説明

光源制御装置及び方法並びにプロジェクター

【課題】大幅なコストの上昇を伴わずに簡易な構成で高分解能の調光を実現することができる光源制御装置等を提供する。
【解決手段】光源制御装置1は、予め定められた調光制御周期を基準として固体光源アレイ11を調光するための調光制御信号S2を生成する調光制御信号生成部2aと、固体光源11aを制御するデューティー比を調光制御信号S2に応じて求め、調光制御信号S2の変化が生ずる場合には、変化が生ずる時点の前又は後における少なくとも1つの調光制御周期で、変化が生ずる時点の前後におけるデューティー比を混在させるデューティー比算出処理部2bと、デューティー比算出処理部2bで求められたデューティー比で固体光源11aを発光及び非発光とするPWM信号S11〜S14を生成して固体光源11aの駆動制御を行う駆動制御部(PWM信号生成部3及び光源駆動部4a〜4d)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源制御装置及び方法並びにプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精細な画像を大画面に表示することが可能な薄型の画像表示装置の研究開発が盛んに行われている。このような画像表示装置の一種に、光源、光変調装置、及び投射光学系を備えており、光源から射出された光を光変調装置で変調し、変調した光(画像光)を投射光学系でスクリーンに投射することにより、スクリーン上に画像を表示するプロジェクターがある。
【0003】
プロジェクターは、投射光学系等の光学系で生ずる光漏れや迷光が原因で十分なコントラストが得られず、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた画像表示装置に比べて表示可能な階調範囲(ダイナミックレンジ)が狭くなる傾向がある。また、プロジェクターは、スクリーンに画像光を投射することにより画像を表示するものであるため、周辺の照明環境に応じて、明部や暗部の階調つぶれやコントラストの低下等が引き起こされて表示画像の視認性が低下し、或いは、表示画像が明るすぎてしまうことがある。
【0004】
このような不具合を改善すべく、光源から射出される光を表示すべき画像に応じて調光するプロジェクターが開発されている。ここで、光源から射出される光を調光している最中に急激な輝度変化が生ずると、ユーザーにちらつきが視認されて違和感を与えてしまう可能性がある。以下の特許文献1には、単位時間(例えば1/30秒)当たりの輝度変化に制限を設けることでちらつきの発生を抑止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−107009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特許文献1に開示された技術を用いてちらつきの発生を防止する場合において、全体的に暗い画像を表示するときには、全体的に明るい画像を表示するときよりも高分解能の制御が求められる。例えば、単位時間当たりの輝度変化が5%に制限されている場合を考える。かかる場合に、あるフレームにおける表示画像輝度が100%であるとき(例えば、白色画像が表示されているとき)には、次のフレームで輝度を95〜100%にする調光が許容される。これに対し、あるフレームにおける表示画像輝度が1%であるとき(例えば、黒画像が表示されているとき)には、次のフレームで輝度を0.95〜1%にする調光が許容される。
【0007】
つまり、上記の特許文献1に開示された技術では、先のフレームにおける表示画像輝度を基準として次のフレームの輝度変化が5%以内に制限されるため、先のフレームにおける表示画像輝度が低ければ許容される輝度変化の絶対量が小さくなり高分解能の制御が求められることになる。ここで、調光に用いる制御用ルックアップテーブル(LUT)を表示画像輝度の高低に応じてそれぞれ用意すれば、表示画像輝度が高い場合の低分解能の制御と、表示画像輝度が低い場合に必要となる高分解能の制御との双方を実現することができるとも考えられる。しかしながら、制御用ルックアップテーブルが増大すると、制御が複雑化するとともに、それらの管理の手間も増えるため、コストの上昇を招いてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大幅なコストの上昇を伴わずに簡易な構成で高分解能の調光を実現することができる光源制御装置及び方法、並びに、当該装置を備えることで周辺の照明環境に応じた画像を表示することが可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光源制御装置は、固体光源を有する光源装置の駆動制御を行う光源制御装置であって、予め定められた調光制御周期を基準として前記光源装置を調光するための調光制御信号を生成する生成部と、前記固体光源の発光量を制御する発光制御量を前記調光制御信号に応じて求め、前記調光制御信号の変化が生ずる場合には、変化が生ずる時点の前又は後における少なくとも1つの調光制御周期で、変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行う算出処理部と、前記算出処理部で求められた発光制御量で前記固体光源を発光させる制御信号を生成して前記固体光源の駆動制御を行う駆動制御部とを備えることを特徴としている。
この発明によると、生成部によって生成された調光制御信号に応じた発光制御量を求め、調光制御信号の変化が生ずる場合には、変化が生ずる時点の前又は後における少なくとも1つの調光制御周期で、変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させて固体光源を発光及び非発光としているため、大幅なコストの上昇を伴わずに簡易な構成で高分解能の調光を実現することができる。
また、本発明の光源制御装置は、前記算出処理部が、前記調光制御信号と前記発光制御量との関係を予め規定しているテーブルを用いて前記調光制御信号に応じた発光制御量を求めることを特徴としている。
この発明によると、調光制御信号に応じた発光制御量を求めるために1つのテーブルのみが用いられるため、テーブルの増加による制御の複雑化や管理の手間の増大を招くことはない。
また、本発明の光源制御装置は、前記算出処理部が、前記調光制御信号が予め定められた閾値以下である場合に、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行うことを特徴としている。
また、本発明の光源制御装置は、前記固体光源の駆動制御を行う駆動制御周期が、前記調光制御周期よりも短い周期に設定されており、前記算出処理部が、前記調光制御信号に応じた発光制御量を前記駆動制御周期毎に求め、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後で求めた発光制御量を有する駆動制御周期が所定の割合で前記調光制御周期に含まれるように、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行うことを特徴としている。
或いは、本発明の光源制御装置は、前記光源装置が、複数の固体光源を備えており、前記算出処理部が、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後で求められた発光制御量で駆動される固体光源の数の割合が所定の割合となるように、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行うことを特徴としている。
