説明

光線治療器

【課題】光源における出力異常の検知漏れを抑制し得、従来に比べて信頼性の高い安全システムを備えた光線治療器を提供する。
【解決手段】光源となる半導体レーザ3aと、半導体レーザ3aに駆動電流を供給する駆動回路1と、光源の出力制御及び出力異常の検知を行うコンピュータ制御装置7とを備え、コンピュータ制御装置7は出力異常を検知したときに駆動電流の供給を制限する光線治療器において、コンピュータ制御装置7から独立して、出力異常を検知し、且つ、駆動電流の供給を制限する出力異常検知回路21を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線治療器、特にはレーザ光を生体に照射して疼痛緩解等の治療に供されるレーザ治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療においては、レーザ治療器に代表される光線治療器が広く利用されている。このうち、低出力レーザ治療器は、筋肉、関節の主に慢性の疼痛緩解を目的として、整形外科、麻酔科、内科等を中心に広く医療現場で用いられている。また、この治療効果を、より広範囲に、より効率的なものとするために、レーザの出力も高出力化してきている。更に、最近では、より高いパワー密度のレーザ光を、生体深部のより広範囲に照射することを意図して、レーザ光をパルス状に照射するパルスレーザ治療器が提案されている。
【0003】
パルスレーザ治療器は、ピークレベルが10Wオーダの極めて高い出力のレーザ光を、低デューティー比の繰り返しパルスで生体患部表面に照射する。このため、生体表面での火傷を避けつつ、より高いパワー密度のレーザ光を、生体表面、及び内部に照射することができる。また、このようなレーザ治療器の高出力化にともない、レーザ光の患者に対する安全性確保が、より重要な課題となってきている。
【0004】
ここで、従来からのレーザ治療器で採用されている安全機構について説明する。レーザ光の異常出力による人体への暴露防止を図る安全装置としては、レーザ光の出力をモニターしながら、異常出力を検知すると、レーザ光を光学的又は電気的に遮断する安全装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0005】
図6を用いて従来からの安全装置付のレーザ治療器の構成について説明する。図6に示すように、レーザ治療器は、レーザ光3bを発振する半導体レーザ(光源)3aと、駆動回路1と、電源回路2と、コンピュータ制御装置7と、差動増幅器6及び8とを備えている。
【0006】
駆動回路1は、半導体レーザ3aに駆動電流を供給するための回路である。また、駆動回路1は、半導体レーザ3aに流される駆動電流の制御を行うトランジスタ4と、駆動電流を検知するためのシャント抵抗5と、リレー15とを備えている。
【0007】
電源回路2は、駆動回路1に電力供給を行っている。電源回路2は、スイッチング電源11と交流電源12とを備えている。また、スイッチング電源11の二次側は駆動回路1と接続され、一次側は交流電源12と接続されている。スイッチング電源(SW電源)11は、交流電源12から供給された交流電力を直流電力に変換し、駆動回路1に直流電力を供給している。13はリレーである。
【0008】
また、差動増幅器6は、半導体レーザ3aの駆動電流を電圧に変換して、パルス信号(駆動電流検知電圧信号)10bを生成する。パルス信号10bは、信号線10aを介して、コンピュータ制御装置7と差動増幅器8とに出力される。
【0009】
コンピュータ制御装置7は、内部に、CPU、ROM、RAM、A/D変換回路等を備えている。コンピュータ制御装置7に入力されたパルス信号10bは、コンピュータ制御装置7に備えられたA/D変換回路によってデジタル信号に変換される。また、コンピュータ制御装置7は、デジタル変換されたパルス信号10bにより、半導体レーザ3aに流れる駆動電流を検出する。更に、コンピュータ制御装置7は、半導体レーザ3aに流れる
駆動電流の電流値を差動増幅器8に指示するため、信号線9aを介して、差動増幅器8に電流指示信号9bを出力する。
【0010】
差動増幅器8は、半導体レーザ3aに流す電流を制御するために用いられる。具体的には、差動増幅器8は、コンピュータ制御装置7から出力された電流指示信号9bとパルス信号10bとに基づいてトランジスタ4を定電流駆動する。
【0011】
また、図6において、コンピュータ制御装置7は、信号線17aによっても差動増幅回路8に接続されており、制御信号17bを用いて差動増幅器8のオン・オフ制御を行っている。また、コンピュータ制御装置7は、電力信号線14aによって、電源回路2に設けられたリレー13と接続されており、電力信号線16aによって、駆動回路1に設けられたリレー15と接続されている。
【0012】
更に、コンピュータ制御装置7が、電力信号線14aを介して、リレー13に電力信号14bを供給している場合は、リレー13は閉じられている。同様に、コンピュータ制御装置7が、電力信号線16aを介して、リレー15に電力信号16bを供給している場合は、リレー15は閉じられている。
【0013】
ここで、図6に示すレーザ治療器の安全システムについて説明する。以上のように構成されたレーザ治療器においては、以下のようにして患者に対する安全が確保される。
【0014】
半導体レーザ3aからレーザ光3bが発振されている状態において、トランジスタ4等に故障が発生し、半導体レーザ3aを流れる電流が許容値を超えると、シャント抵抗5及び差動増幅器6を介して伝送されるパルス信号10bのレベルが上昇する。また、この場合、コンピュータ制御装置7はパルス信号10bのレベルから異常を検知する。
【0015】
異常を検知したコンピュータ制御装置7は、制御信号17bによって、差動増幅器8の出力をオフレベルに固定して、駆動トランジタ4を停止させる。更に、コンピュータ制御装置7は、リレー13に供給されている電力信号14bを遮断してリレー13を開き、又リレー15に供給されている電気信号16bを遮断してリレー15を開く。これにより、駆動回路1と電源回路2はそれぞれ遮断され、半導体レーザ3aは発振を停止する。この結果、患者への安全が確保される。
【0016】
なお、図6に示すレーザ治療器においては、半導体レーザ3aを流れる駆動電流の電流値を検知することによって、レーザ光3bをモニターする態様となっている。これは、半導体レーザ3aの駆動電流の値とレーザ光3bの出力との間には相関関係があるためである。
【0017】
