説明

光記録媒体および媒体認識信号の記録方法

【課題】 青色レーザー光で記録・再生を行なう光記録媒体において、良好な主情報記録特性と媒体認識信号特性を両立できるようにする。
【解決手段】 光記録媒体100を、波長300〜450nmのレーザー光を情報面100Aから照射されて主情報を記録されるデータ領域と、情報面100Aに対して反対側の裏面100Bから媒体認識信号記録用レーザー光を照射されて、媒体認識信号を記録されるバーストカッティングエリアとを有する特定記録層105と、特定記録層105に対応して形成された、情報面側からの反射率が裏面からの反射率よりも大きいことを特徴とする特定反射層106とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報記録を行う光記録媒体に関し、さらに詳しくは、書き込み可能な光記録媒体及びそれに対する媒体認識信号の記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R、CD−RW、MO等の各種光記録媒体は、大容量の情報を記憶でき、ランダムアクセスが容易であるために、コンピュータのような情報処理装置における外部記憶装置として広く認知され普及しつつある。さらに、取り扱う情報量の増大により、記録密度をより一層高めることが望まれている。これら光記録媒体は、読み取り専用媒体(以下、ROM媒体と呼ぶことがある)、追記型媒体、書換え型媒体に大別される。ROM媒体においては、情報は基板上に形成された凹凸状のピット等により記録されているが、追記型媒体、書換え型媒体は、レーザーの照射により光学的な特性が変化する材料からなる記録層を有している。記録層の材料としては、有機色素材料や相変化材料等の無機材料が一般に用いられている。
【0003】
一方、光記録媒体の記録密度はレーザー光の集光スポット径に依存している。このため、光記録媒体では、微小領域に集光できる程高い記録密度を得ることができる。この集光スポット径はレーザー光の波長に比例していることが知られており、より短い波長のレーザー光を用いることにより、より高い記録密度が得られる。近年ではレーザー技術の進歩により、400nm前後に波長を有する青色の半導体レーザーが使用可能となり、HD−DVD、Blu−rayなど、これを利用した光記録媒体も提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。本明細書中でこの様なユーザーが記録・再生に使用するレーザー光を適宜「記録再生光」と呼ぶ。また、「青色の記録再生光」の波長は典型的には300〜450nmである。
【0004】
一般に、光記録媒体の記録再生ドライブはCD、DVDを含む複数の媒体に対応するものであるため、光記録媒体をドライブで再生する場合、最初にその媒体がどんな種類ものであるかを認識することが多い。このため、例えばユーザーが情報の記録に使用しないディスク内周部に媒体認識用の簡単な信号(媒体認識信号)を出荷時に記録しておくことが行われている。また、媒体認識信号の一部を利用して情報の不正なコピー防止を行うためのシリアルナンバー等を付加することも行われている。
【0005】
この様な媒体認識信号はトラッキングを行わずに確実に再生を行うことが望ましいため、広い半径領域にわたって記録されるのが普通である。例えばDVDフォーラムによって決められたHD−DVDの規格では、バーストカッティングエリア(Burst Cutting Area)と呼ばれる領域にバーコード状に媒体識別信号を記録するよう規定されている。媒体認識信号は通常各々のディスクによって異なった信号を記録する方式(ユニークID)が取られるため、レーザーを用いた記録装置により記録されるのが普通である。以下、本発明において、バーストカッティングエリアを「BCA」と呼ぶことがあるが、本発明においてBCAとは、媒体認識信号を記録された層のうち記録された部分を意味するものとする。
【0006】
記録情報が主に基板への凹凸ピット形成により記録されるROM媒体においては、スタンパによるプレス加工でROM媒体を大量生産するため、ROM媒体毎にシリアルナンバーを記録することが事実上不可能である。そこで、ROM媒体においては、金属反射膜にレーザー光を照射し、シリアルナンバーを含む媒体認識信号を記録する手法が一般的である(例えば、特許文献3〜5参照)。この手法では、金属反射膜の一部をBCAとして、溶融除去することにより媒体認識信号の記録を可能としている。また、追記型媒体や書換え型媒体も通常金属反射膜を有するため、上記手法によりBCAへの媒体認識信号の記録が可能である。
【0007】
【特許文献1】特開平11−105423号公報
【特許文献2】特開平11−78239号公報
【特許文献3】特開2004−318938号公報
【特許文献4】特開2006−54032号公報
【特許文献5】特開2005−196940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記手法を用いると、金属反射膜の溶融除去された欠損部分において腐食が発生し、光記録媒体としての保存安定性等の信頼性が劣化してしまう場合がある。従って、追記型媒体や書き換え型媒体においては、情報を記録する場合と同様、記録層に媒体認識信号を記録することが好ましい。
【0009】
一方、高密度記録が可能なHD−DVD、Blu−rayにおいては、更なる高密度化を目指し、記録層を複数有する積層型の光記録媒体が実用化され始めている。これらの光記録媒体においては、規格により、記録再生光が光記録媒体に入射する面(以下、「情報面」と呼ぶことがある。)から最も遠い記録層にBCAを設けることが定められている。この場合、情報面側から青色レーザー光を照射し、情報面から最も遠い記録層に媒体認識信号を記録しようとすると、レーザー光のパワーやフォーカス深度等をいくら最適化しても、情報面から最も近い記録層により強く媒体認識信号が記録されてしまうという課題があった。すなわち、記録再生ドライブが、BCAが設けられている記録層として情報面から最も近い記録層を認識してしまうことになり、結果として記録再生ドライブの誤動作を引き起こしてしまう。
【0010】
この課題を解決するためには、媒体認識信号を、情報面と反対側の裏面からレーザー光を照射する方法が挙げられる。しかしながら、裏面からレーザー光を照射する場合、BCAが形成される情報面から最も遠い記録層より手前に、この記録層に対応して形成されている反射層が存在することになる。このため、レーザー光がこの反射層によりほとんど反射されてしまい、記録層に十分なレーザーエネルギーを加えることが出来ず、記録層に媒体認識信号を記録することが非常に困難であるという課題があった。もちろん、記録層ではなく、前述のように反射層を溶融除去することで媒体認識信号の記録は可能であるが、前述の信頼性の劣化という課題がなお残ってしまう。この課題は、裏面からレーザー光を照射する方式を前提とした場合、積層型の記録媒体に限られず、記録層が単層の記録媒体においても同様である。
【0011】
以上の通り、青色レーザー光で記録・再生を行う光記録媒体においては、記録層、特に複数の記録層を持つ媒体に信頼性の高い媒体認識信号を記録することは困難であった。本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、青色レーザー光で記録・再生を行なう光記録媒体において、主情報の記録特性を損なうことなく、情報面に対して反対側の裏面から記録層に媒体認識信号を記録できるようにした光記録媒体、及び、この光記録媒体に対する媒体認識信号の記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、主情報を記録するデータ領域にレーザー光を照射する面(情報面)に対して、反対側の裏面から媒体認識信号記録用レーザー光を照射する方式において、BCAを有する記録層(以下、「特定記録層」と記載することがある。)に対応して形成される反射層(以下、「特定反射層」と記載することがある。)の反射率を、裏面側からの値よりも情報面側からの値を大きくすることで、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、波長300nm以上450nm以下の主情報記録用レーザー光を情報面から照射されて主情報を記録されるデータ領域と、該情報面に対して反対側の裏面から媒体認識信号記録用レーザー光を照射されて、媒体認識信号を記録されるバーストカッティングエリアとを有する特定記録層と、該特定記録層に対応して形成される特定反射層とを備え、該特定反射層の、前記主情報記録用レーザー光の波長における情報面側からの反射率が、裏面側からの反射率よりも大きいことを特徴とする、光記録媒体に存する(請求項1)。
【0014】
このとき、該光記録媒体が、2層以上の記録層を備え、該記録層のうち、前記情報面から最も遠い記録層が該特定記録層であることが好ましい(請求項2)。
【0015】
また、該特定反射層の膜厚が、60nm以上200nm以下であることが好ましい(請求項3)。
【0016】
さらに、該特定反射層の、前記主情報記録用レーザー光の波長における裏面側からの反射率が、55%以上85%以下であることが好ましい(請求項4)。
【0017】
また、前記特定反射層が、組成の異なる複数の層からなることが好ましい(請求項5)。
【0018】
このとき、前記複数の層の内、該特定記録層に最も近い隣接反射層が、Agを85原子%以上含有することが好ましい(請求項6)。
【0019】
さらには、前記複数の層の内、該特定記録層に最も近い前記隣接反射層の膜厚が、30nm以上120nm以下であることが好ましい(請求項7)。
【0020】
また、該特定記録層が、分解温度が100℃以上350℃以下の有機色素、及び/又は、相転移温度が100℃以上350℃以下であるアモルファス半導体を含有することが好ましい(請求項8)。
【0021】
さらに、該バーストカッティングエリアに、溝深さ15nm以上100nm以下、トラックピッチ0.1μm以上0.6μm以下、ランド幅の溝幅に対する比が0.3以上1.2以下である溝が形成されていることが好ましい(請求項9)。
【0022】
本発明の別の要旨は、上述した光記録媒体に対し、前記裏面から波長400nm以上2000nm以下の前記媒体認識信号記録用レーザー光を照射して、前記バーストカッティングエリアに前記媒体認識信号を記録することを特徴とする、媒体認識信号の記録方法に存する(請求項10)。
【0023】
以下に、本発明についてさらに詳細に述べる。
前記の通り、媒体認識信号の記録方法としては、記録層側の面(情報面)から記録光を入射する方法があるが、これとは別に、情報面に対して反対側の裏面から記録光を入射する方法がある。本発明においては、反射層は主情報の記録・再生を良好に行うために青色の記録再生光に対して高い反射率を有することが好ましい。しかし、こういった反射層は、通常、BCAへの記録に用いられる波長600〜850nm程度の赤ないし近赤外のレーザー波長に対しても高い反射率を有する。
【0024】
したがって、従来は、媒体認識信号の記録光を裏面から入射した場合、大部分の記録光が反射されてしまい、反射層の反対側に存在する記録層への媒体認識信号の記録は困難であった。例えば、DVDにおいて反射層の材料として多く用いられる純銀(Ag)では、反射層において95%以上の光が反射されるため、熱として媒体認識信号の記録に使われるエネルギーは投入パワーの5%以下となっていた。さらに、こうした高反射率の反射層は、一般に熱伝導率が高いことにより、熱拡散の速度が速く、記録層が分解するために必要な温度まで上昇しにくいため、媒体認識信号の記録をより困難にしていた。
