説明

光波距離計

【課題】 機械的な可動部として、波長の異なる光を測距光と参照光に振り分ける手段を用いるだけで、ノンプリズム測定とプリズム測定を行うこと。
【解決手段】 ノンプリズム測定時に、可視光レーザダイオード12aの光を、ダイクロイックミラー22、30、反射鏡32、34を介してターゲットと光ファイバ20に出射し、プリズム測定時には、赤外光レーザダイオード12bの光を、ダイクロイックミラー22に導入して赤外光用光ファイバ26側に反射させ、このファイバ26で発散した光を、ダイクロイックミラー30から反射鏡32、34を介して反射プリズム58と光ファイバ20に出射し、ターゲットからの反射光または光ファイバ26からの参照光を受光ダイオード42で測距信号または参照信号に変換し、両者の位相差を基にターゲットまでの距離を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調信号によって強度変調された測距光を測定光路と参照光路に送光し、測定光路上のターゲットで反射して戻ってきた反射光と参照光路からの光とを比較してターゲットまでの距離を求めることができる光波距離計に関する。
【背景技術】
【0002】
光波距離計としては、例えば、ターゲットに向けて照射された測距光(レーザ光線)による反射光と内部参照光路に照射された参照光との位相差を基にターゲットまでの距離を求めるようにした位相差方式の光波距離計が知られている。この種の光波距離計を用いて距離測定を行うに際しては、反射率の低い壁などをターゲットとするノンプリズム測定と、反射プリズムをターゲットとするプリズム測定が行われている。
【0003】
ノンプリズム測定(可視光)を行う場合、ターゲットの反射率が反射プリズムに比較して非常に小さいため、ターゲットに照射すべき測距光(レーザ光線)のパワーを非常に大きくするか、あるいは小さいパワーで測距光のビーム径を極力小さくし、ターゲットにおける単位面積当たりのエネルギー密度を大きくすることが必要である。しかし、照射すべき測距光の強度は安全性から制限される。この場合、ノンプリズム測定においては測定ポイントを特定する必要性と測定効率を考慮すると、測距光のビーム径を極力小さくすることが望ましい。一般にはターゲットの反射率はプリズムに比べて非常に低いので、ノンプリズム測定ではプリズム測定よりも測定距離が短くなる。
【0004】
一方、プリズム測定(非可視光)は、ノンプリズム測定よりもターゲットの反射率が高いので、長距離での測定が可能であるが、反射プリズムなどのターゲットを視準する際、大きなビーム径で照射する方がターゲットを捕らえ易くなるので、比較的大きなビーム広がりを有する測距光(レーザ光線)を用いることが望ましい。
【0005】
このように、ノンプリズム測定(可視光)では測距光のビーム径を比較的小さくする必要があるのに対して、プリズム測定(非可視光)では測距光のビーム径を比較的大きくする必要があるので、ノンプリズム測定用に構成された光波距離計をそのままプリズム測定用に用いることは好ましくない。一方、ノンプリズム測定用の光波距離計とプリズム測定用の光波距離計を別々に構成したのでは不経済となる。
【0006】
そこで、1台の光波距離計でノンプリズム測定とプリズム測定ができるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−212059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術においては、単一の光源を用いてノンプリズム測定とプリズム測定を行うに際して、ノンプリズム測定用の光路とプリズム測定用の光路を別々に設け、ノンプリズム測定時とプリズム測定時に光路切換手段を用いて光路の切り換えを行うようにしているため、光路切換手段を構成する機械的可動部の誤差などによっては光路等に狂いが生じたり、可動部の異常に伴って故障が発生したりすることが危惧される。
