説明

光走査素子、および該光走査素子を備えた画像表示装置

【課題】光を走査する際の高速性を損なわずにミラー部の温度上昇を抑制することが可能な光走査素子を提供する。
【解決手段】光を反射する反射面1aを有するミラー部1と、ミラー部1の両端部に設けられ、ミラー部1を、反射面1aに平行に延びてミラー部1の両端部と交差する軸を中心として回転方向に往復振動可能に支持する複数対の捻りバネ56と、複数対の捻りバネ56を同時に駆動してミラー部1の往復振動を生じさせる駆動部4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復振動しながらレーザー光を反射することによって、反射光を走査する光走査素子、および該光走査素子を備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、往復振動するミラー部でレーザー光を走査する光走査素子を用いて画像を表示する画像表示装置が実用化されている。図10は、本発明に関連する光走査素子の要部構成を拡大して示す上面図である。
【0003】
図10に示す光走査素子では、レーザー光を反射する反射面を有するミラー部1が、棒状の一対の捩じりバネ15a、15bを軸として回転方向に往復振動可能とされている。一対の捩じりバネ15a、15bは、素子基板10に支持されている。この光走査素子では、素子基板10が、捩じりバネ15a、15bをその共振周波数でねじり運動させるように変形することによって、ミラー部1が捩じりバネ15a、15bを軸として回転方向に往復振動する。
【0004】
図10に示すような光走査素子を備えた画像表示装置において、画像の輝度を上げるためにはレーザー光のパワーを上げる必要がある。ところが、ミラー部1の反射率は100%ではない。そのため、図10に示す光走査素子では、パワーの大きいレーザー光がミラー部1に入射すると、入射光の一部がミラー部1に吸収されることによってミラー部1の温度が上昇する。ミラー部1の温度が上昇すると、熱膨張による歪みがミラー部1に生じる。ミラー部1に歪みが生じると、光の走査を正確に行うことが困難になる。また、ミラー部1の温度上昇によって捩りバネ15a、15bの剛性が変化し、それにより捩りバネ15a、15bの共振周波数が変化する。捩りバネ15a、15bの共振周波数が変化すると、それに伴って偏向角が変化するため、光の走査を正確に行うことが困難となる。図10に示す光走査素子では、ミラー部1で発生した熱を放熱するための放熱経路は、ミラー部1と素子基板10とを接続している捻りバネ15a、15bのみである。捻りバネ15a、15bの幅、厚さは、一般的に1mm以下の小さい寸法であるために放熱が充分に行われない場合がある。
【0005】
そこで、放熱構造を有する光走査素子が提案され、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示された光走査素子は、ミラー部が固体伝熱体を備える。固体伝熱体は熱伝導率の高い材料、たとえばAu、Ag、Al等の金属よりなる。ミラー部において光吸収により生じた熱は、反射膜から固体伝熱体を通じて外部に放熱される。
【0007】
特許文献2に開示された光走査素子には、ミラー部の反射面の裏面に、周囲雰囲気への放熱面積を大きくするための凹凸部を有する放熱部が設けられている。放熱部は、例えばAl、Ag、Auのような金属、これらの金属を含む合金、これらの金属を含む酸化物や窒化物などより作られている。ミラー部において光吸収により生じた熱は、ミラー部から放熱部を通じて外部に放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−271909号公報
【特許文献2】特開2008−39861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された光走査素子は、ミラー部が固体伝熱体と一体となった構造であるため、固体伝熱体をミラー部と一緒に往復振動させる必要がある。また、特許文献2に開示された光走査素子も、ミラー部が放熱部と一体となった構造であるため放熱部をミラー部と一緒に往復振動させる必要がある。そのため、これらの光走査素子では、ミラー部全体の重量が増えるため、共振周波数が、図10に示す光走査素子のようにミラー部単独で往復振動させる場合に比べ低下する。共振周波数が低下すると、走査速度が低下するので、光の走査の高速性が損なわれることが懸念される。
【0010】