本発明の光源制御方法は、固体光源を有する光源装置の駆動制御を行う光源制御方法であって、予め定められた調光制御周期を基準として前記光源装置を調光するための調光制御信号を生成し、前記固体光源の発光量を制御する発光制御量を前記調光制御信号に応じて求め、前記調光制御信号の変化が生ずる場合には、変化が生ずる時点の前又は後における少なくとも1つの調光制御周期で、変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行い、求められた発光制御量で前記固体光源を発光させる制御信号を生成して前記固体光源の駆動制御を行うことを特徴としている。
本発明のプロジェクターは、光源装置と、表示すべき画像の画像信号に基づいて該光源装置からの光を変調する光変調装置と、該光変調装置で変調された光をスクリーンに投射する投射光学系とを備えるプロジェクターにおいて、前記光源装置を制御する上記の何れかに記載の光源制御装置を備えることを特徴としている。
この発明によると、大幅なコストの上昇を伴わずに簡易な構成で高分解能の調光を実現することができる光源制御装置を備えており、固体光源を高分解能で調光することができるため、先のフレームの輝度が低い場合であっても、先のフレームからの輝度変化が規定値(例えば、5%)内に収まるような調光を実現することができ、この結果として周辺の照明環境に応じたちらつきのない画像を表示することができる。
また、本発明のプロジェクターは、前記光源装置から射出されるべき光の光量である目標光量を示す信号を前記画像信号から求める目標光量算出部を備えており、前記光源制御装置に設けられた前記生成部は、前記目標光量を示す信号に基づいて前記調光制御信号を生成することを特徴としている。
また、本発明のプロジェクターは、前記目標光量算出部で求められた前記目標光量に応じて、前記光変調装置の変調に用いられる画像信号の伸張処理を行う伸張処理部を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態による光源制御装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態において用いられる制御用テーブルの一例を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態において、目標光量信号と射出される光の明るさ及びその変化率との関係を説明するための図である。
【図4】本発明の第1実施形態による光源制御方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態で用いられる目標光量信号及び調光制御信号の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態において行われるデューティー比を混在させる処理を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態において行われるデューティー比を混在させる処理を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態によるプロジェクターの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光源制御装置及び方法並びにプロジェクターについて詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0012】
《光源制御装置》
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による光源制御装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の光源制御装置1は、デューティー比決定部2、PWM信号生成部3(駆動制御部)、及び光源駆動部4a〜4d(駆動制御部)を備えており、外部から入力される目標光量信号S1に基づいて固体光源アレイ11(光源装置)を駆動制御する。
【0013】
ここで、上記の目標光量信号S1は、固体光源アレイ11から射出されるべき光の光量である目標光量を示す信号であって、例えば「0」〜「255」の整数値をとり得る8ビットの信号である。尚、目標光量信号S1は、固体光源アレイ11から射出されるべき光の明るさを示す信号であっても良い。また、目標光量信号S1のビット数は8ビットに限られる訳ではなく、任意のビット数に設定することが可能である。
【0014】
固体光源アレイ11は、図1に示す通り、略矩形形状の基板SB上に面状(マトリクス状)に配列された複数の固体光源11aを備えており、光源制御装置1によって駆動制御されることにより例えば青色光を射出する。基板SBは、固体光源素子11aが搭載される略矩形形状の板状部材であり、固体光源素子11aは、例えば発光強度のピークが約460nmである青色光を射出する半導体レーザーである。
【0015】
図1に示す例では、24個の固体光源11aが基板SB上に6行4列のマトリクス状に配列されており、同じ列に配置された固体光源11aが直列接続されている。つまり、符号C1が付された列に配置された6個の固体光源11aが直列接続され、符号C2が付された列に配置された6個の固体光源11aが直列接続されている。符号C2,C4が付された列に配列された固体光源11aについても同様である。
【0016】
このように、固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aは、列C1〜C4毎に設けられた6個を単位として4つのブロックに区分されており、このブロックを単位として(つまり、列C1〜C4毎に)発光及び非発光が制御可能である。尚、これら4つのブロックについて、発光及び非発光を同じように制御すれば、固体光源アレイ11に設けられた固体光源11aの全てを同じように発光させ、非発光とさせることが可能である。また、固体光源アレイ11に設けられる固体光源11aの数は、必要となる光量に応じて適宜増減することが可能である。
【0017】
光源制御装置1に設けられるデューティー比決定部2は、調光制御信号生成部2a(生成部)及びデューティー比算出処理部2b(算出処理部)を備えており、目標光量信号S1に基づいてデューティー比(発光制御量)を決定する。このデューティー比は、固体光源アレイ11の駆動制御を行う駆動制御周期内における固体光源11aの発光時間と非発光時間との比を示すものである。尚、上記の駆動制御周期は、光源制御装置1による固体光源アレイ11のPWM制御周期であって、PWM制御周波数(数百Hz程度)の逆数で示される長さを有する期間である。
【0018】
調光制御信号生成部2aは、目標光量信号S1に基づいて、予め定められた調光制御周期を基準として固体光源アレイ11を調光するための調光制御信号S2を生成する。この調光制御信号S2は、目標光量信号S1の急激な変化を制限することによりちらつきの発生を防止するための信号でもあり、例えば目標光量信号S1と同様に、「0」〜「255」の整数値をとり得る8ビットの信号である。ここで、上記の調光制御周期は、固体光源アレイ11の調光を行う基準となる周期であって、例えば1/60秒の長さを有する期間である。尚、調光制御周期は、上記の駆動制御周期よりも長い周期に設定されている(換言すると、駆動制御周期は、調光制御周期よりも短い期間に設定されている)。
