説明

光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シート

【課題】高温高湿下でフィルムのしわが発生しない光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートを提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂組成物中に架橋ポリスチレン粒子および/または架橋アクリル系粒子が8〜40重量%含有されてなることを特徴とする光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートに関するものであり、特にマイクロレンズアレイフィルムなどの光学部材を製造するための光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエポキシ樹脂組成物を用いて得られるマイクロレンズアレイフィルムは、高温高湿下で使用すると、吸湿してしまい、フィルムが膨張し不均一となりしわが発生する。そこで、例えば、耐湿性、機械特性向上のために一般に無機充填剤を添加することが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−146116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、光学部材用樹脂組成物に無機充填剤を添加すると、分散性が悪いためフィルムの透明性が損なわれたり、無機充填剤とポリマーを混合した硬化物はヒートサイクル試験を行なった時に無機充填剤とポリマーの線膨張率差によりフィルムの変形が大きくなる問題がある。
【0004】
本発明は、高温高湿下でフィルムのしわが発生しない光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂と、架橋ポリスチレン粒子および/または架橋アクリル系粒子とを含有するエポキシ樹脂組成物からなるシートであって、該架橋ポリスチレン粒子および/または架橋アクリル系粒子の含有量がエポキシ樹脂組成物中に8〜40重量%であることを特徴とする、光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートにより、高温高湿下でもフィルムのしわが発生しないことを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
架橋ポリスチレン粒子および/または架橋アクリル系粒子の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に、8〜40重量%であり、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは20〜30重量%である。粒子の含有量が8重量%未満であれば、吸水率の低下が小さいため、吸水後にしわが発生し、粒子の含有量が40重量%を超えるとフィルムが割れやすくなる。
【0008】
架橋ポリスチレン粒子または架橋アクリル系粒子の平均粒子径は好ましくは10μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。平均粒子径が、10μmを超えると、加工時に型の凹凸へのエポキシ樹脂組成物ベースの追従を妨げる恐れがあり不良につながる。また、平均粒子径が100nm以下であると、粒子の分散が難しく、凝集する恐れがある点から、好ましくは、1μm以上である。架橋ポリスチレン粒子または架橋アクリル系粒子の平均粒子径は、顕微鏡法、ふるい分け法、光散乱法といった一般的な粒子径測定法を用い、例えば、顕微鏡法では、ランダムに粒子を選択し、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて粒子径測定を行い、平均粒子径を算出することができる。
架橋ポリスチレン粒子としては、光拡散粒子として用いられるグレードの架橋ポリスチレン粒子が好ましく、架橋していないポリスチレン粒子は、溶剤に溶けて、水を吸収するということが考えられるため、溶剤に溶けないレベルまで熱架橋や重合を行なうことが好ましい。
【0009】
また、エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂の他、さらに酸無水物系硬化剤および硬化促進剤を含有するのが好ましい。
【0010】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型などのビスフェノール型、ノボラック型、含窒素環型、脂環型、芳香族型、ビフェニル型やそれらの変性型などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのエポキシ樹脂の中でも成形性及びシート操作性の観点から、ビスフェノールA型、脂環型、ビフェニル型が好ましい。
【0011】
エポキシ樹脂の含有量は、フィルム化後の吸水量の低下の観点から、エポキシ樹脂組成物中に、10〜40重量%が好ましく、20〜35重量%がより好ましく、25〜30重量%がさらに好ましい。
【0012】
ビスフェノールA型のエポキシ樹脂の当量(Ep)は、B stageでのフィルム化の観点から、2000〜8000が好ましく、3600〜7500がより好ましく、5000〜7500がさらに好ましい。
【0013】
脂環型のエポキシ樹脂の量は、吸湿率低減の観点から、全エポキシ樹脂中に5〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。
【0014】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの酸無水物系硬化剤の中でも、プレス加工時の硬化性と硬化後の物性を考えると、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0015】
酸無水物系硬化剤の含有量は、硬化物の最終特性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する酸無水物系硬化剤の酸無水物当量比(酸無水物当量:エポキシ当量)が、好ましくは1:0.8〜1:2、より好ましくは1:1〜1:1.5となるようにすることが望ましい。
【0016】
硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。エポキシ樹脂との相溶性を考えるとイミダゾール化合物の分子量は210以下が好ましく、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。中でも2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールがより好ましい。
【0017】
イミダゾール化合物の含有量は、硬化促進効果などに応じて適宜決定することができるが、成形時に短時間で硬化させる観点から、エポキシ樹脂組成物中に、0.3〜1.5重量%が好ましい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、さらに酸化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤が原料として配合されてもよい。
【0019】
本発明の光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートは、上記の各種原料(エポキシ樹脂組成物)を溶媒に溶かして溶液(エポキシ樹脂組成物溶液)とし、前記溶液を基材上に塗布後、乾燥することにより製造することができる。また、エポキシ樹脂組成物溶液は、例えば、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等を含む組成物を予め溶媒を用いて溶液(塗工溶液)とした後、これに(同じ溶媒からなる)架橋ポリスチレン粒子および/または架橋アクリル系粒子溶液を配合してもよい。溶媒としては公知のものが使用されるが、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶媒中の原料濃度は、良好な塗布面を得る観点から、30〜50重量%が好ましく、35〜45重量%がより好ましい。
【0020】
基材としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられ、平板や凹凸板などの適宜な形態のものを用いることができる。
【0021】
本発明の光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シートは、原料の溶液を公知の方法、例えば、キャスティング、スピンコート、ロールコーティングなどにより、適当な厚さに塗布後、乾燥することにより製造することができる。
【0022】
