ませておけば、撮像素子に到達する光量において、中心側と周辺との差を効率よく圧縮することができる。
【0010】
本発明において、前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれている場合、当該複数枚の凸レンズのうち、最も像側に配置された凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることが好ましい。小型の撮像装置においては、最も像側に配置した凸レンズのパワーが最大に設計されることが多いので、このような凸レンズに可視光吸収剤を含ませておけば、撮像素子に到達する光量において、中心側と周辺との差を効率よく圧縮することができる。
【0011】
本発明が適用される光学装置は、例えば、前記複数枚のレンズを介して像が結像される撮像素子を有する撮像装置であり、かかる撮像装置のうち、デジタルカメラや携帯電話用カメラなどに搭載される撮像装置では、小型化、低コストを図るためにレンズ枚数を極力、少なく抑える傾向がある一方、画像品質の向上が強く求められていることから、本発明を適用したときの効果が顕著である。
【発明の効果】
【0012】
撮像装置などの光学装置では、撮像素子に到達する光量は、その中心が最も高く、周辺に向かうにしたがって低くなるが、本発明では、凸レンズを構成するレンズ材料に可視光吸収剤を含ませているため、可視光が凸レンズを通過する際、その中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子に到達する光量は、その中心側と周辺とで差が圧縮されるので、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子側での光量分布を改善することができる。それ故、デジタルカメラや携帯電話用カメラなどの撮像装置において、小型化、低コストとともに、画像品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した光学装置の一例を説明する。
【0014】
[実施の形態1]
図1(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る光学装置の概略構成図、および撮像面に結像される被写体光の強度分布を示す説明図である。図2は、本形態で可視光吸収剤として用いた鉄イオンの吸収帯を示す説明図である。なお、図1(a)には、表1に示すレンズデータにおける面ナンバーr11〜r14、および面間隔d11〜d15を括弧内に示してある。
【0015】
図1(a)に示すように、本形態の光学装置10は、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ11、および像側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ12を備えたレンズ群14と、このレンズ群14によって被写体光が撮像面151に結像される撮像素子15とを有している。レンズ群14において、メニスカス凸レンズ11とメニスカス凸レンズ12との間には絞り16が配置されている。
【0016】
このように構成した光学装置10において、メニスカス凸レンズ11および12は、いずれもレンズ面が非球面となっており、レンズデータは表1に示す通りである。
【0017】
【表1】
【0018】
レンズ群14において、メニスカス凸レンズ11、12はいずれも、モールドプレス成形により製造したガラスレンズである。本形態では、メニスカス凸レンズ11、12を製造するにあたって、屈折率nd=1.58913のガラス材からなるモールドプレス成形用のプリフォームファインゴブを用いている。
【0019】
このように構成した光学装置10において、本形態では、メニスカス凸レンズ11、12のうち、像側に位置するメニスカス凸レンズ12を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含むプリフォームファインゴブを用いたため、メニスカス凸レンズ12を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。
【0020】
本形態においては、メニスカス凸レンズ12がガラスレンズであるので、可視光吸収剤としては、鉄イオンが用いられており、かかる鉄イオンは、レンズ材料に還元剤とともに配合することにより、2価の状態となる。2価の鉄イオンは図2に示す吸収特性を有しており、図2から分かるように、本形態の可視光吸収剤は、可視領域における吸収率が約10%である。
【0021】
このように構成した光学装置10において、メニスカス凸レンズ12が可視光吸収剤を含んでいない場合に撮像素子15に到達する光量を光線追跡により求めると、図1(b)に実線L1で示すように表され、撮像素子15に到達する光量は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。ここで、メニスカス凸レンズ12は、光軸の中心側で肉厚が大で、周辺に向かうにしたがって薄くなっており、本形態では、かかるメニスカス凸レンズ12に可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ12を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子15に到達する光量は、図1(b)に点線L2で示すように、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子15側での光量分布を改善することができる。
【0022】
また、本形態では、2枚のメニスカス凸レンズ11、12のうち、最も像側に配置されたメニスカス凸レンズ12において、レンズ材料中に可視光吸収剤が含まれ、かかるメニスカス凸レンズ12は、メニスカス凸レンズ11よりも大きな正のパワーを有している。このため、メニスカス凸レンズ12は、メニスカス凸レンズ11よりも、中心側と周辺側との間の肉厚の比が大きいため、撮像素子15に到達する光量の中心側と周辺との間の差を効率よく圧縮することができる。
【0023】
さらに、本形態では、撮像素子15として、CCD、C−MOSなどといったシリコンフォトダイオードが用いられ、かかるシリコンフォトダイオードは、感度範囲が可視領域から近赤外領域までの広範囲に渡っているので、撮像素子15に赤外光が届くと、コントラストが低下するなど、画像の品質が低下する。しかるに本形態で用いた可視光吸収剤は、図2からも分かるように、赤外領域にも吸収帯を備えている。従って、本形態によれば、メニスカス凸レンズ12が赤外線をカットするため、高価なIRカットフィルターを用いなくても、撮像素子15に赤外光が届くことによる画像品位の低下を防止できる。それ故、光学装置10のコストを低減できる。また、本形態によれば、IRカットフィルターを保持するための機構が不要であるため、光学装置10の小型化を図ることもできる。
