説明

光干渉断層像形成装置及びその制御方法

【課題】光干渉断層診断装置において、不必要な情報の記録を低減する。
【解決手段】装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、体内に挿入されたプローブを介して体腔内に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光に基づいて断面画像を形成する光干渉断層診断装置は、プローブの先端部に設けられ、測定光を出射するとともに反射光を受光する送受信部を、回転及び軸方向移動させ、取得された反射光と参照光との干渉光から断層像に対応したデータを生成し、保持する。光干渉断層診断装置は、送受信部の軸方向移動の間に、プローブを導くためのガイディングカテーテルの内部に送受信部が入ったことをデータを用いて検出し、これが検出された場合は、光干渉に基づいた断層像の生成から保持に関わる処理の少なくとも一部、例えばデータの保持動作及び/またはフラッシュ動作を行わないように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層像形成装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、動脈硬化の診断や、バルーンカテーテル、ステント等の高機能カテーテルによる血管内治療時の術前診断、あるいは、術後の結果確認のために光干渉断層診断装置(OCT:Optical Coherent Tomography)が使用されている。光干渉断層診断装置は、先端に光学レンズおよび、光学ミラーを取付けた光ファイバを内蔵したカテーテルを血管内に挿入し、光学ミラーを回転させながら血管内に光を照射し、生体組織からの反射光を受光することでラジアル走査を行う。そして、光干渉断層診断装置では、このラジアル走査により得られた反射光をもとに、血管の断面画像を描出する。さらに、光干渉断層診断装置の改良型として、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置も開発されている。
【0003】
光干渉断層診断装置は、装置内部で、光源から出力される光を測定光と参照光に分割し、測定光をカテーテル内部の光ファイバを介して先端から出射する。そして、生体組織により反射された反射光を同じ光ファイバを介して装置内部へ取り込み、反射光と参照光とを干渉させることで、参照光と同じ光路長からの測定光の強度、すなわち、反射光の強度を得ることができる。
【0004】
上述のような光干渉断層診断装置では、装置内部で参照光をミラーで反射させて反射光を得るとともに、ミラーの位置を前後に移動させることで、参照光の光路長を走査する。そして、この光路長の走査に同期させて参照光と反射光との干渉光を得ることで、深度方向の反射強度の分布を得ることができる。光干渉断層診断装置は、光ファイバを軸方向に回転させることによりラジアル走査を行い、血管断面画像を描出する。
【0005】
一方、参照光の光路長を変化させる代わりに波長掃引を利用することで断面像を形成する光干渉断層診断装置も提案されている。波長掃引を利用した光干渉断層診断装置では、出射する光の波長を繰り返し掃引することで、参照光の光路長を走査することなく、得られた干渉光の周波数分布から、測定光と参照光の光路差が同じ点を基準とした深度方向の反射強度分布を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−128074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超音波診断装置では1mm/sec程度の速度でプルバック動作(超音波振動子を軸方向へ移動する動作)を行うため、術者が画面を見ながら観察したい領域を設定することが可能であった。一方、光干渉診断装置ではフラッシュ液により血液を除去している時間中に、高速にデータを取得するため、できるだけ長い距離を一度に記録し、のちほどスロー再生を行う方式が一般的である。このとき画像を記録する位置は、CAGやOFDI画像を見ながら確認するが、記録の終了は、マニュアルで止めるか、プルバック可能な距離をすべて引ききることでおこなうしかなかった。
【0008】
通常、カテーテルシースとイメージングコアを含むプローブを血管内の断層撮影位置まで導くためにガイディングカテーテルが用いられる。例えば、ガイディングカテーテルを大腿動脈を経て冠動脈の撮影位置近傍まで通し、ガイドワイヤーを用いてプローブを撮影位置へと導く。したがって、このような手技の際には、例えば図6に示すように、カテーテルシース(301)とイメージングコア(601,602,231)を含むプローブをガイディングカテーテルより突き出して走査を行うことになる。そのため、プルバック走査の途中で測定光を送信し反射光を受信するための送受信部がガイディングカテーテルの内部に入る。ガイディングカテーテルの内部に送受信部が入ると、観察したい部分への測定光或いは観察したい部分からの反射光が遮られてしまい、記録を続行しても意味のあるデータは得られない。しかしながら、十分に熟練した技術者と施設で取得したデータを解析した結果、取得したデータの3〜6割の長さでガイディングカテーテルが記録されており、これらはまったく不要なデータである。このように不要なデータを記録することによる課題を以下に詳述する。
【0009】
画像を記録している際には、血液を除去するためなんらかのフラッシュ液をインジェクタもしくは造影シリンジなどにより注入している。たとえばフラッシュ液として造影剤を選択すると、通常1回のプルバック走査により10〜20ml程度の分量を注入することになるが、このうちの何割かはプローブがガイディングカテーテルに入って以後に注入されたものである。こうしたフラッシュ液の注入は患者の腎機能やその他の生理的な機能に影響を及ぼす可能性があり、フラッシュ液の注入は必要最小限に制限することが望ましい。
【0010】
また、無駄な画像を記録することにより、データ容量は数割〜十割程度増え、当然のことながらデータハンドリングに要する時間も増加し、本来診断に使える時間を圧迫する。さらに検査データの保存のため必要なスペースも同様な割合で増加する。
【0011】
