説明

光源装置及び放電灯の駆動方法

【課題】長寿命化を図ることができるとともに、放電灯の輝度によらず、電極に突起を形成し、放電灯を効率良く駆動することができる放電灯の駆動方法を提供する。
【解決手段】光源装置1は、一対の電極610、710を有する放電灯500と、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調する振幅変調部と、交流電流の大きさを調整して放電灯500の輝度を調整する輝度調整部とを有し、振幅変調した交流電流を駆動電流として各電極610、710に供給し、放電灯500を点灯する放電灯駆動装置200とを備え、振幅変調部は、第1の区間と、第1の区間よりも駆動電流の振幅が小さい第2の区間とが交互に繰り返されるように交流電流を振幅変調し、第1の区間における駆動電流の振幅の平均値をa、前記第2の区間における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aが前記放電灯の輝度に応じて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及び放電灯の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電灯(放電ランプ)が使用されている。このような放電灯は、例えば、高周波数の交流電流を駆動電流として供給する駆動方法により駆動される。この駆動方法によれば、放電の安定性が得られ、放電灯本体の黒化や失透等を防止することができ、放電灯の寿命の低下を抑制することができる。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、放電灯が点灯している際は、一対の電極間にアーク放電が生じており、その電極が高温になっているので、電極が溶融し、電極間が広がってくる。例えば、プロジェクターの用途では、光の利用効率を向上させるために、電極間が狭い状態を維持し、発光の大きさを小さくすることが好ましく、点灯中に電極間が広がることは、光の利用効率を低下させることになり、好ましくない。また、電極間の変化は、その電極間におけるインピーダンスを変化させ、このため、点灯初期では効率良く放電灯を点灯することができていても、時間が経過すると、インピーダンス不整合を生じ、無効電力が増加し、効率が低下するという問題がある。
【0004】
一方、低周波数で、波形が矩形状をなす交流電流(直流交番電流)を駆動電流として供給する駆動方法もある。この駆動方法によれば、放電灯が点灯している際、一対の電極の先端部に突起が形成され、これにより、電極間が狭い状態を維持することができる。しかしながら、放電灯本体の黒化や失透等が生じ、放電灯の寿命が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−115534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調し、その振幅変調した交流電流を駆動電流として放電灯に供給し、放電灯を点灯する駆動方法を見出した。この駆動方法によれば、放電灯の黒化を防止し、長寿命化を図ることができ、また、放電灯を一定の輝度で点灯している場合は、電極の先端部に突起が形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0007】
しかしながら、放電灯がその輝度を調整することができるものである場合は、輝度を高くすると、突起が溶解し、電極間が広がってゆき、一方、輝度を低くすると、突起が延び過ぎてだれてしまい、やはり、電極間が広がってしまうという問題がある。そこで、放電灯の黒化を防止し長寿命化を図ることができるとともに、放電灯の輝度によらず電極に突起を形成し、放電灯を効率良く駆動することができる光源装置及び放電灯の駆動方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる光源装置は、一対の電極を有する放電灯と、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調する振幅変調部と、前記交流電流の大きさを調整して前記放電灯の輝度を調整する輝度調整部とを有し、前記振幅変調部により振幅変調した前記交流電流を駆動電流として前記一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯する放電灯駆動装置と、を備え、前記振幅変調部は、第1の区間と、前記第1の区間よりも前記駆動電流の振幅が小さい第2の区間とが交互に繰り返されるように前記交流電流を振幅変調し、前記第1の区間における駆動電流の振幅の平均値をa、前記第2の区間における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aを前記放電灯の輝度に応じて設定することを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、光源装置は一対の電極を有する放電灯を備えている。そして、振幅変調部は周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調している。1kHz以上10GHz以下の高周波を用いることで放電管内に蒸発した電極物質とハロゲン物質が結合し、管壁への黒化を防止し、長寿命化を図ることができる。
【0011】
