説明

光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含有する液晶滴下工法用シール剤

【課題】400nmの波長以下の光を遮断した可視光を利用した光硬化及び熱硬化の2段階硬化を特長とした液晶滴下工法用シール剤として最適な、硬化温度が低く、接着強度が高く、液晶への汚染性が低い液晶滴下工法用シール剤を提供すること。
【解決手段】下記の(1)、(2)、(3)及び(4)成分を含有する液晶滴下工法用シール剤。
(1)少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤
(2)熱硬化性樹脂
(3)アシルホスフィン系光開始剤
(4)光硬化性樹脂

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶滴下工法用シール剤及びそれを用いた液晶表示パネルに関するものである。更に詳しくは、シール硬化条件を温和にすることで、液晶に対するダメージを低減させたシール剤であり、製造する液晶表示素子の電気的抵抗が低下することなく、優れた表示性能を示す液晶滴下工法用シール剤及びそれを用いた液晶表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子(液晶表示パネル)の製造法は、製造工程の短縮を目的として、従来の真空注入方式から、液晶滴下工法が主流となってきている。この工法は、電極付き基板に、シール剤により表示素子枠をディスペンス描画し、該描画枠内へ液晶滴下の後、もう一方の電極付き基板を、真空下にて、貼り合わせる。次に、シール部に紫外線を照射して仮硬化を行い、その後、液晶アニールと熱硬化を兼ねた加熱による本硬化を行うことで液晶表示素子を作製する。この工法では、光硬化と熱硬化による2段階硬化を採用することで、硬化時間の短縮ができ、液晶表示素子の製造工程の短縮が可能となる。
【0003】
しかし、現行のシール硬化条件は、紫外線照射、更には高温硬化と、シール硬化時に同時に曝される液晶へのダメージが大きいため、液晶の電気光学特性の維持等の要求に満足するものではなかった。更に、熱硬化時のエネルギーコスト、更なる工程時間の短縮等の課題があった。従って、シール部硬化工程における液晶劣化を抑制するため、液晶が光を吸収しない可視光を利用した硬化、更に、熱硬化温度の低温化が求められていた。
【0004】
特許文献1には、芳香環を3つ以上もつ高分子量の光開始剤と光硬化性官能基を60mol%以上含有する樹脂組成との組み合わせが優れていると記載されているが、可視光硬化を目的としたものでなく、アシルホスフィン系開始剤が特に優れているとしたものではなかった。
【0005】
また、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤は、従来から使用されているものとして、ヒドラジド系硬化剤やアミンアダクト系硬化剤がある。ヒドラジド系硬化剤は単一化合物のため、精製による不純物の除去により液晶汚染性を低減することが可能であるが、硬化条件として120℃で1時間程度を要するため、より低温且つ短時間で硬化して工程を簡略化することができる硬化剤が望まれる。また、アミンアダクト系硬化剤については、第三級アミノ基を有する化合物はアミン塩を形成し易いため、重合が阻害され易く良好な物性を有する硬化樹脂が得られにくく、第一級アミノ基を有する化合物においては、エポキシ樹脂と反応し易く貯蔵安定性に難点があった。特許文献2には、第一級アミノ基を酸性物質でマスクすることで上記の問題を改善した、80〜100℃の硬化温度にて硬化させることが可能な硬化剤が開示されているが、光硬化性樹脂と併用して液晶滴下工法用シール剤として用いることについては記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−3911号公報
【特許文献2】特公平6−13600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、400nmの波長以下の光を遮断した可視光を利用した光硬化及び熱硬化の2段階硬化を特長とする液晶滴下工法用シール剤として最適な、硬化温度が低く、接着強度が高く、液晶への汚染性が低い液晶滴下工法用シール剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光開始剤としてアシルホスフィン系ラジカル開始剤を含有する光硬化性樹脂、及びポリアミンと酸性化合物を反応させてなる潜在性硬化剤を含有する熱硬化性樹脂を液晶滴下工法用シール剤の有効成分とすることで、上記課題を解決したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)、(2)、(3)及び(4)成分を含有する液晶滴下工法用シール剤を提供するものである。
(1)少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤
(2)熱硬化性樹脂
(3)アシルホスフィン系光開始剤
(4)光硬化性樹脂
【0010】
