説明

光触媒の製造方法

本発明は、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材と少なくとも一種の共触媒とからなる光触媒Pの製造方法であって、少なくとも、
(A)少なくとも一種の基材を、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を含む電解液で電気化学的処理して、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を得る工程と、
(B)該少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を、該少なくとも一種の共触媒の少なくとも一種の前駆化合物を含む他の電解液中で光化学的処理して該光触媒Pを得る工程とからなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一種の光触媒活性をもつ金属酸化物が塗布された基材と少なくとも一種の共触媒とからなる光触媒Pの製造方法であって、少なくとも、(A)少なくとも一種の基材を、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を含む電解液で電気化学的処理して、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を得る工程と、(B)該少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を、該少なくとも一種の共触媒の少なくとも一種の前駆化合物を含む他の電解液中で光化学的処理して該光触媒Pを得る工程とからなる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒活性物質を基材に塗布して光触媒を製造する方法は、先行技術から公知である。
【0003】
DE19841650A1には、バリアー層を形成する金属上にナノ結晶性金属酸化物層と混合金属酸化物層を形成する方法であって、少なくとも一種以上の錯化剤、好ましくはキレート剤と、一種以上の金属アルコキシドと、少なくとも一種のアルコール、好ましくは第二級または第三級のアルコールとを含む電解液中でのスパーク放電を伴う陽極酸化により塗装が行われる方法が開示されている。DE19841650A1によると、予め定められた層特性を、特に接着強度、半導体性、表面特性、フォトクロミズムやエレクトロクロミズムに係る、また個々のまたは組合せでの触媒活性に係る予め定められた層特性が、電解浴成分の濃度範囲を適切に選択し、陽極酸化プロセスの制御可能なパラメーターを適切に選択することで達成可能である。この文書はさらに、陽極酸化電解液に他の成分を、例えば鉄イオンまたはルテニウムイオン、電気的に中性であるマイクロ粒子またはナノ粒子などを添加して、これらの成分を光触媒活層に入れることで、得られる光触媒活性層の特性にさらに影響を与えることができることを開示している。
【0004】
DE102005043865A1は、上記DE19841650A1の方法のさらに進歩したものに関する。DE102005043865A1で得られる層の光触媒活性をさらに増加させるために、例えば濃度が0.01mol/l未満のカドリニウム(III)アセチルアセトネート水和物及び/又はセリウム(III)アセチルアセトネート水和物と必要に応じて他の成分が、基材の陽極酸化が行われる電解液に加えられる。
【0005】
DE102005050075A1には、堅く結合している金属酸化物層と混合金属酸化物層上に、金属、好ましくは貴金属を析出させる方法が開示されている。このために、対応する基材にまず金属酸化物層または混合金属酸化物層が形成される。電気化学的な処理でこの酸化物層に存在する金属カチオンの価数を減少させる。例えば、チタン4+をチタン3+に還元する。このように処理された酸化物層をもつ基材で、その金属カチオンが還元型で存在しているものを、次いで、好ましくは貴金属が酸化した形で存在する水溶液で処理する。酸化物層中に存在する貴金属カチオンまたは金属カチオンの還元ポテンシャルのため、金属が水溶液から酸化物層上に元素状で析出し、同時に酸化物層に存在する還元した金属カチオンが元の酸化状態に、即ちチタン3+からチタン4+に変換される。このプロセス実施後に酸化物層上または酸化物層内に存在する元素状金属の量は、プロセスの初期に電気化学的処理により酸化物層中でおおこる金属カチオンの還元量で調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE19841650A1
【特許文献2】DE102005043865A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような先行技術のプロセスでは、光触媒反応に用いた場合の活性に、例えばアルコールから水素の製造に用いた場合の活性に改良の必要がある光触媒しか得られない。また、特に高活性な光触媒の製造方法に対するニーズがあるが、この方法は、実施が容易であり、常に高品質かつ高再現性の品質の光触媒を与える必要がある。また、光触媒上に存在する共触媒の量が高感度で予め定められた方法で調整可能であるという特徴を有する製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、本発明の、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材と少なくとも一種の共触媒とからなる光触媒Pの製造方法であって、少なくとも、