そこで、本発明は、光を走査する際の高速性を損なわずにミラー部の温度上昇を抑制することが可能な光走査素子、および該光走査素子を備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の光走査素子は、光を反射する反射面を有するミラー部と、前記ミラー部の両端部に設けられ、前記ミラー部を、前記反射面に平行に延びて前記ミラー部の両端部と交差する軸を中心として回転方向に往復振動可能に支持する複数対の捻りバネと、前記複数対の捻りバネを同時に駆動して前記ミラー部の前記往復振動を生じさせる駆動部と、を有する。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、上記の光走査素子と、前記光走査素子の前記反射面に前記光を照射する光照射部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光走査素子が複数対の捻りバネを備えることによって、ミラー部で発生した熱の放熱経路が増加するので、ミラー部に新たな放熱手段を設けなくてもミラー部の温度上昇を抑制できる。ミラー部に新たな放熱手段を設ける必要がないと、ミラー部の重量増加を抑制できるので、共振周波数の低下を回避できる。したがって、光を走査する際の高速性を損なうことなくミラー部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像表示装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す光走査素子の一実施形態の構成を示す上面図である。
【図3】図2に示す光走査素子の斜視図である。
【図4】図2に示す光走査素子を主要な構成に分解した分解斜視図である。
【図5】圧電素子に駆動信号が入力されたときの素子基板の変形状態を示す側面図である。
【図6】圧電素子に駆動信号が入力されたときの素子基板の他の変形状態を示す側面図である。
【図7】ダンパー材が設けられていない場合に起こり得る不要振動を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の光走査素子の他の実施形態の要部構成を拡大して示す上面図である。
【図9】図1に示す光走査素子の可動部を拡大して示す上面図である。
【図10】本発明に関連する光走査素子の要部の構成を拡大して示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の画像表示装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示す画像表示装置100は、光照射部101と、光走査素子102と、を有する。光照射部101は、光103を光走査素子102に照射する。本実施形態において、光103は、画像を構成するレーザー光である。光走査素子102は、光103を反射することによって、光103に示された画像をスクリーン(不図示)に投射表示する。以下、光走査素子102の構成について詳細に説明する。
【0017】
図2は、図1に示す光走査素子の一実施形態の構成を示す上面図である。図3は、図2に示す光走査素子の斜視図である。図4は、図2に示す光走査素子を主要な構成に分解した分解斜視図である。
【0018】
図2から図4を参照すると、本実施形態の光走査素子102は、可動部8と、可動部8を駆動する駆動部4と、を有する。可動部8は、平板状のミラー部1と、搭載部2と、複数対の捻りバネ56を有する。複数対の捻りバネ56は、棒状の第1の捻りバネ5a、5bと、第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dを有する。駆動部4は、素子基板10と、4つの圧電素子12a〜12dを有する。
【0019】
ミラー部1は、光を反射する反射面1aを片面に備えている。反射面1aは、例えばAg等の金属膜あるいは誘電体多層膜で構成されている。ミラー部1は、枠状の搭載部2に搭載されている。具体的には、ミラー部1は、搭載部2内の穴に嵌合されることによって、搭載部2に固定される。
【0020】
搭載部2は、複数対の捻りバネ56を構成する第1の捻りバネ5a、5bと、第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dにより枠状の素子基板10に、往復振動可能に接続されている。本実施形態では、搭載部2と、第1の捻りバネ5a、5bと、第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dとは、例えばSUS(Stainless steel)、Siなどを主材料とし、素子基板10と一体に成型されている。
【0021】
第1の捻りバネ5a、5bは、図2に示すように、ミラー部1の両端部からX軸に沿って延びている。このX軸は、ミラー部1の反射面1aに平行で、ミラー部1の重心Gを通過し、ミラー部1の両端部と交差する。第1の捻りバネ5a、5bの各々が同じ方向にねじり運動することによって、ミラー部1は第1の捻りバネ5a、5bを軸として回転方向に往復振動する。
