説明

光学部材用粘着剤組成物および光学部材用粘着剤ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材

【課題】帯電防止性能に優れ、さらには、高温,高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた光学部材用粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有する光学部材用粘着剤樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム(偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等)等、具体的には、偏光フィルムが、三酢酸セルロース系フィルム等の保護フィルムで被覆された光学積層体と液晶セルのガラス基板との接着に用いられる光学部材用粘着剤樹脂組成物、および光学部材用粘着剤、ならびにこの光学部材用粘着剤からなる粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板に関するものである。より詳しくは、帯電防止性能に優れ、さらには、高温、高湿の条件下においても、光学積層体とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、光学フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた光学部材用粘着剤樹脂組成物、および光学部材用粘着剤、ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、偏光フィルム、例えば偏光性が付与されたポリビニルアルコール系フィルム等の両面が、セルロース系フィルム、例えば三酢酸セルロースフィルムで被覆された偏光板を、2枚のガラス板の間に配向した液晶成分を狭持させた液晶セルの表面に積層し、液晶表示板とすることが行われており、この液晶セル面への積層は、偏光板表面に設けた粘着剤層を上記液晶セル面に当接し、押し付けることにより行われるのが通常である。
【0003】
そして、上記偏光板等の光学部材の表面に設けた粘着剤層には、傷や汚れを防止する目的でセパレーターが設けられたり、加工および搬送過程で生じる傷や汚れ等を防止する目的で表面保護フィルム等が設けられたりするが、液晶セル等に貼り合わせる際にはこれらセパレーターや表面保護フィルムは不要となり、剥離除去されることになる。このような光学部材からセパレーターや表面保護フィルムを剥離する際に静電気が発生することとなり、この静電気により、光学部材にゴミが付着したり、液晶配向の乱れによる異常表示が生じたり、周辺回路素子の静電破壊が起きたりする等の不具合が生じるという問題がある。
【0004】
また、上記の粘着剤層を設けた光学部材を液晶セルに貼り合わせる際に、異物混入や損傷、接着ミス等が生じた場合、剥離して再貼合することになるが、この剥離に際しても上記と同様、静電気が生じ不具合が生じることとなる。このような静電気発生に起因した不具合の発生防止対策として、例えば、光学部材に用いる粘着剤組成物において、ベースポリマーにイオン液体を配合することが提案されている(特許文献1参照)。また、アクリルベースポリマーに、帯電防止剤としてポリアルキレン構造と水酸基を有するポリマーにイオン性物質を混合したものを配合することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−11365号公報
【特許文献2】特開2006−199873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、帯電防止性能の効果は認められるものの、イオン液体が配合されているため、経時においてブリードしてくる等の可能性があり、またベースポリマー自身については帯電防止能を有しない一般的なものであり、上記イオン液体のみの帯電防止性能に頼るものであった。また、使用対象である光学部材、特に偏光板用途において重要である耐久性および光漏れ防止性能については全く考慮されてはいないものであった。
【0007】
一方、上記特許文献2の開示技術では、上記特許文献1と同様、帯電防止性能の効果は認められるものの、ベースポリマーに配合した帯電防止剤が、経時においてブリードしてくる等の可能性があり、実用には耐えないものであった。
【0008】
ちなみに、偏光板が用いられる液晶表示板は、パソコンや液晶テレビ、カーナビゲーション等の表示装置として広範囲に使用され、それに伴って使用環境も非常に過酷になっており、上記過酷な環境下での使用においても耐久性に優れることが要求されており、例えば、高温、高湿といった過酷な環境下においても、粘着剤層とガラス板との間に生じる発泡や剥がれといった現象がないこと、さらに、高温、高湿の環境下では、偏光フィルムが収縮してしまうのに対して、粘着剤層がこの偏光フィルムの収縮に追従することができず、液晶表示板の周縁部から光が漏れるという、いわゆる光漏れ現象がないことが要求されている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、帯電防止性能に優れ、さらには、高温,高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた光学部材用粘着剤樹脂組成物および光学部材用粘着剤ならびにそれを用いて得られる粘着剤層付き光学部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を解決するため、鋭意検討を行なう過程で、まず、帯電防止能の付与を目的に帯電防止剤を多量に添加した場合、粘着剤自体の耐久性が著しく低下し、逆に帯電防止剤の添加量を減らし帯電防止性能を維持させるためには、粘着剤を構成する樹脂自体の改良が必要となるという知見を得た。この知見に基づき、研究を重ねた結果、上記樹脂の重合成分である水酸基含有アクリルモノマーの使用比率を高くすることにより帯電防止能が発揮されることとなるが、上記水酸基含有アクリルモノマーの使用量が多すぎると耐久性が低下することを突き止めた。このようなことから、粘着剤の耐久性の低下を生起させずに優れた帯電防止能を付与することを可能とする帯電防止剤を得るべくさらに研究を重ねた結果、種々の帯電防止剤の中でも特に粒子径の小さい帯電防止剤である、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方を用いると、耐久性、光漏れ防止性および帯電防止能に優れた光学部材用粘着剤樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有する光学部材用粘着剤樹脂組成物を第1の要旨とするものである。
【0012】
そして、本発明は、上記第1の要旨である光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなる光学部材用粘着剤を第2の要旨とするものである。
【0013】
さらに、本発明は、上記第2の要旨である光学部材用粘着剤からなる粘着剤層と光学部材とからなる積層体である粘着剤層付き光学部材を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明は、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有する光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]であり、この光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなる光学部材用粘着剤である。このため、粘着物性と帯電防止性能のバランスに優れ、また、高温、高湿の条件下においても、光学積層体、とりわけ偏光板とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、偏光フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を防止することができる等の耐久性に優れた液晶表示板を得ることができる。
【0015】
上記光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、架橋剤(C)を含有し、この架橋剤(C)により架橋されたものであると、より一層優れた耐久性と光漏れ防止性が得られる。
【0016】
上記光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、重合性成分として不飽和基含有化合物(D)を含有するとともに、重合開始剤(E)を含有し、活性エネルギー線および/または熱により架橋されたものであると、より一層優れた耐久性と光漏れ防止性が得られる。
【0017】
上記光学部材用粘着剤のゲル分率が80%以上であると、より一層優れた耐久性と光漏れ防止性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸あるいはメタクリル酸を、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0019】
