説明

光放出器

【課題】 狭い空間に大電力を注ぎ込むことなしに、高い輝度の連続スペクトルを持った光放出器を提供すること。
【解決手段】 光の吸収によって励起され、励起光より長波長の光を自然放出する発光点が存在する材料からなる棒状あるいはファイバ状の光放出部材と、該放出部材に該放出部材の外部から光照射する励起光源とからなり、該光照射により、該光放出部材内の該発光点から自然放出される光のうち、該光放出部材の内部を伝播する光を該光放出部材の端面からインコヒーレント光として該光放出部材の外部に放出することを特徴とする光放出器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続スペクトルを持つ高輝度光放出器に関する。
【背景技術】
【0002】
インコヒーレント(可干渉性のない)光源において、連続スペクトルを持った高輝度点光源を実現するために、放電ランプを例示できるように、現状は狭い空間に大電力を注ぎ込むことで高温部を形成し、その高温部での高温プラズマを発光部とし該発光部からの熱放射を利用することが行われている。この場合、該発光部が高い温度になるため、該発光部に隣接する材料は耐熱性が要求され、かつ局所で発生する熱を逃がすため、高度な技術の廃熱処理手段が必要となる。また、熱的な光源であるため、該発光部の温度の黒体放射より強い放射は出ず、該発光部温度が決まれば、分光放射輝度の上限が決まってしまう。ここで、分光放射輝度とは単位立体角あたり単位波長あたりの放射輝度のことをいう。
【0003】
また、蛍光物質を用いた光発生技術は、蛍光ランプやブラウン管などで用いられているが、励起のためのエネルギーを集中して高輝度にすると、エネルギー集中部で発生する熱のため、蛍光物質の焼けが生じ、発光部の輝度を高めることは限界がある。
【0004】
一方、レーザは質の高い平行光が作り出せ、レンズなどで絞ることで非常に高い輝度を得ることができる。しかしながら、CCDを用いた分光測定などの用途によってはその可干渉(コヒーレント)性が邪魔になり、使えない。また、出力光は単一の波長であり、連続スペクトルは実現できていない。ある程度の範囲にわたり、波長を変化させることはできるが、連続スペクトルを持った発光は困難である。
【0005】
特許文献1に、光放出部材内にレーザ媒質をドープした光増幅器の例が示されている。レーザ媒質が励起により反転分布を作り誘導放出する現象を利用したもので、自然発光する蛍光物質とは区別される。レーザ媒質は蛍光物質として使うこともできるが、特許文献1ではレーザ媒質は自然放出する蛍光物質としては機能せず、誘導放出の媒体として機能している。このため、コヒーレントな単一波長の増幅器となるが、インコヒーレントな連続スペクトルの発光を得ることはできない。
【0006】
ところで、近年、マイクロマシン技術を応用して、化学分析等を従来の装置に比して微細化して行うμ−TAS(μ−ToTal Analysis System)と称されるマイクロチップを使用した分析方法が注目されている。特許文献2にはこの技術が開示されている。このようなマイクロチップを使用した分析システムは、マイクロマシン作製技術によって小さな基板上に形成された微細な流路の中において、試薬の混合、反応、分離、抽出及び検出等の分析全ての工程を行うことを目指したものであり、例えば、医療分野における血液の分析、超微量の蛋白質や核酸等の生体分子の分析等に用いられている。
【0007】
μ−TASでは、抽出物質や反応性生物などを定量するために吸光光度法の光学的測定方法がよく用いられる。吸光光度法は、マイクロチップ内に形成された断面が約10〜100μm角と非常に小さい測定セル内に検体を充填し、測定光をその測定セルに入射し、測定セルを通過した通過光を受光しその通過光に基づいて液の吸光量を測定し、成分濃度を検出する方法である。
【0008】
μ−TASの吸光光度法の光学的測定において、連続スペクトルを持った輝度の高い光源が求められている。半導体レーザや発光ダイオードではスペクトルの幅が狭く、吸収測定には不向きである。一方、高輝度放電ランプの場合、発光部の大きさ(光源サイズ)は数mm程度であり、0.1mm程度の大きさの測定セル内に用いる光源としては大きすぎ、光の利用率が上がらない。しかし、現状では光利用率がたいへん低いにもかかわらず適切な光源がないため高輝度放電ランプや白熱ランプが使われている。つまり、連続スペクトルを有し、小さく、輝度の高い光を提供するものが求められているが、今のところ、この条件を満足するものがない。
【特許文献1】特開平10‐223961号公報
