説明

光線治療器

【課題】 1つの光源を用いて、複数のプローブから高出力の光線を照射することを可能とし、体の深部の治療や治療時間の短縮を可能とし、且つ、安価に製造可能な光線治療器を提供する。
【解決手段】 光源2と、前記光源2と光学的に接続可能な複数の第1の光ファイバ4a〜4dと、複数のプローブ6a〜6dであって、その各々が前記複数の第1の光ファイバ4a〜4dの各々と光学的に接続されたプローブ6a〜6dとを含み、更に、前記複数の第1の光ファイバ4a〜4dのうち、前記光源2と光学的に接続される第1の光ファイバを切り換える導光制御部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光等の光線を患部に照射することにより疾患を治療するための光線治療器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、筋肉、関節等の疼痛緩解に光線治療器が利用され、副作用の少ない治療法として注目されるようになっている。最近では、装置の光出力の増加によって、治療時間の短縮や適用の拡大が図られている。また、リウマチ等の複数部位の治療が必要な疾患に対しては、複数のプローブが装備された光線治療器を用いることにより、複数部位の同時照射を可能とし、治療時間の短縮を図ったものもある(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
図6は、複数のプローブを備えた従来の光線治療器を示す模式図である。この光線治療器においては、治療器本体101に、複数のレーザ素子102が装備されており、このレーザ素子の各々に光ファイバ103が接続されている。そして、この光ファイバ103の各々の出射端に、プローブ104が装備されている。このような構成の光線治療器について、その動作を説明する。まず、使用者は、治療器本体101に対して、照射条件等の設定を行う。そして、各プローブ104を複数の患部にあて、レーザ照射の指令操作をすると、レーザ素子102よりレーザ光が出力され、そのレーザ光は光ファイバ103を通じてプローブ104に導光され、プローブ104の照射口から患部に照射される。
【特許文献1】特開昭63−192461号公報(第1図)
【特許文献2】特開昭63−206260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の光線治療器は、複数のプローブから光線を照射するために、複数のレーザ素子を装備しているため、機器が高価になるという問題を有していた。また、このような問題を避ける方法としては、レーザ素子を1つにして、この1つのレーザ素子に複数の光ファイバを分岐させて接続する方法が考えられるが、この場合、各プローブからの出力が低くなり、体表面に近い側での光線の減衰が大きく影響し、体の深部まで光線が届きにくくなるため、体の深部の治療が困難である、長い治療時間が必要となる等の問題が生じる。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するもので、1つの光源を用いて、複数のプローブからそれぞれ高出力の光線を照射することを可能とし、体の深部の治療を容易にし、治療時間の短縮を可能とし、且つ、安価に製造可能な光線治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の光線治療器は、光源と、前記光源と光学的に接続可能な複数の第1の光ファイバと、前記複数の第1の光ファイバの各々とそれぞれ光学的に接続された複数のプローブと、前記複数の第1の光ファイバのうち、前記光源と光学的に接続される第1の光ファイバを切り換える導光制御部を備えることを特徴とする。このような構成により、光源から出力された光線を、複数のプローブの各々から、出力を低下させることなく患部に照射可能となる。そのため、体の深部に対する治療を容易にし、治療時間の短縮を図ることが可能となる。また、複数のプローブからの照射を、1つの光源を用いて実施することが可能であるため、プローブと同数の光源(例えば、レーザ素子)を必要としていた従来の光線治療器に比べて、比較的安価に製造することが可能である。
【0007】
本発明の光線治療器において、前記導光制御部は、前記複数の第1の光ファイバのうち前記光源と光学的に接続される第1の光ファイバを時分割で切り換えるものであることが好ましい。このような構成により、一つの光源から出力された光線を、各プローブから出力低下なしに照射でき、且つ、従来のように、患者の身体に危険となる熱感を与えることなく安全な照射が可能となる。
【0008】