また、パルスレーザ光の出力ピークパワーレベルが規定値をオーバーした場合以外にも、火傷に直結する可能性が極めて高い場合がある。例えば、規定値のパルス出力レベルであっても、繰り返しパルスレーザ光のパルス幅が長くなる場合や、規定値より低いレベルのピークパワーであっても、連続して出力される場合である。このため、パルスレーザ治療器の安全システムには、十分な信頼性が要求されている。
【特許文献1】特開平1−171573号公報
【特許文献2】実開昭61−65914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述のコンピュータ制御装置7による安全システムにおいては、特に、ピークパワーが10Wオーダ(連続照射では生体の切開、凝固、蒸散等に利用される出力
レベル)の高出力のパルスレーザ治療器に対して、更なる信頼性を提供することが求められている。
【0019】
具体的には、コンピュータ制御装置7が故障する等して、半導体レーザ3aの出力異常の検知漏れが生じた場合における、更なる患者の安全確保が求められている。また、このことは、レーザ治療器に限らず、レーザ光以外の光線を照射する光線治療器においても求められている。
【0020】
本発明の目的は、光源における出力異常の検知漏れを抑制し得、従来に比べて信頼性の高い安全システムを備えた光線治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明における光線治療器は、光源と、前記光源に駆動電流を供給する駆動回路と、前記光源の出力制御及び出力異常の検知を行うコンピュータ制御装置とを備え、前記コンピュータ制御装置は前記出力異常を検知したときに前記駆動電流の供給を制限する光線治療器であって、前記コンピュータ制御装置から独立して、前記出力異常を検知し、且つ、前記駆動電流の供給を制限する出力異常検知回路を備えていることを特徴とする。
【0022】
上記特徴により、コンピュータ制御装置及び出力異常検知回路のうちいずれかが故障しても、光源の出力異常を検知でき、検知漏れを抑制できる。よって、患者に火傷等の障害を与える前に、確実にレーザ光を遮断する等できる。
【0023】
また、上記本発明における光線治療器は、前記駆動回路から、前記駆動電流に対応したパルス信号が、前記コンピュータ制御装置と前記出力異常検知回路とに入力され、前記コンピュータ制御装置と、前記出力異常検知回路とが、それぞれ別々に、前記パルス信号のレベル、パルス幅及びデューティー比のうちのいずれかが予め設定された値を超えているかどうかを判定して、前記出力異常の検知を行う態様とするのが好ましい。上記態様とした場合は、安全性の向上をよりいっそう図ることができる。
【0024】
また、上記本発明における光線治療器は、前記光源の駆動が可能かどうかの判定を行う検知手段と、前記出力異常検知回路によって前記駆動電流の供給が制限された後に供給制限を解除するリセット手段とを更に備え、前記リセット手段は、前記検知手段によって前記光源の駆動が不可能であると判定され、且つ、前記コンピュータ制御装置によって指示があった場合に、前記供給制限を解除する態様とするのが好ましい。
【0025】
上記態様とした場合は、光源の駆動が可能な状態において出力異常検知回路の機能を停止したり、リセットしたりできないため、出力異常検知回路の信頼性を高めることができ、光線治療器の安全性を更に高めることができる。また、上記態様においては、前記検知手段が、前記駆動回路への電力の供給が停止されている場合に、前記光源の駆動が不可能であると判定するのが好ましい。
【0026】
また、上記本発明における光線治療器は、前記駆動回路に電力を供給する電源回路を更に備え、前記コンピュータ制御装置及び前記出力異常検知回路が、前記出力異常を検知したときに、前記駆動回路と前記電源回路とにおける2箇所以上を遮断して、前記駆動回路への電力供給を停止する態様とするのも好ましい。
【0027】
この態様によれば、駆動電流を制御する能動素子の入力信号をオフ状態にして駆動電流の供給を制限する場合に比べて、能動素子の故障等によるリスクを避けることが可能であるため、より確実に光源を停止でき、安全な光線治療器を提供することができる。また、
この態様では、2箇所以上を遮断するため、一箇所の遮断回路の故障による遮断不完全を避けることができ、より安全な光線治療器を提供できる。
【0028】
上記本発明における光線治療器において、光源としては、レーザ発振器やLEDを用いることができる。更に、光源として、ランプを用いることもできる。
【0029】
また、上記本発明における光線治療器は、前記駆動電流の検知を行う電流検知回路を備え、前記コンピュータ制御装置が、前記駆動回路によって、前記光源から出射される光の出力を人体に対して安全なレベル又はゼロとする電流を前記光源に供給し、その状態で、前記電流検知回路による前記駆動電流の検知が可能かどうかのテストを行う態様とするのも好ましい。具体的には、前記光源がレーザ発振器である場合は、前記コンピュータ制御装置は、前記駆動回路によって、前記光源の発光閾値電流よりも電流値が低い電流を前記光源に供給し、その状態で上記テストを行う。
【0030】
上記態様によれば、駆動電流の検知が正常に行われているかどうかの動作テストが行われるため、信頼性の高い光線治療器を提供できる。更に、上記態様によれば、光源からの出射光の出力が人体に対して安全なレベル以下とされるため、人体に障害を与える可能性のあるレーザ光等の光線を動作テスト中に出射しないで済む。よって、動作テストを安全な状態で行うことができる。また、動作テスト中にレーザ光等の光線を機械的に遮断するために、光線治療器がシャッター等の機構を備える必要はない。この結果、光線治療器の構成が複雑化するのを抑制でき、光線治療器のコスト上昇を抑制できる。更に、簡単に動作テストを行うことができる。
【0031】
更に、上記本発明における光線治療器は、前記コンピュータ制御装置が、前記駆動回路によって、前記光源から出射される光の出力を人体に対して安全なレベル又はゼロとする電流を前記光源に供給し、その状態で、自己による前記駆動電流の供給の制限が可能かどうかのテストを行う態様とするのも好ましい。具体的には、前記光源がレーザ発振器である場合は、前記コンピュータ制御装置は、前記駆動回路によって、前記光源の発光閾値電流よりも電流値が低い電流を前記光源に供給し、その状態で上記テストを行う。
【0032】
上記態様によれば、光線治療器による治療を行う前に、コンピュータ制御装置による安全システムについて動作テストを行うことができるため、医師等は安心して光線治療器を用いた治療を行うことができる。また、上記態様においても、人体に障害を与える可能性のあるレーザ光等の光線を動作テスト中に出射しないで済むため、動作テストを安全な状態で行うことができる。更に、この態様においても、安全装備を付加しなくて良いため、光線治療器のコスト上昇を抑制できる。
