説明

光測距装置

【課題】測定値のばらつきによる影響を抑制し、測定精度を高めることが可能な光測距装置を提供する。
【解決手段】障害物センサ31は、2つの異なる周波数の変調光を交互に出射するように投光素子36を制御する出力制御部41と、受光素子37において受光された変調光に基づいて被投射体Tまでの測定距離を演算する距離演算部42と、2回の第1周波数の変調光によって演算された測定距離の差が、第1所定範囲内にあるかを判定する第1判定部43と、2回の第2周波数の変調光によって演算された測定距離の差が、第2所定範囲内にあるかを判定する第2判定部44と、第1判定部43と第2判定部44との判定結果に基づいて距離演算部42によって演算された測定距離の正誤を判定する総合判定部46とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被投射体に対して光を走査し、その走査領域からの反射光に基づいて被投射体までの距離を検出する光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送装置は、走行領域および作業領域における障害物等を検知するために、光測距装置が搭載されている。そして、光測距装置には、投光部から出射された光を回転ミラー等で反射して周囲に光軸を振り、障害物等によって反射された反射光を受信して、投光部が出射した出射光と受光部に受光された反射光との間の位相差から距離を検出する(AM変調方式(位相差方式))ものが利用されている。
【0003】
このようなAM変調方式の光測距装置は、変調周波数の1波長の距離を誤って0mと判断することがある。例えば、50MHzの周波数で変調を加えた場合、光の1波長は、約3mとなる。しかし、このレンジセンサの場合、3m近傍にステンレス板などの高反射率のものがあると、反射光のレベルが高いために高レベルの反射光を受光して0m近傍と距離演算し、3m近傍の反射物が極近くにあると判断することがある。
【0004】
このような誤動作を防ぐため、光を複数の周波数で変調して、各周波数の光で演算された距離が一致したときのみ距離演算値が適正であると判断することが行われている。例えば、特許文献1においては、投受光器を同一方向に向け、変調周波数を変えながら所定ステップ角ずつ回転させ、投光素子から出た変調光が被投射体で反射し受光素子に戻ったときの位相変化から距離を測定し、連続した2ステップの測定値の差が一定の許容範囲内にあるとき、正しい距離測定値として扱う障害物検知センサが開示されている。これによれば、変調周波数によって制限される測定可能距離よりも遠い位置にある被投射体からの反射光による測定値を、エラー値として排除することができる。
【特許文献1】特開2002−90454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の障害物検知センサでは、以下に示すような問題点を有している。
【0006】
すなわち、許容範囲外となる測定値を取り除くことが可能となるが、測定値のばらつきによる影響は解消することができず、測定値の精度を高めることはできない。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、測定値のばらつきによる影響を抑制し、測定精度を高めることが可能な光測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光測距装置は、投光部から照射した光の位相と、光が被投射体で反射され受光部において受光した際の光の位相との差から被投射体までの距離を測定する光測距装置であって、出力制御部と、距離演算部と、第1判定部と、第2判定部と、総合判定部とを備えている。出力制御部は、第1周波数および第2周波数の2つの異なる周波数の変調光を交互に出射するように投光部を制御する。距離演算部は、受光部において受光された変調光に基づいて被投射体までの測定距離を演算する。第1判定部は、2回以上の第1周波数の変調光に基づいて演算された測定距離の互いの差が、第1所定範囲内にあるかを判定する。第2判定部は、2回以上の第2周波数の変調光に基づいて演算された測定距離の互いの差が、第2所定範囲内にあるかを判定する。総合判定部は、第1判定部と第2判定部との判定結果に基づき、距離演算部に基づいて演算された測定距離の正誤(距離値を出力するか否か)を判定する。
【0009】
なお、ここでいう正しいと判定される測定距離とは、ある一つの変調光から演算される測定距離であってもよいし、第1周波数の変調光から演算された測定距離の平均値、第2周波数の変調光から演算された測定距離の平均値等であってもよい。
【0010】
4回以上の測定距離を用いることにより、第1の周波数あるいは第2の周波数の変調値から演算される測定距離のばらつきの影響を抑制することが可能となり、測定精度を高めることが可能となる。
【0011】