【0025】
これに対し、本発明者等は、例えば、特定反射層を複数層に分割し反射率の高い材料を用いた層を、BCAを有する特定記録層に隣接する側に備え、裏面側に反射率の低い材料を用いた層を備えることで、主情報記録用レーザー光に対しては高反射率を維持しつつ、媒体認識信号記録用レーザー光に対しては低反射率かつ低熱拡散となる層を備えることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0026】
前述のように、媒体認識信号記録用レーザー光には、主情報記録用レーザー光よりも高い波長を有するものを用いることが一般的であるが、波長が変わっても反射率の大小関係は通常大きく変動しないため、主情報記録用レーザー光における反射率の値を規定することにより、媒体認識信号の記録への影響も予測することが可能である。従って、本発明においては、主情報記録用レーザー光における反射率を用いて発明を規定することとする。
【0027】
また、記録層として適度な分解温度又は相転移温度を有する色素及び/又はアモルファス半導体を用いることにより、上記課題をより確実に解決できることを見出した。
これにより、本発明では、主情報に対応した記録再生光に対しては高い反射率と良好な記録再生特性を維持し、さらに裏面から媒体認識信号を記録しても、反射層を破壊、欠損させることなく良好な媒体認識信号の記録を可能にしたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の光記録媒体によれば、主情報の記録・再生を青色レーザー光で行なうことができると共に、媒体認識信号を記録層に設けられたBCAに良好に記録することが可能である。
また、本発明の媒体認識信号の記録方法によれば、本発明の光記録媒体のBCAに、媒体認識信号を良好に記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明について実施形態を挙げて詳述する。しかしながら、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することができる。
【0030】
[I.光記録媒体]
〔I−1.概要〕
本発明の光記録媒体は、1層の特定記録層と、1層の特定反射層とを備えて構成される。また、本発明の光記録媒体は、特定記録層に加えて別の記録層を1層又は2層以上備えていてもよく、特定反射層に加えて別の反射層を1層又は2層以上備えていてもよい。
特定記録層を含め、記録層には所定の面(情報面)から所定波長を有する主情報記録用レーザー光(即ち、記録再生光)が照射され、この記録再生光によって主情報の記録及び再生が行なわれるようになっている。ただし、記録層のうちでも特定記録層には、主情報に加えて、媒体認識信号が記録されるようになっている。この媒体認識信号を記録する際には、情報面に対して反対側の面(裏面)から媒体認識信号記録用レーザー光(以下適宜「認識信号記録光」という)が照射されて、特定記録層に媒体認識信号が記録されるようになっている。
【0031】
さて、本実施形態では、多層型の光記録媒体を例に挙げ、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての片面2層の光記録媒体の要部を拡大して模式的に表わす断面図であり、図2は、この光記録媒体を模式的に表わす平面図である。なお、このような片面2層の光記録媒体としては、例えば、有機色素を含む2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面入射型の光記録媒体(片面2層HDDVD−R又は片面2層HDDVDレコーダブル・ディスク)などが挙げられる。
図1に示すように、本実施形態の光記録媒体100は、ディスク状の光透過性の第1基板101を備えていて、この第1基板101上に、色素を含む第1記録層102と、半透明の第1反射層103と、紫外線硬化性樹脂からなる光透過性の中間層104と、色素を含む第2記録層105と、第2反射層106と、接着層107と、最外層を形成する第2基板108とが、順番に積層された構造を有している。また、光記録媒体100の第1基板101側の面(これが、データ領域への主情報の記録時に記録再生光109を照射される面となる)が情報面100Aとなり、情報面100Aの反対側に形成された、第2基板側の面が裏面100Bとなっている。
【0032】
また、本実施形態では、第2記録層105が特定記録層として機能し、第2反射層106が特定反射層として機能するようになっている。そして、第2記録層105には、図2に示すようにして、主情報が記録されるデータ領域105Xと、媒体認識信号が記録されるBCA105Yとが形成されている。
【0033】
さらに、図1に示すように、第1基板101及び中間層104上にはそれぞれ凹凸が形成され、これらの凹凸がそれぞれ記録トラックを構成している。即ち、第1基板101及び中間層104がそれぞれ表面に有する凹凸形状(即ち、上記の凹凸の形状)が、記録トラックの形状となっている。
また、光記録媒体100の光情報の記録・再生は、情報面100Aから第1記録層102及び第2記録層105に照射された記録再生光109により行なわれるようになっている。
【0034】
なお、本実施形態において、「光透過性(又は透明)」とは、光情報を記録・再生するために照射される光の波長に対する光透過性を意味するものである。具体的には、光透過性とは、記録再生光109や認識信号記録光などの記録・再生のための光の波長について、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上の透過性があることを言う。一方、記録・再生のための光の波長に対する透過性は、理想的には100%であるが、通常は、99.9%以下の値となる。
【0035】
〔I−2.第1基板〕
第1基板101は通常、第1記録層102に隣接し、最表層を構成する。第1基板101は、光透過性を有し、複屈折率が小さい等、光学特性に優れることが望ましい。また、第1基板101は、射出成形が容易である等成形性に優れることが望ましい。さらに、第1基板101は、吸湿性が小さいことが望ましい。更に、第1基板101は、光記録媒体がある程度の剛性を有するよう、形状安定性を備えることが望ましい。
【0036】
第1基板101を構成する材料は本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ガラス等が挙げられる。なお、第1基板101を構成する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0037】
第1基板101の形状にも制限は無い。ただし、通常は、中央にセンターホールHを有するディスク状に形成される(図2参照)。なお、通常はこの第1基板101の形状により光記録媒体100の形状も決定されることになる。
【0038】
また、図1に示すように、本実施形態では、第1基板101には凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられている。そして、この凹凸が、溝及びランドを形成する。これらの凹凸は、隣接する第1記録層102に形成される凹凸に一致し、通常、このような凹凸により構成される溝及び/又はランドを記録トラックとして、第1記録層102に情報が記録・再生される。
【0039】
なお、上記の溝幅は通常100nm〜500nmであり、溝深さは通常20〜250nmである。また、記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜0.6μmであることが好ましい。
【0040】
第1基板101の厚さは、通常2mm以下、好ましくは1mm以下である。対物レンズと記録層との距離が小さく、また、基板が薄いほどコマ収差が小さい傾向があり、記録密度を上げやすいためである。但し、光学特性、吸湿性、成形性、形状安定性を十分得るために、通常10μm以上、好ましくは30μm以上である。
【0041】
〔I−3.第1記録層〕
第1記録層102は、第1基板101に隣接して設けられた、第1基板101に近い側の記録層である。本実施形態の光記録媒体100は、波長300〜450nmのレーザー光を記録再生光109として用いて主情報を記録する媒体であるため、第1記録層102は、このレーザー光で記録できるように構成されている。
第1記録層102を構成する物質は本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、例えば、色素、アモルファス半導体、部分窒化膜、部分酸化膜などが挙げられる。
【0042】
第1記録層102に使用される色素は特に限定されないが、その例を挙げると、有機色素が使用される。有機色素としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ピロメテン系色素、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。なお、これらの色素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0043】
また、第1記録層102に使用される色素は、通常250nm以上、通常550nm以下の波長域に最大吸収波長λmaxを有し、記録再生光109での記録に適する色素化合物が好ましい。また、記録再生光109の記録レーザー波長で吸収を持つことが必要である。
【0044】
一方、第1記録層102に使用されるアモルファス半導体材料の具体例としては、SbTe系、GeTe系、GeSbTe系、InSbTe系、AgSbTe系、AgInSbTe系、GeSb系、GeSbSn系、InGeSbTe系、InGeSbSnTe系等の材料が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度を高めるために、Sbを主成分とする組成物を用いることが好ましい。なお、これらのアモルファス半導体材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
部分窒化膜、部分酸化膜の具体例としては、BiGeN、SnNbNなどの部分窒化膜、TeOx、BiFOxなどの部分酸化膜が挙げられる。
【0045】
また、光記録媒体100のような多層光記録媒体では、CD−Rや片面型DVD−R等のような光記録媒体に用いる記録層に比較して、より高感度であることが望ましい。
【0046】
第1記録層102の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されない。ただし、十分な変調度を得るために、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。また、光を透過させるためには、通常3μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0047】
〔I−4.第1反射層〕
第1反射層103は、第1記録層102に隣接する反射層である。なお、ここで第1反射層103と第1記録層102とは隣接しているものとする。第1反射層103は、記録再生光109の吸収が小さく、光透過率が通常40%以上あり、かつ、適度な光反射率を有することが望ましい。第1反射層103の具体的な構成の例としては、反射率の高い金属を薄く設けることにより適度な透過率を持たせた層が挙げられる。さらに、第1反射層103は、ある程度の耐食性があることが望ましい。また、第1反射層103の上層(本実施形態では中間層104)からの他の成分の浸み出しにより第1記録層102が影響されないような遮断性を有することが望ましい。