そして、第1の区間における駆動電流の振幅の平均値をaとし、第2の区間における駆動電流の振幅の平均値をbとする。振幅変調部は、第1の区間と第2の区間とが交互に繰り返されるように交流電流を振幅変調する。そして、振幅変調部は輝度に応じて、比b/aを変化させている。これにより、放電灯の輝度によらず、電極部の突起を維持し、電極間距離を一定の距離に保持することができる。従って、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例に記載の光源装置では、前記比b/aは、前記放電灯の輝度が低い程、小さく設定されることが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、低輝度ほど電極への温度変動を抑えている。これにより、低輝度時の突起の成長しすぎによる突起が潰れることを防止できる。従って、より確実に電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例に記載の光源装置は、前記振幅変調部が振幅変調する変調周波数が、10Hz以上1kHz以下の範囲で、前記放電灯の輝度によらず、一定であることが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、光源装置は、変調周波数を10Hz以上1kHz以下の範囲で放電灯の輝度によらず一定にしている。これにより、複雑な電流制御をなくすことができる。従って、より確実に電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0016】
[適用例4]上記適用例に記載の光源装置は、前記第1の区間と前記第2の区間の合計の期間をA、前記第1の区間の期間をBとしたとき、B/Aは、前記放電灯の輝度によらず、一定であることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、第1の区間と第2の区間との期間の和に対して第1の区間の期間が占める割合が一定となっている。これにより、複雑な電流制御をなくすことができる。従って、より確実に電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯を効率良く駆動することができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例に記載の光源装置では、前記交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、交流電流の周波数が1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下となっている。交流電流の周波数がこの範囲にあるとき、音響共鳴効果によって光源装置の放電が不安定になることを防止することができる。
【0020】
[適用例6]本適用例にかかる放電灯の駆動方法は、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を駆動電流として放電灯の一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯し、前記交流電流の大きさを調整して前記放電灯の輝度を調整する放電灯の駆動方法であって、第1の区間と、前記第1の区間よりも前記駆動電流の振幅が小さい第2の区間とが交互に繰り返されるように、前記交流電流を振幅変調し、前記第1の区間における駆動電流の振幅の平均値をa、前記第2の区間における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aが前記放電灯の輝度に応じて設定された前記駆動電流を生成し、該駆動電流を前記一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯することを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を駆動電流として放電灯の一対の電極に供給して放電灯を点灯する。1kHz以上10GHz以下の高周波を用いることで放電管内に蒸発した電極物質とハロゲン物質が結合し、管壁への黒化を防止し、長寿命化を図ることができる。
【0022】
そして、交流電流の大きさを調整して放電灯の輝度を調整する。そして、駆動電流の振幅が異なる第1の区間と第2の区間とが交互に繰り返されるように、交流電流を振幅変調する。交流電流を振幅変調は第1の区間の振幅aと第2の区間の振幅bとの比b/aを放電灯の輝度に応じて設定される。そして、設定した駆動電流を電極に供給し、前記放電灯を点灯する。輝度調整部によって調整される輝度に応じて、比b/aを振幅変調部によって変化させることで、放電灯の輝度によらず、電極部の突起を維持することができる。従って、電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯を効率良く駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態にかかり光源装置の構成を示す模式断面図。
【図2】放電灯を示す要部模式断面図、副反射鏡を省略した図。
【図3】放電灯駆動装置の構成を示すブロック図。
【図4】放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を示す図。
【図5】第2実施形態にかかり駆動電流の構成例における包絡線を説明するための模式図。
【図6】駆動電流の構成例における包絡線を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、光源装置及び放電灯の駆動方法を図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。尚、以下の各図においては、各部位や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部位や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、光源装置の構成を示す模式断面図である。図2は、放電灯を示す要部模式断面図であり、副反射鏡を省略した図である。図3は、放電灯駆動装置の構成を示すブロック図であり、図4は、放電灯駆動装置で生成される交流電流及び駆動電流を示す図である。
