説明

光硬化性組成物および表面に微細パターンを有する成形体の製造方法

【課題】環境特性、離型性に優れた硬化物を形成でき、フッ素界面活性剤と他の成分との相溶性に優れた光硬化性組成物、およびモールドの反転パターンが精密に転写された微細パターンを表面に有し、かつ表面の組成が均一な成形体を製造できる方法を提供する。
【解決手段】メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物を主成分とするインプリント用光硬化性組成物であって下記重合体(D)を含む光硬化性組成物。CH2=C(R11)-C(O)O-Q-Rfの単位20〜45質量%とCH2=C(R21)-C(O)O-(CH2CH(R22)O)n-H(数平均分子量350以下)単位の20〜65質量%とCH2=C(R31)-C(O)O-R32の単位5〜40質量%とを含む、質量平均分子量1000〜5000の重合体(D)。R11、R21、R31=水素原子、メチル基、Q=2価の連結基等、R=炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基等、R22=水素原子等、n=3〜6、R32=炭素数2〜15の脂肪族炭化水素基。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物および表面に微細パターンを有する成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材、記録メディア、半導体装置等の製造において微細パターンを短時間で形成する方法として、該微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドを、基板の表面に配置された光硬化性組成物に押しつけ、該光硬化性組成物に光を照射し、該光硬化性組成物を硬化させて、基板の表面に微細パターンを形成する方法(ナノインプリント法)が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかし、該方法においては、光硬化性組成物の硬化物がモールドに密着するため、硬化物とモールドとを分離しにくい。そのため、モールドの表面に離型剤を塗布する必要がある。しかし、離型剤自体の膜厚、離型剤の塗布ムラ等により、モールドの反転パターンを精密に転写することは困難となる。
【0004】
離型性のよい硬化物を形成できる光硬化性組成物としては、下記のものが提案されている。
(1)分子中にフッ素化アルキル基と極性基とを有するフッ素界面活性剤を含む活性エネルギー線硬化性組成物(特許文献3)。
(2)含フッ素モノマーと、フッ素を含まないモノマーと、フッ素界面活性剤または含フッ素ポリマーと、重合開始剤とを含む光硬化性組成物(特許文献4)。
【0005】
しかし、(1)、(2)の光硬化性組成物には、下記問題がある。
(i)フッ素界面活性剤は、離型性の向上のために、パーフルオロオクタンスルホン酸由来の化合物を原材料として用いていたり、微量混入していたりする場合が多い。パーフルオロオクタンスルホン酸由来の化合物は、環境残留性や生体蓄積性が指摘されており、その使用が規制される方向にある。
(ii)フッ素界面活性剤が、末端メチル基のポリ(オキシエチレン)構造を有する場合であり、かつモールドが、複雑な微細パターンを有するモールド、密集した微細パターンを有するモールド、微細パターンの領域の面積が広いモールド等である場合、該モールドと光硬化性組成物の硬化物との離型性が不充分であったり、該モールドの微細パターンに光硬化性組成物がきちんと充填されなかったりする。
(iii)フッ素界面活性剤の分子量や組成を制御しない場合、硬化物の表面の組成が不均一になり、硬化物の表面状態にばらつきが生じてしまうため、永久膜として用いた場合に耐候性が低下したり、レジストとして用いた場合にエッチング速度の面内ばらつきが生じたり、レプリカモールドとして用いた場合に被転写体が一部接着したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6696220号明細書
【特許文献2】特開2004−071934号公報
【特許文献3】特開2001−106710号公報
【特許文献4】国際公開第2006/114958号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パーフルオロオクタンスルホン酸由来の化合物を原料としたフッ素界面活性剤を用いることなく、離型性に優れた硬化物を形成でき、かつフッ素界面活性剤と他の成分との相溶性に優れた光硬化性組成物、およびモールドの反転パターンが精密に転写された微細パターンを表面に有し、かつ表面の組成が均一な成形体を製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、下記インプリント用光硬化性組成物である。
アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物(以下、化合物(X)ともいう)を主成分とするインプリント用光硬化性組成物であって、下記化合物(A)と下記化合物(B)と下記化合物(C)との共重合体であり、下記化合物(A)の単位と下記化合物(B)の単位と下記化合物(C)の単位の合計に対する、下記化合物(A)の単位の割合が20〜45質量%、下記化合物(B)の単位の割合が20〜65質量%、下記化合物(C)の単位の割合が5〜40質量%であり、かつその質量平均分子量が1000〜5000である重合体(D)を含む、インプリント用光硬化性組成物。
化合物(A):下式(1)で表される化合物。
CH=C(R11)−C(O)O−Q−R ・・・(1)。
ただし、R11は、水素原子またはメチル基であり、Qは、単結合またはフッ素原子を含まない2価の連結基であり、Rは、主鎖の炭素数が1〜6の、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基である。
化合物(B):下式(2)で表わされ、数平均分子量が350以下である化合物。
CH=C(R21)−C(O)O−(CHCH(R22)O)−H ・・・(2)。
ただし、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基であり、nは、3〜6であり、化合物(B)1分子中のn個のR22はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
化合物(C):下式(3)で表される化合物。
CH=C(R31)−C(O)O−R32 ・・・(3)。
ただし、R31は、水素原子またはメチル基であり、R32は、炭素数が2〜15の1価の脂肪族炭化水素基である。
【0009】
本発明のインプリント用光硬化性組成物は、前記化合物(X)を主成分とする組成物であり、通常光重合開始剤(G)を含む。また、前記化合物(X)は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個有する化合物(以下、化合物(Y)ともいう)、および、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物(H)からなる群から選ばれる1種以上からなる。
本発明において、化合物(Y)をフッ素原子を有する化合物(E)とフッ素原子を有しない化合物(F)の2種に分類する。本発明の光硬化性組成物が化合物(Y)を含む場合、該化合物(Y)は化合物(E)および化合物(F)からなる群から選ばれる1種以上からなる。本発明の光硬化性組成物は化合物(Y)を含むことが好ましい。すなわち、前記化合物(X)の少なくとも一部として、化合物(E)および化合物(F)からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。より好ましくは、化合物(E)および化合物(F)の両者を含む。
さらに、本発明の光硬化性組成物は化合物(H)を含むことが好ましい。
本発明の光硬化性組成物において、前記重合体(D)の含有割合は、光硬化性組成物に対して0.01〜5質量%であることが好ましい。また、光重合開始剤(G)の含有割合は、光硬化性組成物に対して1〜12質量%であることが好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、前記化合物(E)、化合物(F)および化合物(H)の少なくともいずれかを含み、光硬化性組成物に対する各化合物の含有割合は、以下の割合であることが好ましい。
化合物(E):5〜40質量%
化合物(F):10〜55質量%
化合物(H):10〜75質量%
【0010】
本発明において、光硬化性組成物とは、溶剤を含まない組成物を意味する。光硬化する組成物は実質的に溶剤を含まない組成物である。ただし、硬化させる前の組成物としては溶剤を含んでいてもよい。すなわち、本発明のインプリント用光硬化性組成物は、塗布等の取扱いを行うために、溶剤を含む溶液状態で硬化前の操作を行うことができる。前記各成分の割合は、溶剤を含まない光硬化性組成物(または、溶剤を含む組成物の場合は溶剤を除いた成分の総量)をベースとした各成分の割合を意味する。また、同じ意味で、本発明のインプリント用光硬化性組成物の25℃における粘度は3〜200mPa・sであることが好ましい。
【0011】
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法は、本発明のインプリント用光硬化性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの該反転パターンを有する表面に接触させる工程と、前記モールドの表面に前記光硬化性組成物を接触させた状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、前記硬化物から前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法は、本発明のインプリント用光硬化性組成物を、基板の表面に配置する工程と、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドを、該モールドの反転パターンが前記光硬化性組成物に接するように、前記光硬化性組成物に押しつける工程と、前記モールドを前記光硬化性組成物に押しつけた状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、前記硬化物から前記モールド、または前記基板および前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法は、本発明のインプリント用光硬化性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの該反転パターンを有する表面に配置する工程と、基板を、前記光硬化性組成物に押しつける工程と、前記基板を前記光硬化性組成物に押しつけた状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、前記硬化物から前記モールド、または前記基板および前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法は、基板と、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドとを、該モールドの反転パターンが前記基板の側になるように接近または接触させる工程と、本発明のインプリント用光硬化性組成物を、前記基板と前記モールドとの間に充填する工程と、前記基板と前記モールドとが接近または接触した状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、前記硬化物から前記モールド、または前記基板および前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