【0048】
第1反射層103を構成する材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、再生光の波長における反射率が適度に高いものが好ましい。第1反射層103を構成する材料の例を挙げると、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、希土類金属等の金属及び半金属を、単独あるいは任意の組み合わせの合金にして用いることが可能である。
【0049】
さらに、第1反射層103の厚さは、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、更に好ましくは25nm以下である。上記範囲とすることにより、光透過率を40%以上としやすくなる。但し、第1反射層103の厚さは、第1記録層102が第1反射層103上に存在する中間層104により影響されないために、通常3nm以上、好ましくは5nm以上である。
【0050】
〔I−5.中間層〕
中間層104は、第1反射層103と第2記録層105との間に有する層である。中間層104は、通常、透明、且つ、溝やピットの凹凸形状が形成可能であり、また、接着力が高い樹脂から構成される。さらに、硬化接着時の収縮率が小さい樹脂を用いると、媒体の形状安定性が高く好ましい。
また、中間層104は、単層膜としても多層膜としてもよい。
【0051】
さらに、中間層104は、第2記録層105と相溶しやすい場合が多い。このため、中間層104と第2記録層105との相溶を防いで第2記録層105に与えるダメージを抑えるために、両層の間に適当なバッファー層(図示せず)を設けることが望ましい。また、中間層104は、第1反射層103との間にバッファー層を設けることもできる。
【0052】
また、中間層104は、第2記録層105にダメージを与えない材料からなることが望ましい。中間層104を構成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を挙げることができる。なお、中間層104の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中間層104の材料の中でも、放射線硬化性樹脂が好ましく、その中でも、紫外線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂の採用により、スタンパ(後述する)の凹凸形状の転写が行ないやすくなる。
【0053】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ラジカル系(ラジカル重合型の)紫外線硬化性樹脂とカチオン系(カチオン重合型の)紫外線硬化性樹脂が挙げられ、いずれも使用することができる。
ラジカル系紫外線硬化性樹脂は、例えば、紫外線硬化性化合物(ラジカル系紫外線硬化性化合物)と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。ラジカル系紫外線硬化性化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、ここで、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
また、光重合開始剤に制限はないが、例えば、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好ましい。本発明においては、ラジカル重合型のアクリル酸エステルを主体とする未硬化の紫外線硬化樹脂前駆体を用いて、これを硬化させて中間層を得ることが好ましい。
【0054】
一方、カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、複素環式系エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、遊離した塩素および塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量は、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
また、カチオン重合型の光開始剤としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。
【0055】
また、中間層104の材料として放射線硬化性樹脂を使用する場合、20〜40℃において液状であるものを用いることが好ましい。樹脂原料層104aの形成時に、上記放射線硬化性樹脂を用いることにより溶媒を用いることなく塗布できるので、生産性が向上するためである。また、粘度は常温で20〜4000mPa・sとなるように調整するのが好ましい。
【0056】
さらに、中間層104には、通常、凹凸が螺旋状又は同心円状に設けられる。そしてこの凹凸が、溝及びランドを形成する。これらの凹凸は、隣接する第2記録層105に形成される凹凸に一致し、通常、このような凹凸により構成される溝及び/又はランドを記録トラックとして、第2記録層105に情報が記録・再生される。
【0057】
なお、上記の溝幅は通常100〜500nmであり、溝深さは通常20〜250nmである。また、記録トラックが螺旋状である場合、トラックピッチは0.1〜0.6μmであることが好ましい。本実施形態では、第2記録層105のデータ領域105Xの凹凸が、この寸法で形成されているものとする。
さらに、中間層104の膜厚は、正確に制御されることが好ましく、通常5μm以上、好ましくは10μm以上である。但し、通常100μm以下、好ましくは70μm以下である。厚さが前記範囲未満であると、情報再生時に第1記録層102と第2記録層105の信号の混合が起こり、層間クロストークと呼ばれる信号ノイズとなる傾向にある。一方、厚さが前記範囲超過では、中間層104を形成する樹脂による反りが激しくなったり、レーザー光の収差が大きくなり再生信号品質を損なう傾向にある。
【0058】
ところで、本実施形態の光記録媒体100においては、中間層104に隣接する第2記録層105が特定記録層として機能する。このため、第2記録層105はBCA105Yを有する。通常、このBCA105Yには主情報を記録しないために記録トラックが必須でなく、したがって、BCA105Yには記録トラック用の凹凸は必須でない。しかしながら、このBCA105Yには、凹凸を設けることが好ましい。媒体認識信号の記録時に、色素やアモルファス半導体等の第2記録層105の材料の諸特性を変化させることが容易となるためである。
【0059】
第2記録層105に設けられる凹凸の形状は、中間層104に形成される凹凸の形状に一致する。したがって、データ領域に相当する部位だけでなく、BCA105Yに相当する部位においても、中間層104には凹凸を形成することが好ましい。この際、BCA105Yに形成される凹凸の形状は、データ領域105Xに形成される凹凸と同一の形状であっても異なっていても良いが、BCA105Yにはデータ領域105Xとは異なった形状の凹凸を形成することが好ましい。好適な凹凸形状については、第2記録層105の説明において述べる。
【0060】
〔I−6.第2記録層〕
第2記録層105は特定記録層として機能する層であり、第1基板101に対し、第1記録層102よりも遠い記録層である。光記録媒体100は波長300〜450nmの記録再生光109で主情報を記録する媒体であるため、第2記録層105はこの記録再生光109で主情報を記録ができることが必要である。
【0061】
第2記録層105は、前述した第1記録層102の場合と同様に、通常CD−Rや片面型DVD−Rや片面型HDDVD−R等の光記録媒体に用いる記録層より高感度であることが望ましい。また、第2記録層105は、良好な記録再生特性を実現するためには低発熱で高屈折率な色素であることが望ましい。更に、第2記録層105と第2反射層106との組合せにおいて、光の反射及び吸収を適切な範囲とすることが望ましい。
【0062】
特定記録層である第2記録層105には、データ領域105Xと、BCA105Yが形成されている。
データ領域105Xは、図2に示すように、第2記録層105の大部分を占める領域として、センターホールHを中心としたドーナッツ形状に設けられる。本実施形態では、データ領域105Xは、光記録媒体100の外周縁部から内周縁部近傍にかけてドーナッツ形状(図2の、外周縁部の実線の円と、内周縁部の一点鎖線の円とで囲まれた部分)に形成されているものとする。例えば、HD−DVDにおいては、該領域に既出のトラックピッチでスパイラル状に溝が形成されている。
【0063】
一方、BCA105Yは、第2記録層105のデータ領域105X以外の任意の位置に形成することができるが、通常は、第2記録層105の内縁部に形成される。BCA105Yは、著作権情報やロット番号などの、光記録媒体1の媒体認識信号を記録するための領域である。媒体認識信号はどのような態様で記録してもよい。例えば、主情報と同様に記録してもよく、バーコードパターンとして記録してもよく、目視で認識可能な情報(文字、記号等)であってもよい。通常は、記録した媒体認識信号をレーザーで認識可能なものが好ましい。
【0064】
第2記録層105を構成する材料については、第1記録層102と同様の物質から選択することが出来る。また、第1記録層102と第2記録層105とに用いる材料は、同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0065】
ところで、第1反射層103に関する説明で述べたように、通常、第1反射層103は半透明な反射層として形成され、入射した記録再生光109のうち一定の割合しか第1反射層103を透過しないようになっている。この結果、第2記録層105に入射する透過光のパワーは、光記録媒体100に入射する前の記録再生光109と比較して相応の減衰を生じることになる。したがって、上記の減衰した透過光で第2記録層105に対する記録が行なわれることになるために、第2記録層105は、特に感度が高いことが望ましい。
【0066】
よって、記録層102,105、特に、裏面100Bに最も近い記録層である第2記録層105に用いる材料としては、比較的低温度で熱により分解若しくは相転移して反射率が変化する材料が望ましい。分解温度或いは相転移温度は、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは275℃以下である。ただし、分解温度が低過ぎると保存安定性が低下する傾向にあるため、100℃以上であることが好ましい。ここで、上記の温度範囲の規定は、有機色素を用いる場合は分解温度が適用され、アモルファス半導体を用いる場合は相転移温度が適用される。なお、このような有機色素及びアモルファス半導体の例としては、第1記録層102の説明において例示したものと同様のものの中から、適宜選択して用いることができる。
【0067】
なお、分解温度および相転移温度は、示差走査熱量計(DSCと呼ぶ場合がある。)により測定することが出来る。測定時の昇温条件は測定装置の仕様に従うか、あるいは測定試料全体への熱拡散に必要な時間よりも十分にゆっくり昇温させれば良いが、一般的には、昇温速度は0.5℃/分〜10℃/分を目安とすればよい。
【0068】
また、中間層104の説明でも述べたように、第2記録層105には図1に示すような凹凸を形成することが好ましく、また、BCA105Yにおいても凹凸を形成することが好ましい。