乾燥は、通常、溶媒の除去に必要な温度で行なう。即ち、硬化反応を必要以上に進行させずに、乾燥させる観点から、乾燥温度は90〜150℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。また、乾燥時間は1〜5分間が好ましく、2〜3分間がより好ましい。また、必要により減圧して乾燥してもよく、圧力は10〜10Paが好ましく、10〜10Paがより好ましい。
【0023】
また、該エポキシ樹脂組成物シートの取り扱い性を良好とするために、該エポキシ樹脂組成物シートは半硬化状態とすることが好ましい。その場合、乾燥温度は110〜130℃、乾燥時間は2〜5分間とすることが好ましい。
【0024】
該エポキシ樹脂組成物シートの厚さは、使用目的などに応じて適宜決定することができるが、該エポキシ樹脂組成物シートの取り扱い性の観点から、5〜50μmが好ましく、15〜50μmがより好ましい。
【実施例】
【0025】
<実施例1>
エポキシ当量3700のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂1)86.3g、エポキシ当量140の脂環型のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂3)19.37g、酸無水物系硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量168)23.2g、硬化促進剤として2−メチルイミダゾール1.33g、2−フェニルイミダゾール0.67g、酸化防止剤としてHCA、BHT、TPP−Rを各1.3gずつ添加し、MEK溶剤に45重量%ベースで溶解し、30分攪拌し、塗工溶液を作成した。
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)13.5gを一旦MEK溶剤に50重量%ベースで分散してから前記塗工溶液に添加後、攪拌してエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
このエポキシ樹脂組成物溶液を2軸延伸ポリエステルフィルム(50μm、三菱化学ポリエステル社製)の上にバーコーターを用いて40μmの厚みになるように塗布し、100℃で1分、140℃で30秒乾燥させ半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0026】
<実施例2〜5>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)をそれぞれ27g、40.4g、53.9g、67.4gをそれぞれ70重量%ベースで添加した以外は、実施例1と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0027】
<実施例6>
エポキシ当量7000のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)152.2g、エポキシ当量250のビフェニル型のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂4)44.5g、酸無水物系硬化剤として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸無水物当量168)29.9g、硬化促進剤として2−メチルイミダゾール1.33g、酸化防止剤としてHCA、BHT、TPP−Rを各1.35gずつ添加し、MEK溶剤に45重量%ベースで溶解し、30分攪拌し、塗工溶液を作成した。
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)23.2gを一旦MEK溶剤に50重量%ベースで分散してから前記塗工溶液に添加後、攪拌してエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
このエポキシ樹脂組成物溶液を2軸延伸ポリエステルフィルム(50μm、三菱化学ポリエステル社製)の上にバーコーターを用いて40μmの厚みになるように塗布し、100℃で1分、140℃で30秒乾燥させ半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0028】
<実施例7〜10>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)をそれぞれ46.4g、69.6g、92.8g、116gをそれぞれ70重量%ベースで添加した以外は、実施例6と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0029】
<実施例11〜15>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)を架橋アクリル系粒子(品番:MBX−5(平均粒子径:5μm/積水化成社製)に代えた以外は実施例1〜5と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0030】
<比較例1>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)6.7gを50重量%ベースで添加した以外は、実施例1と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0031】
<比較例2>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)を添加しない以外は、実施例1と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0032】
<比較例3>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)11.6gを50重量%ベースで添加した以外は、実施例6と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0033】
<比較例4>
架橋ポリスチレン粒子(品番:SBX−6(平均粒子径:6μm)/積水化成社製)を添加しない以外は、実施例6と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0034】
<比較例5>
架橋アクリル系粒子(品番:MBX−5(平均粒子径:5μm)/積水化成社製)6.7gを50重量%ベースで添加した以外は、実施例11と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0035】
<比較例6>
架橋アクリル系粒子(品番:MBX−5(平均粒子径:5μm)/積水化成社製)を添加しない以外は、実施例11と同様にして半硬化状態のエポキシ樹脂組成物シートを得た。
【0036】
[評価]
上記の実施例1〜15および比較例1〜6のエポキシ樹脂組成物シートに、成型用型として10μmピッチ、高さ約5μmで20cm×20cmのマトリックス状に半球形状を形成したポリイミドシート(125μm)の転写型を使用して160℃、真空引き15秒、プレス240秒、0.5MPaの加圧圧着で成形した後、離型した。さらに、150℃で2分間硬化することによって凹凸形状が表面に施されたマイクロレンズシートを得た。得られたマイクロレンズシートを温度60℃/湿度90%で1時間放置し、マイクロレンズシートのしわの有無を確認した。
【0037】
実施例1〜15のエポキシ樹脂組成物シートで得たマイクロレンズシートは、全くしわが発生しなかったが、比較例1〜6ではしわが発生した。
【0038】
実施例および比較例の組成を下記の表1〜3に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物をシート成形して得られるマイクロレンズシートなどの光学部材は、液晶プロジェクタ、ビデオカメラ、ビューファインダー、携帯テレビなどの光学電子機器に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物中に架橋ポリスチレン粒子および/または架橋アクリル系粒子が8〜40重量%含有されてなることを特徴とする光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シート。
【請求項2】
該エポキシ樹脂組成物が、さらに酸無水物系硬化剤および硬化促進剤を含有してなる請求項1記載の光学部材成形用エポキシ樹脂組成物シート。

【公開番号】特開2009−31354(P2009−31354A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192271(P2007−192271)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】