【特許文献2】特開2004−109099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、近年のマイクロ化の潮流から、前述したμ−TASの分野に限らず、高い輝度の連続スペクトルを持った光への要望が高まっている。
【0010】
また、高輝度放電ランプは、狭い空間に大きな電力を入れることによって、発光部が高い温度になるため、それに隣接する材料は耐熱性が要求され、かつ局所で発生する熱を逃がすため、高度の廃熱処理が必要になる。電力が大きくなるにつれて、この廃熱が限界に近くなっている。このため、狭い空間に大電力を注ぎ込むことなしに、高い輝度が得られれば技術的に大きなブレークスルーになる。
【0011】
本発明の課題は、狭い空間に大電力を注ぎ込むことなしに、高い輝度の連続スペクトルを持った光放出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、光の吸収によって励起され、励起光より長波長の光を自然放出する発光点が存在する材料からなる棒状あるいはファイバ状の光放出部材と、該光放出部材に該光放出部材の外部から光照射する励起光源とからなり、該光照射により、該光放出部材内の該発光点から自然放出される光のうち、該光放出部材の内部を伝播する光を該光放出部材の端面からインコヒーレント光として該光放出部材の外部に放出することを特徴とする光放出器とするものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記光源は低圧水銀ランプ、希ガスエキシマランプ、キセノンクロライド(XeCl)エキシマランプ、蛍光ランプ、発光ダイオードから選ばれた光源であることを特徴とする請求項1に記載の光放出器とするものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記光放出部材内に発光点として蛍光体粒子を分散させ、該蛍光体粒子の大きさが、前記自然放出される光の波長より小さいことを特徴とする請求項2に記載の光放出器とするものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記光源として直管状の光源を用い、該光源にファイバ状の光放出部材を巻き付けたことを特徴とする請求項2に記載の光放出器とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、狭い空間に大電力を注ぎ込むことなしに、高い輝度の連続スペクトルを持った光放出器を得ることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、低圧水銀ランプ、希ガス蛍光ランプ、エキシマランプ、発光ダイオードは外囲器の温度が低いため、光放出部材の近くに設置でき、励起光を効率よく光放出部材に照射できるため、励起効率が高くなる。また、電力密度が低いため、光放出器の温度上昇が小さくてすむ。
【0018】
また、請求項3の発明によれば、光放出部材内に存在する発光点としての蛍光粉末の大きさが、発光点が発する蛍光の波長より小さいと、蛍光が散乱され難くなるため、光放出部材の端面に向かう光の減衰が少なくできる。
【0019】
請求項4の発明によれば、励起光の利用効率が上がるとともに、光放出部材が長くできるため、光放出部材の端面から出てくる光の効率を高め、強度を高くすることができる。
【0020】
光放出部材内に存在する発光点は、励起光により励起され、その緩和過程において自然放出が起こり、ランダムな方向に発光する。前記発光のうち、光放出部材の臨界角以下の方向に発した光は、全反射により光放出部材内を進むことができる。一般に自然放出された光は励起光より波長が長いため、吸収されにくく、大きな減衰を受けずに端面に達する。光放出部材の端から出てくる光は、光放出部材の屈折率が軸上付近で高く、周辺部で低い光放出部材において、光放出部材の軸上付近のコアの直径を大きさとする点光源とおよそ等価な光源である。
【0021】
発光する波長における光放出部材の透過率が高い場合、自然放出を利用するため、光放出部材の長さにほぼ比例して端面から出てくる光強度が強くなり、高い輝度が得られる。レーザのような誘導放出の場合は、非線形であるため、光放出部材の長さに比例せず、入射光の強度に依存し、強度が低いと誘導放出が起こらないか、または効率が悪くなる。また、誘導放出の場合、弱い電力密度で励起すると、反転分布が得られず、誘導放出が起こらない。
【0022】
光強度の上限は、単位長さあたりの発光と吸収や散乱による減衰が釣り合う強度で決まるが、光放出部材の吸収や散乱は低くできるため、高輝度ランプに匹敵する輝度が得られる。また、発光が熱的な放射でないため、高輝度放電ランプやハロゲン電球のような黒体放射による強度の限界がなく、吸収や散乱を抑えることで、熱的光源では不可能な強度を得ることもできる。
