説明

光硬化性組成物および硬化物

【課題】 本発明の目的は、光硬化性を有しリソグラフィー可能であり、かつ良好な感度を有し、現像工程後のパターン形状不良や、腐食などの問題を生じにくい光硬化性組成物および硬化物を提供することである。
【解決手段】
上記課題は、カチオン重合性化合物(a)と、カチオン重合開始剤(b)、エポキシ基、またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する硬化促進剤(c)を含んでなる光硬化性組成物、およびその光硬化組成物に光を照射し、硬化してなる、硬化物により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度、光学的透明性に優れた光硬化性組成物およびその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カチオン重合性官能基を有する化合物および、カチオン重合開始剤を含む光硬化性組成物については、表面硬化性が良好なUV硬化性樹脂として機能することが知られており、特にカチオン重合性官能基を有するポリオルガノシロキサン化合物は高温時における信頼性、透明性に優れる。(特許文献1参照)ただし、これらの組成物に関し、光カチオン重合に対する活性に改善の余地があり、特に高い感度を必要とする用途においては硬化不良などの問題を生じることがある。これに対し、カチオン重合開始剤量を増やす、より活性の高いカチオン重合開始剤を用いるなどの対策が可能であるが、腐食などの問題が生じやすい。
【0003】
また、光・熱硬化性組成物に含有されるエポキシ樹脂の硬化を促進する目的で、アミン化合物、イミダゾール化合物、などの塩基性化合物を添加する方法が知られているが、これは光硬化後に行う熱硬化反応を促進するものであり、リソグラフィーを要する用途において、現像工程後のパターン形状不良を改善する目的では使用できない。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62490号公報
【特許文献2】特開2007−316545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情から本発明の目的は、光硬化性を有しリソグラフィー可能であり、かつ良好な感度を有し、現像後の形状不良や、腐食などの問題が生じにくい光硬化性組成物および硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、カチオン重合性化合物(a)と、カチオン重合開始剤(b)、エポキシ基、またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する硬化促進剤(c)を含んでなる光硬化性組成物により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本願発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
1). カチオン重合性化合物(a)と、カチオン重合開始剤(b)、エポキシ基、またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する硬化促進剤(c)を含んでなる光硬化性組成物。
【0008】
2). カチオン重合性化合物(a)が、ポリオルガノシロキサン化合物である1)に記載の光硬化性組成物。
【0009】
3). カチオン重合性化合物(a)が、エポキシ基含有化合物である事を特徴とする1)または2)に記載の光硬化性組成物。
【0010】
4). カチオン重合性化合物(a)がカチオン重合性官能基およびSiH基を同一分子内に有する化合物であり、(d)炭素−炭素二重結合を有する化合物、を含有する1)〜3)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0011】
5). 成分(a)が、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する化合物である1)〜4)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
6). 成分(d)が下記一般式(I)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、4)または5)に記載の光硬化性組成物。
【0016】
7). 成分(d)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である4)〜6)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0017】
8). 成分(a)が、下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物を使用する、1)〜7)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物
(γ)1分子中に、カチオン重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物
9). 8)記載の化合物(α)が、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記一般式(I)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、8)に記載の光硬化性組成物。
【0020】
10). 8)記載の化合物(α)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である8)もしくは9)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0021】
11). 8)記載の化合物(α)が、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する有機化合物である、8)〜10)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0022】
【化4】

【0023】
12). 化合物(β)が、下記一般式(III)
【0024】
【化5】

【0025】
(式中R4、R5は炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である、8)〜11)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0026】
13). 化合物(γ)が、下記一般式(IV)
【0027】
【化6】