(A)少なくとも一種の基材を、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を含む電解液で電気化学的処理して、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を得る工程と、
(B)該少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を、該少なくとも一種の共触媒の少なくとも一種の前駆化合物を含む他の電解液中で光化学的処理して該光触媒Pを得る工程とからなる方法により達成される。
【0009】
本発明の方法は、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材と少なくとも一種の共触媒とからなる光触媒Pの製造に用いられる。
【0010】
本発明によれば、この光触媒Pは基材を含む。一般に、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物を塗布できるすべての基材が本発明の方法に好適である。本発明の方法のある好ましい実施様態においては、この基材が、金属と半導体、ガラス基材、セラミック基板、セルロース繊維やプラスチック基材、好ましくは電気伝導性プラスチック基材、およびこれらの混合物または合金からなる群から選ばれる。この基材は、特に好ましくは、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、他のバリアー層形成材料、およびこれらの混合物または合金からなる群から選ばれる金属である。
【0011】
ある特に好ましい実施様態においては、本発明で製造可能な光触媒Pの基材は、シート状の金属、例えば金属シートまたは金属ネットである。本発明によれば、この基材が、可能なあらゆる形状や表面特性をもつことができる。本発明によれば、この基材が平面状であっても、曲面でも、例えば凸状あるいは凹状であってもよく、非対称形をしていてもよい。用いる基材の表面は、平滑及び/又は多孔性である。必要に応じて実施される金属基材表面の前処理方法は当分野の熟練者には公知であり、例えば洗浄や超音波処理、研磨である。
【0012】
本発明で使用可能な基材は、当業界の熟練者には公知のあらゆる寸法を取ることができ、十分な電気伝導性をもっている。本発明で使用できる基材の幅と厚みと長さに関しては、特に一般的な制限はない。例えば、長方形または正方形の基材で、辺の長さが0.5〜100mm、特に5〜50mmのものが用いられる。長方形の金属基材で寸法が5〜10mm×60〜100mmのものの使用が極めて好ましい。
【0013】
この光触媒Pの製造のために、工程(A)中で、基材に少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物を塗布する。本発明によれば、当業界の熟練者には既知の半導体特性をもつあらゆる光触媒活性金属酸化物を、例えば二酸化チタンや酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、酸化タンタル、ハフニウムジオキシド、およびこれらの混合物を使用することができる。ある特に好ましい実施様態においては、この光触媒活性金属酸化物が二酸化チタンであり、これは、アナターゼ型またはルチル型、またはこれらの混合物であってよく、あるいは非晶質状であってもよい。
【0014】
本発明により基材上に形成される少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物を含む層の層厚に、一般に特に制限はない。この光触媒活性金属酸化物の層の層厚は、例えば1〜200μmであり、好ましくは5〜150μm、特に好ましくは10〜80μmである。層厚を測定する方法は当業界の熟練者には公知であり、例えば渦流法(DIN−EN−ISO2360、DIN50984)によりサーフィックス(R)層厚測定器(フィニックス社)を用いて行われる。
【0015】
この基材上に存在する層のBET比表面積は、一般的には10〜200m2/gであり、好ましくは20〜100m2/g、特に好ましくは30〜80m2/gである。比表面積の測定方法は当業界の熟練者には既知であり、例えばN2吸着等温線(DIN66131)からブルナウアー・エメット・テラー(BET)法で行われる。
【0016】
光触媒活性金属酸化物として好ましく用いられる二酸化チタンの平均孔径は一般に0.1〜20nmであり、好ましくは1〜15nm、特に好ましくは2.5〜10nmである。孔径の測定方法は当業界の熟練者には既知であり、例えばBJH法である。
【0017】
本発明の方法で製造される光触媒Pは、少なくとも一種の共触媒を含む。本発明の方法のある好ましい実施様態においては、この少なくとも一種の共触媒が、元素周期律表(国際純正応用化学連合の)の第3〜12族元素、ランタノイド、アクチノイド、およびこれらの混合物から選ばれ、好ましくはVとZr、Ce、Zn、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Ru、Rh、La、およびこれらの混合物からなる群から選ばれ、極めて好ましくはPd、CuまたはPtまたはこれらの混合物から選ばれる。本発明により製造される光触媒Pの上に存在する共触媒は、元素状であっても、化合物として存在してもよいが、好ましくは酸化物として存在する。共触媒として好ましく存在するパラジウムは、元素状で存在することが好ましい。他の好ましい実施様態において共触媒として存在する銅は、酸化銅(I)Cu2Oとして存在することが好ましい。
【0018】