本発明の光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]は、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を用いて得られるものである。そして、本発明の光学部材用粘着剤は、この光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなる架橋体からなるものである。
【0020】
まず、上記光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]について説明する。
上記光学部材用粘着剤樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)[I]は、先に述べたように、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有してなるものである。
【0021】
上記水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)は、重合成分として水酸基含有モノマーを必須成分とし、これの単独重合、あるいはその他の共重合成分と共重合することにより得られるものである。
【0022】
本発明における上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーをあげることができる。
【0023】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で1級水酸基含有モノマーを用いることが好ましく、さらには、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを使用することが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で特に好ましい。
【0024】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることが好ましい。
【0025】
上記水酸基含有モノマー以外のその他の共重合成分としては、上記水酸基含有モノマー以外の官能基含有モノマーや(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、必要に応じてさらにその他の共重合性モノマーがあげられる。
【0026】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステル(例えば、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等)等のカルボキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有モノマー;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等のスルホン酸基含有モノマー;等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0027】
上記官能基含有モノマーの中でも、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アミド基含有モノマーが好適に用いられ、さらにはカルボキシル基含有モノマーが、粘着力を上げ、耐久性が上昇する点で、特に好適に用いられる。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルエステル等があげられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルについては、アルキル基の炭素数が、通常1〜12、特には1〜8、さらには4〜8であることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等があげられる。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性、帯電防止性能および帯電防止剤等を混合した場合の相溶性等に優れる点で、n−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0030】
上記その他の共重合性モノマーとしては、例えば、N−(メタ)アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン等があげられる。
【0031】
また、本発明においては、さらに、共重合性モノマーとして、帯電防止性能を有する化合物を共重合させることも、アクリル系樹脂(A)の帯電防止性能を、より一層優れたものにするために好ましい。
【0032】
上記帯電防止性能を有する化合物としては、親水性を示す構造部位を有するものであればよく、親水性基としては、例えば、イオン性基、ノニオン性基を有する化合物があげられる。上記イオン性基を有する化合物としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の4級化物、イミダゾリウム塩の(メタ)アクリレート等の重合性基を有するイオン液体およびイオン固体、第4級アンモニウム塩基を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物等のイオン性基含有重合性化合物等があげられ、ノニオン性基を有する化合物としては、アルキレンオキサイド構造含有重合性モノマー等のノニオン系重合性化合物等をあげることができる。
【0033】
また、一旦共重合により作製されたアクリル系樹脂(A)の側鎖にグラフト化反応により帯電防止性能を有する化合物を導入することも可能である。この場合、例えば、上記親水性を示す構造部位を有する化合物の中から水酸基を含有する化合物を選択し、ポリイソシアネート化合物と反応させウレタンプレポリマーとした後に、アクリル系樹脂(A)の水酸基と反応させることにより導入すればよい。
【0034】
本発明においては、上記モノマー成分を重合することにより特定のアクリル系樹脂(A)を製造するのであるが、上記重合に際しては、従来公知の方法により行うことができる。例えば、有機溶媒中に、上記水酸基含有モノマー、その他の官能基含有モノマー、アクリル酸エステル系モノマー、その他の共重合性モノマー等の重合モノマー、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合する方法があげられる。
【0035】
このようなアクリル系樹脂(A)は、例えば、有機溶媒中でのラジカル重合により製造することができる。上記ラジカル重合に用いられる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等があげられる。
【0036】
上記ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤である、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2′アゾビス(2−メチルプロピオン酸)等のアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系化合物があげられる。
【0037】
そして、上記アクリル系樹脂(A)において、重合成分として、水酸基含有モノマーを重合成分全体に対して15重量%以上含有することが必要である。すなわち、水酸基含有モノマーが少な過ぎると、充分な帯電防止性能が得られなくなるからである。上記水酸基含有モノマーの好ましい範囲は、15〜70重量%、さらに好ましくは17〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0038】
また、上記その他の重合成分の含有割合としては、水酸基含有モノマー以外の官能基含有モノマーが0〜5重量%、特には0〜3重量%、さらには0.2〜1重量%であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが0〜85重量%、特には30〜85重量%、さらには40〜80重量%であることが好ましく、その他の共重合モノマーが0〜30重量%、特には0〜15重量%、さらには0〜10重量%であることが好ましい。
【0039】
このようにして得られる、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、耐久性能と光漏れ防止性能のバランスの点から、通常20万〜250万であることが好ましく、特には50万〜160万であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、後述の活性エネルギー線照射や、架橋剤との反応等の架橋処理によっても充分な凝集力が得られない傾向がみられ、大きすぎると、希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性やコストの面で好ましくない傾向がみられる。
【0040】
なお、上記重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107 、分離範囲:100〜2×107 、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものである。
【0041】
