説明

光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体の製造方法

【課題】 温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、基材上に積層可能な低屈折率膜を得ることのできる光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体とその製造方法を提供する。
【解決手段】 光硬化性樹脂組成物は、以下の成分(A)および(B): (A)特定の構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体; および (B)分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物を含み、成分(A)の固形分(硬化後に固体となる成分を含む)中の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)


の関係を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体に関するものであり、より詳しくは温和な条件でかつ短時間で硬化可能な光硬化性樹脂組成物であって、それから得られる硬化膜上に、比較的低い表面張力の高屈折率膜を、はじきやピンホールなく形成可能な光硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた積層体並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示板における要求性能の1つとして反射防止機能が挙げられている。一般的な反射防止機能の原理は、高屈折率層の表面に低屈折率層を設け、高屈折率層で反射する光と低屈折率層で反射する光とをそれらの光路差を利用して互いに干渉させることにより反射光を低減させるものである。
【0003】
従来、このような反射防止膜は、蒸着法やスパッタリング法等の乾式コート法を用いて作製している。乾式コート法によれば、均一な膜を作製可能であるが、生産速度が遅いため製造コストが高くなるという問題があった。このため、近年、反射防止膜をより低コストで作製する方法として、剥離基材上に、乾式コート法に比べて温和で短時間で成膜が可能な湿式コート法で積層した機能層(転写層)を被転写体表面に熱転写あるいは感圧転写する方法(即ち、転写法)に注目し、その転写層を反射防止膜とすることが試みられている。
【0004】
ところで、反射防止膜に利用する低屈折率材料としては、屈折率を低くするためにフッ素系化合物を配合した樹脂組成物が一般に用いられている。そのような樹脂組成物としては、反応基を有する低分子のフッ素系化合物を含むもの(特許文献1、特許文献2)や、不活性なフッ素含有重合体と反応基を有する化合物とを含有するものが提案されている(特許文献3)。なお、低屈折率材料として意図されたものではないが、一般的な低屈折率材料と同じレベルの表面張力を有するアクリルエラストマーとして、フルオロアルキル基と反応性基とを有する(メタ)アクリル共重合体も提案されている(特許文献4)。
【0005】
【特許文献1】特開平4−272988号公報
【特許文献2】特開2000−17099号公報
【特許文献3】特開平6−136062号公報
【特許文献4】特開平2−182712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の樹脂組成物の場合、含有されているフッ素化合物の分子間力が弱いため、樹脂組成物の塗工時に有毒なフッ素化合物が揮発する可能性があり、また、特許文献3の樹脂組成物の場合には、その塗工後に不活性なフッ素含有重合体が揮発する可能性が少なくなっているものの、より低屈折率の膜を得ようとすると、反応基を有する化合物の添加量が相対的に少なくなり、膜自体の強度が弱くなるという問題がある。また、特許文献4のアクリルエラストマーを低屈折率膜として用いた場合には、塗工時に加熱しなければならないため、基材がプラスチックの場合熱変形する危険性がある。また温和な条件で成膜すると、時間がかかるため、生産性が低下する可能性がある。
【0007】
また、転写法では機能層(転写層)を被転写体表面に一括して転写するため、転写層を反射防止膜とする場合には、転写材基材上に低屈折率層を設け、更に低屈折率層上に高屈折率層を設ける必要があるが、特許文献1等のフッ素原子を含む化合物を含有する樹脂組成物は一般に撥水、溌油性を示すため、そのような樹脂組成物を硬化膜上に積層することは困難を伴うことが多い。
【0008】
このように、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、基材上に塗工可能な低屈折率膜を得ることのできる樹脂組成物が広く求められているのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、基材上に積層可能な低屈折率膜を得ることのできる樹脂組成物及びそれを用いた積層体とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、明確な理由は不明であるが、−CFHユニットを有する含フッ素(メタ)アクリル系共重合体と有しない含フッ素(メタ)アクリル系共重合体と、分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物とを、特定の配合割合で含有する光硬化性樹脂組成物を使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下の成分(A)および(B):
(A)下記化学式(I)及び(II)で示される構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体
【0012】
【化1】


