説明

光触媒材料及び当該材料を含むガラスシート又は光電池

本発明は、ガラス基材の一方の面の少なくとも一部に下にある面の最大15%を覆う二酸化チタンからなる光触媒コーティングを備えたガラス基材を含む材料であって、前記光触媒コーティングが相互接続されたストランドの二次元網状構造の形態である材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒コーティングを備えたガラス基材を含む材料の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒コーティング、特には二酸化チタンに基づく光触媒コーティングは、それを備えた基材に自己洗浄特性及び防汚特性を付与することが知られている。2つの特性はこれらの有利な特徴の起源である。酸化チタンは第一に光触媒であり、すなわちそれは適切な放射線、一般的には紫外線のもとで有機化合物の分解反応を触媒することができる。この光触媒活性は、電子正孔対の生成によって層の内部で開始される。さらに、二酸化チタンは、この同じタイプの放射線を照射された場合には極めて顕著な親水性を有する。時に「超親水性」と記載されるこの高い親水性により、無機物の汚れを水の流出下、例えば雨水の流出下で除去することができる。このような材料、特にはグレージングユニットが、例えば欧州特許出願公開第0850204号において記載されている。
【0003】
二酸化チタンは高い屈折率を有し、それが光触媒コーティングを備えた基材に関して高い光反射率をもたらす。このことは、建物用のグレージングユニットの分野において欠点を構成し、光起電材料への透過を最大にしそれゆえ太陽放射の全体の吸収及び反射を最小限に抑えることが必要な光電池の分野ではなおさら欠点を構成する。しかしながら、汚れの堆積は光電池の効率を1年あたり約6%低下させうるので、光電池に光触媒コーティングを提供する必要性がある。この数字は明らかに電池の地理的な位置に依存している。
【0004】
光反射率を低減するために、光触媒コーティングの厚さを低減することができるが、これはその光触媒活性を犠牲にしてなされる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、高い光触媒活性と低い光反射率の両方を組み合わせた酸化チタンに基づく光触媒材料を提案することである。
【0006】
この目的のために、本発明の1つの主題は、ガラス基材の一方の面の少なくとも一部に下にある面の最大15%を覆う二酸化チタンに基づく光触媒コーティングを備えたガラス基材を含む材料であって、前記光触媒コーティングが相互接続されたストランドの二次元網状構造の形態である材料である。
【0007】
本発明の別の主題は、本発明による材料を得るための方法である。この好ましい方法は、
ガラス基材上にマスク層を堆積させる工程、
隙間の二次元網状構造が得られるまでマスク層を乾燥させる工程、
マスクでコーティングされた基材上に二酸化チタンに基づくコーティングを堆積させる工程、
マスク層を除去する工程
を含む。
【0008】
マスク層の乾燥はその収縮を引き起こし、亀裂が生じることで隙間の二次元網状構造が作り出され、それが続いて堆積される二酸化チタンによって満たされる。
【0009】
本発明のコーティングによる低い被覆率によって、光反射に関する酸化チタンのマイナスの影響を大幅に低減することができる。しかしながら、ましてや酸化チタンの表面量はストランドの高さによって部分的に決定され、それを多くすることができるので、光触媒活性は高いままであることが見出された。酸化チタンの光触媒作用によって生成したフリーラジカルは、最大数μm又は数十μmに及ぶ非常に長い距離にわたって(酸化チタンによって覆われていない)下にある表面上に拡散することができると考えられる。したがって、酸化チタンによって覆われていない表面に高い光触媒活性と超親水性を付与することが可能である。
【0010】
好ましくは、基材はガラスシートである。このシートは平坦であるか又は曲がっていてもよく、任意のタイプの寸法を有することができ、特には1m超の寸法を有することができる。ガラスはソーダ石灰シリカタイプであることが好ましいが、他のタイプのガラス、例えばホウケイ酸ガラス又はアルミノケイ酸塩も同様に使用することができる。ガラスはクリア若しくはエクストラクリアであるか又は着色されていてもよく、例えば、青色、緑色、琥珀色、青銅色、又は灰色に着色されていてもよい。ガラスシートの厚さは、典型的には0.5〜19mm、特には2〜12mm、又は4〜8mmである。光電池の分野では、ガラスは好ましくはエクストラクリアであり、好ましくは最大150ppm、100ppm、さらには90ppmの酸化鉄の合計の質量含有量を含み、又は最大0.2、特には0.1のレドックス、さらにはゼロのレドックスを含む。「レドックス」という用語は、酸化第一鉄(FeOの形態で表される)の質量含有量と酸化鉄(Fe23の形態で表される)の合計質量含有量との比を意味すると解される。