【0009】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、機械的な可動部として、波長の異なる光を測距光と参照光に振り分ける手段を用いるだけで、ノンプリズム測定とプリズム測定を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に係る光波距離計においては、波長の相異なる複数の光を変調信号で強度変調された光として発光する発光手段と、前記発光手段から一方の光を導入して第1の測距光または第1の参照光に振り分けるとともに、前記発光手段から他方の光を導入して第2の測距光または第2の参照光に振り分ける光分配手段と、前記光分配手段から第1の測距光を導入して測定光路に送光する第1の測距光送光手段と、前記光分配手段から第2の測距光を導入して発散させ、発散した第2の測距光を前記測定光路に送光する第2の測距光送光手段と、前記光分配手段から第1の参照光または第2の参照光を導入して参照光路に送光する参照光送光手段と、前記第1の測距光または前記第2の測距光の送光に伴って反射した反射光を受光したときに光電変換を行って測距信号を生成するとともに、前記参照光路から前記第1の参照光または第2の参照光を受光したときに光電変換を行って参照信号を生成する光電変換手段と、前記第1の測距光を基に得られた測距信号と前記第1の参照光を基に得られた参照信号とを比較してターゲットまでの距離を演算するとともに、前記第2の測距光を基に得られた測距信号と前記第2の参照光を基に得られた参照信号とを比較して前記ターゲットまでの距離を演算する演算手段とを備えて構成した。
【0011】
(作用)波長の異なる光を変調信号で強度変調された光として発光手段で発光しているときに、ノンプリズム測定を行うときには、発光手段から一方の光を導入して第1の測距光または第1の参照光に振り分け、第1の測距光を測定光路に送光し、第1の参照光を参照光路に送光し、第1の測距光の送光に伴って測定物(ターゲット)で反射した反射光、例えば、反射率の低い壁などで反射した反射光を光電変換して測距信号を生成するとともに、参照光路からの第1の参照光を光電変換して参照信号を生成し、生成した測距信号と参照信号とを比較してターゲットまでの距離を求めることで、ノンプリズム測定を行うことができる。一方、プリズム測定を行うに際して、発光手段から他方の光を導入して第2の測距光または第2の参照光に振り分け、第2の測距光を導入して発散させ、発散した第2の測距光を測定光路に送光し、第2の参照光を参照光路に送光し、第2の測距光の送光に伴って測定物(ターゲット)で反射した反射光、例えば、反射プリズムで反射した反射光を光電変換して測距信号を生成するとともに、参照光路からの第2の参照光を光電変換して参照信号を生成し、生成した測距信号と参照信号とを比較してターゲットまでの距離を演算することで、プリズム測定を行うことができる。すなわち、波長の異なる光を測距光と参照光に振り分ける光分配手段、例えば、光路切換えシャッタを除き、他に機械的な要素で構成された可動部を用いて、測距光を送光するための光路を切り換えることなく、ノンプリズム測定とプリズム測定を行うことができ、信頼性の向上に寄与することができる。
【0012】
請求項2に係る光波距離計においては、請求項1に記載の光波距離計において、前記発光手段は、前記一方の光を可視光で発光する第1の発光素子と、前記他方のを赤外光で発光する第2の発光素子を備えて構成した。
【0013】
(作用)一方の光を可視光を発生する第1の発光素子に、例えば、可視光レーザダイオードを用いることで、測距光(レーザ光線)のビーム径を極力小さくすることができ、より少ない光のパワーでノンプリズム測定を効率良く行うことができる。一方、他方の光を赤外光で発光する第2の発光素子に、例えば、赤外光レーザダイオードを用いることで、発散系の測距光を得ることができ、プリズム測定においてターゲット(反射プリズム)の視準をある程度ラフに行うことができ、測定作業が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る光波距離計によれば、信頼性の向上に寄与することができる。
【0015】
請求項2によれば、より少ない光のパワーでノンプリズム測定を効率良く行うことができるとともに、プリズム測定における測定作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示す光波距離計のノンプリズム測定時のブロック構成図、図2は、本発明の一実施例を示す光波距離計のプリズム測定時のブロック構成図、図3は、光源の他の実施例を示す要部構成図である。
【0017】