【0013】
(式(I)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。但し、Rの一部は−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。)
【0014】
【化2】


【0015】
(式(II)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20であって、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。nは1〜5の整数を表す。); および
【0016】
(B)分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物
を含み、成分(A)の固形分(硬化後に固体となる成分を含む)中の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)の関係を満足する光硬化性樹脂組成物を提供する。光硬化性樹脂組成物は、更に、成分(C)として光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0017】
【数1】


【0018】
また、本発明は、基材上に硬化樹脂層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)および(b):
(a)基材上に上述の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む製造方法、並びにその具体的態様として、離型ベースフィルムと、その上に設けられた硬化樹脂層を含む転写層とを有する転写材の製造方法において、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)離型ベースフィルム面上に前述の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む転写材の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、基材上に硬化樹脂層が積層された積層体であって、そのうちの少なくとも1層が前述の光硬化性樹脂組成物から形成されてなる積層体、およびその具体的態様として、離型ベースフィルムと、その上に設けられた転写層とを有する転写材において、転写層が前述の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を含むことを特徴とする転写材を提供する。
【0020】
本発明は、また、被転写体の表面に、前述の転写材の転写層が転写されてなることを特徴とする転写物を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、−CFHユニットを有する含フッ素(メタ)アクリル系共重合体と有しない含フッ素(メタ)アクリル系共重合体と、分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物とを、特定の配合割合で含有しているので、温和な条件でかつ短時間に硬化可能であり、基材上に積層可能な硬化樹脂膜、例えば低屈折率薄膜(例えば、約0.01〜10μm厚の皮膜)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書においてアクリロイル基またはメタクリロイル基を(メタ)アクリレート基と、アクリル酸またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と略記することがある。
【0023】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、以下の成分(A)および(B):
(A)下記化学式(I)及び(II)で示される構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体
【0024】
【化3】


【0025】
(式(I)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。但し、Rの一部は−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。)
【0026】
【化4】


【0027】
(式(II)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20であって、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。nは1〜5の整数を表す。); および
【0028】
(B)分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物
を含み、成分(A)の固形分(硬化後に固体となる成分を含む)中の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)の関係を満足するものである。
【0029】
【数2】


【0030】
上述の式において、「(Awt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.5未満であると、光硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂膜の屈折率が上昇して良好な反射防止機能が得られず、0.9を超えると相対的に成分(B)の含有量が低下するため膜強度が低下する。また、「(Bwt)/{(Awt)+(Bwt)}」の数値が0.50を超えると、相対的に成分(A)の含有量が低下し硬化樹脂膜の屈折率が上昇し良好な反射防止機能が得られず、0.1未満であると膜強度が低下する。
【0031】
また、硬化樹脂層の屈折率及び表面硬度の観点から、光硬化性樹脂組成物は、更に以下の式(1a)および(2a)の関係を満足することが好ましい。
【0032】
【数3】