本発明の光線治療器において、前記導光制御部は、第2の光ファイバおよび第2の光ファイバ保持部を備え、前記第2の光ファイバが、前記光源と前記第1の光ファイバのうちの1つとを光学的に接続するものであり、前記第2の光ファイバ保持部が、前記第2の光ファイバを保持し、その出射端を移動させることにより前記光源と光学的に接続される第1の光ファイバを切り換えるものであることが好ましい。このように、第2の光ファイバを備えることによって、光源が一つであっても、前記第2の光ファイバを介して複数の第1の光ファイバへの光学的接続の切り換えを行うことができる。
【0009】
また、前記導光制御部において、前記複数の第1の光ファイバは、それらの入射端面の中心が同一円周上に位置するように配置されており、前記第2の光ファイバ保持部は、前記第2の光ファイバの出射端面の中心の軌跡が前記円周と重なり合うように前記第2の光ファイバを回転させる回転機構を備えていることが好ましい。このような導光制御部により、光源と光学的に接続される第1の光ファイバの切り換えを行えば、低損失で光線を第1の光ファイバに導光することができるため、導光の高効率化を安定して行うことができる。
【0010】
本発明の光線治療器において、前記導光制御部は、第2の光ファイバ、第3の光ファイバおよび第3の光ファイバ保持部を備え、前記第2の光ファイバは、前記光源と光学的に接続されており、前記第3の光ファイバは、前記第2の光ファイバと前記第1の光ファイバのうちの1つとを光学的に接続するものであり、前記第3の光ファイバ保持部は、前記第3の光ファイバを保持し、その出射端を移動させることにより前記第2の光ファイバと光学的に接続される第1の光ファイバを切り換えるものであることが好ましい。このように、第2の光ファイバおよび第3の光ファイバを備えることによって、光源が一つであっても、第2の光ファイバおよび第3の光ファイバを介して各第1の光ファイバへの光学的接続の切り換えを行うことができる。
【0011】
また、前記導光制御部において、前記複数の第1の光ファイバは、それらの入射端面の中心が同一円周上に位置するように配置されており、前記第3の光ファイバ保持部は、前記第3の光ファイバの入射端面の中心が前記第2の光ファイバの出射端面の中心と同軸上に位置し、且つ、前記第3の光ファイバの出射端面の中心の軌跡が前記円周と重なり合うように前記第3の光ファイバを回転させる回転機構を備えていることが好ましい。このような導光制御部により、光源と光学的に接続される第1の光ファイバの切り換えを行えば、低損失で光線を第1の光ファイバに導光することができるため、導光の高効率化を安定して行うことができる。また、上記のような構成をとれば、第3の光ファイバを内包した回転部材により、第3の光ファイバはもちろん、第2の光ファイバに対する、不要な捩れや振動を回避できるため、より高信頼性を有する導光制御部とすることが可能である。
【0012】
本発明の光線治療器において、前記導光制御部は、レンズ、ミラーおよびミラー保持部を備え、前記レンズは、前記光源から出力される光線を、前記ミラーに集光するものであり、前記ミラーは、集光された前記光線を、前記複数の第1の光ファイバのうちの1つに導光するものであり、前記ミラー保持部は、前記ミラーを保持し、その反射面の向きを変化させることにより、前記光線が導光される第1の光ファイバを切り換えるものであることが好ましい。このような導光制御部であれば、ミラー保持部の制御により、ミラーの反射面の向きを所定の角度に回転できるため、光線を各第1の光ファイバに順次導光できる。
【発明の効果】
【0013】
前述のように、本発明の光線治療器によれば、光源から出力された光線を、複数のプローブの各々から、出力を低下させることなく患部に照射可能となる。そのため、体の深部に対する治療を容易にし、治療時間の短縮を図ることが可能となる。また、複数のプローブからの照射を、1つの光源を用いて実施することが可能であるため、プローブと同数の光源(例えば、レーザ素子)を必要としていた従来の光線治療器に比べて、比較的安価に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の光線治療器を、図1に示す。この光線治療器においては、治療器本体1内に、レーザ素子2と、このレーザ素子2をパルス駆動制御するためのパルス制御部3とを備えている。更に、治療器本体1からは、レーザ素子2から出力されたレーザ光を導光するための、複数の第1の光ファイバ4a〜4dが引き出されており、その各々の出射端には、第1の光ファイバ4a〜4dにより導光されたレーザ光を患部に照射するための、複数のプローブ6a〜6dが接続されている。なお、各プローブ6a〜6dの形状は、特に限定するものではなく、患部の形態、例えば手指の関節用、膝用等に適合させた形状とすることができる。
【0016】
更に、治療器本体1内には、複数の第1の光ファイバ4a〜4dのうち、レーザ素子2と光学的に接続される光ファイバを、時分割で切り換えるための、導光制御部5が内蔵されている。この導光制御部5の構成については、後に詳説する。
【0017】