【0026】
図1に示すように、光源装置1は、放電灯500を有する光源ユニット110と、放電灯500を駆動する放電灯駆動装置200とを備えている。放電灯500は、放電灯駆動装置200から電力の供給を受けて放電し、光を放射する。
【0027】
光源ユニット110は、放電灯500と、凹状の反射面を有する主反射鏡112と、射出光をほぼ並行光にする平行化レンズ114とを備えている。主反射鏡112と放電灯500とは、無機接着剤116を用いて固定されている。また、主反射鏡112の反射面は、図示の構成では、回転楕円形をなす殻の内面形状をなしている。
【0028】
尚、主反射鏡112の反射面の形状は、前記の形状には限定されず、その他、例えば、回転放物形等の形状にすることができる。また、放電灯500の発光部を放物面鏡のいわゆる焦点に配置すれば、平行化レンズ114を省略することができる。
【0029】
放電灯500は、放電灯本体510と凹状の反射面を有する副反射鏡520とを備えている。放電灯本体510と副反射鏡520とは無機接着剤522により接着されている。また、図示の構成では球形をなす殻の内面が副反射鏡520の反射面となっている。
【0030】
放電灯本体510の中央部には、気密的に密閉された放電空間512が形成されている。この放電灯本体510の少なくとも放電空間512に対応する部位は、光透過性を有している。放電灯本体510の構成材料としては、例えば、石英ガラス等のガラス、光透過性セラミックス等が挙げられる。
【0031】
この放電灯本体510には、一対の電極610、710と、一対の接続部材620、720と、一対の電極端子630、730とが設けられている。電極610と電極端子630とは、接続部材620により電気的に接続されている。同様に、電極710と電極端子730とは、接続部材720により電気的に接続されている。
【0032】
各電極610、710は、放電空間512に収納されている。すなわち、各電極610、710は、その先端部が放電灯本体510の放電空間512において、互いに所定距離離間し、互いに対向するように配置されている。電極610と電極710との間の最短距離である電極間距離は、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0033】
図2に示すように、電極610は、芯棒612と、コイル部614と、球形の本体部616とを有している。この電極610は、放電灯本体510内への封入前の段階において、芯棒612に電極材(タングステン等)の線材を巻き付けてコイル部614を形成し、形成されたコイル部614を加熱・溶融することにより形成される。これにより、電極610の先端側には、熱容量が大きい本体部616が形成される。電極710も前記電極610と同様に、芯棒712と、コイル部714と、球形の本体部716とを有しており、電極610と同様に形成される。
【0034】
放電灯500を1度も点灯させていない状態では、本体部616、716には、突起618、718は形成されていないが、後述する条件で放電灯500を1度でも点灯させると、本体部616、716の先端部に、それぞれ突起618、718が形成される。この突起618、718は、放電灯500の点灯中、維持され、また、消灯後も維持される。尚、各電極610、710の構成材料としては、例えば、タングステン等の高融点金属材料等が挙げられる。
【0035】
また、放電空間512には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、例えば、放電開始用ガス、発光に寄与するガス等を含んでいる。また、放電媒体には、その他のガスが含まれていてもよい。放電開始用ガスは特に限定されないが、例えば、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス等が挙げられる。また、発光に寄与するガスは特に限定されないが、例えば、水銀、ハロゲン化金属の気化物等が挙げられる。また、その他のガスとしては、例えば、黒化を防止する機能を有するガス等が挙げられる。黒化を防止する機能を有するガスとしては、例えば、ハロゲン(例えば、臭素等)、ハロゲン化合物(例えば、臭化水素等)、またはこれらの気化物等が挙げられる。また、放電灯本体510内の点灯時の気圧は、超高圧水銀ランプであれば200気圧程度である。
【0036】
放電灯500の電極端子630、730は、それぞれ放電灯駆動装置200の出力端子に接続されている。そして、放電灯駆動装置200は、放電灯500に交流電流(交流電力)を供給する。すなわち、放電灯駆動装置200は、電極端子630、730を介して電極610、710に交流電流を供給することにより放電灯500に電力を供給する。電極610、710に交流電流が供給されると、放電空間512内の一対の電極610、710の先端部の間でアーク放電(アークAR)が生じる。アーク放電により発生した光(放電光)は、そのアークARの発生位置(放電位置)から全方向に向かって放射される。
【0037】
副反射鏡520は、一方の電極710の方向に放射される光を、主反射鏡112に向かって反射する。このように、電極710の方向に放射される光を主反射鏡112に向かって反射することにより、電極710の方向に放射される光を有効に利用することができる。
【0038】
