説明

光照射装置および光照射方法

【課題】露出した接着シートの接着剤に不活性ガスを効率よく供給することで、不活性ガスの供給量を減らしても接着剤の硬化不良を確実に抑制することができる光照射装置および光照射方法を提供すること。
【解決手段】石英ガラス22の表面に形成した接近面22Bおよび凹部22Aによって、空間SPに供給した不活性ガスを接着シートSの貼付端縁部SEに誘導することで、この貼付端縁部SE近傍を確実に不活性ガス雰囲気とした状態で発光手段4から所定波長の光を照射することができ、接着シートSの接着剤層ADの硬化不良を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートが貼付された被着体を含む被照射体に光を照射する光照射装置および光照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの表面に設けられた光硬化型の樹脂に紫外線等の光を照射して樹脂を硬化させる紫外線照射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、半導体ウェハ等の被着体の表面に光硬化型の接着剤層を介して、貼付された接着シートを剥離する剥離装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような剥離装置において接着シートを剥離する際には、その前処理として特許文献1に記載されたような光照射装置を用い、接着剤層に光を照射して接着剤を硬化させることによって接着力を弱めた後、被着体から接着シートを剥離することが行われている。
【0003】
特許文献1の紫外線照射装置は、ワークの表面に設けられた樹脂に対して紫外線を照射する紫外線ランプと、紫外線を照射する際に樹脂の周囲を不活性ガス雰囲気として硬化不良を防止するガス供給部とを備えて構成されている。ガス供給部は、樹脂に対向して設けられた複数のガス放出孔を有し、これらの放出孔から窒素等の不活性ガスをワークに向かって放出しつつ、紫外線ランプから樹脂に向かって紫外線を照射するように構成されている。
特許文献2に記載の保護テープ(接着シート)の場合、接着シートの端縁に接着剤層が露出しているため、この部分が大気に触れていると大気中の酸素によって接着剤が硬化しない所謂酸素阻害を引き起こしてしまうため、特許文献1のような紫外線照射装置を用いて接着シートの端縁に露出した接着剤層も確実に硬化させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−81738号公報
【特許文献2】特開2009−70837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の紫外線照射装置のように、樹脂(接着シート)と対向して設けられる複数のガス放出孔から不活性ガスを供給した場合には、不活性ガスを大量に消費してしまう。かといって、不活性ガスの供給量を減らすと、露出している接着剤の硬化不良が発生し、接着シートの剥離の際に、剥離される接着シートと共に半導体ウェハを持ち上げてしまい、当該半導体ウェハを破損させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、露出した接着シートの接着剤に不活性ガスを効率よく供給することで、不活性ガスの供給量を減らしても接着剤の硬化不良を確実に抑制することができる光照射装置および光照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の光照射装置は、接着シートと当該接着シートが接着剤層を介して貼付された被着体とを含む被照射体に光を照射する光照射装置であって、前記被照射体を支持する支持手段と、前記被照射体に対向配置されて所定波長の光を照射可能な発光手段と、前記被照射体と前記発光手段との間の空間に不活性ガスを供給する供給手段と、前記供給した不活性ガスを前記被照射体における前記接着シートの貼付端縁部に誘導するガス誘導手段とを備える、という構成を採用している。
【0008】
この際、本発明の光照射装置では、前記供給手段は、前記不活性ガスが供給される空間に不活性ガスを供給する給気口を有し、前記給気口は、前記被照射体の被照射面と平行な方向に不活性ガスを供給可能に構成されていることが好ましい。
また、前記被照射体と前記発光手段との間には、当該発光手段から照射される光を透過可能な照射補助部材が設けられ、前記照射補助部材における前記被照射体と対向する側の表面に形成されるとともに、前記被照射体に接近した接近面と、この接近面に連なるとともに、当該接近面よりも前記被照射体から離間した凹部とよって前記ガス誘導手段が構成されていることが好ましい。
さらに、前記凹部は、前記接近面から径方向外側に傾斜した傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0009】