本発明はこれらの課題の少なくとも一部を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、たとえば不必要な情報の記録もしくは不必要なフラッシュ液の注入を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明の一態様による光干渉断層像形成装置は以下の構成を備える。即ち、
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、体内に挿入されたプローブを介して体腔内に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光に基づいて断層像を形成する光干渉断層像形成装置であって、
前記プローブの先端部に設けられ、前記測定光を出射するとともに前記反射光を受光する送受信部を、回転及び軸方向移動させる走査駆動手段と、
前記送受信部を介して取得された反射光と前記参照光との干渉光から断層像に対応したデータを生成し、保持する保持手段と、
前記軸方向移動の間に、前記プローブを導くためのガイディングカテーテルの内部に前記送受信部が入ったことを前記データを用いて検出する検出手段と、
前記検出手段により前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合は、光干渉に基づいた断層像の生成から保持に関わる処理の少なくとも一部を停止する制御手段とを備える。
【0013】
また、上記の目的を達成するために本発明の他の態様による光干渉断層像形成装置の制御方法は、
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、体内に挿入されたプローブを介して体腔内に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光に基づいて断面画像を形成する光干渉断層像形成装置の制御方法であって、
前記プローブの先端部に設けられ、前記測定光を出射するとともに前記反射光を受光する送受信部を、回転及び軸方向移動させる走査駆動工程と、
前記送受信部を介して取得された反射光と前記参照光との干渉光から断層像に対応したデータを生成し、記憶手段に保持する保持工程と、
前記軸方向移動の間に、前記プローブを導くためのガイディングカテーテルの内部に前記送受信部が入ったことを前記データを用いて検出する検出工程と、
前記検出工程で前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合は、光干渉に基づいた断層像の生成から保持に関わる処理の少なくとも一部を停止する制御工程とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光干渉断層診断装置において、不必要なガイディングカテーテルの画像の記録を抑制することができる。このため、例えば、造影剤や生理食塩水等のフラッシュ液の減少、記録データ量の圧縮、操作時間の低減、バックアップ時間の低減、画像確認時間の低減が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態にかかる画像診断装置の外観構成を示す図。
【図2】画像診断装置100の機能構成を示すブロック図。
【図3】光プローブの全体構成を示す図。
【図4】光プローブの先端部の構成を示す図。
【図5】光プローブにおいて駆動シャフトをカテーテルシースに対して相対的にスライドさせた様子を示す図。
【図6】血管内における光プローブによる回転走査、軸方向移動を説明する模式図。
【図7】計測光の照射と反射光強度を説明する図。
【図8】血管内における光プローブの動作を説明するための模式図。
【図9】信号処理部の機能ブロックを示した図。
【図10】血管内腔の断層像とガイディングカテーテル内腔の断層像の例を示す図。
【図11】実施形態による断層像取得処理を説明するフローチャート。
【図12】光プローブの送受信部がガイディングカテーテル内腔に存在することを検出するための処理を示すフローチャート。
【図13】波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置の機能構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態を詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態では、参照光の光路長を走査して深度方向の反射強度分布を得る体腔内光干渉断層診断装置(OCT装置)について説明する。
【0018】
1.画像診断装置の外観構成
図1は第1実施形態にかかる画像診断装置100(光干渉断層画像診断装置)の外観構成を示す図である。図1に示すように、光干渉断層像形成装置としての画像診断装置100は、光プローブ部101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備え、スキャナ/プルバック部102と操作制御装置103とは、信号線/光ファイバ104により接続されている。
【0019】
光プローブ部101は、直接血管等の体腔内に挿入され、後述するイメージングコアを用いて体腔内部の状態を測定する。スキャナ/プルバック部102は、光プローブ部101と着脱可能に構成されており、内蔵されたモータが駆動することで光プローブ部101内のイメージングコアのラジアル動作を規定する。
【0020】
操作制御装置103は、体腔内光干渉断層診断を行うにあたり、各種設定値を入力するための機能や、測定により得られたデータを処理し、断層画像として表示するための機能を備える。操作制御装置103において、111は本体制御部であり、測定により得られたデータを処理したり、処理結果を出力したりする。111−1はプリンタ/DVDレコーダであり、本体制御部111における処理結果を印刷したり、データとして記憶したりする。112は操作パネルであり、ユーザは該操作パネル112を介して、各種設定値及び指示の入力を行う。113は表示装置としてのLCDモニタであり、本体制御部111における処理結果を表示する。
【0021】
2.光干渉断層画像診断装置の機能構成
次に、本実施形態にかかる画像診断装置100のうち、光干渉断層画像診断装置の主たる機能構成について図2を用いて説明する。
【0022】
