光走査装置及び画像形成装置
【課題】高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることができる光走査装置を提供する。
【解決手段】 光源ユニットは、光源、駆動用チップ、回路基板、偏光調整部材13、及びコリメートレンズなどを有している。偏光調整部材13は、半導体レーザチップ101の発光部101aから射出された光束LB1に対向する領域14aと、発光部101bから射出された光束LB2に対向する領域14bとを有する位相シフト素子を含み、光束LB1及び光束LB2の偏光方向を、互いに直交する偏光方向に調整する。
【解決手段】 光源ユニットは、光源、駆動用チップ、回路基板、偏光調整部材13、及びコリメートレンズなどを有している。偏光調整部材13は、半導体レーザチップ101の発光部101aから射出された光束LB1に対向する領域14aと、発光部101bから射出された光束LB2に対向する領域14bとを有する位相シフト素子を含み、光束LB1及び光束LB2の偏光方向を、互いに直交する偏光方向に調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、複数の被走査面を光によって走査する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の画像記録では、レーザを用いた画像形成装置が広く用いられている。この場合、画像形成装置は光走査装置を備え、感光性を有するドラム(以下では、「感光体ドラム」という)の軸方向に光偏向器(例えば、ポリゴンミラー)を用いてレーザ光を走査しつつ、感光体ドラムを回転させ、感光体ドラムの表面に潜像を形成する方法が一般的である。
【0003】
近年、画像形成装置において、カラー化及び高速化が進み、感光体ドラムを複数(通常は4つ)有するタンデム方式の画像形成装置が普及してきている。
【0004】
複数の感光体ドラムを有する画像形成装置では、感光体ドラム毎に光源を有していた。例えば、感光体ドラムが4つの場合には、4つの光源を有していた。
【0005】
近年、画像形成装置の更なる小型化及び低コスト化が要求され、それに伴い、光走査装置に対しても、小型化及び低コスト化が要求されている。
【0006】
そこで、複数の感光体ドラムを有する画像形成装置に用いられる光走査装置における光源の数を減らす試みが提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【0007】
また、高速化とともに高解像度化を図るため、複数の発光部が2次元配列されている面発光レーザアレイを搭載した光走査装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている光走査装置では、高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の被走査面を主走査方向に沿って光走査する光走査装置であって、第1の発光部及び第2の発光部を有する光源と、前記第1の発光部から射出された光の偏光方向と、前記第2の発光部から射出された光の偏光方向を互いに直交する偏光方向とする偏光調整部材と、前記第1の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第1の光と第2の光に分割し、前記第2の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第3の光と第4の光に分割する光分割素子と、複数の反射面を有し、前記第1の光と前記第3の光が同一の反射面に入射し、前記第2の光と前記第4の光が前記同一の反射面とは異なる同一の反射面に入射し、各光束を偏向する光偏向器と、前記光偏向器で偏向された前記第1の光と前記第3の光を分離する第1の偏光分離素子と、前記光偏向器で偏向された前記第2の光と前記第4の光を分離する第2の偏光分離素子と、を備える光走査装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光走査装置によれば、高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を示す図である。
【図2】図1における光走査装置2010を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光走査装置2010を説明するための図(その2)である。
【図4】図2における光源ユニットLUを説明するための図である。
【図5】光源ユニットLUにおける光源を説明するための図である。
【図6】偏光調製素子を説明するための図である。
【図7】半導体レーザチップと偏光調製素子の位置関係、及び偏光調製素子の作用を説明するための図である。
【図8】ビームスプリッタを説明するための図(その1)である。
【図9】ビームスプリッタを説明するための図(その2)である。
【図10】偏光分離素子の偏光分離面を説明するための図である。
【図11】ポリゴンミラーの異なる偏向反射面で偏向された2つの光束の光路を説明するための図(その1)である。
【図12】ポリゴンミラーの異なる偏向反射面で偏向された2つの光束の光路を説明するための図(その2)である。
【図13】ポリゴンミラーの異なる偏向反射面で偏向された2つの光束の光路を説明するための図(その3)である。
【図14】走査制御装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】Kステーション及びCステーションで画像形成が行われているときを説明するための図である。
【図16】Yステーション及びMステーションで画像形成が行われているときを説明するための図である。
【図17】偏光調製素子の取り付け方法を説明するための図である。
【図18】偏光調製素子に設けられた遮光部を説明するための図である。