前記微細パターンは、レジストパターンであってもよく、前記表面に微細パターンを有する成形体は、インプリント用のレプリカモールドまたは電鋳用のレプリカモールドであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光硬化性組成物は、パーフルオロオクタンスルホン酸由来の化合物を原料としたフッ素界面活性剤を用いることなく、離型性に優れた硬化物を形成でき、かつフッ素界面活性剤と他の成分との相溶性に優れる。
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法によれば、モールドの反転パターンが精密に転写された微細パターンを表面に有し、かつ表面の組成が均一な成形体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】表面に微細パターンを有する成形体の製造方法の一例を示す断面図である。
【図2】表面に微細パターンを有する成形体の製造方法の他の例を示す断面図である。
【図3】表面に微細パターンを有する成形体の一例を示す断面図である。
【図4】表面に微細パターンを有する成形体の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書においては、(メタ)アクリロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を意味する。また、本明細書においては、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0019】
<光硬化性組成物>
本発明のインプリント用光硬化性組成物(以下、光硬化性組成物と記す。)は、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物(すなわち化合物(X))を主成分とする組成物であり、光硬化性を付与するために通常光重合開始剤(G)を含む。また、本発明の光硬化性組成物は重合体(D)を必須成分として含む。さらに、後述添加剤(I)等の成分を必要に応じて含んでいてもよい。前記のように、本発明の光硬化性組成物は溶剤を含まない組成物を意味する。しかし、光硬化の際には組成物中に実質的に含まれない溶剤を含む溶液(すなわち、光硬化性組成物の溶液)を前記成形体の製造に使用することができる。
【0020】
化合物(X)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物であり、本発明では(メタ)アクリロイルオキシ基の数が1個有する化合物(すなわち、化合物(Y))と(メタ)アクリロイルオキシ基の数が2個以上有する化合物(すなわち、化合物(H))に分ける。化合物(Y)は、化合物(E)と化合物(F)に分ける。
化合物(X)としては、光重合が容易であることよりアクリロイルオキシ基を有する化合物であることがより好ましい。すなわち、化合物(E)と化合物(F)はアクリロイルオキシ基を1個有する化合物であることがより好ましく、化合物(H)はその(メタ)アクリロイルオキシ基がすべてアクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
本発明の光硬化性組成物(溶剤を含まない組成物)において、化合物(X)は必須かつ主たる成分である。本発明の光硬化性組成物は、化合物(E)、化合物(F)および化合物(H)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、かつそれらの合計量が光硬化性組成物の主成分(50質量%を超える成分)となる。本発明の光硬化性組成物において、光硬化性組成物(溶剤を含まない組成物)に対する化合物(X)の含有割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0021】
本発明の光硬化性組成物に含まれる化合物(X)は、化合物(E)、化合物(F)および化合物(H)から選ばれる1種のみからなっていてもよく、その場合の化合物(X)としては化合物(H)が好ましい。光硬化性組成物に含まれる化合物(X)は、より好ましくは、化合物(E)および化合物(F)の少なくともいずれかと化合物(H)からなる。最も好ましくは、化合物(X)は、化合物(E)、化合物(F)および化合物(H)の3者からなる。なお、本発明の光硬化性組成物は、必要により、化合物(X)以外の光重合性化合物が含まれていてもよい。
【0022】
本発明の光硬化性組成物(溶剤を含まない組成物)の25℃における粘度は、3〜200mPa・sが好ましく、5〜100mPa・sがより好ましい。光硬化性組成物の粘度が該範囲であれば、特別な操作(たとえば、光硬化性組成物を高温に加熱して低粘度にする操作等。)を行うことなく、光硬化性組成物と、モールドの反転パターンを有する表面との接触を容易に行える。
【0023】
本発明の光硬化性組成物は、硬化時には実質的に溶剤を含まない組成物であり、さらに、硬化前の塗布等の光硬化性組成物を取り扱う際にも実質的に溶剤を含まない組成物であることが好ましい。光硬化性組成物が実質的に溶剤を含まなければ、光の照射を除く特別な操作(たとえば、光硬化性組成物を高温に加熱して溶媒を除去する操作等。)を行うことなく、光硬化性組成物の硬化を容易に行える。
溶剤とは、重合体(D)、化合物(E)、化合物(F)、光重合開始剤(G)、化合物(H)および添加剤のいずれかを溶解させる能力を有する化合物であり、常圧における沸点が160℃以下の化合物である。
実質的に溶剤を含まない光硬化性組成物とは、光硬化性組成物に含有される溶剤の量が、光硬化性組成物に対して1質量%以下であることを意味する。本発明においては、光硬化性組成物を調製する際に用いた溶剤を残存溶剤として含んでいてもよいが、残存溶剤は、極力除去されていることが好ましく、残存溶剤等の溶剤の含有量は、光硬化性組成物に対して0.7質量%以下がより好ましい。
【0024】
<<重合体(D)>>
重合体(D)は、化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)との共重合体であり、化合物(A)の単位と化合物(B)の単位と化合物(C)の単位の合計に対する、化合物(A)の単位の割合が20〜45質量%、化合物(B)の単位の割合が20〜65質量%、化合物(C)の単位の割合が5〜40質量%であり、かつその質量平均分子量が1000〜5000である、重合体である。
化合物(A):下式(1)で表される化合物である。
CH=C(R11)−C(O)O−Q−R ・・・(1)。
【0025】
11は、水素原子またはメチル基である。
Qは、単結合またはフッ素原子を含まない2価の連結基である。2価の連結基としては、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基、式(C2rO)で表されるオキシアルキレン基(ただし、式中のrは2〜6の整数、sは1〜10の数であり、当該オキシアルキレン基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい)、2価の6員環芳香族基、2価の4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、2価の5〜6員環の複素環基、または下式(4)で表される2価の連結基が挙げられる。2価の連結基は、2種以上を組み合わせたものであってもよく、環を縮合したものであってもよく、置換基を有するものであってもよい。なお、Qは原子量の合計が300以下の連結基であることが好ましい。
【0026】
−Y−Z− ・・・(4)。
ただし、Yは、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、2価の6員環芳香族基、2価の4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、2価の5〜6員環の複素環基、またはこれらが縮合した環基であり、Zは、−O−、−S−、−CO−、−C(O)O−、−C(O)S−、−N(R)−、−SO−、−PO(OR)−、−N(R)−C(O)O−、−N(R)−C(O)−、−N(R)−SO−、または−N(R)−PO(OR)−であり、Rは、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基である。
【0027】
Qとしては、単結合、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、下式(5)で表される基、またはこれらの基の組み合わせが好ましく、−(CH(ただし、pは0〜6の整数であり、pが0の場合は単結合を表す。)が特に好ましい。
−Y−Z− ・・・(5)。
ただし、Yは、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または2価の6員環芳香族基であり、Zは、−N(R)−、−SO−、または−N(R)−SO−であり、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。
【0028】
は、主鎖の炭素数が1〜6の、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基である。QとRとの境界は、Rの炭素数が最も少なくなるように定める。
ポリフルオロアルキル基とは、主鎖の炭素数(側鎖を含まない炭素数)が1〜6のアルキル基の水素原子が2つ以上フッ素原子に置換された基を意味する。また、主鎖とは、直鎖状の場合は該直鎖を意味し、分岐状の場合は最も長い炭素鎖を意味する。側鎖とは、分岐状のポリフルオロアルキル基を構成する炭素鎖のうち、主鎖以外の炭素鎖を意味する。側鎖はアルキル基、モノフルオロアルキル基またはポリフルオロアルキル基からなる。
【0029】
ポリフルオロアルキル基としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基。)に対応する、部分フルオロ置換アルキル基、またはパーフルオロ置換アルキル基が挙げられる。
炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するポリフルオロアルキル基としては、ポリフルオロ(アルコキシアルキル)基やポリフルオロ(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)基が好ましく、ポリフルオロ(2−エトキシエチル)基、ポリフルオロ(2−メトキシプロピル)基、ポリフルオロ(ポリオキシエチレンメチルエーテル)基、ポリフルオロ(ポリオキシプロピレンメチルエーテル)基等が挙げられる。