【0019】
具体的に、調光制御信号生成部2aは、目標光量信号S1が予め設定された閾値よりも大である場合には、目標光量信号S1の最小単位「1」に応じた光量を調光制御周期毎に変化させる調光制御信号S2を生成する。これに対し、目標光量信号S1が上記の閾値以下である場合には、目標光量信号S1の最小単位「1」に応じた光量を複数の調光制御周期毎(例えば、4周期毎)に変化させる調光制御信号S2を生成する。
【0020】
つまり、目標光量信号S1が急激に変化したとしても、調光制御信号生成部2aによって緩やかに変化する調光制御信号S2が生成されることになる。しかも、目標光量信号S1が閾値以下の場合には、目標光量信号S1が閾値よりも大である場合よりも緩やかに変化する調光制御信号S2が生成されることになる。尚、目標光量信号S1が「0」〜「255」の整数値をとり得る8ビットの信号である場合には、上記の閾値は「109」に設定される。
【0021】
デューティー比算出処理部2bは、固体光源アレイ11の駆動制御を行う駆動制御周期内におけるデューティー比を、調光制御信号生成部2aで生成された調光制御信号S2に応じて求める。このデューティー比算出処理部2bは、調光制御信号生成部2aで生成される調光制御信号S2とデューティー比との関係を予め規定している制御用テーブル(ルックアップテーブル:LUT)TBを備えており、この制御用テーブルTBを用いて調光制御信号S2に応じたデューティー比を求める。
【0022】
図2は、本発明の第1実施形態において用いられる制御用テーブルの一例を示す図であって、(a)は制御用テーブルの内容を示す図であり、(b)は制御用テーブルで規定される調光制御信号及びデューティー比と明るさとの関係を説明するための図である。図2(a)に示す通り、制御用テーブルTBは、調光制御信号S2の各値毎にデューティー比を示す値が対応付けられたテーブルである。
【0023】
図2(a)に示す調光制御信号S2は「0」〜「255」の整数値をとり得る8ビットの値で表されており、デューティー比は「0」〜「1023」の値をとり得る10ビットの値で表されている。尚、デューティー比のビット数は、PWM信号生成部3の制御分解能に応じて設定され、デューティー比のビット数を調光制御信号S2のビット数よりも大きくすることで量子化誤差の影響を低減することができる。
【0024】
図2(b)に示す通り、調光制御信号S2と固体光源アレイ11から射出される光の明るさとの関係は、いわゆるガンマ曲線と同様の曲線の関係になる。このため、例えば調光制御信号の値が2倍になっても明るさが2倍になる訳ではなく、調光制御信号S2を用いて固体光源アレイ11の調光を行おうとすると制御が複雑になる可能性がある。従って、図2(b)に示す通り、制御用テーブルTBでは、明るさとの関係が直線の関係となるように、調光制御信号の各値毎のデューティー比が規定されている。
【0025】
ここで、図2(a)に示す例では、調光制御信号S2の値が「45」以上である場合には、調光制御信号S2の各々の値に対してそれぞれ異なる値のデューティー比が対応付けられている。これに対し、調光制御信号S2の値が「44」以下の場合には、調光制御信号S2の各々の値に対して同じ値「21」のデューティー比が対応付けられている。これは、固体光源アレイ11から射出される光が必要以上に減光されるのを防止するためである。
【0026】
また、デューティー比算出処理部2bは、調光制御信号生成部2aで生成された調光制御信号S2が上述した閾値(例えば、「109」)以下である場合において、調光制御信号S2に変化が生ずるときには、その変化が生ずる時点の前における調光制御周期で、その変化が生ずる時点の前後におけるデューティー比を混在させる処理を行う。かかる処理は、調光制御信号S2の分解能よりも細かな分解能の調光を実現するために行われる処理である。例えば、調光制御信号S2の分解能が「256」である場合には、以上の処理が行われることによって「1024」の分解能の調光が可能になる。
【0027】
具体的に、目標光量信号S1が上記の閾値以下である場合には、目標光量信号S1の最小単位「1」に応じた光量を複数の調光制御周期毎(例えば、4周期毎)に変化させる調光制御信号S2が調光制御信号生成部2aで生成される。デューティー比算出処理部2bは、その複数の調光制御周期の各々において、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前後で求めたデューティー比を有する駆動制御周期が所定の割合で含まれるようにデューティー比を混在させる処理を行う。例えば、それら複数の調光制御周期において、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前で求めたデューティー比を有する駆動制御周期が徐々に減少する一方で、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の後で求めたデューティー比を有する駆動制御周期が徐々に増加するようにデューティー比を混在させる処理を行う。
【0028】
以上の処理を行うのは、目標光量信号S1が上記の閾値以下であって、固体光源アレイ11から射出されるべき光の光量が低い場合におけるちらつきの発生を防止するためである。図3は、本発明の第1実施形態において、目標光量信号と射出される光の明るさ及びその変化率との関係を説明するための図であって、(a)は目標光量信号と明るさとの関係を示す図であり、(b)は目標光量信号と明るさ変化率との関係を示す図である。尚、図3(b)に示す明るさ変化率は、目標光量信号S1の値が「1」だけ変化した場合に生ずる明るさの変化が、元の明るさに対してどれだけの割合を占めるかを示すものである。
【0029】
図3(a)に示す通り、目標光量信号S1と固体光源アレイ11から射出される光の明るさとの関係は、いわゆるガンマ曲線と同様の曲線の関係になる。尚、図2(a)を用いて説明した通り、制御テーブルTBにおいて、値が「44」以下の調光制御信号S2(値が「45」よりも小さな調光制御信号S2)の各々の値に対しては同じ値「21」のデューティー比が対応付けられているため、目標光量信号S1の値が「44」以下の場合には明るさの変化が生じない。
【0030】
次に、図3(b)を参照すると、図3(a)において明るさの変化が生じない部分(目標光量信号S1の値が「44」以下の部分)の明るさ変化率は「0」であり、この部分以外の明るさ変化率は目標光量信号S2の値が大きくなるにつれて徐々に小さくなる。尚、図3(b)において、目標光量信号S2の値が前述した閾値「109」である場合には、明るさ変化率は2%程度である。
【0031】
ここで、目標光量信号S2の値が閾値「109」以下の場合には、明るさ変化率が2〜3%程度になる。このように、目標光量信号S2の値が小さい部分については、明るさ変化率が大きくなりちらつきが発生する可能性が高い。このため、本実施形態では、目標光量信号S2に基づいて生成される調光制御信号S2の値が閾値「109」以下の場合に、デューティー比算出処理部2bでデューティー比を混在させる処理を行ってちらつきの発生を抑制することとしている。
【0032】