BCA105Yが凹凸を有する場合、通常は当該凹凸は溝として形成する。この際、溝の深さDは限定されないが、15nm以上が好ましく、また、100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。溝深さDが前記範囲未満である場合は、BCA105Yに媒体認識信号が十分に記録されない可能性があり、溝深さDが前記範囲超過である場合は、製造過程において中間層104の凹凸形状が第2記録層105に十分に転写されずBCA105Yに凹凸を形成できない可能性がある。
【0069】
また、凹凸により形成される溝のトラックピッチPは限定されないが、0.1μm以上が好ましく、0.6μm以下が好ましい。トラックピッチPが前記範囲未満である場合は、波長と比較してトラックピッチが狭く、検出可能な分解能を超えるため、記録再生時に隣接するトラックの情報が漏れこむ(クロストークが生じると言う)ことにより、目的の情報のみを記録再生できなくなる可能性がある。また、トラックピッチPが前記範囲超過である場合は、記録密度が低くなる傾向にある。
【0070】
さらに、ランド幅WLの溝幅WGに対する比(WL/WG)は限定されないが、0.3以上が好ましく、1.2以下が好ましい。WL/WGが前記範囲未満である場合は、ランド幅が狭いためにBCA105Yに媒体認識信号が十分に記録されない場合があり、WL/WGが前記範囲超過である場合は、溝幅WGが広過ぎるために反射率の差が大きくなり、BCA105Yへ記録された媒体認識信号のノイズとなる場合がある。
なお、ランド幅WL、溝幅WG及びトラックピッチPについては、図1に示すように、溝の半値幅を基準として測定するものとする。
【0071】
また、第2記録層105の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上である。但し、適度な反射率を得るために、第2記録層105の膜厚は、通常3μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0072】
本実施形態の光記録媒体100のように、記録層を2層有する光記録媒体においては、主情報を記録するためのレーザー光は、通常、共通であるため、記録再生光109のエネルギー(レーザーエネルギー)は、必然的に各層102〜106に分配されることになる。よって、各層での記録再生光109の吸収量、反射量、透過量を調整することが好ましい。
【0073】
記録再生用テスター、あるいはドライブによる記録再生特性の観点から見た場合、各層で大きく反射率が異なったり、記録感度が大きく異なったりすることは、信号ゲイン、周波数特性、あるいは記録パワー等を、各層により大きく変更しなければならないため、信号品質上好ましくない。したがって、情報面100Aから見てより奥に位置する層は、レーザーのエネルギーが届き難い。このため、光記録媒体100においては、以下の構成とすることが好ましい。
【0074】
(第1記録層102の吸収率)<(第2記録層105の吸収率)
(第1記録層102の透過率)>(第2記録層105の透過率)
(第1記録層102及び第1反射層103による吸収率)<(第2記録層105及び第2反射層106による吸収率)
(第1記録層102及び第1反射層103の透過率)>(第2記録層105及び第2反射層106の透過率)
【0075】
また、各記録層102,105の材料として色素又はアモルファス半導体を用いる場合は、以下の構成とすることも好ましい。
(第1記録層102を構成する色素の熱分解温度又はアモルファス半導体の相転移温度)>(第2記録層105を構成する色素の熱分解温度又はアモルファス半導体の相転移温度)
なお、各記録層102,105及び反射層103,106による光吸収率は、その屈折率n、消衰係数k、及び膜厚で規定され、実使用上の調整範囲においては消衰係数kが大きく、膜厚が厚いほど大きくなる。
【0076】
上記の事項は、記録層を3層以上(n層)有する多層光記録媒体(n層媒体)の場合についても同様である。すなわち、前記の第2記録層105および第2反射層106を、最も裏面に近い層としての第n記録層および第n反射層と置き換えればよい。
さらに好ましくは、以下の通りの構成となることが望ましい。但し、ここでいう第2記録層および第2反射層は、最も裏面に近い層ではなく、第1基板101に近い側から2番目の層をいう。
(第1記録層102の吸収率)<(第2記録層の吸収率)<・・・<(第n記録層の吸収率)
(第1記録層102の透過率)>(第2記録層の透過率)>・・・>(第n記録層の透過率)
(第1記録層102及び第1反射層103による吸収率)<(第2記録層及び第2反射層による吸収率)<・・・<(第n記録層及び第n反射層による吸収率)
(第1記録層102及び第1反射層103の透過率)>(第2記録層及び第2反射層の透過率)>・・・>(第n記録層及び第n反射層の透過率)
【0077】
また、各記録層の材料として色素又はアモルファス半導体を用いる場合は、以下の構成とすることも好ましい。
(第1記録層102を構成する色素の熱分解温度又はアモルファス半導体の相転移温度)>(第2記録層105を構成する色素の熱分解温度又はアモルファス半導体の相転移温度)>・・・>(第n記録層を構成する色素の熱分解温度又はアモルファス半導体の相転移温度)
【0078】
〔I−7.第2反射層〕
第2反射層106は、特定記録層である第2記録層105に対応する反射層であり、特定反射層として機能する層である。ここで、複数の記録層及び反射層を有する光記録媒体において、ある記録層に対応する反射層とは、該記録層の情報面とは反対側に位置する反射層の中で、最も該記録層に近い反射層を指す。
【0079】
本発明に係る特定反射層は、前述した主情報記録用レーザー光の波長における情報面側からの反射率が、裏面側からの反射率よりも大きいことを特徴とする。
本実施形態では、第2反射層106が2層構造の例を説明する。第2反射層106の情報面側である隣接反射層、即ち第2記録層105に隣接する側を隣接反射層106aとし、裏面側を裏面反射層106bとする。ここでは、第2反射層106を2層構造としているが、106aと106bの間に更に異なる材料からなる複数の層を設けてもよい。
【0080】
ここで、特定反射層の反射率の測定方法について説明する。
まず、特定反射層のみを鏡面ガラス基板上に形成したサンプルを作製する。すなわち、特定反射層の材料、膜厚と同一の層を鏡面ガラス基板上に単独で形成する。
ここで、情報面側からの反射率を測定する場合は、特定反射層の情報面側が上面、すなわち鏡面ガラス基板に接しないように形成する。このサンプルを用いて、特定反射層に対して、鏡面ガラス基板と反対側から光を照射して分光光度計により測定した反射率の値を、特定反射層の情報面側からの反射率と定義する。
逆に、裏面からの反射率を測定する場合には、特定反射層の裏面側が上面、すなわち鏡面ガラス基板に接しないように形成したサンプルを作製する。このサンプルを用いて、特定反射層に対して、鏡面ガラス基板と反対側から光を照射して分光光度計により測定した反射率の値を、特定反射層の裏面側からの反射率と定義する。ここで、測定に用いる光の波長は、主情報記録用レーザー光の波長を用いることとする。
具体的には、鏡面ガラス基板上に表面反射層106b、隣接反射層106aを順次形成し、隣接反射層106a側から光を照射して測定した反射率が、情報面側からの反射率であり、ガラス基板上に隣接反射層106a、表面反射層106bを順次形成し、表面反射層106b側から光を照射して測定した反射率が、裏面側からの反射率となる。
【0081】
第2反射層106の情報面側からの反射率は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、波長が405nmの光源の光に対して、通常70%以上、好ましくは80%以上あることが好ましい。反射率が前記範囲未満である場合は、特に現在の片面DVD2層媒体では反射率が不十分になり、記録再生装置が光記録媒体100を認識できなくなる可能性がある。
また、特定反射層である第2反射層106の裏面側からの反射率は、情報面側からの反射率よりも小さく、好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。この範囲にあると、媒体認識信号記録用レーザー光のエネルギーが第2記録層105に伝わりやすくなり、媒体認識信号を良好にBCA105Yに記録することが可能である。また、50%以上が好ましく、更に好ましくは55%、更に好ましくは60%以上である。この範囲とすることで、特定反射層である第2反射層106が媒体認識信号記録用レーザー光によりダメージを受けにくくなり、フォーカスサーボも安定して行いやすくなる。
【0082】
隣接反射層106aを構成する材料としては、上記の反射率が実現できる限り任意であるが、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta及びPd等の金属を単独または合金にして用いることができる。
中でも、Agを主成分とすることが好ましい。特に、Agを通常85原子%以上、好ましくは87原子%以上、より好ましくは89原子%以上含有することが望ましく、通常99.7原子%以下、好ましくは99.5原子%以下、より好ましくは99.0原子%以下で含有することが望ましい。Agを前記範囲で含有することにより、隣接反射層106aの材料が低熱伝導率となり、良好な感度でBCA105Yへの記録が可能となる。
【0083】
また、Agに対し、合金として含有できる元素としては、例えば、O、N、Au、Al、Cu、Ti、Cr、Ni、Ta、Pd、Mg、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、In、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、及び希土類金属等が好ましい。Agに対し、このような元素を合金として含有することにより、高い反射率、良好な保存安定性を確保することができる。
【0084】
裏面反射層106bを構成する材料としては、上記の反射率が実現できる限り任意であるが、基本的に隣接反射層106aと同様である。従って、隣接反射層106aと同様にAgを主成分とすることが好ましいが、通常隣接反射層106aに比べAgの含有率を小さくすることで、反射率をより低い値とすることが可能である。
【0085】
第2反射層106の膜厚は通常200nm以下、好ましくは150nm以下、更に130nmが好ましく、通常60nm以上、好ましくは80nm以上、更に90nm以上が好ましい。上記範囲内であれば、情報記録媒体として十分な信頼性が確保でき、かつBCA105Yへの媒体認識信号の記録を、より高感度で行うことが可能となりやすい。
情報面側からの反射率を高く確保するために、隣接反射層106aの膜厚は、通常30nm以上、好ましくは40nmである。但し、BCA記録感度を向上させるためには、通常120nm以下、好ましくは80nm以下である。前記範囲とすることにより、媒体認識信号と主情報の両方において、良好な記録感度を得やすくなる。隣接反射層106aの膜厚を上記範囲内とすることにより、情報面からの反射率を高く維持したまま、特定反射層である第2反射層106全体の熱容量が抑えられ熱拡散の程度を低くできるからである。
裏面側からの反射率を低く抑えるために、裏面反射層106bの膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nmである。また、通常170nm以下、好ましくは120nm以下である。
【0086】
第2反射層106は、第1反射層103と同様、通常スパッタリング法により形成される。
第2反射層106は上記の通り組成の異なる複数層を備えることができるが、製造工程管理を考えると2層であることが好ましい。
