説明

光学部品及び撮影装置

【課題】好適な撮影を行うことができる光学部品を提供すること。
【解決手段】光学系210に入射する光を制限する光制限部材410と、前記光制限部材410を前記光学系210の光路L1に取付けるための取付け部420と、撮影中に前記光学系210に入射する光を少なくとも1回制限するように前記光制限部材410を制御する制御部430とを含むことを特徴とする光学部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品及び撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流し撮りは、被写体の動感を表現する写真手法として用いられており、通常、移動している被写体の移動方向にあわせて、撮影者がカメラを振りながら撮影することにより行われる。このような流し撮りに対応した電子カメラなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。流し撮りにおける被写体としては、カメラ等の撮影装置の振りと略一致して移動し、ほぼ静止しているように描写される主要被写体と、主要被写体と異なる動きをし、主要被写体の移動方向にぶれて描写される周辺被写体と、に大別される。ここで、撮影装置側から見て主要被写体の後ろ側にある周辺被写体は、ぶれて描写されても、主要被写体と重なって描写されることはないが、撮影装置と主要被写体との間にある周辺被写体がぶれて描写されると、ぶれによる軌跡が主要被写体と重なって描写されてしまい、主要被写体の描写に悪影響を及ぼす場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2006−80844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、好適な撮影を行うことができる光学部品及び撮影装置を提供することである。
【0005】
請求項1に係る発明は、光学系(210)に入射する光を制限する光制限部材(410)と、前記光制限部材(410)を前記光学系(210)の光路(L1)に取付けるための取付け部(420)と、撮影中に前記光学系(210)に入射する光を少なくとも1回制限するように前記光制限部材(410)を制御する制御部(430)とを含むことを特徴とする光学部品である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載された光学部品であって、撮影状態が流し撮りであることを示す信号が供給される入力端子(440)を有し、前記制御部(430)は、前記入力端子(440)に前記信号が供給されたときに前記光学系(210)に入射する光を制限することを特徴とする光学部品である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載された光学部品であって、前記光制限部材(410)は、シャッタであることを特徴とする光学部品である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された光学部品を備えたことを特徴とする撮影装置である。
【0009】
請求項5の発明は、光学系(210)に入射する光を制限する光制限部材(410)と、撮影のタイミングを入力する入力部(170)と、前記入力部に前記撮影のタイミングが入力されたとき、前記光学系に入射する光を撮影中に少なくとも1回制限するように前記光制限部材(410)を制御する制御部(430)とを含むことを特徴とする撮影装置である。
【0010】
請求項6の発明は、光学系(210)に入射する光を制限する光制限部材(410)と、光制限モードを含む撮影モードを設定可能なモード設定部(150)と、前記モード設定部(150)により前記光制限モードに設定されているとき、前記光学系(210)に入射する光を撮影中に少なくとも1回制限するように前記光制限部材(410)を制御する制御部(430)とを含むことを特徴とする撮影装置である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載された撮影装置であって、撮影状態が流し撮りであることを判定する判定部を有し、前記光制限部材(410)は、前記判定部により撮影状態が流し撮りであると判定されたときに前記光学系(210)に入射する光を制限することを特徴とする撮影装置である。
【0012】
請求項8の発明は、請求項5から請求項7までの何れか1項に記載された撮影装置であって、前記光制限部材(410)は、絞りまたはシャッタであることを特徴とする撮影装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、好適な撮影を行うことができる光学部品及び撮影装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示す要部構成図であり、上記発明の光学部品および撮像装置に関する構成以外のカメラの一般的構成については、その図示と説明を一部省略する。
【0016】
本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、これらカメラボディ100とレンズ鏡筒200とはマウント部300により着脱可能に結合されている。また、レンズ鏡筒200の被写体側先端には、液晶シャッタユニット400が装着されている。
【0017】
レンズ鏡筒200には、フォーカスレンズ211やズームレンズ212を含むレンズ群210や絞り装置220などからなる撮影光学系が内蔵されている。
【0018】
フォーカスレンズ211は、その光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ260によってその位置が検出されつつレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。