【図19】波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、該透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体層とからなり、2つの領域を有する位相シフト素子を説明するための図である。
【図20】偏光調製素子の変形例を説明するための図である。
【図21】図20の偏光調製素子における、波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、該透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体層とからなり、2つの領域を有する位相シフト素子を説明するための図である。
【図22】図22(A)及び図22(B)は、それぞれ、端面発光型半導体レーザに代えて、面発光レーザアレイが用いられる場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図22(B)に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0013】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0014】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0015】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0016】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0017】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0018】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0019】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0020】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
【0021】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
【0022】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0023】
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光束によって、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、この光走査装置2010の詳細構成については後述する。
【0024】
ところで、各感光体ドラムにおける画像情報が書き込まれる走査領域は「有効走査領域」、「画像形成領域」、あるいは「有効画像領域」などと呼ばれている。
【0025】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0026】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0027】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここでカラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
【0028】
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0029】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0030】
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
【0031】
この光走査装置2010は、一例として図2及び図3に示されるように、光源ユニットLU、ビームスプリッタ30、2つのシリンドリカルレンズ(121、122)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光分離素子(161、162)、4つの反射ミラー(M1、M2、171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び不図示の走査制御装置を有している。そして、これらは、光学ハウジング2300(図2では図示省略、図3参照)の所定位置に組み付けられている。
【0032】
光学ハウジング2300には、各感光体ドラムに向かう光束が通過するスリット状の4つの射出窓(19a、19b、19c、19d)が設けられている。各射出窓は、それぞれ防塵ガラスで覆われている。
【0033】
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0034】
光源ユニットLUは、一例として図4に示されるように、光源101、該光源101を駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ102、光源101及び駆動用チップ102が実装されている回路基板103、偏光調整部材13、及びコリメートレンズ11などを有している。
【0035】
光源101は、図5に示されるように、1つの半導体レーザチップ101を含んでいる。この半導体レーザチップ101は、2つの発光部(101a、101b)を有する端面発光型半導体レーザを含み、各発光部からは直線偏光が射出される。各発光部から射出される直線偏光の偏光方向(電界ベクトルの振動面)は、ほぼ同じであり、通常は2つの発光部を結ぶ直線と平行である。なお、上記端面発光型半導体レーザに代えて、複数の発光部が2次元的に配列されている面発光レーザアレイを用いても良い。
【0036】
以下では、発光部101aから射出された光束を「光束LB1」といい、発光部101bから射出された光束を「光束LB2」という。図4では、各光束の主光線が示されている。
【0037】
