説明

光情報記録媒体および情報記録方法

【課題】短波長レーザ光照射による記録時に良好な記録特性を発揮することができ、かつ製造容易なブルーレイ・ディスク構成の光情報記録媒体の提供。
【解決手段】プリグルーブを表面に有する基板の該表面上に、反射層、記録層、バリア層、およびカバー層をこの順に有する光情報記録媒体。プリグルーブのトラックピッチは50〜500nmの範囲である。記録層の厚さは、ランド上で1〜100nmの範囲、グルーブ上で5〜150nmの範囲である。記録層は、ある特定式で表され、かつ熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物を含有する。バリア層とカバー層との間に紫外線硬化型組成物に硬化処理を施すことにより形成された25℃以下のガラス転移温度を有する層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短波長レーザー光を用いて情報の記録および再生が可能な光情報記録媒体に関するものであり、より詳しくは、Blu−ray方式の光情報記録媒体に関するものである。更に本発明は、前記光情報記録媒体への情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光により1回限りの情報記録が可能な光情報記録媒体として、追記型CD(CD−R)および追記型DVD(DVD−R)が知られている。CD−Rへの情報の記録は、近赤外域のレーザー光(通常、波長780nm程度)により行われるのに対し、DVD−Rへの情報の記録は可視レーザー光(約630〜680nm)によって行われる。DVD−Rは、記録用レーザー光としてCD−Rより短波長のレーザー光を使用するため、CD−Rと比べて高密度記録可能であるという利点を有する。そのため、近年、DVD−Rは、大容量の記録媒体としての地位をある程度まで確保している。
【0003】
近年、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映を間近にひかえて、画像情報を安価簡便に記録するための大容量の記録媒体の要求が高まっている。しかし、CD−RおよびDVD−Rは、将来の要求に対応できる程の充分に大きな記録容量を有しているとはいえない。そこで、DVD−Rよりも更に短波長のレーザー光を用いることによって記録密度を向上させるため、短波長レーザー(例えば波長440nm以下)による記録が可能な大容量光ディスクの開発が進められている。そのような光ディスクとして、例えば405nmの青色レーザーを用いたBlu−ray方式と称される光記録ディスク(Blu−ray Disc、以下、「BD」ともいう)が提案されている。例えば、特許文献1には、前記Blu−ray方式の光記録ディスクのように短波長レーザー光を照射することにより情報を記録するための光情報記録媒体において、記録層にフタロシアニン色素を用いることが提案されている。また、特許文献2には、青色レーザー対応の光情報記録媒体において、記録用色素の色素物性値を規定することが提案されている。
【特許文献1】特開2002−301870号公報
【特許文献2】特開2007−26541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のブルーレイ・ディスクは、一般に、従来の追記型光ディスクと比べてトラックピッチが狭い。また、基板上に、反射層と記録層をこの順に有し、更に記録層の上に比較的薄い光透過性を有する層(一般に、カバー層と呼ばれる)が貼り合わされているという、従来の追記型光ディスクとは異なる層構成を有する。また記録用レーザ光が短波長化されている。そのため、CD−R、DVD−R等の従来の追記型光情報記録媒体用記録色素として使用されていた色素では、ブルーレイ・ディスクにおいて十分な記録再生特性が得られない点が課題であった。これに対し、上記特許文献1には、短波長レーザ光照射による情報記録において記録層用色素としてフタロシアニン色素を使用することが提案されている。しかし、本願発明者らの検討の結果、特許文献1に記載の技術では、上記ブルーレイ構成の光情報記録媒体において、必ずしも十分な記録特性を得ることができないことが判明した。
【0005】
一方、特許文献2では、ブルーレイ方式では媒体に対して従来の追記型光ディスクとは異なる方向からレーザー光を照射させることに着目した上で、記録層の形状を変えることによって記録特性を改善することを提案している。具体的には、特許文献2には、色素塗布濃度や色素溶液の塗布条件の調整により、記録層膜厚がグルーブ溝深さより薄く(グルーブ溝凹部の中に色素層が納まり)、グルーブ溝凸部の色素膜厚をほぼ0とした特殊な形態の記録層を有する光記録媒体において、色素物性値を規定することにより、良好な記録特性を得ることができると記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の特殊な記録層の形成方法は、従来のCD−R、DVD−R等における記録層の形成方法と異なるものであり、製造上困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ブルーレイ・ディスク構成の光情報記録媒体であって、短波長レーザ光照射による記録時に良好な記録特性を発揮することができ、かつ製造容易な光情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、記録層用色素として高い熱分解性を有するフタロシアニン色素を使用するとともに、バリア層とカバー層とを貼り合わせる接着層を紫外線硬化型樹脂から構成された柔軟な層とすることにより、特許文献2に記載の技術のように媒体構成を大幅に変更することなく、短波長レーザ光照射による記録時に、良好な記録特性を発揮し得るブルーレイ・ディスク構成の光情報記録媒体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]複数のグルーブおよび隣接するグルーブの間に位置するランドからなるプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に、反射層、記録層、バリア層、およびカバー層をこの順に有する光情報記録媒体であって、
前記プリグルーブのトラックピッチは50〜500nmの範囲であり、
前記記録層の厚さは、ランド上で1〜100nmの範囲であり、グルーブ上で5〜150nmの範囲であり、
前記記録層は、下記一般式(I)で表され、かつ熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物を含有し、
前記バリア層とカバー層との間に、紫外線硬化型組成物に硬化処理を施すことにより形成された25℃以下のガラス転移温度を有する層を有することを特徴とする光情報記録媒体。
【化1】

[一般式(I)中、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、Mは2個の水素原子、2〜4価の金属原子、2〜4価のオキシ金属原子または配位子を有する2〜4価の金属原子を表す。]
[2]前記置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数1〜10のヘテリルスルホニル基、炭素数1〜25の置換もしくは無置換のカルバモイル基、炭素数0〜32の置換もしくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシルアミノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のスルホニルアミノ基、または炭素数0〜36の置換もしくは無置換のアミノ基である[1]に記載の光情報記録媒体。
[3]一般式(I)中、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8の中で1〜8個が置換基を表し、その他は水素原子を表す[1]または[2]に記載の光情報記録媒体。
[4]ランド上の記録層の厚さとグルーブ上の記録層との厚さの比[(ランド上の記録層の厚さ)/(グルーブ上の記録層の厚さ)]が0.1〜1の範囲である[1]〜[3]のいずれかに記載の光記録情報媒体。
[5]前記紫外線硬化型組成物は、紫外線硬化型組成物100質量部に対し、単官能(メタ)アクリレートを20〜99質量部、および多官能(メタ)アクリレートを1〜80質量部含む[1]〜 [4]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[6]波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより情報を記録するために使用される[1]〜[5]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[7][1]〜[5]のいずれかに記載の光情報記録媒体へ、波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより、光情報記録媒体の記録層へ情報を記録する情報記録方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、短波長領域での記録特性に優れた光情報記録媒体を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[光情報記録媒体]
本発明の光情報記録媒体は、複数のグルーブおよび隣接するグルーブの間に位置するランドからなるプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に、反射層、記録層、バリア層、およびカバー層をこの順に有する。上記プリグルーブのトラックピッチは50〜500nmの範囲であり、記録層の厚さは、ランド上で1〜100nmの範囲であり、グルーブ上で5〜150nmの範囲である。本発明では、上記ブルーレイ・ディスク構成の光情報記録媒体において、
(1)記録層色素として、下記一般式(I)で表され、かつ熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物を使用すること、
(2)バリア層とカバー層との間に、紫外線硬化型組成物に硬化処理を施すことにより形成された25℃以下のガラス転移温度を有する層を設けること、
により、優れた記録特性を得ることができる。この組み合わせにおいて優れた記録特性が得られる理由について、本発明者らは以下のように推察している。