次に、放電灯駆動装置200について説明する。図3に示すように、放電灯駆動装置200は、高周波数の交流電流を発生する高周波電流発生器31と、振幅変調部としての振幅変調器32と、増幅率が可変の輝度調整部としての増幅器33と、制御部34とを備えており、振幅変調した交流電流を駆動電流として放電灯500の一対の電極610、710に供給する装置である。制御部24は、高周波電流発生器31、振幅変調器32及び増幅器33等、放電灯駆動装置200全体の作動を制御する。
【0039】
この放電灯駆動装置200では、高周波電流発生器31で発生した図4(a)に示す交流電流210を、図4(c)に示すように、第1の区間41と、第1の区間41よりも駆動波形220の振幅が小さい第2の区間42とが交互に繰り返されるように振幅変調器32で振幅変調する。そして、駆動波形220を増幅器33で増幅して放電灯駆動用の駆動電流である交流電流を生成し、出力する。放電灯駆動装置200から出力された交流電流は、駆動電流として放電灯500の一対の電極610、710に供給される。
【0040】
これにより、前述したように、一対の電極610、710の先端部の間でアーク放電が生じ、放電灯が点灯する。ここで、この光源装置1では、後述する条件の駆動電流を用いて放電灯500を点灯するので、その放電灯500が点灯している際、電極610、710の温度が変動し、その変動により、電極610、710の先端部に、それぞれ突起618、718が形成され、その突起618、718を維持することができる。
【0041】
すなわち、まず、駆動電流の第1の区間41では、電極610、710の温度が高くなることで、電極610、710の先端部の一部が、溶融し、その溶融した電極材が表面張力によって電極610、710の先端部に集まる。一方、第2の区間42では、電極610、710の温度が低くなることで、前記溶融した電極材が凝固する。このような溶融した電極材が電極610、710の先端部に集まる状態と、前記溶融した電極材が凝固する状態とを繰り返すことで突起618、718の成長が起こり、これにより、電極間距離を一定の距離に保持することができ、電極間が狭い状態を維持することができる。これにより、放電灯を効率良く駆動することができる。また、高周波数の駆動電流を用いるので、放電灯500の黒化を防止でき、長寿命化を図ることができる。
【0042】
また、放電灯駆動装置200は、増幅器33により交流電流の大きさ(振幅)を調整して放電灯500の輝度を調整することができるようになっており、後述するように、制御部34は、第1の区間41における駆動電流の振幅の平均値をa、第2の区間42における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、振幅変調器32は振幅aと振幅bの比b/aを放電灯500の輝度に応じて設定する(図4(c)参照)。また、制御部34は、増幅器33の増幅率を増減するように構成されており、制御部34が増幅器33の増幅率を増大させると、駆動電流(電力)が大きくなり、放電灯500の輝度が増大する。一方、制御部34が増幅器33の増幅率を減少させると、駆動電流が小さくなり、放電灯500の輝度が減少する。
【0043】
ここで、放電灯500の定格電力は、用途等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、100W以上500W以下であることが好ましい。100Wより下では変調駆動をしても電極に対する温度変動が小さく、500Wより上では電極に対して熱負荷を与えすぎになってしまう。
【0044】
また、駆動電流の周波数は、1kHz以上10GHz以下であり、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることが好ましい。さらには、10kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることがより好ましい。
【0045】
電極610、710が陽極として動作するときは、それぞれ、陰極として動作するときに比べて電極温度が高くなるが、駆動電流の周波数を前記下限値以上に設定することにより、その駆動電流の1周期内における電極温度の変動を防止することができる。しかし、駆動電流の周波数が前記下限値よりも小さいと、その駆動電流の1周期毎に、電極610、710の温度が変動し、これにより突起618、718の形成や維持ができなくなり、また、黒化が生じる場合がある。また、前記上限値よりも大きいものは現実性がない。
【0046】
また、駆動電流の周波数が100kHzよりも大きく、3MHzよりも小さいと、他の条件によっては、音響共鳴効果により放電が不安定となる。また、変調周波数は、10Hz以上1kHz以下であり、100Hz以上500Hz以下であることがより好ましい。変調周波数が前記下限値よりも小さいと、突起618、718が延び過ぎてだれてしまい、また、前記上限値よりも大きいと、突起618、718が形成されない。尚、変調周波数が低い程、突起618、718が延びる。
【0047】
また、第1の区間41及び第2の区間42において、それぞれ、駆動電流の振幅は一定である。これにより、より確実に電極610、710に突起618、718を形成することができる。
【0048】
また、図4(c)に示すように、第1の区間41における駆動電流の振幅の平均値をa、第2の区間42における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、0より大きく、90%以下であることが好ましい。b/aが90%よりも大きいと、変調周波数が100Hz以上にすると突起618、718が形成されない。尚、b/aが小さい程、突起618、718が延びる。
【0049】
また、図4(c)に示すように、第1の区間41と第2の区間42の合計の期間をA、第1の区間41の期間をBとしたとき、その期間Aと期間Bの比B/Aは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、10%以上、90%以下であることが好ましい。
