説明

光照射装置

【課題】 複数の棒状の高圧放電ランプが、各々のランプ中心軸が一方向に延びる状態で、当該一方向に並んで配置された構成のものにおいて、ランプ点灯初期時と同様の均一な照度分布が長時間の間安定して得られる光照射装置を提供すること。
【解決手段】 この光照射装置は、各々バルブの内部に一対の電極が対向配置された複数の棒状の高圧放電ランプが、各々のランプ中心軸が一方向に延びる状態で、当該一方向に並んで配置された構成のものにおいて、隣接する2つの高圧放電ランプの各々の端部には、遮光体が設けられており、当該2つの高圧放電ランプの一方の高圧放電ランプが他方の高圧放電ランプに対して、均一な照度分布が得られるよう前記一方向に調整された位置に配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクや塗料の乾燥、樹脂の硬化処理に使用する光化学反応用装置の紫外線照射光源や、半導体基板や液晶ディスプレイ用の液晶基板を露光する露光装置の紫外線照射光源としては、例えば200〜400nmの波長領域のいずれかにピークを有する、長尺なロングアーク型の高圧放電ランプが用いられている。この種の高圧放電ランプにおいては、ランプ自体の破損防止のためや、被処理物への熱的影響を回避するために、冷却されて使用されることが検討されている。
例えば、この冷却を効果的に行うことができる構造をもつロングアーク型高圧放電ランプとして、放電管の外周に外管を接触状態ないし密着状態に設け、外管の周囲を冷却することによって、放電管を間接的に冷却する構成のものが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
図13は、従来の光照射装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
この光照射装置は、例えば石英ガラスからなる円筒状の外管77と、この外管77の内部において、外周面の少なくとも一部が外管77の内周面に接触状態ないしは密着状態で配置された全体が棒状の放電管71とにより構成された二重管構造のロングアーク型の高圧放電ランプ70を光源として具えている。
放電管71は、両端が封止された、例えば石英ガラスからなる直管状の内管72の内部に、各々例えばタングステンからなる一対の棒状の電極73が対向配置されると共に水銀および希ガスが適宜の量で封入されてなり、各電極73が内管72に形成されたロッド状の封止部72Aに気密に埋設された例えばモリブデンからなる金属箔74を介して封止部72Aの外端より軸方向外方に突出して伸びる外部リード75に電気的に接続されている。内管72と外管77は、両端部において、ベース78を介して接着剤により固定されている。
この光照射装置は、高圧放電ランプ70が内部に挿通された状態で高圧放電ランプ70の管軸に沿って伸びるよう設けられ、これにより、高圧放電ランプ70の外周面との間に冷却水が流過される冷却水流路Rを形成する円筒状の冷却管80と、高圧放電ランプ70および冷却管80の両端に配置された、内部空間が高圧放電ランプ70と冷却管80との間の冷却水流路Rに連通する管状の冷却水供給流路形成部材85および冷却水排出流路形成部材86とにより構成された冷却機構を有する。高圧放電ランプ70および冷却管80は、例えば管軸が水平方向に伸びる姿勢で、両端部が冷却水供給流路形成部材85および冷却水排出流路形成部材86に接続された状態で、軸方向内方側の口締め部88によって例えばOリング(図示せず)を介して冷却管80の外周面が保持固定されていると共に軸方向外方側の口締め部89によって例えばOリング(図示せず)を介して高圧放電ランプ70の外周面が保持固定されている。
そして、高圧放電ランプ70の光照射方向に対して背面側の位置には、反射鏡90が設けられ、高圧放電ランプ70からの光は、下方のマスクステージ95に支持されたマスクMを介して、ワークステージ96上の被照射物Wに照射される。
【0004】