【0011】
好ましくは、反射を最小限に抑える目的のために、光触媒コーティングは、下にある表面の最大10%、8%、又は5%を覆う。
【0012】
本発明によるコーティングを構成するストランドの網状構造(それゆえ同様に隙間の網状構造)は、主として基材の面において広がっているので「二次元」であると言われる。本明細書の残りの部分においてより詳しく説明されるように、ストランドはまた、基材の面に対して直角な方向においてコーティングの厚さに対応する特定の「高さ」を有する。
【0013】
本発明によるコーティングを構成する二次元網状構造を形成するストランドは、好ましくは二酸化チタンから構成される。二酸化チタンは、好ましくは、最も活性な形態であるアナターゼ形態において少なくとも部分的に結晶化されている。アナターゼ相とルチル相の混合物も同様に可能である。二酸化チタンは純粋なものであってもよいし又はドープされていてもよく、例えば、遷移金属(例えばW、Mo、V、Nb)、ランタニドイオン、又は貴金属(例えば白金若しくはパラジウムなど)でドープされていてもよく、さらには窒素、炭素若しくはフッ素原子でドープされていてもよい。これらの種々のドーピングにより、材料の光触媒活性を向上させるか又は酸化チタンのバンドギャップを可視光の範囲に近い波長若しくはこの範囲内の波長にシフトさせることが可能である。
【0014】
相互接続されたストランドの二次元網状構造(それゆえ同様に隙間の二次元網状構造)は、好ましくはランダム及び/又は非周期的である。
【0015】
「ストランド」という用語は、基材の面において「長さ」と称される寸法の1つが、基材の面において配置される他の寸法すなわち「幅」と称される他の寸法及び基材の面に対して直角な方向に配置される寸法すなわち「高さ」と称される寸法よりもはるかに長い材料の三次元堆積物を意味すると解される。
【0016】
ストランドの幅は好ましくは0.5〜50μm、特には0.5〜5μm、又は最大1μmである。本発明による方法が使用される場合には、ストランドの幅は、乾燥によってマスク層に作り出される隙間の幅に対応する。
【0017】
ストランドの高さ(それゆえ光触媒コーティングの厚さ)は好ましくは5〜1000nm、特には10〜150nmである。ストランドの高さを高くすることで、コーティングによって覆われる表面に本質的に依存する光反射を相当に増加させることなく、コーティングの光触媒活性を向上させることが可能となる。低い被覆のコーティングが非常に少量の材料の堆積によって得られる解決策とは異なり、本発明は、低いレベルの被覆率にもかかわらず、相当な厚さを得ることが可能であり、それゆえ高い光触媒活性を得ることが可能であるという点で注目すべきものである。ストランドの高さは、マスク層の厚さによってのみ制限される。
【0018】
「網状構造の開口」という表現は、光触媒コーティングによって覆われない、ストランドの部分によって範囲を定められる、下にある表面をさらす領域を意味すると解される。本発明による方法が使用される場合には、網状構造の開口は、乾燥後のマスク層によって先に覆われた領域に対応する。典型的には、網状構造の開口の大部分は、ストランドの3つ、4つ又は5つの部分によって範囲を定められる。好ましくは、網状構造の開口の少なくとも80%又は90%がストランドの4つの部分によって範囲を定められる。網状構造の開口の少なくとも80%又は90%について、2つの隣り合うストランド部分によって各コーナーで形成される角度は好ましくは60〜110°、特には80〜100°である。
【0019】
本発明による方法は、壁が基材の表面に直角又は実質的に直角な隙間を得ることを可能にするという点で注目されるべきである。壁と基材の表面との間で形成される角度は典型的には80〜100°、特には85〜95°である。それゆえ、続いて堆積された二酸化チタンは、隙間の幅が非常に小さい場合でさえ容易に基材の表面に達することができる。それゆえ、光の反射に関する作用が極めて制限された非常に微細なストランドを得ることが可能である。
【0020】
ストランド(それゆえ同様に隙間)の幅及び高さは、一般的にはコーティングの表面全体にわたって均一である。好ましくは、ストランドの最大幅とストランドの最小幅の比は、最大4、特には最大2である。同様に、網状構造の開口のサイズは好ましくは比較的均一であり、最も大きな開口と最も小さな開口の表面積比は有利には最大4又は最大2である。
【0021】