【0028】
(式中R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物である、8)〜12)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0029】
14). 1)〜13)のいずれかに記載の光硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
本願発明の硬化物は、上記光硬化性組成物を硬化して得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光硬化性を有し、感度に優れた光硬化性組成物と、形状不良の無い硬化物を与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(カチオン重合性化合物)
本発明の光硬化性組成物に使用されるカチオン重合性化合物は、分子内に少なくとも1個のカチオン重合性官能基を有する重合性化合物であれば特に限定されない。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、架橋性シリコン基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等が挙げられる。 なかでも、エポキシ基を有する化合物が好適に用いられる。
【0032】
エポキシ基のなかでも安定性の観点より、脂環式エポキシ基やグリシジル基が好ましく、特に光および熱によるカチオン重合性に優れる点では、脂環式エポキシ基が好ましい。
【0033】
上記分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物(以下、単に「エポキシ化合物」ともいう。)は特に限定されず、例えば、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物、エポキシ基含有ポリエステル化合物、エポキシ基含有ポリウレタン化合物、エポキシ基含有アクリル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物等のアルコール型エポキシ化合物、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン化エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ウレタン変性エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、高温時における信頼性、透明性に優れることから、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン化合物が好適に用いられる。これらのエポキシ系化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
ここでのポリオルガノシロキサン化合物とは、シロキサン単位(Si−O−Si)および、構成元素としてC、H、N、O、Sからなる有機基Xとから構成される化合物、重合体を示し、構造上特に限定されるものではない。これら化合物中のシロキサン単位のうち、構成成分中T単位(XSiO3/2)、またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いものほど得られる硬化物は硬度が高くより耐熱信頼性に優れ、またM単位(X3SiO1/2)、またはD単位(X2SiO2/2)の含有率が高いものほど硬化物はより柔軟で低応力なものが得られる。
【0035】
上記分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物の市販品は特に限定されず、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート807」、「エピコート828」、「エピコート1001」等の「エピコート」シリーズ、DIC社製の商品名「エピクロンHP−4032」等の「エピクロン」シリーズ、ダイセル化学工業社製の商品名「セロキサイド2021」等の「セロキサイド」シリーズ等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の光硬化性組成物に含有されるカチオン重合性化合物(a)において、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、
【0037】
【化7】

【0038】
フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「上記式(X1)〜(X3)で表される各構造、フェノール性水酸基およびカルボキシル基」を「酸性基」と称することがある。)を同一分子内に有することが好ましく、この構造を有することによりアルカリ水溶液への溶解が可能となり、工業的に有用なリソグラフィー性を有する硬化性組成物となり得る。
【0039】
また得られる硬化物が高温時における着色が少ないと言う観点より、これら有機構造の中において(X1)〜(X3)、カルボキシル基および下記式で示される構造
【0040】
【化8】

【0041】
が好ましく、さらに高温時の熱分解性の低い硬化物が得られる観点より特に
下記式で示される各構造を有するものが好ましい。
【0042】
【化9】

【0043】
(カチオン重合開始剤)
本発明の光硬化性組成物におけるカチオン重合開始剤は、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン重合開始剤、又は熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。
【0044】
活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロ硼素錯塩及び三弗化硼素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されたようなビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されたようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されたようなVIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されたようなVa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されたようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されたようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されたようなMF6-陰イオン(ここでMは燐、アンチモン及び砒素から選択される)の形のVIa元素;米国特許第4231951号に記載されたようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、ポリマー・ケミストリー版」、第22巻、1789頁(1984年)に記載されたようなビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビスヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等);陰イオンがB(C654-である芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩の一種以上が包含される。
【0045】
好ましい陽イオン系活性エネルギー線カチオン重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩並びにII族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。これらの塩のいくつかは、BBI−103(みどり化学社)、FX−512(3M社)、UVR−6990及びUVR−6974(ユニオン・カーバイド社)、UVE−1014及びUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社)、KI−85(デグッサ社)、SP−152及びSP−172(旭電化社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、WPI113及びWPI116(和光純薬工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)として商品として入手できる。
【0046】
カチオン重合開始剤の使用量は、硬化時間、硬化物中のカチオン重合開始剤残存の点、硬化物の表面性、着色性、耐熱耐光性等の点からカチオン重合性化合物100重量部に対して、概ね0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0047】
(硬化促進剤)
本発明の光硬化組成物におけるエポキシ基、またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する硬化促進剤は、同一分子内にエポキシ基またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。本発明の硬化促進剤の添加により、開始剤量や、硬化条件を変えることなく本発明の光硬化組成物の光硬化を促進させることができる。特にパターニングを行う場合、現像工程後の膜厚の減少や、表面荒れを防ぐのに効果的である。
【0048】
具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、エポキシ基またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する環状シロキサン化合物などを用いることができる。硬化促進剤の使用量は、硬化物の表面性、パターンの形状、光硬化性組成物の粘度などの点からカチオン重合性化合物100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部であることがより好ましい。
【0049】
本発明の光硬化性組成物は、カチオン重合性化合物がSiH基を含有する場合、一分子中に少なくとも炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する化合物を含有することにより、熱硬化性を付与することができる。一分子中に少なくとも炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する化合物は一分子中に少なくとも炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有するものであれば特に限定されるものではなく、ポリシロキサン化合物、有機化合物にかかわらず特に限定なく使用することができる。
【0050】
特に硬化物の透明性および硬化性の観点より、アルケニル基を有するポリシロキサンが好ましく適用できる。またその中でも化合物入手性の観点より、ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を有するポリシロキサン化合物であることが好ましい。具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基の水素原子をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示され、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の化合物が挙げられる。
【0051】
アルケニル基含有有機化合物の例としては、シロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群から選ばれる原子より構成される化合物であって、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物であれば特に限定されない。またSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0052】
上記有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類でき、有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0053】
また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0054】
化合物の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジアリルエーテル、ノナンジオールジアリルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0055】
また化合物としては、骨格部分とアルケニル基(SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合)とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0056】
特に、透明性および耐熱性、耐光性が高いという観点から下記一般式(II)で表されるトリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。
【0057】
【化10】