また、上記アクリル系樹脂(A)の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、10以下であることが好ましく、さらには7以下が好ましく、特に5以下が好ましい。上記分散度が高すぎると粘着剤層の、耐湿熱、光漏れ等の耐久性能が劣る傾向にある。なお、上記分散度の下限は、製造の限界の点から、通常、2である。上記分散度は、重量平均分子量と数平均分子量より求められる値であり、上記Mnとは、アクリル系樹脂(A)の数平均分子量を示すものであって、その数平均分子量(Mn)は、上記重量平均分子量(Mw)と同様の方法で求められる。
【0042】
さらに、上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは−80〜−20℃であり、特には−75〜−25℃、さらには−55〜−30℃が好ましい。ガラス転移温度が高すぎるとタックが不足する傾向があり、低すぎると耐熱性に劣る傾向がある。なお、上記ガラス転移温度はFoxの式より算出されるものである。
【0043】
また、このようにして得られる、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)の粘度としては、不揮発分が30%になるように酢酸エチルで希釈したときの粘度において、通常、10〜1000000mPa・s/25℃であり、より好ましくは500〜100000mPa・s/25℃、特に好ましくは2000〜50000mPa・s/25℃である。すなわち、粘度が高過ぎると、粘着剤として加工しづらく塗りムラが発生しやすい傾向がみられ、低過ぎると、凝集力に劣る傾向がみられるからである。
なお、上記粘度の測定は、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて行なうことができる。
【0044】
上記アクリル系樹脂(A)とともに用いられるアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)(以下、「帯電防止剤(B)」と記すことがある。)は、帯電防止剤としての作用を奏するものであるが、併せて耐久性の低下を招かないといった作用も奏するものである。
【0045】
上記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩における、カチオン部分としては、例えば、Li+,Na+,K+,Mg2+,Ca2+があげられるが、これらの中でも帯電防止性能に優れる点で、Li+、Na+、K+であることが好ましい。
【0046】
また、上記アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩における、アニオン部分としては、例えば、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、CF3COO-、SbF6-、NbF6-、TaF6-、F(HF)n-、C49SO3-、C37COO-、CF3SO3-、(CF3SO22-、(CF3SO23-、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、AlCl4-、Al2Cl7-、ClO4-、NO3-、CH3COO-、CH3SO3-、AsF6-、(CN)2-、等があげられるが、これらの中でも、BF4-、PF6-、CF3COO-、SbF6-、NbF6-、TaF6-、F(HF)n-、C49SO3-、C37COO-、CF3SO3-、(CF3SO22-、(CF3SO23-、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-等のフッ素原子含有アニオンであることが好ましく、特に好ましくは(CF3SO22-、(CF3SO23-、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-等のスルホニル基およびフッ素原子含有アニオンであり、さらに好ましくは(CF3SO22-、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-等のイミド構造を有するスルホニル基およびフッ素原子含有アニオンである。
【0047】
上記カチオンおよびアニオンを組み合わせて得られるアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)の中でも、帯電防止性能以外の物性を悪化させることなく帯電防止性能を付与できる点で、トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホニルイミドカリウムを用いることが特に好ましい。
【0048】
上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜20重量部に設定する。より好ましくは0.1〜10重量部であり、特に好ましくは1〜5重量部である。すなわち、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)の含有量が少な過ぎると、充分な帯電防止能を付与することが困難となり、多過ぎると、耐久性が低下する傾向がみられるからである。
【0049】
なお、本発明において、光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]は、一般的に、上記アクリル系樹脂(A)を主成分とし、これに上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有するものであるが、上記主成分とは、光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]全量に対して、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上含有することを意味するものである。
【0050】
本発明においては、上記水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有する光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]を架橋することにより粘着剤となるのである。
【0051】
本発明の光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]は、水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)のみからなる場合があり、それ以外に後述する、架橋剤(C)、活性エネルギー線重合性の不飽和基含有化合物(D)、重合開始剤(E)を含有することも好ましい。
【0052】
つぎに、本発明の光学部材用粘着剤について説明する。
本発明の光学部材用粘着剤は、上記水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有する光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなるものである。なお、上記水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)については、前記樹脂組成物にて説明したのと同様である。
【0053】
上記光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]を架橋する方法としては、〔α〕架橋剤(C)を用いて架橋する方法、〔β〕不飽和基含有化合物(D)および重合開始剤(E)を含有させ、活性エネルギー線および/または熱により架橋する方法があげられる。そして、その架橋度合いに関しては、上記〔β〕の方法のみでも充分なものが得られるが、粘着剤の架橋をより一層密とし、光漏れ防止性を向上させるという点から、上記〔α〕および〔β〕の各方法を併用することが特に好ましい。
【0054】
まず、上記〔α〕架橋剤(C)を用いて架橋する方法について説明する。
上記架橋剤(C)を用いて架橋する場合は、樹脂組成物[I]として、前記アクリル系樹脂(A)、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)に加え、さらに架橋剤(C)を含有する樹脂組成物[I]を用いる。
【0055】
上記架橋剤(C)を用いる場合、前記アクリル系樹脂(A)の官能基とこの架橋剤(C)が反応することにより架橋(化学架橋)が行なわれる。
【0056】
上記架橋剤(C)としては、前記アクリル系樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物であればよく、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等のメラミン系化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等のイソシアネート系化合物、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド系化合物、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等のアミン系化合物、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等の金属キレート化合物等があげられ、中でも、基材との密着性を良くできる点やベースポリマーとの反応性の点で、イソシアネート系化合物が好適に用いられる。これらの架橋剤(C)は、単独で使用しても良いし、2種以上併用してもよい。
【0057】