PWM信号生成部3は、デューティー比決定部2で決定されたデューティー比(デューティー比算出処理部2bで求められたデューティー比)に基づいて、固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aを駆動するPWM信号S11〜S14を生成する。具体的には、周波数が上記のPWM制御周波数であってデューティー比決定部2で決定されたデューティー比を有するPWM信号S11〜S14を生成する。
【0033】
光源駆動部4a〜4dは、PWM信号生成部3で生成されるPWM信号S11〜S14に基づいて、固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aを列C1〜C4毎に駆動する駆動信号D1〜D4をそれぞれ生成する。尚、駆動信号D1〜D4は、PWM信号S11〜S14に基づいて周波数、デューティー比、及び位相が規定され、PWM信号S11〜S14の信号レベルが「H(ハイ)」レベルのときの電流が一定であるパルス状の信号である。
【0034】
次に、上記構成における光源制御装置1の動作について説明する。図4は、本発明の第1実施形態による光源制御方法を示すフローチャートである。まず、外部からの目標光量信号S1が光源制御装置1に入力されると、デューティー比決定部2の調光制御信号生成部2aにおいて調光制御信号S2が生成される(ステップST11)。図5は、本発明の第1実施形態で用いられる目標光量信号及び調光制御信号の一例を示すタイミングチャートである。尚、図5中における期間T1は、固体光源アレイ11の調光を行う基準となる調光制御周期を示しており、例えば1/60秒である。また、図5中における値THは、デューティー比決定部2で用いられる閾値を示しており、例えば「109」である。
【0035】
図5に示す通り、時刻t1において値V3から値V1に変化し、時刻t3において値V3から値V2に変化する目標光量信号S1が入力される場合を考える。このような目標光量信号S1が入力されると、ちらつきの発生を防止すべく、目標光量信号S1の急激な変化を制限するために、調光制御信号生成部2aによって図5中に示す値が階段状に変化する調光制御信号S2が生成される。
【0036】
ここで、時刻t1〜t2の間においては、調光制御信号S2の値が閾値THよりも大きいため、調光制御信号生成部2aで生成される調光制御信号S2は、調光制御周期T1毎に目標光量信号S1の最小単位である値「1」だけ変化するものになる。これに対し、時刻t2〜t3の間においては、調光制御信号S2の値が閾値THよりも大きいため、調光制御信号生成部2aで生成される調光制御信号S2は、調光制御周期T1の4周期毎(4・T1)毎に目標光量信号S1の最小単位である値「1」だけ変化するものになる。尚、調光制御信号S2の経時変化は、目標光量信号S1の変化の前後における値と閾値THとに応じて定まるため、調光制御信号S2の形状(図5(a)に示す階段状の形状)は時刻t1で求められることになる。
【0037】
調光制御信号生成部2aで生成された調光制御信号S2はデューティー比算出処理部2bに出力され、制御テーブルTBを用いて調光制御信号S2に応じたデューティー比を算出する処理が行われる(ステップST12)。前述した通り、デューティー比は、固体光源アレイ11の駆動制御を行う駆動制御周期内における固体光源11aの発光時間と非発光時間との比を示すものであり、駆動制御周期は、調光制御周期T1よりも短い期間に設定されている。このため、デューティー比算出処理部2bでは、調光制御周期T1内における複数の駆動制御周期に亘って同じデューティー比が算出される。
【0038】
次に、デューティー比算出処理部2bによって調光制御信号S2が閾値TH以下であるか否かが判断される(ステップST13)。調光制御信号S2が閾値THよりも大であると判断した場合(ステップST13の判断結果が「NO」の場合)には、デューティー比算出処理部2bで算出されたデューティー比がPWM信号生成部3に出力され、このデューティー比に基づいて固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aを駆動するPWM信号S11〜S14が生成される(ステップST14)。具体的には、周波数が上記のPWM制御周波数であり、デューティー比算出処理部2bで算出されたデューティー比を有するPWM信号S11〜S14が生成される。
【0039】
PWM信号生成部3で生成されたPWM信号S11〜S14は、光源駆動部4a〜4dにそれぞれ出力され、固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aを列C1〜C4毎に駆動する駆動信号D1〜D4がそれぞれ生成される。これらの駆動信号D1〜D4は固体光源アレイ11に供給され、固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aの発光及び非発光が列C1〜C4を単位として行われる(ステップST15)。
【0040】
これに対し、ステップST13において、調光制御信号S2が閾値TH以下であると判断した場合(判断結果が「YES」の場合)には、デューティー比算出処理部2bは、調光制御信号S2の変化が生ずるか否かを判断する(ステップST16)。調光制御信号S2の変化が生じないと判断した場合(判断結果が「NO」の場合)には、デューティー比算出処理部2bで算出されたデューティー比がPWM信号生成部3に出力されてPWM信号S11〜S14が生成され(ステップST14)、これらPWM信号S11〜S14に基づいて光源駆動部4a〜4dにより駆動信号D1〜D4が生成されて固体光源11aが駆動される(ステップST15)。
【0041】
他方、ステップST16において、調光制御信号S2の変化が生ずると判断した場合(判断結果が「YES」の場合)には、デューティー比算出処理部2bは、調光制御信号S2の変化が生ずる時点(変化時点)の前後におけるデューティー比を混在させる処理を行う(ステップST17)。かかる処理が行われると、混在されたデューティー比がPWM信号生成部3に出力されてPWM信号S11〜S14が生成され(ステップST14)、これらPWM信号S11〜S14に基づいて光源駆動部4a〜4dにより駆動信号D1〜D4が生成されて固体光源11aが駆動される(ステップST15)。
【0042】
図6は、本発明の第1実施形態において行われるデューティー比を混在させる処理を説明するための図である。図6中に示した駆動信号D1〜D4は、図5中の時刻t2〜t3の間において生成される信号であって、図6中の時刻t11〜t13は、図5(a)中の時刻t2〜t3内における時刻である。尚、図6中における期間T2は、固体光源アレイ11の駆動制御を行う駆動制御周期を示しており、例えばT1/8(=1/480秒)である。
【0043】
いま、調光制御信号生成部2aで生成された調光制御信号S2が「53」,「52」,「51」と順に変化し、これに伴って図2(a)に示す制御テーブルTBを用いて得られるデューティー比DRの値が、図6に示す通り、調光制御周期T1の4周期毎(4・T1)毎に「32」,「30」,「29」と順に変化するとする。尚、制御テーブルTBを用いて得られるデューティー比の値が「32」である場合の実際のデューティー比は3.1%であり、デューティー比の値が「30」である場合の実際のデューティー比は2.9%であり、デューティー比の値が「29」である場合の実際のデューティー比は2.8%であるとする。
