説明

光学部品および光学機器

【課題】塵埃などを有効に除去し得る光学部品と、その光学部品を有する光学機器とを提供すること。
【解決手段】光を透過可能な複数の光透過層13〜15,18が積層されて構成された光透過性部材30と、光透過性部材30に備えられ、前記光透過性部材を振動させる振動部材20とを有する光学部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ交換式デジタルカメラなどでは、撮像素子の光学ローパスフィルタ表面にゴミが付着し、撮影した映像にゴミが写りこむなどの問題がおこっている。このような問題を解消するために、防塵部材を、撮像素子と光学系との間に配置し、撮像素子の防塵を図ると共に、防塵部材に付着したゴミなどを振動により除去するシステムが開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のシステムでは、防塵部材が円形のために、撮像素子をカバーするためには、大型の防塵部材が必要であり、撮像装置の小型化の要請に反していた。
【0004】
また、従来のシステムでは、単板で構成された防塵部材を振動させているために、光学ローパスフィルタなどのその他の光透過性部材を撮像素子の前面に配置すると、光透過性部材と撮像素子との間に隙間が生じると共に、防塵部材と光透過性部材との間にも隙間が生じる。そのため、塵埃などが入り込まないようにするための隙間の数が増え、その気密性が問題になる。さらに、隙間の数が増えるために、防塵部材を含む撮像素子ユニットのサイズの小型化が困難になる。
【特許文献1】特開2003−338961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、塵埃などを有効に除去し得る光学部品と、その光学部品を有する光学機器とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学部品は、
光を透過可能な複数の光透過層が積層されて構成された光透過性部材(30)と、
前記光透過性部材(30)に備えられ、前記光透過性部材(30)を振動させる振動部材(20)とを有する。
【0007】
本発明の光学部品では、光透過性部材(30)を振動部材(20)により振動させるために、光透過性部材(30)の表面に付着した塵埃などを有効に除去し得る。また、光透過性部材(30)が積層構造なので、この積層構造の光透過性部材(30)を、光学ローパスフィルタなど、他の光学機能層としても用いることができ、他の光透過性部材(30)を設ける必要が無くなる。その結果、光学部品の内部隙間の数を減少させることが可能になり、気密構造も単純になり、塵埃などが内部に入り込むおそれが少なくなる。また、サイズの小型化が可能になる。
【0008】
前記複数の光透過層のうち少なくとも一つは、モアレ現象を低減するための光学的ローパスフィルターの一部であってもよい。
【0009】
好ましくは、前記光透過性部材(30)は、第1光透過層(18)と、第1光透過層(18)とは異なる第2光透過層(13,14,15)とを有し、
前記第1光透過層(18)は、前記第2光透過層(13,14,15)と対向する対向領域(30a)と、前記第2光透過層(13,14,15)と対向しない非対向領域(30L)とを有し、
前記振動部材(20)は、前記第1透過層の前記非対向領域(30L)に備えられている。
【0010】
第1透過層の非対向領域(30L)は、例えば第2光透過層(13,14,15)に対して外側にはみ出している部分であり、その部分に振動部材(20)を取り付けることで、スペースの有効利用を図ることができ、光学部品の小型化に寄与する。
【0011】
接着剤が前記第1光透過層(18)の前記対向領域(30a)に備えられ、前記第1光透過層(18)と前記第2光透過層(15)とを接着するようになっていてもよい。
【0012】
好ましくは、前記第1光透過層(18)は、前記光透過性部材(30)を構成する前記複数の光透過層の最も外側に備えられている。最も外側に位置する第1光透過層(18)に振動部材(20)が具備されることで、スペースの有効利用を図ることができ、光学部品の小型化に寄与する。
【0013】
好ましくは、前記振動部材(20)は、前記第1光透過層(18)の前記第2光透過層(15)と対向している側の面に備えられている。この面に振動部材(20)が設けられることで、スペースの有効利用を図ることができ、光学部品の小型化に寄与する。
【0014】
好ましくは、本発明の光学部品は、
前記光透過性部材(30)に対向して備えられ、前記光透過性部材(30)を透過した光による像を撮像する撮像部(12)と、