【0087】
〔I−8.接着層〕
接着層107は、第2反射層106と第2基板108とを接着する層である。接着層107は、接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さいと、光記録媒体100の形状安定性が高くなり、好ましい。また、接着層107は、第2反射層106にダメージを与えない材料からなることが望ましい。但し、ダメージを抑えるために第2反射層106と接着層107との間に公知の無機系または有機系の保護層を設けることもできる。
【0088】
接着層107の材料は、中間層104の材料と同様のものを用いることができる。
また、接着層107の膜厚は、通常、2μm以上、好ましくは5μm以上である。但し、光記録媒体100をできるだけ薄くするために、また、硬化に時間を要して生産性が低下する等のことを抑制するために、接着層107の膜厚は、通常、100μm以下が好ましい。
なお、接着層107としては、感圧式両面テープ等も使用可能である。感圧式両面テープを第2反射層106と第2基板108との間に挟んで押圧することにより、接着層107を形成できる。
【0089】
〔I−9.第2基板〕
第2基板108は、裏面100Bに面して設けられる層である。第2基板108は、機械的安定性が高く、剛性が大きいことが好ましい。また接着層107との接着性が高いことが望ましい。
このような第2基板108の材料としては、第1基板101に用いうる材料と同様のものを用いることができる。また、上記材料としては、例えば、Alを主成分としたAl−Mg合金等のAl合金基板や、Mgを主成分としたMg−Zn合金等のMg合金基板、シリコン、チタン、セラミックスのいずれかからなる基板やそれらを組み合わせた基板等を用いることもできる。また、第2基板108の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0090】
なお、第2基板108の材料は、成形性等の高生産性、コスト、低吸湿性、形状安定性等の点から、ポリカーボネートが好ましい。また、第2基板108の材料は、耐薬品性、低吸湿性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。また、第2基板108の材料は、高速応答性等の点からは、ガラス基板が好ましい。
さらに、光記録媒体100に十分な剛性を持たせるために、第2基板108はある程度厚いことが好ましく、第2基板108の厚さは、0.3mm以上が好ましい。但し、通常3mm以下、好ましくは1.5mm以下である。
【0091】
[II.光記録媒体の製造方法]
続いて、図3を用いて、本実施形態の多層光記録媒体100の製造方法を簡単に説明する。図3(a)〜(g)は、本実施形態の光記録媒体の製造方法を説明するため、その要部の断面を模式的に示す断面図である。
本実施形態の光記録媒体100の製造方法は、第1記録層形成工程と、第1反射層形成工程と、中間層形成工程(樹脂原料層形成工程、樹脂原料層硬化工程、スタンパ剥離工程)と、第2記録層形成工程と、第2反射層形成工程と、第2基板形成工程とを有する。
【0092】
[II−1.基板の用意]
まず、第1基板101を用意する。第1基板101としては、図3(a)に示すように、表面に凹凸で、溝、ランド、及びプリピットが形成されたものを用意する。第1基板101は、例えばニッケル製スタンパ等を用いて射出成形等により作製することができる。
【0093】
[II−2.第1記録層形成工程]
次に、第1記録層形成工程において、第1基板101上に第1記録層102を形成する。第1記録層102の形成方法に制限はないが、例えば以下の方法で形成することができる。即ち、有機色素を含有する塗布液を第1基板101の凹凸を有する側の表面にスピンコート等により塗布する。その後、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱等を行ない、第1記録層102を成膜する。なお、本実施形態では、上記のように第1基板101上に直接第1記録層102を形成した例を示して説明するが、第1記録層102は、光記録媒体100の種類や構成などに応じて、第1基板101上に他の層を介して形成するようにしてもよい。
【0094】
また、第1記録層102の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、浸漬法等の一般に行なわれている薄膜形成法を行うこともできる。成膜形成法の中でも、量産性、コスト面からはスピンコート法等の湿式成膜法が好ましい。また、均一な記録層が得られるという点からは、真空蒸着法が好ましい。
【0095】
[II−3.第1反射層形成工程]
第1記録層102を成膜した後、第1反射形成工程において、第1記録層102上に第1反射層103を形成する。第1反射層103の形成方法に制限はないが、例えば、第1記録層102上にAg合金等をスパッタまたは蒸着することにより、第1記録層102上に第1反射層103を成膜することができる。
このように、第1基板101上に、第1記録層102及び第1反射層103を順に積層することによって、データ基板111を得る。なお、本実施の形態においては、データ基板111を透明にしているものとする。
【0096】
また、第1反射層103を形成する方法は、例えば、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等で行うこともできる。
【0097】
[II−4.中間層形成工程]
次に、第1反射層103上に中間層104を形成する。中間層104の形成方法に制限はなく任意であるが、通常は、以下のようにして形成される。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いた中間層104は、適当な溶剤に熱可塑性樹脂等を溶解して塗布液を調製し、この塗布液を塗布し、乾燥(加熱)することによって形成することができる。
一方、放射線硬化性樹脂を用いた中間層104は、そのまま若しくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、この塗布液を塗布し、適当な放射線を照射して硬化させることによって形成することができる。
【0098】
なお、塗布方法に制限はなく、例えばスピンコート法やキャスト法等の塗布法等の方法が用いられる。この中でも、スピンコート法が好ましい。特に、高粘度の樹脂を用いた中間層104は、スクリーン印刷等によっても塗布形成できる。
ただし、本実施形態の光記録媒体100においては、第2記録層105に凹凸を形成するため、樹脂原料層形成工程、樹脂原料層硬化工程及びスタンパ剥離工程をおこなうことにより中間層を形成することが、より好ましい。以下、この方法を説明する。
【0099】
[II−4−1.樹脂原料層形成工程]
第1反射層形成工程の後、樹脂原料層形成工程において、図3(b)に示すように、第1反射層103の表面(即ち、データ基板111の表面)全体に、樹脂原料層104aを形成する。即ち、第1記録層102上に、第1反射層103を介して樹脂原料層104aを形成する。
ここで形成する樹脂原料層104aは、光記録媒体100の完成時に中間層104を構成することになる層で、何らかの処理を施すことにより硬化しうる硬化性樹脂又はその前駆体により形成された層である。
【0100】
上記硬化性樹脂としては光記録媒体に使用しうる硬化性樹脂を任意に用いることができる。硬化性樹脂の例としては、放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられ、中でも、放射線硬化性樹脂の一種である紫外線硬化性樹脂が好ましい。なお、本明細書においては、「放射線」を、電子線、紫外線、可視光、及び赤外線を含む意味で用いる。また、硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0101】
ただし、樹脂原料層104aはこの後でスタンパ110(後述)により表面に凹凸が成形されることになるため、樹脂原料層硬化工程において成形される前には、不定形な状態(通常は、所定の粘度を有する液体状態)となっている。
【0102】
また、樹脂原料層104aの形成方法に制限はない。例えば、樹脂原料層104aは、硬化性樹脂の前駆体をスピンコート等により塗布することで形成することができる。
本実施形態においては、放射線硬化性樹脂の一つである紫外線硬化性樹脂の前駆体をスピンコートにより塗布し、樹脂原料層(以下、説明の便宜から「紫外線硬化性樹脂原料層」と呼ぶ場合がある。)104aを形成したものとする。
【0103】
ところで、本実施形態においては、上記のように第1記録層102上に第1反射層103を介して紫外線硬化性樹脂原料層104aを形成した例を示して説明するが、紫外線硬化性樹脂原料層104aは、光記録媒体100の種類や構成などに応じて、第1記録層102上に直接形成するようにしてもよく、また、第1反射層103以外のその他の層を介して形成するようにしてもよい。
【0104】
[II−4−2.樹脂原料層硬化工程]
次に、樹脂原料層硬化工程において、図3(c)に示すように、紫外線硬化性樹脂原料層104a上にスタンパ110を載置し、紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させる。つまり、第1記録層102とは反対側の紫外線硬化性樹脂原料層104aの表面にスタンパ110が載置された状態となる。
スタンパ110は、中間層104に形成されることになる凹凸の形状(凹凸形状)に対応した形状(転写用凹凸形状)の凹凸(転写用凹凸)を表面に有する型である。そして、スタンパ110が有する転写用凹凸の転写用凹凸形状が紫外線硬化性樹脂原料層104aに転写されることにより、中間層104に、所望の凹凸形状の凹凸が形成されるよう、転写用凹凸形状は設定されている。
【0105】
また、スタンパ110の材料としては、光記録媒体100の製造コストを考慮して、通常は樹脂を用いる。ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等の汎用で低コストの樹脂や、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹などが好ましく、実際に実用化されているのは、非晶質環状ポリオレフィン樹脂(例えば、ゼオネックスおよびゼオノア(いずれも日本ゼオン株式会社製))である。
【0106】
さらに、スタンパ110は、通常、中央部に表裏を貫通する中心孔を形成された円板形状に形成される。本実施形態においても、スタンパ110は、表面に転写用凹凸形状を有し、中央部にセンターホール(図示省略)を形成された円板形状のものを用いているものとする。
【0107】
なお、スタンパ110を作製する場合、その作製方法は任意であるが、例えば、スタンパ110を樹脂製スタンパとする場合には、スタンパ110が有する転写用凹凸形状の逆(ネガ)の凹凸パターンを有する金属製スタンパ(例えば、ニッケル製スタンパ)を用いて、射出成形等により作製することができる。
【0108】
また、スタンパ110の厚さは、形状安定性及びハンドリングの容易さの点で、通常0.3mm以上とするのが望ましい。但し、厚さは、通常、5mm以下である。スタンパ110の厚さがこの範囲であれば、十分な光透過性を有するため、後述するようにスタンパ110を介して紫外線を照射しても、紫外線硬化樹脂等を効率よく硬化させることが可能であり、生産性を向上させることが出来る。
【0109】