【0033】
本発明の光硬化性樹脂組成物を構成する成分(A)の化学式(I)及び(II)で示される構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体は、積層可能な低屈折率の硬化樹脂膜を得、且つ膜強度を上げるための成分であり、しかも、一般的な塗料で用いられる非ハロゲン系溶媒に溶解性を示す。
【0034】
成分(A)の(メタ)アクリル系共重合体を構成する化学式(I)の構造単位は、特に硬化樹脂膜の屈折率を下げることに寄与している。ここで、化学式(I)におけるXは水素原子またはメチル基であるが、膜強度を高く保つためにはメチル基であることが好ましい。また、Rは炭素数1〜15、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜6のフルオロアルキル基である。但し、硬化樹脂膜の表面の濡れ性を向上させ、積層可能な硬化膜を得るために、そのフルオロアルキル基の一部は、−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基とする必要がある。この場合、Rの全「炭素数1〜15のフルオロアルキル基」中の「−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基」の割合は、低すぎると濡れ性向上効果が十分でなく、高すぎると屈折率が下がりにくくなるので、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。
【0035】
化学式(I)で示される構造単位を構成するために必要な−CFHユニットを含む単量体の好ましい具体例としては、1H,1H,3H‐テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H‐オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H‐ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H‐ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、得られる硬化樹脂膜の膜強度の点から1H,1H,5H‐オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0036】
化学式(I)で示される構造単位を構成するために、必要に応じて用いることのできる−CFHユニットを含まない単量体の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロへキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、7−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、9−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,7,8,8,9,10,10,10−テトラデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ノナデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の末端にトリフルオロメチル基を有するフルオロアルキル(メタ)アクリレート; 2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロシクロヘプチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロシクロオクチル(メタ)アクリレートなどのフルオロシクロアルキル(メタ)アクリレート; 2−トリフルオロメチルシクロブチル(メタ)アクリレート、3−トリフルオロメチルシクロブチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、3−トリフルオロメチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−トリフルオロメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−トリフルオロメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルシクロヘプチル(メタ)アクリレート、3−トリフルオロメチルシクロヘプチル(メタ)アクリレートなどのトリフルオロメチルシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
一方、化学式(II)の構造単位は、硬化樹脂膜の架橋密度を向上させ膜強度を向上させることに寄与している。ここで、化学式(II)におけるXは水素原子またはメチル基であるが、膜強度を高く保つためにはメチル基であることが好ましい。また、Rは炭素数1〜20、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜15であって、少なくとも1つ、好ましくは1〜3個の(メタ)アクリロイル基を有するアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。nは1〜5の整数であるが、好ましくは1〜3の整数である。
【0038】
化学式(II)で示される構造単位は、例えば、(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する単量体と上述の化学式(I)で示される構造単位を構成するための単量体との共重合体と、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物とをウレタン化反応させることによって容易に得ることができる。
【0039】
(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する単量体の具体例としては(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。取り扱い性、毒性、膜強度の観点から2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0040】
(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物は、上述の(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基を有する単量体とウレタン化反応可能な化合物で、且つ分子内に(メタ)アクリロイル基及び1つの水酸基を含むアルキル基またはフルオロアルキル基を有する化合物であれば特に制限はない。具体例としては2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ−3‐フェノキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,7,−ノナフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−トリデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル−4,4,5,5,6,7,7,7−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−8−トリフルオロメチル−4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,9−ドデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−10−トリフルオロメチル−4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,10,11,11,11−ペンタデカフルオロウンデニル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレートが硬化時の反応性が高いため好ましい。また、硬化膜の屈折率をより下げたい場合は2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチル(メタ)アクリレート等フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
【0041】
化学式(II)の好ましい構造単位としては、硬化樹脂膜の生産性の点から下記化学式(III)または硬化樹脂膜の反射防止機能の点から(IV)が挙げられる。但し、(IV)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜14のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を表す。
【0042】
【化5】


【0043】
成分(A)の(メタ)アクリル系共重合体中における化学式(I)及び(II)で示される構造単位の存在割合は、化学式(I)で表される構造単位を(a mol)、化学式(II)で表される構造単位を(b mol)としたときに、下記式(3)及び(4)の関係を満足することが好ましい。


【0044】
【数4】

【0045】
上述の式において、「(a mol)/{(a mol)+(b mol)}」の数値が0.40未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化樹脂膜の屈折率が下げられない可能性があり、また、0.99より大きい場合は硬化樹脂膜の硬度が下がる可能性がある。「(b mol)/{(b mol)+(b mol)}」の値が0.01より小さい場合は硬化樹脂膜の硬度が下がる可能性があり、0.60より大きい場合は、硬化樹脂膜の屈折率が下げられない可能性がある。
【0046】
また、硬化樹脂層の屈折率及び表面硬度の観点から、成分(A)の(メタ)アクリル系共重合体中における化学式(I)及び(II)で示される構造単位の存在割合は、更に以下の式(3a)および(4a)の関係を満足することが好ましい。
【0047】
【数5】