【0033】
また、上記本発明における光線治療器は、前記コンピュータ制御装置が、前記出力異常検知回路が前記出力異常として認識するダミー信号を前記出力異常検知回路に供給し、前記出力異常検知回路による前記出力異常の検知及び前記駆動電流の供給の制限が可能かどうかのテストを行う態様とするのも好ましい。上記態様によれば、光線治療器による治療を行う前に、出力異常検知回路による安全システムについて動作テストを行うことができるため、上記態様の場合も、医師等は安心して光線治療器を用いた治療を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明における光線治療器は、コンピュータ制御装置だけでなく、出力異常検知回路によっても、光源の出力異常が検知される。また、コンピュータ制御装置と出力異常検知回路とは別々に出力異常の検知を行っている。つまり、本発明における光線治療器は、二重の安全システムを備えている。
【0035】
このため、本発明における光線治療器によれば、コンピュータ制御装置及び出力異常検知回路のうちいずれかが故障しても、光源の出力異常を検知でき、検知漏れを抑制できる。よって、患者に火傷等の障害を与える前に、確実にレーザ光を遮断する等でき、安全に対する信頼性の高い光線治療器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における光線治療器について、図1〜図4を参照しながら説明する。最初に、図1を用いて、本実施の形態1における光線治療器の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における光線治療器の構成を示す図である。なお、図1において、図6に示された符号が付された部分は、図6中の同一の符号が付された部分と同一のものを示している。
【0037】
図1に示すように、本実施の形態1における光線治療器は、背景技術において図6に示した従来例と同様にレーザ治療器であり、レーザ光3bを発振する半導体レーザ(光源)3aと、駆動回路1と、電源回路2と、コンピュータ制御装置7と、差動増幅器6及び8とを備えている。
【0038】
本実施の形態1においても、コンピュータ制御装置7は、電流指示信号9bを、信号線9aを介して差動増幅器8に出力する。また、差動増幅器6からコンピュータ制御装置7にパルス信号10bが入力され、コンピュータ制御装置7は、パルス信号10bを監視して出力異常の検知を行う。更に、コンピュータ制御装置7は、異常を検知したときは、制御信号17bによって差動増幅器8の出力をオフレベルに固定して、駆動トランジスタ4を停止させる。また、コンピュータ制御装置7は、電力信号14b及び電力信号16bの供給を停止して、駆動回路1及び電源回路2を遮断し、半導体レーザ3aの発振を停止する。
【0039】
このように、本実施の形態1における光線治療器においても、従来例と同様に、コンピュータ制御装置7が出力制御と出力異常の検知を行っているが、以下の点で、従来例と異なっている。
【0040】
図1に示すように、本実施の形態1における光線治療器は、従来例と異なり、出力異常検知回路21を備えている。出力異常検知回路21は、他の周辺回路と共にハードウェアによる安全システムを構築している。また、出力異常回路21は、コンピュータ制御装置7から独立して、出力異常を検知し、半導体レーザ3aに供給される駆動電流の制限を行う。
【0041】
更に、本実施の形態1においては、出力異常検知回路21は、コンピュータ制御装置7と同様に、駆動電流を電圧に変換して得られたパルス信号23bに基づいて出力異常の検知を行っている。パルス信号23bを生成するため、駆動回路1には、シャント抵抗5とは別に、シャント抵抗19が半導体レーザ3aに直列に接続されている。更に、シャント抵抗19には、それと並列に差動増幅器32が接続されている。
【0042】
このため、シャント抵抗19は、シャント抵抗5と同様に、半導体レーザ3aを駆動する駆動電流を検知する。更に、差動増幅器32は、差動増幅器6と同様に、半導体レーザ3aの駆動電流を電圧に変換して、駆動電流の大きさに対応するパルス信号(駆動電流検知電圧信号)23bを出力する。
【0043】
また、パルス信号23bは、信号線23aを経由して出力異常検知回路21に入力され
る。更に、パルス信号23bは信号線23aから分岐した信号線44を経由してコンピュータ制御装置7にも入力される。なお、信号線44からコンピュータ制御装置7に入力されたパルス信号23bは、コンピュータ制御装置7に備えられたA/D変換回路によってデジタル信号に変換される。
【0044】
更に、本実施の形態1においては、コンピュータ制御装置7は、従来例と異なり、電力信号線33aを介して、スイッチング電源11に電力信号33bを供給している。電力信号線33aはスイッチング電源11内に備えられたフィードフォワード回路(図示せず)に接続されている。このため、コンピュータ制御装置7からの電力信号33bの供給が停止されると、スイッチング電源11の出力はオフレベルとなる。なお、フィードフォワード回路を制御してスイッチング電源11の出力を制御する場合は、一般的に数msと極めて応答速度が速い特性が得られる。
【0045】
また、本実施の形態1においては、出力異常検知回路21は、出力異常を検知すると、信号線42を介して、電力信号線14a、33a及び16aそれぞれに設けられたリレー34、35及び36を開く。これにより、スイッチング電源11はオフ制御され、又駆動回路1及び電源回路2は遮断されるので、半導体レーザ3aへの電力供給が停止する。出力異常検知回路21の具体的な動作については後述する。
【0046】
更に、本実施の形態1における光線治療器においては、コンピュータ制御装置7と出力異常検知回路21との両方が差動増幅器8のオン・オフ制御を行うことができる。差動増幅器8は、信号線17a及び論理回路41を介して、コンピュータ制御装置7及び出力異常検知回路21に接続されている。
【0047】
なお、コンピュータ制御装置7による差動増幅器8のオフ制御は、信号線40及び論理回路41を介して信号線17aに出力している制御信号17bの論理レベルをローに設定することによって行われている。この場合、差動増幅器8の出力はオフレベルに固定され、トランジタ4は停止する。出力異常検知回路21による差動増幅器8のオフ制御については、後述する。
【0048】