上記架橋剤(C)の含有量は、前記アクリル系樹脂(A)中に含まれる官能基の量、アクリル系樹脂(A)の分子量、用途目的により適宜選択できるが、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜15重量部であることが好ましく、さらには0.2〜12重量部、特には0.3〜3重量部、殊には0.5〜1重量部であることが好ましい。上記架橋剤(C)が少なすぎると、凝集力が不足し、充分な耐久性が得られなくなる傾向がみられ、多すぎると柔軟性、および粘着力が低下し、耐久性が悪くなり、剥離が起こりやすくなるため光学フィルムと貼り合わせることが困難となる傾向がみられる。
【0058】
また、本発明においては、樹脂組成物[I]が架橋されて得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層向上させるために、架橋剤(C)の一部に、帯電防止性能を有する化合物が導入された架橋剤を用いることも好ましい。上記帯電防止性能を有する化合物としては、前述のアクリル系樹脂(A)の側鎖にグラフト化反応により導入される帯電防止性能を有する化合物と同様の化合物を用いることが可能である。
【0059】
このような架橋剤に帯電防止性能を有する化合物を導入する方法としては、例えば、架橋剤としてポリイソシアネート系化合物を用いる際には、帯電防止性能を有する化合物として、その構造中に水酸基を有する化合物を使用すればよく、上記水酸基とイソシアネート基が反応することにより、一部に帯電防止性能を有する化合物が導入された架橋剤を製造することができる。
【0060】
なお、架橋剤への帯電防止性能を有する化合物の導入に関しては、架橋剤にあらかじめ帯電防止性能を有する化合物を導入しておき、アクリル系樹脂(A)と混合させてもよいし、アクリル系樹脂(A)、架橋剤(C)との混合時に、帯電防止性能を有する化合物を同時に添加して、架橋剤(C)と反応させてもよい。
【0061】
つぎに、前記〔β〕の方法である、不飽和基含有化合物(D)および重合開始剤(E)を含有させ、樹脂組成物[I]を活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により架橋する方法について説明する。
【0062】
上記活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)により架橋する場合には、樹脂組成物[I]として、前述のアクリル系樹脂(A),アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)に加えて、不飽和基含有化合物(D)および重合開始剤(E)を含有する樹脂組成物[I]を用いる。このように、不飽和基含有化合物(D)を含有することにより、硬化を調整することができ、光学部材用途に適した粘着物性を実現することが可能となるのである。また、上記重合開始剤(E)を含有することにより、活性エネルギー線照射時の反応を安定化させることができる。
【0063】
上記架橋の場合は、不飽和基含有化合物(D)が活性エネルギー線および/または熱により重合(ポリマー化)されて、アクリル系樹脂(A)との架橋(物理架橋)が行なわれる。アクリル系樹脂(A)が、不飽和基含有アクリル系樹脂である場合には、活性エネルギー線および/または熱による不飽和基含有化合物(D)のポリマー化に限らず、不飽和基含有アクリル系樹脂(A)と不飽和基含有化合物(D)とのポリマー化等も考慮することとなる。
【0064】
上記不飽和基含有化合物(D)としては、1分子中に1つの不飽和基を有する単官能の不飽和基含有化合物であってもよいし、1分子中に2つ以上の不飽和基を有する多官能の不飽和基含有化合物であってもよいが、好ましくは2つ以上の不飽和基を有する不飽和基含有化合物、より好ましくは3つ以上の不飽和基を有する不飽和基含有化合物、特に好ましくは3〜10の不飽和基を有する不飽和基含有化合物であることが活性エネルギー線照射時の硬化性の点で好ましい。
【0065】
上記不飽和基含有化合物(D)の構造としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物や、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマー等を用いることができる。これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(d1)、エチレン性不飽和モノマー(d2)を用いることが硬化速度や到達物性の安定性に優れる点で好ましい。
また、上記不飽和基含有化合物(D)は、オキシアルキレン鎖や水酸基等の親水性を示す構造部位を含有することも帯電防止性能や相溶性の面からより好ましい。
【0066】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(d1)は、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を反応させて製造できる。
【0067】
上記水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物としては、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられ、中でも3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル系化合物が好ましく用いられる。また、これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
上記多価イソシアネート化合物としては、特に限定されることなく、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートがあげられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネートあるいはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、または、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等があげられる。
【0069】
上記ポリオールとしては、特に限定されることなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール等のアルキレングリコール系化合物、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロックまたはランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール;該多価アルコールまたはポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール等があげられる。これらの中でも、ポリエチレングリコール誘導体が好ましく用いられ、特にはポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましく用いられる。
【0070】
さらには、上記ポリオールとして、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、1,4−ブタンジオールスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基またはスルホン酸塩基含有ポリオール等もあげられる。
【0071】
そして、上記ポリイソシアネートとポリオールの反応生成物を用いる場合は、例えば、上記ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ポリイソシアネートとして用いればよい。上記ポリイソシアネートとポリオールの反応においては、反応を促進する目的でジブチルスズジラウレートのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒等を用いることも好ましい。
【0072】
なお、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(d1)として、オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることも優れた帯電防止性能を示す点で好ましい。
【0073】
上記オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、上記ポリオールの中でも、アルキレングリコール系化合物を使用することによって得られるものであり、上記オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の構造としては、アルキレングリコール系化合物の両末端の水酸基のうち一方がイソシアネート基と反応し、他方は水酸基のまま残っているオキシアルキレン鎖構造を有するウレタン(メタ)アクリレートであることが、活性エネルギー線照射により硬化した後でも、オキシアルキレン鎖の自由度が大きくイオンの運搬が起こりやすいために優れた帯電防止性能を示す点で好ましい。
【0074】