一方、本発明の光照射方法は、接着シートと当該接着シートが接着剤層を介して貼付された被着体とを含む被照射体に光を照射する光照射方法であって、前記被照射体を発光手段に対向させて支持し、前記被照射体と前記発光手段との間の空間に不活性ガスを供給するとともに、供給した不活性ガスを前記被照射体における前記接着シートの貼付端縁部に誘導し、前記不活性ガスを供給した状態で前記発光手段から前記被照射体に所定波長の光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明によれば、ガス誘導手段によって不活性ガスを接着シートの貼付端縁部に誘導することで、接着シートの端縁部分に効率よく不活性ガスを供給することができ、少ない不活性ガスの供給量でも確実に接着シートの端縁部分を不活性ガス雰囲気とすることができ、所定波長の光を照射したときに、接着シートの接着剤が硬化不良を引き起こすことを確実に防止することができる。従って、例えば、光照射後に剥離装置で接着シートを剥離する際に、接着シートの端縁部分の接着剤層が硬化していないことで、被着体が当該接着シートとともに持ち上げられて破損してしまうようなことを防止することができる。
また、接着シートを剥離するまでの間、接着シートの端縁部分に露出した接着剤に塵や埃等の不要物が付着することも防止できる。
【0011】
また、供給手段によって不活性ガスを空間に供給することで、ガスのさらなる節約ができるとともに、給気口から被照射面に沿って不活性ガスを供給することで不活性ガスの滞留をなくし、斑のない不活性ガス雰囲気を形成することができる。
さらに、照射補助部材の表面に形成された接近面と凹部とによってガス誘導手段を構成することで、照射する光を遮断してしまうような別部材を設けることなく、所望の位置に不活性ガスを誘導することができる上、構造の簡単化も行える。
また、接近面の外縁に傾斜面を形成することで、不活性ガスを凹部からスムーズに接近面上に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る光照射装置の断面図。
【図2】図1の光照射装置の一部の斜視図。
【図3】図1の光照射装置の動作説明図。
【図4】本発明の変形例に係る光照射装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態において基準となる図を挙げることなく、例えば、上、下、左、右、または、手前、奥といった方向を示した場合は、全て図1を基準としている。
図1、2において、光照射装置1は、基材シートBSおよび接着剤層ADを有する接着シートSと、当該接着シートSが接着剤層ADを介して貼付された被着体としての半導体ウェハW(以下、単にウェハWということがある)を含む被照射体W1に光を照射する装置である。被照射体W1は、ウェハWの裏面に貼付されたマウントシートMSを介してリングフレームRFと一体化されている(以下、単に一体物WMということがある)。接着剤層ADは、光硬化型(紫外線硬化型)の接着剤で構成され、所定波長(例えば、λ=365nm)の光が照射されることによって硬化が始まるように設計され、接着剤層ADが硬化することでその接着力が低下してウェハWから剥離しやすくなっている。
【0014】
光照射装置1は、装置本体2と、この装置本体2上部に取り付けられるとともに、リングフレームRFを介して被照射体W1を支持する支持手段3と、装置本体2の内部に設けられて被照射体W1に向かって所定波長の光を照射可能な発光手段4と、この発光手段4を左右方向に移動可能に支持する移動手段5と、被照射体W1、装置本体2および支持手段3で形成される空間SPに窒素ガス等の不活性ガスを供給する供給手段6とを備えて構成されている。また、以上各部の動作が図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
【0015】
装置本体2は、上部開口型の角筒状の外部フレーム21と、この外部フレーム21の上方に設けられた照射補助部材としての石英ガラス22と、外部フレーム21に取り付けられて回動可能なアーム26に支持された蓋部材27とを備えて構成されている。外部フレーム21の上面23には、石英ガラス22を嵌め込むための円形の開口部24と、石英ガラス22を支持するリブ部25とが形成され、この上面23に支持手段3が支持されている。石英ガラス22は、発光手段4から照射された光を透過可能に設けられ、開口部24を密閉するようにして取り付けられている。また、石英ガラス22の上面には、支持手段3で支持された被照射体W1に接近した接近面22Bと、この接近面22Bに連なるとともに、当該接近面22Bよりも被照射体W1から離間した凹部22Aとが設けられている。凹部22Aは、接近面22Bから径方向外側に傾斜した傾斜面22Cと、外部フレーム21の上面23と略フラットに形成された底面22Dとを備えている。本発明のガス誘導手段は、接近面22B、傾斜面22Cおよび底面22Dによって構成されている。蓋部材27は、図1に示す閉塞状態としたときに、下面側がマウントシートMSに当接するように設けられるとともに、図示しないバネや弾性部材等の付勢手段によって、リングフレームRFを支持手段3側(下方向)に付勢可能に設けられている。なお、蓋部材27の下面側に吸引等によってマウントシートMSを支持可能な上部支持手段を設けてもよい。
【0016】