また、本発明は、上記液晶滴下工法用シール剤を用いた液晶表示パネルを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、400nmの波長以下を遮断した可視光を利用した光硬化及び熱硬化の2段階硬化を特長とする液晶滴下工法用シール剤であり、可視光を利用した光開始剤としてアシルホスフィン系ラジカル開始剤を含有する光硬化性樹脂及びポリアミンと酸性化合物を反応させてなる潜在性硬化剤を含有する熱硬化性樹脂を含有するため、液晶への汚染性が低く、シール強度も高く、液晶表示素子(液晶表示パネル)に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。

先ず、本発明の液晶滴化工法用シール剤について説明する。
【0013】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、下記(1)、(2)、(3)及び(4)成分を含有するものである。
(1)少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤
(2)熱硬化性樹脂
(3)アシルホスフィン系光開始剤
(4)光硬化性樹脂
【0014】
<(1)硬化剤>
上記(1)硬化剤に用いられる、少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンとしては、特に制限はないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、3,5−ジアミノクロロベンゼン、メラミン、ピペラジン、1−アミノエチルピペラジン、モノメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、アミノフェニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等や、ビニルアミン、アリルアミン等の不飽和アミンと、ジメチルアクリルアミド、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸等及びその塩類等の、共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらポリアミンの中でも、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましく用いられる。
【0015】
上記の少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンとしては、上記のポリアミンにエポキシ化合物を付加させた化合物が特に好ましく用いられる。
【0016】
上記のエポキシ化合物としては、脂環族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。これらエポキシ化合物は1種類又は2種類以上混合して使用される。
【0017】
上記脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。具体的には、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0018】
上記脂環族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、ダイセル化学工業社製)、KRM−2110、KRM−2199(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0019】
上記脂環族エポキシ樹脂の中でも、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ樹脂が、硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
【0020】
また、上記芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル等が挙げられ、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルやエポキシノボラック樹脂等が挙げられる。
【0021】
更に、上記脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。具体的には、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。更に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0022】
上記芳香族及び脂肪族エポキシ樹脂として好適に使用できる市販品としては、エピコート801、エピコート828(以上、油化シェルエポキシ社製)、PY−306、0163、DY−022(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、KRM−2720、EP−4100、EP−4000、EP−4901、EP−4010、EP−4080、EP−4900、ED−505、ED−506(以上、ADEKA社製)、エポライトM−1230、エポライトEHDG−L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライト3002、エポライトFR−1500(以上、共栄社化学社製)、サントートST0000、YD−716、YH−300、PG−202、PG−207、YD−172、YDPN638(以上、東都化成社製)、TEPIC−S(日産化学社製)、エピクロンN−665、エピクロンN−740、エピクロンHP−7200、エピクロンHP-4032(以上、DIC社製)等が挙げられる。