反射防止コーティングは好ましくは基材と光触媒コーティングの間に配置され、それによって本発明による材料の反射率をさらに低減することが可能である。「反射防止コーティング」という表現は、基材の光反射率よりも低い光反射率を達成することができるコーティングを意味すると解される。反射防止コーティングは、基材の表面全体を覆うという意味で、通常、完全に覆っている。それゆえ、本発明による方法では、反射防止コーティングは、一般的にはマスク層の堆積前に堆積される。
【0022】
反射防止コーティングは、層のスタック(積み重ね)から構成することができ、高い屈折率の層と低い屈折率の層の交互配列から構成することができる。例として、反射防止コーティングは、H/L/H/Lタイプ(それぞれのH(高屈折率)層は例えば酸化チタン又は窒化ケイ素からなり、それぞれのL(低屈折率)層はシリカからなる)の4つの層を有するスタックであってもよい。このような干渉フィルターでは、層の屈折率及び厚さは、相殺的干渉を作り出すよう選択される。反射防止コーティングは、特には国際公開第01/94989号又は国際公開第2007/077373号に記載のスタックであってもよい。
【0023】
第2の実施態様によれば、反射防止コーティングは、屈折率が基材の屈折率よりも低い層から構成することができる。反射防止コーティングは、ガラス基材と完全に適合するシリカ層であることが好ましいが、他の酸化物、例えばアルミニウム、ジルコニウム又はスズの酸化物なども可能である。その屈折率を低減するために、このコーティングは好ましくは多孔質である。その気孔率は有利には10〜80%である。気孔は開放したものであってもよいし又は閉鎖したものであってもよく、好ましくは閉鎖したものである。気孔は好ましくはメソ細孔(平均直径が2〜50nm)であるか又はさらに良いのはマクロ孔(平均直径が好ましくは50nm〜100nm)である。このような気孔(メソ細孔又はマクロ孔)は、コーティングの構成材料の有機金属前駆体(例えば、シリカ層の場合にはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS))と気孔形成剤を用いたゾルゲル法によって得ることができる。気孔形成剤は、沈降及び凝縮によってコーティングの形成の際に捕捉され、次いでコーティングの焼成の際に除去され、したがって所望の気孔が生成される。それゆえ、気孔形成剤のサイズ、形状及び量は、気孔の直径、その形状及び全体の気孔率に直接的に影響する。気孔形成剤の中でも、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又はブロックコポリマーの形態の界面活性剤(例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン)、ポリマー、特には(例えばポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレンなどからなる)ビーズ形態のポリマー、又はナノエマルション中の液滴に自己組織化された有機液体相(例えばパラフィンオイル)を挙げることができる。反射防止コーティングの幾何学的厚さは、好ましくは10nm〜10μm、特には50nm〜1μm又は100〜200nmである。
【0024】
第3の実施態様によれば、反射防止コーティングは、部分的又は完全に脱アルカリ化されたガラス、特には酸との反応により部分的又は完全に脱アルカリ化されたガラスの表面部分によって構成することができる。
【0025】
マスク層の堆積は、好ましくはコロイド粒子の分散体を用いて実施される。溶媒中に分散したこれらの粒子は、ディップコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、フローコーティング又は層流コーティングなどのプロセスによって基材上に堆積される。溶媒は乾燥によって除去され、マスク層内に引張応力を生じさせ、応力緩和により隙間が形成される。乾燥後、マスク層は、隙間によって分離された粒子のクラスターから構成される。
【0026】
溶媒は、好ましくは主として水性であるか又は水から構成される。種々の公知の手段、すなわちpH制御、界面活性剤の添加などが、必要に応じて分散体を安定化させ、したがって粒子の凝集を避けるために使用することができる。
【0027】
分散体及びマスク層中の粒子の平均直径は、好ましくは40〜500nm、特には50〜300nm、さらには80〜250nmである。
【0028】
分散体中の粒子の濃度は、好ましくは5〜60wt%、特には20〜40wt%である。
【0029】
第1の実施態様では、粒子はポリマーであり、好ましくは水に不溶性である。ポリマーは、好ましくはアクリルポリマー又はコポリマー、例えばスチレン/アクリルコポリマーである。ポリマーはまた、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエステル、又はこれら種々のポリマーの混合物であってもよい。