また、上記オキシアルキレン鎖含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、上記複数個の水酸基を有するポリオール系のアルキレングリコール系化合物に替えて、水酸基を1つのみ有するアルキレングリコール系化合物を使用して得られるものであってもよい。上記水酸基を1つのみ有するアルキレングリコール系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体等のアルキル基含有ポリアルキレングリコール誘導体があげられる。
【0075】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の製造方法としては、特に制限されず、例えば、水酸基含有(メタ) アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を不活性ガス雰囲気で混合し、30〜80℃、2〜10時間反応させる方法があげられる。この反応では、オクテン酸スズ、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ、オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム、酢酸カリウム、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン等のウレタン化触媒を用いるのが好ましい。
【0076】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量は、好ましくは300〜4000、より好ましくは400〜3500、特に好ましくは500〜3000である。すなわち、上記重量平均分子量が小さすぎると硬化後に凝集力不足となる傾向があり、大きすぎると粘度が高くなりすぎ、製造が困難となる傾向がある。
【0077】
また、上記単官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフエステル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等があげられる。
【0078】
上記エチレン性不飽和モノマー(d2)として、上記の他にアクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルもあげられ、上記アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等があげられる。また、特定の置換基をもつカルボン酸である上記2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等があげられる。さらに、オリゴエステルアクリレートもあげられる。
【0079】
上記2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等があげられる。
【0080】
上記3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0081】
これら不飽和基含有化合物(D)を構成する、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物やエチレン性不飽和モノマー等は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記不飽和基含有化合物(D)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して5〜100重量部が好ましく、より好ましくは7〜50重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。上記不飽和基含有化合物(D)の含有量が多すぎると、柔軟性が低下し、帯電防止性能が悪くなり、剥離が起こりやすくなるため光学フィルムと貼り合わせることが困難となる傾向が見られ、少なすぎると粘着剤の架橋密度が不充分となり、光漏れ防止性が悪くなる傾向がある。
【0083】
そして、本発明において得られる粘着剤の帯電防止性能をより一層優れたものとするためには、不飽和基含有化合物(D)の帯電防止性能を上げることも有効である。上記帯電防止性能の向上効果を得るためには、エチレン性不飽和モノマーとして、帯電防止性能を有する化合物を使用してもよいし、また、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の構成成分として、親水性を示す構造部位と水酸基の両方を有する帯電防止性能を有する化合物を使用してもよい。
【0084】
前記重合開始剤(E)としては、例えば、光重合開始剤(E1)、熱重合開始剤(E2)等の種々の重合開始剤を用いることが可能であるが、特には光重合開始剤(E1)を使用することが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により架橋(硬化)させることが可能となる点で好ましい。
【0085】
また、上記光重合開始剤(E1)を用いるときは、活性エネルギー線照射により樹脂組成物[I]を架橋させ、熱重合開始剤(E2)を用いるときは、加熱により樹脂組成物[I]を架橋させるのであるが、必要に応じて、両方を併用することも好ましい。
【0086】
上記光重合開始剤(E1)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。なお、これら光重合開始剤(E1)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0088】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
【0089】
また、上記熱重合開始剤(E2)としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤;等があげられる。なお、これらの熱重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記重合開始剤(E)の含有量については、前記アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、特には0.1〜7重量部、さらには0.3〜3重量部であることが好ましい。上記重合開始剤(E)の含有量が少なすぎると、硬化性に乏しく物性が安定しなくなる傾向がみられ、多すぎてもそれ以上の効果が得られない傾向がみられる。
【0091】
上記活性エネルギー線照射に際しては、遠紫外線、紫外線、近紫外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行なう場合は、上記光重合開始剤(E1)を用いなくても硬化可能である。
【0092】
そして、上記紫外線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。上記高圧水銀ランプの場合は、例えば、5〜3000mJ/cm2 、好ましくは10〜1000mJ/cm2の条件で行われる。また、上記無電極ランプの場合は、例えば、2〜1500mJ/cm2 、好ましくは5〜500mJ/cm2の条件で行われる。そして、照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は、数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。一方、上記電子線照射の場合には、例えば、50〜1000Kevの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜50Mradの照射量とするのがよい。
【0093】
また、上記重合開始剤(E)として、熱重合開始剤(E2)を用いる場合には加熱により重合反応を開始し、進行させる。加熱による架橋時の処理温度や処理時間は、使用する熱重合開始剤(E2)の種類によって異なるものであり、通常、開始剤の半減期より計算されるものであるが、処理温度は、通常70℃〜170℃であることが好ましく、処理時間は、通常0.2〜20分が好ましく、特には0.5〜10分が好ましい。
【0094】
上記架橋を行なうに際しては、活性エネルギー線照射による架橋、熱架橋のどちらでもよいが、必要に応じて、活性エネルギー線照射による架橋と熱架橋を併用することも可能である。
【0095】
本発明においては、上記の〔β〕活性エネルギー線および/または熱(活性エネルギー線照射および/または加熱)による架橋のみでも充分なものが得られるが、さらに、前記〔α〕架橋剤による架橋とを併用することにより、粘着剤の架橋密度を上げ、凝集力を上げて光漏れ防止と耐久性に関してより一層優れたものが得られるようになる。
【0096】
また、本発明においては、粘着剤形成材料である樹脂組成物[I]として、さらにシランカップリング剤(F)を含有することが、光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。上記シランカップリング剤(F)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部に設定され、より好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.03〜0.8重量部である。上記シランカップリング剤(F)の含有量が少な過ぎると、添加効果が得られない傾向があり、多過ぎると、アクリル系樹脂(A)との相溶性が悪く接着力や凝集力が得られなくなる傾向がある。
【0097】