さらに、スタンパ110の外径は、第1基板101の外径(通常は、光記録媒体100の外径に等しい)より大きくすることが好ましい。スタンパ110の外径を第1基板101の外径よりも予め大きく設計しておくと、射出成形でスタンパ110を製造する際に、スタンパ110の第1基板101の外径よりも外側の外周部にも余裕を持って転写用凹凸形状を形成することが可能となり、スタンパ110の全面にわたって良好な転写用凹凸形状を形成することが出来る。
【0110】
また、第1基板101の外径よりもスタンパ110の外径を大きくすることにより、中間層104(及び、紫外線硬化性樹脂原料層104a)の外径よりもスタンパ110の外径が大きくなる。このようにすると、中間層104の端面の形状を良好にしやすくなる。つまり、仮にスタンパ110の外径を第1基板101の外径以下にした場合には、スタンパ110を紫外線硬化性樹脂原料層104a上に載置した際に、スタンパ110の外周端部に紫外線硬化性樹脂原料層104aの樹脂が付着することがある。この樹脂は、スタンパ110を剥離する際にバリとなる場合がある。したがって、中間層104(紫外線硬化性樹脂原料層104a)の外径よりもスタンパ110の外径が大きいと、バリとなりやすい紫外線硬化性樹脂原料層104aの端部に存在する樹脂が、中間層104の外径よりも外側に存在することとなる。その結果、バリが発生したとしても、バリ発生の部分を取り除くことによって、中間層104の端面の形状を良好とすることができる。
【0111】
具体的には、スタンパ110の外径は、第1基板101の外径より、直径で通常1mm以上、好ましくは2mm以上大きくすることが好ましい。但し、スタンパ110の外径と第1基板101の外径との差は、直径で通常15mm以下、好ましくは10mm以下であることが好ましい。
【0112】
ところで、スタンパ110を載置する際、スタンパ110の凹凸が形成された面を紫外線硬化性樹脂原料層104aに押し付けるようにして載置する。このとき、スタンパ110を紫外線硬化性樹脂原料層104aに押し付ける程度は、紫外線硬化性樹脂原料層104aの膜厚が所定範囲になるように調節して行なう。
【0113】
そして、スタンパ110を紫外線硬化性樹脂原料層104aに載置した状態で、紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させる。紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させるには、紫外線硬化性樹脂原料層104aに紫外線を照射すればよい。この際、紫外線は、スタンパ110を介して照射するようにしてもよい。ただし、紫外線をスタンパ110側からの照射する場合には、スタンパ110として紫外線を透過しうるもの(光透過性のもの)を用いることが、工業的に好ましい。また、紫外線硬化性樹脂原料層104aの側面から照射するようにしてもよい。さらに、第1基板101側から照射するようにしてもよい。ただし、第1基板101側から照射する場合、紫外線の照射により第1記録層102がダメージを受けないようにすることが好ましい。
【0114】
本実施形態では、スタンパ110を介して、スタンパ110側から紫外線硬化性樹脂原料層104aに紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂の前駆体を重合させることにより、紫外線硬化性樹脂原料層104aを硬化させたものとして説明を行なう。
このようにして、前記樹脂原料層を硬化させて、データ基板111(即ち、第1基板101、第1記録層102及び第1反射層103)、紫外線硬化性樹脂原料層104a、並びに、スタンパ110を備えた接着体112が得られる。
【0115】
[II−4−3.スタンパ剥離工程]
そして、スタンパ剥離工程では、図3(d)に示すように、紫外線硬化性樹脂原料層104a(図3(c)参照)からスタンパ110を剥離させる。これにより、紫外線硬化性樹脂原料層104aにスタンパ110の転写用凹凸形状が転写されて、中間層104が形成される。なお、本明細書では、紫外線硬化性樹脂原料層104aとは、塗布後、硬化され、スタンパが剥離するよりも以前のものを指す。また、中間層104とは、スタンパ110が剥離した後のものを指す。したがって、紫外線硬化性樹脂原料層104a及び中間層104は同様の位置に形成された層を指すものであるが、その状態が異なるものである。
【0116】
スタンパ110を剥離させる具体的方法に制限はないが、通常は、光記録媒体が円盤形状の場合には、内周を真空吸着して、光記録媒体の内周にナイフエッジを入れ、そこにエアーを吹き込みながらディスクとスタンパを引き離すという方法で剥離を行なう。
【0117】
以上の操作を経て、紫外線硬化性樹脂原料層104aの表面に、スタンパ110の転写用凹凸の形状(即ち、転写用凹凸形状)が転写された中間層104を形成し、第1基板101、第1記録層102、第1反射層103及び中間層104を備えた光記録媒体用積層体113を得ることができる(図3(d)参照)。
【0118】
[II−5.第2記録層形成工程]
続いて、第2記録層形成工程では、図3(e)に示すように、中間層104上に第2記録層105を形成する。第2記録層105の形成方法に制限はないが、例えば以下の方法で形成することができる。即ち、有機色素を含む塗布液を、スピンコート等により中間層104表面に塗布する。そして、塗布液に使用した溶媒を除去するために加熱等を行ない、第2記録層105を成膜する。
なお、第2記録層105の製膜方法は、第2記録層105が有機色素の場合は湿式製膜法が好ましい。
また、第1記録層102の形成方法と同様、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、浸漬法等の一般に行なわれている薄膜形成法を行うこともできる。
【0119】
[II−6.第2反射層形成工程]
次に、第2反射層形成工程では、図3(f)示すように、第2記録層105上に第2反射層106を形成する。第2反射層106の形成方法に制限はないが、例えば、本請求項記載の材料をスパッタもしくは蒸着することにより第2記録層105上に第2反射層106を成膜することができる。
第2反射層106が組成の異なる2つの層106a、106bから成る場合は、例えば、それぞれの組成に対応するターゲット材を準備し、順次スパッタリングにより成膜を行うことで、複数の層からなる反射層を形成可能である。なお、図3(f)〜(g)では、層106aと層106bとを区別せず第2反射層106を描画した。
また、第2反射層106を形成する方法としては、例えば、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等を採用することもできる。
【0120】
なお、中間層、記録層及び必要に応じて反射層を更に積層する場合には、[II−2.第1記録層形成工程]、[II−3.第1反射層形成工程]及び[II−4.中間層形成工程]と同様の操作を繰り返すことによって、記録層及び反射層を3層以上有する積層型多層光記録媒体を効率よく製造することができる。
【0121】
[II−7.第2基板形成工程]
その後、第2基板形成工程において、図3(g)に示すように、第2反射層106上に第2基板108を形成する。第2基板108の形成方法に制限はないが、例えば、第2基板108を、接着層107を介して第2反射層106に貼り合わせて形成することができる。なお、第2基板108に制限はないが、ここでは、ポリカーボネートを射出成形して得られた鏡面基板を第2基板108として用いているものとする。
【0122】
ここで、接着層107の構成は任意である。例えば、接着層107は、透明であっても不透明であってもよい。また、表面が多少粗くてもよい。さらに、遅延硬化型の接着剤であっても問題なく使用できる。また、例えば、第2反射層106上にスクリーン印刷等の方法で接着剤を塗布し、紫外線を照射してから第2基板108を載置し、押圧することにより接着層107を形成するようにしてもよい。また、第2反射層106と第2基板108との間に感圧式両面テープを挟んで押圧することにより接着層107を形成することも可能である。
以上のようにして、光記録媒体100の製造が完了する。
【0123】
[II−8.その他の製造方法]
光記録媒体100の製造方法は、上述したものに限定されず、他の方法を採用してもよい。
また、上述した製造方法に変更を加えて実施してもよい。例えば、上述した各工程の前、途中、後に、上述した工程以外の他の工程を行うようにしてもよい。
【0124】
また、多層型の光記録媒体100においては、光記録媒体100の反りや、中間層104上に形成される第2記録層105の記録特性等を考慮し、樹脂原料層104aを複数の樹脂層から形成してもよい。この場合、樹脂原料層104aを構成する複数の樹脂層のうち、スタンパ110により凹凸形状を形成される樹脂層が最外樹脂層となる。
【0125】
このように樹脂原料層104aを複数の樹脂層から構成する場合、樹脂原料層104aを構成する樹脂層の数は、特に制限されない。具体的には、上記樹脂層の数は、通常10層以下、好ましくは5層以下、より好ましくは4層以下とする。一方、上記樹脂層の数は、2層以上とする。但し、生産効率の観点からは、樹脂原料層104aを構成する樹脂層の数は、2層以上、5層以下とすることが好ましい。生産効率の観点から特に好ましいのは、樹脂原料層104aを構成する樹脂層の数を、2層又は3層構造とすることである。
【0126】
中間層104が多層膜である場合の中間層104の形成方法は、図4(a),(b)および図5に示す通りである。すなわち、図4(a)に示すように、一方の樹脂層(第1樹脂層104a1)を第1反射層103上に形成しておき、別途、図4(b)に示すように、他方の樹脂層(第2樹脂層104a2)をスタンパ110上に形成した後、第1樹脂層104a1と第2樹脂層104a2とが対向するようにデータ基板111とスタンパ110とを貼り合わせ、その後、図5に示すように紫外線を照射する。これにより、接着体112’が得られる。
このように中間層104を複数の樹脂層から構成することにより、第2記録層105の記録特性を良好にしやすい材料を第2樹脂層104a2として第2記録層105に隣接させるとともに、第1反射層103との密着性がよい材料を第1樹脂層104a1として第1反射層103に隣接させることが出来るため好適である。
【0127】
[III.主情報及び媒体認識信号の記録方法]
続いて、光記録媒体100への主情報及び媒体認識信号の記録方法について説明する。
光記録媒体100に主情報を記録する際には、図1に模式的に示すように情報面100Aから記録層102,105に対して記録再生光109を照射し、この記録再生光109により主情報を記録する。特に、第2記録層105に主情報を記録する際にはデータ領域105Xに記録を行なうため、記録再生光109も、データ領域105Xへと照射する。また、記録再生光109としては、波長が300〜450nmのレーザー光を用いる。
【0128】
一方、媒体認識信号を記録する際には、裏面100Bから第2記録層105に認識信号記録光を照射して、BCA105Yに媒体認識信号を記録する。認識信号記録光としては、通常、レーザー光を用いる。また、認識信号記録光の波長は限定されないが、通常400nm以上、実用上は600nm以上、また、通常2000nm以下、実用上は1200nm以下の波長を有するレーザー光が用いられる。
【0129】
主情報記録用レーザー光よりも波長の長いレーザー光が、媒体認識信号記録用レーザー光として好適に用いられるのは以下の理由による。