光源101は、Z軸方向に関する2つの発光部の間隔が所定値となるよう、各光束の主光線に平行な軸まわりに回転調整されることがある。この場合、各発光部から射出される直線偏光の偏光方向は、光源101の回転角に依存した方向となり、必ずしもZ軸方向に平行又は直交する方向とはならない。なお、以下では、偏光方向がZ軸方向に平行な直線偏光を「縦偏光」、これと直交する方向の直線偏光を「横偏光」という。
【0038】
偏光調整部材13は、光源101からの光束LB1及び光束LB2の偏光方向を、互いに直交する偏光方向に調整する。
【0039】
偏光調整部材13は、一例として図6に示されるように、半導体レーザチップ101からの光束LB1及び光束LB2に個別に対応した2つの領域(14a、14b)を有する位相シフト素子14を含んでいる。
【0040】
ここでは、一例として図7に示されるように、各発光部からは、縦偏光が射出されるものとする。
【0041】
光源101からの光束LB1は、位相シフト素子14の領域14aに入射し、偏光方向が90度回転した状態で領域14aから射出される。光源101からの光束LB2は、位相シフト素子14の領域14bに入射し、偏光方向を維持したまま領域14bから射出される。
【0042】
なお、偏光調整部材13は、各直線偏光の偏光方向を互いに異なる角度だけ回転させ、互いに直交する偏光方向に調整しても良い。例えば、半導体レーザチップ101から射出される各直線偏光の偏光方向がZ軸方向に対して傾斜している場合に、光束LB1が縦偏光、光束LB2が横偏光となるように各直線偏光の偏光方向を調整しても良い。
【0043】
図4に戻り、コリメートレンズ11は、偏光調整部材13からの光束LB1及び光束LB2の光路上に配置され、各光束を略平行光とする。コリメートレンズ11を通過した光束が、光源ユニットLUから射出される光束である。
【0044】
図2に戻り、ビームスプリッタ30は、光源ユニットLUからの光束LB1及び光束LB2の光路上に配置されている。
【0045】
ビームスプリッタ30は、入射する縦偏光及び横偏光に対して、透過率と反射率が等しく、かつ入射光の偏光状態を維持したままで射出するビーム分割面を有している。すなわち、該ビーム分割面はハーフミラーである。
【0046】
ビームスプリッタ30には、ビーム分割面の法線と入射光の主光線とが含まれる入射面(図8参照)に対して、偏光方向が垂直な光束LB1(縦偏光)、及び平行な光束LB2(横偏光)が入射される(図9参照)。
【0047】
光束LB1及び光束LB2は、ビームスプリッタ30により反射光と透過光とに等しい光強度で分割される。なお、以下では、光束LB1の反射光を「光束LBa」、透過光を「光束LBd」といい、光束LB2の反射光を「光束LBb」、透過光を「光束LBc」という。各光束は、偏光方向が維持されている。すなわち、光束LBa及び光束LBdは縦偏光であり、光束LBb及び光束LBcは横偏光である。
【0048】
なお、ビームスプリッタ30に入射する光の偏光方向が入射面に対して垂直及び平行でない場合、偏光方向を維持するためには、ビーム分割面でのp偏光とs偏光の位相差を正確に0°又は180°に設定する必要があり、ビーム分割面の構造が複雑化するため好ましくない。
【0049】
また、ビームスプリッタ30から射出される各光束は、ポリゴンミラー14における偏向面に対して、偏光方向が垂直な光束(縦偏光)、及び平行な光束(横偏光)となる。この場合、ポリゴンミラー14で偏向された各光束が偏向角によって偏光方向が異なることが防止され、後段での偏光分離に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0050】
シリンドリカルレンズ121は、光束LBa及び光束LBbの光路上に配置され、各光束を反射ミラーM1を介して、ポリゴンミラー14の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
【0051】
シリンドリカルレンズ122は、光束LBc及び光束LBdの光路上に配置され、各光束を反射ミラーM2を介して、ポリゴンミラー14の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
【0052】
各光源とポリゴンミラー14との間に配置されている光学系は、偏向器前光学系と呼ばれている。
【0053】
ポリゴンミラー14は、一例として4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー14は、Z軸方向に平行な軸まわりに等速回転し、シリンドリカルレンズ121からの、光束LBa及び、光束LBb、シリンドリカルレンズ122からの、光束LBc及び、光束LBdを、Z軸に直交する平面内で等角速度的に偏向する。
【0054】
なお、ポリゴンミラー14の偏向反射面で偏向された光束が経時的に形成する光線束面は、「偏向面」と呼ばれている(特開平11−202252号公報参照)。ここでは、偏向面はXY面に平行である。
【0055】
光束LBa及び光束LBbは、ポリゴンミラー14の回転軸の−X側に位置する偏向反射面に入射し、光束LBc及び光束LBdは、該回転軸の+X側に位置する偏向反射面に入射する。
【0056】
Z軸に直交する平面内において、ポリゴンミラー14に入射する際の、光束LBa及び光束LBbと、光束LBc及び光束LBdとのなす角は、略90°である(図2参照)。そこで、光束LBaと光束LBdが、それぞれの対応する感光体ドラムにおける有効走査領域を同時に走査することはない。また同様に、光束LBbと光束LBcが、それぞれの対応する感光体ドラムにおける有効走査領域を同時に走査することはない。
【0057】
光束LBa及び光束LBbはポリゴンミラー14の−X側に偏向され、光束LBc及び光束LBdはポリゴンミラー14の+X側に偏向される。
【0058】
図3に戻り、走査レンズ151は、ポリゴンミラー14の−X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0059】
