説明

光走査装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】MEMSミラーの必要径を最小限に抑えることができる光走査装置を提供する。
【解決手段】レーザー光源25と、レーザー光源25から出射される光ビームLを偏向するMEMSミラーと、MEMSミラーによって偏向された光ビームL1を感光ドラム(被走査面)2a上に結像させる走査レンズ30,31と、レーザー光源25から出射してMEMSミラーによって偏向された光ビームL2を検知するBDセンサ(光検知素子)32を備えた光走査装置13において、MEMSミラーからBDセンサ32に向かう光路Aをレーザー光源25からMEMSミラーに向かう光路Bと走査領域Rで囲まれる領域外に配置するとともに、走査領域Rに対して光路Bと同側に配置し、光路Aが設けられた側を書出側として感光ドラム(被走査面)2aを片側走査するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏向手段としてMEMSミラーを用いた光走査装置とこれを備えた複写機やプリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置においては、帯電器によって表面が一様に帯電された像担持体が光走査装置によって露光走査され、その表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、静電潜像は現像装置によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として顕像化され、このトナー像は、転写装置によって用紙上に転写された後に定着装置によって加熱及び加圧されて用紙上に定着され、トナー像が定着された用紙が装置外へ排出されることによって一連の画像形成動作が終了する。
【0003】
ところで、従来、光走査装置には、光ビームを走査する偏向器としてポリゴンミラーやガルバノミラーが専ら用いられているが、より高解像度の画像や高速プリントを達成するためには、これらのポリゴンミラーやガルバノミラーを更に高速で回転させる必要がある。
【0004】
しかしながら、ポリゴンミラーやガルバノミラーを高速で回転させると軸受の耐久性や風損による発熱や騒音の問題が発生し、高速走査には限界がある。
【0005】
そこで、近年、シリコンマイクロマシニング(MEMS)技術を利用した偏向器の開発が進められており、例えばマイクロミラー(以下、「MEMSミラー」と称する)とこれを軸支する捩り梁をSi基板に一体に形成し、MEMSミラー側の可動電極と固定側の固定電極との間に交流電圧を印加し、両電極間に発生する静電引力によって捩り梁を捩りながらMEMSミラーを共振を利用して往復振動させる方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記方式によれば、MEMSミラーを共振を利用して往復振動(正弦振動)させるために高速動作が可能であり、騒音と消費電力を低く抑えることができるという利点が得られる反面、MEMSミラーはポリゴンミラーに比して偏向角(振れ角)が小さく、反射面の大きさにも限界がある。
【0007】
ところが、MEMSミラーは、温度や気圧の変動によって偏向角特性が変化するため、これを画像形成装置の光走査装置に使用した場合には環境変動によってリニアリティ等の走査性能が変動する。このため、MEMSミラーの偏向角特性をモニターし、その偏向角特性に変動があった場合には、何らかの手法でその変動を補償する必要がある。例えばMEMSミラーの最大偏向角が所定の値よりも小さい場合には、MEMSミラーの電極に供給する電流を増やして最大偏向角を所定の値に近づける等の偏向角を補償する技術が必要になる。
【0008】
ところで、光走査装置の書き出し位置制御にはBDセンサ等の光検知素子が用いられるが、この光検知素子をMEMSミラーの偏向角特性のモニターに使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2924200号公報
【特許文献2】特許第3787877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2において提案された構成では、走査開始時期と走査終了時期を検出する光検知素子が感光ドラムの走査開始位置及び走査終了位置に相当する箇所にそれぞれ設けられているが、斯かる構成を採用するとMEMSミラーの必要径が大きくなってしまう。このことを図7を用いて以下に説明する。
【0011】
即ち、図7はMEMSミラーの必要径を説明する図であり、MEMSミラー36に図7の左方からビーム径Dの光ビームLが入射すると、この光ビームLはMEMSミラー36によって偏向される。走査領域で良好な結像性能を得るためには、所謂ケラレが発生しないよう光ビームLの全てがMEMSミラー36で反射するようにMEMSミラー36の径を設定する必要がある。
【0012】