一般に媒体認識信号は、確実に読み取ることができるように、BCA105Yに半径方向の幅が1mm程度の範囲に渡って記録される。この様な広い半径領域に渡る媒体認識信号を生産性よく記録するには、大きなビームスポットのレーザー光源を用いることが望ましい。しかし、ビームスポットを大きくするとパワー密度が低下してしまう。このため、十分な記録を行うためには、出射レーザーパワーが例えば1W以上という非常に高パワーであることが好ましい。しかるに、主情報の記録再生に用いるような青色レーザー光ではこうした高パワーは現在困難であるので、媒体認識信号の記録には青色レーザー光とは別に、波長600〜850nm程度の赤色〜近赤外のレーザー光が好適に用いられる。
【0130】
[IV.利点]
本実施形態の光記録媒体100によれば、従来の課題を解決し、青色レーザー光で記録・再生を行なうことができるとともに、第2記録層105にBCA105Yを形成して媒体認識信号を記録できるようにした光記録媒体を実現できる。
また、本実施形態の光記録媒体100によれば、BCA105Yに媒体認識信号を記録しても第2反射層106の大変形や欠損といった欠陥が発生しない。このため、その欠陥に起因した腐食が生じず、長期保存安定性に優れた光記録媒体100を提供することが出来る。
【0131】
さらに、本実施形態の光記録媒体100に媒体認識信号を記録する際には、主情報を記録・再生するための記録再生光109とは反対の方向から(図1では上から)媒体記録信号を記録するための認識信号記録光を入射するため、記録層102,105が多層化されている場合であっても、その層数に影響されず、最も裏面100B側に近い層のみに媒体認識信号を記録することが可能な光記録媒体を提供することが出来る。
【0132】
また、媒体に裏面から媒体認識信号記録用レーザーを照射する場合、特定記録層に接する反射層の反射率を単に下げることも考えられる。しかし、本発明の光記録媒体100によれば、特定反射層の情報面側からの反射率が、裏面からの反射率よりも大きいため、主情報の再生を良好に行える特性(反射率)を維持しつつ、裏面から低いレーザーパワーでBCA105Yへの記録が可能となる。
結果的にBCA記録用のレーザー寿命も延命させることができ、設備コストの低減も可能となる。
【0133】
[V.その他]
以上、本発明の光記録媒体について実施形態を示して詳細に説明したが、本発明は上記の光記録媒体に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0134】
例えば、BCAは、第2記録層105以外の記録層に設けてもよい。記録層を2層以上有する光記録媒体においては、どの記録層にBCAを設けるかは任意である。また、必要に応じて、2以上の層にBCAを設けることも可能である。したがって、前記の実施形態の場合には、第1記録層102にBCAを設けることもできる。第1記録層102にBCAを設ける場合、その形状等は、第2記録層105に記載したBCA105Yと同様にして設けることができる。
【0135】
ただし、BCAは、最も裏面に近い記録層に設けることが好ましい。即ち、記録層を2層以上形成する場合には、それらの記録層のうち、裏面に最も近い記録層として特定記録層を形成することが好ましい。媒体認識信号の記録及び読み込みを、より確実に行なうようにするためである。
【0136】
また、例えば、BCAには、凹凸を形成しなくてもよい。BCAをこのように凹凸を有さない平坦な形状に形成しても、上述した本発明の利点は得ることは可能である。
さらに、光記録媒体が記録層を2以上有する多層光記録媒体である場合には、全ての記録層に対して同じ波長の記録再生光を用いず、異なる波長の記録再生光で記録層へ主情報の記録及び再生を行なってもよい。更には、青色レーザー以外の波長の記録再生光であってもよい。
【0137】
さらに、例えば、反射層は記録層に対応して設けられていればよく、必ずしも接していなくてもよい。例えば、上記実施形態では、反射層103と記録層102との間、或いは、反射層106と記録層105との間に何らかの層(例えば、第2記録層106の説明で登場した中間層や接着層など)が形成されていたとしても、その層が非常に薄い等の理由によって、主情報の記録及び再生並びに媒体認識信号の記録が可能である程度に光(記録再生光及び認識信号記録光)の透過及び熱の伝導が可能であれば、反射層103と記録層102、或いは、反射層106と記録層105とが接していなくとも構わない。
【0138】
また、図1に示した層構成はあくまで一例であり、光記録媒体100は、上記の積層構造において、必要に応じて任意の他の層を挟んでもよい。或いは、光記録媒体100の最外面に任意の他の層を設けてもよい。更に、光記録媒体100には、必要に応じて、記録再生光の入射面ではない裏面100Bに、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、或いは各種筆記具にて記入(印刷)が可能な印刷受容層を設けてもよい。また、例えば、図1に図示しない他の層(例えば、第1基板101と第1記録層102との間に下地層を挿入する。)を有する光記録媒体を製造するようにしてもよい。
【0139】
また、図1においては、特定反射層106を、組成の異なる2層からなる構成としたが、これはあくまで一例であり、特定反射層の情報面からの反射率と裏面からの反射率が前記所定の関係を有していれば、2層構造に限定されるものではない。例えば、特定反射層の膜厚方向の組成が徐々に変化するような組成傾斜膜であっても構わない。また、組成が均一な特定反射層であっても、例えば、情報面側の界面と裏面側の界面の微細構造を異ならせることにより、反射率を所定の関係に制御することが可能であれば、そのような構造も採用可能である。
また、特定反射層を3層以上の構成とすることも可能である。隣接反射層と最も裏面側の反射層の間に、更に熱伝導率の高い別の材料からなる層を設けることで、所定の反射率を維持したまま、特定反射層全体としての特性を更に好ましいものとすることができる。
【0140】
さらに、上記実施形態では、光記録媒体100の例として、有機色素を含む2つの記録層を有するデュアルレイヤタイプの片面2層HDDVD−Rを例に挙げて説明したが、本発明を適用しうる光記録媒体はこれに限られるものではない。例えば、主情報を記録するデータ領域と、媒体認識信号を記録するBCAとを少なくとも有し、かつ反射層を有する光記録媒体であれば本発明を適用することができ、これにより、本発明の効果が良好に発揮される。
例えば、主情報記録用レーザー光が膜面側から入射されるBlu−rayディスクにおいても、本発明は同様に適用することができる。
【0141】
また、本発明は、1層の記録層を有する光記録媒体に適用することもできる。その場合、前記した光記録媒体100の例から、第1記録層102および第1反射層103を除いた構成とすればよい。更には、中間層104を除いて、第1基板101の上に直接、第2記録層105を積層してもよい。1層の記録層を有する光記録媒体の場合の反射層は、第2反射層106のみということになる。
【0142】
さらに、本発明の光記録媒体は、記録層を3層以上有し、中間層を2層以上有する光記録媒体に適用することもできる。この場合、2層以上の中間層のそれぞれを形成するために、上記で説明した製造方法を適用することができる。ただし、記録層を3層以上有する光記録媒体の場合の反射層は、裏面100Bに最も近い記録層を特定記録層とし、その特定記録層に対応する反射層を特定反射層として、それぞれ、前記の第2記録層105及び第2反射層106と同様に形成することが望ましい。
さらに、上述した実施形態では、いわゆる基板面入射型の光記録媒体について説明したが、本発明は、いわゆる膜面入射型の光記録媒体にも当然に適用することができる。
【0143】
また、例えば、光記録媒体の製造方法に関しては、光記録媒体100を2枚、第1基板101を外側にして貼合わせてもよい。光記録媒体100を2枚貼り合わせることにより、記録層を4層有する大容量の媒体を得ることができる。
さらに、例えば上述した光記録媒体の製造方法を、相変化型の書き換え型コンパクトディスク(CD−RW、CD−Rewritable)又は、相変化型の書き換え型DVD・HDDVDに適用することもできる。相変化型の光記録媒体に適用する場合における記録層等の層構成については、公知のものを適宜使用することができる。相変化型のCD−RW又は書き換え型DVDは、相変化型記録材料から構成された記録層における非晶質状態と結晶状態との屈折率差によって生じる反射率差および位相差変化を利用して記録情報信号の検出が行なわれる。
また、上述した各構成要素は、適宜、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に組み合わせて実施することができる。
【実施例】
【0144】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0145】
[実施例1] 〔HD DVDR−DLの例〕
(1)光記録媒体の作製
(1−1)スタンパの用意
非晶質環状ポリオレフィン(APO)を材料として、射出成形法により、内径15mmの中心孔を有する、外径120mm、厚さ0.6mmの円盤状のスタンパ(以下、APOスタンパという場合がある。)を形成した。射出成形は、BCAを形成しうる領域、すなわち半径22.0mmから23.1mmまでの領域においてはトラックピッチ0.40μm、溝幅0.20μm、深さ65nmの案内溝を有し、データ領域すなわち半径24.5mmから58.5mmまでの領域にはトラックピッチ0.40μm、幅0.26μm、深さ60nmの案内溝を有するニッケル製原盤を使用した。なお、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により、APOスタンパには、ニッケル製原盤の案内溝(凹凸)が正確に転写されたことが確認された。
【0146】
・データ基板の製造
(1−2)第1記録層等の形成
ニッケルスタンパを用いてポリカーボネートを射出成形し、トラックピッチ0.40μm、幅0.26μm、深さ60nmの溝が形成された、直径120mm、厚さ0.58mmの基板(第1基板)を得た。なお、溝は、半径位置24.0〜58.5mmに設けられている。
次に、下記の化学式で示される分解温度250℃のシアニン色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1重量%)を調製し、これを基板上に滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し第1記録層を形成した。
さらに、第1記録層上に、Ag−Bi(Bi:1.0原子%)からなるAg合金を用いて、厚さ20nmの半透明の第1反射層をスパッタリング法により成膜した。
【0147】
【化1】

【0148】
(1−3)中間層の形成
次に、第1反射層上に、所定の紫外線硬化性樹脂〔1〕を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約20μmの第1樹脂層を形成した。一方、APOスタンパの案内溝が形成された面に、所定の紫外線硬化性樹脂〔2〕を円形に滴下し、スピナー法により厚さ約9μmの第2樹脂層(最外樹脂層)を形成した。
【0149】
次に、この第1樹脂層と第2樹脂層とが対向するように、第1基板とAPOスタンパとを貼り合わせた。続いて、APOスタンパ側から紫外線を照射して、第1樹脂層及び第2樹脂層を硬化接着させて、接着体を形成した。
なお、紫外線硬化性樹脂〔1〕,〔2〕としては、それぞれラジカル系紫外線硬化性樹脂を用いた。
【0150】
APOスタンパと第2樹脂層(最外樹脂層)との剥離は、接着体の外周部にナイフエッジを差し込んだ後、力を加えてAPOスタンパを第2樹脂層(最外樹脂層)から剥離させた。以上を経て、第1樹脂層と第2樹脂層とが積層された厚さ約29μmの中間層を形成した。