この少なくとも一種の共触媒は、光触媒P上に光触媒Pが十分に高い光触媒活性を示すような量で、例えば光触媒Pの合計量に対して0.001〜5重量%の量で、好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%の量で存在する。
【0019】
以下に、本発明の光触媒Pの製造方法の各工程を詳細に説明する。
【0020】
工程(A):
本発明の方法の工程(A)は、少なくとも一種の基材を、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を含む電解液で電気化学的処理して少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を得ることからなる。
【0021】
原理的には、本発明の方法の工程(A)は、DE19841650A1に記載の方法で行われる。したがって、DE19841650A1の開示は、そのすべてが本発明の一部となる。
【0022】
ある好ましい実施様態においては、工程(A)での電気化学的処理が、陽極酸化、特に好ましくはスパーク放電を伴う陽極酸化である。このために、一般に少なくとも一種の基材が、相当する電解液に入れられ電気化学的処理を受ける。
【0023】
工程(A)で用いられる電解液は、一般的には少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の層を製造するのに必要な成分を含んでいる。ある好ましい実施様態においては、水性の電解液が本発明の方法の工程(A)で使われる。即ち、用いる溶媒が水である。
【0024】
ある好ましい実施様態においては、好ましくは工程(A)の水性電解液が、錯化剤、アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる一個以上の成分を含む。
【0025】
好ましい錯化剤は、少なくとも一個の=N−CH2−COOH基をもつN−キレート剤であり、例えばエチレンジアミンテトラアセテート・二ナトリウム塩(EDTA・Na2)、ニトリロトリアセテート・三ナトリウム塩(NTA・Na3)、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるものである。少なくとも一種の錯化剤が、例えば濃度が0.01〜5mol/lで、好ましくは0.05〜2mol/l、特に好ましくは0.075〜0.125mol/lで、本発明の方法の工程(A)で用いる電解液に存在する。
【0026】
本発明の方法の工程(A)で用いられる好ましくは水性の電解液は、好ましくは少なくとも一種のアルコールを、好ましくは第二級のまたは第三級のアルコール、例えばイソプロパノール、またはこれらの混合物を、例えば0.01〜5mol/lの濃度で、好ましくは0.02〜2mol/l、特に好ましくは0.55〜0.75mol/lの濃度で含んでいる。
【0027】
基材に光触媒活性金属酸化物として二酸化チタンが塗布される好ましい実施様態では、少なくとも一種のチタンアルコキシド、例えばテトラエチルオルトチタネートまたはその混合物が、本発明の方法の工程(A)の電解液中で使用されることが好ましい。
【0028】
この少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物、特に少なくとも一種のチタンアルコキシレートは、一般に工程(A)が好ましく進行するような濃度で、好ましくは0.01〜5mol/lの濃度で、好ましくは0.02〜1mol/l、例えば0.04〜0.1mol/lの濃度で存在する。
【0029】
また、当業界の熟練者には既知の他の添加物が、例えば緩衝剤物質、好ましくはアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムアセテート、およびこれらの混合からなる群から選ばれる塩類が、工程(A)の電解液中に存在してもよい。これらは、例えばプロセス中で電解液のpHを適当な範囲に維持するために加えられる。必要に応じて存在するpH緩衝剤物質は、所望pHを与える量で存在する。好ましくは、これらの化合物は、0.001〜0.1mol/lの濃度で、特に好ましくは0.005〜0.008mol/lの濃度で存在する。
【0030】
他の好ましい実施様態においては、水に加えて他の溶媒が、例えばアセトンなどのケトンが、この電解液中に存在していてもよい。これらの助溶媒は、好ましくは0.01〜2mol/lの量で、好ましくは0.2〜0.8mol/l、特に好ましくは0.3〜0.7mol/lの量で存在する。
【0031】
スパーク放電を伴う陽極酸化による電気化学的処理は、原理的には当業界の熟練者には公知である。以下に、本発明の方法の工程(A)の好ましいプロセスパラメーターを説明する。
【0032】
本発明の方法の工程(A)において、そのデューティファクター(tcurrent/tcurrentless)vtは、一般に0.1〜1.0であり、好ましくは0.3〜0.7である。周波数は、一般に1.0〜2.0kHzであり、好ましくは1.2〜1.8kHzである。本発明の方法の工程(A)中での電圧走査速度dU/dtは、一般に10〜100V/sであり、好ましくは15〜50V/s、特に好ましくは25〜40V/sである。工程(A)は、一般的には、電圧が10〜500Vで、好ましくは100〜450V、特に好ましくは150〜400Vで実施される。本発明の方法の工程(A)中での塗装時間は、基材の大きさに依存するが、例えば10〜500秒であり、好ましくは50〜200秒、特に好ましくは75〜150秒である。本発明の方法の工程(A)において、電流値Iは、一般的には0.5〜100Aであり、好ましくは1〜50A、特に好ましくは2〜25Aである。
【0033】