光ビームLがMEMSミラー36でケラレ無しで反射して走査開始時期検出用の光検知素子に光ビームL1が向かうために必要なMEMSミラー36の径D1は図示のように小さいが、走査終了時期検出用の光検知素子に光ビームL2が向かうために必要なMEMSミラー36の径D2は図示のように大きくなる(D2>D1)。
【0013】
ここで、光ビームLとL2の成す角度を図示のようにθとすれば、光ビームL2をケラレなく反射するために必要なMEMSミラー36の必要径D2は次式によって求められる。
【0014】
D2=D/cos(θ/2) … (1)
上式によれば、必要径D2は入射角(θ/2)により決定され、θが大きければ必要径D2も大きくなる。
【0015】
而して、MEMSミラーにおいては、全偏向角と必要径とトレードオフの関係にあり、全偏向角を大きくするためにはミラー径を小さくする必要がある。走査光学系において、全偏向角が小さければ、必要な走査領域を得るために走査レンズの焦点距離を長くする必要があり、ミラー径が小さければ、被走査面での結像ビーム径を小さくするために走査レンズの焦点距離を短くする必要があり相反する。光走査装置においては、走査領域とビーム径は共に重要なパラメータであるため、MEMSミラーの必要径を小さくすることは重要である。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、MEMSミラーの必要径を最小限に抑えることができる光走査装置とこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、光源と、該光源から出射される光ビームを偏向するMEMSミラーと、該MEMSミラーによって偏向された光ビームを被走査面上に結像させる走査レンズと、前記光源から出射して前記MEMSミラーによって偏向された光ビームを検知する光検知素子を備えた光走査装置において、前記MEMSミラーから前記光検知素子に向かう光路を前記光源から前記MEMSミラーに向かう光路と走査領域で囲まれる領域外に配置するとともに、前記走査領域に対して前記光源から前記MEMSミラーに向かう光路と同側に配置し、該光路が設けられた側を書出側として被走査面を片側走査するよう構成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記MEMSミラーから前記光検知素子に向かう光路と前記走査レンズの光軸との成す角度を走査レンズの光軸と前記光源から前記MEMSミラーに向かう光路とが成す角度よりも大きく設定したことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記光検知素子は、書き出しタイミング又は前記MEMSミラーの最大偏向角の少なくとも一方を算出・制御することを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の画像形成装置は、請求項1〜3の何れかに記載の光走査装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、MEMSミラーに入射する光ビームとMEMSミラーから書出点に向かう光ビームとの成す角度は、MEMSミラーから光検知素子に向かう光ビームを含まないため、この角度を最小化することができ、この結果、MEMSミラーの必要最小径も最小化することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、MEMSミラーから光検知素子に向かう光路と走査レンズの光軸との成す角度を走査レンズの光軸と光源からMEMSミラーに向かう光路とが成す角度よりも大きく設定したため、MEMSミラーから光検知素子に向かう光ビームは走査レンズを通過せず、従って、走査レンズの主走査方向の長さを短縮して該走査レンズの小型化を図ることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、MEMSミラーの偏向角特性が変化すると、該MEMSミラーによって偏向される光ビームを検出する光検知素子の応答信号の時間間隔が変動することに着目し、この応答信号の時間間隔の変動に基づいてMEMSミラーの最大偏向角又は走査速度を算出及び制御するようにしたため、環境変動等に伴うMEMSミラーの偏向角特性の変動を高精度に補償することができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、光走査装置のMEMSミラーの環境変動等に伴う偏向角特性の変動を高精度に補償することによって画像劣化の発生を防ぎ、高質画像を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る画像形成装置(カラーレーザープリンタ)の側断面図である。
【図2】本発明の参考例に係る光走査装置要部の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の参考例に係る光走査装置の偏向素子の正面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】電圧駆動信号とMEMSミラーの偏向角及びセンサ応答信号の時間変化を示す図である。