【0030】
としては、直鎖状のものが好ましい。Rが分岐状のものである場合、分岐部分ができるだけRの末端に近い部分に存在することが好ましい。
としては、ポリフルオロアルキル基が好ましく、全水素原子が実質的にフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基がより好ましく、直鎖状のパーフルオロアルキル基がさらに好ましく、環境残留性や生体蓄積性が低く、かつ離型性が高い点から、炭素数が4〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基が特に好ましく、炭素数が6の直鎖状のパーフルオロアルキル基が最も好ましい。
【0031】
化合物(A)としては、下記式(6)で表される化合物(A−1)が好ましい。
CH=C(R11)−C(O)O−(CH−R ・・・(6)。
ただし、R11は、水素原子またはメチル基であり、pは、0〜6の整数であり、R
は、炭素数が1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキル基である。
【0032】
化合物(A−1)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CH=CH−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−(CH−CF
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−CF等。
【0033】
化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。すなわち、重合体(D)は化合物(A)の単位を2種以上有していてもよい。
重合体(D)中の化合物(A)の単位の割合は、化合物(A)の単位〜化合物(C)の単位の合計に対して20〜45質量%である。化合物(A)の単位の割合が20質量%以上であれば、光硬化性組成物の硬化物の離型性が良好となる。化合物(A)の単位割合が45質量%以下であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶する。
【0034】
(化合物(B))
化合物(B)は、下式(2)で表わされ、数平均分子量が350以下である化合物である。
CH=C(R21)−C(O)O−(CHCH(R22)O)−H ・・・(2)。
【0035】
21は、水素原子またはメチル基である。
22は、水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基である。
化合物(B)1分子中のn個のR22はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
nは、化合物(B)を製造する際に付加させたアルキレンオキシドの付加モル数を意味し、平均値で表される。nは、3〜6であり、3.5〜5.5が好ましい。nが該範囲であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶する。
【0036】
化合物(B)の数平均分子量は350以下であり、300以下が好ましい。化合物(B)の数平均分子量が350以下であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶する。
化合物(B)の数平均分子量は、n(平均値)に基づいて計算により求める。
化合物(B)が水酸基を有することにより、光硬化性組成物中のフッ素成分が表面に向きやすくなり、該組成物の硬化物の離型性が良好となる。具体的には、化合物(B)が極性基である水酸基を有するため、重合体(D)に極性が付与される。よって、重合体(D)が両親媒性となり、光硬化性組成物中の各成分と混合しやすくなる。そのため、化合物(A)の単位に由来するフルオロアルキル基が表面に出るのに随伴して光硬化性組成物中のフッ素を含む成分が表面に出やすくなるため、該組成物の硬化物の離型性が良好になるものと考えられる。
【0037】
化合物(B)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCHO)−H、
CH=CH−C(O)O−(CHCHO)−H、
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCH(CH)O)−H、
CH=CH−C(O)O−(CHCH(CH)O)−H、
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCHO)n1−(CHCH(CH
)O)n2−H、
CH=CH−C(O)O−(CHCHO)n1−(CHCH(CH)O)
−H等。
ただし、nは、3〜6であり、n1+n2は、3〜6である。
【0038】
化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。すなわち、重合体(D)は化合物(B)の単位を2種以上有していてもよい。
重合体(D)中の化合物(B)の単位の割合は、化合物(A)の単位〜化合物(C)の単位の合計に対して20〜65質量%である。化合物(B)の単位の割合が20質量%以上であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶する。化合物(B)の割合が65質量%以下であれば、光硬化性組成物の硬化物の離型性が良好となる。
【0039】
(化合物(C))
化合物(C)は、下式(3)で表される化合物である。 CH2=CCH=C(R31)−C(O)O−R32 ・・・(3)。
【0040】
31は、水素原子またはメチル基である。
32は、炭素数が2〜15の1価の脂肪族炭化水素基である。1価の脂肪族炭化水素基の炭素数が該範囲であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶する。1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状であってもよい。
32としては、アルキル基が好ましく、炭素数が4〜12のアルキル基がより好ましい。
【0041】
化合物(C)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CH=C(CH)−C(O)O−C
CH=C(CH)−C(O)O−CHCH(CH
CH=C(CH)−C(O)O−C13
CH=C(CH)−C(O)O−Cy、
CH=C(CH)−C(O)O−CH(CH)C
CH=C(CH)−C(O)O−CHCH(C)C
CH=C(CH)−C(O)O−C1225
CH=CH−C(O)O−C
CH=CH−C(O)O−CHCH(CH
CH=CH−C(O)O−C13
CH=CH−C(O)O−Cy、
CH=CH−C(O)O−CH(CH)C
CH=CH−C(O)O−CHCH(C)C
CH=CH−C(O)O−C1225等。
ただし、Cyは、シクロヘキシル基である。
【0042】
化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。すなわち、重合体(D)は化合物(C)の単位を2種以上有していてもよい。
重合体(D)中の化合物(C)の単位の割合は、化合物(A)の単位〜化合物(C)の単位の合計に対し5〜40質量%である。化合物(C)の単位の割合が該範囲であれば、光硬化性組成物の硬化物の離型性が良好となる。
【0043】
(第四成分)
化合物(A)の単位〜化合物(C)の重合の際には、化合物(A)の単位〜化合物(C)と共重合し得る第四成分を加えてもよい。
第四成分としては、炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有する化合物(ただし、化合物(A)〜化合物(C)を除く。)が挙げられ、具体的には、シリコーン基含有(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、リン酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
第四成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(D)中の第四成分の単位(第四成分の単位が複数存在する場合はその全量)の割合は、化合物(A)の単位〜化合物(C)の単位および第四成分の単位の合計(すなわち、重合体(D)中の全単位)に対して、20質量%以下が好ましい。第四成分の単位が20質量%を超えると、光硬化性組成物の硬化物の離型性が低下する場合がある。
【0045】
(重合体(D))
重合体(D)は化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)と、必要に応じて第四成分とを共重合して得られるものである。
本発明の光硬化性組成物が、ノニオン系フッ素界面活性剤として重合体(D)を含むことにより、インプリントにおいて重要な離型性を向上できる。
【0046】
重合体(D)の質量平均分子量は、1000〜5000であり、2500〜5000であることが好ましい。重合体(D)の質量平均分子量が1000以上であれば、光硬化性組成物の硬化物の離型性が良好となる。重合体(D)の質量平均分子量が5000以下であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶し、硬化物の表面の組成が均一になる。
【0047】
重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合等が挙げられ、ランダム重合が好ましい。
重合の種類としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。
重合方法としては、重合開始剤の存在下、溶剤中で化合物(A)と化合物(B)と化合物(C)とを共重合させる、溶液重合法が好ましい。
【0048】
溶剤としては、重合開始剤、化合物(A)〜化合物(C)が溶解するものであればよく、水、有機溶剤、フッ素系溶剤等が挙げられ、溶解性の点から、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
重合開始剤としては、過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
重合温度は、制御の容易さの点から、0〜150℃が好ましく、重合開始剤の分解の活性化エネルギーとの相関の点から、30〜90℃がより好ましい。
【0049】
重合体(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。すなわち、光硬化性組成物は、重合体(D)を2種以上有していてもよい。
重合体(D)の割合は、光硬化性組成物(重合体(D)を含む組成物)に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。重合体(D)が0.01質量%以上であれば、光硬化性組成物の硬化物の離型性が良好となる。重合体(D)が5質量%以下であれば、重合体(D)と他の成分とが均一に相溶し、硬化物の表面の組成が均一になる。