【0048】
化学式(I)及び(II)で示される構造単位を含む成分(A)の(メタ)アクリル系共重合体は、それぞれの構造単位に対応する上述の単量体を共重合させることによって得ることができる。
【0049】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(B)として分子内に少なくとも1個、好ましくは2個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物を含有する。ここで、「光重合可能」とは、活性エネルギー線(例えば紫外線、可視光、電子線、エックス線など)の照射により重合可能であることを意味する。また、成分(B)は、成分(A)を構成する化学式(II)の構造単位の形成に用いる(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と同じであってもよい。このような光重合可能なエチレン系不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、フェニルエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトンアクリルアミド、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−1−エン、N−[2−(メタ)アクリロイルエチル]−1,2−シクロヘキサンジカルボイミド−4−エン等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニル系モノマー;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、エチレンオキサイド変性テトラブロモビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレートなどの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性イソシアヌール酸トリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホルマール、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−ヒドラジンなどの多官能性モノマー;エチレンオキサイド変性ビスフェノール−A−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノール−F−ジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性カテコールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性レゾルシノールジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ハイドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性−1,3,5,ベンゼントリオールトリビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;ウレタンアクリレート、エステルアクリレートなどのオリゴマーアクリレートが挙げられる。これらは単一種でも複数種併用してもよい。これらのうち2官能以上の多官能性モノマーが好ましく使用される。
【0050】
また、光硬化性樹脂組成物は、光重合可能なエチレン系不飽和化合物の他に、必要に応じて光重合可能なエポキシ系化合物またはオキセタン系化合物を含有することができる。
【0051】
エポキシ系化合物としては、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、オキセタン化合物としては3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。
【0052】
また、光硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により重合をするために、成分(C)として光重合開始剤を含有することが好ましい。その他に光増感剤や光促進剤等の光触媒化合物を一種以上含有することが好ましい。光触媒化合物としては公知の光触媒化合物から適宜選択して使用することができる。
【0053】
成分(C)の光重合開始剤としては、硬化手段である活性エネルギー線の種類(紫外線、可視光、電子線など)に応じて適宜選択することができる。
【0054】
光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−チオキサントン、カンファーキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。また、N−アクリロイルオキシエチルマレイミドのように分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する光重合開始剤も用いることができる。
【0055】
光重合開始剤の配合量は、後述する希釈剤を除いた光硬化性樹脂組成物の固形分(硬化前に既に固形の成分および硬化後に固形となる成分のトータル)100質量部に対し、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは3〜5質量部である。
【0056】
光重合を促進させるために光重合開始剤と共に使用できる光増感剤の具体例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。また、光重合を促進させるために光重合開始剤と共に使用できる光促進剤の具体例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチルなどを挙げることができる。
【0057】
また、光硬化性樹脂組成物には、その塗工性を改善するために、希釈剤を添加することができる。希釈剤の添加量は、形成すべき硬化層の膜厚等に応じて、適宜決定することができる。例えば、硬化層の厚みを0.1μm程度とする場合には、固形分5.25質量%に対し希釈剤94.75質量%とし、ウェット膜厚で1.9μmで塗工することが好ましい。
【0058】
希釈剤としては、一般の樹脂塗工液に用いられている希釈剤を使用することができ、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチルなどのエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどのアルコール化合物などを挙げることができる。また、稀釈剤としては、固体状光重合性物質との間に高い親和性を示す水、低級アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)を好ましく使用できる。