これらの図において、位相差方式の光波距離計10は、2波長発光レーザダイオード12、コリメートレンズ14、光路切換シャッタ16、コリメートレンズ18、光ファイバ20、ダイクロイックミラー22、コリメートレンズ24、赤外光用光ファイバ26、コリメートレンズ28、ダイクロイックミラー30、反射鏡32、34、対物レンズ36、ダイクロイックプリズム38、光量調整絞り40、受光ダイオード42、増幅・周波数変換器44、コントロールユニット46、可視光レーザダイオード用駆動回路48、赤外光レーザダイオード用駆動回路50を備え、視準光学系として対物レンズ36、合焦レンズ67、ダイクロイックプリズム38、焦点板68、接眼レンズ69とで構成されている。従って、ターゲット又は視準点をこの視準光学系で確認することができる。なお、焦点板68上には十字線が設けられ、十字線の交点が視準光学系の視準軸となっている。
【0018】
2波長発光レーザダイオード12は、光源として、可視光で発光する第1の発光素子としての可視光レーザダイオード12aと、赤外光で発光する第2の発光素子としての赤外光レーザダイオード12bを備えて構成されており、可視光レーザダイオード12aは、可視光レーザダイオード用駆動回路48を介してコントロールユニット46に接続され、赤外光レーザダイオード12bは、赤外光レーザダイオード用駆動回路50を介してコントロールユニット46に接続されている。
【0019】
コントロールユニット46は、各駆動回路48、50に対して変調信号100を出力する信号発生器としての機能を備えているとともに、駆動回路48を駆動するための選択信号102を駆動回路48に出力するとともに、駆動回路50を駆動するための選択信号104を駆動回路50に出力する信号処理器としての機能を備えて構成されている。変調信号100としては、例えば、周波数75MHz、250kHzなどの信号が用いられる。変調信号100が各駆動回路48、50に出力されているときに、コントロールユニット46から選択信号102が出力されて可視光LD用駆動回路48の駆動が行われたときには、可視光レーザダイオード12aから、変調信号100で強度変調された光、例えば、波長655nmのレーザ光線が発光されるようになっている。一方、変調信号100が出力されているときに、コントロールユニット46から選択信号104が出力されて赤外光LD用駆動回路50の駆動が行われたときには、赤外光レーザダイオード12bから、変調信号100で強度変調された光、例えば、波長780nmのレーザ光線が発光するようになっている。すなわち、可視光レーザダイオード12a、赤外光レーザダイオード12b、駆動回路48、50、コントロールユニット46は、波長の相異なる光を変調信号で強度変調された光として発光する発光手段として構成されている。2波長レーザダイオードは市販(例えば、ソニー:SLD6164、シャープ:GH30507T2A、ローム:RLD2WMUV2等)がある。
【0020】
可視光レーザダイオード12aまたは赤外光レーザダイオード12bの発光による光はコリメータレンズ14に導入され、ほぼ平行光線となって光路切換シャッタ16に入射するようになっている。光路切換シャッタ16は平行平面ガラス52を備えており、平行平面ガラス52はコリメートレンズ14の光軸54上に45°傾斜固定して配置されている。平行平面ガラス52は、コリメートレンズ14を通過した光(レーザ光線)の一部をコリメートレンズ18側に反射し、それ以外の光を光軸54に沿ってそのまま通過させるようになっている。この光路切換シャッタ16は、平行平面ガラス52で反射した光を遮蔽するように、平行平面ガラス52の中心部を回動中心として回動自在に配置されている。
【0021】
具体的には、前記平行平面ガラス52の性質を利用して、光路切換シャッタ16は、コリメートレンズ14とダイクロイックミラー22とを結ぶ光を通過させ、コリメートレンズ14とコリメートレンズ18とを結ぶ光を遮蔽する第1の位置(垂直位置)に回動したり、あるいは、コリメートレンズ14とダイクロイックミラー22とを結ぶ光を遮蔽し、コリメートレンズ14とコリメートレンズ18とを結ぶ光を通過させる第2の位置(90°位置)に回動したりするようになっている。
【0022】
この場合、光路切換シャッタ16は、可視光レーザダイオード12aが発光しているときに、第1の位置(垂直位置)にあるときには、可視光レーザダイオード12aの発光による光を第1の測距光としてダイクロイックミラー22側に振り分け、第2の位置(90°位置)にあるときには、可視光レーザダイオード12aの発光による光を第1の参照光としてコリメートレンズ18側に振り分けることになる。また、光路切換シャッタ16は、赤外光レーザダイオード12bが発光しているときに、第1の位置(垂直位置)にあるときには、赤外光レーザダイオード12bの発光による光を第2の測距光としてダイクロイックミラー22側に振り分け、第2の位置(90°位置)にあるときには、赤外光レーザダイオード12bの発光による光を第2の参照光としてコリメートレンズ18側に振り分けることになる。