前記第1光透過層(18)の前記撮像部(12)と対向している側の面に備えられ、前記撮像部(12)を封止する封止部材(16)を有する。
【0015】
撮像部(12)と光透過性部材(30)との間の空間を封止部材(16)により密封することで、その空間にゴミなどが入り込むことがなくなる。また、第1光透過層(18)の撮像部(12)と対向している側の面に封止部材(16)を配置することで、スペースの有効利用を図ることができ、光学部品の小型化に寄与する。
【0016】
好ましくは、前記封止部材(16)は、前記第1光透過層(18)の前記非対向領域(30L)に備えられている。このように配置することで、スペースの有効利用を図ることができ、光学部品の小型化に寄与する。
【0017】
本発明の光学機器は、上記に記載された光学部品を備えている。
【0018】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応つけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るカメラの全体ブロック図、
図2(A)は図1に示す撮像装置の平面図、図2(B)は図2(A)に示す積層板の平面図、
図3は図2(A)に示すIII−III線に沿う概略断面図、
図4(A)〜図4(E)は振動モードを示す概略図である。
【0020】
まず、図1に基づき、本実施形態のカメラの全体構成について説明する。撮像素子ユニット4は、カメラボディ40の内部に、光学レンズ群48の光軸αに対して撮像素子ユニット4の積層板30が略垂直に交差するように配置される。積層板30については、後述する。
【0021】
図1に示すように、カメラボディ40には、レンズ鏡筒42が着脱自在に装着される。なお、コンパクトカメラなどでは、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが一体であるカメラもあり、カメラの種類は特に限定されない。また、スチルカメラに限らず、ビデオカメラ、顕微鏡、携帯電話などの光学機器にも適用できる。以下の説明では、説明の容易化のために、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが着脱自在となる一眼レフカメラについて説明する。
【0022】
カメラボディ40の内部において、撮像素子ユニット4の光軸α方向の前方には、シャッタ部材44が配置してある。シャッタ部材44の光軸α方向の前方には、ミラー46が配置してあり、その前方には、レンズ鏡筒42に内蔵してある絞り部47および光学レンズ群48が配置してある。
【0023】
カメラボディ40には、ボディCPU50が内蔵してあり、レンズ接点54を介してレンズCPU58に接続してある。レンズ接点54は、カメラボディ40に対してレンズ鏡筒42を連結することで、ボディCPU50と、レンズCPU58とを電気的に接続するようになっている。ボディCPU50には、電源52が接続してある。電源52は、カメラボディ40に内蔵してある。
【0024】
ボディCPU50には、レリーズスイッチ51、ストロボ53、表示部55、ジャイロセンサ70、EEPROM(メモリ)60、防振スイッチ62、防塵フィルタ駆動回路56、画像処理コントローラ59、AFセンサ72などが接続してある。画像コントローラ59には、インターフェース回路57を介して、撮像素子ユニット4の撮像素子12(図2〜図3参照)が接続してあり、撮像素子12にて撮像された画像の画像処理を制御可能になっている。撮像素子12は、たとえばCCDやCMOS等の固体撮像素子で構成される。
【0025】
ボディCPU50は、レンズ鏡筒42との通信機能と、カメラボディ40の制御機能を有している。また、ボディCPU50はEEPROM60から入力された情報と、ジャイロセンサ70からの出力を受けて算出したブレの角度、焦点距離情報、距離情報から、防振駆動部目標位置を算出し、像ぶれ補正制御を行う。なお、像ぶれ補正制御の詳細に関しては省略する。
【0026】
表示部55は、主として液晶表示装置などで構成され、出力結果やメニューなどを表示する。レリーズスイッチ51は、シャッター駆動のタイミングを操作するスイッチであり、ボディCPU50にスイッチの状態を出力し、半押し時にはAF、AE、状況により防振駆動を行い、全押し時には、ミラーアップ、シャッター駆動等を行う。
【0027】
ミラー46は、構図決定の際にファインダーに像を映し出すためのもので、露光中は光路から退避する。ボディCPU50からレリーズスイッチ51の情報が入力され、全押し時にミラーアップ、露光終了後にミラーダウンを行う。不図示のミラー駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。ミラー46には、サブミラー46aが連結してある。