【0030】
乾燥の際のマスクの形成を促進させるために、乾燥は、好ましくはポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度で実施される。Tgとの差は好ましくは少なくとも10℃又は20℃である。
【0031】
第2の実施態様では、粒子は無機物、特には酸化物、例えばシリカ、アルミナ又は酸化鉄に基づく無機物である。
【0032】
乾燥は、好ましくは周囲温度に近い温度、例えば20〜30℃で実施される。乾燥は、通常、大気圧で行われるが、減圧下で行うこともできる。
【0033】
乾燥後、隙間の網状構造は、洗浄することができ、例えばプラズマ源を用いて大気圧で洗浄することができる。
【0034】
次いで、光触媒コーティングは、種々の公知技術、例えばスパッタリング、化学気相成長(CVD)、特には減圧下でのプラズマ化学気相成長(PECVD)、大気圧下でのプラズマ化学気相成長(APPECVD)、蒸発、液相熱分解、又はゾルゲルタイプのプロセスによって堆積することができる。
【0035】
スパッタリングプロセス、特には磁場支援のスパッタリングプロセス(マグネトロンスパッタリング)では、励起されたプラズマ種によって、コーティングされるべき基材と反対側に配置されたターゲットから原子が取り出される。酸化チタン層の堆積については、ターゲットは、特には金属チタン又はTiOxからなるごとができ、プラズマは酸素を含有する必要がある(それは反応性スパッタリングと称される)。
【0036】
一般的にはその頭文字CVDによって表示される化学気相成長は、基材の熱作用のもとで分解する気体状前駆体を用いた熱分解プロセスである。例として、酸化チタンの場合には、前駆体は、四塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、又はチタンテトラオルトブトキシドであることができる。このタイプのプロセスは、マスク層が高温に耐えることができる場合、特にはそれが無機の性質である場合に使用される。一方で、PECVD(減圧下)及びAPPECVD(大気圧下)のプロセスでは、前駆体の分解はプラズマの作用下で行われ、熱の作用下では行われないので、有機の性質のマスク層を使用することが可能である。
【0037】
堆積は、一般的には、マスク層でコーティングされた基材の表面全体にわたって実施される。したがって、酸化チタンはマスク層の表面と隙間の両方に堆積される。
【0038】
次いで、マスク層は、酸化チタンに基づくストランドの二次元網状構造をさらすために除去される。
【0039】
マスク層の除去は、好ましくは溶媒、例えば水、アルコール又はアセトンを用いて実施される。除去の際の温度は周囲温度でよいが、弱い加熱も可能である。
【0040】
除去工程に続いて、熱処理、特には焼き戻し、曲げ若しくはアニーリングタイプの熱処理、又は特には二酸化チタン層がスパッタリングによって堆積された場合にはレーザー放射若しくは火炎を用いた迅速な処理を行うことができる。この熱処理は、酸化チタンをアナターゼ形態に結晶化するためのものである。迅速な処理は、好ましくは国際公開第2008/096089号に記載されているような処理である。
【0041】
本発明による材料は、好ましくは少なくとも80%、85%、さらには90%の(ISO 9050:2003基準の意味の範囲内の)光透過率、及び/又は多くとも5%、特には3%の(ISO 9050:2003基準の意味の範囲内の)光反射率を有する。
【0042】
本発明の別の主題は、本発明による材料を少なくとも1つ含むグレージング又は光電池である。
【0043】
グレージングは、単一グレージングであってもよいし、又はそれがガス充填スペースを提供する複数のガラスシートを含むことができるという意味で、多重グレージング(特には二重若しくは三重グレージング)であってもよい。グレージングはまた、積層されてもよいし、焼き戻されてもよいし、硬化されてもよいし及び/又は曲がっていてもよい。
【0044】
本発明による材料のもう一方の面又は適切な場合には多重グレージングの別の基材のある面は、別の機能層又は機能層のスタックでコーティングすることができる。それは特には別の光触媒層であってもよい。それはまた、熱的な機能、特には太陽光保護を有する層若しくはスタック、又は低放射率層若しくはスタック、例えば誘電体層によって保護された銀層を含むスタックであってもよい。それはまた、ミラー層、特には銀に基づくミラー層であってもよい。最後に、それは、カーテンウォールとして知られる壁外装用パネルを作るためにグレージングを不透明にすることを意図したラッカー又はエナメルであることができる。カーテンウォールは、不透明でないグレージングの側の壁に配置され、美観の観点から全体的に光沢がありそして均一な壁を得ることを可能とする。