図2において、209は超高輝度発光ダイオード等の低干渉性光源である。低干渉性光源209は、その波長が1310nm程度で、その可干渉距離(コヒーレント長)が数μm〜10数μm程度であるような短い距離範囲でのみ干渉性を示す低干渉性光を出力する。このため、この光を2つに分割した後、再び混合した場合には分割した点から混合した点までの2つの光路長の差が数μm〜10数μm程度の短い距離範囲内の場合には干渉光として検出されることとなり、それよりも光路長の差が大きい場合は干渉光として検出されることがない。
【0023】
低干渉性光源209の光は、第1のシングルモードファイバ228の一端に入射され、先端面側に伝送される。第1のシングルモードファイバ228は、途中の光カップラ部208で第2のシングルモードファイバ229及び第3のシングルモードファイバ232と光学的に結合されている。光カップラ部とは、1つの光信号を2つ以上の出力に分割したり、入力された2つ以上の光信号を1つの出力に結合したりすることができる光学部品であり、低干渉性光源209の光は、当該光カップラ部208により最大で3つの光路に分割して伝送されうる。
【0024】
第1のシングルモードファイバ228の光カップラ部208より先端側には、スキャナ/プルバック部102が設けられている。スキャナ/プルバック部102の回転駆動装置204内には、非回転部(固定部)と回転部(回転駆動部)との間を結合し、光を伝送する光ロータリジョイント(光カップリング部)203が設けられている。更に、光ロータリジョイント203内の第4のシングルモードファイバ230の先端側は、光プローブ部101の第5のシングルモードファイバ231と、アダプタ202を介して着脱自在に接続されている。これにより光の送受信を繰り返すイメージングコア201内に挿通され回転駆動可能な第5のシングルモードファイバ231に、低干渉性光源209からの光が伝送される。
【0025】
第5のシングルモードファイバ231に伝送された光は、イメージングコア201の先端側から血管内の生体組織に対してラジアル動作しながら照射される。そして、生体組織の表面あるいは内部で散乱した反射光の一部はイメージングコア201により取り込まれ、逆の光路を経て第1のシングルモードファイバ228側に戻り、光カップラ部208によりその一部が第2のシングルモードファイバ229側に移る。第2のシングルモードファイバ229において反射光は後述の参照光と混合され、第2のシングルモードファイバ229の一端から干渉光として出射され、光検出器210(例えばフォトダイオード)にて受光される。
【0026】
なお、光ロータリジョイント203の回転駆動部側は回転駆動装置204のラジアル走査モータ205により回転駆動される。また、ラジアル走査モータ205の回転角度は、エンコーダ部206により検出される。更に、スキャナ/プルバック部102は、直線駆動装置207を備え、信号処理部214からの指示に基づいて、イメージングコア201の軸方向(体腔内の末梢方向およびその反対方向)の移動(軸方向動作)を規定している。軸方向動作は、信号処理部214からの制御信号に基づいて、直線駆動装置207が光ロータリジョイント203を含むスキャナを移動させることにより実現される。
【0027】
この際、光プローブ部101のカテーテルシース(図3、図5により後述)は血管内に固定されたままで、カテーテルシース内に格納されているイメージングコア201のみが軸方向に移動することで、血管壁を傷つけることなく軸方向動作が行われる。
【0028】
一方、第3のシングルモードファイバ232の光カップラ部208と反対側(参照光路)には、参照光の光路長を変える光路長の可変機構216が設けてある。この光路長の可変機構216は生体組織の深さ方向(測定光の出射の方向)の検査範囲に相当する光路長を高速に変化させる第1の光路長変化手段と、光プローブ部101を交換して使用した場合の個々の光プローブ部101の長さのばらつきを吸収できるように、その長さのバラツキに相当する光路長を変化させる第2の光路長変化手段とを備えている。
【0029】
第3のシングルモードファイバ232の先端に対向して、この先端とともに1軸ステージ220上に取り付けられ、矢印223に示す方向に移動自在のコリメートレンズ221を介して、ミラー219が配置されている。また、このミラー219(回折格子)と対応するレンズ218を介して微小角度回動可能なガルバノメータ217が第1の光路長変化手段として取り付けられている。このガルバノメータ217はガルバノメータコントローラ224により、矢印222方向に高速に回転される。
【0030】
ガルバノメータ217はガルバノメータのミラーにより光を反射させるものであり、参照ミラーとして機能するガルバノメータに交流の駆動信号を印加することによりその可動部分に取り付けたミラーを高速に回転させるように構成されている。つまり、ガルバノメータコントローラ224より、ガルバノメータ217に対して駆動信号が印加され、該駆動信号により矢印222方向に高速に回転することで、参照光の光路長が、生体組織の深さ方向の検査範囲に相当する光路長だけ高速に変化することとなる。この光路差の変化の一周期が一ライン分の干渉光を取得する周期となる。
【0031】
一方、1軸ステージ220は光プローブ部101を交換した場合に、光プローブ部101の光路長のバラツキを吸収できるだけの光路長の可変範囲を有する第2の光路長変化手段として機能する。さらに、1軸ステージ220はオフセットを調整する調整手段としての機能も備えている。例えば、光プローブ部101の先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージ220により光路長を微小変化させることにより、生体組織の表面位置からの反射光と干渉させる状態に設定することができる。
【0032】
光路長の可変機構216で光路長が変えられた光は第3のシングルモードファイバ232の端部に設けられた光カップラ部208で第1のシングルモードファイバ228側から得られた光(反射光)と混合されて、干渉光として光検出器210にて受光される。このようにして光検出器210にて受光された干渉光は光電変換され、アンプ211により増幅される。
【0033】