【0028】
サブミラー46aは、AFセンサに光を送るためのミラーであり、ミラーを通過した光束を反射してAFセンサに導く。このサブミラー46aは、露光中は光路から退避する。
【0029】
シャッタ部材44は、露光時間を制御する機構である。ボディCPU50からレリーズスイッチ51の情報が入力され、全押し時にシャッター駆動を行う。不図示のシャッター駆動部(例えばDCモータ)により駆動される。
【0030】
AFセンサ72は、オートフォーカス(AF)を行うためのセンサである。このAFセンサとしては、通常CCDが用いられる。防振スイッチ62は、防振ON、OFFの状態を撮像素子ユニットCPUに出力する。ジャイロセンサ70は、ボディに生じるブレの角速度を検出し、ボディCPU50に出力する。EEPROM60は、ジャイロセンサのゲイン値、角度調整値などの情報を有し、ボディCPUに出力する。
【0031】
防塵駆動フィルタ駆動回路56は、後述する図2および図3に示す圧電素子20に接続してあり、所定条件を満足する場合に、圧電素子20を駆動し、図4(B)〜図4(E)に示すように、積層板30を振動させ、積層板30の表面に付着している塵埃などを飛ばして除去する動作を行う。
【0032】
たとえば圧電素子20には、周期的な矩形波もしくはサイン波等の電圧を印加する。このように防塵フィルタ駆動回路56を制御して圧電素子20に周期的な電圧を印加することにより、積層板30が振動し、塵が積層板30の表面から受けた慣性力が塵の付着力を上回ると、塵は積層板30の表面から離れる。振動モードの詳細に関しては後述する。
【0033】
本実施形態では、防塵駆動フィルタ駆動回路56には、振動モード選択回路80が接続してある。振動モード選択回路80は、ボディCPU50を通して、防塵駆動フィルタ駆動回路56を制御する。振動モード選択回路80による制御の詳細については、後述する。
【0034】
図1に示すレンズ鏡筒42には、焦点距離エンコーダ66、距離エンコーダ64、絞り部47、絞り部47を制御する駆動モータ68、レンズCPU58、ボディ部とのレンズ接点54、及び、複数のレンズ群48が具備してある。レンズ接点54には、カメラボディ40からレンズ駆動系電源を供給するための接点と、レンズCPU58を駆動するためのCPU電源の接点とデジタル通信用の接点がある。
【0035】
駆動系電源およびCPU電源はカメラボディ40の電源52から供給され、レンズCPU58や駆動系の電源を供給している。デジタル通信用接点ではレンズCPU58から出力された焦点距離、被写体距離、フォーカス位置情報等のデジタル情報をボディCPU50に入力するための通信と、ボディCPU50から出力されたフォーカス位置や絞り量等のデジタル情報をレンズCPU58に入力するための通信を行う。ボディCPU50からのフォーカス位置情報や絞り量情報を受けてレンズCPU58がAF、絞り制御を行う。
【0036】
焦点距離エンコーダ66は、ズームレンズ群の位置情報より焦点距離を換算する。すなわち、焦点距離エンコーダ66は、焦点距離をエンコードし、レンズCPUに出力する。
【0037】
距離エンコーダ64は、フォーカシングレンズ群の位置情報より被写体距離を換算する。すなわち、距離エンコーダ64は、被写体距離をエンコードし、レンズCPUに出力する。
【0038】
レンズCPU58は、カメラボディ40との通信機能、レンズ群48の制御機能を有している。レンズCPUには、焦点距離、被写体距離等が入力され、レンズ接点を介してボディCPU50に出力する。ボディCPU50からレンズ接点54を介して、レリーズ情報、AF情報が入力される。
【0039】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る撮像素子ユニット4は、基板10を有し、基板10の中央部上面には、撮像素子12が固定してある。撮像素子12の周囲には、ケース17が配置してあり、基板10の表面に、着脱自在に、あるいは着脱不可に固定してある。
【0040】
ケース17は、たとえば合成樹脂あるいはセラミックなどの絶縁体などで構成され、その上面には、シール取付面17aと、外周側取付部17bとが形成してある。ケース17のシール取付面17aには、光透過性を有する積層板30の内面が気密シール部材16を介して取り付けられる。ケース17の外周側取付部17bには、積層板30の内で一番面積が大きい水晶板18の外周が接触して配置され、加圧部材19によって気密シール部材16へと押圧されている。ここでは、加圧部材19として金属板を用い、加圧部材19の変形に起因する弾性力により、水晶板18を気密シール部材16方向へと付勢している。