【0023】
上記酸性化合物としては、フェノール樹脂、多価フェノール化合物、ポリカルボン酸類等が挙げられる。前記フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類から合成され、その例としては、フェノール/ホルマリン樹脂、クレゾール/ホルマリン樹脂、ビスフェノールA(BPA)/ホルマリン樹脂、ビスフェノールF(BPF)/ホルマリン樹脂、アルキルフェノール/ホルマリン樹脂、又は上記の混合物等が挙げられ、特にフェノール又はクレゾールノボラック樹脂が好ましい。前記多価フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール等が挙げられる。前記ポリカルボン酸類としては、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジ酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類が挙げられる。
【0024】
上記酸性化合物としては、その他、酸無水物とポリオールとの末端COOH付加物である末端COOHのエステル化合物を使用してもよく、例えば、無水フタール酸/エチレングリコール=2/1モル付加物、テトラヒドロフタリックアンハイドライド/プロピレングリコール=2/1モル付加物等を使用してもよい。
【0025】
上記酸性化合物としてフェノール樹脂又は多価フェノール化合物を用いる場合、その配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.20〜3.0モル当量、より好ましくは0.3〜1.2モル当量である。配合量が0.20モル当量未満であると貯蔵安定性が著しく劣り、また配合量が3.0モル当量を超えると相溶性、硬化性、物性が低下し、好ましくない。
【0026】
また、上記酸性化合物としてポリカルボン酸類を用いる場合、その配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.01〜2.0モル、より好ましくは0.05〜1.0モルである。ポリカルボン酸類の配合量が2.0モルを超えると硬化性が劣り、物性が著しく低下する。
【0027】
また、上記酸性化合物としてフェノール樹脂、多価フェノール化合物及びポリカルボン酸類を併用する場合は、フェノール樹脂及び多価フェノール化合物の配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.3〜1.2モルであり、ポリカルボン酸類の配合量は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物1モルに対して、好ましくは0.05〜1.0モルである。
【0028】
本発明において、上記エポキシ化合物とアミンの付加物に対して、フェノール樹脂、多価フェノール及びポリカルボン酸類をそれぞれ併用し反応させるか、又は、上記エポキシ化合物とアミンの付加物とフェノール樹脂との反応物、上記エポキシ化合物とアミンの付加物と多価フェノールとの反応物、及び上記エポキシ化合物とアミンの付加物とポリカルボン酸との反応物を併用混合し、使用することも本発明に包含される。
【0029】
上記(1)硬化剤は、上記の少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミン、例えば上記エポキシ化合物とアミンの付加物と、上記酸性化合物とを上述の配合量にて反応させることで得られる。この反応は、好ましくは温度80〜200℃で30分〜5時間行う。
【0030】
上記(1)硬化剤の中でも、融点が100℃以下であるものは、工程がより簡略化できるため好ましい。
【0031】
本発明において、上記(1)硬化剤の配合量は、(1)硬化剤中の反応基と、(2)熱硬化性樹脂中の反応基のモル比を合わせることで決定することができる。またエポキシ樹脂を基準とすると、上記(1)硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜150重量部である。(1)硬化剤の配合量が10重量部未満であると、硬化不良及びエポキシ樹脂の液晶への汚染が起こり、200重量部を超えると、硬化剤の液晶への汚染が起こり、表示ムラを生じる。
【0032】
本発明において、上記(1)硬化剤は、例えば、酸無水物、ジシアンジアミド、メラミン、ヒドラジド、イミダゾール類、アルキル尿素類、グアナミン類等の従来の潜在性硬化剤と併用することも可能である。この場合、従来の潜在性硬化剤の配合量は、上記(1)硬化剤100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部とする。
【0033】
<(2)熱硬化性樹脂>
上記(2)熱硬化性樹脂としては、上記エポキシ化合物として例示したエポキシ樹脂が挙げられる。この熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、硬化剤で使用したエポキシ樹脂と同一であっても、異なっていてもよい。これらエポキシ樹脂は1種類又は2種類以上混合して使用される。これらエポキシ樹脂の中でも、上記(2)熱硬化性樹脂として好ましく用いられるものは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−プロピレンオキシド変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等である。