【0011】
上記熱分解性を有する一般式(I)で表される化合物を含む記録層へレーザー光を照射すると、色素がレーザー光を吸収して発熱し、その熱により色素骨格またはその置換基が熱分解して気体を発生し、これによりピット内に空隙が形成されると考えられる。上記化合物を含む記録層において、レーザー光未照射部の屈折率は、一般に1.6〜1.9程度であるのに対し、レーザー光照射により空隙が形成された部分の屈折率は約1.0であり未照射部の屈折率と大きく異なる。これにより、大きな屈折率差を実現することができ、記録特性を高めることができると考えられる。ここで一般式(I)で表される化合物の中でも、熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物は、上記空隙形成を良好に行うことができると考えられる。
ところが、上記のようにレーザー光照射により記録層内に空隙を形成する場合、通常、空隙の形成は記録層の変形を伴うため、記録層の変形が妨げられると空隙が良好に形成されず、十分な記録特性を得ることが困難となる。例えば、基板上に、光反射層、記録層、バリア層、接着層およびカバー層をこの順に有する光情報記録媒体では、一般に、基板および光反射層は、接着層やバリア層に比べて剛性が高い。よって、空隙が形成されると記録層はバリア層を押し上げ、バリア層とカバー層との間に位置する接着層が適度に柔軟な場合は、該接着層に凹状の変形を生じさせる。このようにバリア層とカバー層の間に位置する接着層が容易に変形する場合は記録層における空隙の形成が妨げられることなく、ピットの形成を良好に行うことができる。本発明の光情報記録媒体では、接着層がガラス転移温度25℃以下と柔軟であり空隙形成に伴い容易に変形可能であるため、空隙形成を良好に行うことができる。
また、本発明の光情報記録媒体の記録層は、従来のCD−R、DVD−R等における記録層の形成方法と同様の方法に形成することができる。その上、記録層を紫外線硬化型組成物から形成することにより、カバー層との貼りあわせにかかる装置が簡便になり、しかも貼り合わせ時間を短縮することができるため、安価製造が可能になる。
以上により、本発明によれば、記録特性が良好であり、生産性に優れた光情報記録媒体を得ることができる。
【0012】
本発明の光情報記録媒体の具体例を、図2に示す。図2に示す第1光情報記録媒体10Aは、第1基板12上に、第1光反射層18と、第1追記型記録層14と、バリア層20と、接着層22と、カバー層16とをこの順に有する。以下、本発明の光情報記録媒体に用いられる基板およびその他の層を構成する材料について順次説明する。
【0013】
基板
本発明に用いられる基板としては、従来の光情報記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。基板としては、透明な円盤状基板を用いることが好ましい。
具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
前記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。これらの樹脂を用いた場合、射出成型を用いて基板を作製することができる。
また、基板の厚さは、一般に0.7〜2mmの範囲であり、0.9〜1.6mmの範囲であることが好ましく、1.0〜1.3mmとすることがより好ましい。
なお、後述する光反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することもできる。
【0014】
基板の記録層が形成される面には、複数のグルーブおよび隣接するグルーブの間に位置するランドからなるプリグルーブ(案内溝)が形成されている。このプリグルーブは、CD−RやDVD−Rに比べてより高い記録密度を達成するために設けられたものであり、例えば、本発明の光情報記録媒体を、青紫色レーザーに対応する媒体として使用する場合に好適である。
【0015】
プリグルーブのトラックピッチは、50〜500nmの範囲である。上限値は420nm以下であることが好ましく、370nm以下であることがより好ましく、330nm以下であることが更に好ましい。また、下限値は、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましく、260nm以上であることが更に好ましい。トラックピッチが50nm以上であれば、プリグルーブを正確に形成することができる上に、クロストークの発生を回避することができ、500nm以下であれば、高密度記録を行うことができる。
【0016】
プリグルーブのトラックピッチは、100nm以上420nm以下であることが好ましく、200nm以上370nm以下であることがより好ましく、260nm以上330nm以下であることが更に好ましい。
【0017】
プリグルーブの溝幅(半値幅)は、25〜250nmの範囲であることが好ましい。上限値は240nm以下であることが好ましく、230nm以下であることがより好ましく、220nm以下であることが更に好ましい。また、下限値は、50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。プリグルーブの溝幅が25nm以上であれば、成型時に溝を十分に転写することができ、さらに記録時のエラーレート上昇を抑制することができ、250nm以下であれば、同じく成型時に溝を十分に転写することができ、更に記録時に形成されるピットの広がりによりクロストークが発生することを回避することができる。
【0018】
プリグルーブの溝幅(半値幅)は、50nm以上240nm以下であることが好ましく、80nm以上230nm以下であることがより好ましく、100nm以上220nm以下であることが更に好ましい。
【0019】
プリグルーブの溝深さは、5〜150nmの範囲であることが好ましい。上限値は85nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが更に好ましい。また、下限値は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、28nm以上であることが更に好ましい。プリグルーブの溝深さが5nm以上であれば十分な記録変調度を得ることができ、150nm以下であれば、高い反射率を得ることができる。
【0020】
プリグルーブの溝深さは、10nm以上85nm以下であることが好ましく、20nm以上80nm以下であることがより好ましく、28nm以上75nm以下であることが更に好ましい。
【0021】
また、プリグルーブの溝傾斜角度は、上限値が80°以下であることが好ましく、75°以下であることがより好ましく、70°以下であることが更に好ましく、65°以下であることが特に好ましい。また、下限値は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることが更に好ましい。
プリグルーブの溝傾斜角度が20°以上であれば、十分なトラッキングエラー信号振幅を得ることができ、80°以下であれば成型性が良好である。
【0022】
反射層
反射層は、レーザー光に対する反射率が高い光反射性物質を、例えば、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。
光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、20〜200nmの範囲とすることが好ましい。
なお、前記反射率は、70%以上であることが好ましい。
【0023】
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属またはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Alまたはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agまたはこれらの合金である。
【0024】
記録層
本発明の光情報記録媒体は、下記一般式(I)で表され、かつ熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物(フタロシアニン誘導体)を含有する。前記化合物は、短波長領域で大きな屈折率差を実現することができ、後述する接着層と組み合わせることにより、特に短波長レーザー光照射により優れた記録特性を発揮し得る。
【0025】
【化2】

[一般式(I)中、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、Mは2個の水素原子、2〜4価の金属原子、2〜4価のオキシ金属原子または配位子を有する2〜4価の金属原子を表す。]
【0026】
本発明では、記録層内での空隙形成を良好に行い記録特性を高めるために、上記一般式(I)で表される化合物の中で、熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物を使用する。ある温度域において化合物を昇温していくと、熱分解による質量減少が生じる。化合物の種類にもよるが、通常、大きな質量減少を示すいくつかの温度域(質量減少過程)が存在することが多い。本発明では、いくつかの質量減少過程(減量過程)のうち、質量減少の度合が最大のものを主減量過程と呼ぶ。質量減少率は、以下の方法によって求めることができる。
【0027】
図1に示すように、質量M0の化合物を窒素雰囲気下で、10℃/分で昇温する。この昇温に従って、質量はほぼ直線a−bに沿って微量ずつ減少し、ある温度に達すると、ほぼ直線c−dに沿った急激な質量減少を起こす。さらに昇温を続けると急激な質量減少が終了し、ほぼ直線e−fに沿った質量減少を起こす。ここで、直線a−bと直線c−dとの交点において、温度をT1(℃)とし、初期質量M0に対する残存質量率をm1(%)とする。また、直線c−dと直線e−fとの交点において、温度をT2(℃)とし、初期質量M0に対する残存質量率をm2(%)とする。すなわち、主減量過程において、減量開始温度はT1、減量終了温度はT2となり、質量減少率は、(m1−m2)(%)で示される。
【0028】