その後、復調器212に入力され、復調器212では干渉した光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力はA/D変換器213に入力される。A/D変換器213では、干渉光信号を例えば200ポイント分サンプリングして1ラインのデジタルデータ(「干渉光データ」)を生成する。この場合、サンプリング周波数は、光路長の1走査の時間を200で除した値となる。
【0034】
A/D変換器213で生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部214に入力される。信号処理部214では生体組織の深さ方向の干渉光データをビデオ信号に変換することにより、血管内の各位置での断層画像を生成し、所定のフレームレートでLCDモニタ113に出力する。また、信号処理部214は、更に光路長調整手段制御装置226と接続されている。信号処理部214は光路長調整手段制御装置226を介して1軸ステージ220の位置の制御を行う。また、信号処理部214はモータ制御回路225と接続され、ラジアル走査モータ205の回転駆動を制御する。更に、信号処理部214は、参照ミラー(ガルバノメータミラー)の光路長の走査を制御するガルバノメータコントローラ224と接続されており、ガルバノメータコントローラ224は信号処理部214へ駆動信号を出力する。モータ制御回路225では、この駆動信号を用いることによりガルバノメータコントローラ224との同期をとっている。290は、断層撮影時にフラッシュ液を注入するためのインジェクタ装置である。280は通信部であり、信号処理部214とインジェクタ装置290との間の通信を行う。
【0035】
3.光プローブ部101の全体構成
次に光プローブ部101の全体構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、光プローブ部101は、直接血管等の体腔内に挿入される長尺のカテーテルシース301と、ユーザが操作するために体腔内に挿入されずユーザの手元側に配置されるコネクタ部302とにより構成される。カテーテルシース301の先端には、ガイドワイヤルーメン用チューブ303が形成されており、カテーテルシース301は、ガイドワイヤルーメン用チューブ303との接続部分からコネクタ部302との接続部分にかけて連続する管腔として形成されている。
【0036】
カテーテルシース301の管腔内部には、測定光を送受信する送受信部(図4の401)を備えるハウジング321と、それを回転させるための駆動力を伝送する駆動シャフト322とを備えるイメージングコア201が、カテーテルシース301のほぼ全長にわたって挿通されている。
【0037】
コネクタ部302は、カテーテルシース301の基端に一体化して構成された手元部302aと駆動シャフト322の基端に一体化して構成された接続コネクタ302bとからなる。手元部302aとカテーテルシース301の境界部には、耐キンクプロテクタ311が設けられている。これにより所定の剛性が保たれ、急激な変化による折れ曲がり(キンク)を防止することができる。接続コネクタ302bの基端は、後述するスキャナ/プルバック部102と接続可能に構成されている。312は、インジェクタ装置290と接続され、断層像撮影時に撮影対象の内腔にフラッシュ液を注入するためのポートである。
【0038】
4.光プローブ部の先端部の構成
次に、光プローブ部101の先端部の構成について図4を用いて説明する。図4に示すように、カテーテルシース301の管腔内部には、測定光を送信し、反射光を受信する送受信部401が配されたハウジング321と、それを回転させるための駆動力を伝送する駆動シャフト322とを備えるイメージングコア201がほぼ全長にわたって挿通されており、光プローブ部101を形成している。なお、送受信部401は、図6により後述するように、光学ミラー601、光学レンズ602を有する。
【0039】
送受信部401は、体腔内組織に向けて測定光を送信するとともに、体腔内組織からの反射光を受信する。駆動シャフト322はコイル状に形成され、その内部にはシングルモードの光ファイバ231が配されている。
【0040】
ハウジング321は、短い円筒状の金属パイプの一部に切り欠き部を有した形状をしており、金属塊からの削りだしやMIM(金属粉末射出成形)等により成形される。ハウジング321は、内部に送受信部401を有し、基端側は駆動シャフト322と接続されている。また、先端側には短いコイル状の弾性部材402が設けられている。
【0041】
弾性部材402はステンレス鋼線材をコイル状に形成したものであり、弾性部材402が先端側に配されることで、イメージングコア201を前後移動させる際にカテーテルシース内での引っかかりを防止する。403は補強コイルであり、カテーテルシース301の先端部分の急激な折れ曲がりを防止する目的で設けられている。
【0042】
ガイドワイヤルーメン用チューブ303は、ガイドワイヤが挿入可能なガイドワイヤ用ルーメンを有する。ガイドワイヤルーメン用チューブ303は、ガイディングカテーテルを用いて予め血管等の体腔内に挿入されたガイドワイヤを受け入れ、ガイドワイヤによってカテーテルシース301を患部(断層像取得位置)まで導くのに使用される。
【0043】
駆動シャフト322は、カテーテルシース301に対して送受信部401を回転動作及び軸方向動作させることが可能であり、柔軟で、かつ回転をよく伝送できる特性をもつ、例えば、ステンレス等の金属線からなる多重多層密着コイル等により構成されている。
【0044】
駆動シャフト322は、カテーテルシース301に対して回転及びスライド動作することが可能であり、柔軟で、かつ回転をよく伝達できる特性をもつ、例えば、ステンレス等の金属線からなる多重多層密着コイル等により構成されている。駆動シャフト322の回転により管腔内を360度観察することが可能となるが、更に広範囲を観察するには、駆動シャフト322を軸方向にスライドさせればよい。
【0045】
図5は、駆動シャフト322をカテーテルシース301に対して相対的にスライドさせた様子(プルバックの様子)を示す図である。同図に示すように、手元部302aは固定した状態で、接続コネクタ302bを基端側に(矢印501方向に)スライドさせれば、内部の駆動シャフト322やその先端に固定されたハウジング321が軸方向にスライドすることとなる。この軸方向のスライドは、ユーザが手動で行ってもよいし、電動で行っても良いが、本実施形態では、信号処理部214の制御下で直線駆動装置207が有する直線駆動モータにより行われるものとする。なお、接続コネクタ302bの先端側には、高速回転する駆動シャフト322が露出しないように、保護内管502が設けられている。