近年、例えば液晶表示装置の大型化に伴い、液晶基板も幅寸法が大きいものが要求されるが、1本の棒状の高圧放電ランプでは、大面積の照射エリアをカバーすることが困難であるため、実際上は、棒状の高圧放電ランプの複数を、ワークの搬送路のレベルより上方のレベル位置において、ワークの幅方向(棒状の放電ランプの長さ方向)に並べると共に、隣接する高圧放電ランプの端部が干渉しないよう、互いに搬送方向に変位させた状態(例えば千鳥状)で配置し、これにより、ワークに対する積算光量がワークの幅方向において均一となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−146962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、複数のロングアーク型の高圧放電ランプをその長さ方向に並べて配置した構成のものにおいては、互いに隣接する2本の高圧放電ランプの境界領域(発光端部領域)において照度が不均一になることが回避されることが必要とされるところ、初期に境界領域の照度が均一であっても、点灯時間の経過と共に境界領域の照度が低下し、高圧放電ランプそれ自体の寿命より短い時間で、均一な照度分布を維持することができなくなるという問題がある。
【0007】
本発明者らは、境界領域の照度が低下する理由は、バルブにおける高圧放電ランプの電極の近傍を包囲する部分に黒化現象が生じるためであると推測し、高圧放電ランプの端部領域からの発光を利用しないようにすることにより、高圧放電ランプそれ自体の寿命まで、均一な照度分布が安定して得られるものと考え、本発明を完成させるに至った。
本発明の目的は、複数本の棒状の高圧放電ランプが各々のランプ中心軸が互いに同方向に延びるよう長さ方向に並んで配置されてなる構成のものにおいて、ランプ点灯初期時と同様の均一な照度分布が長時間の間安定して得られる光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光照射装置は、各々バルブの内部に一対の電極が対向配置された複数の棒状の高圧放電ランプが、各々のランプ中心軸が一方向に延びる状態で、当該一方向に並んで配置された光照射装置において、
隣接する2つの高圧放電ランプの各々の端部には、遮光体が設けられており、当該2つの高圧放電ランプの一方の高圧放電ランプが他方の高圧放電ランプに対して、均一な照度分布が得られるよう前記一方向に調整された位置に配列されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の光照射装置においては、隣接する2つの高圧放電ランプの各々のランプ中心軸が、一方のランプ中心軸が他方のランプ中心軸に対して、前記一方向に直交する方向に同一の水平面内で変位されて配置された構成とすることができる。
【0010】
また、本発明の光照射装置においては、前記高圧放電ランプの各々は、前記バルブの外周面に沿って冷却水を流通させる冷却水流路を形成する水冷管を有し、前記遮光体が前記水冷管の内周面または外周面に設けられた構成、あるいは、前記高圧放電ランプの各々は、内部に前記バルブがその外周面の少なくとも一部が接触状態ないしは密着状態で配置された外管を有すると共に、当該外管の外周面に沿って冷却水を流通させる冷却水流路を形成する水冷管を有し、前記遮光体が、前記水冷管の内周面または外周面、あるいは前記外管の外周面に設けられた構成とすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、前記遮光体が金属よりなる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光照射装置によれば、複数の棒状の高圧放電ランプが、各々のランプ中心軸が一方向に延びる状態で、当該一方向に並んで配置された構成のものにおいて、隣接する2つの高圧放電ランプの各々の端部には、遮光体が設けられており、当該2つの高圧放電ランプの一方の高圧放電ランプが他方の高圧放電ランプに対して、均一な照度分布が得られるよう一方向に調整された位置に配列された構成とされていることにより、ランプ点灯時間の経過に伴って照度が低下する端部領域からの発光を利用していないので、ランプ点灯初期時と同様の均一な照度分布を長時間の間安定して得ることができる。
【0013】
また、高圧放電ランプの各々が、バルブの外周面に沿って冷却水を流通させる冷却水流路を形成する水冷管を有し、遮光体が水冷管の内周面に設けられた構成のものである場合には、ランプ点灯時において遮光体を冷却水によって直接冷却することができるので、高圧放電ランプからの光照射により加熱されて遮光体自体が劣化または破損することを防止することができ、従って、遮光体の所期の機能を長時間の間維持することができ、上記効果を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光照射装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
【図2】本発明の光照射装置において用いられる高圧放電ランプの一例における構成の概略を示す、ランプ中心軸に沿った断面図である。