【0058】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物が好ましい。
【0059】
上記一般式(II)のR3としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR3の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0060】
これら化合物の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレートが挙げられ、特に入手性の観点よりトリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
【0061】
本発明の光硬化性組成物に使用されるカチオン重合性化合物として、変性ポリオルガノシロキサン化合物を用いる場合、概化合物は加水分解による縮合反応や付加反応および開環重合など様々な手法によって得られるものであるが、これら特定の有機構造をポリシロキサン化合物構造中に導入する手法としては特に限定される方法は無いが、位置選択的に導入が可能でかつ化学的に安定な結合であるSi−C結合にて導入できるヒドロシリル化を用いるのが好ましい。本発明のカチオン重合性化合物として使用される変性ポリオルガノシロキサン化合物に好適なものとして、次の態様が挙げられる。
【0062】
下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物:
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物。
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物。
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物。
以下、上記変性ポリオルガノシロキサン化合物の好ましい態様につき、説明する。
【0063】
(化合物(α))
化合物(α)について説明する。
【0064】
化合物(α)は、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物であれば限定されるものではなく、特に上記成分(B)と同様の化合物を使用することができる。その中でも、特に得られる硬化物の絶縁性に優れるという観点より、
下記一般式(I)
【0065】
【化11】

【0066】
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物であることが好ましく、
さらに入手性の観点より、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノプロピルイソシアヌレートが挙げられる。
【0067】
また得られる硬化物の透明性および硬化性の観点より、アルケニル基を有するポリシロキサンが好ましく適用できる。またその中でも化合物入手性の観点より、ケイ素基に結合したビニル基(Si−CH=CH2基)を有するポリシロキサン化合物であることが好ましい。具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にビニル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基の水素原子をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示され、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の化合物が挙げられる。
【0068】
また成分(α)おいて、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、
【0069】
【化12】

【0070】
フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「上記式(X1)〜(X3)で表される各構造、フェノール性水酸基およびカルボキシル基」を「酸性基」と称することがある。)を同一分子内に有することが好ましく、この構造を有することによりアルカリ水溶液への溶解が可能となり、工業的に有用なリソグラフィー性を有する硬化性組成物となり得る。
【0071】
これら化合物の中で特に耐熱性に優れる観点より、イソシアヌル酸構造を有するものが好ましく、入手性の観点より、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸などが具体的に挙げられる。
【0072】
また酸性基を有さないアルケニル化合物との併用も可能であり、特に耐熱性の観点より、イソシアヌル環構造を有するアルケニル化合物である、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等との併用が好ましい。
【0073】
また得られる硬化物が透明性に優れる観点より、アルケニル基を有するポリシロキサン化合物との併用が好ましく、特に入手性の観点より、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の環状シロキサン化合物が好ましい。
【0074】
(化合物(β))
化合物(β)について説明する。
化合物(β)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0075】
これらのうち、硬化物に柔軟性が付与されるという観点より、
【0076】
【化13】