【0024】
[実施の形態1の変形例]
図3は、本発明の実施の形態1の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図3には、表2に示すレンズデータにおける面ナンバーr11′〜r16′、および面間隔d11′〜d17′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0025】
上記実施の形態1では、可視光吸収剤として、図2に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図3に示すメニスカス凸レンズ12aに含ませてある。従って、本形態の光学装置10の光学系は、メニスカス凸レンズ12aと撮像素子15の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ17が配置されている。IRカットフィルタ17としては、例えば、SiO2(屈折率nd=1.46)とTa2O5(屈折率nd=2.3)をガラス基板にそれぞれ13層重ねて蒸着したものを用いることができる。
【0026】
なお、表2には本形態のレンズデータを示してある。表2において、IRカットフィルタ17の基材を構成する「BK7」はBK7ガラスを示している。
【0027】
【表2】
【0028】
このように構成した光学装置10Aでも、メニスカス凸レンズ12aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ12aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子15に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子15側での光量分布を改善することができる。また、2枚のメニスカス凸レンズ11、12aのうち、最も像側に配置されたメニスカス凸レンズ12aが可視光吸収剤を含んでいる。ここで、メニスカス凸レンズ12aは、メニスカス凸レンズ11よりも、正のパワーが大きく、中心側と周辺側との間の肉厚の差が大きい。このため、撮像素子15に到達する光量の中心側と周辺との間の差を効率よく圧縮することができる。
【0029】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の形態2に係る光学装置の概略構成図である。図5は、本形態で可視光吸収剤として用いたKAYASORB IRG−002の吸収帯を示す説明図である。図6は、本形態で可視光吸収剤として用いたルモゲンIR765およびルモゲンIR788の吸収帯を示す説明図である。なお、図4には、表3に示すレンズデータにおける面ナンバーr21〜r24、および面間隔d21〜d24を括弧内に示してある。
【0030】
図4に示すように、本形態の光学装置20は、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ21、および像側に凸面を向けたメニスカス凸レンズ22を備えたレンズ群24と、このレンズ群24によって被写体光が撮像面251に結像される撮像素子25とを有している。レンズ群24において、メニスカス凸レンズ21より物体側には絞り26が配置されている。
【0031】
このように構成した光学装置20において、メニスカス凸レンズ21および22は、いずれもレンズ面が非球面となっており、レンズデータは表3に示す通りである。
【0032】
【表3】
【0033】
レンズ群24において、メニスカス凸レンズ21、22はいずれも、プラスチックレンズであり、射出成形により製造したものである。本形態では、メニスカスレンズ21および22のうち、像側のメニスカスレンズ22を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含む成形材料を用いたため、メニスカス凸レンズ22を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。
【0034】
本形態において、メニスカス凸レンズ22がプラスチックレンズであるので、可視光吸収剤としては、アルミニウム系化合物であるKAYASORB IRG−002(日本化薬(株)の登録商標)や、クオタリルイミドであるルモゲンIR765およびルモゲンIR788(BASF−JAPAN(株)の登録商標)などを用いることができる。
【0035】
これらの可視光吸収剤のうち、KAYASORB IRG−002は、図5に示すように、可視領域である400nm〜700nmの波長を僅かに吸収する特性を有している。また、ルモゲンIR765およびルモゲンIR788も、可視領域である400nm〜700nmの波長を僅かに吸収する特性を有している。
【0036】
このように構成した光学装置20において、メニスカス凸レンズ22が可視光吸収剤を含んでいない場合に撮像素子25に到達する光量を光線追跡により求めると、撮像素子25に到達する光量は、光軸の中心側で高く、周辺に向かうにしたがって低くなる。しかるに本形態では、メニスカス凸レンズ22に可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ22を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子25に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子25側での光量分布を改善することができる。
【0037】
また、本形態では、2枚のメニスカス凸レンズ21、22のうち、大きな正のパワーを有し、かつ、像側に配置されたメニスカス凸レンズ22において、レンズ材料中に可視光吸収剤が含まれているため、撮像素子25に到達する光量の中心側と周辺との間の差を効率よく圧縮することができる。
【0038】
さらに、本形態で用いた可視光吸収剤は、図5および図6から分かるように、赤外領域にも吸収帯を備えている。従って、本形態によれば、メニスカス凸レンズ22が赤外線をカットするため、高価なIRカットフィルターを用いなくても、撮像素子25に赤外光が届くことによる画像品位の低下を防止できる。
【0039】
[実施の形態2の変形例]
図7は、本発明の実施の形態2の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図7には、表4に示すレンズデータにおける面ナンバーr21′〜r26′、および面間隔d21〜d26′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態2と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0040】