【図6】本発明に係る光走査装置要部の構成を示す平面図である。
【図7】MEMSミラーの必要径を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の一形態としてのカラーレーザープリンタの断面図であり、図示のカラーレーザープリンタはタンデム型であって、その本体100内の中央部には、マゼンタ画像形成ユニット1M、シアン画像形成ユニット1C、イエロー画像形成ユニット1Y及びブラック画像形成ユニット1Kが一定の間隔でタンデムに配置されている。
【0028】
上記各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kには、像担持体である感光ドラム2a,2b,2c,2dがそれぞれ配置されており、各感光ドラム2a〜2dの周囲には、帯電器3a,3b,3c,3d、現像装置4a,4b,4c,4d、転写ローラ5a,5b,5c,5d及びドラムクリーニング装置6a,6b,6c,6dがそれぞれ配置されている。
【0029】
ここで、前記感光ドラム2a〜2dは、ドラム状の感光体であって、不図示の駆動モータによって図示矢印方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動される。又、前記帯電器3a〜3dは、不図示の帯電バイアス電源から印加される帯電バイアスによって感光ドラム2a〜2dの表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。
【0030】
更に、前記現像装置4a〜4dは、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー、イエロー(Y)トナー、ブラック(K)トナーをそれぞれ収容しており、各感光ドラム2a〜2d上に形成された各静電潜像に各色のトナーを付着させて各静電潜像を各色のトナー像として可視像化するものである。
【0031】
又、前記転写ローラ5a〜5dは、各一次転写部にて中間転写ベルト7を介して各感光ドラム2a〜2dに当接可能に配置されている。ここで、中間転写ベルト7は、駆動ローラ8とテンションローラ9との間に張設されて各感光ドラム2a〜2dの上面側に走行可能に配置されており、前記駆動ローラ8は、二次転写部において中間転写ベルト7を介して二次転写ローラ10に当接可能に配置されている。又、テンションローラ9の近傍にはベルトクリーニング装置11が設けられている。
【0032】
ところで、プリンタ本体100内の各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kの上方には、前記各現像装置4a〜4dにトナーを補給するためのトナーコンテナ12a,12b,12c,12dが一列に並設されている。
【0033】
又、プリンタ本体100内の各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kの下方には、各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kに対応して本発明に係る計4つの光走査装置13がそれぞれ配置され、これらの下方のプリンタ本体100の底部には給紙カセット14が着脱可能に設置されている。そして、給紙カセット14には複数枚の不図示の用紙が積層収容されており、この給紙カセット14の近傍には、該給紙カセット14から用紙を取り出すピックアップローラ15と、取り出された用紙を分離して搬送パスSへと1枚ずつ送り出すフィードローラ16とリタードローラ17が設けられている。
【0034】
又、プリンタ本体100の側部を上下方向に延びる前記搬送パスSには、用紙を搬送する搬送ローラ対18と、用紙を一時待機させた後に所定のタイミングで前記二次転写対向ローラ8と二次転写ローラ10との当接部である二次転写部へと供給するレジストローラ対19が設けられている。尚、搬送パスSの横には、用紙の両面に画像を形成する場合に使用される別の搬送パスS’が形成されており、この搬送パスS’には複数の反転ローラ対20が適当な間隔で設けられている。
【0035】
ところで、プリンタ本体100内の一側部に縦方向に配置された前記搬送パスSは、プリンタ本体100の上面に設けられた排紙トレイ21まで延びており、その途中には定着装置22と排紙ローラ対23,24が設けられている。
【0036】
次に、以上の構成を有するカラーレーザープリンタによる画像形成動作について説明する。
【0037】
画像形成開始信号が発せられると、各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kにおいて各感光ドラム2a〜2dが図示矢印方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動され、これらの感光ドラム2a〜2dは、帯電器3a〜3dによって一様に帯電される。又、各光走査装置13は、各色毎のカラー画像信号によって変調された光ビームを出射し、その光ビームを各感光ドラム2a〜2dの表面に照射し、各感光ドラム2a〜2d上に各色のカラー画像信号に対応した静電潜像をそれぞれ形成する。