【0019】
絞り装置220は、上記撮影光学系を通過して撮像素子110に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り装置220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることにより行われる。あるいは、開口径の調節は、カメラボディ100に設けられた操作部150によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることによっても行われる。絞り装置220の開口径は、図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部250で現在の開口径が認識される。
【0020】
液晶シャッタユニット400は、図1に示すように、液晶シャッタ410と、液晶シャッタ410を保持する保持筐体420とを有する。液晶シャッタ410を保持する保持筐体420には、めねじが切られており、これにより、液晶シャッタユニット400は、レンズ鏡筒200先端に取り外し可能に固定されている。
【0021】
液晶シャッタ410は、高分子分散型液晶を用いた円形の平板状光学素子であり、透明導電膜の電圧印加による液晶の屈折率変化を利用して、その透過率を変化させることにより、カメラ1内に入射する光の量を制御するものである。なお、液晶シャッタ410は、主に、後述する「点線軌跡流し撮りモード」による撮影を行う際にカメラ1内に入射する光の量を制御するものであり、通常撮影時や非撮影時、電源OFF時には、透過率最大の状態となるように設定されている。
【0022】
保持筐体420内には、液晶シャッタ制御部430および液晶シャッタ側シンクロターミナル440が備えられている。液晶シャッタ側シンクロターミナル440は、シンクロコード500を介して、カメラ側シンクロターミナル180と電気的に接続されており、カメラボディ100に備えられたカメラ制御部170からの信号を受信できるようになっている。そして、カメラ制御部170からの信号が、液晶シャッタ側シンクロターミナル440を介して、液晶シャッタ制御部430に送られ、液晶シャッタ制御部430は、これに基づき、液晶シャッタ410の動作を制御する。
【0023】
保持筐体420には、液晶シャッタ410のシャッタスピードを設定するための液晶シャッタスピード設定部材450が備えられており、液晶シャッタ410のシャッタスピードSを設定できるようになっている。
【0024】
カメラボディ100は、図1に示すように、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137及び焦点検出光学モジュール161へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮影位置との所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。
【0025】
図1には、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮影位置にある状態を二点鎖線で示す。ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮影位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0026】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137へ導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出光学モジュール161へ導く。
【0027】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出光学モジュール161へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ211の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタンを押すとミラー系120が撮影位置に回転し、被写体からの光束(光軸L1)は撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。なお、撮像素子110の手前には、シャッタ111が設けられており、これにより、被写体からの光束(光軸L1)を制限できるようになっている。また、後述するように、液晶シャッタ410により、光束がレンズ鏡筒200に入射することが制限されている場合には、撮影は行われないこととなる。
【0028】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、撮影光学系210の予定焦点面となる位置に固定されている。撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配列されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどで構成することができる。この撮像素子110で光電変換された電気画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0029】