上記実施の形態2では、可視光吸収剤として、図5および図6に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図7に示すメニスカス凸レンズ22aに含ませてある。従って、本形態の光学装置20Aの光学系は、メニスカス凸レンズ22aと撮像素子25の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ27が配置されている。なお、表4には本形態のレンズデータを示してある。
【0041】
【表4】
【0042】
このように構成した光学装置20Aでも、メニスカス凸レンズ22aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光がメニスカス凸レンズ22aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子25に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子25側での光量分布を改善することができる。
【0043】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3に係る光学装置の概略構成図である。なお、図8には、表5に示すレンズデータにおける面ナンバーr31〜r36、および面間隔d31〜d37を括弧内に示してある。
【0044】
図8に示すように、本形態の光学装置30は、物体側から順に、正のパワーを有する両凸レンズ31、負のパワーを有する両凹レンズ32、および正のパワーを有する両凸レンズ33がこの順番に配置された3枚構成のレンズ群34と、このレンズ群34によって被写体光が撮像面351に結像される撮像素子35とを有している。また、両凹レンズ32と両凸レンズ33との間には絞り36が配置されている。
【0045】
レンズ群34において、レンズ31〜33はいずれもプラスチックレンズであり、射出成形により製造したものであり、本形態でも、実施の形態2と同様、両凸レンズ31,33のうち、像側の両凸レンズ33を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含む成形材料を用いたため、両凸レンズ33を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。本形態において、両凸レンズ33がプラスチックレンズであるので、可視光吸収剤としては、実施の形態2と同様、アルミニウム系化合物であるKAYASORB IRG−002(日本化薬(株)の登録商標)や、クオタリルイミドであるルモゲンIR765およびルモゲンIR788(BASF−JAPAN(株)の登録商標)などを用いることができる。
【0046】
このように構成した光学装置30において、両凸レンズ31の入射面、および両凸レンズ33の両面はそれぞれ非球面となってなっており、レンズデータは表5に示す通りである。また、表5において、「ゼオネックス480R」は、日本ゼオン株式会社製のシクロオレフィンポリマーの商標名である。
【0047】
【表5】
【0048】
このように構成した光学装置30においても、両凸レンズ33に可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ33を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子35に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子35側での光量分布を改善することができるなど、実施の形態1と略同様な効果を奏する。
【0049】
[実施の形態3の変形例]
図9は、本発明の実施の形態3の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図9には、表6に示すレンズデータにおける面ナンバーr31′〜r38′、および面間隔d31′〜d39′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0050】
上記実施の形態3では、可視光吸収剤として、図5および図6に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図9に示す両凸レンズ33aに含ませてある。従って、本形態の光学装置30Aの光学系は、両凸レンズ33aと撮像素子35の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ37が配置されている。なお、表6には本形態のレンズデータを示してある。
【0051】
【表6】
【0052】
このように構成した光学装置30Aでも、両凸レンズ33aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ33aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子35に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子35側での光量分布を改善することができる。
【0053】
[実施の形態4]
図10は、本発明の実施の形態4に係る光学装置の概略構成図である。なお、図10には、表7に示すレンズデータにおける面ナンバーr41〜r46、および面間隔d41〜d46を括弧内に示してある。
【0054】
図10に示すように、本形態の光学装置40は、物体側から順に、正のパワーを有する両凸レンズ41、負のパワーを有する両凹レンズ42、および正のパワーを有する両凸レンズ43がこの順番に配置された3枚構成のレンズ群44と、このレンズ群44によって被写体光が撮像面451に結像される撮像素子45とを有している。また、本形態では、レンズ群44の前(物体側)に絞り46が配置されている。
【0055】
レンズ群44において、両凸レンズ41および両凹レンズ42はいずれもプラスチックレンズであり、射出成形により製造したものである。一方、両凸レンズ43はガラスレンズであり、モールドプレス成形により製造したものである。
【0056】
本形態では、正のパワーを有する両凸レンズ41、43のうち、像側の両凸レンズ43を製造する際、吸収帯が可視領域に重なる可視光吸収剤を含むプリフォームファインゴブを用いたため、両凸レンズ43を構成するレンズ材には可視光吸収剤が含まれている。本形態において、両凸レンズ43がガラスレンズであるので、可視光吸収剤としては、実施の形態1と同様、鉄イオンなどを用いることができる。
【0057】