【0034】
特に、上記(2)熱硬化性樹脂の中でも、ビスフェノールAプロピレンオキシド変性エポキシ樹脂を含有する(好ましくは5〜30重量%)熱硬化性樹脂が液晶への溶出が少なく、相溶性も高いため、より好ましい。
【0035】
本発明において、上記(2)熱硬化性樹脂の重量比率が、(2)熱硬化性樹脂と(4)光硬化性樹脂の合計を100重量部としたとき、30重量部以上、好ましくは30〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部であると、接着強度が向上するため好ましい。(2)熱硬化性樹脂の重量比率が30重量部未満であると、硬化収縮が大きく接着強度が低下し、80重量部を超えると、エポキシ樹脂の液晶への溶出が多くなり、表示ムラが発生する。
【0036】
<(3)アシルホスフィン系光開始剤>
上記(3)アシルホスフィン系光開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸フェニルエステル等が挙げられる。
【0037】
上記(3)アシルホスフィン系光開始剤の中でも、400nmより長波長の光でラジカルを発生するものが、可視光を利用した硬化により液晶へのダメージを低減し、更には遮光部の硬化に優れているため好ましい。
【0038】
本発明において、上記(3)アシルホスフィン系光開始剤の配合量は、(4)光硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部である。(3)アシルホスフィン系光開始剤の配合量が0.01重量部未満であると、開始剤効率が悪く、光硬化が十分にされないため硬化不良を発生し、3重量部を超えると、開始剤の液晶への溶出が起こり、表示ムラが発生する。
【0039】
<(4)光硬化性樹脂>
上記(4)光硬化性樹脂は、ラジカル重合性官能基を有し、紫外線等の光を照射することにより重合して硬化するものである。上記ラジカル重合性官能基とは、紫外線等の活性エネルギー線によって重合し得る官能基を意味し、例えば、(メタ)アクリル基、アリル基等が挙げられる。上記ラジカル重合性官能基を有する光硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら光硬化性樹脂の中でも、速やかに反応が進行することや接着性が良好であるという点から(メタ)アクリレートが好ましい。尚、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのことを意味する。
【0040】
上記(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とから誘導されるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートと、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート等のイソシアネートと付加反応する反応性化合物との誘導体等が挙げられる。これらの誘導体はカプロラクトンやポリオール等で鎖延長させてもよい。市販品としては、例えば、U−122P、U−340P、U−4HA、U−1084A(以上、新中村化学工業社製);KRM7595、KRM7610、KRM7619(以上、ダイセルユーシービー社製)等が挙げられる。
【0042】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とから誘導されたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、EA−1020、EA−6320、EA−5520(以上、新中村化学工業社製);エポキシエステル70PA、エポキシエステル3002A(以上、共栄社化学社製)等が挙げられる。その他の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、グリセリンジメタクリレート等が挙げられる。
【0043】
また、上記(4)光硬化性樹脂としては、光熱硬化性樹脂を用いてもよく、例えば、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基とをそれぞれ少なくとも1つ以上有するエポキシ/(メタ)アクリル樹脂を好ましく用いることができる。
【0044】
上記エポキシ/(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、上記エポキシ樹脂のエポキシ基の一部分を常法に従って、塩基性触媒の存在下(メタ)アクリル酸と反応させることにより得られる化合物、2官能以上のイソシアネート1モルに水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを1/2モル、続いてグリシドールを1/2モル反応させて得られる化合物、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートにグリシドールを反応させて得られる化合物等が挙げられる。上記エポキシ/(メタ)アクリル樹脂の市販品としては、例えば、UVAC1561(ダイセルユーシービー社製)等が挙げられる。
【0045】