一方、クイックリターンミラー121で反射された被写体光は、撮像素子110と光学的に等価な面に配置された焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して撮影者の眼球に導かれる。このとき、透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッタ速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、レリーズしない状態において、ファインダ134を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0030】
また、接眼レンズ134の近傍には、測光用レンズ136と測光センサ137が設けられ、焦点板131に結像した被写体光の一部を受光する。すなわち、本実施形態のカメラ1は、スルーザレンズ側光方式を採用している。
【0031】
測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、撮影の際の露出値を演算するため、撮影画面を複数の領域に分割して領域ごとの輝度に応じた測光信号を出力する。測光センサ137で検出された測光信号はカメラ制御部170へ出力され、露出制御に用いられる。
【0032】
操作部150は、シャッタレリーズボタンや撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、「オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモード」の切換や、「点線軌跡流し撮りモード」の選択が行われるようになっている。
【0033】
カメラボディ100にはカメラ制御部170が設けられている。カメラ制御部170はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、マウント部300に設けられた電気信号接点部によりレンズ制御部250と電気的に接続され、このレンズ制御部250からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部250へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。さらには、カメラ制御部170は、シンクロターミナル180を介して、レリーズ信号などの各種信号を液晶シャッタユニット400に送ることにより、液晶シャッタユニット400を動作させる。また、カメラ制御部170は、上述したように撮像素子110から画像情報を読み出すとともに、必要に応じて所定の情報処理を施し、図示しないメモリに出力する。また、カメラ制御部170は、撮影画像情報の補正やレンズ鏡筒200の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0034】
焦点検出光学モジュール161は、サブミラー122で反射した光束の光軸L4上であって、撮像素子110の撮像面と光学的に等価な面の位置に固定されており、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行する。
【0035】
AF−CCD制御部162は、オートフォーカスモードにおいて、焦点検出光学モジュール161のラインセンサのゲインや蓄積時間を制御するもので、焦点検出位置として選択された焦点検出エリアに関する情報をカメラ制御部170から受け、この焦点検出エリアに相当する一対のラインセンサにて検出された一対の像信号を読み出し、デフォーカス演算部163へ出力する。
【0036】
デフォーカス演算部163は、AF−CCD制御部162から送られてきた一対の像信号のずれ量をデフォーカス量ΔWに変換し、これをレンズ駆動量演算部164へ出力する。
【0037】
レンズ駆動量演算部164は、デフォーカス演算部163から送られてきたデフォーカス量ΔWに基づいて、当該デフォーカス量ΔWに応じたレンズ駆動量Δdを演算し、これをレンズ駆動制御部165へ出力する。そして、レンズ駆動量Δdがレンズ制御部280に送信されることにより、レンズ駆動モータ250により、フォーカスレンズ211の位置が調整される。
【0038】
次に動作を説明する。
【0039】
図2は本実施形態に係るカメラ1の「点線軌跡流し撮りモード」における動作を示すフローチャート、図3は本実施形態における液晶シャッタ410による光束(光軸L1)の透過率と、露光時間との関係の一例を示すグラフである。
【0040】
以下においては、カメラ1の設定が「点線軌跡流し撮りモード」になっている場合における動作を説明する。図3に示すように、本実施形態では、カメラ1の設定が「点線軌跡流し撮りモード」になっている場合には、液晶シャッタ410の透過率を変化させ、これによりカメラ1内の撮像素子110へ導かれる光束(光軸L1)の量を、周期的に変化させるものである。
【0041】
ここで、図3に示す例では、シャッタ速度S(露光開始から露光終了までの時間)において、周期Tで矩形波状に液晶シャッタ410の透過率を変化させている。具体的には、図3に示す例では、液晶シャッタ410により、周期Tごとに、最大透過率で光束(光軸L1)を透過させる状態、及び、透過率=0、すなわち、光束(光軸L1)を全く透過させない状態を逐次繰り返している。
【0042】
まず、ステップS1においてカメラ1の設定が「点線軌跡流し撮りモード」になっているか否かを判断し、「点線軌跡流し撮りモード」になっている場合は、「点線軌跡流し撮りモード」に設定された旨の信号が、カメラ制御部170から、カメラ側シンクロターミナル180、シンクロコード500、液晶シャッタ側シンクロターミナル440を介して、液晶シャッタ制御部430に送られる。一方、「点線軌跡流し撮りモード」となっていない場合には、「点線軌跡流し撮りモード」に設定されるまで繰り返す。
【0043】