本発明の方法の工程(A)において析出する少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の量は、上記に製造パラメーターの一式に依存し、例えば1〜50mg/cm2である。工程(A)で形成される少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物を含む層は、一般的には上述の特性をもつ。この点での詳細が、DE19841650A1に開示されている。
【0034】
本発明の方法のある好ましい実施様態においては、工程(A)に先立って、基材が脱脂される。この目的のための方法は当業界の熟練者には公知である。例えば、基材を、少なくとも一種の表面活物質を含む水溶液で、必要なら同時に熱及び/又は超音波をかけながら処理できる。このような水溶液での処理の後で、工程(A)の電気化学的処理の前に、脱脂された基材を適当な溶媒で、好ましくは水で洗浄する。
【0035】
本発明の方法の工程(A)によれば、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材が得られる。本発明によれば、これを直接工程(B)で使用することもできる。本発明によれば、工程(A)の基材を、適当な溶媒で、好ましくは水で洗うこともできる。また、工程(A)で得られる塗装基材を好ましくは、例えば100〜600℃の温度の、好ましくは200〜500℃、特に好ましくは300〜450℃の温度の熱処理にかけることができる。この塗装基材の熱処理は、一般には十分長い時間で、例えば0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間行われる。この熱処理は、低温で行っても加熱しながら行ってもよい。本発明によれば、加熱は、例えば加熱速度の15〜30℃/分で行われる。したがって本発明はまた、工程(A)で得られる塗装基材を熱処理する本発明の方法に関する。
【0036】
工程(B):
本発明の方法の工程(B)は、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を、少なくとも一種の共触媒の少なくとも一種の前駆化合物を含むもう一つの電解液中で光化学的処理して触媒Pを得る工程を含む。
【0037】
一般に、本発明の方法の工程(B)の電解液は、本発明の方法の工程(B)の少なくとも一種の共触媒を少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材上に塗布するのに必要なすべての成分を含んでいる。
【0038】
好適な共触媒は、上述のとおりである。これらの共触媒用に好適な前駆化合物は、一般に本発明の方法の工程(B)の条件下で相当する共触媒に変換されるすべての化合物である。例えば、共触媒として好ましく用いられる上述の金属の塩及び/又は錯化合物を、この少なくとも一種の共触媒用に好適な前駆化合物としてあげることができる。特に好適な塩の例としては、有機モノカルボン酸またはジカルボン酸の塩、特に蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸の塩やこれらの混合物があげられる。フッ化物や塩化物、臭化物などのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、またはこれらの混合物も好適である。酢酸塩またはハロゲン化物が、特に塩化物が特に好ましく、工程(B)で少なくとも一種の共触媒用の前駆化合物として用いられる。少なくとも一種の共触媒用に極めて好ましい前駆化合物は、Cu(OOCCH32、K2PdCl4、HAuCl4、K2PtCl4、lrCl3、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。この少なくとも一種の前駆化合物は、一般に本発明の方法の工程(B)の電解液中に0.1〜20mmol/lの濃度で、好ましくは0.5〜1mmol/lの濃度で存在する。
【0039】
水性電解液を工程(B)で使用することが好ましく、即ち工程(B)の電解液に使用する溶媒は水である。この少なくとも一種の共触媒の少なくとも一種の前駆化合物に加えて、必要なら当業界の熟練者には既知の他の添加物が工程(B)の電解液中に存在していてもよい。例えば、工程(B)の電解液中に存在する前駆化合物が、酸の添加、例えばHNO3の、例えば0.1〜10体積%の濃度での添加で、安定化されていてもよい。
【0040】
本発明の方法の工程(B)の光化学的処理は、好ましくは光への暴露により、特にUV光への暴露により行われる。本発明において、UV光は、高エネルギー電磁線を、特に波長が200〜400nmである光を意味するものとする。本発明によれば、工程(B)で好ましく使われるUVが、適当なUVランプで、例えばXe(Hg)アーク灯、ダイオードアレイおよびこれらの組み合わせで生成される。本発明によれば、上記好ましい波長に加えて他の波長を持つ他の高エネルギー電磁波を使用することもできる。工程(B)での光の強度、特にUV光の強度は、一般に0.1〜30mW/cm2であり、好ましくは0.5〜10mW/cm2、特に好ましくは2〜5mW/cm2である。
【0041】
本発明の方法の工程(B)は、例えば工程(A)で得られた少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を適当な反応器中で工程(B)の電解液に接触させて行われる。本発明によれば、当分野の熟練者には既知のいずれかの反応器、例えばセルをこの反応器として使用できる。特に、用いるUV光の波長範囲で透明な反応器が用いられる。
【0042】