偏光分離素子161は、走査レンズ151の−X側であって、走査レンズ151を介した光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0060】
偏光分離素子161は、対応する感光体ドラムの有効走査領域に向かう縦偏光の光を透過させ、横偏光の光を反射する偏光分離素子である(図10参照)。偏光分離素子としては、例えば、特開2010−134411号公報にて開示されているワイヤグーリッド偏光素子を用いることができる。そこで、光束LBaは偏光分離素子161を透過し、光束LBbは偏光分離素子161で反射される。
【0061】
偏光分離素子161を透過した光束LBaは、折り返しミラー18a及び射出窓19aを介して感光体ドラム2030aの表面に導光される。
【0062】
また、偏光分離素子161で反射された光束LBbは、反射ミラー171、折り返しミラー18b及び射出窓19bを介して感光体ドラム2030bの表面に導光される。
【0063】
走査レンズ152は、ポリゴンミラー14の+X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0064】
偏光分離素子162は、走査レンズ152の+X側であって、走査レンズ152を介した光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0065】
偏光分離素子162は、上記偏光分離素子161と同様な偏光分離素子である。そこで、光束LBdは偏光分離素子162を透過し、光束LBcは偏光分離素子162で反射される。
【0066】
偏光分離素子162を透過した光束LBdは、折り返しミラー18d及び射出窓19dを介して感光体ドラム2030dの表面に導光される。
【0067】
また、偏光分離素子162で反射された光束LBcは、反射ミラー172、折り返しミラー18c及び射出窓19cを介して感光体ドラム2030cの表面に導光される。
【0068】
各感光体ドラム上の光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラムの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が「副走査方向」である。
【0069】
走査レンズ151と偏光分離素子161と折り返しミラー18aは、「Kステーション」の走査光学系である。また、走査レンズ151と偏光分離素子161と反射ミラー171と折り返しミラー18bは、「Cステーション」の走査光学系である。
【0070】
このように、走査レンズ151と偏光分離素子161は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
【0071】
走査レンズ152と偏光分離素子162と反射ミラー172と折り返しミラー18cは、「Mステーション」の走査光学系である。また、走査レンズ152と偏光分離素子162と折り返しミラー18dは、「Yステーション」の走査光学系である。
【0072】
このように、走査レンズ152と偏光分離素子162は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
【0073】
ここでは、ポリゴンミラー14における偏向反射面の数が4面であり、反射ミラーM1を介した光束(光束LBa、光束LBb)と反射ミラーM2を介した光束(光束LBc、光束LBd)は、互いに異なる偏向反射面に入射する。そして、ポリゴンミラー14に入射する反射ミラーM1を介した光束と反射ミラーM2を介した光束とのなす角が、平面視において、略90°となるように設定されている。
【0074】
そこで、光束LBaと光束LBd、及び光束LBbと光束LBcが、それぞれの対応する感光体ドラムにおける有効走査領域を同時に走査することはない。
【0075】
例えば、図11に示されるように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける書き込み開始位置に向かう時、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、感光体ドラム2030dにおける書き込み終了位置よりも+Y側の位置に向かう。
【0076】
また、図12に示されるように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域の中央(像高0)位置に向かう時、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、+Y方向に向かう。
【0077】
そして、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域の中央(像高0)位置を越えると、光束LBdを反射するポリゴンミラー14の偏向反射面が切り替わり、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdの向かう方向は、+Y方向から−Y方向に切り替わる。
【0078】
そして、図13に示されるように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域の書き込み終了位置に向かう時、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、感光体ドラム2030dにおける書き込み開始位置よりも−Y側の位置に向かう。
【0079】
このように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、感光体ドラム2030dにおける有効走査領域内には向かわない。
【0080】
逆に、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdが、感光体ドラム2030dにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaは、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域内には向かわない。