【0046】
5.光プローブ部101の動作
ハウジング321と駆動シャフト322を有するイメージングコア201の内部には、図6に示すように光学ミラー601、光学レンズ602を先端に取付けた光ファイバ231が配置されている。そして、光学ミラー601及び光ファイバ231を回転させることでラジアル走査が行われる。図7に示すように、光プローブ部101が血管内に挿入された状態で低干渉性光源209から出力された光が、光ファイバ231を経由して、先端の光学ミラー601により向きを変え、血管の断面方向に出射される。そして、その反射光が同じ光ファイバ231を通り装置内部に入力される。そして、この反射光の反射強度により、血管の断層像が得られることになる。また、ラジアル走査モータ205の回転により、先端の光学ミラー601を円周方向に回動することで、血管内の所定位置における各方向の反射光を取得することができる。
【0047】
図8は血管内断層撮影時の光プローブ部101の動作を説明するための模式図である。図8(a)、(b)はそれぞれ光プローブ部101が挿入された状態の血管の断面図および斜視図である。
【0048】
図8(a)において、801は光プローブ部101が挿入された血管断面を示している。上述のように、光プローブ部101はその先端に光学レンズ602、光学ミラー601が取り付けられており、ラジアル走査モータ205により矢印802方向に回転する。
【0049】
光学レンズ602からは、各回転角度にて測定光の送信/受信が行われる。ライン1、2、…、512は各回転角度における超音波の送信方向を示している。本実施形態では、光学ミラー601及び光学レンズ602を含む送受信部401が所定の血管断面801の位置で360度回動する間に、512回の測定光の送信/受信が断続的に行われる。なお、360度回動する間における測定光の送信/受信回数は特にこれに限られず、任意に設定可能であるものとする。このように、送受信部401を回転させながら信号の送信/受信を繰り返すスキャン(走査)を、一般に「ラジアルスキャン(ラジアル走査、回転走査)」という。
【0050】
また、このような送受信部401による測定光の送信/反射光の受信は、送受信部401が血管内を矢印803の方向(図8(b))に進みながら行われる。
【0051】
6.信号処理部214の詳細構成及び動作
次に、図9を用いて、画像診断装置100の信号処理部214における処理の概要について説明する。図9は、信号処理部214の詳細構成ならびに関連する機能ブロックを示した図である。
【0052】
上述したように、光カップラ部208は、光ファイバ231を通して入力された反射光と第3のシングルモードファイバ232を伝わる参照光とから干渉光を生成する。生成された干渉光の干渉強度は、光検出器210、アンプ211、復調器212により電気信号に変換されてA/D変換器213に供給される。ここで、参照光は光路長変更用のミラーであるガルバノメータ217により、3mm程度の光路長が走査される。すなわち、参照光の光路長の走査により、体腔内の各深度からの反射強度が走査されることになる。ここで、走査範囲を3mmとしているのは、深度3mmまでを描出するからであり、特にこの値に限定されるものではない。
【0053】
A/D変換器213では、復調器212から出力された信号を200ポイント分サンプリングして、1ラインのデジタルデータを生成する。このとき、サンプリング周波数は光路長の1走査の時間を200で除した値とする。このようにすれば、深度3mmに対して200点のデジタルデータを得ることができる。ただし、このデータ点数についても、後段で行われる処理方法により、自由に決められるもので、この値に限定されるものではない。A/D変換器213で生成されたデジタルデータ(光干渉データ)は、信号処理部214に出力される。
【0054】
A/D変換器213で生成された干渉光データは、まずラインメモリ部901に供給される。ラインメモリ部901では、モータ制御回路225から出力されるモータのエンコーダ信号をもとに、送受信部401の1回転あたりのライン数が512本となるように処理し、後段のラインデータ生成部に出力する。
【0055】
ラインデータ生成部902は、干渉光データに対してライン加算平均処理、フィルタ処理、対数変換処理等を施し、生体組織の深さ方向の干渉光強度データを生成することで、ラインデータを生成する。生成されたラインデータはラインデータ記憶部908に格納される。なお、本実施形態では、例えば、160fpsで1画面分(送受信部401の1回転分)のラインデータ、すなわち512本のラインデータを取得し、ラインデータ記憶部908に記憶する。また、ラインデータ生成部902は、30fpsのペースでLCDモニタ113へ表示するための2次元画像を生成するために後段の信号後処理部903にラインデータを出力する。したがって、本実施形態では、ラジアル走査とプルバック走査により160fpsで取得されるデータのうち、30fpsのレートでモニタ用の2次元画像が生成され、LCDモニタ113にリアルタイムで表示されることになる。なお、160fps、30fpsは一例を示したものであり、これに限定されるものではない。
【0056】
信号後処理部903では、ラインデータに対してコントラスト調整、輝度調整、ガンマ補正、フレーム相関、シャープネス処理等を行い、処理したラインデータを画像構築部904(DSC)に出力する。画像構築部904では、極座標のラインデータ列をRθ変換することで2次元の断層画像を生成した後、ビデオ信号に変換し、血管断面画像としてLCDモニタ113に表示する。ガイディングカテーテル検出部905は、画像構築部904で生成された画像からガイディングカテーテルを検出し、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入ったか否かを判定する。そして、ガイディングカテーテル検出部905は、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入ったと判定した場合には、その旨を制御部907に通知する。なお、本実施形態では一例として、512ラインから断層画像を生成することとしているが、このライン数に限定されるものではない。また、制御部907は上述した各部及び以下に説明するガイディングカテーテル検出部905を統括的に制御する。