【図3】図2に示す高圧放電ランプの一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】(A)実験例1において作製した光照射ユニットにおける高圧放電ランプの配列状態を示す説明図、(B)隣接する高圧放電ランプの各々の端部の位置関係を示す説明図である。
【図5】(A)実験例1において作製した比較用の光照射ユニットにおける高圧放電ランプの配列状態を示す説明図、(B)隣接する高圧放電ランプの各々の端部の位置関係を示す説明図である。
【図6】実験例1において作製した各光照射ユニットによる積算照度を測定するための照度測定システムの構成の概略を示す説明図である。
【図7】本発明に係る光照射ユニットによる一方向における照度分布を示すグラフである。
【図8】図7における隣接する高圧放電ランプの境界部分の照度分布を示すグラフである。
【図9】比較用の光照射ユニットによる一方向における照度分布を示すグラフである。
【図10】図9における隣接する高圧放電ランプの境界部分の照度分布を示すグラフである。
【図11】本発明の光照射装置において用いられる高圧放電ランプの他の例における構成の概略を一部を拡大して示す、ランプ中心軸に沿った拡大断面図である。
【図12】本発明の光照射装置において用いられる高圧放電ランプのさらに他の例における構成の概略を一部を拡大して示す、ランプ中心軸に沿った拡大断面図である。
【図13】従来の光照射装置の一例における構成の概略を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光照射装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
この光照射装置は、内部に平板状の仕切り板55により上下に区画されて形成された上部空間部および下部空間部を有し、下部空間部が複数の棒状の高圧放電ランプ10が配置されるランプ配置空間部51とされていると共に上部空間部が各々の高圧放電ランプ10に給電する電源(不図示)などが配置される電装体配置空間部52とされたケーシング50を具えている。このケーシング50は、例えば、適宜の搬送手段(図示せず)によって搬送される被照射物(ワーク)Wの搬送方向に直交する方向(図1において左右方向、被照射物Wの幅方向)に長尺な全体が略箱型形状のものである。
【0016】
各々の高圧放電ランプ10は、図2および図3に示すように、全体が略棒状の放電管11と、この放電管11が内部に挿通された状態で放電管11の管軸に沿って伸びるよう設けられて放電管11の外周面との間に冷却水が流通される冷却水流路Rを形成する例えば円筒状の水冷管20とを具えた、いわゆる間接水冷型のものであって、例えば波長が200〜450nmである紫外線を含む光を放射する。
【0017】
放電管11は、両端が封止された例えば石英ガラスからなるバルブ12の内部に、各々例えばタングステンからなる一対の棒状の電極13が対向配置されると共に例えば1mg/cm3 以上の水銀およびアルゴンガスなどの希ガスが適宜の量で封入されてなる内管16と、内周面が内管16におけるバルブ12の中央部の外周面に接触状態ないしは密着状態で配置された、例えば石英ガラスからなる外管18により構成されており、内管16と外管18は、内管16の両端の各々に設けられたランプベース19を介して接着剤により固定されている。
内管16における各電極13は、バルブ12におけるロッド状の封止部12Aに気密に埋設された例えばモリブデンからなる金属箔14を介して封止部12Aの外端より軸方向外方に突出して伸びる外部リード15に電気的に接続されている。バルブ12における封止部12Aは、例えば、バルブの構成材料である直管状のパイプ体における両端部を溶融状態にして内部を減圧するシュリンクシール法により形成されている。
【0018】
水冷管20は、高圧放電ランプ10から放射される紫外線を透過する材料、例えば石英ガラスにより構成されている。
【0019】
この高圧放電ランプ10においては、例えば、長さ方向における両端部の各々に、互いに同一の構成を有する水冷ベース25が設けられている。各々の水冷ベース25は、高圧放電ランプ10の長さ方向に延びる中央貫通孔26が形成された略円筒状のものであって、この中央貫通孔26の内周面には、各々内径の大きさの異なる複数の略円柱状空間部を形成する複数の段部が形成されている。
【0020】