上記の窒素雰囲気下での質量減少は、酸化分解ではなく色素の置換基分解や骨格分解に基づき、ガスが発生しているものと考えられる。よって、質量減少率が高いほど、熱分解による気体発生量が多く、空隙形成に有利であると考えられる。一般式(I)で表される化合物の中でも、上記質量減少率が10%以上のものを記録層に含むことにより、レーザー光照射による気体発生量が多くピットを良好に形成できると考えられる。一般式(I)で表される化合物の中でも、150℃〜400℃における熱分解時の質量減少率が20%以上である熱分解性を有するものがより好ましく、200℃〜400℃における熱分解時の質量減少率が25%以上である熱分解性を有するものが更に好ましい。色素の熱分解性は、色素骨格に導入する置換基の種類等によって制御することができる。
具体的には、例えばSeiko Instruments Inc.製EXSTAR6000を用い、N2気流下(流量200ml/min)、30℃〜550℃の範囲において10℃/分で昇温を行い、質量減少率を求めることができる。
【0029】
更に、感度向上のためには、前記化合物として熱分解性が良好な化合物を使用することが好ましい。熱分解性の指標としては、熱分解温度を用いることができる。本発明では、前記化合物として熱分解温度が、例えば150〜400℃、好ましくは200〜400℃、更に好ましくは200〜380℃のものを用いることが好ましい。なお、本発明における熱分解温度は、TG/DTA測定によって求められる値をいうものとする。具体的には、例えばSeiko Instruments Inc.製EXSTAR6000を用い、N2気流下(流量200ml/min)、30℃〜550℃の範囲において10℃/分で昇温を行い、質量減少率が10%に達した時点の温度として熱分解温度を求めることができる。
【0030】
以下に、一般式(I)の詳細を説明する。
【0031】
【化3】

【0032】
一般式(I)中、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。前記置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数1〜10のヘテリルスルホニル基、炭素数1〜25の置換もしくは無置換のカルバモイル基、炭素数0〜32の置換もしくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシルアミノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のスルホニルアミノ基、または炭素数0〜36の置換もしくは無置換のアミノ基を挙げることができる。なお、上記アミノ基にはアニリノ基が含まれる。
【0033】
一般式(I)において、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子)、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基)、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−オクダデシルフェニル基)、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のへテロ環基(例えば5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、炭素数1〜20の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−オクチルオキシ基)、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−エトキシフェノキシ基)、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基)、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基(例えば、トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基)、炭素数0〜20の置換もしくは無置換のスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基、n−ブチルスルファモイル基)、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基)、炭素数7〜15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、m−クロロフェニルカルボニル基)、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基)、炭素数1〜18のスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、n−ブタンスルホニルアミノ基)である。
【0034】
Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、より好ましくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜13の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシルアミノ基、炭素数1〜18のスルホニルアミノ基であり、さらに好ましくは、 Rα1〜Rα8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、炭素数1〜16の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシルアミノ基、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のスルホニルアミノ基であり、Rβ1〜Rβ8が、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子であることがより一層好ましい。更には、 Rα1〜Rα8が、それぞれ独立に、水素原子、スルホ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基、炭素数1〜20の無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の無置換のアリールスルホニル基、炭素数7〜20の無置換のスルファモイル基である。
【0035】
一般式(I)で表される化合物におけるRα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それらの1〜8個(より好ましくは2〜7個、更に好ましくは3〜6個)が置換基であり、その他が水素原子であることが好ましい。また、Rα1およびRα2のいずれか一方、Rα3およびRα4のいずれか一方、Rα5およびRα6のいずれか一方、Rα7およびRα8のいずれか一方の計4つの置換基は、同時に水素原子ではないことが好ましく、Rβ1〜Rβ8が水素原子であることが特に好ましい。
【0036】
特に、フタロシアニン誘導体のインク化適正の点、およびディスク上に塗布された後の記録層の結晶化の起こり難さの点では、一般式(I)で表される化合物におけるRα1とRα2、Rα3とRα4、Rα5とRα6、およびRα7とRα8の4つの置換基の組のうち、各々いずれか一方の置換基が水素原子であり、各々他方の置換基が水素原子以外の置換基であることが好ましい。
この場合、水素原子以外の置換基としては、スルホ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基、炭素数1〜20の無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の無置換のアリールスルホニル基、炭素数7〜20の無置換のスルファモイル基が好ましい。
【0037】
一般式(I)において、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は更に置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、以下に記載のものを挙げることができる。
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表す。
【0038】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。更に具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0039】
一般式(I)において、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8を置換する置換基として好ましいものは、炭素数1〜16の鎖状または環状の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜16のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアミノカルボニルアミノ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数3〜20のスルファモイル基、炭素数2〜20のアルキルおよびアリールスルホニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のカルバモイル基である。その中でも好ましいものは、炭素数1〜10の鎖状または環状の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、塩素原子、炭素数1〜10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数3〜10のスルファモイル基、炭素数2〜10のアルキルおよびアリールスルホニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のカルバモイル基である。その中でも特に好ましいものは、炭素数1〜8の鎖状または環状の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数3〜8のスルファモイル基、炭素数2〜8のアルキルおよびアリールスルホニル基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜8のカルバモイル基である。置換基として最も好ましいものは炭素数2〜6のアルキルスルホニル基,炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基である。