B/Aが10%よりも小さい場合や、90%よりも大きい場合は、変調周波数を100Hz以上にすると突起618、718が形成されない。尚、B/Aが50%に近い程、突起618、718が延び、B/Aが50%の場合が、突起618、718が最も延びる。
【0050】
また、制御部34は、振幅aと振幅bの比b/aを、前述した範囲で、放電灯500の輝度、すなわち、既知の情報である駆動電流の大きさ(平均値)に応じて設定する(図4(b)参照)。この場合、振幅aと振幅bの比b/aは、放電灯500の輝度に応じて、突起618、718の長さが一定になるように設定される。すなわち、放電灯500の輝度が低い程、振幅aと振幅bの比b/aは低く設定される。これにより、より確実に、電極610、710に突起618、718を形成し、その突起618、718の長さを一定にすることができる。
【0051】
尚、前記変調周波数は、放電灯500の輝度、すなわち、駆動電流の大きさに応じて設定するようになっていてもよいが、放電灯500の輝度によらず、一定であることが好ましい。一定であるほうがより単純な制御で突起618、718の維持が可能になる。前記範囲で、放電灯500の輝度、すなわち、駆動電流の大きさに応じて、変調周波数を設定する場合、変調周波数は、放電灯500の輝度が低い程、大きく設定される。これにより、突起618、718の長さを一定にすることができる。
【0052】
また、前記B/Aは、放電灯500の輝度、すなわち、駆動電流の大きさに応じて設定するようになっていてもよいが、放電灯500の輝度によらず、一定であることが好ましい。一定であるほうがより単純な制御で突起618、718の維持が可能になる。また、前記範囲で、放電灯500の輝度、すなわち、駆動電流の大きさに応じて、B/Aを放電灯を設定する場合、B/Aは、放電灯500の輝度が低い程、50%から離れた値に設定される。これにより、突起618、718の長さを一定にすることができる。尚、前記50%から離れた値は、50%よりも大きい値でもよく、また、50%よりも小さい値でもよい。
また、変調周波数は、前記b/a及び定格電力等に応じて設定することが好ましい。これにより、より確実に電極610、710に突起618、718を形成することができる。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、光源装置1は放電灯500の黒化を防止し、長寿命化を図ることができる。また、放電灯500の輝度によらず、電極610、710に突起618、718が形成され、電極間距離を一定の距離に保持することができ、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0054】
(2)本実施形態によれば、振幅変調器32は輝度に応じて、比b/aを変化させている。これにより、放電灯500の輝度によらず、電極610、710の突起618、718を維持し、電極間距離を一定の距離に保持することができる。従って、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0055】
(3)本実施形態によれば、放電灯500の輝度が低い程、比b/aは小さく設定される。つまり、低輝度ほど電極610、710の温度変動を抑えている。これにより、低輝度時の突起618、718の成長しすぎにより、突起618、718が潰れることを防止できる。従って、より確実に電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0056】
(4)本実施形態によれば、放電灯500の輝度によらず、振幅変調器32が振幅変調する変調周波数が、10Hz以上1kHz以下の範囲で一定にしている。これにより、複雑な電流制御をなくすことができる。従って、より確実に電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0057】
(5)本実施形態によれば、第1の区間41と第2の区間42との期間の和Aに対して第1の区間の期間Bが占める割合B/Aが一定となっている。これにより、複雑な電流制御をなくすことができる。従って、より確実に電極間距離を一定の距離に保持することができる為、放電灯500を効率良く駆動することができる。
【0058】
(6)本実施形態によれば、交流電流の周波数が1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下となっている。交流電流の周波数がこの範囲にあるとき、音響共鳴効果によって光源装置の放電が不安定になることを防止することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる駆動電流の波形について図5及び図6を用いて説明する。尚、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の部材または部位については詳細な説明は省略する。本実施形態が第1実施形態と異なるところは、駆動電流の波形の形状が異なっている点にある。
【0060】
まずは、第2の区間42における駆動電流の振幅は一定であり、第1の区間41において、駆動電流の振幅が経時的に変化している例を説明する。
【0061】
図5は、駆動電流の構成例における包絡線を説明するための模式図である。図5(a)に示す構成例では、駆動電流の包絡線のうち、駆動電流が正の値のときの包絡線(以下、単に「包絡線」と言う)は、第1の区間41において、経時的に上昇している(駆動電流の振幅が漸増)。すなわち、包絡線は、傾きが正の直線状をなしている。図5(b)に示す構成例では、包絡線は、第1の区間41において、経時的に下降している(駆動電流の振幅が漸減)。すなわち、包絡線は、傾きが負の直線状をなしている。