【0044】
ここで、前述した通り、調光制御信号S2の経時変化は、目標光量信号S1の変化の前後における値と閾値THとに応じて定まるため、調光制御信号S2の形状(図5(a)に示す階段状の形状)は目標光量信号S1の変化が生じた時点(図5(a)に示す時刻t1)において調光制御信号生成部2aで求められている。従って、図6に示す通り、時刻t12でデューティー比DRの値が「32」から「30」に変化し、時刻t13でデューティー比DRの値が「30」から「29」に変化することは、時刻t11において既知である。
【0045】
このため、デューティー比算出処理部2bは、デューティー比DRの変化が生ずる時刻t12の前におけるデューティー比DRの値「32」に対応する実際のデューティー比3.1%と、時刻t12の後におけるデューティー比DRの値「30」に対応する実際のデューティー比2.9とを、時刻t11〜t12の間における4つの調光制御周期T1の各々で混在させる処理を行う。このとき、デューティー比算出処理部2bは、固体光源アレイ11から射出される光の明るさが徐々に変化するよう、時刻t11〜t12の間における4つの調光制御周期T1の各々でデューティー比を混在させる割合を徐々に変化させる。
【0046】
例えば、デューティー比DRの値「32」に対応する実際のデューティー比3.1%と、デューティー比DRの値「30」に対応する実際デューティー比2.9とを、時刻t11〜t12の間における第1番目の調光制御周期T1では8対0の割合で混在させ(混在させない)、第2番目の調光制御期間T1では6:2の割合で混在させ、第3番目の調光制御期間T1では4:4の割合で混在させ、第4番目の調光制御期間T1では2対6の割合で混在させる。尚、デューティー比の混在のさせ方は、以上の例に限定される訳ではなく、任意の方法を用いることができる。
【0047】
同様に、デューティー比算出処理部2bは、デューティー比の変化が生ずる時刻t13の前におけるデューティー比DRの値「30」に対応する実際のデューティー比2.9%と、時刻t13の後におけるデューティー比DRの値「29」に対応する実際のデューティー比2.8とを、時刻t12〜t13の間における4つの調光制御周期T1の各々で混在させる処理を行う。以降、同様の処理が行われる。かかる処理が行われることによって、図5(b)に示す通り、調光制御信号S2よりも細かに値が変化する信号S21を用いて固体光源アレイ11を駆動した場合と同様の調光を行うことができる。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、調光制御信号S2に応じたデューティー比を駆動制御周期T2毎に求め、調光制御信号S2(デューティー比DR)の変化が生ずる時点の前後で求めたデューティー比を有する駆動制御周期T2が所定の割合で調光制御周期T1に含まれるように、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前後におけるデューティー比を混在させている。このため、制御テーブルの増大による大幅なコストの上昇を伴わずに簡易な構成で高分解能の調光を実現することができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による光源制御装置について説明する。以上説明した第1実施形態の光源制御装置1は、端的に言うと、調光制御信号S2に応じたデューティー比を駆動制御周期T2毎に求め、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前後における2種類のデューティー比を有する駆動制御周期T2を調光制御周期T1内で混在させるものであった。
【0050】
これに対し、本実施形態の光源制御装置は、端的に言うと、調光制御信号S2に応じたデューティー比を調光制御周期T1毎に求め、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前におけるデューティー比で駆動される固体光源11aと、その時点の後におけるデューティー比で駆動される固体光源11aとを調光制御周期T1内で混在させるものである。本実施形態の光源制御装置は、デューティー比算出処理部2b及びPWM信号生成部3を上記の動作が可能なものに代えたものであり、図1に示す光源制御装置1とほぼ同様の構成である。
【0051】
本実施形態の光源制御装置は、図4に示すフローチャートに従って動作し、基本的な動作は第1実施形態の光源制御装置1と同様である。但し、図4に示すステップST12において、制御テーブルTBを用いたデューティー比の算出が調光制御周期T1毎に行われる点が相違する。また、ステップST17で行われるデューティー比を混在させる具体的な処理が相違する。
【0052】
図7は、本発明の第2実施形態において行われるデューティー比を混在させる処理を説明するための図である。尚、図6と同様に、図7中に示した駆動信号D1〜D4は、図5中の時刻t2〜t3の間において生成される信号であって、図6中の時刻t11〜t13は、図5(a)中の時刻t2〜t3内における時刻である。また、ここでも、調光制御信号生成部2aで生成された調光制御信号S2が「53」,「52」,「51」と順に変化し、これに伴って図2(a)に示す制御テーブルTBを用いて得られるデューティー比DRの値が、図7に示す通り、調光制御周期T1の4周期毎(4・T1)毎に「32」,「30」,「29」と順に変化するとする。尚、駆動信号D1〜D4はパルス状の信号であるが、図7においては、理解を容易にするために、調光制御信号S2と同様の方法で駆動信号D1〜D4を表現している。
【0053】
図7に示す例では、図6に示す例と同様に、時刻t12でデューティー比DRの値が「32」から「30」に変化し、時刻t13でデューティー比DRの値が「30」から「29」に変化している。このため、本実施形態の光源制御装置が備えるデューティー比算出処理部2bは、デューティー比DRの変化が生ずる時刻t12の前におけるデューティー比DRの値「32」に対応する実際のデューティー比で駆動される固体光源11aと、時刻t12の後におけるデューティー比DRの値「30」に対応する実際のデューティー比で駆動される固体光源11aとが混在するように、これらのデューティー比を混在させる。
【0054】
例えば、駆動信号D1〜D4のうち、デューティー比DRの値「32」に対応する実際のデューティー比を有するものと、デューティー比DRの値「30」に対応する実際のデューティー比を有するものとを、時刻t11〜t12の間における第1番目の調光制御周期T1では4対0の割合で混在させ(混在させない)、第2番目の調光制御期間T1では3:1の割合で混在させ、第3番目の調光制御期間T1では2:2の割合で混在させ、第4番目の調光制御期間T1では1対3の割合で混在させる。尚、デューティー比の混在のさせ方は、以上の例に限定される訳ではなく、任意の方法を用いることができる。
【0055】
固体光源アレイ11に設けられる複数の固体光源11aは、図1に示す列C1〜C4を単位として駆動信号D1〜D4によって駆動される。このため、調光制御信号S2の変化が生ずる時刻t12の前における調光制御信号S2の値「32」に対応するデューティー比で駆動される固体光源11aと、時刻t12の後における調光制御信号S2の値「30」に対応するデューティー比で駆動される固体光源11aとが所定の割合となるように混在させることができる。