【0059】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、更に、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー、近赤外線吸収剤などを本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0060】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、以上説明した成分(A)および(B)と、必要に応じて配合される成分(C)をはじめとする他の成分とを、常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0061】
本発明の光硬化樹脂組成物は、基材上に塗布し、光硬化させることにより基材と硬化樹脂層とからなる積層体とすることができる。このような積層体は、使用する基材の種類、厚み、物性、また、光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層の物性や厚み、必要に応じて積層される付加的な熱可塑性層、熱硬化性層あるいは光硬化性層の種類や性質(例えば接着層)等に応じて、広範囲な利用が可能である。例えば、転写材、反射防止材等として使用可能である。
【0062】
このような積層体の基材としては、板状またはフィルム状であれば特に制限はなく、鉄、アルミニウムなどの金属基材、ガラス基材、セラミックス基材、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート等の樹脂基材などを挙げることができる。
【0063】
このような積層体は、以下の工程(a)および(b)を含む製造方法により製造することができる。以下、工程毎に説明する。
【0064】
工程(a)
まず、基材上に本発明の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する。膜の形成手法としては、含浸法、凸版印刷法、平板印刷法、凹版印刷などで用いられるロールを用いた塗工法、基材に噴霧するようなスプレー法、カーテンフローコートなどの公知の手法を利用することができる。光硬化性樹脂組成物に希釈剤が含有されている場合には、その塗工膜を加熱炉や遠赤外炉、超遠赤外炉中で加熱し乾燥することが好ましい。
【0065】
基材としては、板状またはフィルム状の、金属(鉄、アルミニウムなど)基板、ガラス基板を含むセラミック基板、アクリル樹脂、PET、ポリカーボネートなどのプラスチック基板、熱硬化性樹脂基板等を使用することができる。
【0066】
工程(b)
工程(a)で得られた光硬化性膜に、紫外線、可視光、レーザー、電子線、エックス線等の活性エネルギー線を照射して硬化させ、硬化樹脂層を形成する。これにより、基材上に本発明の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層が積層された積層体が得られる。なお、紫外線を使用する場合の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0067】
このようにして得られる積層体は、基材と硬化樹脂層との2層構造に限られず、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の材料の層を予め設けていてもよく、あるいは硬化層形成後に改めて設けてもよい。
【0068】
以上、本発明の光硬化性樹脂組成物、それからなる硬化樹脂層を有する積層体およびその製造方法について説明したが、これらの積層体および製造方法の好ましい具体的な態様の一例として転写材およびその製造方法を以下に示す。なお、それらの中の用語の意味は既に説明した通りである。
【0069】
本発明の転写材の転写層は、上述した光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を少なくとも一層有するものであり、従って、硬化樹脂層単独であってもよいが、他の低屈折率層、高屈折率層、ポリマー層などを含む2層以上の多層構造でもよい。
【0070】
例えば、転写層は、転写材の使用目的に応じて、他の低屈折率層や高屈折率層等と組み合わせて反射防止層として使用できる。また、アクリル系またはシリコン系などのハードコート層、抗菌層等の機能層、印刷層、着色層等の装飾層、金属または金属化合物からなる蒸着層(導電層)、プライマー層なども含むことができる。
【0071】
かかる転写層の層構成の具体例としては、硬化樹脂層、低屈折率層/硬化樹脂層、低屈折率層/高屈折率層/硬化樹脂層、低屈折率層/高屈折率層/蒸着層/プライマー層/硬化樹脂層、低屈折率層/高屈折率層/プライマー層/蒸着層/プライマー層/硬化樹脂層、低屈折率層/高屈折率層/プライマー層/硬化樹脂層、ハードコート層/硬化樹脂層、印刷層/硬化樹脂層、装飾層/硬化樹脂層等が挙げられる。
【0072】
上記硬化樹脂層の膜厚は、特に制限はないが、通常0.5〜20μm程度の範囲から適宜選択される。また、他の層の膜厚においても、特に制限はないが、通常0.1〜10μm程度の範囲から適宜選択される。
【0073】
光硬化性樹脂組成物から硬化樹脂層を形成するためには、成膜した光硬化性樹脂組成物の膜に、公知の光重合性樹脂の光硬化技術に準じて、紫外線、可視光線、α線、β線、γ線、電子線、レーザーなどの広範囲の活性エネルギー線を使用することができる。これらの中でも、紫外線を用いることが好ましい。光源は点光源、線光源、面光源等の任意のものを使用することができるが、実用性の点からは線光源が一般的である。たとえば、紫外線発生源としては実用的、経済性の面から紫外線ランプが一般に用いられ、具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。なお、点光源または線光源を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物からなる層に所定の光を照射できるように適宜走査すればよい。
【0074】
転写材は、離型ベースフィルムとその上に上述の転写層とを有するものであるから、かかる転写材の層構成の具体例としては、離型ベースフィルム/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/低屈折率層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/低屈折率層/高屈折率層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/低屈折率層/高屈折率層/蒸着層/プライマー層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/低屈折率層/高屈折率層/プライマー層/蒸着層/プライマー層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/低屈折率層/高屈折率層/プライマー層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/ハードコート層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/印刷層/硬化樹脂層、離型ベースフィルム/装飾層/硬化樹脂層等が挙げられる。