上記(4)光硬化性樹脂の中でも、ビスフェノールAアクリレート変性樹脂を含有する(好ましくは20〜70重量%)光硬化性樹脂が、液晶滴下工法用シール剤の液晶への溶出が低く汚染性が低いため好ましい。
【0046】
以上説明した上記(1)、(2)、(3)及び(4)成分を含有する本発明の液晶滴下工法用シール剤において、好ましい配合組成を有するシール剤としては、該シール剤中に、上記(1)硬化剤を好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、上記(2)熱硬化性樹脂を好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、上記(3)アシルホスフィン系光開始剤を好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%、(4)光硬化性樹脂を好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%含有するシール剤を挙げることができる。
【0047】
本発明の液晶滴下工法用シール剤には、必要に応じて(5)充填剤を加えることもできる。上記(5)充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、活性炭、コアシェルゴム、ブロック共重合高分子、ガラスフィラー、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、 水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、より好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これらの(5)充填材は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
上記(5)充填剤の配合量は、本発明の液晶滴化工法用シール剤中、通常10〜40重量%程度、好ましくは15〜35重量%程度である。
【0049】
更に、本発明の液晶滴下工法用シール剤には、接着強度を向上させ、耐湿信頼性が優れた液晶滴下工法用シール剤を得るために、(6)シランカップリング剤を配合することが好ましい。上記(6)シランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、 2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3− アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらの(6)シランカップリング剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
上記(6)シランカップリング剤の配合量は、本発明の液晶滴化工法用シール剤中、通常0.01重量%〜5重量%程度、好ましくは0.02重量%〜2重量%程度である。
【0051】
本発明による液晶滴下工法用シール剤には、更に必要に応じて、その他の添加物を添加しても良い。このような添加物の例としては、例えば有機溶媒、顔料、レベリング剤、消泡剤、導通材料、アルミナ、シリカ、珪石粉、瀝青物、繊維素、ガラス繊維、粘土、雲母、アルミニウム粉末、エロージール、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム及びこれらに類似する物が挙げられる。又、本発明のシール剤には必要に応じてその他稀釈剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0052】
上記その他の添加物の配合量は、本発明の液晶滴化工法用シール剤中、好ましくは合計で10重量%以下とする。
【0053】
本発明の液晶シール剤は、例えば、上記(1)硬化剤及び(2)熱硬化性樹脂からなる熱硬化性樹脂成分、上記(3)アシルホスフィン系光開始剤及び(4)光硬化性樹脂からなる光硬化樹脂成分、更に必要に応じ、各種添加剤の所定量を添加し、溶解混合する。次いでこの混合物を公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合することにより本発明の液晶滴化工法用シール剤を製造することができる。

次いで本発明の液晶表示パネルについて説明する。
【0054】
本発明の液晶表示パネルは、本発明の液晶滴化工法用シール剤を用いた液晶表示パネルであり、所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、その周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に制限されない。また基板としてはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなり、少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成されるものであれば特に制限されない。
【0055】
次に、本発明の液晶表示パネルの好ましい製造方法の一例について説明する。
先ず、本発明の液晶滴化工法用シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー等により該液晶シール剤を塗布する。塗布された未硬化のシール剤の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。