ここで、図2を用いて、差動増幅器6から出力されるパルス信号10bと差動増幅器32から出力されるパルス信号23bとに基づく、コンピュータ制御装置7及び出力異常検知回路21による異常検知ついて説明する。図2は、図1中に示されたコンピュータ制御装置及び出力異常回路に入力されるパルス信号を示す図であり、図2(a)はパルス信号が正常な状態を示し、図2(b)はパルス信号に異常が発生した状態を示している。なお、パルス信号10bとパルス信号23bとは、レベル、パルス幅、デューティー比が略同等の信号である。
【0049】
図2(a)において、実線は、レベル、パルス幅及びデューティー比が正常なパルス信号23bの波形(正常波形37)を示している。一点鎖線は、コンピュータ制御装置7によって駆動電流に異常があると判断されるパルス信号23bの波形(異常波形38)であって、コンピュータ制御装置7が検知可能な検知レベルの最小値を示している。破線は、出力異常検知回路21によって駆動電流に異常があると判断されるパルス信号23bの波形(異常波形39)であって、出力異常検知回路21が検知可能な検知レベルの最小値を示している。
【0050】
従って、図2(b)に示すパルス信号がコンピュータ制御装置7及び出力異常検知回路21に入力されると、両者は駆動電流に異常があると判断し、両者によって出力異常が検知される。但し、コンピュータ制御装置7が正常である場合は、先ず、コンピュータ制御装置7が先行して出力異常の検知を行う。一方、コンピュータ制御装置7に異常が発生し
ている場合は、出力異常検知回路21が出力異常の検知を行う。
【0051】
また、図2(a)において、「ref1」は、信号線23aに入力されるパルス信号23bのパルスオフ時に超えてはならないレベルを示している。また、「ref2」は、信号線23aに入力されるパルス信号23bのパルスオン時及びオフ時のいずれにおいても超えてはならないレベルを示している。この点については、図3及び図4を用いて後述する。
【0052】
このように、本実施の形態1における光線治療器においては、コンピュータ制御装置7による安全システムは、それが正常に動作する場合は、出力異常検知回路21を含むハードウェアによる安全システムに先行して動作する。即ち、本実施の形態1においては、コンピュータ制御装置7による安全システムが動作しなかった場合に、初めて出力異常検知回路21を含むハードウェアによる安全システムが動作する2重安全構成となっている。
【0053】
但し、コンピュータ制御装置7による安全システムが機能せず、且つ、パルス信号23bの波形が異常波形38と異常波形39との間の波形である場合は、ハードウェアによる安全システムは動作しないことになる。このため、異常波形38と異常波形39とを同一の波形に設定するか、又は、異常波形39のレベルを人体への障害を鑑みたレベルに設定し、異常波形38のレベルをそれ以下に設定するのが好ましい。
【0054】
次に、図3及び図4を用いて、出力異常検知回路21及びその周辺回路の構成と動作について説明する。図3は、図1中に示された出力異常回路の回路図である。図4は、図3中に示された出力異常回路における動作波形を示す図である。
【0055】
図4中のA〜Jは、図3中の信号線A〜Jにおける動作波形であることを示している。図4に示した各動作波形において横軸は時間を示している。また、縦軸は、動作波形Aにおいては駆動電流の電流値の大きさを表す電圧レベルを示し、動作波形B〜Jにおいては論理レベルを示している。また、図4において斜線で示された領域24は出力異常検知領域である。出力異常検知回路21は、パルス信号23bの波形が出力異常検知領域24に入ると出力異常と判断する。
【0056】
図3に示すように、出力異常検知回路21は、コンパレータ22及び25と、遅延回路26及び27と、論理回路28〜30と、ラッチ回路31とを備えている。半導体レーザ3aが発振状態である場合、その駆動電流を電圧に変換して得られたパルス信号23bが、信号線23a(信号線A)を経由して、コンパレータ22及び25に入力される(図4に示した動作波形A参照。)。
【0057】
コンパレータ22は、パルス信号23bのレベルが、ref2(図2参照)に入力される基準電圧より高い場合は信号線Bに論理ハイレベルを出力し、そうでない場合は信号線Bに論理ローレベルを出力する(図4に示した動作波形B参照)。
【0058】
また、コンパレータ25は、パルス信号23bのレベルが、ref1(図2参照)に入力される基準電圧のレベルより高い場合は信号線Cに論理ハイレベルを出力し、そうでない場合は信号線Cに論理ローレベルを出力する(図4に示した動作波形C参照)。
【0059】
遅延回路26は、コンパレータ25が信号線Cに論理ハイレベルを出力した時点から、予め設定された遅延時間T1が経過するまでの間、信号線Dに論理ハイレベルを出力する(図4に示した動作波形D参照)。遅延回路27は、コンパレータ25が信号線Cに論理ハイレベルを出力した時点から、予め設定された遅延時間T2が経過するまでの間、信号線Eに論理ハイレベルを出力する(図4に示した動作波形E参照)。
【0060】
なお、本実施の形態1においては、図4に示すように、遅延時間T1は、パルスの立ち上がりから立下り側の出力異常検知領域24との境界までの時間に設定されている。また、図4に示すように、遅延時間T2は、パルスの立ち上がりから次のパルスの立ち上がり側の出力異常検知領域24との境界までの時間に設定されている。
【0061】
論理回路28には動作波形Dと動作波形Eとが入力される。論理回路28は、動作波形Dの立下りから動作波形Eの立下りまでの間、即ち、遅延時間T1と遅延時間T2との遅延時間の差内において、信号線Fに論理ローレベルを出力する(図4に示した動作波形F参照)。
【0062】
論理回路29は、動作波形Cと動作波形Fとから、パルス信号23bのパルス幅やデューティー比に異常がないかどうかを判定する。具体的には、論理回路29は、遅延時間T1と遅延時間T2との遅延時間の差内で、コンパレータ25の出力(動作波形C)をゲートする。それにより、論理回路29は、その差内(パルス間)においてパルス信号23bのレベルがref1を超えていないかどうかの検出を行う。
【0063】
図4の例では、パルス信号23b(動作波形A)のパルスP1においては、パルス間においてref1を超えていないため、論理回路29は信号線Gに論理ローレベルを出力し続ける(図4において動作波形G参照)。一方、パルス信号23bのパルスP2においては、パルス間においてref1を超えているため、その間、論理回路29は信号線Gに論理ハイレベルを出力する(図4において動作波形G参照)。
【0064】