【0075】
本発明の転写材に用いる離型性ベースフィルムとしては、特に制限はなく、例えば、20℃での40dyn/cm以下の表面張力を示すような離型性を有し、充分な自己保持性を有する通常の転写材に用いられるフィルムであれば用いることができる。本発明かかる離型ベースフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリヘキサフルオロプロピレンフィルム、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートフィルム等のフッ素系樹脂フィルム、ポリオキシジメチルシリレン、ポリオキシメチルシリレン、ポリオキシジメチルシリレン−α、ω−ジブタン酸、ポリオキシビニルシリレン等のケイ素含有重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セルロースアセテートフィルムなどの樹脂フィルム、セロハン紙、グラシン紙などの洋紙、和紙、これらの複合フィルム状物、それらに離型処理を施したもの等が挙げられる。
【0076】
離型性ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、しわや亀裂の発生を抑制するために、通常4〜150μmの範囲であることが好ましく、12〜100μmの範囲であることがより好ましく、30〜100μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0077】
上記離型性ベースフィルムの離型性が不十分な場合は、離型性ベースフィルムの少なくとも片面にさらに離型処理を行うことができる。かかる離型処理は、離型性ポリマーやワックスなどを適宜選択して公知の方法で行うことができる。かかる離型処理に用いる処理剤としては、例えば、パラフィンワックス等の離型性ワックス;シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、セルロース系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂などの離型性樹脂;各種界面活性剤などを、単独で又は溶剤などと混合して、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法に従って離型性ベースフィルム上に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて硬化(加熱、紫外線照射、電子線照射、放射線照射)させて形成することができる。
【0078】
本発明の転写材には、前述のように、多層構造の転写層中の層間にプライマー層を設けることができる。かかるプライマー層は、本発明の転写材における層と層の両者に接着性のよいポリマー成分を主とする組成物の塗布層であり、厚さは0.5〜5μm程度の範囲が好ましい。プライマー層の具体例としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等の層が挙げられる。これらの層は、例えば上記樹脂を溶剤に溶解後、上記印刷法などにより塗布し、乾燥して形成することができる。
【0079】
本発明の転写材は、以下に説明するように工程(a′)と工程(b′)とを含む製造方法に従って製造することができる。
【0080】
工程(a′)
離型べースフィルム上に、前述の本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布して光硬化性樹脂組成物の膜を形成する。離型べースフィルム、光硬化性樹脂組成物については、既に説明したとおりである。
【0081】
工程(b′)
工程(a′)で得られた光硬化性樹脂組成物の膜に、既に説明したような活性エネルギー線を照射する。これにより、光硬化性樹脂組成物の膜は硬化して硬化樹脂層となる。これにより、本発明の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を有する転写材が得られる。
【0082】
このようにして得られる転写材は、離型ベースフィルムと硬化樹脂層との2層構造に限られず、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の材料の層を予め設けていてもよく、あるいは硬化層形成後に改めて設けてもよい。
【0083】
本発明による転写材は、最表面層を被転写材に密着させつつ加熱することによって被転写材に転写層を熱転写することが可能である。被転写材としては、形状等は特に限定されないが、好ましい例として、例えば、市販樹脂シート、フィルム、ガラス板などを挙げることができる。また、表示画面保護板などに使用する場合には、被転写材として樹脂シートであることが好ましい。かかる樹脂の具体例としては、可視光波長において透明であれば特に制限されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂)等が好ましく用いられる。
【0084】
本発明の転写材は、画像表示装置、ヘルメットシールド等の被転写体の表面に、転写層を手軽に低コストで良好な転写効率で転写させることができる。従って、得られる転写物は、良好な外観の転写物となる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
参考例1(低屈折率樹脂用ポリマーの製法)
内部の空気が窒素置換された100mLの3口フラスコに、トルエン50mL、表1に示す8FM、17FMおよび/またはMOI、および1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(商品名:パーオクタO、日本油脂株式会社製)30mgを加えた後、混合物を80℃で6時間攪拌した。更に、N,N−ジメチル−p−トルイジン(和光純薬株式会社製)10mgを投入し、30分攪拌した後、表1に示すHEAまたはR1633およびN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(和光純薬株式会社製)5mgを加え、更に3時間攪拌した。その後、重合液を冷却した後、ヘキサンに投入し、生じた沈殿物を濾取し、10時間真空乾燥することにより低屈折率樹脂用ポリマーを得た。
【0087】
【表1】