光測距装置は、2回以上の第1周波数の変調光に基づいて演算された測定距離の平均値と、2回以上の第2周波数の変調光に基づいて演算された測定距離の平均値との差を算出し、平均値の差が第3所定範囲内にあるかを判定する第3判定部をさらに備えており、総合判定部は、第3判定部の判定結果に基づいて判定を行うことが好ましい。
【0012】
これにより、第1の周波数あるいは第2の周波数の変調値から演算される測定距離のばらつきの影響をさらに抑制することが可能となり、測定精度を高めることができる。
【0013】
光測距装置は、第1判定部と第2判定部とは、それぞれ2回の連続する変調光に基づいて演算される測定距離を用いてそれぞれ判定することが好ましい。
【0014】
ここでは、2回の第1周波数の変調光によって演算された測定距離と、2回の第2周波数の変調光によって演算された測定距離との合計4回の測定距離に基づいて、測定距離の正誤判断を行っている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光測距装置によれば、測定値のばらつきによる影響を抑制し、測定精度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る障害物センサ(光測距装置)30,31を内蔵する天井走行車2について、図1〜図4を用いて説明すれば以下の通りである。
【0017】
[天井走行車2の構成]
天井走行車2は、クリーンルーム等において物品10を搬送する搬送装置であって、図1に示すように、天井空間等に配置された走行レール4に沿って、物品を搬送する。そして、地上側に配置されたロードポート8との間で物品10を受け渡しする。
【0018】
天井走行車2は、図1に示すように、台車12と、受電装置14と、フレーム16と、横送り部18と、θドライブ20と、昇降駆動部22と、昇降台24と、障害物センサ30,31とを備えている。
【0019】
台車12は、走行レール4内を走行する。受電装置14は、走行レール4に設けたリッツ線等から非接触給電などで受電し、かつ、リッツ線などを利用して通信を行う。フレーム16は、台車12から延びるシャフトで支持されている。横送り部18は、走行レール4に対して後述するθドライブ20、昇降駆動部22および昇降台24を横方向に移動させる。θドライブ20は、昇降駆動部22を水平面内で回動させる。昇降駆動部22は、昇降台24をベルトやロープ、ワイヤなどの吊持材により昇降させ、ロードポート8との間で物品10を受け渡しする。昇降台24は、搬送する物品10を保持する。
【0020】
天井走行車2は、さらに、落下防止カバー25,26と落下防止部28とを有している。落下防止カバー25,26は、天井走行車2の進行方向における前後に設けられている。落下防止部28は、落下防止カバー25,26から出没自在に配置されている。
【0021】
障害物センサ30は、走行方向前方の落下防止カバー25の下部に、障害物センサ31は、走行方向前方の落下防止カバー25の前面に配置されている。障害物センサ30は、ロードポート8へ向けて昇降台24を下降させる際に、ロードポート8へアクセスしようとする人やロードポート8の付近に不用意に置かれた物品等の障害物を検出する。障害物センサ31は、進行方向前方の所定の角度範囲内でかつ所定の距離内にある障害物を検出する。
【0022】
[障害物センサ31の構成]
図3は、本発明の一実施形態に係る障害物センサ31の全体構成を示す制御機能ブロック図である。なお、障害物センサ30についても同様の構成であるので、ここではその説明を省略する。
【0023】
障害物センサ31は、投光部から照射した光の位相と、前記光が被投射体で反射され受光部において受光した際の前記光の位相との差から前記被投射体までの距離を測定し、後述する方法により測定距離の精度を高めている。そして、障害物センサ31は、主に、投光回路38と、投受光器32と、受光回路39と、制御部40とを備えている。投受光器32は、投光素子(投光部)36と、受光素子(受光部)37と、投光ミラー34と、受光ミラー35と、パルスモータ33とを有している。
【0024】
投光回路38は、後述する出力制御部41により制御されて発光信号を発生し、これらの発光信号を、投光素子36に入力させる。投光素子36は、投光回路38からの信号に基づいて高周波パルス光を照射する。投光ミラー34は、投光素子36より出射される出射光を被投射体Tに向けて反射させる。受光ミラー35は、被投射体Tからの入射光を受光素子37に向けて反射させる。パルスモータ33は、投光ミラー34と受光ミラー35とを同一方向に向けて同時に回転させる。受光素子37は、被投射体Tで反射した反射光を受光すると共に、その反射光を電気信号である受光信号に変換し、変換した受光信号を受光回路39に入力させる。受光回路39は、入力された受光信号を増幅すると共に、発光信号と受光信号とにおける位相変化を検出する。そして、受光回路39は、位相変化を電気信号である検出信号に変換し、その検出信号を制御部40に入力させる。
【0025】