【0077】
(式中、R13、R14は炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、lは、0〜50、nは2〜50、mは0〜10の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。またR13、R14は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より、特にフェニル基であるものが好ましい。
【0078】
また、硬化物の耐熱耐光性が高いという観点より、分子中にT単位またはQ単位を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、具体的には次のような化合物を挙げることができる。
【0079】
【化14】

【0080】
【化15】

【0081】
(式中、R15、R16は炭素数1〜6の有機基を表し、nは0〜50の数を表す。)
で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有し、分子中にTまたはQ構造を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、R15、R16は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましい。
【0082】
これらのうち、入手性および化合物(α)、(γ)との反応性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(III)
【0083】
【化16】

【0084】
(式中R4、R5は炭素数1〜6の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは3〜10、mは0〜10の数を表す)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0085】
一般式(III)で表される化合物中の置換基R4、R5は、C、H、Oからなる群から選択して構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。一般式(III)で表される化合物としては、入手容易性及び反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。上記した各種化合物(β)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0086】
(化合物(γ))
化合物(γ)について説明する。
【0087】
化合物(γ)は、1分子中に光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物であれば特に限定されない。なお、ここでいう光重合性官能基は、前述の変性ポリオルガノシロキサン化合物が有する光重合性官能基と同一であって、好ましい態様も同様に好ましい。
【0088】
特に光重合性官能基として、反応性・化合物の安定性の観点より、光重合性官能基の少なくとも1個は、エポキシ基、架橋性ケイ素基、(メタ)アクリロイル基、オキセタニル基、ビニロキシ基が好ましい。
【0089】
光重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物(γ)の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、光重合反応性に優れている観点より、脂環式エポキシ基を有する化合物であるビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
【0090】
またオキセタニル基を有する化合物(γ)の具体例としては、アリルオキセタニルエーテル、ビニルオキセタニルエーテルなどが挙げられる。オキセタニル基を有する化合物を用いる場合、硬化物の靭性が向上するという観点より好ましい。
【0091】
光重合性官能基として架橋性ケイ素基を有する化合物(γ)の具体例としては、入手性容易性及び耐熱性の観点からは、下記一般式(IV)
【0092】
【化17】

【0093】
(式中R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される架橋性ケイ素基を有する化合物であることが好ましく、反応後の副生成物が除去されやすい等という観点より、特にトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシランが好ましい。
【0094】
光重合性官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物(γ)としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、およびがビニル基またはアリル基と下記一般式(IX)
【0095】
【化18】