次に、ギャップ形成後、紫外線照射機によりシール部に紫外線を照射させて光硬化(仮硬化)させる。この場合の紫外線照射量は、好ましくは500mJ/cm2〜6000mJ/cm2、より好ましくは1000mJ/cm2〜4000mJ/cm2である。
続いて、仮硬化させたシール部を90〜130℃で0.5〜2時間熱硬化(本硬化)させることにより本発明の液晶表示パネルが製造できる。このようにして得られた本発明の液晶表示パネルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。
【0056】
上記スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶滴化工法用シール剤100重量部に対して、通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に制限されるものではない。
【0058】
下記製造例1及び2は、(1)硬化剤の製造例を示し、製造例3は、(4)光硬化性樹脂No.1の製造例を示し、実施例1〜5及び比較例1〜6は、本発明のシール剤及び比較用シール剤の製造例を示し、評価例1−1〜1−5及び比較評価例1−1〜1−5は、接着強度の評価例を示し、評価例2−1〜2−2及び比較評価例2−1〜2−2は、液晶汚染性の評価例を示す。
【0059】
[製造例1]硬化剤No.1の製造
フラスコ中の1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン140gに、EP−4100(ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ価185g/eq)の250gを100℃で添加した。その後140℃に上げ、2時間付加反応を行い、ポリアミンNo.1を得た。このポリアミンNo.1の25重量部に融点100℃のフェノールノボラック樹脂MP−800K(朝日有機材社製 軟化点73℃)3重量部を加え、150℃にて60分溶融マスキング反応を行い、硬化剤No.1を得た。得られた硬化剤をジェットミルにて5μm以下の粒径に粉砕した。融点78℃。
【0060】
[製造例2]硬化剤No.2の製造
フラスコ中のプロピレンジアミン100gを60℃に加温し、これにEP−4900(ビスフェノールF型エポキシ樹脂 エポキシ価170g/eq)の340gを温度90〜100℃に保ち攪拌しながら少しずつ加え反応を行った。添加終了後、フラスコの温度を140℃に上げ、1.5時間付加反応を行い、ポリアミンNo.2を得た。ポリアミンNo.2の25重量部にMP−800Kを8重量部加え150℃1時間溶融マスキング反応を行い、硬化剤No.2を得た。得られた硬化剤をジェットミルにて5μm以下の粒径に粉砕した。融点80℃。
【0061】
[製造例3]光硬化性樹脂No.1の製造
500ml反応フラスコにビスフェノールA−グリシジルエーテル型エポキシ樹脂EP−4100(ADEKA社製、エポキシ価185g/eq)90g、トルエン133gを加え撹拌した。そこにトリエチルアミン1g、メトキシフェノール0.55g、アクリル酸51.7gを加え95℃まで加熱し、その温度で22時間撹拌した。反応はエポキシ価測定による残量が1%以下になるまで行った。70℃まで冷却しトルエン400gを加え水 250gで1回洗浄、NaOH水溶液(0.1N)250gで3回洗浄、純水250gで、水層の電気伝導度が1μS/cmになるまで行った。エバポレーターで脱溶媒(60℃)し、ビスフェノールA−エポキシアクリレート変性樹脂である光硬化性樹脂No.1を得た。収量125.1g、収率94.1%。粘度(25℃)911Pa・s、酸価0mgKOH/g。
【0062】
[実施例1〜5及び比較例1〜6]シール剤No.1〜No.5及び比較用シール剤No.1〜No.6の製造
以下の原料を〔表1〕に従い配合し、三本ロールミルにて分散、混練を行った後、更に遊星式攪拌脱泡器にて脱泡し、本発明のシール剤及び比較用シール剤を得た。尚、(1)と(2)の配合は、対応する原料の反応基のモル比を合わせることで決定した。
(1−1)製造例1で得た硬化剤No.1
(1−2)製造例2で得た硬化剤No.2
(1−3)アミキュアVDH(味の素ファインテクノ社製):ヒドラジド系硬化剤
(1−4)アミキュアPN−23(味の素ファインテクノ社製):アミンアダクト系硬化剤
(1−5)ADH(大塚化学社製):ヒドラジド系硬化剤
(2−1)熱硬化性樹脂EP−4100(ADEKA社製):ビスフェノールA−グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
(2−2)熱硬化性樹脂EP−4000(ADEKA社製):ビスフェノールA−プロピレンオキシド変性グリシジルエーテル型エポキシ樹脂)
(3−1)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
(3−2)2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
(3−3)ベンジルジメチルケタール
(3−4)2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン
(4)製造例3で得た光硬化性樹脂No.1