【0081】
同様に、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBbが、感光体ドラム2030bにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBcは、感光体ドラム2030cにおける有効走査領域内には向かわない。
【0082】
また、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBcが、感光体ドラム2030cにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBbは、感光体ドラム2030bにおける有効走査領域内には向かわない。
【0083】
そこで、光束LBaが感光体ドラム2030aにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB1は、ブラックの画像情報に応じて変調され、光束LBdが感光体ドラム2030dにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB1は、イエローの画像情報に応じて変調される。
【0084】
同様に、光束LBbが感光体ドラム2030bにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB2は、シアンの画像情報に応じて変調され、光束LBcが感光体ドラム2030cにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB2は、マゼンタの画像情報に応じて変調される。
【0085】
なお、ポリゴンミラー14に入射する反射ミラーM1を介した光束と反射ミラーM2を介した光束とのなす角は、平面視において、90°から少しずれていても良い。
【0086】
次に、各感光体ドラムに潜像を形成する際の走査制御装置の動作について図14のタイミングチャートを用いて説明する。
【0087】
(1)不図示の同期検知センサが光を検知し、該同期検知センサから出力される同期検知信号がハイレベルからローレベルに変化すると、タイマのカウント値を0リセットする。
(2)APC(Auto Power Control)を行う。
(3)タイマのカウント値がtBになると、ブラックの画像情報に応じて変調された光束が発光部101aから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域が光束LBaによって走査される(図15参照)。同様にタイマのカウント値がtCになると、シアンの画像情報に応じて変調された光束が発光部101bから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030bにおける有効走査領域が光束LBbによって走査される(図15参照)。
【0088】
理想的にはtBとtCは等しい値をとるが、温度分布等により色ずれが発生することがある。その場合には、tBとtCは異なる値に設定されることがある。
【0089】
(4)次に、同期検知信号が、ハイレベルからローレベルに変化すると、タイマのカウント値を0リセットする。
(5)APCを行う。
(6)タイマのカウント値がtYになると、イエローの画像情報に応じて変調された光束が発光部101aから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030dにおける有効走査領域が光束LBdによって走査される(図16参照)。同様にタイマのカウント値がtMになると、マゼンタの画像情報に応じて変調された光束が発光部101bから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030cにおける有効走査領域が光束LBcによって走査される(図16参照)。
【0090】
理想的にはtYとtMは等しい値をとるが、温度分布等により色ずれが発生することがある。その場合は、tYとtMは異なる値に設定されることがある。
【0091】
以降、上記(1)〜(6)の動作を繰り返し行う。
【0092】
これによって、単一の光源101で4つの感光体ドラムに対する書込を行うことができる。ところで、tB、tC、tY及びtMは、予め光走査装置毎に適切な値が求められ、走査制御装置のメモリに格納されている。
【0093】
なお、図14では光源から射出される光束の光量(以下では、「射出光量」と略述する)を一定としているが、実際には、各光学素子の透過率及び反射率が相対的に異なるため、感光体ドラム毎に到達する光束の光量が異なることがある。この場合には、各感光体ドラムに到達する光束の光量がほぼ同じになるように、走査対象の感光体ドラム毎に射出光量を調整しても良い。
【0094】
また、ここでは、ブラック、イエロー、シアン及びマゼンタに対応した各走査光がそれぞれ1つの光束からなる場合について説明したが、各走査光がそれぞれ複数の光束からなっても良い。
【0095】
次に、上記偏光調整部材13について説明する。
【0096】
偏光調整部材13の位相シフト素子14では、領域14aの進相軸方向と領域14bの進相軸方向が、互いに異なる角度に設定されている。
【0097】
該位相シフト素子14での位相シフト量は、光束の波長の1/2に相当する量であり、該位相シフト素子14はいわゆる半波長素子である。
【0098】
この場合、領域14aの進相軸方向と領域14bの進相軸方向とのなす角度を45度に設定することで、入射する光束の偏光方向がいかなる方向を向いていても、領域14aから射出される光束及び領域14bから射出される偏光方向が、確実に直交するように調整できる。
【0099】