【0050】
<<化合物(X)>>
化合物(X)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物であり、本発明では(メタ)アクリロイルオキシ基の数が1個有する化合物(すなわち、化合物(Y))と(メタ)アクリロイルオキシ基の数が2個以上有する化合物(すなわち、化合物(H))に分ける。化合物(Y)は、化合物(E)と化合物(F)に分ける。
化合物(X)としては、光重合が容易であることよりアクリロイルオキシ基を有する化合物であることがより好ましい。すなわち、化合物(E)と化合物(F)はアクリロイルオキシ基を1個有する化合物であることがより好ましく、化合物(H)はその(メタ)アクリロイルオキシ基がすべてアクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
【0051】
(化合物(E))
化合物(E)は、フッ素原子を有し、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する化合物である。本発明の光硬化性組成物が化合物(E)を含む場合、該光硬化性組成物の硬化物とモールドとの離型が容易になる。
化合物(E)としては、前記化学式(1)で表される化合物(A)が好ましい。また、この化学式におけるR11はフッ素原子であってもよい。さらには、相溶性および環境特性の点から、前記化学式(6)で表される化合物(A−1)であり、かつR11が水素原子である化合物が化合物(E)としてより好ましい。
【0052】
化合物(E)としては、前記化合物(A−1)の具体例として挙げた化合物以外に、下記の化合物が挙げられる。
CH=CH−C(O)O−CHCH(OH)CH−CFCFCF(CF
CH=CH−C(O)O−CH(CF
CH=CH−C(O)O−CH−(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−CFCFH、
CH=CH−C(O)O−CH−(CFCFH、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CFCFH、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−(CFCFH、
CH=CH−C(O)O−CH−CFOCFCFOCF
CH=CH−C(O)O−CH−CFO(CFCFO)CF
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CFOCFCFOCF
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CFO(CFCFO)CF
CH=CH−C(O)O−CH−CF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、
CH=CH−C(O)O−CH−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、
CH=C(CH)−C(O)O−CH−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF。
【0053】
本発明の光硬化性組成物は化合物(E)を含むことが好ましい。その場合、光硬化性組成物に含まれる化合物(E)は、1種あっても、2種以上であってもよい。光硬化性組成物が化合物(E)を含む場合、化合物(E)の割合は、光硬化性組成物(化合物(E)を含む組成物)に対して、5〜40量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。化合物(E)が5質量%以上であれば、離型性に優れる硬化物を得ることができ、さらに光硬化性組成物の泡立ちが抑えられる。光硬化性組成物の泡立ちを抑制できることから、調製時にろ過がしやすくなり、さらにナノインプリントする際の泡の混入によるパターン形状の欠陥をなくすことができる。化合物(E)が40質量%以下であれば、均一に混合することができることから機械的強度の優れた硬化物を得ることができる。
また、化合物(E)の採用により、硬化物の透明性を高くできる。さらに、化合物(E)は、光硬化性組成物の粘度低下や表面エネルギー低下に寄与するので、硬化物をレジストとして用いる場合、解像度の向上や、残膜(residual layer)低減に有用である。
【0054】
(化合物(F))
化合物(F)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有する化合物(ただし、化合物(E)を除く。)である。
化合物(F)は、他の成分を溶解させる成分であり、本発明の光硬化性組成物が化合物(F)を含む場合、重合体(D)と化合物(E)および化合物(H)との相溶性を向上させる。重合体(D)と化合物(E)および化合物(H)との相溶性がよければ、光硬化性組成物の調製時の泡立ちが抑えられ、フィルターを通しやすくなる等、光硬化性組成物の調製が容易となり、また、均一な光硬化性組成物が得られる。さらに、均質な硬化物が得られることによって、離型性、機械的強度が充分に発揮できる。
化合物(F)の25℃における粘度は、0.1〜200mPa・sが好ましい。化合物(F)の粘度が該範囲であれば、光硬化性組成物の粘度を低く調整しやすい。さらに、硬化物をレジストとして用いる場合、解像度の向上や、残膜(residual layer)低減に有用である。
【0055】
化合物(F)としては、モノヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシ化合物のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、モノヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレート、特にモノヒドロキシ化合物のアクリレートが好ましい。モノヒドロキシ化合物としては、特にアルキル部分の炭素数が4〜20のアルカノール、単環、縮合多環もしくは橋かけ環を有する脂環族モノオール、ポリ(もしくはモノ)アルキレングリコールモノアルキル(もしくはアリール)エーテル等が好ましい。特に好ましいモノヒドロキシ化合物は、炭素数が6〜20のアルカノールと橋かけ環を有する脂環族モノオールである。また、硬化物をレジストとして使用する場合は、エッチング耐性が向上するので、橋かけ環を有する脂環族モノオールを使用することが好ましい。
化合物(F)としては、下記の化合物が挙げられる。
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシピロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−(tert−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等。
【0056】
本発明の光硬化性組成物は化合物(F)を含むことが好ましい。その場合、光硬化性組成物に含まれる化合物(F)は、1種あっても、2種以上であってもよい。光硬化性組成物が化合物(F)を含む場合、化合物(F)の割合は、光硬化性組成物(化合物(F)を含む組成物)に対して、10〜55質量%が好ましく、15〜45質量%がより好ましい。化合物(F)が10質量%以上であれば、光硬化性組成物の粘度を低く調整でき、かつ重合体(D)と化合物(E)および化合物(H)との相溶性が良好となる。化合物(F)が55質量%以下であれば、感度が良好となり、架橋密度も上がることから、機械強度の優れた硬化物を得ることができる。
【0057】
(化合物(H))
化合物(H)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物である。化合物(H)は、フッ素原子を有する化合物であってもよいが、通常はフッ素原子を有しない化合物である。
化合物(H)は、光硬化性組成物の感度を向上させる成分である。また、化合物(H)の種類によっては、光硬化性組成物の硬化物のドライエッチング耐性、ウェットエッチング耐性、透明性、粘度、屈折率、硬度、機械強度、柔軟性、基板との密着性等の諸物性を調整できる。
化合物(H)における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2〜10が適当であり、2〜6が好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基の数が多すぎる場合は硬化物が脆くなるおそれがある。ただし、少量であれば(メタ)アクリロイルオキシ基の数が特に多い化合物も使用できる。
【0058】
化合物(H)としては、ポリヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレートであり、(メタ)アクリロイルオキシ基の数が2個以上である限り、水酸基を有していてもよい。ポリヒドロキシ化合物としては、アルカンポリオール、アルカンポリオールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコール、多価フェノールやポリアミンなどのアルキレンオキシドが付加しうる官能基を2個以上有する化合物のアルキレンオキシド付加物、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、化合物(H)としては、ポリヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレート構造を有する化合物である、ウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリヒドロキシ化合物にイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られる化合物、ポリヒドロキシ化合物にポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物などの、ウレタン結合を有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートの原料であるポリヒドロキシ化合物としては、アルカンポリオールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコール、多価フェノールのアルキレンオキシド付加物などのポリエーテルポリオールが好ましく、ポリイソシアネート化合物としては無黄変タイプのポリイソシアネート化合物が好ましい。
化合物(H)としては、アルカンポリオール、アルカンポリオールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコールおよび多価フェノールのアルキレンオキシド付加物からなる群から選ばれるポリヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレート、並びに、ポリエーテルポリオールを使用して得られるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(H)としては、下記の化合物が挙げられる。