次いで、ステップS2では、カメラボディ1のカメラ制御部170で、所定の露出値EVとなるように、露光開始前において、露出を決定する。露出は、測光センサ137により検出された測光信号に基づいて行われる。ここで、露出値EVは、撮像素子110のシャッタスピードTVと絞り装置220の開口絞りAVに相関し、一般にEV=TV+AVの関係が成立する。そのため、カメラ1の設定がシャッタスピード優先モードである場合や、マニュアルモードでシャッタスピードが設定されている場合には、主に絞り装置220の開口絞りを調整することにより露出が決定される。なお、「点線軌跡流し撮りモード」においては、図3に示すように、液晶シャッタ410の透過率が周期的に変化し、図3に示す例においては、その透過率は、液晶シャッタ410の最大透過率の約半分程度となる(すなわち、図中に示す平均透過率となる。)。そのため、図3に示す例においては、カメラ1内に入射する光の量も約半分程度となり、結果として露光量が減少してしまうため、カメラ制御部170で、露出を決定する際には、液晶シャッタ410による平均透過率を加味した露出補正を行うことが望ましい。
【0044】
そして、カメラ制御部170から、カメラ側シンクロターミナル180、シンクロコード500、液晶シャッタ側シンクロターミナル440を介して、測光センサ137により検出された測光信号及びカメラ制御部170で設定されたシャッタスピードTVが液晶シャッタ制御部430に送られる。カメラ制御部170で設定されたシャッタスピードTVは、液晶シャッタ制御部430から液晶シャッタスピード設定部材450に送信され、液晶シャッタスピード設定部材450は、シャッタスピードTVに基づき、液晶シャッタのシャッタスピードSを設定する。
【0045】
次いで、ステップS3に進み、撮影者によりレリーズボタンが押し下げられると、ミラー系120が撮影位置に移動し、露光が開始するとともに、カメラ制御部170から、カメラ側シンクロターミナル180、シンクロコード500、液晶シャッタ側シンクロターミナル440を介して、露光開始信号が液晶シャッタ制御部430に送られる(ステップS4)。
【0046】
なお、本実施形態では、露光開始前に、測光センサ137により検出された測光信号に基づき、カメラ制御部170により露出を決定することに加えて、露光中において、測光センサ137により検出された測光信号が変化した場合に、測光信号の変化とあわせて、撮像素子110の露光量が適正な値となるように、撮像素子110のシャッタスピードTV及び液晶シャッタ410のシャッタスピードSを補正しても良い。あるいは、露光開始前に露出を決定せずに、露光中において、測光センサ137により検出された測光信号に基づき、液晶シャッタ410のシャッタスピードSの決定及び補正を行い、撮像素子110の露光量が所定の値となったら露光を終了するような設定としてもよい。この場合には、露光中においても、カメラ制御部170から液晶シャッタ制御部430に、測光センサ137により検出された測光信号及びカメラ制御部170で設定されたシャッタスピードTVが送られ続けることとなる。
【0047】
次いで、ステップS5に進み、液晶シャッタ制御部430から液晶シャッタ410に作動開始信号が送信され、液晶シャッタ410が作動する。たとえば、図3に示す例においては、シャッタスピード設定部材450で設定された液晶シャッタのシャッタスピードSに基づき、液晶シャッタ410は、露光開始から露光終了までの間、矩形波状(周期T)にその透過率を変化させる。具体的には、液晶シャッタ410は、時間tの条件で透過率最大の状態を保ち、その後、時間T−tの条件で透過率=0の状態を保つという動作を逐次繰り返すこととなる。
【0048】
なお、液晶シャッタ410の変化の周期Tは、シャッタスピードS及び予め設定された定数Nに基づき、T=S/Nで求められる。ここで、定数Nは、予め設定された所定の値であるが、液晶シャッタユニット400に設けられた操作部(不図示)により、撮影者が適宜設定を変更できるようにしてもよい。さらに、周期T中における、液晶シャッタ410の透過率が最大であるときの時間tは、通常、周期Tの半分程度の時間に設定されるが、液晶シャッタユニット400に設けられた操作部(不図示)またはカメラボディ100の操作部150により、撮影者が適宜設定を変更できるようにしてもよい。時間tを変更することにより、液晶シャッタ410のデューティ比D(D=t/T)を制御することができる。
【0049】
そして、最後に、露光を終了する(ステップS6)。
【0050】
本実施形態によれば、液晶シャッタ410を上述のように作動させるため、たとえば、図4(A)に示すように、自動車とカメラ1との間に光源が介在している場合において、撮影者が流し撮りをすると、図4(B)に示すように、光源の撮影軌跡を、破線状にぶれた状態で描写することができる。液晶シャッタ410を作動させることで、露光/非露光の状態を繰り返すことにより、光源の撮影軌跡を、図4(B)に示すように破線状とすることができ、光源の撮影軌跡による、主要被写体である自動車への悪影響を緩和することができる。すなわち、カメラ等の撮影装置と主要被写体との間に周辺被写体が存在していても、当該周辺被写体のぶれによる、主要被写体の描写への悪影響を低減することができる。なお、図4(A)は本実施形態に係る「点線軌跡流し撮りモード」が適用される一場面例を示す図であり、図4(B)は本実施形態に係る「点線軌跡流し撮りモード」を適用して得られる画像を示す図である。
【0051】
一方で、本実施形態に係る液晶シャッタ410を用いない場合には、図4(C)に示すように、光源の撮影軌跡が線状となり、主要被写体である自動車上に重なった形となってしまう。なお、図4(C)は従来の流し撮りにおいて得られる画像を示す図である。これに対して、本実施形態によれば、このように自動車とカメラ1との間に光源が介在している場合でも、このような悪影響を緩和することができる。
【0052】