【0045】
本発明による光電池では、本発明による材料は好ましくは電池の前面の基材であり、すなわち、太陽放射が通過する第1の基材である。その場合、光触媒コーティングが、自己洗浄効果を有効に示すことができるように外側に配置される。
【0046】
光電池としての適用について、電池のエネルギー効率を最大にするために、累積的に又は二者択一的に幾つかの改善を行うことができる。
・ガラスシートは、有利には本発明によるコーティングを備えた面と反対側の面を、少なくとも1つの薄い透明でかつ導電性の層、例えばSnO2:F、SnO2:Sb、ZnO:Al又はZnO:Gaに基づく少なくとも1つの薄い透明かつ導電性の層でコーティングすることができる。これらの層は、種々の堆積プロセス、例えば化学気相成長(CVD)又はスパッタリングによる堆積、特に磁場で支援される場合にはマグネトロンスパッタリングプロセスによって基材上に堆積することができる。CVDプロセスでは、ハロゲン化物又は有機金属前駆体が気化され、キャリヤーガスによって高温のガラスの表面に運ばれ、それらが熱の作用下で分解して薄い層を形成する。CVDプロセスの利点は、ガラスシートを形成するためのプロセスの範囲内で、特にはそれがフロートプロセスの場合に、CVDプロセスを使用することが可能であるということである。したがって、ガラスシートがスズ浴上、スズ浴の出口又はガラス焼きなまし炉の中にあるときに、すなわちガラスシートが機械応力を取り除くためにアニーリングされているときに層を堆積することが可能である。
・透明でかつ導電性の層でコーティングされたガラスシートは、光電池を形成するために、非晶質若しくは多結晶シリコン、カルコパイライト(特にはCISすなわちCuInSe2若しくはCIGSすなわちCuInGaSe2タイプ)、又はCdTeに基づく半導体でコーティングすることができる。この場合、CVDプロセスの別の利点は、より大きな粗さを得ることにあり、それは光捕捉現象を生じさせ、半導体によって吸収される光子の量を増大させる。
・ガラスシートの表面は、模様付けされていてもよく、例えば国際公開第03/046617号、同第2006/134300号、同第2006/134301号又は同第2007/015017号において記載されているようなモチーフ(特にはピラミッド形のモチーフ)を有することができる。これらの模様付けは、一般的にはガラスを形成するための圧延プロセスを用いて得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
(原文に記載なし)
【0048】
本発明は、以下の限定的でない例を考慮してより理解されるであろう。
【0049】
公知のスパッタリング技術により、商標SGG Diamant(登録商標)のもと出願人によって販売されている4mm厚さのエクストラクリアガラスからなる基材上に、以下の4つの層(各層の幾何学的厚さは括弧内に示されている)から構成される反射防止コーティングが堆積される。
ガラス/Si34(18nm)/SiO2(23nm)/Si34(115nm)/SiO2(90nm)
【0050】
基材の両面に反射防止コーティングを堆積したために、光透過率は97.4%である。
【0051】
マスク層は以下のようにしてこの基材上に堆積される。
【0052】
使用されたコロイド分散体は、DSM NeoResinsによりNeoCryl(登録商標)XK−52の名称で販売されているアクリルコポリマーの水性分散体97%とDSM NeoResinsによりNeoCryl(登録商標)XK−240の名称で販売されているアクリルコポリマーの水性分散体3%の混合物である。
【0053】
第1の分散体は、水60wt%と、平均直径が約70nmであるアクリルコポリマーの粒子40wt%とから構成される。ポリマーのガラス転移温度は115℃である。25℃における分散体の粘度は15mPa・sであり、そのpHは5.1である。
【0054】
第2の分散体は、水48wt%と、平均直径が約180nm(公知の方法により光散乱を用いて測定される)であるアクリルコポリマーの粒子52wt%とから構成される。ポリマーのガラス転移温度は−4℃である。25℃における分散体の粘度は160mPa・sであり、そのpHは7.5である。
【0055】
堆積は30cm/分の速度でディップコーティングにより実施される。乾燥は周囲温度で行われる。乾燥後のマスク層の厚さは約7〜10μmである。
【0056】
次いで、乾燥によって作り出された隙間がN2/O2プラズマを用いて洗浄される。
【0057】