【0023】
光放出部材内を進んで端面から出てくる光は発光した光の一部(1割程度)であるため、光源の電力効率は低い値に留まる。しかしながら、分光透過率の測定のような連続スペクトルの平行光を必要とするような用途では、光源輝度がシステムの光利用効率を決定するため、低輝度の光源をそのまま用いるよりも高い光利用効率が得られる。
【0024】
低圧水銀ランプ、希ガス蛍光ランプ、エキシマランプ、発光ダイオードのような輝度の低い光源から、高い輝度の光が得られる。光放出器の端面の輝度を高くすることによって、全体の光利用効率が高くなる。また、電力密度を高める必要がないため、耐熱温度の低い材料でも使用える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の実施の形態を示す概略の構成図である。励起光源10に隣接して棒状の光放出部材1が配置される。記号11は電極である。光放出部材1としては、ガラス、セラミックなどの無機材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、その他の有機材料が使用可能である。発光点2となりうるのは、蛍光物質や点欠陥である。点欠陥は結晶やガラス固体をガンマ線もしくは電子線あるいは粒子線を照射することによって、結晶やガラス内に生成するものをいう。また、希土類元素もしくは遷移金属元素の金属錯体を添加した透明プラスチックからなる光放出部材とした場合は発光点として金属錯体が機能する。
【0026】
励起光源10から放射された励起光は光放射部材1に照射され、光放射部材1の発光
点2に作用して発光点2が励起し光が放出する。放出した光は光放出部材1の周面に達
し、光放出部材1内を長手方向に伝播し、光放出部材1の端面1aから放出される。
【0027】
図1のように、光放出部材1が棒状の場合、励起光源10からの励起光を効率よく光放出部材1に入射させるために励起光源10の光を光放出部材1側に励起光を反射する反射ミラー15を、図中に破線で示したように励起光源10の近傍に配置することも有効である。
【0028】
図2は本発明の実施の形態の他の構成図である。励起光源10にはファイバ状の光放出部材1が巻き回されている。この場合、励起光源10に直接に光放出部材1を密着させるだけでよく、構造が簡単でコンパクトになる。そして、発光する波長における光放出部材1の透過率が高い場合には、光放出部材1の長さにほぼ比例して端面1aから出てくる光強度が強くなり、高い輝度が得られる。
【0029】
また、図3に示すように、筒状の反射ミラー16内に略棒状の励起光源10と光放出部材1を配置すると、励起光の利用率が高くなり、光放出部材1の端面1aから出てくる光の効率を高めることができる。
【実施例】
【0030】
次に本発明の具体的実施例として励起光源と光放射部材の構成例について説明する。
<構成例1>
図2の構成において、励起光源10が全長60mm、直径8mmの低圧水銀ランプであり、光放出部材1はセリウム酸化物をドープした、直径0.1mm、長さ2000mmの無機固体であるシリカガラスファイバであり、シリカガラスファイバは低圧水銀ランプに多数回巻きつけられている。励起波長は254nmであり、光放出部材1からの放出光の波長は400〜600nmの範囲にある。
【0031】
<構成例2>
図2の構成において、励起光源10が全長60mm、直径3mmの蛍光ランプであり、光放出部材1はポリメチルペンテンにエルビウム錯体を添加した、直径0.2mm、長さ2000mmの有機固体であるプラスチックファイバであり、蛍光ランプに多数回巻きつけられている。励起波長は400〜600nmであり、光放出部材1からの放出光の波長は1.2〜1.6μmの近赤外線である。
【0032】
<構成例3>
図2の構成において、励起光源10が全長60mm、直径6mmの希ガスエキシマランプの一種のキセノンクロライドエキシマランプであり、光放出部材1は直径0.5mm、長さ1000mmの有機固体であるプラスチックファイバであり、プラスチックファイバには粒径100nm以下のナノ蛍光粒子、例えばMgWOを混ぜてあり、ランプに多数回巻きつけられている。励起波長は308nmであり、光放出部材1からの放出光の波長は360〜700nmである。
【0033】
<その他の構成>
そのほかにも、図1の構成例としては、光放出部材1にセリウムの酸化物、イッテリビウムの酸化物またはユーロピウムの酸化物をドープした無機固体であるシリカガラス製の棒状部材を使用し、励起光源10として低圧水銀ランプまたは希ガスエキシマランプを使用し、可視域の連続スペクトルを放出させる構成とすることもできる。あるいは、光放出部材1として、蛍光体のナノ粉末(Ca3(PO4)2:Tl+ )をアルカリハライド(KBr)微粉末に混ぜ超高圧で固めて透明体とした棒状部材を使用し、励起光源10としては低圧水銀ランプまたは希ガスランプとして、可視域の連続スペクトルを放出させる構成とすることもできる。