【0088】
(表1注)
*1: 1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(商品名:ビスコート8FM 大阪有機化学工業株式会社製)
*2: 1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(商品名:ビスコート17FM 大阪有機化学工業株式会社製)
*3: 2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI 昭和電工株式会社製)
*4: 2−ヒドロキシエチルアクリレート(和光純薬株式会社製)
*5: 3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、(3−(1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−トリデカフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート(商品名:R1633 ダイキンファインケミカル株式会社製)
6: 単離収量を表す
7: NMRでの値を表す
*8: GPCによるポリスチレン換算分子量
【0089】
参考例2(高屈折率樹脂組成物の製法)
チタン微粒子(商品名 HIT、日産化学社製)1.8質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPCA−60 日本化薬株式会社製)1.2質量%、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184 チバスペシャリティーケミカルズ株式会社)0.15質量%、およびイソプロパノール96.85質量%を混合して高屈折率樹脂組成物を得た。
【0090】
参考例3(ハードコート樹脂組成物の製法)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPCA−60 日本化薬株式会社製)10質量%、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(商品名ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製)14質量%、ポリメチルメタクリレート(商品名:パラペットHR−L 株式会社クラレ製)6質量%、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184 チバスペシャリティーケミカルズ株式会社)1.5質量%、メチルイソブチルケトン68.5質量%を混合し、転写フィルム用ハードコート樹脂組成物を得た。
【0091】
実施例1〜5、比較例1〜3
表2に示す光硬化性樹脂組成物3質量%、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184 チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)0.15質量%、およびメチルイソブチルケトン96.85質量%の割合で混合し、低屈折率樹脂組成物を得た。50μm厚のポリエステルフィルム上に、得られた低屈折率樹脂組成物を乾燥厚で膜厚1μmとなるように塗工し、130℃で30秒乾燥し、更に紫外線照射(80w高圧水銀灯、速度1m/分、1パス)を行った。これにより低屈折率層を形成した。
【0092】
続いて、この低屈折率層上に、参考例2に示す高屈折率樹脂組成物を乾燥厚で膜厚1μmとなるように塗工し、130℃で30秒乾燥して紫外線照射(80w高圧水銀灯、速度1m/分、1パス)を行った。これにより高屈折率層を形成した。
【0093】
この高屈折率層上に、参考例3に示すハードコート樹脂組成物を膜厚10μmで塗工後、130℃で30秒乾燥して紫外線照射(80w高圧水銀灯、速度1m/分、1パス)を行った。これによりハードコートを形成し、転写フィルムを得た。
【0094】
得られた転写フィルムを、2mm厚のポリメチルメタクリレート板に熱転写(ロール速度1m/分、ロール温度160℃)し、ポリエステルフィルムを剥離して積層板を得た。得られた積層板について、以下に説明するように、転写層の耐擦傷性、反射率の評価を行った。結果を表2に示す。
【0095】
耐擦過性
チーズクロス12枚を重ねたものを直径0.6mmの金属棒の先端に取り付け、それを積層板の転写層に1.6Kg重の加重をかけて接触させ、その状態で転写層の表面を150回往復させたときに、積層体から転写層の剥離が生じているか否かを目視で確認した。
【0096】
反射率(最小値)
積層板の転写層の5°正反射率を測定し、400nm〜700nmにおける最小反射率を測定した。