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート(エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロポキシレートグリセロレートジ(メタ)アクリレート等。)、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、フルオレンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネートジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールグリセロレートジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアリル酸、トリメチロールプロパンエトキシレートメチルエーテルジ(メタ)アクリレート、ウレタン結合を2つ以上有するジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製のUA−4200、ジウレタンジ(メタ)アクリレート等。)、フルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(3−メタクリロイロキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリオールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールを使用して得られるウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリオールを使用して得られるウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルテトラオールを使用して得られるウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエーテルヘキサオールを使用して得られるウレタンヘキサ(メタ)アクリレート等。
【0059】
本発明の光硬化性組成物は化合物(H)を含むことが好ましい。その場合、光硬化性組成物に含まれる化合物(H)は、1種あっても、2種以上であってもよい。光硬化性組成物が化合物(H)を含む場合、化合物(H)の割合は、光硬化性組成物(化合物(H)を含む組成物)に対して、10〜75質量%が好ましく、30〜55質量%がより好ましい。化合物(H)が10質量%以上であれば、光硬化性組成物の感度を向上できる。化合物(H)が75質量%以下であれば、各成分が均一に相溶した光硬化性組成物を得ることができる。
【0060】
(光重合開始剤(G))
光重合開始剤(G)としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキシド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられ、感度および相溶性の点から、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤またはベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましい。
【0061】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、下記の化合物が挙げられる。
アセトフェノン、p−(tert−ブチル)1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等。
【0062】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、下記の化合物が挙げられる。
ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等。
【0063】
α−アミノケトン系光重合開始剤としては、下記の化合物が挙げられる。
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン等。
【0064】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、下記の化合物が挙げられる。
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等。
【0065】
本発明の光硬化性組成物は化合物(G)を通常含み、その場合、光硬化性組成物に含まれる化合物(G)は、1種あっても、2種以上であってもよい。光重合開始剤(G)の割合は、光硬化性組成物(光重合開始剤(G)を含む組成物)に対して、1〜12質量%が好ましく、4〜10質量%がより好ましい。光重合開始剤(G)が1質量%以上であれば、加熱等の操作を行うことなく、容易に硬化物を得ることができる。光重合開始剤(G)が12質量%以下であれば、均一に混合することができることから、硬化物に残存する光重合開始剤(G)が少なくなり、硬化物の物性の低下が抑えられる。
【0066】
<<他の成分>>
光硬化性組成物は、重合体(D)、化合物(E)、化合物(F)、光重合開始剤(G)および化合物(H)以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、重合体(D)以外の界面活性剤(フッ素系界面活性剤であってもよい)、化合物(E)、化合物(F)および化合物(H)以外の光重合性化合物、光増感剤、樹脂、金属酸化物微粒子、炭素化合物、金属微粒子、他の有機化合物等が挙げられる。本発明の光硬化性組成物は、重合体(D)以外の界面活性剤や化合物(E)、化合物(F)および化合物(H)以外の光重合性化合物を特に必要としない。一方、光増感剤、樹脂、金属酸化物微粒子、炭素化合物、金属微粒子等(以下、これらを添加剤(I)と総称する)は、目的に応じて、本発明の光硬化性組成物中に含ませることができる。
【0067】
光増感剤としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン化合物が挙げられる。
樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリエステルオリゴマー、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
金属酸化物微粒子としては、チタニア、シリカ、ジルコニア等が挙げられる。
炭素化合物としては、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
金属微粒子としては、銅、白金等が挙げられる。
他の有機化合物としては、ポルフィリン、金属内包ポリフィリン、イオン性液体(1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等。)、色素等が挙げられる。
【0069】
光硬化性組成物が上記他の成分(特に添加剤(I))を含有する場合、その他の成分の総量の割合は、光硬化性組成物(その他の成分を含む組成物)に対して、20質量%以下が好ましい。添加剤(I)が20質量%以下であれば、光硬化性組成物を均一に混合でき、均質な光硬化性組成物が得られる。
【0070】
以上説明した本発明の光硬化性組成物にあっては、特定の化合物(A)〜(C)を特定の割合で共重合して得られた比較的低分子量の重合体(D)をノニオン系フッ素界面活性剤として含むため、パーフルオロオクタンスルホン酸由来の化合物を原料としたフッ素界面活性剤を用いることなく、離型性に優れた硬化物を形成でき、かつフッ素界面活性剤と他の成分との相溶性に優れる。
【0071】
<表面に微細パターンを有する成形体の製造方法>
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法は、下記の(1)〜(3)の工程を有する。
(1)本発明の光硬化性組成物を、微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの該反転パターンを有する表面に接触させる工程。
(2)モールドの表面に光硬化性組成物を接触させた状態で、光硬化性組成物に光を照射し、光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程。
(3)硬化物からモールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程。
【0072】
本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法としては、より具体的には、下記の(a)〜(c)の方法が挙げられる。
【0073】
(a)の方法:下記の工程(a−1)〜(a−4)を有する方法。
(a−1)図1に示すように、光硬化性組成物20を基板30の表面に配置する工程。
(a−2)図1に示すように、モールド10を、該モールド10の反転パターン12が光硬化性組成物20に接するように、光硬化性組成物20に押しつける工程。
(a−3)モールド10を光硬化性組成物20に押しつけた状態で、光硬化性組成物20に光を照射し、光硬化性組成物20を硬化させて硬化物とする工程。
(a−4)硬化物からモールド10、または基板30およびモールド10を分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程。
【0074】
(b)の方法:下記の工程(b−1)〜(b−4)を有する方法。
(b−1)図2に示すように、光硬化性組成物20をモールド10の反転パターン12の表面に配置する工程。
(b−2)図2に示すように、基板30をモールド10の表面の光硬化性組成物20に押しつける工程。
(b−3)基板30を光硬化性組成物20に押しつけた状態で、光硬化性組成物20に光を照射し、光硬化性組成物20を硬化させて硬化物とする工程。
(b−4)硬化物からモールド10、または基板30およびモールド10を分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程。
【0075】
(c)の方法:下記の工程(c−1)〜(c−4)を有する方法。
(c−1)図1に示すように、基板30とモールド10とを、モールド10の反転パターン12が基板30側になるように接近または接触させる工程。
(c−2)図1に示すように、光硬化性組成物20を基板30とモールド10との間に充填する工程。
(c−3)基板30とモールド10とが接近または接触した状態で、光硬化性組成物20に光を照射し、光硬化性組成物20を硬化させて硬化物とする工程。
(c−4)硬化物からモールド10、または基板30およびモールド10を分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程。
【0076】
基板としては、無機材料製基板または有機材料製基板が挙げられる。
無機材料としては、シリコンウェハ、ガラス、石英ガラス、金属(アルミニウム、ニッケル、銅等。)、金属酸化物(アルミナ等。)、窒化珪素、窒化アルミニウム、ニオブ酸リチウム等が挙げられる。