【0062】
図5(c)に示す構成例では、包絡線は、第1の区間41において、上側に凸となるように湾曲した曲線状をなしている。図5(d)に示す構成例では、包絡線は、第1の区間41において、下側に凸となるように湾曲した曲線状をなしている。図5(e)に示す構成例では、包絡線は、第1の区間41において、経時的に、段階的に上昇している。図5(f)に示す構成例では、包絡線は、第1の区間41において、経時的に、段階的に下降している。
【0063】
次に、第1の区間41において、振幅は一定であり、第2の区間42において、振幅が経時的に変化している駆動電流の構成例を説明する。
図6は、駆動電流の構成例における包絡線を説明するための模式図である。図6(a)に示す構成例では、包絡線は、第2の区間42において、経時的に上昇している(駆動電流の振幅が漸増)。すなわち、包絡線は、傾きが正の直線状をなしている。図6(b)に示す構成例では、包絡線は、第2の区間42において、経時的に下降している(駆動電流の振幅が漸減)。すなわち、包絡線は、傾きが負の直線状をなしている。図6(c)に示す構成例では、包絡線は、第2の区間42において、上側に凸となるように湾曲した曲線状をなしている。
【0064】
図6(d)に示す構成例では、包絡線は、第2の区間42において、下側に凸となるように湾曲した曲線状をなしている。図6(e)に示す構成例では、包絡線は、第2の区間42において、経時的に、段階的に上昇している。図6(f)に示す構成例では、包絡線は、第2の区間42において、経時的に、段階的に下降している。
【0065】
また、第1の区間41及び第2の区間42の両方において振幅が経時的に変化している駆動電流の構成例については、図示は省略するが、図5に示す前記第1の区間41における包絡線と、図6に示す前記第2の区間42における包絡線とを任意に組み合わせて構成することができる。
【0066】
以上、光源装置及び放電灯の駆動方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、前記実施形態に他の任意の構成物が付加されていてもよい。変形例を以下に述べる。
【0067】
(変形例1)
第1実施形態では、変調周波数、b/a及びB/Aは一定であるが、これに限らない。変調周波数、b/a及びB/Aは、それぞれ、経時的に変化していてもよい。
【0068】
(変形例2)
第1実施形態では、第1の区間41及び第2の区間42のそれぞれにおいて、駆動電流の振幅は一定であるが、第1の区間41と第2の区間42とのいずれか一方において、駆動電流の振幅が経時的に変化していてもよい。また、第1の区間41及び第2の区間42の両方において、駆動電流の振幅が経時的に変化していてもよい。
【0069】
(変形例3)
第1実施形態では、増幅器33は、振幅変調器32の後段に設置されているが、これに限らず、例えば、増幅器33は、振幅変調器32の前段に設置されていてもよい。
【実施例】
【0070】
次に、具体的実施例について説明する。
(実施例1)
図1に示され、高輝度及び低輝度のそれぞれで点灯することができ、下記の構成の光源装置を作成した。
放電灯本体の構成材料:石英ガラス
放電灯本体内の封入物:アルゴン、水銀、臭素
放電灯本体内の点灯時の気圧:200atm
電極の構成材料:タングステン
電極間距離:1.1mm
定格電力:200W
駆動電流の周波数:13.56Hz
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:50%
低輝度時のb/a:70%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:50%
【0071】
(実施例2)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:4.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:2.0A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:35%
低輝度時のb/a:65%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:50%
【0072】
(実施例3)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:5.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:2.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:20%
低輝度時のb/a:60%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:50%
【0073】
(実施例4)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:60%
低輝度時のb/a:70%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:40%
【0074】
(実施例5)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:60%
低輝度時のb/a:70%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:60%
【0075】
(実施例6)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:200Hz