次に、上記光線治療器の動作について、図2を用いて説明する。図2は、パルス制御信号7、レーザ光出力8および各プローブ6a〜6dの出力9a〜9dのタイミングを示す図である。
【0018】
まず、使用者は、治療器本体1において照射条件等の設定を行い、照射を開始する。照射時には、パルス制御部3より、パルス制御信号7がレーザ素子2に出力される。レーザ素子2は、パルス状のレーザ光出力8を出力し、その出力は、導光制御部5に入力される。導光制御部5では、レーザ光出力8の各パルス出力を、第1の光ファイバ4a〜4dの各々に時分割して導光し、第1の光ファイバ4a〜4dを通じて、プローブ6a〜6dの各々から、各プローブの出力9a〜9dとして患部に照射される。
【0019】
このような光線治療器によれば、レーザ素子からの出力を、時分割で複数のプローブの各々から出力することが可能となるため、各プローブの出力を低下させることなく、複数の患部への照射が可能となる。そのため、体表面に近い側で光線の減衰の影響を少なくできることから、光線が体の深部まで届きやすくなり、体の深部の治療を容易にし、治療時間の短縮を図ることができる。また、1つのレーザ素子を用いて、複数のプローブからの照射を可能とするため、光線治療器の製造コストを比較的安価に抑えることができる。
【0020】
また、上記光線治療器において、各プローブの出力9a〜9dは、レーザ素子2からの出力と同等である。よって、レーザ素子2として高出力レーザ素子(例えば、10W程度)を用いた場合、プローブの出力9a〜9dは、低出力レーザ(1000mW程度)を用いた場合よりも高い出力となる。プローブの出力9a〜9dが高出力であると、プローブ先端という狭い範囲からの連続照射は、患者の身体に対して熱的な危険を生じるおそれがあるが、本実施の形態の光線治療器においては、各プローブからの出力はパルス状となるため、危険となる熱感を患者に与えることなく照射を実施することができる。例えば、各プローブの出力9a〜9dのデューティー比が10%、パルス幅が20msの場合、それぞれのパルス光出力は10Wであっても、平均出力が従来の治療器と同程度の1Wとなり、安全な照射が可能となる。
【0021】
また、この第1の実施の形態の光線治療器においては、1つのプローブから出力されるレーザ光がパルス状(例えば、デューティー比10%)であるため、他のプローブからレーザ光が出力されている時間がオフの時間となっており、1つの素子で複数のプローブから効率的な照射が可能となっている。
【0022】
なお、第1の実施の形態においては、第1の光ファイバおよびプローブの数を4個とした場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の光ファイバおよびプローブの数は、任意に増減することが可能である。
【0023】
また、第1の実施の形態においては、光源としてレーザ素子を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。LEDなど別の光源を使用することも可能である。
【0024】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の光線治療器を、図3に示す。図3aは、第1の実施の形態に係る光線治療器を構成する導光制御部5の一例を示す模式的な平面図である。なお、本図においては、図1と同一部材には同一番号を付している。
【0025】
この導光制御部5は、第1の光ファイバ4a〜4dを保持するためのスリーブ20を備えている。このスリーブ20に第1の光ファイバ4a〜4dが保持されることよって、複数の第1の光ファイバ4a〜4dの入射端は、特定の配置に固定される。図3cは、この第1の光ファイバ4a〜4dの配置形態の一例を示す図であり、スリーブ20の端面を示している。本図に示すように、スリーブ20の端面においては、第1の光ファイバ4a〜4dは、その各々の入射端面の中心34a〜34dが、スリーブ20の中心軸22を中心とする円の円周31上に位置するように配置される。更に、第1の光ファイバ4a〜4dは、スリーブ20の端面において、その中心34a〜34dが前記円周31上に等間隔に位置するように、配置されていることが好ましい。
【0026】
更に、導光制御部5は、レーザ素子2と第1の光ファイバ4a〜4dとを光学的に接続するための、第2の光ファイバ23を備えている。なお、この第2の光ファイバ23のコア径は、特に限定するものではないが、第1の光ファイバ4a〜4dのコア径よりも小さく設定されることが好ましい。例えば、第1の光ファイバ4a〜4dのコア径が600μmである場合、第2の光ファイバ23のコア径は400μm程度に設定することが好ましい。
【0027】