有機材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等。)、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0077】
基板としては、光硬化性組成物との密着性に優れる点から、表面処理された基板を用いてもよい。表面処理としては、プライマー塗布処理、オゾン処理、プラズマエッチング処理等が挙げられる。プライマーとしては、ポリメチルメタクリレート、シランカップリング剤、シラザン等が挙げられる。
【0078】
モールドとしては、非透光材料製モールドまたは透光材料製モールドが挙げられる。
非透光材料としては、シリコンウェハ、ニッケル、銅、ステンレス、チタン、SiC、マイカ等が挙げられる。
透光材料としては、石英、ガラス、ポリジメチルシロキサン、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、透明フッ素樹脂等が挙げられる。
【0079】
基板およびモールドのうち少なくとも一方は、光重合開始剤(G)が作用する波長の光を40%以上透過する材料とする。
【0080】
モールドは、表面に反転パターンを有する。反転パターンは、形体の表面の微細パターンに対応した反転パターンである。
反転パターンは、微細な凸部および/または凹部を有する。
凸部としては、モールドの表面に延在する長尺の凸条、表面に点在する突起等が挙げられる。
凹部としては、モールドの表面に延在する長尺の溝、表面に点在する孔等が挙げられる。
【0081】
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。凸条または溝は、複数が平行に存在して縞状をなしていてもよい。
凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、長方形、台形、三角形、半円形等が挙げられる。
突起または孔の形状としては、三角柱、四角柱、六角柱、円柱、三角錐、四角錐、六角錐、円錐、半球、多面体等が挙げられる。
【0082】
凸条または溝の幅は、平均で1nm〜500μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、15nm〜10μmが更に好ましい。凸条の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味する。溝の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味する。
突起または孔の幅は、平均で1nm〜500μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、15nm〜10μmが更に好ましい。突起の幅とは、底面が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味し、そうでない場合、突起の底面における最大長さを意味する。孔の幅とは、開口部が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味し、そうでない場合、孔の開口部における最大長さを意味する。
【0083】
凸部の高さは、平均で1nm〜500μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、15nm〜10μmが更に好ましい。
凹部の深さは、平均で1nm〜500μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、15nm〜10μmが更に好ましい。
【0084】
反転パターンが密集している領域において、隣接する凸部(または凹部)間の間隔は、平均で1nm〜500μmが好ましく、1nm〜50μmがより好ましい。隣接する凸部間の間隔とは、凸部の断面の底辺の終端から、隣接する凸部の断面の底辺の始端までの距離を意味する。隣接する凹部間の間隔とは、凹部の断面の上辺の終端から、隣接する凹部の断面の上辺の始端までの距離を意味する。
【0085】
凸部の最小寸法は、1nm〜50μmが好ましく、1nm〜500nmがより好ましく、1nm〜50nmが特に好ましい。最小寸法とは、凸部の幅、長さおよび高さのうち最小の寸法を意味する。
凹部の最小寸法は、1nm〜50μmが好ましく、1nm〜500nmがより好ましく、1nm〜50nmが特に好ましい。最小寸法とは、凹部の幅、長さおよび深さのうち最小の寸法を意味する。
【0086】
工程(a−1):
光硬化性組成物の配置方法としては、インクジェット法、ポッティング法、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、ラングミュラープロジェット法、真空蒸着法等が挙げられる。
光硬化性組成物は、基板の全面に配置してもよく、基板の表面の一部に配置してもよい。
【0087】
工程(a−2):
モールドを光硬化性組成物に押しつける際のプレス圧力(ゲージ圧)は、0超〜10MPa以下が好ましく、0.1〜5MPaがより好ましい。モールドを光硬化性組成物に押しつける際の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。
【0088】
工程(b−1):
光硬化性組成物の配置方法としては、インクジェット法、ポッティング法、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、ラングミュラープロジェット法、真空蒸着法等が挙げられる。
光硬化性組成物は、モールドの反転パターンの全面に配置してもよく、反転パターンの一部に配置してもよく、反転パターンの全面に配置することが好ましい。
【0089】
工程(b−2):
基板を光硬化性組成物に押しつける際のプレス圧力(ゲージ圧)は、0超〜10MPa以下が好ましく、0.1〜5MPaがより好ましい。基板を光硬化性組成物に押しつける際の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。
【0090】
工程(c−2):
光硬化性組成物を基板とモールドとの間に充填する方法としては、毛細管現象により空隙に光硬化性組成物を吸引する方法が挙げられる。
光硬化性組成物を充填する際の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。
【0091】
工程(a−3)、(b−3)、(c−3):
光を照射する方法としては、透光材料製モールドを用い該モールド側から光照射する方法、透光材料製基板を用い該基板側から光照射する方法が挙げられる。光の波長は、200〜500nmが好ましい。光を照射する際には、光硬化性組成物を加熱して硬化を促進してもよい。
光を照射する際の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。
【0092】
工程(a−4)、(b−4)、(c−4):
硬化物からモールド、または基板およびモールドを分離する際の温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。
【0093】
硬化物から基板およびモールドを分離した場合、図3に示すような、モールドの反転パターンが転写された表面を有する硬化物42のみからなる、表面に微細パターン44を有する成形体40が得られる。
硬化物からモールドのみを分離した場合、図4に示すような、モールドの反転パターンが転写された表面を有する硬化物42と基板30とからなる、表面に微細パターン44を有する成形体40(積層体)が得られる。
【0094】
表面に微細パターンを有する成形体としては、下記の物品が挙げられる。
光学素子:マイクロレンズアレイ、光導波路素子、光スイッチング素子(グリッド偏光素子、波長板等。)、フレネルゾーンプレート素子、バイナリー素子、ブレーズ素子、フォトニック結晶等。
反射防止部材:AR(Anti Reflection)コート部材等。
チップ類:バイオチップ、μ−TAS(Micro−Total Analysis Systems)用のチップ、マイクロリアクターチップ等。
その他:記録メディア、ディスプレイ材料、触媒の担持体、フィルター、センサー部材、半導体装置(MEMSを含む。)の製造に用いられるレジスト、電解用のレプリカモールド(マザーモールド)、インプリント用のレプリカモールド(ドーターモールド)等。
【0095】
レジストとして用いる場合、該微細パターンを有する成形体をマスクとして基板をエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)することによって、基板に微細パターンを形成できる。
【0096】
電解用のレプリカモールドとして用いる場合、該微細パターンを有する成形体の表面に無電解メッキまたは金属蒸着によって導電層を形成した後、該導電層の表面にニッケル電解メッキによりニッケルを析出させることによって、ニッケル電鋳モールドを作製できる。該成形体の表面が離型性に優れていることから、作製したニッケル電鋳モールドを該成形体から分離しやすい。
【0097】
また、該微細パターンを有する成形体は、高透明性を有し、かつ高離型性を有することから、インプリント用のレプリカモールドとして用いてもよい。特に、該成形体の基材として透光材料を用いた場合、光ナノインプリント用のレプリカモールドとして用いることができる。
【0098】
以上説明した本発明の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法にあっては、離型性に優れた硬化物を形成でき、かつフッ素界面活性剤と他の成分との相溶性に優れる本発明の光硬化性組成物を用いているため、モールドの反転パターンが精密に転写された微細パターンを表面に有し、かつ表面の組成が均一な成形体を製造できる。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
例1、5〜7、10、12、13、17〜32、37〜46は実施例であり、例2〜4、8、9、11、14〜16、33〜36は比較例である。
【0100】
(質量平均分子量)
重合体(D)の質量平均分子量は、GPC分析装置(昭和電工社製、GPC−101型版)を用いて測定した。具体的には昭和電工社製カラム(KF801、KF802、KF803)を用い、溶離液にテトラヒドロフランを使用し分離させ、ポリメチルメタクリレートを標準物質として質量平均分子量を求めた。
【0101】
(粘度)
光硬化性組成物の25℃における粘度は、粘度計(東機産業社製、TV−20)を用いて測定した。該粘度計は、標準液(JS50(25℃で33.17mPa・S))で校正済みのものである。粘度が300mPa・S以下のものについて、良好であると判断した。
【0102】
(感度)
光硬化性組成物の感度は、下記のようにして求めた。
光硬化性組成物をスピンコート法にて厚さが約1.5μmになるように基材の表面に塗布し、そこに高圧水銀灯(1.5〜2.0kHzにおいて255、315、および365nmに主波長を有する光源。)からの光を照射し、完全に硬化するまでの積算光量を求め、感度とした。光硬化性組成物が完全に硬化したかどうかは、IRスペクトルを測定し、アクリル部分のオレフィンの吸収の有無により判断した。感度が500mJ/cm以下のものについて、良好であると判断した。