制御部40は、投光回路38、投受光器32、受光回路39の各種制御、測定距離の演算、測定距離の判定等を行う機能ブロックを有するマイクロコンピュータである。そして、制御部40は、機能ブロックとしての出力制御部41と、距離演算部42と、第1判定部43と、第2判定部44と、第3判定部45と、総合判定部46とを備えている。
【0026】
出力制御部41は、30MHz(第1周波数)および34MHz(第2周波数)の2つの異なる周波数の変調光を投光素子36が交互に出射するように投光回路38を制御する。
【0027】
距離演算部42は、受光回路39より入力される検出信号に基づいて被投射体Tまでの測定距離を演算する。
【0028】
第1判定部43は、連続する少なくとも2回の30MHzの変調光に基づいて、距離演算部42により演算された測定距離の互いの差が、第1所定範囲内にあるかを判定する。本実施形態においては、2回の30MHzの変調光によって演算された測定距離の差が、20cmの範囲内にあるかどうかを判定する。
【0029】
第2判定部44は、連続する少なくとも2回の34MHzの変調光に基づいて、距離演算部42により演算された測定距離の互いの差が、第2所定範囲内にあるかを判定する。本実施形態においては、2回の34MHzの変調光によって演算された測定距離の差が、20cmの範囲内にあるかどうかを判定する。
【0030】
第3判定部45は、少なくとも2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の平均値と、少なくとも2回の34MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の平均値との差を算出し、その平均値の差が14cmの範囲にあるかどうかを判定する。本実施形態においては、2回の30MHzの変調光によって演算された測定距離の平均値と、2回の34MHzの変調光によって演算された測定距離の平均値との差を算出し、その平均値の差が、14cmの範囲にあるかどうかを判定する。
【0031】
総合判定部46は、第1判定部43、第2判定部44および第3判定部45の判定結果に基づいて、距離演算部42によって演算された測定距離の正誤、すなわち、距離値を出力し、この距離を用いて障害物の存否判定を行うか否かを判定する。本実施形態においては、第1判定部43が、30MHzの変調光に基づいて演算された2回分の測定距離の差が20cmの範囲内にあると判定し、第2判定部が、34MHzの変調光に基づいて演算された2回分の測定距離の差が20cmの範囲内にあると判定し、30MHzの変調光に基づいて演算された2回分の測定距離の平均値と34MHzの変調光に基づいて演算された2回分の測定距離の平均値との差が14cmの範囲内にあると判定した場合、距離演算部42において演算された測定距離D1〜D4を用いて距離値を計算し出力する。
【0032】
[障害物センサ31の動作の説明]
ここでは、障害物センサ31の動作を図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
ステップS1においては、障害物センサ31の初期化を行う。具体的には、内部データを初期化する。
【0034】
ステップS2においては、障害物センサ31が、Δθ(例えば、0.18度)の1回転ステップ毎に距離測定を行いながら、例えば、160度の測定範囲の距離測定を行う。そして、制御部40が、160度の範囲内の距離測定かどうかを判定する。ここで、160度の範囲内の測定を行っていると判断した場合にはステップS3に移行し、160度の範囲外の測定を行っていないと判断した場合には、もう一度ステップS2を繰り返す。
【0035】
ステップS3においては、出力制御部41による制御に従って投光回路38が、投光素子36から出力される変調光の周波数を切り換える。具体的には、30MHz(第1周波数)および34MHz(第2周波数)の周波数の変調光が、1ステップ回転毎に交互に出力されるように切換えられる。
【0036】
ステップS4においては、距離演算部42が、受光回路39から入力される検出信号に基づいて被投射体Tまでの距離を演算する。具体的には、距離演算部42は、投光回路38が検出した投光素子36から照射した変調光の位相と、変調光が被投射体Tで反射され受光素子37において受光した際の変調光の位相との差、すなわち、位相変化に基づいて被投射体Tまでの距離を演算する。そして、演算された被投射体Tまでの距離が、記憶部47に記憶される。
【0037】
本実施形態においては、以下のステップS5〜ステップS12において、ステップS4において演算された測定距離に誤りがないかを判定する機能を有している。ここでは、ステップS4において受光された30MHzの変調光における測定距離を測定距離D1、測定距離D1を演算する1回前に34MHzの変調光によって演算された測定距離を測定距離D2、測定距離D1を演算する2回前に30MHzの変調光によって演算された測定距離を測定距離D3、測定距離D1を演算する3回前に34MHzの変調光によって演算された測定距離を測定距離D4とする4つの測定距離を使用して正誤判定を行う方法について具体的に説明する。