放電管11は、外管18の端部部分が内径の大きさが最小の円柱状空間部内に挿入されて水冷ベース25によって保持されており、外管18の外周面に設けられた例えばO−リング30Aよりなるシール部材が最小径段部27Aを構成する外方側の平坦面上に位置された状態において、水冷ベース25における高圧放電ランプ10の長さ方向外方側の端面に螺子31により取り付けられる円環状のプレート32によって外管18の外径より大きい内径を有する円筒状のワッシャ33を介してO−リング30Aが押圧されて弾性的に変形され、これにより、水冷ベース25に対して水密状態で固定されている。
また、水冷管20は、その端部部分が内径の大きさが2番目に大きい円柱状空間部内に挿入されて水冷管20の端縁面が最大径段部27Bを構成する平坦面に対接された状態で、水冷ベース25によって保持されており、水冷管20の外周面に設けられた例えばO−リング30Bよりなるシール部材が最大径段部27Bを構成する内方側の平坦面上に位置された状態において、水冷ベース25における高圧放電ランプ10の長さ方向内方側の端面に螺子31により取り付けられる円環状のプレート32によって水冷管20の外径より大きい内径を有する円筒状のワッシャ33を介してO−リング30Bが押圧されて弾性的に変形され、これにより、水冷ベース25に対して水密状態で固定されている。
【0021】
また、各々の水冷ベース25の外周面には、例えば冷却水を導入または排出するためのプラグ35A,35Bが径方向外方に向かって延びるよう穿設されており、一方の水冷ベース25におけるプラグ35Aから導入された冷却水が冷却水流路R内を外管18の外周面に沿って流通されて他方の水冷ベース25におけるプラグ35Bが排出され、これにより、ランプ点灯時において高圧放電ランプ10を冷却する水冷機構が構成されている。
【0022】
而して、上記の高圧放電ランプ10の各々には、例えば長さ方向における両端部の各々に遮光体40が設けられている。
この実施の形態に係る光照射装置においては、スリーブ状の遮光体40が、バルブ12におけるランプ点灯時間の経過に伴って黒化現象が生じうる部分、例えば電極周辺近傍の内壁部分の周囲を覆うよう、水冷管20の内周面に挿入されて設けられている。具体的には、遮光体40は、その一端部に形成されたフランジ部41が水冷ベース25における最大径段部27Bを構成する平坦面と水冷管20の端縁面との間で挟持されて保持固定されている。このように、遮光体40が冷却水流通路R内に位置された構成とされていることにより、遮光体40をランプ点灯時において冷却水によって直接冷却することができるので、遮光体40自体が劣化または破損することを防止することができる。
【0023】
遮光体40を構成する材料としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどの金属材料やセラミックス材料を用いることができる。
遮光体40の厚みは、例えば1mm以下、0.1〜1.0mmの範囲内である。
【0024】
遮光体40は、高圧放電ランプ10の長さ方向における、内端縁の位置と電極13の先端位置との間の離間距離が例えば20mm以下、例えば5〜20mmとなる状態で、設けられていることが好ましい。これにより、ランプ点灯時間の経過に伴って黒化現象が生じうる部分からの発光を確実に遮光することができる。
【0025】
この光照射装置においては、各々の高圧放電ランプ10の、光照射方向(図1において下方)に対して背面側に、例えば断面が楕円面状の反射面を有する樋状の反射鏡60が高圧放電ランプ10の長さ方向に沿って延びるよう配置されている。なお、この反射鏡60は、目的とする波長の紫外光のみを反射させ、不要な可視光および赤外光を透過させるコールドミラーコーティングが施されてなるものであってもよい。
【0026】
而して、この光照射装置においては、ケーシング50におけるランプ配置空間部51に、例えば互いに同一の構成を有する複数の上記高圧放電ランプ10が、各々のランプ中心軸Cが一方向(搬送されるワークWの幅方向)に延びる状態で当該一方向に並んで配置されており、隣接する2つの高圧放電ランプの一方が他方に対して、均一な照度分布が得られるよう一方向に調整された位置に配列されている。
具体的には、図4(A)を参照して説明すると、被照射物Wの搬送方向(図1において紙面に垂直な方向)から見たときに互いに隣接する2つの高圧放電ランプの一方の高圧放電ランプ10A(10B)におけるランプ中心軸Cが他方の高圧放電ランプ10B(10C)におけるランプ中心軸Cに対して、一方向に直交する方向(被照射物Wの搬送方向)に変位されて位置され、さらに、一方の高圧放電ランプ10A(10B)における遮光体40が設けられた領域(遮光領域)と他方の高圧放電ランプ10B(10C)における遮光体40が設けられた領域(遮光領域)の一部が被照射物Wの搬送方向において重なる状態、例えば千鳥状に配置されており、これにより、一方向(被照射物Wの幅方向)において均一な照度分布が得られる状態とされている。「均一な照度分布」とは、被照射物の搬送方向における積算照度の平均値が±10%以内となる程度の均一性を有することをいう。