【0056】
時刻t12以降においても、以上説明した時刻t11〜t12間に行われた処理と同様の処理が行われる。このような処理が行われることによって、本実施形態においても、図5(b)に示す調光制御信号S2よりも細かに値が変化する信号S21を用いて固体光源アレイ11を駆動した場合と同様の調光を行うことができる。
【0057】
以上の通り、本実施形態では、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前後で求められたデューティー比で駆動される固体光源11aの数の割合が所定の割合となるように、調光制御信号S2の変化が生ずる時点の前後におけるデューティー比を混在させている。このため、制御テーブルの増大による大幅なコストの上昇を伴わずに簡易な構成で高分解能の調光を実現することができる。
【0058】
《プロジェクター》
次に、本発明の一実施形態によるプロジェクターについて説明する。図8は、本発明の一実施形態によるプロジェクターの構成を示す図である。図8に示す通り、プロジェクターPJは、照明装置10、色分離導光光学系20、液晶光変調装置30R,30G,30B(光変調装置)、クロスダイクロイックプリズム40、投射光学系50、及び信号処理部60を備えており、外部から入力される画像信号Q1に応じた画像光をスクリーンSCRに向けて投射することによりスクリーンSCR上に画像を表示する。
【0059】
照明装置10は、図1に示す光源制御装置1及び固体光源アレイ11と、コリメーターレンズアレイ12、集光光学系13、蛍光生成部14、コリメーター光学系15、第1レンズアレイ16、第2レンズアレイ17、偏光変換素子18、及び重畳レンズ19とを備えており、赤色光、緑色光、及び青色光を含む白色光を射出する。コリメーターレンズアレイ12は、固体光源アレイ11に設けられた複数の固体光源11aの各々に対応する複数のコリメーターレンズを備えており、固体光源11aの各々から射出される青色光を略平行化する。
【0060】
具体的に、コリメーターレンズアレイ12は、24個の平凸レンズであるコリメーターレンズを、6行4列のマトリクス状に配列してなるものである。このコリメーターレンズアレイ12は、コリメーターレンズの凸面を固体光源アレイ11に向け、且つ、各コリメーターレンズを各固体光源11aにそれぞれ対応させた状態で配置されている。集光光学系13は、第1レンズ13a及び第2レンズ13bを備えており、コリメーターレンズアレイ12で略平行化された青色光を蛍光生成部14の近傍の位置に集光する。
【0061】
蛍光生成部14は、集光光学系13の集光位置の近傍に配設され、集光光学系13で集光された青色光のうちの一部から赤色光及び緑色光を含む蛍光を生成する蛍光層(図示省略)と、この蛍光層を担持する透明部材(図示省略)とを有する。具体的に、蛍光生成部14は、集光光学系13で集光された青色光がデフォーカス状態で蛍光層に入射する位置に配設される。蛍光生成部14は、蛍光の生成に関わることなく蛍光層を通過する青色光を蛍光とともに含み、全体として白色光となる光を射出する。
【0062】
上記の蛍光層は、例えば、YAG系蛍光体である(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ceを含有する層からなる。蛍光層は、集光光学系13で集光された青色光のうちの一部を、赤色光(発光強度のピーク:約610nm)及び緑色光(発光強度のピーク:約550nm)を含む蛍光に変換して射出する。尚、青色光のうち、蛍光の生成に関わることなく蛍光層を通過する一部の青色光は、蛍光とともに射出される。コリメーター光学系15は、第1レンズ15a及び第2レンズ15bを備えており、蛍光生成部14からの光を略平行化する。
【0063】
第1レンズアレイ16は、複数の小レンズ16aを有しており、固体光源アレイ11からの光を複数の部分光束に分割する。具体的に、第1レンズアレイ16が有する複数の小レンズ16aは、照明光軸AXと直交する面内において、複数行及び複数列に亘ってマトリクス状に配列されている。尚、第1レンズアレイ16が有する複数の小レンズ16aの外形形状は、液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域の外形形状に関して略相似形である。
【0064】
第2レンズアレイ17は、第1レンズアレイ16に設けられた複数の小レンズ16aに対応する複数の小レンズ17aを有する。つまり、第2レンズアレイ17が有する複数の小レンズ17aは、第1レンズアレイ16が有する複数の小レンズ16aと同様に、照明光軸AXと直交する面内において、複数行及び複数列に亘ってマトリクス状に配列されている。この第2レンズアレイ17は、重畳レンズ19とともに、第1レンズアレイ16が有する各小レンズ16aの像を液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域近傍に結像させる。
【0065】
偏光変換素子18は、偏光分離層、反射層、及び位相差板(何れも図示省略)を有しており、第1レンズアレイ16により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する。ここで、偏光分離層は、固体光源アレイ11からの光に含まれる偏光成分のうちの一方の直線偏光成分をそのまま透過させ、他方の直線偏光成分を照明光軸AXに垂直な方向に反射する。また、反射層は、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸AXに平行な方向に反射する。更に位相差板は、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する。
【0066】
重畳レンズ19は、その光軸が照明装置10の光軸と一致するように配置されており、偏光変換素子18からの各部分光束を集光して液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域近傍に重畳させる。上述した第1レンズアレイ16、第2レンズアレイ17、及び重畳レンズ19は、固体光源アレイ11からの光を均一化するレンズインテグレーター光学系を構成している。
【0067】
色分離導光光学系20は、ダイクロイックミラー21,22、反射ミラー23〜25、リレーレンズ26,27、及び集光レンズ28R,28G,28Bを備えており、照明装置10からの光を赤色光、緑色光、及び青色光に分離して液晶光変調装置30R,30G,30Bにそれぞれ導光する。ダイクロイックミラー21,22は、所定の波長領域の光を反射して他の波長領域の光を通過させる波長選択透過膜が透明基板上に形成されたミラーである。具体的に、ダイクロイックミラー21は赤色光成分を反射して緑色光及び青色光成分を通過させ、ダイクロイックミラー22は緑色光成分を反射して青色光成分を通過させる。
【0068】
反射ミラー23は赤色光成分を反射するミラーであり、反射ミラー24,25は青色光成分を反射するミラーである。リレーレンズ26はダイクロイックミラー22と反射ミラー24との間に配設され、リレーレンズ27は、反射ミラー24と反射ミラー25との間に配設される。これらリレーレンズ26,27は、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するために設けられる。集光レンズ28R,28G,28Bは、反射ミラー23で反射された赤色光成分、ダイクロイックミラー22で反射された緑色光成分、及び反射ミラー25で反射された青色光成分を、液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域にそれぞれ集光する。