【0103】
(接触角)
硬化物の水に対する接触角は、下記のようにして測定した。
光硬化性組成物をポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム(東洋紡社製、商品名:コスモシャインA4100)の易接着側の表面に滴下し、その上をスライド硝子で覆い、その上から高圧水銀灯(1.5〜2.0kHzにおいて255、315、および365nmに主波長を有する光源。)の光を15秒間照射し、硬化物を得た。
該硬化物について、接触角計(協和界面科学社製、CA−X150型)を用い、4μLの水を硬化物の表面に着滴させて測定した。
接触角が80度以上のものについて、良好であると判断した。接触角は、硬化物の離型性の目安となる。
また、複数箇所で接触角を測定した際のばらつき具合σが2.5以下のものについて、良好であると判断した。ばらつき具合σは、硬化物の表面後の組成の均一性を示すものである。
【0104】
(化合物(A))
化合物(A1−1):3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−C(O)O−(CH−(CFF ・・・(A1−1)。
【0105】
(化合物(B))
化合物(B−1):ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、数平均分子量:284)。
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCHO)4.5−H ・・・(B−1)。
化合物(B−2):ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、数平均分子量:438)。
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCHO)−H ・・・(B−2)。
化合物(B−3):ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、数平均分子量:174)。
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCHO)−H ・・・(B−3)。
化合物(B−4):メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、数平均分子量:276)。
CH=C(CH)−C(O)O−(CHCHO)−CH ・・・(B−4)。
【0106】
(化合物(C))
化合物(C−1):2−エチルヘキシルメタクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−C(O)O−CHCH(C)C ・・・(C−
1)。
化合物(C−2):ヘキシルメタクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−C(O)O−C13 ・・・(C−2)。
化合物(C−3):イソブチルメタクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−C(O)O−CH(CH)C ・・・(C−3)。
化合物(C−4):ドデカメタクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−C(O)O−C1225 ・・・(C−4)。
化合物(C−5):オクタデカメタクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−C(O)O−C1837 ・・・(C−5)。
【0107】
(化合物(E))
化合物(E1−1):3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルアクリレート(アルドリッチ社製)。
CH=CH−C(O)O−(CH−(CF ・・・(E1−1)。
【0108】
(化合物(F))
化合物(F−1):2−メチル−2−アダマンチルアクリレート(出光興産社製)。
【0109】
【化1】

【0110】
化合物(F−2):イソボルニルアクリレート(アルドリッチ社製)。
化合物(F−3):2−エチルヘキシルアクリレート(アルドリッチ社製)。
【0111】
(光重合開始剤(G))
光重合開始剤(G−1):チバ・ガイギー・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア651。
光重合開始剤(G−2):チバ・ガイギー・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア184。
光重合開始剤(G−3):チバ・ガイギー・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア907。
【0112】
(化合物(H))
化合物(H−1):テトラエチレングリコールジアクリレート(東京化成社製)。
化合物(H−2):下式で表される化合物(ただし、式中のRが水素原子の化合物と、Rがメチル基の化合物との混合物)(アルドリッチ社製)。
CH=C(CH)−COO−CHCHOCONHCH−(C(CH)R−
CH−CHNHCOO−CHCH−OCO−C(CH)=CH
化合物(H−3):ポリエーテルタイプのウレタンアクリレート(商品名:UA−4200(新中村化学工業社製))。
化合物(H−4):ネオペンチルグリコールジメタクリレート(アルドリッチ社製)。
化合物(H−5):トリシクロデカンジアクリレート(アルドリッチ社製)。
化合物(H−6):ビスフェノールAプロポキシジアクリレート(アルドリッチ社製)。
化合物(H−7):トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製)。
化合物(H−8):ペンタエリスリトールテトラアクリレート(アルドリッチ社製)。
【0113】
〔合成例1〕
100mLの耐圧反応容器に、化合物(A1−1)の16.00g、化合物(B−1)の16.68g、化合物(C−1)の7.32g、分子量調整剤としてオクタンチオール(和光純薬工業社製)の3.88g、溶剤として酢酸エチル(和光純薬工業社製)の40.00g、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製)の0.60gを仕込み、反応容器内を窒素で置換した後、撹拌しながら70℃で16時間重合させた。重合完了後、減圧条件下で酢酸エチルを留去して、重合体(D−1)を得た。
【0114】
〔合成例2〜11〕
表1に示すように化合物(A)〜(C)の種類、仕込み比を変更した以外は、合成例1と同様にして重合体(D−2)〜(D−11)を得た。
【0115】
〔合成例12〕
分子量調整剤であるオクタンチオールを5.04gとした以外は、合成例1と同様にして重合体(D−12)を得た。
【0116】
〔合成例13〕
分子量調整剤であるオクタンチオールを5.82gとした以外は、合成例1と同様にして重合体(D−13)を得た。
【0117】
〔合成例14〕
分子量調整剤であるオクタンチオールを6.25gとした以外は、合成例1と同様にして重合体(D−14)を得た。
【0118】
〔合成例15〕
分子量調整剤であるオクタンチオールを1.94gとした以外は、合成例1と同様にして重合体(D−15)を得た。
〔合成例16〕
100mLの耐圧反応容器に、化合物(A1−1)の14.20g、化合物(B−1)の9.94g、化合物(C−1)の4.26g、分子量調整剤としてオクタンチオール(和光純薬工業社製)の2.76g、溶剤として酢酸エチル(和光純薬工業社製)の28.41g、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製)の0.43gを仕込み、反応容器内を窒素で置換した後、撹拌しながら70℃で16時間重合させた。重合完了後、減圧条件下で酢酸エチルを留去して、重合体(D−16)を得た。
〔合成例17〜19〕
表1に示すように化合物(A)〜(C)の仕込み比を変更した以外は、合成例16と同様にして重合体(D−17)〜(D−19)を得た。
【0119】
【表1】

【0120】
〔例1〕
バイヤル容器(内容積13mL)に、重合体(D−1)の0.04g、化合物(E1−1)の2.00g、化合物(F−1)の4.00g、化合物(H−1)の3.36gを加え、ついで光重合開始剤(G−1)の0.60gを混合し、0.2μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルターにてろ過して、光硬化性組成物を得た。該組成物の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0121】
〔例2〜43〕
表2に示すように組成を変更した以外は、例1と同様にして光硬化性組成物を得た。評価結果を表3に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
〔例44〕
25℃にて、例1の光硬化性組成物の1滴をシリコンウェハの表面に垂らし、該組成物が均一に塗布されたシリコンウェハを得た。幅:800nm、高さ:180nm、長さ:10μmの凸部を表面に有する石英製モールドを、シリコンウェハ上の光硬化性組成物に押しつけて、そのまま0.5MPa(ゲージ圧)でプレスした。
ついで、25℃にて、モールド側から光硬化性組成物に高圧水銀灯(1.5〜2.0kHzにおいて255、315、および365nmに主波長を有する光源。)からの光を15秒間照射して、光硬化性組成物の硬化物を得た。25℃にて、モールドをシリコンウェハから分離して、モールドの凸部が反転した凹部を表面に有する硬化物がシリコンウェハの表面に形成された成形体を得た。該凹部の深さは、178〜180nmであった。
ついで、該成形体をマスクとし、サムコ社製のドライエッチング装置にてCF4の40sccmと酸素の10sccmとの混合ガスを用いて5Pa、70Wの条件下で120秒間ドライエッチングを行った。幅:805nm、深さ:30nm、長さ:10μmのパターンをシリコンにパターンを刻むことができた。
【0125】
〔例45〕
25℃にて、例30の光硬化性組成物の1滴をPETフィルム(東洋紡社製、商品名:コスモシャインA4100)の易接着側の表面に垂らし、該組成物が均一に塗布されたPETフィルムを得た。幅:800nm、高さ:180nm、長さ:10μmの凸部を表面に有する石英製モールドを、PETフィルム上の光硬化性組成物に押しつけて、そのまま0.5MPa(ゲージ圧)でプレスした。
ついで、25℃にて、モールド側から光硬化性組成物に高圧水銀灯(1.5〜2.0kHzにおいて255、315、および365nmに主波長を有する光源。)からの光を15秒間照射して、光硬化性組成物の硬化物を得た。25℃にて、モールドをPETフィルムから分離して、モールドの凸部が反転した凹部を表面に有する硬化物がPETフィルムの表面に形成された成形体を得た。該凹部の深さは、178〜180nmであった。