【0023】
すなわち、光路切換シャッタ16と平行平面ガラス52は、可視光レーザダイオード12aの発光による光をコリメートレンズ14を介して導入し、導入した光(可視光)を第1の測距光と第1の参照光とに振り分けるとともに、赤外光レーザダイオード12aの発光による光をコリメートレンズ14を介して導入し、導入した光(赤外光)を第2の測距光と第2の参照光とに振り分ける光分配手段として構成されている。
【0024】
光路切換シャッタ16を通過した第1の測距光または第2の測距光はダイクロイックミラー22に入射するようになっている。ダイクロイックミラー22は、光路切換シャッタ16を通過した第1の測距光または第2の測距光のうち第1の測距光(可視光レーザダイオード12aの発光による測距光)のみを通過させ、第2の測距光(赤外光レーザダイオード12aの発光による測距光)をコリメートレンズ24側に反射させるようになっている。ダイクロイックミラー22を通過した第1の測距光は、ダイクロイックミラー22と同様に構成されたダイクロイックミラー30を通過した後、反射鏡32、34を介して測定光路56に向けて送光される。ダイクロイックミラー22および30は赤外光を反射し、可視光を通過させる作用を有している。なお、反射鏡34は対物レンズ36の後側に構成されていてもよい。
【0025】
すなわち、ダイクロイックミラー22、30、反射鏡32、34は、光路切換シャッタ16によって振り分けられた第1の測距光を測定光路56に送光する第1の測距光送光手段として構成されており、可視光レーザダイオード12aの発光に従った第1の測距光は、図1に示すように、測定光路56上に存在する反射率の低い壁57などをターゲットとして出射されるようになっている。この場合、ノンプリズム用測定に使用される。
【0026】
一方、光路切換シャッタ16を通過した第2の測距光(赤外光レーザダイオード12bの発光による測距光)は、ダイクロイックミラー22で反射し、レンズ24で集光され赤外光用光ファイバ26内に導入され、光ファイバ26内を通過する過程で拡散し、発光面積がレーザダイオード時の数μmから光ファイバの径である数100μmφの発光面積を有した光として、コリメートレンズ28を介し、ダイクロイックミラー30に向けて出射され、このダイクロイックミラー30で反射したあと反射鏡32、34を介して測定光路56に送光される。
【0027】
すなわち、ダイクロイックミラー22、コリメートレンズ24、赤外光用光ファイバ26、コリメートレンズ28、ダイクロイックミラー30、反射鏡32、34は、光路切換シャッタ16によって振り分けられた第2の測距光を測定光路56に送光する第2の測距光送光手段として構成されており、赤外光レーザダイオード12bの発光による第2の測距光は、図2に示すように、測定光路56上に存在する反射プリズム58をターゲットとして、反射プリズム58に向けて出射されるようになっている。この場合、プリズム用測定に使用される。
【0028】
赤外光用光ファイバ26は、コリメートレンズ24から入射された測距光(第2の測距光)を発散させ、発散した測距光をコリメートレンズ28に向けて出射するときに、測距光を発散系のビームとして出射するようになっている。
【0029】
具体的には、赤外光レーザダイオード12bの発光面の大きさを約3μm(≒3×1μm)とし、コリメートレンズ14の焦点距離を10mmとすると、コリメートレンズ14を通過した測距光の発散角は0°1′2″になる。また、赤外光レーザダイオード12bの代わりに、発光辺が約200μmの発光ダイオードを用い、コリメートレンズ14の焦点距離を100mmとすると、コリメートレンズ14を通過した測距光の発散角は0°6′53″になる。
【0030】
一方、赤外光用光ファイバ26として60μmのものを使用し、コリメートレンズ24の焦点距離を30mmとすると、光ファイバ26を通過した測距光の発散角は0°5′44″となる。すなわち、測距光を光ファイバ26を通過させることで、光源に発光ダイオードを用いたときとほぼ同じ発散角を得ることができる。
【0031】