また、論理回路30は、信号線Bに出力された動作波形Bと信号線Gに出力された動作波形Gとから、パルス信号23bが出力異常検知領域24に入っているかどうかを判定し、判定結果に応じた論理レベルを信号線Hに出力する。論理回路30が出力した論理レベルはラッチ回路31に入力される。
【0065】
図4の例では、論理回路30は、動作波形Gからパルス信号23bのパルスP2がref1を超えていると判定する。よって、論理回路30は、パルスP2がref1を超えている間、論理ローレベルを信号線Hに出力する(図4において動作波形H参照。)。
【0066】
ラッチ回路31は、信号線Hに出力された動作波形Hの立ち下がりをラッチする。ラッチした場合は、ラッチ回路31は、信号線42(信号線I)に、出力異常信号として論理ハイレベルを出力する。この場合、上述したようにリレー34から36が開かれ、半導体レーザ3aへの電力供給が停止される。なお、ラッチ回路31は、信号線49(信号線J)に解除信号となる論理ローレベルが入力されるまで、論理ハイレベルを出力し続ける。
【0067】
また、図1に示すように、信号線42は分岐しており、分岐した信号線42は論理回路43に接続されている。論理回路43は信号線53aを介して論理回路41に接続されている。また、論理回路43からは、制御信号17bと同様の制御信号53bが出力されている。更に、信号線42に論理ハイレベルが出力されると、論理回路43は制御信号53bの論理レベルをローに設定する。このため、ラッチ回路31が信号線42を介して論理ハイレベルを出力すると、差動増幅器8の出力もオフレベルに固定され、トランジスタ4の停止も行われる。
【0068】
このように、図3に示す出力異常検知回路21は、信号線23aに入力されるパルス信号23bが、出力異常検知領域24(図4参照)に入ると、異常が発生したと判定し、ラッチ回路31に論理ハイレベルを出力させて、半導体レーザ3aの発振を停止する。また、出力異常検出回路21はコンピュータ制御装置7から独立して動作している。
【0069】
以上のように、本実施の形態1における光線治療器においては、万一、コンピュータ制御装置7の故障等によって、コンピュータ制御装置7による安全システムが機能しなかった場合でも、レーザ光の発振が停止される。つまり、本実施の形態1における光線治療器は、二重の安全システムを備えているため、患者に火傷等の障害を与える前に、確実にレーザ光を遮断する等でき、安全に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0070】
次に、上述した、半導体レーザ3aがレーザ発振している間の出力異常検知回路21の動作を保障するための構成について、図1を適宜参酌しながら以下に説明する。
【0071】
図1に示すように、駆動回路1の高出力電圧側には信号線52が接続されている。信号線52は二つに分岐し、一方はコンパレータ46に接続され、他方はコンピュータ制御装置7に接続されている。なお、コンピュータ制御装置7は、信号線52によって入力される信号の電圧値を内部に備えたA/D変換回路によってデジタル信号に変更して処理を行う。
【0072】
また、コンパレータ46は、信号線52によって入力される信号の電圧値が、ref3に入力される基準電圧のレベルより低くなると、信号線54に論理ハイレベルを出力する。ref3に入力される基準電圧は、スイッチング電源11の出力電圧に対して十分に低い値に設定されている。つまり、スイッチング電源11のオフ制御や、駆動回路1及び電源回路2の遮断が行われて、その出力電圧がref3に入力される基準電圧より低くなると、コンパレータ46は信号線54に論理ハイレベルを出力する。
【0073】
また、信号線54は論理回路51に接続され、論理回路51に論理ハイレベルが入力される。このように、コンパレータ46は、光源の駆動が可能かどうか、即ち、半導体レーザ3a、及び駆動回路1への電力供給が止められていないかどうかの判定を行う検知手段として機能している。
【0074】
コンパレータ46から論理回路51に論理ハイレベルが入力されると、論理回路51は、出力異常検知回路21に対し、信号線49を介して、遅延回路26、遅延回路27及びラッチ回路31の出力をリセットするためのリセット信号を出力可能となる。コンピュータ制御装置7が信号線48を介してリセット信号の出力を指示すると、論理回路51はリセット信号を出力する。よって、ラッチ回路31による論理ハイレベルの出力が解除される。この結果、リレー34から36は閉じられ、また差動増幅器8の出力はオンレベルに固定されるので、半導体レーザ3aは発振可能な状態となる。
【0075】
このように、論理回路51は、半導体レーザ3aの駆動が不可能であると検知手段によって判定され、且つ、コンピュータ制御装置7の指示があった場合に、出力異常検知回路21による駆動電流の供給制限を解除する。論理回路51は、出力異常検知回路21による駆動電流の供給制限を解除するリセット手段として機能している。
【0076】
なお、コンピュータ制御装置7は、コンパレータ46が論理ハイレベルを出力しており、且つ、予め設定された場合のときに、信号線48を介して論理回路51に論理ハイレベルを出力してリセット信号を出力させる。予め設定された場合としては、例えば、光線治療器の電源投入時における出力異常検知回路の初期設定時等が挙げられる。
【0077】
このように、本実施の形態1においては、半導体レーザ3aへの駆動電流の供給が停止され、半導体レーザ3aが発振不可能な状態とならない限り、ラッチ回路31による論理ハイレベルの出力はリセットされないようになっている。このため、例え、コンピュータ制御装置7が故障しても、半導体レーザ3aが発振可能な状態では、出力異常検知回路2
1が機能を停止したり、リセットされたりすることはない。よって、このことからも、本実施の形態1における光線治療器は高い安全性を提供することができる。
【0078】
以上に述べた本実施の形態1における光線治療器においては、光源の出力と駆動電流との間に相関関係があることを利用して、光源の異常出力を駆動電流から検知している。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、光源から出射された光線の一部をハーフミラー等で分岐し、分岐した一部の光線を光センサでモニターすることによって光源の異常出力を検出することもできる。また、光源が出力制御用のフォトダイオードを内蔵する場合は、フォトダイオードの出力をモニターすることによって、レーザの異常出力を検出することもできる。
【0079】