【0038】
そして、先ず、マゼンタ画像形成ユニット1Mの感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、該感光ドラム2aの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによってマゼンタトナーを付着させ、該静電潜像をマゼンタトナー像として可視像化する。このマゼンタトナー像は、感光ドラム2aと転写ローラ5aとの間の一次転写部(転写ニップ部)において、トナーと逆極性の一次転写バイアスが印加された転写ローラ5aの作用によって、図示矢印方向に回転駆動されている中間転写ベルト7上に一次転写される。
【0039】
上述のようにしてマゼンタトナー像が一次転写された中間転写ベルト7は、次のシアン画像形成ユニット1Cへと移動する。そして、シアン画像形成ユニット1Cにおいても、前記と同様にして、感光ドラム2b上に形成されたシアントナー像が一次転写部において中間転写ベルト7上のマゼンタトナー像に重ねて転写される。
【0040】
以下同様にして、中間転写ベルト7上に重畳転写されたマゼンタ及びシアントナー像の上に、イエロー及びブラック画像形成ユニット1Y,1Kの各感光ドラム2c,2d上にそれぞれ形成されたイエロー及びブラックトナー像が各一次転写部において順次重ね合わせられ、中間転写ベルト7上にはフルカラーのトナー像が形成される。尚、中間転写ベルト7上に転写されないで各感光ドラム2a〜2d上に残留する転写残トナーは、各ドラムクリーニング装置6a〜6dによって除去され、各感光ドラム2a〜2dは次の画像形成に備えられる。
【0041】
そして、中間転写ベルト7上のフルカラートナー像の先端が駆動ローラ8と二次転写ローラ10間の二次転写部(転写ニップ部)に達するタイミングに合わせて、給紙カセット14からピックアップローラ15とフィードローラ16及びリタードローラ17によって搬送パスSへと送り出された用紙がレジストローラ対19によって二次転写部へと搬送される。そして、二次転写部に搬送された用紙に、トナーと逆極性の二次転写バイアスが印加された二次転写ローラ10によってフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7から一括して二次転写される。
【0042】
而して、フルカラーのトナー像が転写された用紙は、定着装置22へと搬送され、フルカラーのトナー像が加熱及び加圧されて用紙の表面に熱定着され、トナー像が定着された用紙は、排紙ローラ対23,24によって排紙トレイ21上に排出されて一連の画像形成動作が完了する。尚、用紙上に転写されないで中間転写ベルト7上に残留する転写残トナーは、前記ベルトクリーニング装置11によって除去され、中間転写ベルト7は次の画像形成に備えられる。
【0043】
[光走査装置]
次に、本発明に係る前記光走査装置13の参考例と実施の形態を図2〜図4に基づいて説明する。尚、4つの光走査装置13の構成は全て同じであるため、以下、1つの光走査装置13についてのみ説明する。
【0044】
<参考例>
図2は本発明の参考例に係る光走査装置要部の構成を示す平面図、図3は同光走査装置の偏向素子の正面図、図4は図3のA−A線断面図である。
【0045】
図2に示すように、光走査装置13にはレーザー光源(レーザーダイオード)25が備えられており、このレーザー光源25からの光ビームLの出射方向に沿ってコリメータレンズ26とシリンドリカルレンズ27及び折り返しミラー28が一直線上に配置されている。又、走査中心CL上には偏向素子29が配設されており、この偏向素子29によって偏向される光ビームL1の進行方向に沿って走査レンズ30,31がそれぞれ配設されている。
【0046】
他方、走査中心CLを境として前記レーザー光源25やコリメータレンズ26、シリンドリカルレンズ27等が配された側とは反対側(書出側)であって、且つ、光ビームL1の有効走査範囲(実際にプリント幅として使用する走査範囲)Rを外れた位置には光検知素子であるBDセンサ32と、偏向素子29によって偏向されて有効走査範囲Rを外れた光路を進む光ビームL2を折り返して前記BDセンサ32へと導くためのBDミラー33が配置されている。
【0047】
ここで、前記偏向素子29の構成と作用を図3及び図4に基づいて説明する。
【0048】
偏向素子29は、フレーム34上に接合されたSi基板35にエッチングや成膜等のマイクロマシニング技術(MEMS技術)を利用して長楕円状のMEMSミラー36とこれを支持する捩り梁37を一体に形成することによって構成されており、MEMSミラー36は捩り梁37を中心として往復振動(正弦振動)する。
【0049】