【0027】
而して、上記構成の光照射装置によれば、両端部の各々に遮光体40が設けられた複数の高圧放電ランプ10が、均一な照度分布が得られるよう、互いに隣接する2つの高圧放電ランプの一方の高圧放電ランプ10A(10B)におけるランプ中心軸が他方の高圧放電ランプ10B(10C)におけるランプ中心軸Cに対して、一方向に直交する方向(被照射物Wの搬送方向)に変位されて位置され、さらに、一方の高圧放電ランプ10A(10B)における遮光体40が設けられた領域(遮光領域)と他方の高圧放電ランプ10B(10C)における遮光体40が設けられた領域(遮光領域)の一部が被照射物Wの搬送方向において重なる状態で、配置された構成とされていることにより、ランプ点灯時間の経過に伴って照度が低下する端部領域からの発光を利用していないので、ランプ点灯時間の経過に伴うバルブの黒化現象の発生の有無に拘らず、ランプ点灯初期時と同様の均一な照度分布を長時間の間安定して得ることができる。
【0028】
また、高圧放電ランプ10の各々が、バルブ12の外周面に沿って冷却水を流通させる冷却水流路Rを形成する水冷管20を有し、遮光体40が水冷管20の内周面に設けられた構成とされていることにより、ランプ点灯時において遮光体40を冷却水によって直接冷却することができるので、高圧放電ランプ10からの光照射により加熱されて遮光体40自体が劣化または破損することを防止することができ、従って、遮光体40の所期の機能を長時間の間維持することができ、上記効果を確実に得ることができる。
【0029】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
図4に示すように、図2および図3に示す構成を有する3本の間接水冷型の高圧放電ランプ10A,10B,10Cを、各々のランプ中心軸Cが同一の水平面内で一方向に延びる状態で、ランプ中心軸Cからの下方に100mmの位置(実際の光照射装置において被照射物の光照射面に相当する位置)において均一な照度分布が得られるよう千鳥状に配置した本発明に係る光照射ユニットを作製した。また、図5に示すように、図2および図3に示す構成の高圧放電ランプにおいて、遮光体を有さないことの他は図2および図3に示す構成のものと同一の構成を有する3本の高圧放電ランプ101,102,103を、各々のランプ中心軸Cが同一の水平面内で一方向に延びる状態で、ランプ中心軸Cからの下方に100mmの位置(実際の光照射装置において被照射物の光照射面に相当する位置)において均一な照度分布が得られるよう千鳥状に配置した比較用の光照射ユニットを作製した。各光照射ユニットの仕様は次に示す通りである。
各光照射ユニットにおいて、高圧放電ランプの配置位置は、図6に示すように、高圧放電ランプ10のランプ中心軸Cからの下方に100mmの位置に配置された搬送機65上に照度計66を配置し、照度計66を一方向に直交する方向(図4および図5において上下方向)に移動させて積算照度を測定する照度測定を、一方向における所定の間隔毎の複数箇所の測定位置について行い、すべての測定位置における積算照度値が平均値に対して±10%以内の範囲内に収まるよう、設定した。
【0030】
〔高圧放電ランプ(10)〕
バルブ(12):石英ガラス製、中央部の内径がφ6mm、肉厚が2mm、全長が360mm、
外管(18):石英ガラス製、内径がφ10mm、外径がφ13mm、全長が380mm、
水冷管(20):石英ガラス製、内径がφ16mm、肉厚が2mm、全長が350mm、
電極(13):タングステン製、電極間距離250mm、放電空間内に位置される電極部分の長さ3mm、
封入物:水銀;5.0mg/cm3 、アルゴンガス;10kPa、
遮光体(40):アルミニウム製、外径がφ16mm、肉厚が0.5mm、高圧放電ランプの長さ方向における内側の端縁面の位置と電極先端面との離間距離(図4(B)におけるL1)が20mm(高圧放電ランプの有効発光長が210mm)、
定格電圧;1000V、定格電流;6A、
【0031】
〔本発明に係る光照射ユニット〕