支持手段3は、全体円環状の支持部材31で構成され、支持部材31は、上方に開口する凹部の底面であるとともに、一体物WMを支持するための支持部32と、この支持部32に連なるとともに、支持部32よりも下側に位置する内周面部33とを有して形成されている。このような支持手段3に対して、被照射体W1は、接着シートSを下向きにしてリングフレームRFを支持部32に載置することで支持され、この支持状態において、接着剤層ADの下面が被照射面WAとされ、接着シートSと接近面22B上面とが比較的小さな隙間を介して対向するようになっている。なお、支持部32の上面には、リングフレームRFのノッチに係合して被照射体W1を位置決め可能な図示しない位置決めピンが設けられている(図4参照)。また、接着シートSと接近面22B上面とは、接触していてもよい。ここで、支持手段3は、被照射体W1の支持状態において、石英ガラス22と、支持部材31の内周面部33と、リングフレームRFと、マウントシートMSとで空間SPが形成されるようになっている。この空間SPは、内周面部33、リングフレームRF、マウントシートMS、傾斜面22Cおよび底面22Dで形成されるリング状空間SP1と、接着シートSと接近面22Bとの間に形成される隙間空間SP2とで構成されている。なお、隙間空間SP2は形成されなくてもよい。
【0017】
発光手段4は、図1に示すように、上面開口型のケース41と、このケース41の開口に設けられる透過ガラス42と、ケース41内部に設けられる光源43および断面略視U字型の反射板44とを有して構成されている。光源43は、LED(発光ダイオード、Light Emitting Diode)ランプが採用されている。このような発光手段4は、紙面奥行き方向に延びて接着剤層ADの最大外径よりも長く形成されるとともに、光源43からの光は反射板44によって接着シートSの接着剤層ADに焦点を合わせて照射されるようになっている。なお、LEDランプは紙面奥行き方向に複数設けられてもよいし、単数で構成してもよい。
【0018】
移動手段5は、外部フレーム21の底面に支持され、左右方向に延びる駆動機器としての単軸ロボット51からなり、当該単軸ロボット51のスライダ52にケース41が支持されている。このような移動手段5によって左右方向に発光手段4を移動することで、光源43から発光された所定波長の光を接着シートSの接着剤層AD全面に照射可能に構成されている。
【0019】
供給手段6は、不活性ガスが貯蔵されている貯蔵部61と、この貯蔵部61に図示しない配管等を介して接続されるとともに、空間SP内に開口する給気口62と、この給気口62に対して支持部材31の反対側に設けられて空間SP内の不活性ガスを排気する排気口63と、この排気口63に図示しない配管等を介して接続されるとともに、不活性ガスを処理する処理部64とを備えて構成されている。
【0020】
以上のような光照射装置1の動作としては、先ず、リングフレームRFのノッチが図示しない位置決めピンで位置決めされるように一体物WMを支持手段3上に載置する。これにより、空間SPが形成される。次いで、蓋部材27を回動させて図1に示すように閉塞状態にすると、一体物WMが図示しない付勢手段によって蓋部材27の下面と支持部32とに挟まれてその移動が規制される。このとき、蓋部材27の下面がマウントシートMSに当接するので、図示しない上部支持手段を介して吸着支持してもよい。
【0021】
次に、供給手段6によって空間SP内部に不活性ガスを供給すると、図2、3の白抜き矢印で示すように、給気口62からリング状空間SP1に流れる気流と、隙間空間SP2に流れる気流とが発生する。リング状空間SP1の気流は、支持部材31の内周面部33に沿って周回して排気口63から排気される。一方、傾斜面22Cに沿って被照射体W1に向かって上昇し、隙間空間SP2に流れた気流は、接近面22Bの上面と接着シートSの表面に沿って流れて排気口63から排気される。このように、ガス誘導手段は、空間SP内部にくまなく不活性ガスを充満させることができるようになっている。なお、排気口63から不活性ガスを吸引して空間SP内の気流の滞留を抑制し、空間SP内部の大気を積極的に不活性ガスに置換する吸引ファンや吸引ポンプ等の吸引手段を設けてもよい。また、不活性ガスは、光照射中に供給を停止してもよいし、供給し続けていてもよい。
【0022】
以上のようにして空間SP内部に不活性ガスが充満され、接着シートSの表面および貼付端縁部SEが不活性ガス雰囲気下におかれた状態において、発光手段4は、光源43から光を発し、発せられた光が反射板44によって集光され、図1中紙面直交方向に延びるライン光となる。このライン光は、接着シートSの接着剤層ADに焦点が合わせられている。そして、移動手段5が、前記ライン光を接着剤層ADの照射開始端である左端から照射終了端である右端にかけて照射可能に発光手段4を移動させることで、接着シートSの接着剤層AD全体を硬化させる。なお、マウントシートMSが蓋部材27に当接していることで、不活性ガスの供給によって被照射体W1が上方に離間し、ライン光の焦点がずれることを防止することができる。また、マウントシートMSが蓋部材27の図示しない上部支持手段で吸着支持される構成とすれば、被照射体W1の自重や不活性ガスの吸引手段での吸引によって垂れ下がり、ライン光の焦点がずれることを防止することができる。隙間空間SP2を形成しないことで、ライン光の焦点ずれを防止することもできる。接着剤層AD全体への光の照射が終了したら、発光手段4が光源43を消灯して照射開始位置に復帰するとともに、供給手段6が不活性ガスの供給を停止する。その後、蓋部材27を開いて適宜な搬送装置によって一体物WMが取り出され、次工程である例えば剥離装置等へ搬送され、以降上記同様の動作を繰り返す。