特に、領域14aの進相軸方向を、該領域14aから射出される光の偏光方向が主走査対応方向に直交する方向となる方向とし、領域14bの進相軸方向を、該領域14bから射出される光の偏光方向が主走査対応方向に平行な方向となる方向としている。これにより、各偏光分離素子での光束分離が容易になる。
【0100】
例えば、各発光部から射出される光の偏光方向がZ軸方向に対して角度φ(0°<φ<90°)だけ傾斜しており、偏光調整部材13から射出される光束LB1を縦偏光とし、光束LB2を横偏光とする場合、領域14aの進相軸の角度をφ/2、領域14bの進相軸の角度を(90+φ)/2に設定すれば良い。
【0101】
ところで、各発光部から射出される光束は発散光束であり、その発散角は面発光レーザアレイの場合、一般的には半値全幅で10°前後である。また、2つの発光部の間隔(中心間距離)としては、50μm前後が一般的である。この場合、発光部から位相シフト素子14までの距離は、285μm(=50(μm)/2/tan(10°/2))以内とすれば良い。この間隔をDとすると、図17に示されるように、各発光部と位相シフト素子までの距離がDとなるように、光源101の半導体レーザチップ101側の面からスペーサ介して偏光調整部材13を接着すれば良い。
【0102】
スペーサを介した張り合わせは、液晶素子で多く取り入れている技術であり、一例として以下のように行うことができる。
【0103】
先ず、スペーサとして硬化前の紫外線硬化型の接着剤を、位相シフト素子が接着される前の光源101の複数個所に、ディスペンサ等用いて滴下する。
【0104】
そして、領域14aが発光部101aに対向し、領域14bが発光部101bに対向するように、位相シフト素子14の位置合わせを行いながら、各発光部と位相シフト素子14との距離がDとなるように、偏光調整部材13を半導体レーザチップ101に近接させる。
【0105】
その後、紫外線を照射して接着剤を硬化させる。
【0106】
発光部からの光束のうち、半値全幅より外側の発散光が隣接する領域に入射し、ノイズ光(ゴースト光)として振舞うおそれがある。この場合、一例として図18に示されるように、位相シフト素子14における2つの領域の境界に遮光部を設けても良い。
【0107】
位相シフト素子14は、図19に示されるように、波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、前記透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体層よりなり、領域14aと領域14bとで傾斜面の稜線方向が異なっている。
【0108】
この場合、例えば、稜線方向に平行な方向が遅相軸方向、稜線方向に直交する方向が進相軸方向となるように膜設計をすることができる。具体的には、領域14aでの傾斜面の稜線方向と領域14bでの傾斜面の稜線方向とのなす角度を45°に設定し、稜線方向に平行な偏光成分と稜線方向に直交する偏光成分とで半波長の位相差が発生するように誘電体層を形成すれば良い。
【0109】
また、位相シフト素子14での位相シフト量が、光束の波長の1/4に相当する量であっても良い。この位相シフト素子は、いわゆる1/4波長素子である。
【0110】
この場合、一例として図20に示されるように、偏光調整部材13は、光束LB1及び光束LB2に個別に対応した2つの領域(141a、141b)を有する1/4波長素子141と、領域分割されていない1/4波長素子142とを組み合わせて構成される。
【0111】
例えば、各発光部から射出される光の偏光方向がZ軸方向に対して角度φ(0°<φ<90°)だけ傾斜しているとき、1/4波長素子141の領域141aの進相軸方向をφ+45°、領域141bの進相軸方向をφ−45°に設定する。これにより、1/4波長素子141を通過した光束LB1は右回り円偏光に、光束LB2は左回り円偏光に変換される。
【0112】
そして、1/4波長素子142の進相軸方向をZ軸方向に対して−45°傾斜した方向に設定することにより、偏光調整部材13から射出される光束LB1を縦偏光とし、光束LB2を横偏光とすることができる。
【0113】
1/4波長素子141の各領域の進相軸方向を、光源から射出される光の偏光方向に合せて設計・配置し、1/4波長素子142の進相軸方向を、光走査装置で扱う偏光方向に合せて設計・配置することで、光源が回転調整された場合でも、その回転角に対応した位相シフト素子を準備する必要がなく、設計変更への対応性に優れている。
【0114】
この場合、図21に示されるように、領域141aでの傾斜面の稜線方向と領域141bでの傾斜面の稜線方向とのなす角度を90°に設定し、稜線方向に平行な偏光成分と稜線方向に直交する偏光成分とで1/4波長の位相差が発生するように誘電体層を形成すれば良い。この場合、1/4波長素子141の各領域に稜線方向との角度が±45°である直線偏光を入射することで、領域141a及び領域141bで互いに回転方向の異なる円偏光を得ることができる。
【0115】
各1/4波長素子では、誘電体材料の屈折率と膜厚とで位相を調整することができる。
【0116】
図22(A)及び図22(B)には、端面発光型半導体レーザに代えて、複数の発光部が2次元的に配列されている面発光レーザアレイが用いられた場合が示されている。
【0117】
この場合、位相シフト素子は、複数の発光部に個別に対応する複数の領域を有している。また、位相シフト素子は、発光部との間隔を容易に所望の間隔とするため、光の射出方向からみたとき、その外形の大きさは、取り出し電極で囲まれる領域に含まれる大きさであることが好ましい。
【0118】
面発光レーザアレイと位相シフト素子の接着は、一例として以下のようにして行うことができる。
【0119】
(a)スペーサとしての硬化前の紫外線硬化型の接着剤を、面発光レーザアレイの複数個所に、ディスペンサ等用いて滴下する(図22(A)では4箇所)。
(b)位相シフト素子を、各発光部と対応する複数の領域の位置合わせを行いながら、各発光部と位相シフト素子との距離が前記Dとなるように、偏光調整部材を面発光レーザアレイに近接させる。