【0151】
(1−4)第2記録層等の形成
中間層の上に、第1記録層で用いたものと同じシアニン色素のテトラフルオロプロパノール溶液(濃度1重量%)を滴下してスピナー法により塗布した。塗布後、70℃で30分間乾燥し第2記録層を形成した。
続いて、第2反射層をスパッタリング法により記録層に隣接する反射層(以下、反射層1とする)を50nm、反射層1と隣接する反射層(以下、反射層2とする)を50nmの膜厚で順次成膜した。反射層1と反射層2に用いた材料は、以下の表1のとおりである。
【表1】

【0152】
さらに、第2反射層上に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートして接着層を設けた。そして、この接着層上に直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を載置して第2基板とし、紫外線を照射し硬化接着させた。
【0153】
このようにして、2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を製造した。
本実施例においては、第1基板側から主情報記録用レーザー光を照射し、媒体認識信号記録用レーザー光を第2基板側から照射することとする。すなわち、第1基板側が情報面、第2基板側が裏面となり、第2記録層が特定記録層、第2反射層が特定反射層となる。
得られた光記録媒体について、波長405nmのレーザーでデータ領域に主情報を記録し、再生を行ったところ、L1面(裏面に近い側の記録層。本検討では第2記録層。)およびL0面(情報面に近い側の記録層。本検討では第1記録層。)の何れの層においても十分な再生信号が得られた。
【0154】
(2)第2反射層の反射率の測定
鏡面ガラス(表面粗度Ra<5nm)の上に、表1に記載の反射層1を成膜後に反射層2を成膜したサンプルと、反射層2を成膜後に反射層1を成膜したサンプルを、それぞれ作製した。これらのサンプルについて、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製)にて波長405nmでの膜面側からの反射率を測定することにより、特定反射層の、情報面側からの反射率と裏面側からの反射率を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0155】
(3)光記録媒体へのBCA記録特性
上述の方法で作製した2つの記録層を有する多層型の光記録媒体について、日立コンピューター機器社製POM120−2Rを用いてBCAに媒体認識信号を記録した。レーザー波長は810nm、ビームスポット径は30μmとし、第1基板とは反対側の面(裏面)から照射した。記録条件は回転数800rpm、送りピッチ18μm、デューティー20%、記録パワー4600mWとした。
こうしてBCAに媒体認識信号を記録した光記録媒体の第2記録層から得られる変調度を、PULSTEC社製ODU1000にて測定した。
【0156】
BCAに記録された媒体認識信号は、第1基板とは反対側の面(裏面)からレーザー照射し、以下の条件にてL1面の読み取りを行った。回転数2760rpm、550KHzのカットオフ周波数を持つフィルターを通して最大の電位差(mV)をIBHとし、最小の電位差をIBLとして測定し、IBL/IBHの値を変調度とした。なお、変調度は、値が低いほど振幅が大きいことを意味するため、変調度の値が低いほど感度が良好である。光記録媒体の特性分布やドライブ等のマージンを考慮すると、媒体認識信号のIBL/IBHが0.6以下であることが好ましい。
また、L1面に主情報記録用レーザー光を照射した際の、未記録時の反射率(以下、L1面反射率と記載)についても、ODU1000によりリードパワー0.6mWで測定を行った。L1面反射率が低すぎると、主情報の記録特性に悪影響が生じるため、一定以上の値が必要とされる。通常2.6%以上あることが好ましい。
これらの測定結果を表3に示す。
【表3】

【0157】
[実施例2、比較例1−4]
第2反射層に用いる材料を表1の組み合わせの通りとした以外は、実施例1と同様な方法にて2つの記録層を有する多層型の光記録媒体を作製した。ここで、比較例1〜4においては、反射層1と反射層2を同一材料とし、結果として単層の特定反射層を形成した。得られた光記録媒体について、波長405nmのレーザーでデータ領域に主情報を記録し、再生を行ったところ、何れの実施例、比較例においても良好な再生信号が得られた。
【0158】
第2反射層の反射率についても、実施例1と同様に測定を行った。結果を上記の表2に示す。ここで、比較例については、反射層1と反射層2が同一の材料であるため、積層順を入れ替えても反射率に変化がないはずである。従って、鏡面ガラス(表面粗度Ra<5nm)の上に、表1に記載の、反射層1を成膜後に反射層2を成膜したサンプルのみをそれぞれ作製して反射率を測定した。
得られた光記録媒体を用い、実施例1と同様な方法にて、BCA記録特性(IBL/IBH)及びL1面反射率を測定した結果を上記の表3に示す。
【0159】
比較例1では、記録パワーを変更してBCAへの記録を試みたが、全く記録が出来ない状態であった。
純Ag単一層の特定反射層(比較例1)では、L1面反射率は3.0%と非常に良好であるが、BCAへの記録が不可能な状況である。これに対し、反射層2をAg94.0Cu5.0Nd1.0に変更することにより、裏面からの反射率を95.5%から82.6%にまで低減させることが出来、IBL/IBHの値も0.60と実用上十分な値を得ることが出来た。
比較例4では、Ag94.0Cu5.0Nd1.0の単一層を用いることにより、IBL/IBHが0.49と良好なBCA記録特性が得られているものの、L1面反射率は2.5%と低い値であり、主情報の記録特性上不十分な値となっている。
【0160】
これらの結果より、特定反射層において、裏面側からの反射率を情報面側からの反射率よりも小さくすることにより、主情報の記録においては高反射率を維持しつつ、良好な媒体認識信号の記録特性を実現できることがわかった。特に、裏面側からの反射率は、情報面側からの反射率に対し、5〜30%程度低いことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、レーザー波長300〜450nmで主情報を記録する光記録媒体に広く用いることができる。具体例としては、HD DVD−R、HD DVD−RW、HD DVD−RAM、BD−R、BD−RE媒体などに用いる場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の一実施形態としての片面2層の光記録媒体の要部を拡大して模式的に表わす断面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての片面2層の光記録媒体を模式的に表わす平面図である。
【図3】(a)〜(g)は、いずれも、本発明の一実施形態としての光記録媒体の製造方法を説明するため、その要部の断面を模式的に示した図である。
【図4】(a),(b)は、いずれも、本発明の一実施形態としての光記録媒体の製造方法の樹脂原料層形成工程について説明するため、その要部の断面を模式的に示した図である。
【図5】本発明の一実施形態としての光記録媒体の製造方法の樹脂原料層硬化工程について説明するため、その要部の断面を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0163】
100 光記録媒体
100A 情報面
100B 裏面
101 第1基板
102 第1記録層
103 第1反射層
104 中間層
104a 樹脂原料層(紫外線硬化性樹脂原料層)
104a1 第1樹脂層
104a2 第2樹脂層(最外樹脂層)
105 第2記録層
105X データ領域
105Y バーストカッティングエリア
106 第2反射層
106a 隣接反射層
106b 裏面反射層
107 接着層
108 第2基板
109 記録再生光
110 スタンパ
111 データ基板
112,112’ 接着体
113 光記録媒体用積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長300nm以上450nm以下の主情報記録用レーザー光を情報面から照射されて主情報を記録されるデータ領域と、該情報面に対して反対側の裏面から媒体認識信号記録用レーザー光を照射されて、媒体認識信号を記録されるバーストカッティングエリアとを有する特定記録層と、該特定記録層に対応して形成される特定反射層とを備え、該特定反射層の、前記主情報記録用レーザー光の波長における情報面側からの反射率が、裏面側からの反射率よりも大きい
ことを特徴とする、光記録媒体。
【請求項2】
2層以上の記録層を備え、該記録層のうち、前記情報面から最も遠い記録層が該特定記録層である
ことを特徴とする、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
該特定反射層の膜厚が60nm以上200nm以下である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
該特定反射層の、前記主情報記録用レーザー光の波長における、裏面側からの反射率が、55%以上85%以下である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記特定反射層が組成の異なる複数の層からなる
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記複数の層の内、該特定記録層に最も近い隣接反射層がAgを85原子%以上含有する
ことを特徴とする、請求項5に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記複数の層の内、該特定記録層に最も近い前記隣接反射層の膜厚が、30nm以上120nm以下である
ことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の光記録媒体。
【請求項8】
該特定記録層が、分解温度が100℃以上350℃以下の有機色素、及び/又は、相転移温度が100℃以上350℃以下であるアモルファス半導体を含有する
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項9】
該バーストカッティングエリアに、溝深さ15nm以上100nm以下、トラックピッチ0.1μm以上0.6μm以下、ランド幅の溝幅に対する比が0.3以上1.2以下である溝が形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光記録媒体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光記録媒体に対し、前記裏面から波長400nm以上2000nm以下の前記媒体認識信号記録用レーザー光を照射して、前記バーストカッティングエリアに前記媒体認識信号を記録する
ことを特徴とする、媒体認識信号の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−117009(P2009−117009A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292249(P2007−292249)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】