なお、図3に示す例では、液晶シャッタ410を、その透過率が矩形波状に変化する構成としたが、図5に示すように透過率が正弦波状に変化するような構成としてもよい。ここで、図5は本実施形態の他の例における液晶シャッタ410による光束(光軸L1)の透過率と、露光時間との関係を示すグラフである。液晶シャッタ410の透過率を正弦波状に変化するような構成とすることにより、液晶シャッタ410の透過率がゼロである時間を、極めて短くすることができるため、たとえば、撮影者によるカメラの振り速度と、主要被写体の移動速度との間に若干開きが生じた場合でも、主要被写体が、コマ送り状に重なって描写されてしまうことを防止することができる。
【0053】
また、図3に示す例では、周期TをT=S/Nで一定としたが、撮影者の流し撮り中におけるカメラ1の振りの角速度に変化が生じた場合に、周期Tを変化させるような構成としても良い。すなわち、角速度センサから液晶シャッタ制御部430に出力された角速度ωに応じて、下記式(1)に従って、図6に示すように、周期Tを変化させるような構成としても良い。ここで、角速度センサは、液晶シャッタユニット400に設けても良いし、あるいは、カメラボディ100に備えられた角速度センサ(不図示)を用い、カメラボディ100から液晶シャッタユニットに角速度信号が送られるような構成としてもよい。なお、図6は本実施形態の他の例における液晶シャッタ410による光束(光軸L1)の透過率及びカメラ1の角速度と、露光時間との関係を示すグラフであり、下記式(1)及び図6においては、初期周期及び角速度をT、ωとし、角速度変化後の周期及び角速度をT、ωとした。
T=T×T(ω/ω) …(1)
【0054】
上記のように、角速度ωに応じて、周期Tを変化させるような構成を採用することにより、たとえば、流し撮りの主要被写体が加速あるいは減速している場合でも、良好に撮影が行うことができる。
【0055】
あるいは、図3に示す例では、周期TをT=S/Nで一定としたが、周期Tを露光開始からの時間の経過とともに、徐々に大きくしていくような構成としてもよい。すなわち、下記式(2)に従って、図7に示すように、周期Tを徐々に大きくするような構成としても良い。なお、図7は本実施形態の他の例における液晶シャッタ410による光束(光軸L1)の透過率及び周期Tと、露光時間との関係を示すグラフであり、下記式(2)においては、初期周期及び角速度をT、露光開始からの時間をtとし、αは所定の定数である。
T=T+α×t …(2)
【0056】
上記のように、周期Tを露光開始からの時間の経過とともに、徐々に大きくしていくことにより、図8に示すように、光源の撮影軌跡を、徐々にピッチが長くなる破線状とすることができ、主要被写体が一定速度で走行する自動車であっても、加速しているような描写を演出することができる。なお、図8は本実施形態に係る「点線軌跡流し撮りモード」を適用して得られる画像を示す図である。
【0057】
さらに、周期Tを露光開始からの時間の経過とともに、徐々に大きくすることに加えて、上述のように、角速度ωに応じて、周期Tを変化させるような構成としてもよい。すなわち、周期Tを下記式(3)に従って求める構成を採用しても良い。
T=T+α×t×(ω/ω) …(3)
【0058】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0059】
たとえば、上述の実施形態では、一眼レフデジタルカメラに本発明を適用した例について説明したが、本発明においては特にこれに限定されず、コンパクトカメラやビデオカメラ、スチルカメラ、携帯電話用のカメラ、銀塩フィルムを用いた一眼レフカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用しても良い。
【0060】
また、液晶シャッタユニット400が、角速度センサをさらに有する構成としてもよい。角速度センサを有する構成とすることにより、たとえば、一定角速度以上でパンニングしていない場合には、液晶シャッタ410が作動しないような制御を行うことができ、これによりシンクロ接触不良などによるノイズによる液晶シャッタ410の誤動作を防止することもできる。さらには、角速度センサを有する構成とし、液晶シャッタユニット400に、流し撮りモードとなっているか否かを判定する流し撮りモード判定部を設けることにより、液晶シャッタ410による光束(光軸L1)の透過率の制御を自動的に行わせるような構成とすることもできる。
【0061】
また、上述した実施形態では、カメラ制御部170から液晶シャッタユニット400に、露光開始信号の他、測光信号やシャッタスピードTV、あるいは角速度信号などが送信される構成としたが、カメラ制御部170から液晶シャッタユニット400へは、露光開始信号のみが送信される構成としてもよい。この場合においては、液晶シャッタユニット400は、測光装置や角速度センサを備えたものであることが望ましい。
【0062】
あるいは、上述した実施形態では、液晶シャッタ410を用いて、カメラ1内に入射する光を制御する態様を例示したが、液晶シャッタ410に代えて、図9(A)、図9(B)に示すようなニュートラルデンシティフィルタ600を用いても良い。図9(A)は、ニュートラルデンシティフィルタ600の正面図、図9(B)は、ニュートラルデンシティフィルタ600を装着した状態のカメラ1の側面図である。
【0063】