第2の光ファイバ23の入射端は、レーザ素子2に接続されており、その出射端は、第2の光ファイバ保持部によって、第1の光ファイバ4a〜4dの入射端と光学的に接続可能なように保持されている。この第2の光ファイバ保持部は、第2の光ファイバ23の出射端を移動させることにより、レーザ素子と光学的に接続される第1の光ファイバを時分割で切り換える機能を有している。
【0028】
図3aに示す例において、第2の光ファイバ保持部は、第2の光ファイバ23の出射端部を、その端面がスリーブ20の端面と対向するように、特定の配置状態で保持する、回転部材24を備えている。図3bは、回転部材24によって実現される第2の光ファイバ23の配置形態の一例を示す図であり、回転部材24の第1の光ファイバ側端面を示している。本図および図3cを参照して分かるように、第2の光ファイバ23は、その出射端面の中心33が、第1の光ファイバ4a〜4dの入射端面の中心34a〜34dが位置する円の円周31と重なり合うように、配置される。
【0029】
更に、回転部材24には、ギア29を介して、回転駆動力源となるステッピングモータ26が接続されている。これにより、回転部材24は、第2の光ファイバ23の出射端部を、スリーブ20の中心軸22と同軸に回転させ得るように構成されている。このような回転により、第2の光ファイバ23の出射端面の中心33の軌跡を、第1の光ファイバ4a〜4dの入射端面の中心34a〜34dが位置する円の円周31と一致させることが可能となる。また、ステッピングモータ26には、その回転軸28にロータリーエンコーダ27が装備されており、ステッピングモータ26の回転数、ひいては回転部材24の回転角度を検出可能な構成とされている。
【0030】
また、回転部材24には、第2の光ファイバ23と接する部分に、ボールベアリング32が配置されている。これにより、回転部材24が同一方向に複数回回転した場合であっても、第2の光ファイバ23の捩れを防止できるような構成とされている。
【0031】
次に、この第2の実施の形態における導光制御部5の動作について、詳細に説明する。第2の実施の形態においては、レーザ素子2からのレーザ光出力は、第2の光ファイバ23によって、導光制御部5に導光される。そして、第2の光ファイバ23の出射端面の中心33が、第1の光ファイバ4aの入射端面の中心34aと一致するように回転部材24の位置を制御すると、レーザ光出力は、第2の光ファイバ23から第1の光ファイバ4aに導光される。このとき、第2の光ファイバ23のコア径より、第1の光ファイバ4aのコア径が大きく設定した場合、極めて低損失でレーザ光が導光される。更に、第2の光ファイバ23の出射端面の中心33と、第1の光ファイバ4aの中心34aとが一致するように、回転部材24の位置が制御されている場合、極めて低損失でレーザ光が導光される。
【0032】
そして、1回のパルス光が第1の光ファイバ4aに導光された後、ステッピングモータ26により、ロータリーエンコーダ27の位置情報に基づいて、第2の光ファイバ23の出射端面の中心33が、第1の光ファイバ4bの入射端面の中心34bと一致するように、回転部材24を回転させる。このような回転部材24の制御によって、次のパルス光は、上記と同様の経路を経て、第1の光ファイバ4bに導光される。
【0033】
このように、1回のパルス光が照射されるたびに、回転部材24を所定の角度回転させることにより、レーザ光出力の各パルス出力を、第1の光ファイバ4a〜4dの各々に時分割して導光することができる。そして、導光されたレーザ光は、第1の光ファイバ4a〜4dを通じて、プローブ6a〜6dの各出力として、患部に照射される。
【0034】
このような導光制御部により、レーザ素子と光学的に接続される第1の光ファイバの切り換えを行えば、低損失でレーザ光を第1の光ファイバに導光することができるため、導光の高効率化を安定して行うことができ、各プローブの出力を低下させることなく、複数の患部への照射が可能となる。そのため、体表面に近い側で光線の減衰の影響を少なくできることから、光線が体の深部まで届きやすくなり、体の深部の治療を容易にし、治療時間の短縮を図ることが可能となる。また、上記のような構成とすることにより、従来のような複数のレーザ素子が不要であり、導光制御部を比較的コンパクトな構成にできるため、光線治療器の小型化が容易である。
【0035】
なお、上記説明においては、回転駆動力源として、ステッピングモータを用いた場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、あらゆるモータの種類および回転伝達機構を採用することが可能である。例えば、サーボモータ等を用い、その回転力をベルト等を用いて伝達する構成とすることも可能である。
【0036】