高輝度時のb/a:65%
低輝度時のb/a:70%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:40%
【0076】
(実施例7)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:200Hz
高輝度時のb/a:65%
低輝度時のb/a:70%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:60%
【0077】
(比較例1)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:70%
低輝度時のb/a:70%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:50%
【0078】
(比較例2)
条件を下記のように変更した以外は、前記実施例1と同様の光源装置を作成した。
高輝度時の駆動電流の平均値:3.0A
低輝度時の駆動電流の平均値:1.5A
高輝度時の変調周波数:150Hz
低輝度時の変調周波数:150Hz
高輝度時のb/a:30%
低輝度時のb/a:30%
高輝度時のB/A:50%
低輝度時のB/A:50%
【0079】
[評価]
実施例1〜7、比較例1及び2に対し、それぞれ、下記のようにして各評価を行った。その結果は、下記表1に示す通りである。
各実施例で高輝度、低輝度でそれぞれ10hずつ点灯させた。
電極突起については高輝度、低輝度それぞれ10h点灯させた後に電極を観察し突起が維持されているかどうかを確認した。
黒化については、高輝度、低輝度それぞれ10h点灯させた後に管壁状態を確認し、黒化が発生しているかを確認した。
【0080】
【表1】

【0081】
上記表1から明らかなように、実施例1〜7では、高輝度及び低輝度のいずれの場合も電極の先端に確実に突起が形成され、また、黒化は発生せず、良好な結果が得られた。これに対し、比較例1では、高輝度において、電極に形成された突起が延び過ぎてだれてしまい、電極間が広がってしまい、また、比較例2では、低輝度において、電極に突起が形成されなかった。
【符号の説明】
【0082】
1…光源装置、32…振幅変調部としての振幅変調器、33…輝度調整部としての増幅器、41…第1の区間、42…第2の区間、200…放電灯駆動装置、500…放電灯、610,710…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有する放電灯と、
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を振幅変調する振幅変調部と、前記交流電流の大きさを調整して前記放電灯の輝度を調整する輝度調整部とを有し、前記振幅変調部により振幅変調した前記交流電流を駆動電流として前記一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯する放電灯駆動装置と、を備え、
前記振幅変調部は、第1の区間と、前記第1の区間よりも前記駆動電流の振幅が小さい第2の区間とが交互に繰り返されるように前記交流電流を振幅変調し、前記第1の区間における駆動電流の振幅の平均値をa、前記第2の区間における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aを前記放電灯の輝度に応じて設定することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記比b/aは、前記放電灯の輝度が低い程、小さく設定されることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記振幅変調部が振幅変調する変調周波数が、10Hz以上1kHz以下の範囲で、前記放電灯の輝度によらず、一定であることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1の区間と前記第2の区間の合計の期間をA、前記第1の区間の期間をBとしたとき、B/Aは、前記放電灯の輝度によらず、一定であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記交流電流の周波数は、1kHz以上100kHz以下、または、3MHz以上10GHz以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
周波数が1kHz以上10GHz以下の交流電流を駆動電流として放電灯の一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯し、前記交流電流の大きさを調整して前記放電灯の輝度を調整する放電灯の駆動方法であって、
第1の区間と、前記第1の区間よりも前記駆動電流の振幅が小さい第2の区間とが交互に繰り返されるように、前記交流電流を振幅変調し、前記第1の区間における駆動電流の振幅の平均値をa、前記第2の区間における駆動電流の振幅の平均値をbとしたとき、その振幅aと振幅bの比b/aが前記放電灯の輝度に応じて設定された前記駆動電流を生成し、該駆動電流を前記一対の電極に供給し、前記放電灯を点灯することを特徴とする放電灯の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−30300(P2013−30300A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164024(P2011−164024)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】