【0096】
(式中のR17は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される有機基とを同一分子内中に1個以上ずつ有する化合物、例えば、上述の一般式(II)において、式中のR3の少なくとも1個が上記一般式(IX)で示される基であり、かつ、R3の少なくとも1個がビニル基またはアリル基などのSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である化合物が挙げられる。さらにヒドロシリル化の選択性が高いという観点より、メタクリロイル基が同一分子内にアリルまたはビニル基と共存する化合物であることが好ましく、特に入手性の面よりメタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニルなどが好ましい。またヒドロシリル化反応の際、光重合性官能基の種類を問わず、2種以上の化合物(γ)を併用することもできる。
【0097】
(ヒドロシリル化触媒)
化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)をヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0098】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0099】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0100】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、化合物(α)および化合物(γ)のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合(以下、単に「アルケニル基」と称することがある。)1モル、または、化合物(α)および化合物(γ)のアルケニル基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は上記化合物のアルケニル基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0101】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0102】
(化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)の反応)
本発明の光硬化性組成物に使用できる変性ポリオルガノシロキサン化合物としては、上述したとおり、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)の反応をヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることにより得られる化合物が挙げられる。
【0103】
反応の順序、方法としては種々挙げられるが、合成工程が簡便であると言う観点からは、化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)を1ポットでヒドロシリル化反応させ、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましく、低分子量体を含有しにくいと言う観点から、過剰の化合物(α)と化合物(β)とを、もしくは、過剰の化合物(β)と化合物(α)とをヒドロシリル化反応させた後、一旦、未反応の化合物(α)もしくは化合物(β)を除き、得られた反応物と化合物(γ)をヒドロシリル化反応させる方法がより好ましい。
【0104】
各化合物の変性させる割合は特に限定されないが、化合物(α)および(γ)の総アルケニル基量をA、化合物(β)の総SiH基量をBとした場合、1≦B/A≦30であることが好ましく、更に1≦B/A≦10であることが好ましい。1>B/Aの場合は、組成物中に未反応アルケニル基が残るため着色の原因となり、また30<B/Aの場合には、大量の(β)成分を使用するため、製造コストが高くなる観点より好ましくない。
【0105】
また、化合物(α)および化合物(γ)の変性割合については、化合物(α)のアルケニル基をA1、化合物(γ)のアルケニル基をA2とした場合、A1+A2=1として、0.01≦A1≦0.99、0.01≦A2<0.99の範囲で適宜選択して変性させることができる。
【0106】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。反応時間、反応時の圧力は必要に応じ種々設定できる。
【0107】
ヒドロシリル化反応の際に酸素を使用できる。反応容器の気相部に酸素を添加することで、ヒドロシリル化反応を促進できる。酸素の添加量を爆発限界下限以下とする点から、気相部の酸素体積濃度は3%以下に管理する必要がある。酸素添加によるヒドロシリル化反応の促進効果が見られるという点からは、気相部の酸素体積濃度は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。
【0108】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0109】
化合物(α)、化合物(β)および化合物(γ)をヒドロシリル化反応させた後に、溶媒及び/又は未反応の化合物を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる反応物が揮発分を有さないため、該反応物を用いて硬化物を作成する場合に、揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは80℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0110】
本発明のカチオン重合性化合物としての変性オルガノポリシロキサン化合物の上記製造方法では、目的によって種々の添加剤を使用できる。
【0111】
(光硬化性組成物の調整方法および硬化方法)
光硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
【0112】
本発明の光硬化性組成物の使用方法は、特に限定されるものではなくスピンコートやスリットコートによるコーティング、ディスペンスによるポッティング等を用いて使用することができる。また基材の状態に合わせ適宜、溶剤による粘度調整、界面活性剤による表面張力調整を行っても良い。
【0113】
また本発明の光硬化性組成物は、光照射により架橋反応を進行させて硬化物とする。本発明によれば、低い光量で形成された場合においても、膜厚均一性・均一な断面形状に優れる保護膜又はパターンを提供することができる。光硬化させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。
【0114】
露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は1〜500mJ/cm2、より好ましくは1〜100mJ/cm2であり、さらに好ましくは1〜60mJ/cm2である。露光量が少ないと表面荒れや、膜厚の減少、パターンエッジ部の欠けが生じる。露光量が多いと急硬化のために変色することがある。好ましい硬化時間の範囲は1〜120秒、より好ましくは1〜60秒である。硬化時間が長いと、生産性が低下するとともに、光硬化の速硬化の特徴が生かされない。
【0115】
成膜後の加熱温度は特に限定されるものではないが、周辺の耐熱性の低い部材への影響が小さいという観点より、200℃以下であることが好ましく、特に樹脂基板などを用いる場合には、寸法安定性等を考慮すると180℃以下であることが好ましい。
【0116】
(フォトリソグラフィーについて)
また本発明の光硬化性組成物について、アルカリ現像により微細パターニングすることも可能である。そのパターニング形成について特に限定される方法はなく、一般的に行われる浸漬法やスプレー法等の現像方法により未露光部を溶解・除去し所望のパターン形成させることができる。
【0117】
またこの時の現像液については、一般に使用するものであれば特に限定なく使用することができ、具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液やコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などの無機アルカリ水溶液やこれら水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤などを添加したもの等を挙げることができる。
【0118】
また水溶液濃度に関しては、露光部と未露光部のコントラストがつきやすいという観点より、25重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下であることが好ましい。
【0119】
(添加剤について)
(増感剤)
本発明の光硬化性組成物には、光エネルギーで硬化させる場合には、光の感度向上のおよびg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加する事ができる。これら増感剤は、上記カチオン重合開始剤と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。添加する化合物には、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
【0120】
アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられ、特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0121】
また硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0122】