【0057】
また、プルバック走査の終了後、制御部907は、操作パネル112からのユーザ指示に応じて、信号後処理部903と画像構築部904を制御して、ラインデータ記憶部908に記憶されたラインデータから2次元画像を生成しDVDレコーダ111−1等に記録する。
【0058】
次に、画像構築部904で生成されたガイディングカテーテル検出部905の処理について説明する。図10に光干渉断層診断装置によって取得された断層画像の例を示す。図10(a)は、送受信部401がガイディングカテーテルから露出している状態であり、血管の内腔の画像が取得されていることがわかる。一方、図10(b)は、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入った状態で得られた断層画像である。ガイディングカテーテルはプラスチックの管に金属のブレードが編みこまれた形状が一般的である。図10(b)の画像から明らかなとおり、ガイディングカテーテルの形状は規則的で、血管と比べて径が小さいので、高輝度部分をトレースすることで、ガイディングカテーテルの像1001を容易に血管と区別することができる。たとえば、画面中央から放射方向に輝度をプロットし、その微分成分が大きいところを内腔とする。内腔を周方向にプロットし、シームレスに円が描けた場合をガイディングカテーテルとする。
【0059】
なお、上述したガイディングカテーテルの検出アルゴリズムは単なる一例であり、これに限定されるものではない。例えば、
(1)所定の輝度値以上の部位をプロットすることにより所定径(ガイディングカテーテルの径)のリングが検出された場合に、当該リングがガイディングカテーテルであると判定する、
(2)所定の輝度値以上のリングが検出され、当該リングの外側の輝度が所定値以下となる場合(リングの外側が観察できない場合)に当該リングがガイディングカテーテルであると判定する、
というような判定方法を用いることもできる。或いは、複数種類の判定方法を組み合わせて用いてもよい。更に、画像からガイディングカテーテルが検出されたとの判定が複数フレームにわたって続いた場合に送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入ったと判定するようにしても良い。また、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入ったと判定された場合に、ラインデータの生成及び格納を停止するとともに、ラジアル走査、プルバック走査を停止させてもよい。
【0060】
図11は本実施形態の信号処理部214による光干渉断層像取得処理を説明するフローチャートである。ユーザからの操作パネル112への撮影開始指示に応じて、制御部907は、モータ制御回路225、直線駆動装置207に対して駆動指示を行い、イメージングコア201の回転走査及び軸方向移動を開始する(S101)。なお、第1実施形態では、フラッシュ液の供給は手動で行っても自動で行っても良いものとする。
【0061】
回転走査が開始されると、上述したようにラインメモリ部901、ラインデータ生成部902がラインデータを生成し、これをラインデータ記憶部908に記憶する(S102)。本実施形態では、上述したように、ラインデータが例えば毎秒160フレーム(160fps)生成されるものとする。
【0062】
また、本実施形態において、撮影中の画像がLCDモニタ113にリアルタイムに表示されるが、LCDモニタ113に表示する画像は毎秒30フレーム(30fps)とする。本実施形態では、この表示に用いられる画像を利用してガイディングカテーテルの検出を行なう。但し、撮影中のリアルタイムなモニタ表示に用いられる画像は、診断を目的としたものではないので、ラインデータが持つ解像度よりも低い解像度の画像としてもよい。そのような場合にも、本実施形態のガイディングカテーテルの検出は実施可能である。制御部907は、モニタ表示用の2次元画像を生成するタイミングか否かを判定し、2次元画像を生成するタイミングでなければ処理をS102に戻す(S103)。一方、2次元画像を生成するタイミングであれば、処理はS104に進む。なお、以下に説明するS104〜S107の処理の間も、ラインメモリ部901、ラインデータ生成部902によるラインデータの生成、格納は継続して行われる。
【0063】
モニタ用画像の生成タイミングになると、制御部907の指示により、ラインデータ生成部902はラインデータをラインデータ記憶部908に格納するとともに、信号後処理部903へ送る。そして、信号後処理部903及び画像構築部904がLCDモニタ113に表示するための2次元画像を生成し(S104)、生成した画像をLCDモニタ113に表示する(S105)。また、ガイディングカテーテル検出部905は、S104で生成されたモニタ用の2次元画像からガイディングカテーテルの像を検出することにより、送受信部401がガイディングカテーテル620の内腔に入ったか否かを判定する(S106)。そして、ガイディングカテーテルの内腔に入っていないと判定された場合は、処理はS102に戻り、上述した処理を繰り返す(S107)。一方、S106において、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入っていると判定された場合は、制御部907は、光干渉断層像の生成から保持に関わる処理の少なくとも一部を停止する。本実施形態では、例えば、ラインメモリ部901、ラインデータ生成部902によるラインデータの生成、格納が停止される(S107,S108)。そして、制御部907は、イメージングコア201の回転走査及び軸方向移動を停止する(S109)。
【0064】