工程(B)の電解液中の基材をUV光に暴露するために、少なくとも一個のUV光源がセルから適当な距離に置かれる。この暴露は、十分な量の共触媒を基材に塗布するのに充分な期間、例えば1〜200分、好ましくは1〜30分、特に好ましくは3〜10分間行われる。
【0043】
工程(B)では、少なくとも一種の共触媒が、少なくとも一種の基材上に存在する少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物を含む層に塗布される。例えば、1時間に30〜80μg、好ましくは40〜60μg、特に好ましくは55μgのPd(0.52μmol)が、あるいは30〜80μg、好ましくは40〜60μg、特に好ましくは57μgのCu(0.90μmol)が、0.8cm×4cmの支持体上に析出する。
【0044】
以下、実施例を基に本発明を説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1:二酸化チタンの塗布(工程(A))
本発明によれば、0.8cm×4cmのアルミニウムシートまたはチタンシートに、DE19841650の方法で二酸化チタンを塗布する。この電気化学的塗装に続いて、400℃の温度で加熱速度が20℃/分で熱処理を行う。これらの塗装基材のプロセスパラメーターと特性を表1にまとめる。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例2:共触媒の塗布(工程(B))
実施例1で得られた二酸化チタンが塗布されたチタン基材を、光析出にかける。このために、L.O.T.オリエル社の300ワットXe(Hg)アーク灯を用いる。光の強度は2.3mW/cm2である。用いる反応容器は、層厚が13mmのセルである。このセルに6mlの上記前駆体溶液を入れる。酢酸銅(II)Cu(OOCCH32とカリウムテトラクロロパラデードK2PdCl4を前駆化合物として用いる。H2Oを溶媒として用いる。K2PdCl4の場合、1体積%の濃HNO3を安定化のために添加する。これらの試験の結果を以下に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
実施例3.
光触媒活性の測定
試験の内容
支持体に固定された触媒(0.8cm×4cm)と3.3mlのCH3OH水溶液(50体積%)を光触媒活性測定用のミニ反応器に入れる。暴露の前に、5分間アルゴンを反応混合物にフラッシュする。反応器の全量は9.3mlであり、365±5nmで光強度が6mW/cm2で暴露する。生成する水素量の測定のため、15分毎に250μlの試料を反応器気相から抜き出す。この中の水素含量を、ガスクロマトグラフ(バリアンVP−3800;5Aモレキュラーシーブ;キャリヤーガス:Ar)中で測定する。
【0050】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材と少なくとも一種の共触媒とからなる光触媒Pの製造方法であって、少なくとも、
(A)少なくとも一種の基材を、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物の少なくとも一種の前駆化合物を含む電解液で電気化学的処理して、少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を得る工程と、
(B)該少なくとも一種の光触媒活性金属酸化物が塗布された基材を、該少なくとも一種の共触媒の少なくとも一種の前駆化合物を含む他の電解液中で光化学的処理して該光触媒Pを得る工程とからなる方法。
【請求項2】
工程(A)の電気化学的処理が陽極酸化である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(B)の光化学的処理が光暴露により行われる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記基材が、金属と半導体、ガラス基材、セラミック基板、セルロース繊維やプラスチック基材、好ましくは電気伝導性プラスチック基材、およびこれらの混合物または合金からなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記少なくとも一種の触媒活性金属酸化物が二酸化チタンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記少なくとも一種の共触媒が、元素周期律表(IUPAC)の第3〜12族の元素、ランタノイド、アクチノイド、およびこれらの混合物から選ばれる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(A)で得られる塗装基材が熱処理される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(A)が100〜450Vの電圧で行われる請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(B)での光の強度が0.5〜10mW/cmである請求項3〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−500843(P2013−500843A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516790(P2012−516790)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059312
【国際公開番号】WO2011/000885
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】