【0041】
その結果、撮像素子12の周囲は、基板10、ケース17、気密シール部材16および積層板30により密封され、塵等がケース外部から、撮像素子12の収納空間に入るのを防止することができる。加圧部材19はケース17の上面に、たとえば着脱自在にビス止めされており、ケース17の上面に形成してある位置決めピン17cにより、長方形状の水晶板18の長手方向の位置決めが成されている。なお、気密シール部材16は、たとえば発泡樹脂、ゴムなどの剛性の低い材料で構成してあり、気密を確保しながら、後述する積層板30の曲げ振動の動きを妨げないようになっている。
【0042】
積層板30は、この実施形態では、複数の光学板の積層構造であり、水晶板13と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶波長板(λ/4波長板)15と、水晶板18との積層板で構成してある。積層方法としては、接着剤による積層、あるいはその他の積層方法でも良い。
【0043】
積層板30のうち、水晶板13と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶波長板(λ/4波長板)15とは、全て同じ大きさであり、水晶板18よりも小さな面積の長方形であり、しかも、撮像素子12の平面側面積よりも大きく、撮像素子12を全て覆う面積を有する。
【0044】
図2(B)および図3に示すように、この実施形態の積層板30は、水晶板13と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶波長板(λ/4波長板)15とが水晶板18の上に積層してある積層重複領域(対向領域)30aを有する。この積層重複領域30aの長手方向Lの両側には、水晶板18が外側にはみ出している非重複領域(非対向領域)30Lがそれぞれ形成してある。また、この積層重複領域30aの短手方向Wの両側には、水晶板18が外側にはみ出している非重複領域30Wがそれぞれ形成してある。
【0045】
各非重複領域30Lの長手方向寸法L2は、各非重複領域30Lの水晶板18の表面に圧電素子20が接着され、加圧部材19によって押圧される領域が形成される程度であればよく、好ましくは4〜10mmである。積層重複領域30aの長手方向寸法L1は、撮像素子12の長手方向Lの寸法よりも大きい。
【0046】
各非重複領域30Wの短手方向寸法W2は、各非重複領域30Lの長手方向寸法L2と同程度以下であることが好ましく、0であっても良い。積層重複領域30aの短手方向寸法W1は、撮像素子12の短手方向Wの寸法よりも大きい。積層重複領域30aは、図2(A)および図2(B)に示すように、平面側から見て、撮像素子12を完全に覆う位置に配置される。
【0047】
図3に示す水晶波長板15は、直線偏光を円偏向に変えることができる光学板であり、赤外線吸収ガラス板14は、赤外線を吸収する機能を有する。また、水晶板13は、水晶板18に対して、相互に複屈折の方向が90度異なる水晶板であり、一方が90度方向(短辺方向)の複屈折を有する水晶板であれば、他方の水晶板は、0度方向(長辺方向)の複屈折を有する水晶板である。本実施形態では、水晶板18が0°方向(長辺方向)の複屈折を有する水晶板であり、水晶板13が90°方向(短辺方向)の複屈折を有する水晶板であるが、逆でも良い。
【0048】
本実施形態では、積層板30の内の二つの水晶板13および18により、基本的には、光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。なお、一般的には、光学ローパスフィルタは、二つの水晶板13および18の間に、赤外線吸収ガラス14および水晶波長板15が積層されて光学ローパスフィルタ(OLPF)を構成している。
【0049】
本実施形態では、ケース17の内部において、二つの水晶板13および18を、赤外線吸収ガラス14および水晶波長板15と共に積層し、特に、最も撮像素子12側に配置される水晶板18を、他の水晶板13よりも外側にはみ出して形成してある。しかも、この水晶板18を、水晶のZ軸から特定の角度(θ=+45度)で切り出した水晶板を用いている。水晶は、人工の水晶でもよいし天然水晶でもよい。
【0050】
水晶は、結晶成長軸であるZ軸と、そのZ軸に対して相互に垂直なX軸およびY軸を有する。X軸とは、例えば、Z軸に対して直交する電気軸である。また、Y軸とは、例えば、Z軸に対して直交する機械軸である。本実施形態では、水晶のZ軸に対して、X軸の矢印に向けて時計回り方向にθ=約+45度の角度の面が平板の平面となるように切り出した平板を水晶板18として用いる。