このように構成した光学装置40において、両凸レンズ41の入射面、両凹レンズ42の両面、および両凸レンズ43の両面はそれぞれ非球面となってなっており、レンズデータは表7に示す通りである。
【0058】
【表7】
【0059】
このように構成した光学装置40においても、両凸レンズ43に可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ43を通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。このため、撮像素子45に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子45側での光量分布を改善することができるなど、実施の形態1と略同様な効果を奏する。
【0060】
[実施の形態4の変形例]
図11は、本発明の実施の形態4の変形例に係る光学装置の概略構成図である。なお、図11には、表8に示すレンズデータにおける面ナンバーr41′〜r48′、および面間隔d41′〜d48′を括弧内に示してある。また、本形態の光学装置の基本的な構成は、実施の形態3と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示するとともに、それらの説明を省略する。
【0061】
上記実施の形態4では、可視光吸収剤として、図2に示す吸収特性を備えた可視光吸収剤を用いたが、本形態では、可視領域と重なる領域に吸収帯を有しているが、赤外領域に吸収帯が重なっていない可視光吸収剤を、図11に示す両凸レンズ43aに含ませてある。従って、本形態の光学装置40Aの光学系は、両凸レンズ43aと撮像素子35の間には、赤外領域の光線をカットするためのIRカットフィルタ47が配置されている。なお、表8には本形態のレンズデータを示してある。
【0062】
【表8】
【0063】
このように構成した光学装置40Aでも、両凸レンズ43aに可視光吸収剤を含ませているため、可視光が両凸レンズ43aを通過する際、中心側では可視光の吸収が大で、周辺に向かうにしたがって小となる。従って、撮像素子45に到達する光量は、中心側と周辺との差が圧縮される。それ故、新たな光学素子を追加することなく、撮像素子45側での光量分布を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)および(b)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る光学装置の概略構成図、および撮像面に結像される被写体光の強度分布を示す説明図である。
【図2】可視光吸収剤として用いた鉄イオンの吸収帯を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る光学装置の概略構成図である。
【図5】可視光吸収剤として用いたアルミニウム系化合物であるKAYASORB IRG−002の各波長領域の光の吸収量を示す説明図である。
【図6】可視光吸収剤として用いたクオタリルイミドであるルモゲンIR765およびルモゲンIR788の各波長領域の光の吸収量を示す説明図である。
【図7】実施の形態2の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る光学装置の概略構成図である。
【図9】実施の形態3の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る光学装置の概略構成図である。
【図11】実施の形態4の変形例に係る光学装置の概略構成図である。
【図12】(a)および(b)はそれぞれ、従来の光学装置の概略構成図、および撮像面に結像される被写体光の強度分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10、10A、20、20A、30、30A、40、40A 光学装置
14、24、34、44 レンズ群
12、12a、22、22a メニスカス凸レンズ
33、33a、43、43a 両凸レンズ
15、25、35、45 撮像素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の凸レンズを含む複数枚のレンズを有する光学装置において、
前記凸レンズには、可視領域に吸収帯を有する可視光吸収剤をレンズ材料中に含む凸レンズが含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、
当該複数枚の凸レンズのうち、中央部分の肉厚と周辺部分の肉厚の比が最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、
当該複数枚の凸レンズのうち、パワーが最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、
当該複数枚の凸レンズのうち、最も像側に配置された凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記複数枚のレンズを介して像が結像される撮像素子を有していることを特徴とする光学装置。
【請求項1】
少なくとも1枚の凸レンズを含む複数枚のレンズを有する光学装置において、
前記凸レンズには、可視領域に吸収帯を有する可視光吸収剤をレンズ材料中に含む凸レンズが含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、
当該複数枚の凸レンズのうち、中央部分の肉厚と周辺部分の肉厚の比が最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、
当該複数枚の凸レンズのうち、パワーが最大の凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数枚のレンズには複数枚の凸レンズが含まれ、
当該複数枚の凸レンズのうち、最も像側に配置された凸レンズには、レンズ材料中に前記可視光吸収剤が含まれていることを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記複数枚のレンズを介して像が結像される撮像素子を有していることを特徴とする光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−337473(P2006−337473A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159068(P2005−159068)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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