である。
【0040】
一般式(I)中のMは、2個の水素原子、2〜4価の金属原子、2〜4価のオキシ金属原子、または配位子を有する2〜4価の金属原子を表す。
2〜4価の金属原子としては、銅原子、亜鉛原子、マグネシウム原子が好ましく、銅原子、亜鉛原子がより好ましく、銅原子が最も好ましい。
2〜4価のオキシ金属原子としては、上記金属原子のいずれか1つを含む酸化物が好ましい。
前記配位子としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数6〜30のアリール基、5員または6員のヘテロ環基、シアノ基、水酸基等を挙げることができる。
【0041】
一般式(I)で表される化合物は任意の位置で結合して多量体を形成していてもよく、この場合の各単位は互いに同一でも異なっていてもよく、またポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、セルロース等のポリマー鎖に結合していてもよい。
【0042】
更に、一般式(I)で表される化合物は、特定の誘導体単独で使用してもよく、また構造の異なったものを複数種混合して用いてもよい。特に記録層の結晶化を防ぐ目的で、置換基の置換位置が異なる異性体の混合物を使用することが好ましい。
【0043】
以下に、一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記表1において、例えばRα1/Rα2という表記はRα1またはRα2のいずれか一方という意味を表しており、従ってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。また無置換の場合、即ち水素原子が置換している場合は表記を省略している。
【0044】
【化4】

【0045】
【表1】







【0046】
以上説明した一般式(I)で表される化合物は、公知の方法(例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法)で合成することができ、また市販品として入手可能なものもある。
【0047】
記録層には、記録層用色素として一般式(I)で表される色素を単独または二種以上組み合わせて使用することができる。更に、一般式(I)で表される色素以外の色素を併用することもできる。併用可能な色素としては、アゾ色素、アゾ金属色素、オキソノール色素、シアニン色素、メロシアニン色素などが挙げられ、好ましいくはアゾ色素、アゾ金属色素、オキソノール色素より好ましくはアゾ金属色素、オキソノール色素である。
【0048】
記録層用色素の使用量は、記録層の全質量に対して、例えば1〜100質量%の範囲であり、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%の範囲である。記録層用色素として一般式(I)で表される化合物と他の色素を併用する場合、色素全量に対する一般式(I)で表される化合物の割合が、1質量%以上であることが好ましく、10〜100質量%であることが更に好ましく、50〜100質量%であることが特に好ましい。
【0049】
次に記録層の形成について説明する。
記録層は、色素を、結合剤等と共に、または結合剤を用いないで適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、後述する反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成することができる。ここで、追記型記録層は、単層でも重層でもよい。塗布液を塗布する工程を複数回行うことにより、重層構造の記録層を形成することができる。
塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0050】
塗布液の調製に用いる溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、さらに、結合剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0051】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
塗布の際、塗布液の温度は23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、23〜38℃の範囲であることが特に好ましい。
【0052】
追記型記録層の厚さは、ランド上で1〜100nmの範囲であり、グルーブ上で5〜150nmの範囲である。ランド(前記基板において凸部)上での厚さは、70nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。下限値は、5nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。
また、追記型記録層の厚さは、グルーブ上(前記基板において凹部)で、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。下限値は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
更に、ランド上の追記型記録層の厚さとグルーブ上の追記型記録層の厚さの比[(ランド上の記録層の厚さ)/(グルーブ上の記録層の厚さ)]は、0.1以上であることが好ましく、0.13以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.17以上であることが特に好ましい。上限値としては、1以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
【0053】
更に、記録層には、記録層の耐光性を向上させるために種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては、有機酸化剤や一重項酸素クエンチャーを挙げることができる。褪色防止剤として用いられる有機酸化剤としては、特開平10−151861号公報に記載されている化合物が好ましい。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−81194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同63−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、および同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁などに記載のものを挙げることができる。好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記の一般式(A)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化5】

【0055】
一般式(A)中、R21は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Q-はアニオンを表す。
【0056】
一般式(A)において、R21は置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、無置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例、F,Cl)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基)、アシル基(例、アセチル基、プロピオニル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アルケニル基(例、ビニル基)、アリール基(例、フェニル基、ナフチル基)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Q-のアニオンの好ましい例としては、ClO4-、AsF6-、BF4-、およびSbF6-を挙げることができる。
【0057】
一般式(A)で表される化合物例(化合物番号A−1〜A−8)を下記表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
前記一重項酸素クエンチャーなどの褪色防止剤の使用量は、色素量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0060】
接着層
本発明の光情報記録媒体は、バリア層とカバー層との間に、紫外線硬化型組成物に硬化処理を施すことにより形成された層(接着層)を有する。この接着層のガラス転移温度は25℃以下である。接着層のガラス転移温度が25℃を超えると、記録層中の空隙形成に伴う接着層の変形が良好に行われず、十分な記録特性を得ることが困難となる。優れた記録特性を得るためには、接着層のガラス転移温度は0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることが更に好ましい。また、保存性の点では、接着層のガラス転移温度は−100℃以上であることが好ましい。すなわち、本発明に用いられる接着層のガラス転移温度は25℃〜−100℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは0℃〜−100℃、さらに好ましくは−10℃〜−100℃である。
なお、本発明におけるガラス転移温度(Tg)とは、動的粘弾性測定装置(例えばアイティー計測制御(株)製DVA−200)において周波数1Hz、引張りモードまたはせん断モードで測定した時に動的粘弾性挙動により求められる損失正接(tanδ)の極大値を表す。
また、ガラス転移温度としては、上記動的粘弾性挙動から求められるガラス転移温度とともに、示差走査熱量分析(DSC)により求められるガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度(DSC)」ともいう。)も知られている。本発明に用いられる接着層のガラス転移温度は、ガラス転移温度(DSC)としては、10℃以下であることが好ましく、−15〜−125℃であることがより好ましく、−35〜−125℃であることが更に好ましい。
接着層のガラス転移温度は、接着層形成のために使用する紫外線硬化型組成物の処方、該組成物に含有される紫外線硬化型化合物の種類、硬化条件等により制御することができる。