ニュートラルデンシティフィルタ600は、図9(B)に示すように、カメラ1のレンズ鏡筒200先端に取り外し自在に取り付けられ、図9(A)に示すように、ニュートラルデンシティフィルタ600は、その円周方向に、光を透過する透過領域610及び光を透過しない非透過領域620を交互に有している。そして、モータ630により回転させることにより、レンズ鏡筒200前面に、透過領域610及び非透過領域620を交互に配置でき、これにより、露光/非露光の状態を繰り返すことができる。なお、図9(A)には、ニュートラルデンシティフィルタ600を、4つの領域に分割して、それぞれ、透過領域610及び非透過領域620を配置したが、分割数は4つに限定されず、5以上の領域に分割しても良いし、あるいは、3以下の領域に分割する構成であってもよい。また、透過領域610及び非透過領域620の他、半透過領域を設けても良いし、さらには、透過率が徐々に変化するような構成としても良い。
【0064】
さらに、上述した実施形態では、液晶シャッタ410を、レンズ鏡筒200の先端に配置する例を示したが、液晶シャッタ410を、レンズ鏡筒200内部に配置しても良い。この場合においては、液晶シャッタ410はレンズ制御部250により制御することができ、これにより、カメラ1の各機能と液晶シャッタ410との間で、より高度な同期や相互通信を行うことができる。また、液晶シャッタ410を、レンズ鏡筒200内部に配置することにより、液晶シャッタ410に絞りやシャッタ機構を兼用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラを示す要部構成図である。
【図2】図2は本実施形態に係るカメラの「点線軌跡流し撮りモード」における動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は本実施形態における液晶シャッタによる光束の透過率と、露光時間との関係の一例を示すグラフである。
【図4】図4(A)は本実施形態に係る「点線軌跡流し撮りモード」が適用される一場面例を示す図、図4(B)は本実施形態に係る「点線軌跡流し撮りモード」を適用して得られる画像を示す図、図4(C)は従来の流し撮りにおいて得られる画像を示す図である。
【図5】図5は本実施形態の他の例における液晶シャッタによる光束の透過率と、露光時間との関係を示すグラフである。
【図6】図6は本実施形態の他の例における液晶シャッタによる光束の透過率及びカメラの角速度と、露光時間との関係を示すグラフである。
【図7】図7は本実施形態の他の例における液晶シャッタによる光束の透過率及び周期と、露光時間との関係を示すグラフである。
【図8】図8は本実施形態に係る「点線軌跡流し撮りモード」を適用して得られる画像を示す図である。
【図9】図9(A)は、ニュートラルデンシティフィルタの正面図、図9(B)は、ニュートラルデンシティフィルタを装着した状態のカメラの側面図である。
【符号の説明】
【0066】
1…一眼レフデジタルカメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
170…カメラ制御部
200…レンズ鏡筒
210…レンズ群
220…絞り装置
250…レンズ制御部
400…液晶シャッタユニット
410…液晶シャッタ
420…保持筐体
430…液晶シャッタ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系に入射する光を制限する光制限部材と、
前記光制限部材を前記光学系の光路に取付けるための取付け部と、
撮影中に前記光学系に入射する光を少なくとも1回制限するように前記光制限部材を制御する制御部とを含むことを特徴とする光学部品。
【請求項2】
請求項1に記載された光学部品であって、
撮影状態が流し撮りであることを示す信号が供給される入力端子を有し、
前記制御部は、前記入力端子に前記信号が供給されたときに前記光学系に入射する光を制限することを特徴とする光学部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された光学部品であって、
前記光制限部材は、シャッタであることを特徴とする光学部品。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された光学部品を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項5】
光学系に入射する光を制限する光制限部材と、
撮影のタイミングを入力する入力部と、
前記入力部に前記撮影のタイミングが入力されたとき、前記光学系に入射する光を撮影中に少なくとも1回制限するように前記光制限部材を制御する制御部とを含むことを特徴とする撮影装置。
【請求項6】
光学系に入射する光を制限する光制限部材と、
光制限モードを含む撮影モードを設定可能なモード設定部と、
前記モード設定部により前記光制限モードに設定されているとき、前記光学系に入射する光を撮影中に少なくとも1回制限するように前記光制限部材を制御する制御部とを含むことを特徴とする撮影装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載された撮影装置であって、
撮影状態が流し撮りであることを判定する判定部を有し、
前記光制限部材は、前記判定部により撮影状態が流し撮りであると判定されたときに前記光学系に入射する光を制限することを特徴とする撮影装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7までの何れか1項に記載された撮影装置であって、
前記光制限部材は、絞りまたはシャッタであることを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−258491(P2009−258491A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109000(P2008−109000)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】