【0034】
また、図2の構成例としては、光放出部材1として、蛍光体のナノ粉末((Sr,Ca)10(PO4)6Cl:Eu2+ )に親水性のコーチィングし分散した液体の光放出部材として液体(水)ファイバを使用し、励起光源10として、近紫外線蛍光体の蛍光ランプを使用し、可視域の連続スペクトルを放出させる構成とすることもできる。また、光放出部材1として有機蛍光染料(Rhodamine 6G :赤)の溶液をチューブに充填した液体ファイバを使用し、励起光源10として近紫外線蛍光体の蛍光ランプを使用し、赤色の連続スペクトルを放出させる構成とすることもできる。
【0035】
そのほかにも、図2の構成例としては、光放出部材1として、有機固体であるプラスチック(ポリメチルペンテン)に蛍光物質としてセリウム、イッテリビウム、またはユーロピウム錯体を添加したファイバを使用し、励起光源10として、近紫外線蛍光体の蛍光ランプを使用し、可視域の連続スペクトルを放出させる構成とすることもできる。さらには、光放出部材1として、有機固体である赤外線透過プラスチックに蛍光物質としてカーボンナノチューブを添加したファイバを使用し、励起光源10として、発光ダイオードを使用し、近赤外光(900〜1100nm) を放出させる構成とすることもできる。また、光放出部材1として、アルカリハライド中に蛍光物質として銀(Ag)のナノ粒子を分散した無機固体のファイバを使用し、励起光源10として、発光ダイオードを使用し、近赤外光(900〜1100nm) を放出させる構成とすることもできる。
【0036】
図4はμ−TAS装置へ本発明の光放出器を使用した構成例を示す。マイクロTASチップ20とチップホルダ25の一構成例を示す。マイクロチップ10はPMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂等のプラスチック材料からなる。この例で示したマイクロチップ20は、2枚の板部材が貼り合わされてできている。貼り合せ面の片面に予め溝が形成され、貼りあわせることで溝が連なった空洞を形成している。チップ外部から分析液が導入され、試薬と反応させて検査液を調合し、その検査液が図中の測定セル21に溜められる。その測定セル21に外部から光を通過させフィルタ35で波長選択をしてフォトダイオード30で受光し、所定の成分分析を行う。記号22a、22bはチップホルダ25に形成されたアパーチャである。
【0037】
図5は図2の構成の光放射器から放射される具体的発光スペクトルの例を示す。励起光源10が低圧水銀ランプであり、光放出部材はセリウムの酸化物をドープした無機固体であるシリカガラスファイバであり、そのシリカガラスファイバが低圧水銀ランプに多数回巻きつけられている。励起波長は254nmであり、光放出部材1からの放出光の波長は図のように400〜600nmの範囲にある。
【0038】
市販の輝度計を使用して、従来からの光源と本発明の光放射器との輝度比較を歩個成った。各光源の発光部に輝度計のピントを合わせて測定した。その結果、蛍光ランプでは、10〜10cd/mの範囲であり、キセノンランプでは、10〜10cd/mの範囲であり、本発明の光放出器として図5でスペクトルを例示した低圧水銀ランプとセリウムの酸化物をドープした無機固体であるシリカガラスファイバの組み合わせのものでは、10〜10cd/mの範囲であった。本発明の光放出器はキセノンランプと同等の輝度を確認した。
【0039】
光放出部材内に存在する発光点としての蛍光物質であるが、該蛍光物質がチタン酸塩、ジルコン酸塩、バナジン酸塩、タンタル酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、あるいは、マンガン、アンチモン、タリウム、錫、鉛、ビスマスイオンを付活剤とするハロリン酸塩、リン酸塩、あるいは、セリウム、イッテルビウム、ユーロピウムなどの希土類イオンを分散した酸化物、ハロリン酸塩、リン酸塩、カルコゲナイト、金属錯体あるいは、有機蛍光染料、有機蛍光顔料のいずれかであると、励起光に対する蛍光の発光効率が高くでき、高い輝度を得ることができる。
【0040】
結晶やガラス固体をガンマ線もしくは電子線、粒子線を照射することによって、結晶やガラス内に点欠陥が生成する。この欠陥は発光点として振る舞う。均質な材料に照射によって欠陥を導入すると均質な欠陥ができ、また点欠陥は発光点のサイズが小さいため、レーリー散乱が少なく、光の出力が大きくできる。