また、上記においては、回転に伴う第2の光ファイバの捩れを防止するために、回転部材24の第2の光ファイバ23と接する部分にボールベアリング32を配したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、ボールベアリングに代えて、空気軸受け等の他の構成を用いることが可能である。また、ボールベアリング32等を配することなく、回転部材24を逆転する制御を行うことによって、第2の光ファイバ23の捩れを防止することも可能である。
【0037】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の光線治療器を、図4に示す。図4aは、第1の実施の形態に係る光線治療器を構成する導光制御部5の別の一例を示す模式的な平面図である。なお、本図においては、図1および図3a〜3cと同一部材には同一番号を付している。
【0038】
この導光制御部5は、第2の実施の形態と同様に、スリーブ20を備えており、このスリーブ20に第1の光ファイバ4a〜4dが保持されることよって、複数の第1の光ファイバ4a〜4dの入射端は、特定の配置に固定される。図4eは、第1の光ファイバ4a〜4dの配置形態の一例を示す図である。本図に示すように、第1の光ファイバ4a〜4dは、その各々の入射端面の中心34a〜34dが、同一円の円周31上に位置するように配置される。
【0039】
更に、導光制御部5は、レーザ素子2と第1の光ファイバ4a〜4dとを光学的に接続するための、第2の光ファイバ23を備えている。この第2の光ファイバ23の入射端は、レーザ素子2に接続されている。また、第2の光ファイバ23の出射端は、第2の光ファイバ保持部35によって、好ましくは出射端面の中心33が、スリーブ20の中心軸22と一致するように、保持されている。
【0040】
更に、第2の光ファイバ23と第1の光ファイバ4a〜4dとの間には、この両者を光学的に接続するための、第3の光ファイバ37が設けられている。なお、この第3の光ファイバ37のコア径は、特に限定するものではないが、第1の光ファイバ4a〜4dのコア径よりも小さく、且つ、第2の光ファイバ23のコア径よりも大きく設定されることが好ましい。例えば、第1の光ファイバ4a〜4dのコア径が600μm、第2の光ファイバ23のコア径は400μmの場合、第3の光ファイバ37のコア径は500μm程度に設定することが好ましい。
【0041】
第3の光ファイバ37は、第3の光ファイバ保持部によって、入射端が第2の光ファイバ23の出射端と光学的に接続され、且つ、出射端が第1の光ファイバ4a〜4dの入射端と光学的に接続可能なように保持されている。この第3の光ファイバ保持部は、第3の光ファイバ37の出射端を移動させることにより、第2の光ファイバ23と光学的に接続される第1の光ファイバを時分割で切り換える機能を有している。
【0042】
図4aに示す例において、第3の光ファイバ保持部は、第3の光ファイバ37を特定の配置状態で保持する、回転部材36を備えている。図4cおよびdは、回転部材36によって実現される第3の光ファイバ37の配置形態の一例を示す図であり、図4cは、回転部材36の第2の光ファイバ側端面を示し、図4dは、回転部材36の第1の光ファイバ側端面を示す。図4a〜図4eを参照して分かるように、第3の光ファイバ37は、その入射端面の中心38が、第2の光ファイバ23の出射端面の中心33と一致し(図においては、いずれも中心もスリーブ20の中心軸22上に位置する)、且つ、出射端面の中心40が、第1の光ファイバ4a〜4dの入射端面の中心34a〜34dが位置する円の円周31と重なり合うように、配置される。
【0043】
回転部材36には、ギア29を介して、回転駆動力源となるステッピングモータ26が接続されている。これにより、回転部材36は、第3の光ファイバ37を、スリーブ20の中心軸22と同軸に回転させ得るように構成されている。このような回転により、第3の光ファイバ37の出射端面の中心40の軌跡を、第1の光ファイバ4a〜4dの入射端面の中心34a〜34dが位置する円の円周31と一致させることが可能となる。また、ステッピングモータ26には、実施の形態1と同様に、ロータリーエンコーダ27が装備されている。
【0044】
次に、この第3の実施の形態における導光制御部5の動作について、詳細に説明する。第3の実施の形態においては、レーザ素子2からのレーザ光出力は、第2の光ファイバ23によって、導光制御部5に導光される。導光制御部5においては、レーザ光出力は、第2の光ファイバ23から第3の光ファイバ37に導光される。そして、第3の光ファイバ37の出射端面の中心40が、第1の光ファイバ4aの入射端面の中心34aと一致するように回転部材36の位置を制御すると、レーザ光出力は、第3の光ファイバ37から第1の光ファイバ4aに導光される。
【0045】
そして、1回のパルス光が第1の光ファイバ4aに導光された後、ステッピングモータ26により、ロータリーエンコーダ27の位置情報に基づいて、第3の光ファイバ37の出射端面の中心40が、第1の光ファイバ4bの入射端面の中心34bと一致するように、回転部材36を回転させる。このような回転部材36の制御によって、次のパルス光は、上記と同様の経路を経て、第1の光ファイバ4bに導光される。