図3に示すように、上記捩り梁37の長手方向(X軸方向)両端が絶縁部38によって電気的に絶縁されており、その幅方向両側には長手方向に直交する方向(Y軸方向)に延びる櫛歯状の複数の可動電極39が形成されており、Si基板35の本体35A側には可動電極39の間に位置する複数の固定電極40が形成されており、これらの可動電極39と固定電極40は捩り梁37の長手方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。そして、図4に示すように、可動電極39と固定電極40には不図示の交流電源から延びる電線41,42がそれぞれ接続されている。
【0050】
以上のように構成された偏向素子29において、交流電源から電線41,42を経て可動電極39と固定電極40に交流電圧がそれぞれ印加されると、これらの可動電極39と固定電極40との間に静電引力が発生し、この静電引力によってMEMSミラー36が図4に鎖線にて示すように捩り梁37(Y軸)を中心として所定角度(偏向角)だけ往復振動する。尚、MEMSミラー36の駆動周波数は共振周波数に設定されており、これによってMEMSミラー36の振幅(偏向角)が拡大される。又、MEMSミラー36の表面(反射面)にはアルミニウム膜等が成膜されてその反射率が高められている。
【0051】
而して、図2に示す光走査装置13において、レーザー光源25が画像データに応じてON/OFF制御されると、該レーザー光源25から画像データに対応して変調された光ビームLが出射され、この光ビームLは、コリメータレンズ26によって適当な大きさのコリメート光に整形された後、副走査方向(Y軸方向)にのみパワーを有するシリンドリカルレンズ27に入射される。そして、シリンドリカルレンズ27を通過した光ビームLは、折り返しミラー28によって折り返された後、偏向素子29のMEMSミラー36(図3参照)に入射されて結像される。
【0052】
偏向素子29のMEMSミラー36に入射した各光ビームLは、前述のようにMEMSミラー36が往復振動することによって主走査方向(X軸方向)に偏向され、この偏向された光ビームL1は、走査レンズ30,31を通過することによって図1に示す各画像形成ユニット1M(1C,1Y,1K)の感光ドラム2a(2b,2c,2d)上に結像され、図2に示す有効走査領の一端を書出点P1、他端を書終点P2として感光ドラム2a(2b,2c,2d)上を図2の下方から上方に向かって主走査方向(図示矢印方向)に片側往復走査する。
【0053】
ところで、本参考では、図2に示すように、MEMSミラー36(偏向素子29)からBDミラー33に向かう光ビームL2の光路Aを、レーザー光源25から出射する光ビームLが折り返しミラー28からMEMSミラー36(偏向素子29)に向かう光路Bと有効走査領域Rによって囲まれる領域外に配置するとともに、該光路Aが設けられた側を書出点P1として感光ドラム2a(2b,2c,2d)を片側走査するようにしている。具体的には、MEMSミラー36(偏向素子29)からBDミラー33に向かう光ビームL2の光路Aを有効走査領域Rに対してレーザー光源25から折り返しミラー28を経てMEMSミラー36(偏向素子29)に向かう光ビームLの光路Bとは逆側に配置している。
【0054】
而して、偏向素子29のMEMSミラー36に入射した各光ビームLの一部はMEMSミラー36によって偏向され、光ビームL2として有効走査領域R以外の光路Aを通ってBDミラー33に至り、このBDミラー33によって折り返されてBDセンサ32に入射し、この光ビームL2がBDセンサ32によって検知されて光ビームL1の感光ドラム2a(2b,2c,2d)上での書き出しタイミングが決定されるとともに、MEMSミラー36の偏向角特性がモニターされる。
【0055】
ここで、図2に示すように、偏向素子29(MEMSミラー36)に入射する光ビームL(光路B)と偏向素子29(MEMSミラー36)から書出点P1に向かう光ビームL1との成す角度を図示のようにθとすると、この角度θは偏向素子29(MEMSミラー36)からBDミラー33(BDセンサ32)に向かう光ビームL2(光路A)を含んでいないため、この角度θを最小化することができる。
【0056】
上述のように角度θを最小化すれば、前式(1)から明らかなようにMEMSミラー36の必要径を最小限に抑えることができる。尚、MEMSミラー36や走査レンズ30,31及びBDミラー32においては、検知用の光ビームL2によるケラレが発生しても構わない。又、図2に示す例では、光路Aに沿う検知用の光ビームL2は走査レンズ30,31を通過しているが、走査レンズ30,31の主走査方向長さを短縮して光ビームL2が走査レンズ30,31を通過しないようにしても良く、このようにすることによって走査レンズ30,31を小型化することができる。
【0057】
次に、本発明に係る光走査装置13におけるMEMSミラー36の偏向角特性をモニターする原理を図5に基づいて説明する。
【0058】
図5は電圧駆動信号とMEMSミラーの偏向角及びセンサ応答信号の時間変化を示す図であり、偏向素子29のMEMSミラー36を駆動する(交流電源から図3に示す可動電極39と固定電極40に印加される)駆動電圧(交流電圧)の波形(駆動電圧波形)は図示のように矩形波である。
【0059】