図12は、S106における処理(送受信部401がガイディングカテーテルの内腔にあるか否かの判定)の一例を示すフローチャートである。ガイディングカテーテル検出部905は、上述した方法により、画像構築部904がモニタ用の画像として生成した2次元画像からガイディングカテーテルの像を検出する。例えば、2次元画像において閾値以上の輝度を持つ部分をトレースし、所定径のリングを抽出する。ここで、所定径とはガイディングカテーテル620の内径に相当する径である。もちろん、この所定径が許容範囲を有するように設定されても良い。S201において所定径のリングが抽出できた場合は、変数nを1増加させる(S202、S203)。そして、nが4より大きくなった場合に、当該2次原画像がガイディングカテーテルの内腔である(すなわち、送受信部401がガイディングカテーテル620の内腔にある)と判定する(S204、S205)。他方、S201で所定径のリングが抽出できなかった場合は、変数nをゼロに設定する(S202、S206)。以上の処理によれば、5回連続して所定径のリングが抽出された場合に、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔にあると判定されることになる。なお、図12では、所定径のリング(ガイディングカテーテルの像)を5回以上連続して検出した場合にガイディングカテーテルの内腔であると判定したが、この回数は本例に限られるものではない。例えば、1回でもガイディングカテーテルが検出されるとラインデータの生成、格納を停止するようにしても良い。また、ステップS109において、インジェクタ装置290によるフラッシュ液の注入を停止するようにしても良い。
【0065】
以上のように、第1実施形態によれば、測定光及び反射光のための送受信部がガイディングカテーテルの内腔に入ったことの検出に応じて、データの取得を停止するので、無駄なデータの取得を防止できる。また、ガイディングカテーテルの検出に、モニタ用に生成した画像を流用するので、当該検出のために別途2次元画像を生成する必要がない。また、上述したように、リアルタイム表示用に解像度を落として2次元画像を生成する構成とした場合には、低解像度の2次元画像からガイディングカテーテルの抽出が行われることになるため、計算量が低減される。なお、ガイディングカテーテルは形状が規則的で且つ高輝度であるため比較的検出がしやすく、リアルタイム表示のための低解像度の2次元画像からでも検出が可能である。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態では、光干渉断層診断装置(OCT装置)の信号処理部214が、フラッシュ液を注入するためのインジェクタ装置290と通信部280を介して通信し、フラッシュ液の中の開始、停止を制御する。すなわち、信号処理部214の制御部907は、ガイディングカテーテル検出部905により送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入ったと判定されると、通信部280を介してインジェクタ装置290と通信を行い、フラッシュ液の注入を停止させる。例えば、図11のS101においてインジェクタ装置290に対してフラッシュ液の注入を開始させ、S108においてフラッシュ液の注入を停止させる。すなわち、第2実施形態では、送受信部401がガイディングカテーテルの内腔に入ったことの検出に応じて停止させる、光干渉断層像の生成から保持に関わる処理の一部を、フラッシュ液の注入としている。なお、通信部280が備えるインターフェースの通信規格についてはRS−232CやUSBなどを用いたシリアル通信でもよいし、専用の信号であってもよいし、通信規格は限定されない。なお、余分なフラッシュ液の注入を防止することを目的とした場合、S108においてラインデータの生成、格納を停止するか否かはオプションである。
【0067】
[第3実施形態]
以上、第1、第2実施形態では、参照光の光路長を走査して深度方向の反射強度分布を得る光干渉断層診断装置(OCT装置)を用いたが、本発明は、波長掃引を利用する光干渉断層診断装置に適用することもできる。第3実施形態では、画像診断装置として波長掃引利用の光干渉断層画像診断装置を用いた場合を説明する。
【0068】
図13は、波長掃引利用の画像診断装置100の機能構成を示す図である。1308は波長掃引光源であり、Swept Laserが用いられる。Swept Laserを用いた波長掃引光源1308は、Extended-cavity Laserの一種であり、SOA1315(semiconductoroptical amplifier)とリング状に結合された光ファイバ1316を有する光源部1308aと、ポリゴンスキャニングフィルタ1308bよりなる。SOA1315から出力された光は、光ファイバ1316を進み、ポリゴンスキャニングフィルタ1308bに入り、ここで波長選択された光は、SOA1315で増幅され、最終的にカプラ1314から出力される。
【0069】
ポリゴンスキャニングフィルタ1308bでは、光を分光する回折格子1312とポリゴンミラー1309との組み合わせで波長を選択する。具体的には、回折格子1312により分光された光を2枚のレンズ(1310、1311)によりポリゴンミラー1309の表面に集光させる。これによりポリゴンミラー1309と直交する波長の光のみが同一の光路を戻り、ポリゴンスキャニングフィルタ1308bから出力されることとなるため、ポリゴンミラー1309を回転させることで、波長の時間掃引を行うことができる。ポリゴンミラー1309は、例えば、32面体のミラーが使用され、回転数が50000rpm程度である。ポリゴンミラー1309と回折格子1312とを組み合わせた波長掃引方式により、高速、高出力の波長掃引が可能である。カプラ1314から出力された波長掃引光源1308の光は、第1のシングルモードファイバ228の一端に入射される。
【0070】
また、波長掃引利用の画像診断装置100では光路長の走査は不要であるため、可変機構216において、ガルバノメータ217の代わりに固定ミラー1217が設けられている。
【0071】
第1実施形態で説明したように、光カップラ部208において反射光と参照光の干渉光が生成され、光検出器210により干渉光に応じた電気信号が生成される。A/D変換器213では、干渉光信号を例えば180MHzで2048ポイント分サンプリングして、1ラインのデジタルデータ(干渉光データ)を生成する。なお、サンプリング周波数を180MHzとしたのは、波長掃引の繰り返し周波数を80kHzにした場合に、波長掃引の周期(12.5μsec)の90%程度を2048点のデジタルデータとして抽出することを前提としたものであり、特にこれに限定されるものではない。