【0046】
このように、1回のパルス光が照射されるたびに、回転部材36を所定の角度回転させることにより、レーザ光出力の各パルス出力を、第1の光ファイバ4a〜4dの各々に時分割して導光することができる。そして、導光されたレーザ光は、第1の光ファイバ4a〜4dを通じて、プローブ6a〜6dの各出力として、患部に照射される。
【0047】
このような導光制御部により、レーザ素子と光学的に接続される第1の光ファイバの切り換えを行えば、低損失でレーザ光を第1の光ファイバに導光することができ、導光の高効率化を安定して行うことができ、各プローブの出力を低下させることなく、複数の患部への照射が可能となる。そのため、体表面に近い側で光線の減衰の影響を少なくできることから、光線が体の深部まで届きやすくなり、体の深部の治療を容易にし、治療時間の短縮を図ることが可能となる。また、上記のような構成とすることにより、従来のような複数のレーザ素子が不要であり、導光制御部を比較的コンパクトな構成にできるため、光線治療器の小型化が容易である。更に、第3の光ファイバ37を内包した回転部材36により、第3の光ファイバ37はもちろん、第2の光ファイバ23に対する不要な捩れ、振動を回避できるため、より高信頼性を有する導光制御部5とすることが可能である。
【0048】
なお、上記説明においては、回転駆動力源として、ステッピングモータを用いた場合を例示したが、第2の実施の形態と同様に、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態の光線治療器を、図5に示す。図5は、第1の実施の形態に係る光線治療器を構成する導光制御部5の、更に別の一例を示す模式的な平面図である。なお、本図においては、図1と同一部材には同一番号を付している。
【0050】
この導光制御部5は、レーザ素子2と第1の光ファイバ4a〜4dとを光学的に接続するためのレンズ10およびミラー11と、このミラー11を保持するためのミラー保持部12とを備えている。そして、図示のように、第1の光ファイバ4a〜4dは、その入射端面がミラー11の反射面と対向可能なように、ミラー11の周囲を取り囲むように配置されている。
【0051】
レンズ10は、レーザ素子2から出力されたレーザ光を、ミラーの反射面上に集光できるように構成されている。ミラー11は、ミラー保持部12によって、集光されたレーザ光を、反射面での反射によって、第1の光ファイバ4a〜4dの入射端に導くことが可能なように、保持されている。そして、ミラー保持部12は、ミラーを保持し、これを回転させることによって、ミラー11の反射面の向きを変化させるような構成を有している。これにより、ミラー11およびミラー保持部12は、レーザ素子と光学的に接続される第1の光ファイバを時分割で切り換える機能を果たしている。
【0052】
次に、第4の実施の形態における導光制御部5の動作について、詳細に説明する。第4の実施の形態においては、レーザ素子2からのレーザ光出力は、導光制御部5に導光されると、レンズ10により、ミラー11の反射面上に集光される。そして、ミラー11の反射面が第1の光ファイバ4aの入射端面と対向するようにミラー保持部12を制御すると、レーザ光はミラー11で反射されて、第1の光ファイバ4aに導光される。
【0053】
そして、1回のパルス光が第1の光ファイバ4aに導光された後、ミラー保持部12によってミラー11を所定の角度回転させ、その反射面の向きを、第1の光ファイバ4bの入射端面と対向するように変化させる。このようなミラー保持部12の制御によって、次のパルス光は、上記と同様の経路を経て、第1の光ファイバ4bに導光される。
【0054】
このように、1回のパルス光が照射されるたびに、ミラー保持部12の制御によって、ミラー11の反射面の向きを所定の角度に回転できるため、レーザ光出力の各パルス出力を、第1の光ファイバ4a〜4dに順次導光できる。そして、導光されたレーザ光は、第1の光ファイバ4a〜4dを通じて、プローブ6a〜6dの各出力として、患部に照射される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光線治療器は、光線を時分割で複数のプローブから出力することができるため、各プローブからの出力を低下させることなく、複数のプローブからの光線の照射が可能である。そのため、体の深部に対する治療や、治療時間の短縮を図ることが可能である。また、複数のプローブからの照射を、1つの光源を用いて実施することが可能であるため、比較的安価に製造することができる。