隣接する2つの高圧放電ランプの、一方の高圧放電ランプ10Aの遮光領域と、他方の高圧放電ランプ10Bの遮光領域とが重なる領域の一方向における寸法(図4(B)におけるL2)が10mmであり、一方の高圧放電ランプ10Aの電極先端面と他方の高圧放電ランプ10Bの電極先端面との一方向における離間距離(図4(B)におけるL3)が30mmである。また、一方の高圧放電ランプ10Aにおけるランプ中心軸Cと他方の高圧放電ランプ10Bにおけるランプ中心軸Cとの離間距離(図4(B)におけるL4)が150mmである。また、高圧放電ランプ10Bと高圧放電ランプ10Cとの位置関係についても、高圧放電ランプ10Aと高圧放電ランプ10Bとの位置関係と同様である。 各々の高圧放電ランプの、光照射方向に対して背面側の位置には、断面が楕円状の光反射面を有する樋状の反射鏡を各高圧放電ランプのランプ中心軸に沿って伸びるよう設けた。
【0032】
〔比較用の光照射ユニット〕
隣接する2つの高圧放電ランプの、一方の高圧放電ランプ101の電極先端面と他方の高圧放電ランプ102の電極先端面との一方向における離間距離(図5(B)におけるL5)が10mmであり、一方の高圧放電ランプ101におけるランプ中心軸Cと他方の高圧放電ランプ102におけるランプ中心軸Cとの離間距離(図5(B)におけるL6)が150mmである。また、高圧放電ランプ102と高圧放電ランプ103との位置関係についても、高圧放電ランプ101と高圧放電ランプ102との位置関係と同様である。
各々の高圧放電ランプの、光照射方向に対して背面側の位置には、断面が楕円状の光反射面を有する樋状の反射鏡を各高圧放電ランプのランプ中心軸に沿って伸びるよう設けた。
【0033】
本発明に係る光照射ユニットおよび比較用の光照射ユニットの各々について、図6に示す照度測定システムによって、波長365nmの光の積算照度を照度計によって測定し、各々の高圧放電ランプのランプ中心軸に沿った一方向(搬送機による照度計の搬送方向)における照度分布の均一性の、ランプ点灯時間の経過に伴う変化の程度を調べた。ここに、各々の高圧放電ランプの点灯条件は、アーク長1cmあたりのランプ入力を240W/cm、冷却水流路に流通される冷却水の流量を10リットル/minとした。
【0034】
図7は、本発明に係る光照射ユニットによる一方向における積算照度分布を示すグラフ、図8は、図7における隣接する高圧放電ランプの境界部分の積算照度分布を示すグラフである。図7および図8において、曲線(A)がランプ点灯初期時の積算照度分布を示し、曲線(B)がランプ点灯時間が2000時間を経過したときの積算照度分布を示す。
この結果から明らかなように、本発明に係る光照射ユニットによれば、点灯初期時の積算照度分布の均一性が長時間の間にわたって維持されることが確認された。この理由は、予め端部に遮光体が設けられた複数の高圧放電ランプを、隣接する高圧放電ランプの各々の端部領域からの発光を利用せずに均一な照度分布が得られるよう、配列した構成とすることにより、ランプ点灯時間の経過に伴うバルブの黒化現象の発生の有無に拘らず、ランプ点灯初期時の照度分布の均一性が維持することができたものと考えられる。また、遮光体は、高圧放電ランプからの紫外線を受けることによって加熱されることになるが、冷却水によって直接的に冷却されるため、遮光体それ自体が劣化または破損することが回避されて所期の機能が長時間の間維持された点も、照度分布の均一性が維持される理由として考えられる。
【0035】
一方、図9および図10に示すように、比較用の光照射ユニットにおいては、一方向における積算照度分布における積算照度値の最大値と最小値との差が平均値に対して10%程度の範囲内に収まる均一度を有していたランプ点灯初期時(図9および図10における曲線(A))に対して、ランプ点灯時間が1000時間を経過した時点(図9および図10における曲線(B))で、積算照度値の最大値と最小値との差が平均値に対して20%程度の大きさとなり、積算照度分布における均一度が低下することが確認された。この理由は、図9および図10から明らかなように、隣接する高圧放電ランプの各々の端部領域(境界部分)における積算照度が低下したためであり、ランプ点灯時間が1000時間を経過した時点の高圧放電ランプの端部領域を目視で観察したところ、電極の先端の周囲に位置されるバルブの内壁部分に黒化が生じていることが確認された。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、上記の実施の形態に係る高圧放電ランプにおいては、長さ方向における両端部の各々に遮光体が設けられた構成とされているが、複数の高圧放電ランプが並ぶ一方向の最外側に位置される高圧放電ランプにおいては、他の高圧放電ランプに隣接する一方の端部のみに遮光体が設けられた構成とされていてもよい。また、遮光体は、スリーブ状のものに限定されず、例えば蒸着膜により構成されていてもよい。