【0023】
本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、石英ガラス22の表面に形成した接近面22Bおよび凹部22Aによって、空間SP内に供給した不活性ガスを接着シートSの貼付端縁部SEに誘導することで、この貼付端縁部SE近傍を確実に不活性ガス雰囲気とした状態で発光手段4から所定波長の光を照射することができ、酸素阻害による接着シートSの接着剤層ADの硬化不良を防止することができる。従って、ウェハWから接着シートSを剥離する際に、ウェハWが破損したり、光を照射後に適宜な搬送手段で一体物WMを搬送するとき等において、接着シートSの貼付端縁部SEに露出した接着剤ADに塵や埃等の不要物が付着することも防止することができる。
【0024】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は前記記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され且つ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状などの詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は本発明に含まれるものである。
【0025】
例えば、前記実施形態では、ウェハWに接着シートSが貼付された被照射体W1に光を照射する光照射装置1を例示したが、被照射体としては、ウェハWを被着体とするものに限られない。すなわち、本発明における被着体および接着シートSの種別や材質などは、特に限定されず、例えば、被着体が適宜な物品(例えば、段ボールケースや樹脂容器等)であって、接着シートSがラベルであってもよく、被着体が半導体ウェハである場合には、接着シートSが保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルムなどであってもよい。また、半導体ウェハは、シリコン半導体ウェハや化合物半導体ウェハ等が例示でき、このような半導体ウェハに貼付する接着シートは、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルムに限らず、その他の任意のシート、フィルム、テープ等、任意の用途、形状の接着シート等が適用できる。さらに、被着体としては、ガラス板、鋼板、樹脂板等や、その他の板状部材のみならず、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。
【0026】
また、供給手段6としては、前記実施形態のように給気口62および排気口63が各1つずつ設けられたものに限らず、いずれか一方または両方が複数箇所に設けられていてもよく、例えば、図4(A)に示すように、給気口62が2箇所に設けられ、排気口63が1箇所に設けられていてもよいし、図4(B)に示すように、給排気口63が各2箇所ずつ設けられていてもよい。
図4(B)に示す本発明の変形例に係る光照射装置では、所謂先ダイシングによって接着シートS上で切断溝Cが形成され個片化されたウェハWが被照射体W2とされ、個片化されたウェハW側にマウントシートMSが貼付されてリングフレームRFに一体化されている。このような被照射体W2の場合、周方向12時と9時の方向に給気口62が設けられるとともに、3時と6時の方向に排気口63が設けられた支持手段3を採用することが好ましい。これにより、12時の方向の給気口62から供給された不活性ガスが、6時の方向の排気口63から排気されることで、縦の切断溝C内に不活性ガスが入り込みやすくなり、また、9時の方向の給気口62から供給された不活性ガスが、3時の方向の排気口63から排気されることで、横の切断溝C内に不活性ガスが入り込みやすくなる。よって、不活性ガスの滞留をなくして効率よく接着シートSの貼付端縁部(この場合は、ウェハWの切断端縁部)に不活性ガスを誘導することができるようになっている。
【0027】
また、前記実施形態では、照射補助部材としての石英ガラス22の凹凸形状によってガス誘導手段を構成したが、ガス誘導手段は、照射補助部材と別体の部材で構成されてもよいし、支持手段3や供給手段6の一部に設けられていてもよい。支持手段3にガス誘導手段を設ける場合には、支持部材31の内部に環状のガス導通路を形成し、このガス導通路から内周面部33に開口した複数の給気口を設け、これら複数の給気口から空間に供給される不活性ガスを接着シートSの貼付端縁部SEに向けて吹き出させるような構成が例示できる。また、供給手段6にガス誘導手段を設ける場合には、複数の給気口を有する環状の管を供給手段6に設け、複数の給気口から接着シートSの貼付端縁部SEに向けて不活性ガスを吹き出させるような構成が例示できる。