上記シランカップリング剤(F)としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、水酸基系シランカップリング剤、カルボキシル基系シランカップリング剤、アミノ基系シランカップリング剤、アミド基系シランカップリング剤、イソシアネート基系シランカップリング剤等をあげることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく用いられ、特にエポキシ系シランカップリング剤とメルカプト系シランカップリング剤を併用することが、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
【0098】
上記エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があげられるが、中でも好ましいのはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである。
【0099】
上記メルカプト系シランカップリング剤の具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等があげられる。
【0100】
また、本発明においては、粘着剤形成材料である粘着剤組成物[I]として、さらにアルキレンオキサイド基含有化合物(G)〔ただし、先に述べた不飽和基含有化合物(D)は除く〕〔以下、単にアルキレンオキサイド基含有化合物(G)と記すことがある。〕を含有することが、光学部材に対する密着性が向上する点で好ましい。
【0101】
上記アルキレンオキサイド基含有化合物(G)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、1〜90重量部に設定され、好ましくは2〜30重量部、特に好ましくは3〜10重量部、殊には4〜5重量部である。上記アルキレンオキサイド基含有化合物(G)の含有量が少なすぎると、帯電防止能に劣る傾向があり、多すぎると粘着物性が悪化する傾向がある。
【0102】
上記オキシアルキレン基含有化合物(G)としては、オキシアルキレン基を有する化合物(不飽和基含有化合物は除く)であればよく、各種オキシアルキレン基含有化合物を用いることができ、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、オキシアルキレン基を有するカチオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤、オキシアルキレン基含有ポリエーテルエステル等があげられる。
【0103】
これらの中でも、オキシエチレン基含有化合物が好ましく、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンジアミン、オキシエチレン基含有ポリエーテル系ポリマー、オキシエチレン基含有ポリエーテルエステルアミド、オキシエチレン基含有ポリエーテルアミドイミド、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等があげられ、オキシエチレン基を有するポリエーテル系ポリマーまたはアクリル系ポリマーが、ベースポリマーとの相溶性のバランスがとり易く好ましく用いられる。
【0104】
上記オキシエチレン基含有ポリエーテル系ポリマーとしては、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのブロック共重合体、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールのランダム共重合体等のポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体があげられる。グリコール鎖の末端は、水酸基のままでもよいし、アルキル基、フェニル基等で置換されていてもよい。
【0105】
上記ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのランダム共重合体やブロック共重合体のポリエチレングリコール比率としては5〜75重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。ポリエチレングリコール比率が少なすぎるとイオン性液体との相溶性が悪くなり、充分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向があり、多すぎると結晶性が高くなりアクリル系ポリマーとの相溶性が悪くなり充分な帯電防止特性が得られにくくなる傾向がある。
【0106】
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。上記オキシエチレン基含有化合物のなかでも、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、効果的に帯電防止能を上げる点で好ましい。
【0107】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の繰返しが2のもの、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等の繰返しが3のもの、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、それ以上のポリオキシエチレンジメチルエーテル等があげられ、これらの中でも、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく用いられる。
【0108】
また、本発明においては、上記オキシアルキレン基含有化合物(G)中のオキシアルキレン基含有率が5〜85重量%であることが好ましく、7〜80重量%であることがより好ましく、9〜75重量%であることがさらに好ましい。かかる含有率が低すぎると、帯電防止性能に劣る傾向があり、多すぎると、親水性になりすぎることにより、耐湿熱性に劣る傾向がある。
【0109】
上記オキシアルキレン基含有化合物(G)の分子量としては、数平均分子量が100〜10000が好ましく、特に好ましくは180〜1000である。なお、上記数平均分子量は、前述の重量平均分子量と同様の方法にて求められる。
【0110】
なお、本発明において、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)をあらかじめオキシアルキレン基含有化合物(G)に溶解して用いることが、効率的に塩をアクリル系樹脂(A)に溶解できる点で好ましい。この操作を行わない場合、アクリル樹脂(A)に帯電防止剤(B)が溶けにくい事がある。
【0111】
本発明においては、粘着剤形成材料である樹脂組成物[I]として、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば上記アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)以外の帯電防止剤(B′)を配合してもよい。上記帯電防止剤(B′)としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等の第4級アンモニウム塩のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、過塩素酸リチウムや塩化リチウム等の有機酸または無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。
【0112】
上記帯電防止剤(B′)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.001〜20重量部に設定され、より好ましくは0.01〜7重量部、特に好ましくは0.02〜1重量部である。上記帯電防止剤(B′)の含有量が少なすぎると、添加効果が得られない傾向があり、多すぎると耐久性が悪化したり、帯電防止剤がブリードアウトする可能性がある。
【0113】
本発明において、粘着剤形成材料である樹脂組成物[I]には、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を添加することができる。
【0114】
このようにして、本発明では、上記樹脂組成物[I]が架橋されてなる光学部材用粘着剤が得られる。そして、上記粘着剤からなる粘着剤層と光学部材(光学積層体)とを積層することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0115】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層が設けられた光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましい。
【0116】
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、例えば、〔1〕光学部材上に樹脂組成物[I]を塗布、乾燥した後、さらに離型シートを貼合する方法、または〔2〕離型シート上に樹脂組成物[I]を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合する方法等により製造することできる。中でも、上記〔2〕の方法である、離型シート上に樹脂組成物[I]を塗布する製造方法が、希釈溶剤により基材を劣化させる可能性が低い点で好ましい。
【0117】