可視光レーザダイオード12aまたは赤外光レーザダイオード12bの発光に伴う測距光を測定光路56に向けて送光し、この測距光が測定光路56上に存在する壁57あるいは反射プリズム58などのターゲットで反射したときには、この反射光は反射鏡34を通過したあと対物レンズ36を介してダイクロイックプリズム38に入射し、ダイクロイックプリズム38で反射したあと光量調整絞り40を通過して受光ダイオード42に入射するようになっている。視準光学系の構成は前述した如く、ダイクロイックプリズム38は可視光の一部と赤外光を受光ダイオード42に導くようにフィルタ膜を設けていて、合焦レンズ67でターゲット又は目標物に合焦させるものである。一般には測距・測角儀であるトータルステーションに組込まれて使用される。
【0032】
光量調整絞り40は、例えば、モータ40a、回転板40b、モータ40aの回転軸40cで構成されている。回転板40bには、例えば、光の透過率が相異なる複数のフィルタが円周方向に沿って配置されており、モータ40aの回転に伴っていずれかのフィルタがダイクロイックプリズム38と受光ダイオード42とを結ぶ光路中に挿入されるようになっている。すなわち、ダイクロイックプリズム38と受光ダイオード42とを結ぶ光路中に、回転板40bのいずれかのフィルタを測定距離に応じて挿入することで、受光ダイオード42に入射する反射光の光量が常に一定になるように、光量調整できるようになっている。なお、回転板40のフィルタは公知のフィルタが使用できる。
【0033】
受光ダイオード42には、ターゲットからの反射光の他に、光ファイバ20からの参照光が入射するようになっており、光ファイバ20には、コリメートレンズ18から参照光が入射するようになっている。具体的には、内部参照光路を構成する光ファイバ20に近接して配置されたコリメートレンズ18には、光路切換シャッタ16によって振り分けられた第1の参照光または第2の参照光が入射するようになっている。すなわち、コリメートレンズ18は、光路切換シャッタ16によって振り分けられた第1の参照光(可視光レーザダイオード12aの発光による参照光)または第2の参照光(赤外光レーザダイオード12bの発光による参照光)を内部参照光路としての光ファイバ20に送光する参照光送光手段として構成されている。
【0034】
受光ダイオード42は、ダイクロイックプリズム38を通過した反射光を受光したときに、反射光に対する光電変換を行って測距信号を生成し、一方、光ファイバ20を通過した第1の参照光または第2の参照光を受光したときに、各参照光に対する光電変換を行って参照信号を生成する光電変換手段として構成されており、受光ダイオード42の出力による測距信号または参照信号はそれぞれ増幅・周波数変換器44に出力されるようになっている。
【0035】
増幅・周波数変換器44は、測距信号または参照信号を増幅する増幅器を備えているとともに、測距信号または参照信号を、これらの信号よりも周波数の低い中間周波の測距信号または参照信号に変換するためのミキサー(混合器)や局部発振器を備えており、中間周波による測距信号または参照信号はそれぞれコントロールユニット46に供給されるようになっている。
【0036】
コントロールユニット46は、例えば、CPU、RAM、ROMなどを有するマイクロコンピュータや信号発生器などを備え、中間周波による測距信号または参照信号などを入力して各種の演算を行うように構成されている。例えば、コントロールユニット46は、可視光レーザダイオード12aの発光を基に生成された測距信号と参照信号との位相差を求め、この位相差を基に測定光路56上に存在する壁57などのターゲットまでの距離を演算する演算手段としての機能を備えているとともに、赤外光レーザダイオード12bの発光を基に生成された測距信号と参照信号との位相差を求め、この位相差を基に測定光路56上に存在する反射プリズム58などのターゲットまでの距離を演算する演算手段としての機能を備えて構成されている。
【0037】
上記構成による光波距離計10を用いてノンプリズム測定を行うに際して、図1に示すように、作業者がコントロールユニット46に対して、可視光レーザダイオード12aを発光させるための操作を行うと、コントロールユニット46から駆動回路48に選択信号102が出力され、可視光レーザダイオード12aが発光する。このとき、光路切換シャッタ16がコリメートレンズ14とダイクロイックミラー22とを結ぶ光を通過させ、コリメートレンズ14とコリメートレンズ18とを結ぶ光を遮蔽する第1の位置(垂直位置)に回動すると、可視光レーザダイオード12aの発光による光は、コリメートレンズ14、平行平面ガラス52、光路切換シャッタ16を通過したあと、測距光(第1の測距光)として、ダイクロイックミラー22、30、反射鏡32、34を介して測定光路56上に存在する壁57などのターゲットに向けて出射される。このとき、ターゲットで反射した反射光は、反射鏡34、対物レンズ36、ダイクロイックプリズム38、光量強制絞り40を通過したあと受光ダイオード42に入射する。