また、本実施の形態1においては、コンピュータ制御装置7及び出力異常検知回路21のそれぞれに対応するように、シャント抵抗や差動増幅器が設けられている(図1参照。)。但し、シャント抵抗等は故障することが稀な部品であることから、本発明においては、これらについてはコンピュータ制御装置7と出力異常検知回路21との両方で共用することもできる。その他、コンピュータ制御装置7及び出力異常検知回路21のそれぞれに対応するように設けられた同機能の部品であって、故障することが稀なものがある場合も、両方で共用することができる。
【0080】
更に、本実施の形態1においては、電源回路2としてスイッチング電源11を使用しており、又レーザの電流制御方式として定電流制御方式を採用しているが、本発明はこれらについても限定されるものではない。また、本実施の形態1において、コンピュータ制御装置7及び出力異常検知回路21は、出力異常を検知した場合に、駆動回路1の一箇所(リレー15)と、電源回路2の二箇所(スイッチング電源内部、リレー13)とを遮断して、駆動回路1への電力供給を停止させている。但し、本発明において、電流を遮断する部品の種類や、遮断箇所の位置及び数は特に限定されるものではない。
【0081】
また、本発明においては、出力異常検知回路21の構成は図3に示す例に限定されるものではない。例えば、本実施の形態1においては、検出時間を規定する回路として遅延回路26及び27を用いているが、これらの代わりに、例えば発振回路とカウンタ回路とを組み合わせて構成された回路を用いることもできる。更に、本発明において、コンピュータ制御装置は、CPU、ROM、RAM、A/D変換回路等を備え、プログラムによって一定の動作を行うことが可能な制御装置であれば良い。
【0082】
コンピュータ制御装置7や出力異常検知回路21に接続される周辺回路は、図1や図3に示すものに限定されるものではなく、同様の機能を有するデバイスや論理回路等を用いることができる。また、図1の例では、光源として半導体レーザ3aが用いられているが、半導体レーザ以外のレーザ発振器、LEDを用いることもできる。更に、本発明においては、光源としてランプを用いることもできる。
【0083】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における光線治療器について、図5を参照しながら説明する。最初に、本実施の形態2における光線治療器の構成について説明する。図5は、本発明の実施の形態2における光線治療器の構成を示す図である。なお、図5において、図1及び図6に示された符号が付された部分は、図1及び図6中の同一の符号が付された部分と同一のものを示している。
【0084】
図5に示すように、本実施の形態2における光線治療器も、実施の形態1における光線治療器と同様にレーザ治療器であり、レーザ光3bを発振する半導体レーザ(光源)3aと、駆動回路1と、電源回路2と、コンピュータ制御装置7と、差動増幅器6及び8とを
備えている。但し、本実施の形態2における光線治療器は、以下の点で実施の形態1における光線治療器と異なっている。
【0085】
本実施の形態2においては、図5に示すように、作動増幅器32は、信号線23a、切り替えスイッチ20及び信号線23cを介して出力異常検知回路21に接続されている。パルス信号23bは、信号線23a、切り替えスイッチ20及び信号線23cを経由して出力異常検知回路21に入力される。また、コンピュータ制御装置7は、信号線47、切り替えスイッチ20及び信号線23cを介して出力異常検知回路21に接続されている。
【0086】
切り替えスイッチ20の切り替えは論理回路50によって行われる。本実施の形態2では、切り替えスイッチ20は、論理回路50が論理ハイレベルを出力すると、信号線47と信号線23cとを接続し、論理回路50が論理ローレベルを出力すると、信号線23aと信号線23cとを接続する。
【0087】
また、論理回路50は、信号線54に接続されており、信号線54を介して、コンパレータ46に接続されている。更に、論理回路50は、信号線45を介して、コンピュータ制御装置7にも接続されている。よって、スイッチング電源11のオフ制御や、駆動回路1及び電源回路2の遮断が行われて、スイッチング電源11の出力電圧がref3に入力される基準電圧より低くなると、コンパレータ46は、論理回路51に加え、論理回路50にも論理ハイレベルを出力する。更に、コンパレータ46が論理ハイレベルを出力するところまでスイッチング電源11の出力電圧が下がった場合は、コンピュータ制御装置7も、信号線45を介して論理回路50に論理ハイレベルを出力する。
【0088】
更に、論理回路50は、コンパレータ46とコンピュータ制御装置7との両方が論理ハイレベルを出力すると、論理ハイレベルを出力する。即ち、半導体レーザ3a及び駆動回路1への電力供給が止められ、半導体レーザ3aが駆動されない安全な状態において、コンピュータ制御装置7の指示があると、論理回路50は、切り替えスイッチ20によって信号線47と出力異常検知回路21とを接続する。論理回路50は、出力異常検知回路21に対して入力信号遮断手段として機能する。
【0089】
なお、コンパレータ46及びコンピュータ制御装置7のうちのいずれか一方又は両方が論理ローレベルを出力しているときは、論理回路50は論理ローレベルを出力する。この場合、切り替えスイッチ20は、信号線23aと信号線23cとを接続する。
【0090】
また、本実施の形態2では、信号線53aは、分岐配線53cを介してコンピュータ制御装置7にも接続されている。よって、出力異常検知回路21のラッチ回路31(図3参照)が信号線42に論理ハイレベルを出力すると、論理回路43からの論理ローレベルの制御信号53bが、論理回路41とコンピュータ制御装置7とに入力される。なお、上述したように、ラッチ回路31が論理ハイレベルを出力すると、リレー34から36が開かれ、半導体レーザ3a及び駆動回路1への電力供給が止められる。また、論理ローレベルの制御信号53bが論理回路41に入力されると、差動増幅器8がオフレベルに固定される。
【0091】
このように、本実施の形態2における光線治療器は、実施の形態1における光線治療器と異なる構成を備えている。このため、本実施の形態2における光線治療器によれば、使用前にコンピュータ制御装置7によって動作テストを行うことができる。具体的には、コンピュータ制御装置7は、先ず、自己によって駆動電流の供給の制限が可能かどうかの動作テスト(セルフテスト)を行う。続いて、コンピュータ制御装置7は、出力異常検知回路21によって出力異常の検知及び駆動電流の供給の制限が可能かどうかの動作テストを行う。以下に具体的に説明する。なお、本実施の形態2における光線治療器は、実施の形
態1における光線治療器と同様の動作も行う。
【0092】