二酸化チタンの層は、アルゴン及び酸素プラズマのもとで金属チタンからなるターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングにより乾燥したマスク層を備えた基材上に堆積される。
【0058】
得られた二酸化チタンの厚さ(ストランドの高さ)は試料に応じて50nm又は100nmである。
【0059】
次いで、マスク層が脱塩水とエタノールの混合物を用いて除去される。
【0060】
次いで、得られた材料は620℃の温度で12分間アニーリングされる。
【0061】
こうして、光触媒コーティングが、基材の表面にわたって広がる相互接続されたストランドの網状構造の形態で得られる。表面の約10%がコーティングで覆われる。ストランドの幅は典型的には5〜15μmで変化する。
【0062】
コーティングの形態は、光学顕微鏡を用いて見られるように図1に表される。この図では、相互接続されたストランドの網状構造(透明)と網状構造の開口(暗色)が見分けられる。
【0063】
光触媒コーティングの追加による光透過率の低下は、50nmの厚さを有するコーティングについて(絶対値として)2%だけであり、100nmの厚さを有するコーティングについて5%である。比較として、同じ厚さの二酸化チタンの完全被覆層は約40%の低下をもたらす。
【0064】
光触媒活性は、紫外線の存在下でメチレンブルーの分解率を測定することによって評価される。メチレンブルーの水溶液を密封したセル内においてコーティングされた基材(当該基材はセルの底面を形成している)と接触した状態に置く。30分間紫外線に曝露した後、メチレンブルーの濃度が光透過率の測定によって評価される。光触媒活性の値(Kbによって示されそしてg・l-1・min-1で表される)は、単位曝露時間あたりのメチレンブルー濃度の減少に対応する。本発明による2つの試料について測定したKb活性は11g・l-1・min-1である。
【0065】
UV照射なしで50°〜60°程度である本発明による試料の水接触角は1時間の照射後に5°に変化する。それゆえ、表面は急速に超親水性になる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材の一方の面の少なくとも一部に下にある面の最大15%を覆う二酸化チタンに基づく光触媒コーティングを備えたガラス基材を含む材料であって、前記光触媒コーティングが相互接続されたストランドの二次元網状構造の形態である、材料。
【請求項2】
前記網状構造がランダム及び非周期的である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記ストランドの幅が0.5〜50μmである、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記ストランドの高さが5〜1000nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
前記網状構造の開口の少なくとも80%がストランドの4つの部分によって範囲を定められる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
反射防止コーティングが前記基材と前記光触媒コーティングの間に配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の材料を少なくとも1つ含むグレージング又は光電池。
【請求項8】
ガラス基材上にマスク層を堆積させる工程、
隙間の二次元網状構造が得られるまでマスク層を乾燥させる工程、
マスクでコーティングされた基材上に二酸化チタンに基づくコーティングを堆積させる工程、
マスク層を除去する工程
を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の材料を得るための方法。
【請求項9】
前記マスク層の堆積がコロイド粒子の分散体を用いて実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化チタンに基づくコーティングがスパッタリングによって堆積される、請求項8又は9に記載の方法。

【公表番号】特表2013−516383(P2013−516383A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547535(P2012−547535)
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050033
【国際公開番号】WO2011/083283
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】