【0051】
なお、本実施形態において、約+45度の角度とは、+45度から多少変動したものを含む。例えば、+45度の角度に対して、±3度の変動であれば十分な効果を得ることができる。また、θの角度がプラスの値とは、Z軸に対して、X軸の矢印に向けて時計回り方向の角度であり、反対方向の角度は、マイナスの値となる。
【0052】
本実施形態では、積層板30の一部を構成する水晶板13は、水晶板18と同様に、水晶からθ=約+45度の角度の面が平板の平面となるように切り出された平板であっても良いし、その他の角度にて切り出された平板であっても良い。ただし、水晶板13の複屈折の方向は、水晶板18に対して、90度異なる水晶板であることが好ましい。効果的にOPLFとして機能し、モアレ現象を防止するためである。
【0053】
水晶からθ=+45度の角度の面でカットされた平板から成る水晶板18は、θ=−45度の角度の面でカットされた平板から成る水晶板に比較して、弾性係数が異なり、曲げ剛性が低く、共振周波数が約20%低い。水晶板18の厚みは、撮像素子の画素ピッチに対応して最適に設計され、例えば水晶板13の厚みと同じである。
【0054】
図2および図3に示すように、積層板30の内、外側にはみ出している水晶板18の表面(ケース17に対して外側の面)には、振動部材としての一対の圧電素子20が、長方形状の水晶板18の長手方向Lに沿って両側位置に、水晶のX軸方向に平行に延在するように接着してある。圧電素子20は、たとえばPZT素子で構成される。
【0055】
次に、圧電素子20による積層板30の振動モードについて説明する。本実施形態では、図1に示す振動モード選択回路80から防塵フィルタ駆動回路56に信号を送り、たとえば図4(A)に示す一方の圧電素子20を、駆動信号R1で駆動し、他方の圧電素子20を駆動信号R2で駆動する。
【0056】
駆動信号R1と駆動信号R2とが相互に逆位相の駆動信号である場合には、図4(B)および図4(C)に示すように、一対の圧電素子20は相互に逆パターンで収縮および拡張を繰り返し、積層板30は、積層板30の長手方向Lに沿って6次曲げ振動モードで振動する。6次曲げ振動モードは、偶数振動モードの一種であり、振動の腹の数が6個となる屈曲振動モードである。
【0057】
6次曲げ振動モードの節22は、積層板30の長手方向Lに沿って7つであり、それらの節22は、水晶板18を構成する水晶のX軸に対して平行になる。振動の節22の位置は、図4(B)および図4(C)に示すように、振動モードが変化しない場合には、変化しない。
【0058】
また、振動モードを変える場合には、図1に示す振動モード選択回路80から防塵フィルタ駆動回路56に信号を送り、振動モードを変化させる。たとえば 駆動信号R1と駆動信号R2とを相互に同一位相の駆動信号とし、これらを一対の圧電素子20に印加する。
【0059】
その場合には、図4(D)および図4(E)に示すように、一対の圧電素子20は同時に同じパターンで収縮および拡張を繰り返し、積層板30を、積層板30の長手方向Lに沿って7次曲げ振動モードで振動させることができる。7次曲げ振動モードは、奇数振動モードの一種であり、振動の腹の数が7個となる屈曲振動モードである。
【0060】
7次曲げ振動モードの節22は、積層板30の長手方向Lに沿って8つであり、それらの節22は、水晶板18を構成する水晶のX軸に対して平行になる。振動の節22の位置は、図4(D)および図4(E)に示すように、振動モードが変化しない場合には、変化しない。
【0061】
図4(B)〜図4(E)に示すように、振動モードを変化させることで、積層板30における節22の位置を変化させることができる。その結果、ある特定の振動モードでは、積層板30の表面において、節22の位置に吹き飛ばされずに残っていた塵埃などが、他の振動モードでは、節22の位置が変化することから振動の加速度で吹き飛ばされることになる。その結果として、積層板30の外面全域に渡りゴミ除去が可能になる。
【0062】
たとえば図4(B)および図4(C)に示すような偶数次の曲げ振動モードでは、長手方向Lの中央が振動の節となるので、その長手方向Lの中央付近の塵埃を吹き飛ばす加速度が小さくなるおそれがある。一方、図4(D)および図4(E)に示すような奇数次の曲げ振動モードでは、長手方向Lの中央が振動の腹になるので、その長手方向Lの中央付近の塵埃を吹き飛ばす加速度が非常に大きくなる。したがって、偶数次の曲げ振動モードと奇数次の曲げ振動モードとを切り替えることにより、塵埃を有効に除去することができる。
【0063】