【0038】
なお、変調光の周波数を変えながら1ステップ回転毎に行われる測定は、測定対象位置が移動するので、測定距離は厳密には一致しない。しかし、測定対象位置は、被投射物Tの外形に沿って移動するので、隣接する複数の点を比較しても距離の変化は少ない。本位相差方式の距離測定は、光波が往復する距離2Lが、その光波の1波長λよりも小さいという条件で測定が可能であり、変調周波数fによって測定不可能になる上限距離Lmが決まるという原理を利用したものである。すなわち、光の速度をC(m/s)とすると、Lm=C/2fであり、例えば、30MHzと34MHzとで測定を行うと、それぞれ上限距離Lmは、5.0m、4.4mとなる。ここで両者を比較すると、図5に示すように、30MHzでは、5.0mに達した時に測定距離が0m、34MHzでは、4.4mに達した時に測定距離が0mとなる。このため、測定距離Lが、4.4m≦距離L<5.0mの位置では、差が4.4m、5.0m以上の位置では、0.6mの差が生じる。本位相差方式の距離測定は、この関係を利用することにより、測定可能範囲の測定値のみを正しいデータとして取り出している。
【0039】
ステップS5においては、第1判定部43が、連続する2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の差が、20cm以内(第1所定範囲内)に納まっているかどうかを判定する。具体的には、ステップS4において演算された測定距離D1と測定距離D3との差が、20cm以内に納まっているかどうかを判定する。そして、第1判定部43が、連続する2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の差が、20cm以内にあると判定した場合はステップS6に移行し、20cm以内にないと判定した場合はステップS12に移行する。
【0040】
ステップS6においては、第1判定部43が、ステップS5における測定距離D1,D3の平均値Da1を計算する。
【0041】
ステップS7においては、第2判定部44が、連続する2回の34MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の差が、20cm以内(第2所定範囲内)に納まっているかどうかを判定する。具体的には、ステップS4において演算された測定距離D2と測定距離D4との差が、20cm以内に納まっているかどうかを判定する。そして、第2判定部44が、連続する2回の34MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の差が、20cm以内にあると判定した場合はステップS8に移行し、20cm以内にないと判定した場合はステップS12に移行する。
【0042】
ステップS8においては、第2判定部44が、ステップS7における測定距離D2,D4の平均値Da2を計算する。
【0043】
ステップS9においては、第3判定部45が、連続する2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の平均値と、連続する2回の34MHzの変調光に基づいて演算された測定距離の平均値との差を算出し、これらの平均値の差が14cm(第3所定範囲)以内に納まっているかどうかを判定する。具体的には、ステップS6において演算された測定距離D1,D3の平均値Da1と、ステップS8において演算された測定距離D2,D4の平均値Da2との差が、14cm以内に納まっているかどうかを判定する。そして、第3判定部45が、平均値Da1と平均値Da2との差が14cm以内にあると判定した場合はステップS10に移行し、14cm以内にないと判定した場合はステップS12に移行する。
【0044】
ステップS10においては、第3判定部45が、ステップS7における測定距離D1,D3の平均値Da1と、測定距離D2,D4の平均値Da2との平均値Daを計算する。
【0045】
ステップS11においては、総合判定部46が、ステップS10において計算された平均値Daの正誤を判定する。具体的には、総合判定部46は、第1判定部43、第2判定部44および第3判定部45の判定結果に基づいてステップS10において計算された平均値Daを距離値として出力するかどうかを判定する。ここでは、平均値Daを距離値として出力し、障害物の存否判定を行っている。
【0046】
ステップS12においては、総合判定部46が、測定距離D1〜D4の正誤を判定する。具体的には、総合判定部46は、第1判定部43、第2判定部44および第3判定部45の判定結果に基づいて測定距離D1〜D4を距離値として出力するかどうかを判定する。ここでは、総合判定部46は、測定距離D1〜D4を距離値として出力しないように判定し、このとき、障害物は無いと判断している。
【0047】
そして、上記ステップS3〜ステップS12の判定は、繰り返し行われる。