よって、複数の患部に光線照射することが必要とされる治療のための治療器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る、光線治療器の一例を示す模式図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る、光線治療器におけるパルス制御信号及びレーザ光出力と各プローブの出力のタイミングを示す図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る、光線治療器の一例を示す模式図。図3aは、上記光線治療器を構成する導光制御部の一例を示す模式的平面図であり、図3bおよび図3cは、その部分断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る、光線治療器の一例を示す模式図。図4aは、上記光線治療器を構成する導光制御部の別の一例を示す模式的平面図であり、図4b〜図4eは、その部分断面図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る、上記光線治療器を構成する導光制御部の別の一例を示す模式図。
【図6】従来の光線治療器を示す模式図。
【符号の説明】
【0057】
1 治療器本体
2 レーザ素子
3 パルス制御部
4a,4b,4c,4d 第1の光ファイバ
5 導光制御部
6a,6b,6c,6d プローブ
7 パルス制御信号
8 レーザ光出力
9a,9b,9c,9d 各プローブの出力
10 レンズ
11 ミラー
12 ミラー保持部
20 スリーブ
23 第2の光ファイバ
24 回転部材
36 回転部材
37 第3の光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源と光学的に接続可能な複数の第1の光ファイバと、前記複数の第1の光ファイバの各々とそれぞれ光学的に接続された複数のプローブと、前記複数の第1の光ファイバのうち、前記光源と光学的に接続される第1の光ファイバを切り換える導光制御部を備えることを特徴とする光線治療器。
【請求項2】
前記導光制御部が、前記複数の第1の光ファイバのうち前記光源と光学的に接続される第1の光ファイバを時分割で切り換えるものである請求項1記載の光線治療器。
【請求項3】
前記導光制御部が、第2の光ファイバおよび第2の光ファイバ保持部を備え、
前記第2の光ファイバが、前記光源と前記第1の光ファイバのうちの1つとを光学的に接続するものであり、
前記第2の光ファイバ保持部が、前記第2の光ファイバを保持し、その出射端を移動させることにより前記光源と光学的に接続される第1の光ファイバを切り換えるものである請求項1または2記載の光線治療器。
【請求項4】
前記複数の第1の光ファイバが、それらの入射端面の中心が同一円周上に位置するように配置されており、
前記第2の光ファイバ保持部が、前記第2の光ファイバの出射端面の中心の軌跡が前記円周と重なり合うように前記第2の光ファイバを回転させる回転機構を備えている請求項3記載の光線治療器。
【請求項5】
前記導光制御部が、第2の光ファイバ、第3の光ファイバおよび第3の光ファイバ保持部を備え、
前記第2の光ファイバは、前記光源と光学的に接続されており、
前記第3の光ファイバは、前記第2の光ファイバと前記第1の光ファイバのうちの1つとを光学的に接続するものであり、
前記第3の光ファイバ保持部は、前記第3の光ファイバを保持し、その出射端を移動させることにより前記第2の光ファイバと光学的に接続される第1の光ファイバを切り換えるものである請求項1または2記載の光線治療器。
【請求項6】
前記複数の第1の光ファイバが、それらの入射端面の中心が同一円周上に位置するように配置されており、
前記第3の光ファイバ保持部が、前記第3の光ファイバの入射端面の中心が前記第2の光ファイバの出射端面の中心と同軸上に位置し、且つ、前記第3の光ファイバの出射端面の中心の軌跡が前記円周と重なり合うように前記第3の光ファイバを回転させる回転機構を備えている請求項5記載の光線治療器。
【請求項7】
前記導光制御部が、レンズ、ミラーおよびミラー保持部を備え、
前記レンズは、前記光源から出力される光線を、前記ミラーに集光するものであり、
前記ミラーは、集光された前記光線を、前記複数の第1の光ファイバのうちの1つに導光するものであり、
前記ミラー保持部は、前記ミラーを保持し、その反射面の向きを変化させることにより、前記光線が導光される第1の光ファイバを切り換えるものである請求項1または2記載の光線治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−223665(P2006−223665A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42855(P2005−42855)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】