【0041】
光放出部材が希土類元素もしくは遷移金属元素の金属錯体を添加した有機固体である透明プラスチックであると、蛍光体粉末より散乱される蛍光が減少するため、光放出部材の端面に向かう光の減衰が少なくできる。光放出部材内に存在する蛍光物質が、2種類以上であると複数の蛍光物質の発光が、それぞれの蛍光物質の励起帯を除き、ほぼ加算されるため、所望の発光スペクトルを得ることもができる。
【0042】
光放出部材の屈折率が軸上で高く、周辺部で低い光放出部材において、蛍光物質からの発光周辺部で起こるほど、光放出部材に沿って進む有効な光の割合が低下するため、蛍光物質の濃度が、その軸上で高く、周辺で低いと、有効な光の割合が増加するため、端面から出てくる光量を増やすことができる。
【0043】
光放出部材の1つの端面に光を反射する手段を設けることで、もう一方の端面から出てくる光量を増やすことができる。光放出部材の光放出端面に無反射コートを設ける。そうすると、光放出部材の1つの端面に反射防止手段を設けることで、端面から出てくる光量を増やすことができる。
【0044】
光放出部材の直径が0.1mm以上であると、光放出部材端面からの回折光が弱くなり、干渉しにくくなるため、インコヒーレントな点光源としての質が高まる。1mmぐらいまでが実用的である。
【0045】
複数本の光放出部材とし、光取出し端において束ねることによって、所望の形状に照射ができる。また、異なる種類の蛍光物質を含む光放出部材を束ねることもできる。
【0046】
中空の2重管形状の励起光源と用い、光放出部材を該2重管の中空部と外に配置すると励起光源の発光表面積が広なるので、光放出部材と密着面積が増え、利用効率が上がるとともに、光放出部材が長くできるため、光放出部材の端面から出てくる光の効率を高め、強度を高くすることができる。
【0047】
短い波長の蛍光を発する光放出部材と長い波長の蛍光を発する光放出部材が接続され、光取り出し端に近い側に短い波長の蛍光を発する光放出部材を配置すると、長い波長の蛍光を発する光放出部材は短い波長の蛍光を発する光放出部材によって吸収されにくいため、光取り出し端の光強度が低下することなく、高い強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の光放出器の原理を示す模式図である。
【図2】本発明の光放出器の基本構成を示す模式図である
【図3】本発明の光放出器の他の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の光放出器の応用例としてμTAS装置へ本発明の光放出器を使用した構成例を示す。
【図5】本発明の光放出器の発光スペクトルの一例を示す。
【符号の説明】
【0049】
1 光放出部材
1a 端面
2 発光点
10 励起光源
11 電極
15 反射ミラー
16 反射ミラー
20 μ−TASチップ
21 測定セル
22a、22b アパーチャ
25 チップホルダ
30 フォトダイオード
35 フィルタ
100 光放出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の吸収によって励起され、励起光より長波長の光を自然放出する発光点が存在する材料からなる棒状あるいはファイバ状の光放出部材と、該光放出部材に該光放出部材の外部から光照射する励起光源とからなり、
該光照射により、該光放出部材内の該発光点から自然放出される光のうち、該光放出部材の内部を伝播する光を該光放出部材の端面からインコヒーレント光として該光放出部材の外部に放出することを特徴とする光放出器。
【請求項2】
前記励起光源は低圧水銀ランプ、希ガスエキシマランプ、キセノンクロライドエキシマランプ、蛍光ランプ、発光ダイオードから選ばれた光源であることを特徴とする請求項1に記載の光放出器。
【請求項3】
前記光放出部材内に前記発光点として蛍光体粒子を分散させ、該蛍光体粒子の大きさが、前記自然放出される光の波長より小さいことを特徴とする請求項2に記載の光放出器。
【請求項4】
前記励起光源として直管状の光源を用い、該光源にファイバ状の光放出部材を巻き付けたことを特徴とする請求項2に記載の光放出器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−78381(P2007−78381A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263275(P2005−263275)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】