(5)シリカゲルSE−2500(アドマテックス社製、粒径0.5μm)
(6)シランカップリング剤Z−6040N(東レ・ダウコーニング社製)
【0063】
【表1】

【0064】
[評価例1−1〜1−5及び比較評価例1−1〜1−5]接着強度の測定
上記実施例1〜4で得られたシール剤No.1〜No.4及び比較例1〜4で得られた比較用シール剤No.1〜No.4を、50mm×25mm×厚さ4.0mmの無アルカリガラス上に、貼り合わせ後、直径2.0〜3.0mmの円状になる様ディスペンサーで塗布し、もう一方のガラスを十字に貼り付けた。400nm短波長カットフィルターを通した高圧水銀ランプ(750W)により405nmの光を3000mJ/cm2照射し、各シール剤に含まれる硬化剤に応じた硬化条件(〔表2〕に記載)にて硬化させた。得られた試験片は万能試験機HG−200(島津科学社製)を使用し接着強度を測定した。その結果を〔表2〕に記す。
【0065】
【表2】

【0066】
〔表2〕から明らかなように、評価例1−1〜1−2では、本発明のシール剤は比較的穏和な条件でも高い接着強度が得られるのに対し、比較評価例1−1ではそれよりも接着強度が低くなり、比較評価例1−2では極端に低下することが分かる。また、比較用シール剤No.2〜No.4はいずれも、本発明のシール剤よりも接着強度が極めて低い。このことより、本発明のシール剤は、比較用シール剤に比べて穏和な条件でも高い接着強度が得られることが明らかである。
【0067】
[評価例2−1〜2−2及び比較評価例2−1〜2−2]液晶汚染性の評価
上記実施例1と5で得られたシール剤No.1とNo.5及び比較例5と6で得られた比較用シール剤No.5とNo.6に対して、以下の手法により液晶汚染性の評価を行った。
即ち、直径30mmのシャーレに6×6mmの正方形に本発明のシール剤又は比較用シール剤を塗布し、0.5gの液晶組成物を添加し、400nm短波長カットフィルターを通した高圧水銀ランプ(750W)により405nmの光を3000mJ/cm2照射し、100℃/0.5hの硬化条件にて硬化させた。硬化前及び硬化後のシャーレから液晶をスポイトに吸い取り、液晶評価用TNセル(セル厚5μm、電極面積8mm×8mm配向膜JALS2096)に注入し、電圧保持率(VHR)をVHR−1A(東陽テクニカ製)を用い測定した。(測定条件:パルス電圧幅60μs、フレーム周期16.7ms、波高±5V、測定温度25℃)硬化前と硬化後のVHRを比較し、VHRの低下率を求めた。その結果を〔表3〕に記す。
【0068】
尚、上記液晶組成物は、下記〔化1〕に示す液晶化合物No.1〜No.10を、該〔化1〕内に記載した配合比に従って配合して得られたものである。
【0069】
【化1】

【0070】
【表3】

【0071】
〔表3〕より、比較用シール剤は何れも、アシルホスフィン系光開始剤を用いた本発明のシール剤よりもVHRの低下が大きく、液晶汚染性が高いことが分かる。このことより、本発明のシール剤は低い液晶汚染性を有し、液晶滴下工法用シール剤として有用であることが明らかである。
【0072】
以上より、本発明の液晶滴下工法用シール剤は、低い温度で硬化し、接着強度が高く、液晶汚染性も低減されていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)、(2)、(3)及び(4)成分を含有する液晶滴下工法用シール剤。
(1)少なくとも1個以上の活性水素と少なくとも2個以上の窒素原子を分子内に有するポリアミンと、酸性化合物とを反応させて得られる反応生成物からなる硬化剤
(2)熱硬化性樹脂
(3)アシルホスフィン系光開始剤
(4)光硬化性樹脂
【請求項2】
上記(2)熱硬化性樹脂の重量比率が、(2)熱硬化性樹脂と(4)光硬化性樹脂の合計を100重量部としたとき、30重量部以上である請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
上記(1)硬化剤の融点が100℃以下である請求項1又は2に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
上記(4)光硬化性樹脂が、ビスフェノールAアクリレート変性樹脂を含有する光硬化性樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項5】
上記(3)アシルホスフィン系光開始剤が、400nmより長波長の光でラジカルを発生するものである請求項1〜4の何れかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項6】
上記(2)熱硬化性樹脂が、ビスフェノールAプロピレンオキシド変性エポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂である請求項1〜5の何れかに記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の液晶滴下工法用シール剤を用いた液晶表示パネル。

【公開番号】特開2010−169833(P2010−169833A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11351(P2009−11351)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】