さらに、照射補助部材にガス誘導手段を設ける場合にも、前記実施形態における石英ガラス22の接近面22B、底面22Dおよび傾斜面22Cのような凹凸形状に限らず、被照射体に応じた適宜な表面形状や断面形状が採用可能である。また、接近面22Bを複数設けてもよい。さらに、接着シートSが複数個所に点在して貼付されているような場合は、点在している接着シートSの位置に合わせて、複数の接近面22Bが対向するように構成してもよい。
【0028】
また、発光手段4としては、前述したような移動手段5によって移動されるものに限らず、被照射体の形状に応じた広さを有する発光面を有して構成され、発光面全体の一度の発光によって被照射体全面に光を照射可能なものでもよい。
さらに、光源43は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、蛍光灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプなどの他の発光手段を採用することができ、被照射体に光反応を起こさせることができるもので構成されていればよく、例えば、被照射体に赤外線を照射して軟化させる光反応を起こさせてもよい。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
また、前記実施形態では不活性ガスとして窒素ガスを用いる例について説明したが、これに限定されることはなく、窒素ガス以外にヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスを用いてもよい。
さらに、前記実施形態では基材シートBSの一方の面に接着剤層ADを有する2層構造の接着シートSを例示したが、他の層を有する3層以上の接着シートSであってよいし、例えば、基材シートBSのない両面接着シートのような1層構造の接着シートSであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 光照射装置
3 支持手段
4 発光手段
6 供給手段
22 石英ガラス(照射補助部材)
22A 凹部
22B 接近面
22C 傾斜面
62 給気口
63 排気口
64 吸引部(吸引手段)
S 接着シート
SE 貼付端縁部
SP 空間
W ウェハ(被着体)
W1,W2 被照射体
WA 被照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シートと当該接着シートが接着剤層を介して貼付された被着体とを含む被照射体に光を照射する光照射装置であって、
前記被照射体を支持する支持手段と、
前記被照射体に対向配置されて所定波長の光を照射可能な発光手段と、
前記被照射体と前記発光手段との間の空間に不活性ガスを供給する供給手段と、
前記供給した不活性ガスを前記被照射体における前記接着シートの貼付端縁部に誘導するガス誘導手段とを備えることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記供給手段は、前記不活性ガスが供給される空間に不活性ガスを供給する給気口を有し、前記給気口は、前記被照射体の被照射面と平行な方向に不活性ガスを供給可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記被照射体と前記発光手段との間には、当該発光手段から照射される光を透過可能な照射補助部材が設けられ、
前記照射補助部材における前記被照射体と対向する側の表面に形成されるとともに、前記被照射体に接近した接近面と、この接近面に連なるとともに、当該接近面よりも前記被照射体から離間した凹部とよって前記ガス誘導手段が構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記接近面から径方向外側に傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光照射装置。
【請求項5】
接着シートと当該接着シートが接着剤層を介して貼付された被着体とを含む被照射体に光を照射する光照射方法であって、
前記被照射体を発光手段に対向させて支持し、
前記被照射体と前記発光手段との間の空間に不活性ガスを供給するとともに、供給した不活性ガスを前記被照射体における前記接着シートの貼付端縁部に誘導し、
前記不活性ガスを供給した状態で前記発光手段から前記被照射体に所定波長の光を照射することを特徴とする光照射方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−206266(P2012−206266A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71694(P2011−71694)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】