以上、本実施形態の障害物センサ31は、30MHzおよび34MHzの2つの異なる周波数の変調光を交互に出射するように投光素子36を制御する出力制御部41と、受光素子37において受光された変調光に基づいて被投射体Tまでの測定距離を演算する距離演算部42と、2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離D1,D3の差が、20cm以内(第1所定範囲)にあるかを判定する第1判定部43と、2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離D2,D4の差が、20cm以内(第2所定範囲)にあるかを判定する第2判定部44と、第1判定部43と第2判定部44との判定結果に基づき、距離演算部42によって演算された測定距離D1〜D4の正誤を判定する総合判定部46とを備えている。これにより、各周波数の変調値から演算される測定距離のばらつきの影響を抑制することができるので、進行方向前方の所定の角度範囲内でかつ所定の距離内にある障害物を精度良く検出することが可能となる。この結果、天井走行車2を運転するにあたって、天井走行車2における走行および停止等の判断を的確にできるようになる。
【0048】
さらに、本実施形態の障害物センサ31では、連続する2回の30MHzの変調光に基づいて演算された測定距離D1,D3の平均値Da1と、連続する2回の34MHzの変調光に基づいて演算された測定距離D2,D4の平均値Da2との差を算出し、その平均値の差が14cm以内(第3所定範囲)に納まっているかどうかを判定する第3判定部45を備えている。これにより、測定距離のばらつきの影響をさらに抑制することが可能となるので、測定精度をより高めることができる。
【0049】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
(A)
上記実施形態の障害物センサ31では、ステップS5において、第1判定部43が、連続する2回の30MHzの変調光(測定距離D1と測定距離D3)によって演算された測定距離の差が、20cm以内に納まっているかどうかを判定し、ステップS7において、第2判定部44が、連続する2回の34MHzの変調光によって演算された測定距離(測定距離D2と測定距離D4)の差が、20cm以内に納まっているかどうかを判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、ステップS5,S7において第1判定部,第2判定部は、連続する3回以上の測定距離のそれぞれの差が所定範囲に納まっているかを判定してもよい。また、連続するものに限らなくてもよい。この場合、測定回数を増やせば増やすほど測定精度および測定距離の正誤判断の精度は向上するが、それと比例して制御部における処理時間が長くなるので、制御部の処理スペックや天井走行車の走行速度等を考慮して最適な測定回数を設定することが望ましい。
【0052】
(B)
上記実施形態の障害物センサ31では、測定距離を正誤判定するための第1判定部43および第2判定部44の測定回数をそれぞれ同じ2回とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、第1判定部においては2回、第2判定部においては3回等、第1判定部における判定と第2判定部における判定の際の測定回数は互いに異なっていてもよい。
【0054】
(C)
上記実施形態の障害物センサ31では、出力制御部41が、30MHzおよび34MHzの2つの異なる周波数の変調光を交互に出射するように投光素子36を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
例えば、出力制御部は、50MHzおよび43MHzの2つの異なる周波数の変調光を交互に出射するように投光素子を制御してもよい。この場合も、上記の実施形態に係る障害物センサ31と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(D)
上記実施形態の障害物センサ31では、第1判定部43、第2判定部44、第3判定部45がそれぞれ行う判定をステップS5からステップS9の順番で実行する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
(E)
上記実施形態の障害物センサ31では、第1判定部43、第2判定部44、第3判定部45の全てにおける各判定値(測定距離D1と測定距離D3との差、測定距離D2と測定距離D4との差、測定距離D1,D3の平均値Da1と、測定距離D2,D4の平均値Da2との差)が各所定範囲内にあると判定した場合に、測定距離D1が正しいと判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