【0097】
【表2】


【0098】
(表2注)
*9: 参考例1参照
*10: 1H、1H、5H−オクタフルオロぺンチルメタクリレート(商品名:ビスコート8FM、大阪有機化学工業株式会社製)
*11: ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート (商品名 ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製)
*12: エチレンオキサイド変性イソシアヌール酸トリ(メタ)アクリレート(商品名M315、東亜合成(株)製)
13: ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(商品名DCPA60、日本化薬(株)製)
14: 商品名 MEK−ST、日産化学工業(株)製
【0099】
表2から、実施例1〜5の転写フィルムから作製した転写物の転写層の耐擦傷性および反射率は、いずれも満足する結果が得られていることがわかる。一方、比較例1〜2の場合には転写層の耐擦傷性に問題があり、比較例3の場合には転写層の反射率に問題があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、−CFHユニットを有する含フッ素(メタ)アクリル系共重合体と有しない含フッ素(メタ)アクリル系共重合体と、分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物とを、特定の配合割合で含有しているので、温和な条件でかつ短時間に硬化可能であり、基材上に積層可能な硬化樹脂膜、例えば低屈折率薄膜(例えば、約0.01〜10μm厚の皮膜)を得ることができる。従って、本発明の光硬化性樹脂組成物から作製された硬化樹脂膜は、反射防止膜として応用可能であり、ラミネート箔や画像表示画面保護板、ヘルメットシールド等の物品に有利に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B):
(A)下記化学式(I)及び(II)で示される構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体
【化1】



(式(I)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。但し、Rの一部は−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。)
【化2】



(式(II)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20であって、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するアルキル基またはフルオロアルキル基を表す。nは1〜5の整数を表す。); および
(B)分子内に少なくとも1個のエチレン系二重結合を有する光重合可能なエチレン系不飽和化合物
を含み、成分(A)の固形分(硬化後に固体となる成分を含む)中の配合量(質量部)を(Awt)とし、成分(B)の配合量(質量部)を(Bwt)としたときに下記式(1)及び(2)
【数1】



の関係を満足する光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
化学式(I)の構造単位が、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート由来の構造単位である請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
化学式(II)の構造単位が、下記化学式(III)



【化3】



で表される構造単位である請求項1または2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
化学式(II)の構造単位が、下記化学式(IV)
【化4】



(式(IV)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜14のフルオロアルキル基を表す。)
で表される構造単位である請求項1または2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、成分(C)として光重合開始剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
基材上に硬化樹脂層が積層された積層体であって、該硬化樹脂層が請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成された層を含む積層体。
【請求項7】
基材上に硬化樹脂層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)および(b):
(a)基材上に請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む製造方法。
【請求項8】
離型ベースフィルムと、その上に設けられた転写層とを有する転写材において、転写層が請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を含むことを特徴とする転写材。
【請求項9】
離型ベースフィルムと、その上に設けられた硬化樹脂層を含む転写層とを有する転写材の製造方法において、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)離型ベースフィルム面上に請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む転写材の製造方法。
【請求項10】
被転写体の表面に、請求項8記載の転写材の転写層が転写されてなることを特徴とする転写物。


【公開番号】特開2006−117742(P2006−117742A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305239(P2004−305239)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】