【0061】
本発明では、貯蔵弾性率を、ガラス転移温度と同様に接着層の硬軟の指標として用いることもできる。前記接着層の引張りモードによる貯蔵弾性率E'は、30℃において、30MPa以下であることが好ましく、より好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。また、前記接着層の貯蔵弾性率は、保存性の観点から0.001MPa以上であることが好ましい。すなわち、前記接着層の貯蔵弾性率は30MPa〜0.001MPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは15MPa〜0.010MPa、さらに好ましくは10MPa〜0.015MPaである。前記接着層のせん断モードによる貯蔵弾性率G'は、30℃において、10MPa以下であることが好ましく、より好ましくは5MPa以下、さらに好ましくは3.3MPa以下である。また、前記接着層の貯蔵弾性率は、保存性の観点から0.00033MPa以上であることが好ましい。すなわち、前記接着層の貯蔵弾性率は10MPa〜0.00033MPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは5MPa〜0.0033MPa、さらに好ましくは3.3MPa〜0.005MPaである。なお変形に際して体積変化のない場合にはE‘=3G’の関係式が成り立つことが一般に知られている。前記貯蔵弾性率は、ガラス転移温度と同様に、動的粘弾性測定装置(例えばアイティー計測制御(株)製DVA−200)による周波数1Hzでの測定で得られる動的粘弾性挙動から求めることができる。さらに動的粘弾性挙動によって求められる損失正接(tanδ)は、周波数1Hz、引張りモードまたはせん断モードで測定した時に30℃において2.0〜0.001の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.5〜0.002の範囲であり、さらに好ましくは1.0〜0.003の範囲である。
【0062】
紫外線硬化型組成物
記録層形成のために用いられる紫外線硬化型組成物は、紫外線硬化型化合物および任意に後述する各種成分を含む塗布液である。
【0063】
紫外線硬化型化合物としては、単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレート等の重合性モノマー成分を用いることができる。これらは各々、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。尚、本発明では、下記一般式(A)のアクリレートと下記一般式(B)のメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称し、同様に、アクリル酸とメタアクリル酸とを併せて(メタ)アクリル酸と称する。
【化6】

【化7】

[一般式(A)、(B)中、R1は置換基を表す。]
【0064】
本発明に使用可能な重合性モノマーとしては例えば以下のものが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては例えば、一般式(A)、(B)において置換基R1がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、ノニルフェノキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル基、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニロキシエチル基等の置換基を有する(メタ)アクリレート等、さらに、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
好ましい置換基R1としてはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、が挙げられ、さらに好ましいモノマーとしてはブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ドデシルメタクリレートが挙げられる。
【0065】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、 ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに6モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
好ましくはビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに6モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たポリ(メタ)アクリレートであり、より好ましくはビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリまたはテトラ(メタ)アクリレートである。
【0066】
また、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミドまたはN−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびそれらのアルキルエーテル化合物等も使用できる。
【0067】
更に、紫外線硬化型化合物としては、重合性オリゴマーを使用することもできる。重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
ガラス転移温度25℃以下の接着層を得るためには、紫外線硬化型組成物100質量部中、単官能(メタ)アクリレートが20〜99質量部、多官能(メタ)アクリレートが1〜80質量部、好ましくは単官能(メタ)アクリレートが30〜99質量部、多官能(メタ)アクリレートが1〜70質量部、より好ましくは単官能(メタ)アクリレートが40〜99質量部、多官能(メタ)アクリレートが1〜60質量部である。特に好ましくは前記多官能(メタ)アクリレートのうち3官能以上の(メタ)アクリレートが5質量部未満であることが好ましい。
【0069】
紫外線硬化型組成物には、一般に光重合開始剤が添加される。光重合開始剤は、用いる重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーに代表される紫外線硬化性化合物が硬化できるものであればよく、特に限定されるものではない。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明に好適である。
【0070】
光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンジル、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が好適であり、更にこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−4'−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン等を併用してもよいし、更に水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタロフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフイド等も併用できる。
好ましくは2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4'−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、4−フェニルベンゾフェノンであり、より好ましくは2−イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4'−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、4−フェニルベンゾフェノンである。
【0071】
また上記光重合開始剤に対し、増感剤として、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加重合反応を起こさないアミン類を併用することもできる。勿論、上記光重合開始剤や増感剤は、硬化型成分への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0072】
紫外線硬化型組成物としては、常温〜40℃において、液状であるものを用いることが好ましい。溶媒は用いないことが好ましく、用いたとしても極力少量に留めることが好ましい。また、前記組成物の塗布をスピンコーターで行う場合には、粘度を20〜1000mPa・sとなるように調製し、30〜700mPa・sとなるように調製することが好ましく、40〜500mPa・sとなるように調製することがより好ましい。
【0073】
また、粘度調整のために、増粘剤として、質量平均分子量1万以上のポリマーを用いることができる。少量の添加で所望の粘度とするためには、より高分子量のポリマー、すなわち質量平均分子量10万以上のポリマーが好ましく、質量平均分子量100万以上のポリマーを用いるとさらに好ましい。
【0074】
また、紫外線硬化型組成物には、必要であれば、さらにその他の添加剤として、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ホスファイト等に代表される酸化防止剤、可塑剤およびエポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン等に代表されるシランカップリング剤等を、各種特性を改良する目的で配合することもできる。これらは、硬化型成分への溶解性に優れたもの、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。なお、前記紫外線硬化型化合物としては、市販品を用いることもできる。具体的には、例えば大日本インキ社製SD−661を挙げることができる。
【0075】