【0069】
ダイクロイックミラー21で反射された赤色光は、反射ミラー23で反射され、集光レンズ28Rを介して赤色光用の液晶光変調装置30Rの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21を通過した緑色光は、ダイクロイックミラー22で反射され、集光レンズ28Gを介して緑色光用の液晶光変調装置30Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21,22を通過した青色光は、リレーレンズ26、反射ミラー24、リレーレンズ27、反射ミラー25、及び集光レンズ28Bを順に介して青色光用の液晶光変調装置30Bの画像形成領域に入射する。
【0070】
液晶光変調装置30R,30G,30Bは、入射された色光を信号処理部60から出力される画像信号に応じて変調して、赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光をそれぞれ生成する。尚、図8では図示を省略しているが、集光レンズ28R,28G,28Bと液晶光変調装置30R,30G,30Bとの間にはそれぞれ入射側偏光板が介在配置されており、液晶光変調装置30R,30G,30Bとクロスダイクロイックプリズム40との間にはそれぞれ射出側偏光板が介在配置されている。
【0071】
液晶光変調装置30R,30G,30Bは、一対の透明なガラス基板の間に電気光学物質である液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、例えば、ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)をスイッチング素子として備える。上述した不図示の入射側偏光板の各々を介した色光(直線偏光)の偏光方向が、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々に設けられたスイッチング素子のスイッチング動作によって変調されることにより、画像信号に応じた赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光がそれぞれ生成される。
【0072】
クロスダイクロイックプリズム40は、上述した不図示の射出側偏光板の各々から射出された画像光を合成してカラー画像を形成する。具体的に、クロスダイクロイックプリズム40は、4つの直角プリズムを貼り合わせてなる略立方体形状の光学部材であり、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。投射光学系50は、クロスダイクロイックプリズム40で合成されたカラー画像をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。
【0073】
信号処理部60は、明るさパラメータ抽出部61(目標光量算出部)、伸張処理部62、及び液晶駆動部63を備えており、外部から入力される画像信号Q1の信号処理を行って光源制御装置1で用いられる目標光量信号S1及び液晶光変調装置30R,30G,30Bで用いられる画像信号を生成する。
【0074】
明るさパラメータ抽出部61は、画像信号Q1に基づいて表示されるべき画像の明るさの代表値を示す情報である明るさパラメータを抽出する。具体的には、画像信号Q1の階調値のヒストグラムを色毎(赤色、緑色、青色毎)に求め、ヒストグラムの頻度が最大となる階調値を色頃に求め、それらの階調値のうちの最も大きなものを明るさパラメータとして抽出する。この明るさパラメータは、照明装置10に設けられた光源制御装置1に目標光量信号S1として出力される。
【0075】
ここで、図8に示す通り、光源制御装置1(正確には、光源制御装置1が備えるデューティー比決定部2)には、明るさパラメータ抽出部61からの目標光量信号S1以外に、ホワイトバランスを制御する制御信号A1も入力されている。尚、光源制御装置1のデューティー比決定部2に設けられていた調光制御信号生成部2aを明るさパラメータ抽出部61に設け、明るさパラメータ抽出部61から光源制御装置1に対して調光制御信号S2が出力されるようにしても良い。
【0076】
伸張処理部62は、明るさパラメータ抽出部61で抽出された明るさパラメータに基づいて、外部から入力される画像信号Q1に伸張処理を行う。例えば、画像信号Q1に基づいて表示可能な画像の階調が255階調であり、抽出された明るさパラメータが200階調目の明るさを示すものである場合には、画像信号Q1に対して係数α=(255/200)を乗算する処理を行う。かかる伸張処理を行うことにより、液晶光変調装置30R,30G,30Bのダイナミックレンジを最大活かした高コントラストの画像の表示が可能になる。液晶駆動部63は、伸張処理部62で伸張処理が行われた画像信号から、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を駆動する駆動信号を生成する。
【0077】
上記構成のプロジェクターPJに画像信号Q1が入力されると、信号処理部60の明るさパラメータ抽出部61で明るさパラメータが抽出されて目標光量信号S1として光源制御装置1に出力される。光源制御装置1に目標光量信号S1が入力されると、前述した通り、デューティー比の算出処理(デューティー比を混在させる処理を含む)、PWM信号S11〜S14の生成、及び駆動信号D1〜D4の生成が行われて固体光源アレイ11が駆動される。
【0078】
他方、明るさパラメータ抽出部61で抽出された明るさパラメータは、画像信号Q1とともに伸張処理部62に出力され、伸張処理部62において画像信号Q1の伸張処理が行われる。そして、液晶駆動部63において、伸張処理が行われた画像信号に基づいて駆動信号が生成されて、液晶光変調装置30R,30G,30Bが駆動される。
【0079】
ここで、本実施形態のプロジェクターPJは、目標光量信号S1(調光制御信号S2)の分解能が「256」であっても、「1024」の分解能の調光を実現可能な光源制御装置1を備えている。このため、固体光源アレイ11を高分解能で調光することができ、先のフレームの輝度が低い場合であっても、先のフレームからの輝度変化が規定値(例えば、5%)内に収まるような調光を実現することができる。従って、周辺の照明環境に応じたちらつきのない画像を表示することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態による光源制御装置及び方法並びにプロジェクターについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、以下に示す変形例が可能である。
【0081】
(1)上記実施形態では、固体光源アレイ11に配列形成された固体光源11aが半導体レーザーである場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、固体光源が発光ダイオードである固体光源アレイにも本発明を適用することができる。
【0082】