【0022】
第2の捻りバネ6a〜6dの各々は、両端部がX軸と平行な直線形状で、中間部に屈曲部を備えた形状となっている。第2の捻りバネ6a〜6dをこのような形状とすることで、第2の捻りバネ6a〜6dの各々の全長(軸長さ)は、第1の捻りバネ5a、5bの各々の全長よりも長くなる。これにより、第2の捻りバネ6a〜6dの剛性が第1の捻りバネ5a、5bの剛性よりも低くなる。なお、第2の捻りバネ6a〜6dの両端部が、X軸と平行な直線形状となっている理由は、第2の捻りバネ6a〜6dの両端部がX軸と平行になっていない場合、例えばX軸に対して斜めになっているとX軸に平行な場合と比較して剛性が高くなるからである。
【0023】
本実施形態では、図2に示すように、第2の捻りバネ6aと第2の捻りバネ6bが、第1の捻りバネ5aを対称軸として線対称に形成および配置されている。また、第2の捻りバネ6cと第2の捻りバネ6dが、第1の捻りバネ5bを対称軸として線対称に形成および配置されている。さらに、第2の捻りバネ6cが、X軸と直交し重心Gを通過するY軸を対称軸として第2の捻りバネ6aと線対称に形成および配置されているとともに、第2の捻りバネ6dがY軸を対称軸として第2の捻りバネ6bと線対称に形成および配置されている。なお、本実施形態では、第2の捻りバネは、二対としたが、これに限定されず偶数対であればよい。
【0024】
第1の捻りバネ5a、5bと、第2の捻りバネ6a〜6dとからなる合成の捻り共振振動の周波数は、本実施形態の光走査素子102が用いられる画像表示装置100の仕様に基づき、特定の周波数となるように調整されている。
【0025】
本実施形態の光走査素子102において、ミラー部1の両端部近傍に、ダンパー材7a(第1のダンパー材)と、ダンパー材7b(第2のダンパー材)が取り付けられている。ダンパー材7aは、第1の捻りバネ5aと第2の捻りバネ6a、6bとに取り付けられている。ダンパー材7bは、第1の捻りバネ5bと第2の捻りバネ6c、6dとに取り付けられている。ダンパー材7a、7bは、例えば紫外線で硬化するゲルなどで構成されている。
【0026】
素子基板10は、ベース3に固定され、互いに対向する第1の腕部および第2の腕部を有する。第1の捻りバネ5aの一端、第2の捻りバネ6a、6bの一端が第1の腕部の中央部に固定され、第1の捻りバネ5bの一端、第2の捻りバネ6c、6dの一端が第2の腕部の中央部に固定されている。第1の腕部の長さおよび幅は、第2の腕部の長さおよび幅と同じである。第1の腕部は、その中央部から一方向に延伸した腕部10aと、その中央部から腕部10aと反対方向に延伸した腕部10bとを有する。腕部10aには圧電素子12aが設けられ、腕部10bには圧電素子12bが設けられている。
【0027】
第2の腕部は、その中央部から腕部10aと同じ方向に延伸した腕部10cと、腕部10cと反対方向に延伸した腕部10dとを有する。腕部10cには圧電素子12cが設けられ、腕部10dには圧電素子12dが設けられている。
【0028】
次に、本実施形態の光走査素子102の動作について説明する。ここでは、光照射部101から光103が照射されるのに伴ってミラー部1を往復振動させる動作について説明する。
【0029】
まず、光照射部101から光103が反射面1aに照射されるのに伴い、圧電素子12a、12cに第1の駆動信号に基づく電圧が供給されると同時に、圧電素子12b、12dに第2の駆動信号に基づく電圧が供給される。第1の駆動信号は、第2の駆動信号とは逆位相の駆動信号である。
【0030】
図5、図6は、圧電素子12a〜12dの各々に駆動信号が入力されたときの素子基板10の変形状態を示す側面図である。図5(a)、図6(a)は、素子基板10の腕部10c、10dの変形状態を、図2に示す矢印A方向から見た側面図である。図5(b)、図6(b)は、基板10の腕部10a、10bの変形状態を、図2に示す矢印B方向から見た側面図である。図5(a)、図5(b)は、各駆動信号の前半の半周期における各腕部の変形状態を示している。一方、図6(a)、図6(b)は、各駆動信号の後半の半周期における各腕部の変形状態を示している。
【0031】
図5(a)、図5(b)に示す変形状態では、搭載部2の端部21(図4参照)が、基板10より低い位置に変位し、搭載部2の端部22(図4参照)が、基板10の面より高い位置に変位する。
【0032】
第1の駆動信号および第2の駆動信号の後半の半周期においては、腕部10a、10bの変形状態と腕部10c、10dの変形状態は互いに逆になる。すなわち、腕部10a、10bは、図6(b)に示す変形状態となり、腕部10c、10dは図6(a)に示す変形状態となる。これらの変形状態では、搭載部2の端部21が基板10の面より高い位置に変位し、搭載部2の端部22が基板10の面より低い位置に変位する。