接着層形成のために使用される紫外線硬化型組成物の詳細は、先に説明した通りである。接着層の形成方法は特に限定されないが、バリア層の表面(被貼り合わせ面)上に、紫外線硬化型組成物を所定量塗布し、その上にカバー層を載置した後、スピンコートにより接着剤を、被貼り合わせ面とカバー層との間に均一になるように広げた後、カバー層側から紫外線を照射して硬化処理を施すことが好ましい。その照射量は、200mJ/cm2超とすることが好ましい。より好ましくは200〜2000mJ/cm2の範囲である。硬化に使用するUVランプとしては、例えばXenon Corporation社製4.2inch-SPIRAL LAMPを用いることができる。紫外線照射時のランプ面とサンプル面との間の距離は適宜設定することが好ましい。
【0076】
紫外線硬化型組成物が塗布された媒体をUV照射位置へ移動させる(例えばスピンテーブルからUV照射テーブルへの移動させる)ためには、媒体の外周部分または内周部分で基板を保持して持ち上げて移動させることが望ましい。吸着などの方法で上から媒体を支持して持ち上げると、紫外線硬化型組成物が未硬化であるために媒体が変形したり、接着剤層に気泡が混入したりして、接着剤層の膜厚変動や欠陥の原因となる可能性がある。外周部を支持して移動する場合においては、支持部材を定期的に清掃することが好ましい。外周部はスピン時に振切られた未硬化の紫外線硬化型組成物が外周縁部に付着していることがあり、支持部材に付着することがある。繰り返し同じ支持部材で媒体を移動する時に、支持部材から媒体へと付着して欠陥を生じる可能性がある。
また、UV照射位置(例えばUV照射テーブル上)では、媒体を支持する部位として、基板(媒体)の内周部、外周部または中周部などの中から一つの部位、或いは複数の部位を支持することができる。プレート状の支持部材で全面を均一に支持してもよい。複数の部位を支持する場合には、各々の部位の支持高さを変更することができる。これは、例えば内周のみを支持した場合に、支持されていない媒体外周部が自重で下に垂れ、その形状で硬化されることで、硬化後の媒体の反りが生じる場合に、外周部も支持して垂れを抑制することで硬化後の反りを抑制するような場合であり、各支持部材の高さを調整して硬化後の媒体形状を調整する効果が期待できる。
【0077】
紫外線硬化処理は、硬化塗膜のゲル分率が90%以上となるように行うことが好ましい。より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは100%である。
ゲル分率は、硬化の程度を示す指標であり、数値が高いほど硬化が進行していることを示し、90%以上であれば硬化が十分に進行したと判断することができる。ゲル分率は、以下の方法により求めることができる。
硬化処理済みの塗膜からテストピースを切り取り、ゲル分率測定用試料とする。試料の質量(以下、W1と記す)を測定し、W1の100倍の質量のメチルエチルケトン液中に浸漬した後、80℃の加熱炉で8時間加熱し、未硬化成分を溶出させる。加熱終了後、10分以内に溶液の上澄み液を除去し、25℃50%の環境で48時間以上自然乾燥させた後、100℃の加熱炉で3時間加熱乾燥して未硬化成分溶出後のサンプルを得、未硬化成分溶出後の質量(以下、W2と記す)を測定する。上澄み液は、静置させた状態でスポイトなどを用いて吸取る形で除去することができる。上澄み液は8〜9割を除去し、残りは自然乾燥、加熱乾燥で揮発させる。上記W1、W2から以下の式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=100−(W1−W2)/W1×100
【0078】
接着層の厚さは、0.1〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50μmの範囲、更に好ましくは1〜30μmの範囲である。
【0079】
バリア層
バリア層は、記録層の保存性向上、記録層とカバー層との接着性向上、反射率調整、熱伝導率調整等のために設けることができる。
バリア層に用いられる材料としては、記録および再生に用いられる光を透過する材料であり、上記の機能を発現し得るものであれば、特に制限されるものではないが、例えば、一般的には、ガスや水分の透過性の低い材料、Ag合金などの反射層材料との接触により腐食を生じない材料、湿熱環境での腐食が生じない材料を用いることが好ましく、誘電体であることが更に好ましい。
具体的には、Zn、Si、Ti、Te、Sn、Mo、Ge、Nb、Ta等の窒化物、酸化物、炭化物、硫化物からなる材料が好ましく、MoO2、GeO2、TeO、SiO2、TiO2、ZnO、SnO2、ZnO−Ga23、Nb25、Ta25が好ましく、SnO2、ZnO−Ga23、SiO2、Nb25、Ta25がより好ましい。
【0080】
また、バリア層は、真空蒸着、DCスパッタリング、RFスパッタリング、イオンプレーティングなどの真空成膜法により形成することができる。中でも、スパッタリングを用いることがより好ましい。
バリア層の厚さは、1〜200nmの範囲が好ましく、2〜100nmの範囲がより好ましく、3〜50nmの範囲が更に好ましい。
【0081】
カバー層
カバー層は、バリア層上に、接着剤や粘着材を介して貼り合わされる。
カバー層としては、透明な材質のフィルムであれば、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;三酢酸セルロース等を使用することが好ましく、中でも、ポリカーボネートまたは三酢酸セルロースを使用することがより好ましい。
なお、「透明」とは、記録および再生に用いられる光に対して、透過率80%以上であることを意味する。また、本発明の光情報記録媒体は、好ましくはバリア層上に塗布された紫外線硬化型組成物に対し、カバー層を介して紫外線を照射することによって硬化処理を施す。よって、カバー層は紫外線透過性を有するものであることが好ましい。具体的には、紫外線硬化型組成物の硬化のために照射される紫外線に対して80%以上の透過率を有することが好ましい。
【0082】
また、カバー層は、本発明の効果を妨げない範囲において、種々の添加剤が含有されていてもよい。例えば、波長400nm以下の光をカットするためのUV吸収剤および/または500nm以上の光をカットするための色素が含有されていてもよい。
更に、カバー層の表面物性としては、表面粗さが2次元粗さパラメータおよび3次元粗さパラメータのいずれも5nm以下であることが好ましい。
また、記録および再生に用いられる光の集光度の観点から、カバー層の複屈折は10nm以下であることが好ましい。
【0083】
カバー層の厚さは、記録および再生のために照射されるレーザー光の波長やNA、外線硬化型組成物の硬化のために照射される紫外線の波長等により、適宜、規定することができるが、本発明においては、0.01〜0.5mmの範囲内であることが好ましく、0.05〜0.12mmの範囲であることがより好ましい。
また、カバー層と接着層を合わせた総厚は、0.09〜0.11mmであることが好ましく、0.095〜0.105mmであることがより好ましい。
なお、カバー層の光入射面には、光情報記録媒体の製造時に、光入射面が傷つくことを防止するための保護層(後述する図1に示す態様ではハードコート層44)が設けられていてもよい。
【0084】
またカバー層は、UV硬化樹脂を利用してスピンコーティング法により形成してもよい。
【0085】
その他の層
本発明の光情報記録媒体は、本発明の効果を損なわない範囲においては、上記の必須の層に加え、他の任意の層を有していてもよい。他の任意の層としては、例えば、基板の裏面(追記型記録層が形成された側と逆側の非形成面側)に形成される、所望の画像を有するレーベル層や、反射層と記録層との間に設けられる界面層などが挙げられる。ここで、前記レーベル層は、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、および熱乾燥樹脂などを用いて形成することができる。
なお、上記した必須および任意の層はいずれも、単層でも、多層構造でもよい。
【0086】
本発明の光情報記録媒体に対してレーザー光を照射することにより、記録層に情報を記録することができる。光情報記録媒体に対する情報の記録は、記録層のレーザー光を照射された部分がその光学的特性を変えることによって行われる。光学的特性の変化は、記録層のレーザー光が照射された部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的または化学的変化(例えばピットの生成)を生じることによってもたらされると考えられる。記録層に記録された情報の読み取り(再生)は、例えば記録用のレーザー光と同様の波長のレーザー光を照射することにより、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部位)と変化しない部位(未記録部位)との反射率等の光学的特性の違いを検出することにより行うことができる。前述のように、本発明では、情報の記録は、好ましくは、レーザー光照射により前記フタロシアニン誘導体が熱分解し、それにより発生した気体によりピット内に空隙が形成されることによって行われる。より好ましくは、前記フタロシアニン誘導体がレーザー光を吸収することによって発熱し、それにより生じた熱によって該フタロシアニン誘導体中の置換基または色素骨格が分解して気体を発生する。これにより記録層中に空隙が形成され、レーザー光照射により空隙が形成された部分とレーザー光未照射部との間に大きな屈折率差を生じさせることができ、記録特性を高めることができると考えられる。前記レーザー光の波長は、390〜440nmであることが好ましい。本発明の光情報記録媒体への情報記録の詳細は後述する。
【0087】
[情報記録方法]
更に、本発明は、本発明の光情報記録媒体へ、波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより、記録層へ情報を記録する情報記録方法に関する。
【0088】
記録光は波長390〜440nmのレーザー光であり、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザー光が好適に用いられ、好ましい光源としては390〜440(更に好ましくは390〜415nm)の範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザー光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザー光を挙げることができる。特に、記録密度の点で390〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光を用いることが好ましい。上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら半導体レーザー光をカバー層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0089】