チオキサントン系の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0123】
またこれらの増感剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。増感剤の添加量は、硬化時間、硬化物中の増感剤残存の点、着色性等の点からポリシロキサン系化合物100重量部に対して、概ね0.1〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
【0124】
(リン化合物)
本発明の光硬化性組成物を光又は熱により硬化させ、特に透明性を要求される用途で使用する場合は、光又は熱による硬化後の色相を改善するために、リン化合物を使用するのが好ましい。リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類から選ばれる酸化防止剤、又は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類から選ばれる着色防止剤が好ましく使用される。
【0125】
リン化合物の使用量は、変性ポリオルガノシロキサン化合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。リン化合物の使用量が0.01重量部より少ないと、色相の改善効果が少なくなる。使用量が10重量部より多くなると、硬化性や硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0126】
(熱可塑性樹脂)
本発明の光硬化性組成物には特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0127】
熱可塑性樹脂としては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/またはSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合及び/またはSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0128】
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0129】
熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、変性オルガノシロキサン化合物との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0130】
熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、好ましい使用量の範囲は硬化性組成物全体の5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなり易い。添加量が多いと耐熱性(高温での弾性率)が低くなり易い。
【0131】
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0132】
熱可塑性樹脂は変性ポリオルガノシロキサン化合物に溶解して均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、変性ポリオルガノシロキサン化合物に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を変性ポリオルガノシロキサン化合物に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態或いは/お及び混合状態としてもよい。
【0133】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となり易いという観点からは、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0134】
(充填材)
本発明の光硬化性組成物には必要に応じて充填材を添加してもよい。
充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用或いは/及び提案されている充填材等を挙げることができる。
【0135】
(老化防止剤)
本発明の光硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0136】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0137】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0138】
(ラジカル禁止剤)
本発明の光硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0139】
(紫外線吸収剤)
本発明の光硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0140】
(溶剤)
本発明の光硬化性組成物に使用される、カチオン重合性化合物が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0141】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、クロロホルムが好ましい。
【0142】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0143】
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0144】
(その他添加剤)
本発明の光硬化性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0145】
(用途)
本発明の硬化性組成物或いは硬化物は、種々の用途に用いることができる。従来のアクリル樹脂およびエポキシ樹脂接着剤が使用される各種用途に応用することが可能である。
【0146】
例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質、ガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素透過膜の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0147】
中でも、本発明の硬化性組成物はアルカリ現像性透明レジストとして使用できる材料であり、特にFPD用材料として好適な材料である。より具体的には、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料などが挙げられる。
【実施例】
【0148】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0149】
(実施例1〜2、比較例1〜5)
実施例1〜2および比較例1〜5で得た硬化性組成物に対し、下記方法を用いて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
本発明の硬化性組成物を硬化することによって得られる硬化物は、比較例の組成物と比較して優れた光硬化反応に対する感度を有する光硬化性材料として機能する。
【0152】
(パターニング性評価)
実施例、比較例で得られた樹脂組成物を用いて下記のようなパターニング評価サンプルを作成した。ガラス板に樹脂組成物をスピンコーティング(回転数1500rpm、10秒)したものを、65℃に加熱したホットプレート上で2分加熱し、露光装置(高圧水銀ランプ、マスクアライメント装置MA−10)を用い、パターンマスクを通して種々の積算光量で露光し(プロキシミティ露光、ギャップ12μm)、65℃に加熱したホットプレート上で2分加熱し、アルカリ性現像液(TMAH2.38%水溶液)に60秒浸漬後水洗してパターンを形成した。その後150℃に加熱したホットプレート上にて1時間加熱して評価サンプルを得た。得られた評価サンプルは白色干渉顕微鏡(NewView5030)を用いてパターン形状を観測し、現像前と比較して、膜厚の減少(膜減り)の程度を下記基準に従い評価した。
【0153】
<評価基準>
○:膜減りが無く、均一なパターン形成可能
△:局所的に膜減りが発生
×:広範囲に膜減りが発生。
【0154】
(実施例1)
500mL四つ口フラスコにトルエン100g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン57.49gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート3.8g、ジアリルイソシアヌル酸5.0g、1,4−ジオキサン70.0g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.0186gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から6時間後に1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体「反応物B」を得た。
【0155】
100mL四つ口フラスコにトルエン20g、「反応物B」10gを入れ、気相部を窒素置換した後内温105℃で加熱し、ここにビニルシクロヘキセンオキシド3.0gおよびトルエン3.0gの混合液を加え、添加3時間後に1H−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認した。反応液を冷却し「反応物1」を得た。1H−NMRの測定により、標準物質をジブロモエタンとした時の当量換算でエポキシ基を2.0mmol/g、SiH基を4.0mmol/g、および下記式(X1)で表される構造を有するポリオルガノシロキサン化合物であることを確認した。
【0156】
【化19】