又、MEMSミラー36は往復振動するため、その偏向角特性は図示のように正弦波を描き、駆動電圧の周波数はMEMSミラー36の偏向角特性の2倍となる。尚、図5には簡略化のためにMEMSミラー36の偏向角θの絶対値が最も大きいとき、即ちMEMSミラーが最も捩れたときに駆動電圧がONされる状態としているが、駆動電圧のDuty比等によってはMEMSミラー36が最も捩れたときと駆動電圧がONされるタイミングに多少のズレが生じることがある。
【0060】
図5において実線にて示すMEMSミラー36の偏向角特性は初期状態のものであって、環境の変動によって偏向角特性が破線にて示すように変化した場合、駆動電圧の周波数は変化しないためにMEMSミラー36の偏向角特性の周波数に変動はなく、振幅である最大偏向角θ がθ ’(>θ )に変化する。ここで、MEMSミラー36の偏向角特性が変動する前後において偏向角特性の位相に変化はないため、駆動電圧と偏向角特性の位相関係には変化はない。
【0061】
他方、BDセンサ32が光ビームL2を検知するときのMEMSミラー36の偏向角(設置偏向角)をθ とすると、この偏向角θ は不変であるため、MEMSミラー36の偏向角特性が図5に実線にて示す初期状態にあるときには、図示の時間t1においてBDセンサ32が光ビームL2を検知して図5に実線にて示す応答信号(初期センサ応答信号)を出力する。
【0062】
そして、MEMSミラー36の偏向角特性が破線にて示すように変化した場合には、図示の時間t2(>t1)においてBDセンサ32が光ビームL2を検知して図5に破線にて示す応答信号(初期センサ応答信号)を出力する。
【0063】
以上のように、環境が変動しても駆動電圧とMEMSミラー36の偏向角特性は変化しないで一定に保たれているのに対して、MEMSミラー36の偏向角特性(最大偏向角θ )とBDセンサ32の応答信号の位相が変化し、この応答信号の位相の変化とMEMSミラー36の偏向角特性の間には相関関係が成立する。
【0064】
従って、駆動手段に入力される駆動位相信号の位相とBDセンサ32の応答信号の位相との関係からMEMSミラー36の偏向状態を求めることによって、安価な構成でMEMSミラー36の偏向状態を高精度にモニターすることができる。
【0065】
具体的には、MEMSミラー36の偏向角特性が図5に実線にて示す初期状態にあるときに駆動位相信号がONされてからBDセンサ32の応答信号が出力されるまでの時間Tと、BDセンサ32の設置偏向角θ (一定)及びMEMSミラー36の偏向周波数ν(一定)を用いれば、そのときのMEMSミラー36の最大偏向角θ は次式にて求められる。
【0066】
θ =θ /sin(2πνT−π/2) … (2)
又、環境変動によってMEMSミラー36の偏向角特性が図5に破線にて示すように変化したときに駆動位相信号がONされてからBDセンサ32の応答信号が出力されるまでの時間T’を検出すれば、そのときのMEMSミラー36の最大偏向角θ ’は次式にて求められる。
【0067】
θ ’=θ /sin(2πνT’−π/2) … (3)
而して、例えば駆動制御、温度制御、LD点灯基準クロック変調制御等の手法によって(3)式にて求められる最大偏向角θ ’を(2)式にて求められる最大偏向角θ (初期値)に近づければ、環境変動等に伴うMEMSミラー36の偏向角特性の変動を補償することができ、図5に破線にて示すように変化したMEMSミラー36の偏向角特性を実線にて示す初期の変動角特性に戻すことができる。
【0068】
<実施の形態>
次に、本発明の実施の形態に係る光走査装置を図6に基づいて説明する。
【0069】
図6は本発明に係る光走査装置要部の構成を示す平面図であり、本図においては図2において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0070】
本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様に、MEMSミラー36(偏向素子29)からBDレンズ34を経てBDセンサ32に向かう光ビームL2の光路Aを、レーザー光源25から出射する光ビームLが折り返しミラー28からMEMSミラー36(偏向素子29)に向かう光路Bと有効走査領域Rによって囲まれる領域外に配置するとともに、該光路Aが設けられた側を書出点P1として感光ドラム2a(2b,2c,2d)を図6の上側から下側に向かって片側走査するようにしている。
【0071】
ところが、本実施の形態では、MEMSミラー36(偏向素子29)からBDセンサ32に向かう光ビームL2の光路Aを有効走査領域Rに対してレーザー光源25から折り返しミラー28を経てMEMSミラー36(偏向素子29)に向かう光ビームLの光路Bとは同側に配置している。又、本実施の形態では、MEMSミラー36(偏向素子29)からBDセンサ32に向かう光ビームL2の光路Aと走査レンズ30,31の光軸(走査中心CL)との成す角度θ1を走査レンズ30,31の光軸とレーザー光源25から折り返しミラー28を経てMEMSミラー36(偏向素子29)に向かう光ビームLの光路Bとが成す角度θ2よりも大きく設定している(θ1>θ2)。