【0033】
本実施形態では、第1の駆動信号および第2の駆動信号の周波数を第1の捻りバネ5a、5bと、第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dからなる合成の捻り共振振動の共振周波数とほぼ等しくなるように設定して、ミラー部1を、X軸を中心として回転方向に往復振動させる。この往復振動に連動して反射面1aに入射した光103がスクリーン(不図示)に走査されることによって、スクリーンに画像が表示される。
【0034】
上述したように、本実施形態の光走査素子102は、第1の捻りバネ5a、5bと、第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dからなる複数対の捻りバネ56を備えている。そのため、図10に示す光走査素子に比べミラー部1で発生した熱の放熱経路が増加しているので、ミラー部1に新たな放熱手段を設けなくてもミラー部1の温度上昇を抑制できる。ミラー部1に新たな放熱手段を設ける必要がないと、ミラー部1の重量増加を抑制できるので、共振周波数の低下を回避できる。したがって、光を走査する際の高速性を損なうことなくミラー部1の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態の光走査素子は、ダンパー材7a、7bを備えている。ここで、ダンパー材7a、7bを備える効果について説明する。本実施形態の光走査素子102は、複数対の捻りバネ56として、第1の捻りバネ5a、5bと、第1の捻りバネ5a、5bよりも共振周波数が低い第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dを備えている。そのため、ダンパー材7aが、7bが設けられていないと、図7に示すように、周波数が第1の捻りバネ5a、5bと第2の捻りバネ6a〜6dとを合成した共振周波数よりも低い不要な振動が発生する可能性がある。ダンパー材7a、7bはこの不要な振動を抑制する効果を有する。
【0036】
図7(a)は、ミラー部1が、ミラー部1の法線方向に往復する不要振動を生じた状態を示す斜視図である。図7(b)は、ミラー部1が、第1の捻りバネ5a、5bが配置されたX軸方向に直交するY軸方向を軸として往復する不要振動を生じた状態を示す斜視図である。
【0037】
図7(a)および図7(b)に示すような不要振動が発生する場合、第1の捻りバネ5a、5bと第2の捻りバネ6a〜6dは、上記のX軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向に変位差が生じるように変位している。従って、第1の捻りバネ5a、5bと第2の捻りバネ6a〜6dの間隙を埋めて、互いに隣接する捻りバネを接続するようにダンパー材7a、7bを塗布する。すると、第1の捻りバネ5a、5bと第2の捻りバネ6a〜6dのZ軸方向における変位差が発生しにくくなる。これにより、図7(a)および図7(b)に示すような不要振動の発生を抑制することが可能となる。
【0038】
次に、第2の捻りバネ6a〜6dの共振周波数を第1の捻りバネ5a、5bの共振周波数よりも低くした効果を図8〜図10を参照しながら説明する。効果を判りやすくするために捻りバネの断面形状をすべて同一にして比較している。
【0039】
図10に示す光走査素子では、ミラー部1は、一対の捻りバネ15a、15bを軸とする往復振動可能とされている。この光走査素子に求められる共振周波数が1.32kHzの場合、一対の捻りバネ15a、15bの各々の長さL1(ミラー部1と素子基板10の間隔)は、5mmになる。
【0040】
光走査素子において、ミラー部1の重量を増加させずにミラー部1の温度上昇の抑制効果を高めるためには、図8に示す光走査素子のように、棒状の捻りバネの本数を増やす構成にすればよい。図8に示す光走査素子では、捻りバネ15a、15bと同一の断面形状を持つ棒状の捻りバネ16a、16bを三対設けることによって、ミラー部1は往復振動可能に支持されている。しかし、図10に示す光走査素子に対して、単に捻りバネの本数を増やしただけでは、捻りバネ全体の剛性が高くなるため共振周波数も高くなる。そのため、図10に示す光走査素子に置き換えて使用した場合に共振周波数が変化するので光の走査の正確性が損なわれる可能性がある。そこで、図8に示す光走査素子では、共振周波数の増加を防ぐために捻りバネ16a、16bが図10に示す光走査素子の捻りバネ15a、15bよりも長くなっている。例えば、捻りバネ16a、16bの長さL2を13mmにすると共振周波数は1.37kHzになり、図10に示す光走査素子と同等の値を得られる。