【0038】
次に、光路切換シャッタ16が切り換えられて、コリメートレンズ14とダイクロイックミラー22とを結ぶ光を遮蔽し、コリメートレンズ14とコリメートレンズ18とを結ぶ光を通過させる第2の位置(90°位置)に回動すると、可視光ダイオード12aの発光による光は、コリメートレンズ14、平行平面ガラス52、光路切換シャッタ16を介してコリメートレンズ18に参照光(第1の参照光)として導入され、導入された参照光は光ファイバ20を介して受光ダイオード42に入射する。
【0039】
受光ダイオード42に入射した反射光は測距信号に変換され、増幅・周波数変換器44で増幅されたあと中間周波の測距信号としてコントロールユニット46に入力される。一方、受光ダイオード42に入射した参照光は参照信号に変換され、増幅・周波数変換器44で増幅されたあと中間周波の参照信号としてコントロールユニット46に入力される。コントロールユニット46においては、入力された測距信号と参照信号との位相差が求められ、この位相差を基に壁57などのターゲットまでの距離が求められる。この場合、測距光(第1の測距光)はビーム径が極力小さくなってターゲットに出射されるため、ターゲットまでの距離を効率良く求めることができる。
【0040】
次に、プリズム測定を行うに際して、図2に示すように、作業者がコントロールユニット46に対して、赤外光レーザダイオード12bを発光させるための操作を行うと、コントロールユニット46から駆動回路50に選択信号104が出力され、赤外光レーザダイオード12bが発光する。このとき、光路切換シャッタ16がコリメートレンズ14とダイクロイックミラー22とを結ぶ光を通過させ、コリメートレンズ14とコリメートレンズ18とを結ぶ光を遮蔽する第1の位置(垂直位置)に回動すると、赤外光レーザダイオード12bの発光による光は、コリメートレンズ14、平行平面ガラス52、光路切換シャッタ16を通過したあと、測距光(第2の測距光)としてダイクロイックミラー22で反射し、コリメートレンズ24を通過したあと赤外光用光ファイバ26内に導入され、この光ファイバ26で発散したあと、コリメートレンズ28に入射する。発散した測距光はコリメートレンズ28を通過したあとダイクロイックミラー30で反射し、反射鏡32、34を介して測定光路56上に存在する反射プリズム58などのターゲットに向けて出射される。反射プリズム58で反射した反射光は、反射鏡34、対物レンズ36、ダイクロイックプリズム38、光量強制絞り40を通過したあと受光ダイオード42に入射する。
【0041】
次に、一定のタイミングで光路切換シャッタ16が切り換えられて、コリメートレンズ14とダイクロイックミラー22とを結ぶ光を遮蔽し、コリメートレンズ14とコリメートレンズ18とを結ぶ光を通過させる第2の位置(90°位置)に回動すると、赤外光レーザダイオード12bの発光による光は、コリメートレンズ14、平行平面ガラス52を通過したあとコリメートレンズ18に参照光(第2の参照光)として導入され、光ファイバ20を通過した参照光は受光ダイオード42に入射する。
【0042】
受光ダイオード42に入射した反射光は、測距信号に変換されたあと増幅・周波数変換器44で増幅されるとともに、中間周波の測距信号に変換されてコントロールユニット46に入力される。一方、受光ダイオード42に入射した参照光は参照信号に変換されたあと増幅・周波数変換器44で増幅されるとともに、中間周波の参照信号に変換されてコントロールユニット46に入力される。コントロールユニット46のおいては、入力された測距信号と参照光との位相差が求められ、この位相差を基に、測定光路56上に存在する反射プリズム58などのターゲットまでの距離が演算される。この際、赤外光レーザダイオード12bの発光に従った測距光は、赤外光用光ファイバ26で発散され、発散系の送光ビームとして反射プリズム58に向けて出射されるため、反射プリズム58をある程度ラフに視準しても、プリズム測定を正確に行うことができ、測定作業を容易に行うことができる。
【0043】