なお、互いに振動モード数が近い偶数次の曲げ振動モードと奇数次の曲げ振動モードとを切り替えることも好ましい。たとえば図示の実施形態では、振動モード数が近い6次と7次の曲げ振動モードを切り替えているので、長手方向Lの中央部分以外の部分についても、一方のモードで振動の節となる部分が他方のモードで振動の腹となり、塵埃を有効に除去することができる。
【0064】
本実施形態では、積層板30の長手方向Lの両側に配置してある各圧電素子20の外側に位置する節22の近くにおいて、図2および図3に示す加圧部材19が、水晶板18の外面から気密シール部材16の方向に押圧している。加圧部材19は、水晶板18の長手方向Lの両側を、振動の節22に平行に加圧するのみであり、水晶板18における曲げ振動の節22と直交する方向の両端部は加圧しない。水晶板18および積層板30の曲げ振動を抑制しないようにするためである。なお、図3に示す実施形態において、水晶板18を挟んで、圧電素子20と気密シール部材16とを長手方向Lの同じ位置に配置してもよい。
【0065】
本実施形態に係る撮像素子ユニット4では、積層板30を圧電素子20により振動させるために、積層板30の表面に付着した塵埃などを有効に除去し得る。また、積層板30を、光学ローパスフィルタなどとして用いることができ、別途、光学ローパスフィルタを設ける必要が無くなる。その結果、水晶板18と撮像素子12との間には、単一の隙間が形成され、その気密構造も単純になり、塵埃などが内部に入り込むおそれが少なる。また、撮像素子ユニット4のサイズの小型化が可能になる。
【0066】
積層板30における水晶板18の非重複領域30Lは、積層重複領域30aから長手方向Lにはみ出している部分であり、その部分に圧電素子20を取り付けることで、スペースの有効利用を図ることができ、撮像素子ユニット4の小型化に寄与する。
【0067】
さらに、本実施形態では、圧電素子20は、積層板30における水晶板18の非重複領域30Lにおいて、水晶板13などが積層される側の表面に装着してあるために、特にスペースの有効利用を図ることができ、撮像素子ユニット4の小型化に寄与する。
【0068】
また、本実施形態では、積層板30および水晶板18が長方形であり、撮像素子12の撮像面が長方形であるため、円形ガラスを振動させる場合と比べて、防塵のために水晶板が占めるスペースが少なくて済み、装置のコンパクト化に寄与する。
【0069】
さらに本実施形態では、水晶板の表面弾性波による振動(駆動周波数が数MHz)ではなく、水晶板18および積層板30の曲げ振動(駆動周波数が数十kHz〜数百kHz)を用いて、振動加速度による塵埃などの除去機能を発揮しているため、防塵効果に優れている。
【0070】
なお、上述した実施形態では、水晶板18が長方形であり、長方形の短辺が水晶のX軸と略平行であるが、長方形の長辺をX軸と略平行にしても良い。また、上述した実施形態では、一対の圧電素子20を、長方形の水晶板18の長辺方向の両側に配置したが、短辺方向の両側に配置しても良い。
【0071】
また、別の実施形態では、図2〜図3に示すケース17よりも、水晶板18の長手方向Lの幅を大きくし、水晶板18における長手方向Lの両端において、水晶板18の背面に圧電素子20を接着するように構成しても良い。
【0072】
さらに、上述した実施形態では、水晶板18における長手方向Lの両側に配置してある圧電素子20は、相互に同じ分極方向の圧電素子で構成してあるが、これらは相互に異なる分極方向の圧電素子で構成しても良い。その場合には、一対の圧電素子20に対して、相互に同一位相の駆動信号R1および駆動信号R2を印加した場合には、偶数の屈曲振動モードで水晶板18が振動する。また、一対の圧電素子20に対して、相互に逆位相の駆動信号R1および駆動信号R2を印加した場合には、奇数の屈曲振動モードで積層板30が振動する。
【0073】
さらに上述した実施形態では、6次曲げ振動モードと7次曲げ振動モードとで切り替えて積層板30を振動させたが、曲げ振動モードとしては、これらの数次に限定されず、その他の偶数振動モードと奇数振動モードとで切り替えて積層板30を振動させてもよい。ただし、振動モードとしては、好ましくは6〜11次の振動モードである。
【0074】
また、撮影装置の電源をオンにしてから撮影までの期間、および、撮影と撮影との間の期間の少なくとも一方において、偶数振動モードと奇数振動モードとの切替を少なくとも一回以上行うことが好ましい。
【0075】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0076】