【0157】
得られた「反応物1」0.5g、トリアリルイソシアヌレート0.19g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、BBI−103(ミドリ化学製、光カチオン重合開始剤)0.02g、9,10−ジプロポキシアントラセン0.01g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.025g添加したものの40%PGMEA溶液を調整した。
【0158】
(実施例2)
実施例1で得られた「反応物1」0.5g、トリアリルイソシアヌレート0.19g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、BBI−103(ミドリ化学製、光カチオン重合開始剤)0.02g、9,10−ジプロポキシアントラセン0.01g、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン0.050g添加したものの40%PGMEA溶液を調整した。
【0159】
(比較例1)
実施例1で得られた「反応物1」0.5g、トリアリルイソシアヌレート0.19g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、BBI−103(ミドリ化学製、光カチオン重合開始剤)0.02g、9,10−ジプロポキシアントラセン0.01g添加したものの40%PGMEA溶液を調整した。
【0160】
(比較例2)
実施例1で得られた「反応物1」0.5g、トリアリルイソシアヌレート0.19g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、BBI−103(ミドリ化学製、光カチオン重合開始剤)0.02g、ジブチルアントラセン0.01g、ビニルトリメトキシシラン0.050g添加したものの40%PGMEA溶液を調整した。
【0161】
(比較例3)
実施例1で得られた「反応物1」0.5g、トリアリルイソシアヌレート0.19g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、BBI−103(ミドリ化学製、光カチオン重合開始剤)0.02g、9,10−ジプロポキシアントラセン0.01g、アリルグリシジルエーテル0.050g添加したものの40%PGMEA溶液を調整した。
【0162】
(比較例4)
実施例1で得られた「反応物1」0.5g、トリアリルイソシアヌレート0.19g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.7mg、BBI−103(ミドリ化学製、光カチオン重合開始剤)0.02g、9,10−ジプロポキシアントラセン0.01g、ビニルシクロへキセンオキシド0.050g添加したものの40%PGMEA溶液を調整した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物(a)と、カチオン重合開始剤(b)、エポキシ基、またはオキセタニル基と、アルコキシシリル基を有する硬化促進剤(c)を含んでなる光硬化性組成物。
【請求項2】
カチオン重合性化合物(a)が、ポリオルガノシロキサン化合物である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
カチオン重合性化合物(a)が、エポキシ基含有化合物である事を特徴とする請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
カチオン重合性化合物(a)がカチオン重合性官能基およびSiH基を同一分子内に有する化合物であり、(d)炭素−炭素二重結合を有する化合物、を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
成分(a)が、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する化合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【化1】

【請求項6】
成分(d)が下記一般式(I)
【化2】

(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、請求項4または5に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
成分(d)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である請求項4〜6のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
成分(a)が、下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物を使用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光硬化性組成物:
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物
(γ)1分子中に、カチオン重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物
【請求項9】
請求項8記載の化合物(α)が、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記一般式(I)
【化3】

(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のR3はSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、請求項8に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
請求項8記載の化合物(α)が、Si−CH=CH2基を有する化合物である請求項8もしくは9のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
請求項8記載の化合物(α)が、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記式(X1)〜(X3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する有機化合物である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【化4】

【請求項12】
化合物(β)が、下記一般式(III)
【化5】

(式中R4、R5は炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項13】
化合物(γ)が、下記一般式(IV)
【化6】

(式中R6、R7は炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。

【公開番号】特開2011−219583(P2011−219583A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88964(P2010−88964)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】