【0037】
また、遮光体が配置される位置は、水冷管の内周面に限定されるものではなく、高圧放電ランプの端部領域からの発光を遮光することのできる位置であればよい。
例えば、図11に示すように、遮光体40が放電管11を構成する外管18の外周面に設けられた構成とされていてもよい。この高圧放電ランプ10においては、スリーブ状の遮光体40が、内部に放電管11を構成する外管18の端部部分が挿入された状態で、水冷ベース25における最小径段部27Aを構成する円柱状空間部内に挿入されて保持されている。また、図12に示すように、遮光体40が水冷管20の外周面に設けられた構成とされていてもよい。この高圧放電ランプ10においては、スリーブ状の遮光体40が、内部に水冷管20の端部部分が挿入された状態で、その一端部に形成されたフランジ部41が水冷ベース25における内方側の端面に対接された状態で螺子31により固定されている。
【0038】
さらにまた、高圧放電ランプは二重管構造のものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
10,10A,10B,10C 高圧放電ランプ
101,102,103 高圧放電ランプ
11 放電管
12 バルブ
12A 封止部
13 電極
14 金属箔
15 外部リード
16 内管
18 外管
C ランプ中心軸
19 ランプベース
20 水冷管
R 冷却水流路
25 水冷ベース
26 中央貫通孔
27A 最小径段部
27B 最大径段部
30A,30B O−リング
31 螺子
32 プレート
33 ワッシャ
35A, 35B プラグ
40 遮光体
41 フランジ部
50 ケーシング
51 ランプ配置空間部
52 電装体配置空間部
55 仕切り板
60 反射鏡
65 搬送機
66 照度計
70 高圧放電ランプ
71 放電管
72 内管
72A 封止部
73 電極
74 金属箔
75 外部リード
77 外管
78 ベース
80 冷却管
85 冷却水供給流路形成部材
86 冷却水排出流路形成部材
88,89 口締め部
90 反射鏡
95 マスクステージ
96 ワークステージ
W 被照射物(ワーク)
M マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々バルブの内部に一対の電極が対向配置された複数の棒状の高圧放電ランプが、各々のランプ中心軸が一方向に延びる状態で、当該一方向に並んで配置された光照射装置において、
隣接する2つの高圧放電ランプの各々の端部には、遮光体が設けられており、当該2つの高圧放電ランプの一方の高圧放電ランプが他方の高圧放電ランプに対して、均一な照度分布が得られるよう前記一方向に調整された位置に配列されていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
隣接する2つの高圧放電ランプの各々のランプ中心軸が、一方のランプ中心軸が他方のランプ中心軸に対して、前記一方向に直交する方向に同一の水平面内で変位されて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記高圧放電ランプの各々は、前記バルブの外周面に沿って冷却水を流通させる冷却水流路を形成する水冷管を有し、
前記遮光体が前記水冷管の内周面または外周面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記高圧放電ランプの各々は、内部に前記バルブがその外周面の少なくとも一部が接触状態ないしは密着状態で配置された外管を有すると共に、当該外管の外周面に沿って冷却水を流通させる冷却水流路を形成する水冷管を有し、
前記遮光体が、前記水冷管の内周面または外周面、あるいは前記外管の外周面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記遮光体が金属よりなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−12379(P2013−12379A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143930(P2011−143930)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】