例えば、総合判定部は、第1判定部と第2判定部における各値が各所定範囲内にあると判定したとき測定距離は正しいと判定してもよい。また、総合判定部は、第1判定部および第2判定部において各判定値が所定範囲にはないと判定した場合であっても、第3判定部において判定値が所定範囲内にあると判定したときには測定距離が正しいと判定してもよい。
【0059】
(F)
上記実施形態の障害物センサ31では、総合判定部46が、第1判定部43の判定結果に基づいて正誤判定を実行し、第2判定部44の判定結果に基づいて正誤判定を実行し、第3判定部45の判定結果に基づいて正誤判定を実行するという逐次実行型の例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
例えば、総合判定部が、第1判定部、第2判定部、第3判定部のそれぞれが判定を行った後に総合的に正誤判定するといった方法であってもよい。
【0061】
(G)
上記実施形態の障害物センサ31では、制御部40における機能ブロックとして、出力制御部41、距離演算部42、第1判定部43、第2判定部44、第3判定部45、総合判定部46、記憶部47を構成する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
例えば、マイクロコンピュータに含まれている機能ブロックとしてではなく、上述した各ステップを含む測定距離の正誤判定方法をコンピュータに実行させる正誤判定プログラムとして本発明を実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、測定精度を向上させた光測距装置を提供することが可能になるため、例えば、無人走行車や移動ロボット等に搭載される光測距装置として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る障害物センサを含む天井走行車の側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る障害物センサを含む天井走行車の前方側面図。
【図3】図1に含まれる障害物センサの制御機能ブロック図。
【図4】図1に含まれる障害物センサにおける正誤判定のフローチャート。
【図5】位相検出による距離測定の原理を説明するブロック図。
【符号の説明】
【0065】
2 天井走行車
4 走行レール
8 ロードポート
10 物品
12 台車
14 受電装置
16 フレーム
18 横送り部
20 θドライブ
22 昇降駆動部
24 昇降台
25 落下防止カバー
28 落下防止部
30,31 障害物センサ(光測距装置)
32 投受光器
33 パルスモータ
34 投光ミラー
35 受光ミラー
36 投光素子(投光部)
37 受光素子(受光部)
38 投光回路
39 受光回路
40 制御部
41 出力制御部
42 距離演算部
43 第1判定部
44 第2判定部
45 第3判定部
46 総合判定部
47 記憶部
T 被投射体
a 検知エリア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光部から照射した光の位相と、前記光が被投射体で反射され受光部において受光した際の前記光の位相との差から前記被投射体までの距離を測定する光測距装置であって、
第1周波数および第2周波数の2つの異なる周波数の変調光を交互に出射するように前記投光部を制御する出力制御部と、
前記受光部において受光された前記変調光に基づいて前記被投射体までの測定距離を演算する距離演算部と、
2回以上の前記第1周波数の前記変調光に基づいて演算された前記測定距離の互いの差が、第1所定範囲内にあるかを判定する第1判定部と、
2回以上の前記第2周波数の前記変調光に基づいて演算された前記測定距離の互いの差が、第2所定範囲内にあるかを判定する第2判定部と、
前記第1判定部と前記第2判定部との判定結果に基づき、前記距離演算部によって演算された前記測定距離の正誤を判定する総合判定部と、
を備えている、光測距装置。
【請求項2】
2回以上の前記第1周波数の前記変調光に基づいて演算された前記測定距離の平均値と、2回以上の前記第2周波数の前記変調光に基づいて演算された前記測定距離の平均値との差を算出し、前記平均値の差が第3所定範囲内にあるかを判定する第3判定部をさらに備えており、
前記総合判定部は、前記第3判定部の判定結果に基づいて前記測定距離の正誤判定を行う、
請求項1に記載の光測距装置。
【請求項3】
前記第1判定部と前記第2判定部とは、それぞれ2回の連続する前記変調光に基づいて演算される前記測定距離を用いてそれぞれ判定する、
請求項1または2に記載の光測距装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−14502(P2010−14502A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173936(P2008−173936)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】