また、粘着剤層付き光学部材を実用に供する際には、上記離型シートを剥離して用いられる。そして、上記離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0118】
また、樹脂組成物[I]が、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による架橋を行なう場合には、〔1〕光学部材上に、樹脂組成物[I]を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、樹脂組成物[I]を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、活性エネルギー線照射および加熱による処理を行なう方法、〔3〕光学部材上に樹脂組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱による処理を行なった後、離型シートを貼合する方法、〔4〕離型シート上に樹脂組成物[I]を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱による処理を行なった後、光学部材を貼合する方法、により粘着剤層付き光学部材を製造することができる。
【0119】
上記樹脂組成物[I]の塗布に際しては、この樹脂組成物[I]を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは11〜25重量%である。また、上記溶剤としては、樹脂組成物[I]を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0120】
また、上記樹脂組成物[I]の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0121】
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と光漏れ防止性能の点から80%以上であることが好ましく、特には90%以上が好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足や光漏れ現象が悪化する傾向がある。なお、通常、ゲル分率の上限値は100%である。
【0122】
なお、光学部材用粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、活性エネルギー線の照射量や照射強度を調整すること、重合開始剤の種類およびその併用割合を調整すること、重合開始剤の配合量を調整すること等により達成される。また、上記活性エネルギー線の照射量や照射強度、重合開始剤の組成比、添加量は、それぞれの相互作用によりゲル分率が変化するので、それぞれバランスをとることが必要になる。
【0123】
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となるポリエチレンテレフタレートフィルムに粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0124】
また、得られる粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、例えば、10〜40μmが好ましく、特には12〜30μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると糊残りを起こしやすくなる傾向がある。
【0125】
本発明の粘着剤層付き光学部材は、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば液晶表示板に供されるのである。
【0126】
本発明の粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、ガラス基板に貼着する場合には、0.2N/25mm〜20N/25mmの粘着力を有することが好ましく、さらには0.5N/25mm〜10N/25mmが好ましい。
【0127】
上記粘着力は、つぎのようにして算出される。粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「コーニング1737」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合する。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行った後、24時間後に180℃剥離試験を行なう。なお、剥離性においては粘着力が小さいことが望まれる。
【0128】
本発明における光学部材としては、特に限定されることなく、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム、例えば、偏光板や位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているもの等があげられる。中でも特に偏光板であることが本発明では有効である。
【0129】
本発明で用いられる偏光板は、通常、偏光フィルムの両面に三酢酸セルロース系フィルムを保護フィルムとして積層したものであり、上記偏光フィルムとしては、平均重合度が1,500〜10,000、ケン化度が85〜100モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、2〜10倍、好ましくは3〜7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
【0130】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。また、ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂およびポリビニルアルコール誘導体があげられる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0132】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量,ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
〔アクリル系樹脂(A−1)〜(A−3)、(A’−1)、(A’−2)の調製〕
還流冷却器、攪拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(BA),2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA),アクリル酸(AAc)を下記の表1に示す割合(重量%)となるように仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂溶液を作製した。なお、得られたアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)、ガラス転移温度を表1に併せて示す。
【0133】
【表1】

【0134】
〔帯電防止剤(B−1)〕
過塩素酸リチウム
〔帯電防止剤(B−2)
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム[Li(CF3SO22N](森田化学社製)
〔帯電防止剤(B−3)
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム[K(CF3SO22N](森田化学社製)
〔帯電防止剤(B’−1)〕
MOI+ Br- :メタクリロイルオキシエチルオクチルイミダゾリウムブロマイド
【0135】
〔架橋剤(C−1)〕
トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、コロネートL−55E)
【0136】
〔不飽和基含有化合物(D−1)〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、イソホロンジイソシアネート19.2部、ジ−t−ブチルヒドロキシフェノール0.05部、ジブチルスズジラウレート0.02部を仕込み、50℃以下で、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(共栄社化学社製、ライトアクリレートPE−3A、水酸基価120mgKOH/g)80.8部を投入し、70℃にて反応を継続することにより不飽和基含有化合物(C−1)を得た。
〔不飽和基含有化合物(D−2)〕
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製、「カヤラッドDPHA」)
【0137】
〔重合開始剤(E−1)〕
ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)
【0138】
〔シラン系化合物(F−1)〕
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、「KBM403」)
【0139】
〔オキシアルキレン基含有化合物(G−1)〕
テトラエチレングリコールジメチルエーテル
【0140】
〔実施例1〜10、比較例1〜5〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表2に示す割合で配合することにより光学部材用粘着剤形成材料となる樹脂組成物を調製し、これを酢酸エチルにて塗工できる粘度〔1000〜10000mPa・s(25℃)〕に希釈して光学部材用粘着剤樹脂組成物溶液を作製した。