【0041】
図9は、本実施形態の光走査素子の可動部8を拡大して示す上面図である。
【0042】
本実施形態では、第2の捻りバネ6a〜6dは、屈曲部を備えた形状によって、その全長が第1の捻りバネ5a、5bの全長よりも長くなっている。そのため、第2の捻りバネ6a〜6dの剛性が第1の捻りバネ5a、5bの剛性よりも低くなるのに対応して共振周波数も低くなる。また、上記の屈曲部は第2の捻りバネ6a〜6dの各々の中間部に設けられているため、図8に示す光走査素子に比べ、ミラー部1と素子基板10との間隔を詰めることが可能となる。例えば、ミラー部1と素子基板10との間隔L3を7mmとすると共振周波数は1.36kHzになるので、光走査素子の大型化を抑制しつつ図10に示す光走査素子と同等の値を得られる。
【0043】
図10に示す光走査素子では、ミラー部1で発生した熱を素子基板10へ放熱する経路は一対の捻りバネ12a、12bだけである。一方、本実施形態の光走査素子では、ミラー部1で発生した熱を素子基板10へ放熱する経路は、第1の捻りバネ5a、5bおよび第2の捻りバネ6a、6b、6c、6dである。そのため、本実施形態の光走査素子の放熱経路の数は、図10に示す光走査素子の3倍になる。そのため、例えば光源の出力が3Wであって、ミラー部1の反射率が99%であって、素子基板10の材料がSUSである場合、本実施形態の光走査素子は、図10に示す光走査素子よりもミラー部1の温度上昇を16.2℃抑えることが可能となる。
【0044】
本実施形態の光走査素子によれば、素子の大型化を招かず、かつ共振周波数の大きな増加も招かずにミラー部1で発生した熱の放熱経路を増やすことが可能となる。従ってミラー部1の放熱効果が向上する。
【0045】
なお、本実施形態では、第1の捻りバネ5a、5bおよび第2の捻りバネ6a〜6dが同じ材料とする構成であったが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第2の捻りバネ6a〜6dが第1の捻りバネ5a、5bよりも剛性の低い材料で構成されていてもよい。この構成であっても、第2の捻りバネ6a〜6dの共振周波数が、第1の捻りバネ5a、5bの共振周波数よりも低くなる。そのため、本実施形態と同様に、光を走査する際の高速性を損なわずにミラー部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 ミラー部
2 搭載部
3 ベース
4 駆動部
5a、5b 第1の捻りバネ
6a、6b、6c、6d 第2の捻りバネ
7 ダンパー材
8 可動部
10 素子基板
10a、10b、10c、10d 腕部
12a、12b、12c、12d 圧電素子
15a、15b 捻りバネ
16a、16b 捻りバネ
56 複数対の捻りバネ
100 画像表示装置
101 光照射部
102 光走査素子
103 画像光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射する反射面を有するミラー部と、
前記ミラー部の両端部に設けられ、前記ミラー部を、前記反射面に平行に延びて前記ミラー部の両端部と交差する軸を中心として回転方向に往復振動可能に支持する複数対の捻りバネと、
前記複数対の捻りバネを同時に駆動して前記ミラー部の前記往復振動を生じさせる駆動部と、を有する光走査素子。
【請求項2】
前記複数対の捻りバネは、前記ミラー部の端部から前記軸に沿って延びている棒状の第1の捻りバネと、前記第1の捻りバネの各々を対称軸として線対称に形成および配置され、前記第1の捻りバネよりも共振周波数が低い偶数個の第2の捻りバネと、が前記ミラー部の両端部にそれぞれ設けられていることにより構成されている、請求項1に記載の光走査素子。
【請求項3】
前記第2の捻りバネの材料は、前記第1の捻りバネの材料と同じであり、前記第2の捻りバネの各々は、中間部に屈曲部を備えている、請求項2に記載の光走査素子。
【請求項4】
前記第2の捻りバネの材料は、前記第1の捻りバネの材料に比べ剛性が低い、請求項2に記載の光走査素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光走査素子と、
前記光走査素子の前記反射面に前記光を照射する光照射部と、
を有する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−113043(P2012−113043A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260119(P2010−260119)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】