(2)上記実施形態では、固体光源が面状に配列されている例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、固体光源が線状に配列されている場合にも本発明を適用することが可能である。加えて、上記実施形態では、基板SBの縦方向及び横方向に一定の間隔で固体光源が配列されている例について説明したが、ハニカム状に配列されていても良い。ここで、ハニカム状とは、正六角形を平面上に隙間無く並べた場合の各交点に固体光源が位置する配列をいう。
【0083】
(3)上記実施形態では、光源制御装置1が固体光源アレイ11に対してPWM制御を行うものであって、PWM制御のデューティー比を混在させて調光を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、固体光源アレイ11に供給する電流や固体光源アレイ11に印加する電圧を混在させて(異なる電流や電圧を混在させて)調光を行っても良い。
【0084】
(4)上記実施形態では、プロジェクターとして透過型のプロジェクターを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、反射型のプロジェクターにも本発明を適用することができる。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶表示装置等のように光変調装置が光を透過すものであることを意味し、「反射型」とは、反射型の液晶表示装置等のように光変調装置が光を反射するものであることを意味する。反射型のプロジェクターに本発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
【0085】
(5)上記実施形態では、光変調装置として液晶光変調装置を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調装置としては、一般に、画像信号に応じて入射光を変調するものであればよく、ライトバルブやマイクロミラー型光変調装置等を用いても良い。マイクロミラー型光変調装置としては、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)を用いることができる。
【0086】
(6)本発明は、投射画像を観察する側から投射するフロント投射型プロジェクターに適用することも、投射画像を観察する側とは反対の側から投射するリア投射型プロジェクターに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…光源制御装置、2a…調光制御信号生成部、2b…デューティー比算出処理部、3…PWM信号生成部、4a〜4d…光源駆動部、11…固体光源アレイ、11a…固体光源、30R,30G,30B…液晶光変調装置、50…投射光学系、61…明るさパラメータ抽出部、62…伸張処理部、D1〜D4…駆動信号、PJ…プロジェクター、Q1…画像信号、S1…目標光量信号、S2…調光制御信号、SCR…スクリーン、T1…調光制御周期、T2…駆動制御周期、TB…制御テーブル、TH…閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体光源を有する光源装置の駆動制御を行う光源制御装置であって、
予め定められた調光制御周期を基準として前記光源装置を調光するための調光制御信号を生成する生成部と、
前記固体光源の発光量を制御する発光制御量を前記調光制御信号に応じて求め、前記調光制御信号の変化が生ずる場合には、変化が生ずる時点の前又は後における少なくとも1つの調光制御周期で、変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行う算出処理部と、
前記算出処理部で求められた発光制御量で前記固体光源を発光させる制御信号を生成して前記固体光源の駆動制御を行う駆動制御部と
を備えることを特徴とする光源制御装置。
【請求項2】
前記算出処理部は、前記調光制御信号と前記発光制御量との関係を予め規定しているテーブルを用いて前記調光制御信号に応じた発光制御量を求めることを特徴とする請求項1記載の光源制御装置。
【請求項3】
前記算出処理部は、前記調光制御信号が予め定められた閾値以下である場合に、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光源制御装置。
【請求項4】
前記固体光源の駆動制御を行う駆動制御周期は、前記調光制御周期よりも短い周期に設定されており、
前記算出処理部は、前記調光制御信号に応じた発光制御量を前記駆動制御周期毎に求め、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後で求めた発光制御量を有する駆動制御周期が所定の割合で前記調光制御周期に含まれるように、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光源制御装置。
【請求項5】
前記光源装置は、複数の固体光源を備えており、
前記算出処理部は、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後で求められた発光制御量で駆動される固体光源の数の割合が所定の割合となるように、前記調光制御信号の変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光源制御装置。
【請求項6】
固体光源を有する光源装置の駆動制御を行う光源制御方法であって、
予め定められた調光制御周期を基準として前記光源装置を調光するための調光制御信号を生成し、
前記固体光源の発光量を制御する発光制御量を前記調光制御信号に応じて求め、前記調光制御信号の変化が生ずる場合には、変化が生ずる時点の前又は後における少なくとも1つの調光制御周期で、変化が生ずる時点の前後における発光制御量を混在させる処理を行い、
求められた発光制御量で前記固体光源を発光させる制御信号を生成して前記固体光源の駆動制御を行う
ことを特徴とする光源制御方法。
【請求項7】
光源装置と、表示すべき画像の画像信号に基づいて該光源装置からの光を変調する光変調装置と、該光変調装置で変調された光をスクリーンに投射する投射光学系とを備えるプロジェクターにおいて、
前記光源装置を制御する請求項1から請求項5の何れか一項に記載の光源制御装置を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項8】
前記光源装置から射出されるべき光の光量である目標光量を示す信号を前記画像信号から求める目標光量算出部を備えており、
前記光源制御装置に設けられた前記生成部は、前記目標光量を示す信号に基づいて前記調光制御信号を生成する
ことを特徴とする請求項7記載のプロジェクター。
【請求項9】
前記目標光量算出部で求められた前記目標光量に応じて、前記光変調装置の変調に用いられる画像信号の伸張処理を行う伸張処理部を備えることを特徴とする請求項8記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−194450(P2012−194450A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59455(P2011−59455)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】