具体的には、図2に示す光情報記録媒体に対する情報の記録は、例えば次のように行われる。
まず、光情報記録媒体を一定の線速度(例えば0.5〜10m/秒)または一定の角速度にて回転させながら、カバー層16側から半導体レーザー光等の記録用のレーザー光46を、第一対物レンズ42(例えば開口数NAが0.85)を介して照射する。このレーザー光46の照射により、追記型記録層14がレーザー光46を吸収して局所的に温度上昇し、物理的または化学的変化(例えばピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。
その他の本発明の情報記録方法の詳細は、先に本発明の光情報記録媒体について説明した通りである。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0091】
《紫外線硬化型組成物の調製》
接着層形成用接着剤として使用する紫外線硬化型組成物は、単官能モノマーに多官能モノマーおよび増粘剤を添加した後に、光重合開始剤を添加して暗所で攪拌し均一にすることにより調製することができる。以下に、紫外線硬化型組成物Fを例にとり調製方法を説明する。紫外線硬化型組成物A〜Eも同様にして得ることができる。
【0092】
1・調製例:紫外線硬化型組成物F
単官能モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート(21g:和光純薬工業株式会社製)に多官能モノマーとして、グリセリン1モルに40モルのエチレンオキサイドを付加した後にアクリル酸クロライドと反応せしめて得られた架橋剤(0.5g、新中村工業株式会社製NK ESTHER ASO 40EO)、さらに増粘剤としてポリブチルアクリレート(7g:アルドリッチ社製、Mw=101000、Mn=38000)、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(0.5g:和光純薬工業株式会社製)を暗所で3時間攪拌し一晩放置して紫外線硬化型組成物Fを得た。
【0093】
2・粘度測定
得られた紫外線硬化型組成物A〜F、大日本インキ社製SD−640、SD−661について東機産業株式会社製R500型粘度計を用い、25℃での粘度を測定した。結果を表3に示す。
【0094】
《光情報記録媒体の作製》
(基板の作製)
厚さ1.1mm、外径120mm、内径15mmでスパイラル状のプリグルーブ(トラックピッチ:320nm、溝幅:グルーブ(凹部)幅190nm、溝深さ:47nm、溝傾斜角度:65°、ウォブル振幅:20nm)を有する、ポリカーボネート樹脂からなる射出成形基板を作製した。射出成型時に用いられたスタンパのマスタリングは、レーザーカッティング(351nm)を用いて行なわれた。
【0095】
(光反射層の形成)
基板上に、Unaxis社製Cubeを使用し、Ar雰囲気中で、DCスパッタリングにより、膜厚60nmの真空成膜層としてのANC光反射層(Ag:98.1at%、Nd:0.7at%、Cu:0.9at%)を形成した。光反射層の膜厚の調整は、スパッタ時間により行った。
【0096】
(追記型記録層の形成)
例示化合物(I−49)1.2gを、2,2,3,3−テトラフロロプロパノール100ml中に添加して溶解し、色素含有塗布液を調製した。そして、光反射層上に、調製した色素含有塗布液を、スピンコート法により回転数300〜4000rpmまで変化させながら23℃、50%RHの条件で塗布した。その後、23℃、50%RHで1時間保存して追記型記録層を形成した。追記型記録層の厚さはグルーブ上の厚さ40nm、ランド上の厚さ15nmであった。
【0097】
追記型記録層を形成した後、クリーンオーブンにてアニール処理を施した。アニール処理は、基板を垂直のスタックポールにスペーサーで間をあけながら支持し、80℃で1時間保持して行った。
【0098】
(バリア層の形成)
その後、追記型記録層上に、Unaxis社製Cubeを使用し、Ar雰囲気中で、DCスパッタリングによりNb25からなる、厚さ5nmのバリア層を形成した。
【0099】
バリア層を成膜した媒体をスピン塗布装置上に設置し、内周部30mm付近に紫外線硬化型組成物Fをリング状に塗布した。その上から内径15mm、外径120mmのポリカーボネート製フィルム(帝人ピュアエース、厚さ:90μm)を載せた後に、2000〜8000r.p.m.の回転数で回転させた。これによって遠心力で接着剤が外周部まで延展し、均一な厚みの接着剤層を得ることができた。このサンプルをUV光照射テーブルに移動し、UV光を照射、UV接着剤を硬化させた。このとき、硬化に用いたUVランプはXenon Corporation社製4.2inch−SPIRAL LAMPであり、1回あたり0.5秒の照射時間となる閃光を複数回照射して硬化させた。ランプ面〜サンプル面間距離は約35mmであった。紫外線照射量は、2000mJ/cm2であった。形成された接着層の厚さは10μmであった。
これにより、実施例1の光情報記録媒体が作製された。
【0100】
[実施例2〜6、比較例1、2]
紫外線硬化型組成物Fの代わりに表3に示す紫外線硬化型組成物を使用し、該組成物の硬化処理のための紫外線照射時間を変更することにより紫外線照射量を変更した以外は、実施例1と同様の方法により光情報記録媒体を作製した。
【0101】
記録層用色素の主減量過程における質量減少率
使用した記録層用色素について、Seiko Instruments Inc.製EXSTAR6000を用い、N2気流下(流量200ml/min)、30℃〜550℃の範囲において10℃/分で昇温を行い、主減量過程における質量減少率を求めた。例示化合物(I−49)の主減量過程における質量減少率は39%であった。
【0102】
紫外線照射量
接着層の硬化のために照射した紫外線の照射量は以下のように測定した。
照射照度測定機としてウシオ電機株式会社製EC−100FL型を用い、積算光量測定モードで測定した。この測定機の受光部上にポリカーボネート製フィルム(帝人ピュアエース、厚さ:90μm)を載せてUV光照射部にセットし、1回あたり0.5秒の照射時間となる閃光を3、6、10回照射して各回における積算光量を測定した。照射時間と積算光量の関係をプロットしたところ、照射時間と積算光量の関係は良好な直線関係を示した。そこで、原点を通る近似直線の傾きを単位時間当たりの照射量として、単位時間当たりの照射量と照射時間との積を照射量とした。結果を下記表3に示す。測定機の受光部は半径40mm部にあることから、表3に示す値は、半径40mmにおける測定結果を代表値として用いたものであり、ランプによっては面内強度にバラツキが生じる可能性もある。
尚、この測定機は、相対的な値を測定するもので単位は無いが、表3では得られた数値にmJ/cm2という単位を付けてエネルギーに置き換えて示した。これは、ポリカーボネート製フィルムを置かずに3sec照射した時の積算光量が、メーカーデータ(mJ/cm2の単位を持つエネルギーとして計測されている)とほぼ一致しているためである。
【0103】
ゲル分率の測定
実施例2〜6および比較例1、2の光情報記録媒体について、硬化処理後の接着層のゲル分率を以下のように測定した。
作製した各媒体のポリカーボネート製フイルム側外周端部にナイフで切れ込みを入れて部分的にフィルムが剥離した状態を作り、そこからフィルム全体を基板から剥離させた。一部、反射層がフィルム側に付いて剥離される部分もあるが、大部分は反射層と接着剤の界面で剥離し、反射層の付いた基板と、接着層の載ったフィルムに分離された。フィルム上の接着層を金属ヘラで掻き落とし、硬化済み接着層サンプルを得た。硬化済み接着層サンプル量に依ってはこの作業を複数枚の媒体に対して行い、質量測定をするために必要な量を確保した。
得られた硬化済み接着層サンプルの質量W1を測定し、W1の100倍の質量のメチルエチルケトン液中に浸漬した後、80℃の加熱炉で8時間加熱し、未硬化成分を溶出させた。加熱終了後10分以内に溶液の上澄み液を除去し、25℃50%の環境で48時間以上自然乾燥させた後、100℃の加熱炉で3時間加熱乾燥して未硬化成分溶出後のサンプルを得、未硬化成分溶出後の質量W2を測定した。上澄み液は、静置させた状態でスポイトなどを用いて吸取る形で除去した。上澄み液は8〜9割を除去し、残りは自然乾燥、加熱乾燥で揮発させた。溶出分が一部残存するが、沈殿した未溶出分を除去しないことを優先し、沈殿を吸取らないよう注意して行った。
ゲル分率は以下の式を用いて算出した。
ゲル分率(%)=100−(W1−W2)/W1×100
ゲル分率が90%に達していれば、十分に硬化が進行したと判断した。結果を表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
《接着層のガラス転移温度および貯蔵弾性率の測定》
(1)動的粘弾性挙動測定用サンプルの調製
紫外線硬化型組成物A〜F、大日本インキ社製SD−640、SD−661を、それぞれガラス基板上に塗布した後、メタルハライドランプM02−L31(アイグラフィックス社製、コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用いて窒素雰囲気中で表3に示す照射量で紫外線を照射し硬化させ、測定用サンプル(サンプル1〜6および比較サンプル1、2)を調製した。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
得られた硬化塗膜を縦2cm×横0.5cmにカットして動的粘弾性測定装置:DVA−200(アイティー計測制御(株))にて周波数1Hzのときの動的粘弾性挙動を測定した(昇温スピード5℃/min)。測定モードは引張りモードまたはせん断モードとした(表4参照)。また同様にして30℃のときの貯蔵弾性率を求めた。測定結果を表4に示す。
(3)ガラス転移温度(DSC)の測定
(2)と同様にして得られた硬化塗膜のガラス転移温度(DSC)を、SC/DSCにより測定した。測定結果を表4に示す。
測定方法を以下に説明する。