たとえば、上述した実施形態では、積層板30のうちで、最も撮像素子12に近い水晶板18を他の板13〜15よりも幅広に形成したが、その他の板13〜15のいずれか一つ以上を、他の板よりも幅広に形成しても良い。あるいは、積層板30における特定の板18のみを長手方向Lに沿って幅広に形成し、短手方向Wには、その他の板13〜15が特定の板18よりも長く形成しても良い。
【0077】
また、積層板30の積層構造としては、4層に限らず、2層以上であれば何層であっても良い。さらに、積層板30は、光学ローパスフィルタに限らず、その他の光学的機能部材であっても良い。
【0078】
さらに、上述した実施形態では、図3において、水晶板13と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶波長板15とを、水晶板18において、撮像素子12とは反対側の表面に積層させたが、その逆に配置しても良い。すなわち、水晶波長板15と、赤外線吸収ガラス板14と、水晶板13とを、水晶板18における圧電素子20の接合面とは反対側の面(撮像素子12側の面)に積層させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るカメラの全体ブロック図である。
【図2】図2(A)は図1に示す撮像装置の平面図、図2(B)は図2(A)に示す積層板の平面図である。
【図3】図3は図2(A)に示すIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】図4(A)〜図4(E)は振動モードを示す概略図である。
【符号の説明】
【0080】
4… 撮像素子ユニット
12… 撮像素子
13… 水晶板
14… 赤外線吸収ガラス板
15… 水晶波長板
16… 気密シール部材
17… ケース
18… 水晶板
19… 加圧部材
20… 圧電素子
22… 振動の節
30… 積層板
56… 防塵フィルタ駆動回路
80… 振動モード選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過可能な複数の光透過層が積層されて構成された光透過性部材と、
前記光透過性部材に備えられ、前記光透過性部材を振動させる振動部材とを有することを特徴とする光学部品。
【請求項2】
請求項1に記載された光学部品であって、
前記複数の光透過層のうち少なくとも一つは、モアレ現象を低減するための光学的ローパスフィルターの一部であることを特徴とする光学部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された光学部品であって、
前記光透過性部材は、第1光透過層と、第1光透過層とは異なる第2光透過層とを有し、
前記第1光透過層は、前記第2光透過層と対向する対向領域と、前記第2光透過層と対向しない非対向領域とを有し、
前記振動部材は、前記第1透過層の前記非対向領域に備えられていることを特徴とする光学部品。
【請求項4】
請求項3に記載された光学部品であって、
前記第1光透過層の前記対向領域に備えられ、前記第1光透過層と前記第2光透過層とを接着する接着剤を有することを特徴とする光学部品。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載された光学部品であって、
前記第1光透過層は、前記光透過性部材を構成する前記複数の光透過層の最も外側に備えられていることを特徴とする光学部品。
【請求項6】
請求項3から請求項5までの何れか1項に記載された光学部品であって、
前記振動部材は、前記第1光透過層の前記第2光透過層と対向している側の面に備えられていることを特徴とする光学部品。
【請求項7】
請求項3から請求項6までの何れか1項に記載された光学部品であって、
前記光透過性部材に対向して備えられ、前記光透過性部材を透過した光による像を撮像する撮像部と、
前記第1光透過層の前記撮像部と対向している側の面に備えられ、前記撮像部を封止する封止部材を有することを特徴とする光学部品。
【請求項8】
請求項7に記載された光学部品であって、
前記封止部材は、前記第1光透過層の前記非対向領域に備えられていることを特徴とする光学部品。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載された光学部品を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−177715(P2009−177715A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16548(P2008−16548)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】