【0072】
A/D変換器213にて生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部214に入力される。信号処理部214のラインメモリ部901ではラジアル走査モータによる送受信部401の1回転あたりのライン数が512本となるように処理された後、後段のラインデータ生成部902に出力される。ラインデータ生成部902は、干渉光データに対してFFT(高速フーリエ変換)を行って周波数分解して深さ方向のデータを生成する。すなわち、光路長の走査をすることなく、深度方向のデータを取得することができるため、第1実施形態のOCT装置に比べて高速のデータ取得が可能になる。そして、ライン加算平均処理、フィルタ処理、対数変換処理等を施し、生体組織の深さ方向の干渉光強度データを生成することで、ラインデータを生成し、該生成したラインデータをラインデータ記憶部908に格納するとともに、必要に応じて信号後処理部903へ供給する。以降の処理は第1実施形態と同様である。
【0073】
したがって、第1実施形態や第2実施形態で説明した処理を波長掃引利用の画像診断装置100に適用することが可能であり、第1、第2実施形態で説明したような効果を得ることができる。
【0074】
なお、第1実施形態では、ラインデータの生成、格納を停止することで、無駄な画像が記録されることを防止したが、これに限られるものではない。例えば、送受信部401がガイディングカテーテル内に入ったことが検出された場合に、ラインデータ生成部902が生成したラインデータに所定のマーク情報を付加しておき、DVDレコーダ111−1へ画像を記録する際に、当該マーク情報が付加された以降のラインデータについては画像記録を禁止するようにしてもよい。
【0075】
以上説明したように、上記各実施形態によれば、不必要な情報の記録もしくは不必要なフラッシュ液の注入を低減することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、体内に挿入されたプローブを介して体腔内に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光に基づいて断層像を形成する光干渉断層像形成装置であって、
前記プローブの先端部に設けられ、前記測定光を出射するとともに前記反射光を受光する送受信部を、回転及び軸方向移動させる走査駆動手段と、
前記送受信部を介して取得された反射光と前記参照光との干渉光から断層像に対応したデータを生成し、保持する保持手段と、
前記軸方向移動の間に、前記プローブを導くためのガイディングカテーテルの内部に前記送受信部が入ったことを前記データを用いて検出する検出手段と、
前記検出手段により前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合は、光干渉に基づいた断層像の生成から保持に関わる処理の少なくとも一部を停止する制御手段とを備えることを特徴とする干渉断層像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段により前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合は、前記保持手段による前記データの保持を行わないように制御することを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出手段により前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合に、前記送受信部の近傍へのフラッシュ液の注入を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出手段により前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合に、前記走査駆動手段による前記送受信部の前記回転及び前記軸方向移動を停止させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項5】
前記保持手段に保持されたデータから、モニタへのリアルタイム表示を行うための2次元画像を構築する構築手段を更に備え、
前記検出手段は、前記構築手段により構築された2次元画像から前記ガイディングカテーテルの像を抽出することにより前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことを検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項6】
装置内部で光源から出力された光を測定光と参照光に分割し、体内に挿入されたプローブを介して体腔内に前記測定光を出射することにより得られた反射光と前記参照光とから得られる干渉光に基づいて断面画像を形成する光干渉断層像形成装置の制御方法であって、
前記プローブの先端部に設けられ、前記測定光を出射するとともに前記反射光を受光する送受信部を、回転及び軸方向移動させる走査駆動工程と、
前記送受信部を介して取得された反射光と前記参照光との干渉光から断層像に対応したデータを生成し、記憶手段に保持する保持工程と、
前記軸方向移動の間に、前記プローブを導くためのガイディングカテーテルの内部に前記送受信部が入ったことを前記データを用いて検出する検出工程と、
前記検出工程で前記送受信部が前記ガイディングカテーテルの内部に入ったことが検出された場合は、光干渉に基づいた断層像の生成から保持に関わる処理の少なくとも一部を停止する制御工程とを有することを特徴とする光干渉断層像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−200596(P2011−200596A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73402(P2010−73402)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】