【0072】
而して、本実施の形態においても、偏向素子29(MEBSミラー36)に入射する光ビームL(光路A)と偏向素子29(MEMSミラー36)から書終点P2に向かう光ビームL1との成す角度を図示のようにθとすると、この角度θは偏向素子29(MEBSミラー36)からBDセンサ32に向かう光ビームL2(光路A)を含んでいないため、この角度θを最小化することができ、前記理由にMEMSミラー36の必要径を最小限に抑えることができる。
【0073】
又、本実施の形態では、MEMSミラー36(偏向素子29)からBDセンサ32に向かう光ビームL2の光路Aと走査レンズ30,31の光軸(走査中心CL)との成す角度θ1を走査レンズ30,31の光軸とレーザー光源25から折り返しミラー28を経てMEMSミラー36(偏向素子29)に向かう光ビームLの光路Bとが成す角度θ2よりも大きく設定したため(θ1>θ2)、光ビームL2が走査レンズ30,31を通過せず、走査レンズ30,31の主走査方向長さを短縮してこれらの小型化を図ることができる。
【0074】
尚、以上は本発明をカラーレーザープリンタとこれに備えられた光走査装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、モノクロプリンタや複写機等を含む他の任意の画像形成装置及びこれに備えられた光走査装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
1M マゼンタ画像形成ユニット
1C シアン画像形成ユニット
1Y イエロー画像形成ユニット
1K ブラック画像形成ユニット
2a〜2d 感光ドラム(像担持体)
3a〜3d 帯電器
4a〜4d 現像装置
5a〜5d 転写ローラ
6a〜6d ドラムクリーニング装置
7 中間転写ベルト
8 駆動ローラ
9 テンションローラ
10 二次転写ローラ
11 ベルトクリーニング装置
12a〜12d トナーコンテナ
13 光走査装置
14 給紙カセット
15 ピックアップローラ
16 フィードローラ
17 リタードローラ
18 搬送ローラ対
19 レジストローラ対
20 搬送ローラ対
21 排紙トレイ
22 定着装置
23,24 排紙ローラ対
25 レーザー光源(光源)
26 コリメータレンズ
27 シリンドリカルレンズ
28 折り返しミラー
29 偏向素子
30,31 走査レンズ
32 BDセンサ(光検知素子)
33a,33b BDミラー
34 偏向素子のフレーム
35 Si基板
35A Si基板本体
36 偏向素子のMEMSミラー
37 偏向素子の捩り梁
38 偏向素子の絶縁部
39 偏向素子の可動電極
40 偏向素子の固定電極
41,42 偏向素子の電線
43 BDレンズ
A,B 光路
CL 走査中心
L,L1,L2 光ビーム
P1 書出点
P2 書終点
R 有効走査範囲
S,S’ 搬送パス
θ ,θ ’ MEMSミラーの最大偏向角
Δθ,Δθ’ 走査領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源から出射される光ビームを偏向するMEMSミラーと、該MEMSミラーによって偏向された光ビームを被走査面上に結像させる走査レンズと、前記光源から出射して前記MEMSミラーによって偏向された光ビームを検知する光検知素子を備えた光走査装置において、
前記MEMSミラーから前記光検知素子に向かう光路を前記光源から前記MEMSミラーに向かう光路と走査領域で囲まれる領域外に配置するとともに、前記走査領域に対して前記光源から前記MEMSミラーに向かう光路と同側に配置し、該光路が設けられた側を書出側として被走査面を片側走査するよう構成したことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記MEMSミラーから前記光検知素子に向かう光路と前記走査レンズの光軸との成す角度を走査レンズの光軸と前記光源から前記MEMSミラーに向かう光路とが成す角度よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光検知素子は、書き出しタイミング又は前記MEMSミラーの最大偏向角の少なくとも一方を算出・制御することを特徴とする請求項1又は2記載の光走査装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の光走査装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101345(P2013−101345A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255702(P2012−255702)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2009−250291(P2009−250291)の分割
【原出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】