【0141】
【表2】

【0142】
そして、上記樹脂組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥した後、形成された樹脂組成物層側を偏光板(厚み190μm)上に転写し、フュージョン社製無電極ランプ[LH6UVランプのHバルブ(有効照射幅150mm×1列)]にてピーク照度:600mW/cm2 ,積算露光量:240mJ/cm2 で紫外線照射を行ない、23℃×65%R.H.の条件下で14日間エージングさせて粘着剤層付き偏光板を得た。なお、上記偏光板には、膜厚30μmのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99モル%、ヨウ素染色、4倍延伸)の両側を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した偏光板(ポリビニルアルコール偏光フィルムの延伸軸方向を45°傾けて100mm×100mmに切断)を用いた。
【0143】
一方、上記と同様の方法にて、偏光板に代えてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)を使用することにより、ゲル分率、表面抵抗率および粘着力測定用サンプルを作製した。
【0144】
このようにして得られた粘着剤層付き偏光板、あるいは粘着剤層付きPETフィルムを用いて、その物性〔表面抵抗率、ゲル分率、耐久性(耐熱試験、耐湿熱試験)、粘着力〕を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を後記の表3に併せて示す。
【0145】
〔表面抵抗率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmの大きさに切断した後、これを温度23℃×相対湿度65%の条件下に3時間放置し調湿した後、離型シートを剥がして10〜20秒後の粘着剤層について、抵抗率計(三菱化学社製、ハリエスターUP)を用いて表面抵抗率を測定した。なお、表面抵抗率が小さいほど帯電防止性能が高いことを意味する。
【0146】
〔ゲル分率〕
得られた粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに切断した後、離型シートを剥がし粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の重量変化にてゲル分率の測定を行なった。
【0147】
〔耐久性〕
得られた粘着剤層付き偏光板の離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、コーニング1737)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行ない、その後、下記の耐久試験(耐熱試験、耐湿熱試験)における発泡、剥がれ、光漏れ現象(耐熱試験のみ)の評価を行なった。
【0148】
〔耐久試験〕
(1)耐熱試験
80℃、100時間の耐久試験
(2)耐湿熱試験
60℃、90%R.H.100時間の耐久試験
【0149】
〔評価基準〕
(発泡)
○・・・発泡が見られない
△・・・発泡がわずかに見られる
×・・・発泡が多く見られる
(剥離)
○・・・剥がれがない、または0.5mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
△・・・0.5mm以上10mm未満の剥がれ、もしくは浮き跡の発生
×・・・10mm以上の剥がれ、もしくは10mm以上の浮き跡の発生
(光漏れ)
○・・・光漏れが見られない、またはほとんど見られない
△・・・光漏れが僅かに発生
×・・・4辺に光漏れが大きく発生
【0150】
〔粘着力〕
調製した粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、コーニング1737)に押圧して、偏光板と上記ガラス板とを貼合した。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行い、24時間後に180℃剥離試験を行った。なお、剥離性においては粘着力が小さいことが望まれ、1日後で10N/25mm以下が目標となる。
【0151】
【表3】

【0152】
上記結果から、実施例は、表面抵抗率が低く帯電防止性能に優れるとともに、耐熱試験および耐湿熱試験のいずれの項目(発泡,剥離,耐熱試験のみ光漏れ)においても良好な評価結果が得られており、優れた耐久性を備えることは明らかである。しかも、粘着力に関しても問題のない充分満足のいく数値が得られた。
【0153】
さらに、帯電防止剤(B)として、フッ素原子およびスルホニル基を含有するイミド塩を用いた実施例6〜10で、帯電防止性能と、耐熱試験・耐湿熱試験が高いレベルで両立できる点で非常に好ましい事も確認できる。
【0154】
これに対して、帯電防止剤としてイオン液体を用いた比較例1は、耐湿熱試験で発泡が生ずるとともに、耐久性全般において低いレベルであり、帯電防止性能においても充分なものは得られなかった。水酸基含有モノマーを12重量%含有する重合成分を重合して得られるアクリル系樹脂を用い、かつ帯電防止剤としてイオン液体を用いた比較例2は、耐湿熱試験での発泡が生ずるとともに、耐久性全般において低いレベルであり、帯電防止性能においても満足のいくものではなかった。水酸基含有モノマーを1.5重量%含有する重合成分を重合して得られるアクリル系樹脂を用いた比較例3,4は、耐久性に関しては特に問題はなかったが、表面抵抗率が高く、帯電防止性能に劣るものであった。また、水酸基含有モノマーを1.5重量%含有する重合成分を重合して得られるアクリル系樹脂を用い、かつ帯電防止剤である過塩素酸リチウムを比較例3,4よりも多く配合してなる比較例5は、帯電防止性能に関しては良好な結果が得られたが、アクリル系樹脂の親水性が低いためアクリル系樹脂と帯電防止剤の相溶性が悪くなるために耐久性試験のなかでも、特に耐湿熱試験の発泡,剥離評価が悪く、耐久性に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の光学部材用粘着剤は、各工程で発生する静電気が帯電しにくく、また、高温,高湿の条件下においても、光学積層体とガラス基板との接着性に優れ、粘着剤層とガラス基板との間に発泡や剥離が生じないうえに、光学フィルムの収縮により生じる光漏れ現象を抑制することができるため、耐久性に優れた液晶表示板を得ることができ、非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有モノマーを15重量%以上含有する重合成分が重合してなるアクリル系樹脂(A)と、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)を含有することを特徴とする光学部材用粘着剤樹脂組成物。
【請求項2】
アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)のカチオン部分が、Li+、Na+、K+のいずれかである請求項1記載の光学部材用粘着剤樹脂組成物。
【請求項3】
アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の少なくとも一方(B)のアニオン部分が、フッ素原子およびスルホニル基を含有するアニオンである請求項1または2記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が架橋されてなることを特徴とする光学部材用粘着剤。
【請求項5】
光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、架橋剤(C)を含有し、この架橋剤(C)により架橋されてなる請求項4記載の光学部材用粘着剤。
【請求項6】
光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、重合性成分として不飽和基含有化合物(D)を含有するとともに、重合開始剤(E)を含有し、活性エネルギー線および/または熱により架橋されてなる請求項4または5記載の光学部材用粘着剤。
【請求項7】
光学部材用粘着剤樹脂組成物[I]が、さらにオキシアルキレン基含有化合物(G)〔
ただし、不飽和基含有化合物(D)は除く〕を含有する請求項4〜6いずれか一項に記載の光学部材用粘着剤。
【請求項8】
光学部材用粘着剤のゲル分率が80%以上である請求項4〜7のいずれか一項に記載の光学部材用粘着剤。
【請求項9】
光学部材が、偏光板である請求項4〜8のいずれか一項に記載の光学部材用粘着剤。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか一項に記載の光学部材用粘着剤からなる粘着剤層と、光学部材とからなる積層体であることを特徴とする粘着剤層付き光学部材。

【公開番号】特開2010−65217(P2010−65217A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186797(P2009−186797)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】