DSC装置:Seiko Instruments Inc.製DSC6200Rを用いSUS製密閉セルに試料を密閉し、−100℃〜100℃の範囲において10℃/分で昇温して1回目のガラス転移温度を求める。さらに100℃〜−100℃まで50℃/分で降温した後に−100℃〜100℃の範囲において10℃/分で昇温して2回目のガラス転移温度を求める。この点をガラス転移温度(DSC)と称する。
なお、ガラス転移温度および貯蔵弾性率測定のために、測定用サンプル中の硬化塗膜は、実施例および比較例の光情報記録媒体における接着層よりも厚く形成した。サンプル2〜6および比較サンプル1、2の硬化塗膜の厚さを下記表4に示す。ただしガラス転移温度および貯蔵弾性率は膜厚の影響を受けないため、下記表4に示す結果は、それぞれ対応する実施例、比較例の評価結果とみなすことができる。
【0106】
【表4】

【0107】
《記録特性の評価》
1.C/N(搬送波対雑音比)評価(2TC/N値)
作製した光情報記録媒体を、403nmレーザー、NA0.85ピックアップを積んだ記録再生評価機(パルステック社製:DDU1000)を用い、クロック周波数66MHz、線速4.92m/sにて、0.16μmの信号(2T)を記録、再生しスペクトルアナライザー(ローデ&シュウバルツ社製FSP−3型)にて出力を測定した。記録後の16MHz付近に見られるピークの出力をCarrier出力、記録前の同周波数の出力をNoise出力として、記録後の出力−記録前の出力をC/N値とした。記録はグルーブ上に行った。また記録パワーは1〜8mWの範囲で行い、再生パワー0.3mWであった。また記録パワーが6mW時のC/N値が35dBより大きい場合が、実用上使用できるレベルである。結果を表5に示す。
【0108】
2.9T信号波形の評価
作製した光情報記録媒体を、403nmレーザー、NA0.85ピックアップを積んだ記録再生評価機(パルステック社製:DDU1000)を用い、クロック周波数66MHz、線速4.92m/sにて、約0.16μmの信号(9T信号)を記録、再生しスペクトルアナライザー(ローデ&シュウバルツ社製FSP−3型)にて出力を測定した。記録はグルーブ上に行った。この時、記録に用いるピークパワー値を2.0mWから10.0mWまで0.5mW毎にパワーを増加させながら測定し、最も矩形波に近い波形になる記録パワーを最適記録パワーとした。9T信号波形が矩形に近い波形を示すことは、記録信号の読み取りエラーの低減に繋がるため、極めて重要である。
前記最適記録パワーで、約0.72μmの信号(9T信号)を記録、再生し横河電機社製オシロスコープDL7440型にて出力波形を測定した。尚、波形は200個の波形を取り込んで平均化処理したものを平均的な波形として用いた。
9T信号波形の説明図を図3に示す。図3中、図Pおよび図Rは悪い9T波形、図Qは良い9T波形のイメージを示す。横軸は時間、縦軸は反射信号電圧である。得られた波形は、モデル的に大別して図示すると図3中の図P、図Qのようなものであった。記録パワーを上昇させる過程で図Pと図Qの両方をとり得る場合、それぞれの記録パワーの間に図Qに近い波形が得られるポイントがある。図3中の図Qの9T波形を示した場合を○、図Pまたは図Rの9T波形を示した場合を×として9T波形の形状を評価した。実施例1、2、5および比較例1の評価結果を表5に示す。
また、実施例1の2T記録のC/N値(dB)および9T信号波形を図4に、実施例2の9T信号波形を図5に、実施例5の2T記録のC/N値(dB)および9T信号波形を図6に、比較例1の2T記録のC/N値(dB)および9T信号波形を図7に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
表5に示すように、実施例1、2および5の媒体は、2T C/N値および9T波形のいずれの評価でも良好な結果が得られた。
また、図7に示すように、高Tg(Tg>25℃)接着層を有する比較例1の媒体では、記録部前半部(Time/nsが短い領域)の振幅がほとんど見えないのに対し、図4および図6に示すように、Tg25℃以下の接着層を有する媒体(実施例1、5)では、記録部前半部において充分な振幅が得られていることがわかる。
【0111】
実施例3、4および6、比較例2についても同様に記録性能の評価を行い、実施例3、4および6の媒体が良好な記録性能を示すことを確認した。これに対し、比較例2の媒体の記録性能は低かった。
【0112】
[実施例7]
記録層用色素に例示化合物(I−24)(主減量過程における質量減少率26%)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により光情報記録媒体を作製した。
【0113】
[実施例8]
記録層用色素に例示化合物(I−38)(主減量過程における質量減少率34%)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により光情報記録媒体を作製した。
【0114】
[比較例3]
記録層用色素に特開2005−279964号公報実施例3に記載の化合物(I−3)(主減量過程における質量減少率8%)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により光情報記録媒体を作製した。
【0115】
実施例7、8および比較例3について、前述と同様の方法により記録性能の評価を行った。実施例7、8の媒体は良好な記録性能を示した。これに対して比較例3の媒体の記録性能は低かった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の光情報記録媒体は、短波長レーザー光を照射することにより情報を記録するためのブルーレイ方式の光情報記録媒体として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】熱質量分析での主減量過程における質量減少率の測定方法の説明図である。
【図2】本発明の光情報記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図3】9T信号波形の説明図を示す。
【図4】実施例1の2T記録のC/N値および9T信号波形を示す。
【図5】実施例2の9T信号波形を示す。
【図6】実施例5の2T記録のC/N値および9T信号波形を示す。
【図7】比較例1の2T記録のC/N値(dB)および9T信号波形を示す。
【符号の説明】
【0118】
10A…第1光情報記録媒体
12…基板
14…記録層
16…カバー層
18…光反射層
20…バリア層
22…接着層
42…第一対物レンズ
44…ハードコート層
46…レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のグルーブおよび隣接するグルーブの間に位置するランドからなるプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に、反射層、記録層、バリア層、およびカバー層をこの順に有する光情報記録媒体であって、
前記プリグルーブのトラックピッチは50〜500nmの範囲であり、
前記記録層の厚さは、ランド上で1〜100nmの範囲であり、グルーブ上で5〜150nmの範囲であり、
前記記録層は、下記一般式(I)で表され、かつ熱質量分析での主減量過程における質量減少率が10%以上である熱分解性を有する化合物を含有し、
前記バリア層とカバー層との間に、紫外線硬化型組成物に硬化処理を施すことにより形成された25℃以下のガラス転移温度を有する層を有することを特徴とする光情報記録媒体。
【化1】

[一般式(I)中、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、Mは2個の水素原子、2〜4価の金属原子、2〜4価のオキシ金属原子または配位子を有する2〜4価の金属原子を表す。]
【請求項2】
前記置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜14の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、炭素数1〜10のヘテリルスルホニル基、炭素数1〜25の置換もしくは無置換のカルバモイル基、炭素数0〜32の置換もしくは無置換のスルファモイル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜15の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜21の置換もしくは無置換のアシルアミノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のスルホニルアミノ基、または炭素数0〜36の置換もしくは無置換のアミノ基である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
一般式(I)中、Rα1〜Rα8およびRβ1〜Rβ8の中で1〜8個が置換基を表し、その他は水素原子を表す請求項1または2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
ランド上の記録層の厚さとグルーブ上の記録層との厚さの比[(ランド上の記録層の厚さ)/(グルーブ上の記録層の厚さ)]が0.1〜1の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光記録情報媒体。
【請求項5】
前記紫外線硬化型組成物は、紫外線硬化型組成物100質量部に対し、単官能(メタ)アクリレートを20〜99質量部、および多官能(メタ)アクリレートを1〜80質量部含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより情報を記録するために使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体へ、波長390〜440nmのレーザー光を照射することにより、光情報記録媒体の記録層へ情報を記録する情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−300001(P2008−300001A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147282(P2007−147282)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】