このように、本実施例においては、光路切換えシャッタ16以外に機械的要素で構成された可動部を用いて、測距光の光路の切換えを行っていないため、可動部によって光路に狂いが生じたり、あるいは可動部の異常に伴って故障が生じたりするのを防止することができ、信頼性の向上に寄与することができる。
【0044】
また、本実施例によれば、可視光レーザダイオード12aを用いることで、測距光(レーザ光線)のビーム径を極力小さくすることができ、ノンプリズム測定を効率良く行うことができるとともに、赤外光レーザダイオード12bを用いることで、発散系の測距光を得ることができ、プリズム測定においてターゲット58をある程度ラフに視準することができ、測定作業が容易となる。
【0045】
本実施例においては、可視光レーザダイオード12aと赤外光レーザダイオード12bを2波長発光レーザダイオード12として、一体にしたものについて述べたが、図3に示すように、可視光レーザダイオード12aと赤外光レーザダイオード12bをそれぞれ個別に配置し、可視光レーザダイオード12aと光路切換シャッタ16との間にコリメートレンズ14a、ダイクロイックミラー60を配置し、光路切換シャッタ16と赤外光レーザダイオード12bとの間にコリメートレンズ14b、ダイクロイックミラー60を配置する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例を示す光波距離計のノンプリズム測定時のブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施例を示す光波距離計のプリズム測定時のブロック構成図である。
【図3】光源の他の実施例を示す要部構成図である。
【符号の説明】
【0047】
10 光波距離計
12 2波長発光レーザダイオード
12a 可視光レーザダイオード
12b 赤外光レーザダイオード
14 コリメートレンズ
16 光路切換シャッタ
18 コリメートレンズ
20 光ファイバ
22 ダイクロイックミラー
24 レンズ
26 赤外光用光ファイバ
28 コリメートレンズ
30 ダイクロイックミラー
32、34 反射鏡
36 対物レンズ
38 ダイクロイックプリズム
40 光量調整絞り
42 受光ダイオード
44 増幅・周波数変換器
46 コントロールユニット
48、50 駆動回路
58 反射プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の相異なる複数の光を変調信号で強度変調された光として発光する発光手段と、前記発光手段から一方の光を導入して第1の測距光または第1の参照光に振り分けるとともに、前記発光手段から他方の光を導入して第2の測距光または第2の参照光に振り分ける光分配手段と、前記光分配手段から第1の測距光を導入して測定光路に送光する第1の測距光送光手段と、前記光分配手段から第2の測距光を導入して発散させ、発散した第2の測距光を前記測定光路に送光する第2の測距光送光手段と、前記光分配手段から第1の参照光または第2の参照光を導入して参照光路に送光する参照光送光手段と、前記第1の測距光または前記第2の測距光の送光に伴って前記測定光路で反射した反射光を受光したときに光電変換を行って測距信号を生成するとともに、前記参照光路から前記第1の参照光または第2の参照光を受光したときに光電変換を行って参照信号を生成する光電変換手段と、前記第1の測距光を基に得られた測距信号と前記第1の参照光を基に得られた参照信号とを比較してターゲットまでの距離を演算するとともに、前記第2の測距光を基に得られた測距信号と前記第2の参照光を基に得られた参照信号とを比較して前記ターゲットまでの距離を演算する演算手段とを備えてなる光波距離計。
【請求項2】
請求項1に記載の光波距離計において、前記発光手段は、前記一方の光を可視光で発光する第1の発光素子と、前記他方の光を赤外光で発光する第2の発光素子を備えてなることを特徴とする光波距離計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−127475(P2007−127475A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319302(P2005−319302)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000148623)株式会社ソキア (114)
【Fターム(参考)】