先ず、コンピュータ制御装置7によるセルフテストについて説明する。最初に、コンピュータ制御装置7は、電流検知回路の動作確認(駆動電流の検知)を行う。具体的には、先ず、コンピュータ制御装置7は、セルフテスト中に、光源3aから出射されたレーザ光が人体に障害を与えないようにするため、駆動回路1によって、レーザ光3bの出力を人体に対して安全なレベル又はゼロとする電流を光源3aに供給する。
【0093】
本実施の形態2においては、コンピュータ制御装置7は、レーザ光3bの出力をゼロとする電流、即ち光源3aの発光閾値電流よりも電流値が低い電流(以下、「テスト電流」という。)が、駆動回路1から光源3aに供給されるように電流指示信号9bを出力する。発光閾値電流とは、半導体レーザ3aがレーザ発振を始める閾値電流(スレッショールド電流)を意味している。
【0094】
また、テスト電流として光源3aに供給する電流の電流値は、レーザ光3bの出力を人体に安全なレベルとする電流値であれば良く、発光閾値電流よりも電流値が高い電流であっても良い。「人体に安全なレベル」とは、例えば、疼痛緩解等の治療に用いられる、波長が400〜1050nmのレーザ光であれば、レーザ光の出力が、JIS C 6802で規定されているクラスII以下であること、好ましくはクラスI以下であることをいう。
【0095】
次に、コンピュータ制御装置7は、テスト電流を流した状態で、シャント抵抗5及び差動増幅器6で基本的に構成される電流検知回路によって、駆動電流の検知が可能かどうかのテストを行う。本実施の形態2では、コンピュータ制御装置7は、シャント抵抗5、差動増幅器6及び信号線10aを介して、パルス信号10bが入力されるかどうかを確認する。パルス信号10bの入力が確認できたときは、コンピュータ制御装置7は、電流検知回路による駆動電流の検知が可能であると判断する。
【0096】
次に、コンピュータ制御装置7は、自己による駆動電流の供給の制限が可能かどうかのテスト、即ち、セルフテストを行う。具体的には、先ず、コンピュータ制御装置7は、テスト電流を流した状態で、論理回路41を経由して差動増幅器8のオフ制御を行う。このとき、コンピュータ制御装置7は、シャント抵抗5、差動増幅器6、及び信号線10aを経由したパルス信号10bの入力が停止することを確認することによって、自己による駆動電流の遮断動作(制限動作)が正常であるかどうかを確認する。パルス信号10bの入力が停止している場合は、コンピュータ制御装置7は、自己による駆動電流の遮断動作(制限動作)が正常であると判断する。
【0097】
続いて、コンピュータ制御装置7は、テスト電流を流した状態で、電力信号14b、電力信号16b、及び電力信号33bそれぞれの供給を順に一つずつ停止する。更に、コンピュータ制御装置7は、各々の場合について、信号線52を介して入力される信号から、スイッチング電源11の出力電圧値が低下することを確認する。スイッチング電源の出力電圧値が低下している場合は、コンピュータ制御装置7は、セルフテストを終了する。
【0098】
次に、コンピュータ制御装置7による出力異常検知回路21の動作テストについて説明する。最初に、コンピュータ制御装置7は、出力異常検知回路21と接続された電流検知回路の動作確認(駆動電流の検知)を行う。具体的には、先ず、コンピュータ制御装置7は、セルフテストの場合と同様に、テスト電流が駆動回路1から光源3aに供給されるように電流指示信号9bを出力する。
【0099】
次に、コンピュータ制御装置7は、テスト電流を流した状態で、シャント抵抗19及び
差動増幅器32で基本的に構成される電流検知回路によって、駆動電流の検知が可能かどうかのテストを行う。本実施の形態2では、コンピュータ制御装置7は、シャント抵抗19、差動増幅器32、信号線23a及び信号線44を介して、パルス信号23bが入力されるかどうかを確認する。パルス信号23bの入力が確認できたときは、コンピュータ制御装置7は、シャント抵抗19及び差動増幅器32で基本的に構成される電流検知回路による駆動電流の検知が可能であると判断する。
【0100】
続いて、コンピュータ制御装置7は、ダミー信号による出力異常検知回路21の動作テストを行う。先ず、コンピュータ制御装置7は、電力信号14b、電力信号16b、又は電力信号33bの供給を停止して、スイッチング電源11のオフ制御を行い、コンパレータ46に論理ハイレベルを出力させる。更に、コンピュータ制御装置7は、信号線45に論理ハイレベルを出力する。これにより、論理回路50から論理ハイレベルが出力され、切り替えスイッチ20によって信号線47が出力異常検知回路21に接続される。
【0101】
次に、コンピュータ制御装置7は、信号線47を介して、出力異常検知回路21にダミー信号を入力する。このとき、コンピュータ制御装置7は、ラッチ回路31(図3参照)が論理ハイレベルを出力するかどうかを確認する。ラッチ回路31が論理ハイレベルを出力した場合は、コンピュータ制御装置7は、出力異常検知回路21による出力異常検知が正常であると判断する。また、ラッチ回路31が論理ハイレベルを出力した場合は、リレー34から36が開かれる。
【0102】
なお、ダミー信号は、レベル、パルス幅、及びデューティー比が予め設定された正常値の範囲になく、出力異常検知回路21が出力異常であると認識する信号である。ダミー信号としては、例えば、図2(b)に示したパルス信号のように、パルス幅が正常値の範囲内にないパルス信号が挙げられる。
【0103】
次に、コンピュータ制御装置7は、セルフテストで供給を停止していた電力信号14b、16b、及び33bの供給を再開するとともに、信号線52に入力される信号の電圧値に基づいて、駆動回路1への電力供給の遮断が維持されているかどうかを確認する。更に、コンピュータ制御装置7は、論理回路43から出力されている信号53bのレベルが差動増幅器8の出力をオフレベルとするレベルであるかどうかを確認する。駆動回路1への電力供給の遮断が維持されており、更に、信号53bのレベルが差動増幅器8の出力をオフレベルとするレベルである場合は、コンピュータ制御装置7は、出力異常検知回路21による駆動電流の遮断動作が正常であると判断する。
【0104】
次に、コンピュータ制御装置7は、電力信号14b、16b及び33の供給を再度停止し、信号線48に論理ハイレベル(リセット信号)を出力して、出力異常検知回路21のラッチ回路31をリセット操作して、出力異常検知回路21の動作テストを終了する。
【0105】
なお、コンピュータ制御装置7は、ダミー信号として、パルスオン時のレベルがref2(図2(a)参照)を越える信号を入力する等して、更に、出力異常検知回路21の動作テストを続けることもできる。この場合も、上述した工程と同様の工程が繰り返されて、出力異常検知回路21の全動作の確認が行われる。