【0126】
ついで、該成形体をナノインプリント用のレプリカモールドとして用いた。具体的には、例1の光硬化性組成物の1滴をPETフィルム(東洋紡社製、商品名:コスモシャインA4100)の易接着側の表面に垂らし、該組成物が均一に塗布されたPETフィルムを得た。レプリカモールドをPETフィルム上の光硬化性組成物に押しつけ、25℃にて5MPaの圧力をかけながらレプリカモールド側から光硬化性組成物に高圧水銀灯(1.5〜2.0kHzにおいて255、315、および365nmに主波長を有する光源。)からの光を15秒間照射して、例1の光硬化性組成物の硬化物を得た。25℃にて、レプリカモールドをPETフィルムから分離して、レプリカモールドの凹部が反転した凸部を表面に有する硬化物がPETフィルムの表面に形成された成形体を得た。該凸部の高さは、175〜177nmであった。
【0127】
〔例46〕
25℃にて、例30の光硬化性組成物の1滴をPETフィルム(東洋紡社製、商品名:コスモシャインA4100)の易接着側の表面に垂らし、該組成物が均一に塗布されたPETフィルムを得た。幅:800nm、高さ:180nm、長さ:10μmの凸部を表面に有する石英製モールドを、PETフィルム上の光硬化性組成物に押しつけて、そのまま0.5MPa(ゲージ圧)でプレスした。
ついで、25℃にて、モールド側から光硬化性組成物に高圧水銀灯(1.5〜2.0kHzにおいて255、315、および365nmに主波長を有する光源。)からの光を15秒間照射して、光硬化性組成物の硬化物を得た。25℃にて、モールドをPETフィルムから分離して、モールドの凸部が反転した凹部を表面に有する硬化物がPETフィルムの表面に形成された成形体を得た。該凹部の深さは、178〜180nmであった。
【0128】
ついで、該成形体をニッケル電鋳用のレプリカモールドとして用いた。具体的には、レプリカモールドを、無電解ニッケルメッキ溶液(高純度化学社製)に浸漬し、表面にニッケル層を設けた。ついで、ニッケル層付きレプリカモールドを、ニッケル電解メッキ溶液に浸漬し、該溶液中に電気を流してニッケル電鋳を行なった。ニッケル層が約200μmの膜厚になった時点でメッキ作業を止めて、ニッケル層付きレプリカモールドをニッケル電解メッキ溶液より引き上げ、ニッケルモールドとレプリカモールドとを引き剥がした。得られたニッケルモールドの凸部の高さは、178〜180nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の製造方法で得られる、表面に微細パターンを有する成形体は、光学素子、反射防止部材、バイオチップ、マイクロリアクターチップ、記録メディア、触媒担持体、半導体装置製造用のレジスト、インプリント用のレプリカモールド、電鋳用のレプリカモールド等として有用である。
【符号の説明】
【0130】
10 モールド
12 反転パターン
20 光硬化性組成物
30 基板
40 成形体
42 硬化物
44 微細パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物を主成分とするインプリント用光硬化性組成物であって、下記化合物(A)と下記化合物(B)と下記化合物(C)との共重合体であり、下記化合物(A)の単位と下記化合物(B)の単位と下記化合物(C)の単位の合計に対する、下記化合物(A)の単位の割合が20〜45質量%、下記化合物(B)の単位の割合が20〜65質量%、下記化合物(C)の単位の割合が5〜40質量%であり、かつその質量平均分子量が1000〜5000である重合体(D)を含む、インプリント用光硬化性組成物。
化合物(A):下式(1)で表される化合物。
CH=C(R11)−C(O)O−Q−R ・・・(1)。
ただし、R11は、水素原子またはメチル基であり、Qは、単結合またはフッ素原子を含まない2価の連結基であり、Rは、主鎖の炭素数が1〜6の、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよいポリフルオロアルキル基である。
化合物(B):下式(2)で表わされ、数平均分子量が350以下である化合物。
CH=C(R21)−C(O)O−(CHCH(R22)O)−H ・・・(2)。
ただし、R21は、水素原子またはメチル基であり、R22は、水素原子または炭素数が1〜4のアルキル基であり、nは、3〜6であり、化合物(B)1分子中のn個のR22はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
化合物(C):下式(3)で表される化合物。
CH=C(R31)−C(O)O−R32 ・・・(3)。
ただし、R31は、水素原子またはメチル基であり、R32は、炭素数が2〜15の1価の脂肪族炭化水素基である。
【請求項2】
光硬化性組成物中の重合体(D)の割合が、光硬化性組成物に対して0.01〜5質量%である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物の少なくとも一部が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個有する化合物である、請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個有する化合物の少なくとも一部が、フッ素原子を有する化合物(E)であり、光硬化性組成物中の該化合物(E)の割合が、光硬化性組成物に対して5〜40質量%である、請求項3に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個有する化合物の少なくとも一部が、フッ素を有しない化合物(F)であり、光硬化性組成物中の該化合物(F)の割合が、光硬化性組成物に対して10〜55質量%である、請求項3に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を1個以上有する化合物の少なくとも一部が、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物(H)であり、光硬化性組成物中の該化合物(H)の割合が、光硬化性組成物に対して10〜75質量%である、請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
光硬化性組成物が、光重合開始剤(G)を光硬化性組成物に対して1〜12質量%含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
光硬化性組成物の25℃における粘度が3〜200mPa・sである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
表面に微細パターンを有する成形体の製造方法であり、
請求項1〜8のいずれかに記載のインプリント用光硬化性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの該反転パターンを有する表面に接触させる工程と、
前記モールドの表面に前記光硬化性組成物を接触させた状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、
前記硬化物から前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、
を有する、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。
【請求項10】
表面に微細パターンを有する成形体の製造方法であり、
請求項1〜8のいずれかに記載のインプリント用光硬化性組成物を、基板の表面に配置する工程と、
前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドを、該モールドの反転パターンが前記光硬化性組成物に接するように、前記光硬化性組成物に押しつける工程と、
前記モールドを前記光硬化性組成物に押しつけた状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、
前記硬化物から前記モールド、または前記基板および前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、
を有する、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。
【請求項11】
表面に微細パターンを有する成形体の製造方法であり、
請求項1〜8のいずれかに記載のインプリント用光硬化性組成物を、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドの該反転パターンを有する表面に配置する工程と、
基板を、前記光硬化性組成物に押しつける工程と、
前記基板を前記光硬化性組成物に押しつけた状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、
前記硬化物から前記モールド、または前記基板および前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、
を有する、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。
【請求項12】
表面に微細パターンを有する成形体の製造方法であり、
基板と、前記微細パターンの反転パターンを表面に有するモールドとを、該モールドの反転パターンが前記基板の側になるように接近または接触させる工程と、
請求項1〜8のいずれかに記載のインプリント用光硬化性組成物を、前記基板と前記モールドとの間に充填する工程と、
前記基板と前記モールドとが接近または接触した状態で、前記光硬化性組成物に光を照射し、前記光硬化性組成物を硬化させて硬化物とする工程と、
前記硬化物から前記モールド、または前記基板および前記モールドを分離して、表面に微細パターンを有する成形体を得る工程と、
を有する、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。
【請求項13】
前記微細パターンが、レジストパターンである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。
【請求項14】
前記表面に微細パターンを有する成形体が、インプリント用のレプリカモールドである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。
【請求項15】
前記表面に微細パターンを有する成形体が、電鋳用のレプリカモールドである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の、表面に微細パターンを有する成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−49152(P2012−49152A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175702(P2010−175702)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】