【0106】
本実施の形態2において、上述したコンピュータ制御装置7によるセルフテストと出力異常検知回路21の動作テストとは、光線治療器の電源投入時に行うのが好ましい。また、これらのテストにおいて動作異常が検知された場合は、光線治療器が操作画面等にメッセージを表示する等して、使用者に動作異常が報知される態様とするのが好ましい。また、この場合は、光線治療器が半導体レーザ3aによるレーザ発振を禁止する態様とするのも好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
このように、本発明における光線治療器によれば、コンピュータ制御装置及び出力異常検知回路のうちいずれかが故障しても、光源の出力異常を検知でき、検知漏れを抑制できる。よって、患者に火傷等の障害を与える前に、確実にレーザ光を遮断する等でき、安全に対する信頼性の高い光線治療器を提供できる。また、本発明は、レーザ光以外の光線を照射する医療機器や、レーザ光を照射するレーザ加工機等についても有用であり、産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態1における光線治療器の構成を示す図
【図2】図1中に示されたコンピュータ制御装置及び出力異常回路に入力されるパルス信号を示す図であり、図2(a)はパルス信号が正常な状態を示す図、図2(b)はパルス信号に異常が発生した状態を示す図
【図3】図1中に示された出力異常回路の回路図
【図4】図3中に示された出力異常回路における動作波形を示す図
【図5】本発明の実施の形態2における光線治療器の構成を示す図である。
【図6】従来からの安全装置付のレーザ治療器の構成を示す図
【符号の説明】
【0109】
1 駆動回路
2 電源回路
3a半導体レーザ(光源)
3b レーザ光(光線)
4 トランジスタ
5、19 シャント抵抗
6 差動増幅器
7 コンピュータ制御装置
8 差動増幅器
9a 信号線
9b 電流指示信号
10a 信号線
10b パルス信号
11 スイッチング電源
12 交流電源
13 リレー
14a 電力信号線
14b 電力信号
15 リレー
16a 電力信号線
16b 電力信号
17a 信号線
17b 制御信号
19 シャント抵抗
20 切り替えスイッチ
21 出力異常検知回路
22 コンパレータ
23a、23c 信号線
23b パルス信号
24 出力異常検知領域
25 コンパレータ
26 遅延回路a
27 遅延回路b
28、29、30 論理回路
31 ラッチ回路
32 差動増幅器
33a 電力信号線
33b 電力信号
34 リレー
35 リレー
36 リレー
37 正常波形
38 第1の異常波形
39 第2の異常波形
40 信号線
41 論理回路
42 信号線
43 論理回路
44、45、47 信号線
46 コンパレータ
48、49 信号線
50、51 論理回路
52、53、54 信号線
A〜I 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源に駆動電流を供給する駆動回路と、前記光源の出力制御及び出力異常の検知を行うコンピュータ制御装置とを備え、前記コンピュータ制御装置は前記出力異常を検知したときに前記駆動電流の供給を制限する光線治療器であって、
前記コンピュータ制御装置から独立して、前記出力異常を検知し、且つ、前記駆動電流の供給を制限する出力異常検知回路を備えていることを特徴とする光線治療器。
【請求項2】
前記光源がレーザ発振器又はLEDである請求項1記載の光線治療器。
【請求項3】
前記駆動回路から、前記駆動電流に対応したパルス信号が、前記コンピュータ制御装置と前記出力異常検知回路とに入力され、
前記コンピュータ制御装置と、前記出力異常検知回路とが、それぞれ別々に、前記パルス信号のレベル、パルス幅及びデューティー比のうちのいずれかが予め設定された値を超えているかどうかを判定して、前記出力異常の検知を行う請求項1または2に記載の光線治療器。
【請求項4】
前記光源の駆動が可能かどうかの判定を行う検知手段と、前記出力異常検知回路によって前記駆動電流の供給が制限された後に供給制限を解除するリセット手段とを更に備え、
前記リセット手段は、前記検知手段によって前記光源の駆動が不可能であると判定され、且つ、前記コンピュータ制御装置によって指示があった場合に、前記供給制限を解除する請求項3に記載の光線治療器。
【請求項5】
前記検知手段が、前記駆動回路への電力の供給が停止されている場合に、前記光源の駆動が不可能であると判定する請求項4に記載の光線治療器。
【請求項6】
前記駆動回路に電力を供給する電源回路を更に備え、
前記コンピュータ制御装置及び前記出力異常検知回路が、前記出力異常を検知したときに、前記駆動回路と前記電源回路とにおける2箇所以上を遮断して、前記駆動回路への電力供給を停止する請求項1から5のいずれかに記載の光線治療器。
【請求項7】
前記駆動電流の検知を行う電流検知回路を備え、
前記コンピュータ制御装置が、前記駆動回路によって、前記光源から出射される光の出力を人体に対して安全なレベル又はゼロとする電流を前記光源に供給し、その状態で、前記電流検知回路による前記駆動電流の検知が可能かどうかのテストを行う請求項1から6のいずれかに記載の光線治療器。
【請求項8】
前記コンピュータ制御装置が、前記駆動回路によって、前記光源から出射される光の出力を人体に対して安全なレベル又はゼロとする電流を前記光源に供給し、その状態で、自己による前記駆動電流の供給の制限が可能かどうかのテストを行う請求項1から7のいずれかに記載の光線治療器。
【請求項9】
前記コンピュータ制御装置が、前記出力異常検知回路が前記出力異常として認識するダミー信号を前記出力異常検知回路に供給し、前記出力異常検知回路による前記出力異常の検知及び前記駆動電流の供給の制限が可能かどうかのテストを行う請求項1から8のいずれかに記載の光線治療器。
【請求項10】
前記光源がレーザ発振器であり、
前記コンピュータ制御装置が、前記駆動回路によって、前記光源の発光閾値電流よりも電流値が低い電流を前記光源に供給する請求項7または8に記載の光線治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−218290(P2006−218290A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261(P2006−261)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】