(c)紫外線を照射し、接着剤を硬化させる。
【0120】
複数の発光部から射出された各光束は、それぞれ位相シフト素子の対応する領域を通過し、所定の偏光方向となるように調整される。例えば、発光部の数が32個であれば、16個ずつ縦偏光と横偏光に調整される。この場合、ステーション毎に16ビームによるマルチビーム書込みが可能となる。
【0121】
ところで、面発光レーザアレイでは、各発光部に設けられた金属微小開口の形状によって、射出される光束の偏光方向を調整することが可能である。この技術としては、例えば「金属微小ホールアレイを用いた表面プラズモン面発光レーザ」,大西,谷川,上田,上田,O plus E,Vol.29,No.4,(2007)に開示されている。
【0122】
この場合、一の発光部から射出される光束の偏光方向と他の発光部から射出される光束の偏光方向とが直交するように、各発光部の金属微小開口の形状を設定すれば、位相シフト素子を個別に設ける必要がなくなり、小型で信頼性の高い光源を低コストで実現することができる。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、光源ユニットLU、ビームスプリッタ30、2つのシリンドリカルレンズ(121、122)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光分離素子(161、162)、4つの反射ミラー(M1、M2、171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び走査制御装置を有している。
【0124】
光源ユニットLUは、光源101、駆動用チップ102、回路基板103、偏光調整部材13、及びコリメートレンズ11などを有している。
【0125】
偏光調整部材13は、半導体レーザチップ101の発光部101aから射出された光束LB1に対向する領域14aと、発光部101bから射出された光束LB2に対向する領域14bとを有する位相シフト素子14を含み、光束LB1及び光束LB2の偏光方向を、互いに直交する偏光方向に調整する。
【0126】
これにより、偏光分離素子161は、光束LBaと光束LBbを正しく分離することができる。また、偏光分離素子162は、光束LBcと光束LBdを正しく分離することができる。
【0127】
そこで、光走査装置2010は、高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることができる。
【0128】
そして、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、その結果として、画像品質を低下させることなく、小型化を図ることができる。
【0129】
また、上記実施形態では、トナー像が感光体ドラムから転写ベルトを介して記録紙に転写される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トナー像が記録紙に直接転写されても良い。
【0130】
また、像担持体としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により可視画像を直接、像担持体に形成することができる。
【0131】
また、上記実施形態では、光走査装置がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。
【符号の説明】
【0132】
101…光源、102…駆動用チップ、103…回路基板、11…コリメートレンズ、121,122…シリンドリカルレンズ、13…偏光調整部材、14…位相シフト素子、14a,14b…領域、14…ポリゴンミラー(光偏向器)、151,152…走査レンズ(走査光学系の一部)、161…偏光分離素子(第1の偏光分離素子)、162…偏光分離素子(第2の偏光分離素子)、171,172…反射ミラー(走査光学系の一部)、18a,18b,18c,18d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、19a〜19d…射出窓、30…ビームスプリッタ、101…半導体レーザチップ、101a,101b…発光部、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2030a〜2030d…感光体ドラム(像担持体)、2010…光走査装置、LU…光源ユニット、M1,M2…反射ミラー。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2009−139639号公報
【特許文献2】特開2006−284822号公報
【特許文献3】特開2006−350167号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、複数の被走査面を光によって走査する光走査装置、及び該光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の画像記録では、レーザを用いた画像形成装置が広く用いられている。この場合、画像形成装置は光走査装置を備え、感光性を有するドラム(以下では、「感光体ドラム」という)の軸方向に光偏向器(例えば、ポリゴンミラー)を用いてレーザ光を走査しつつ、感光体ドラムを回転させ、感光体ドラムの表面に潜像を形成する方法が一般的である。
【0003】
近年、画像形成装置において、カラー化及び高速化が進み、感光体ドラムを複数(通常は4つ)有するタンデム方式の画像形成装置が普及してきている。
【0004】
複数の感光体ドラムを有する画像形成装置では、感光体ドラム毎に光源を有していた。例えば、感光体ドラムが4つの場合には、4つの光源を有していた。
【0005】
近年、画像形成装置の更なる小型化及び低コスト化が要求され、それに伴い、光走査装置に対しても、小型化及び低コスト化が要求されている。
【0006】
そこで、複数の感光体ドラムを有する画像形成装置に用いられる光走査装置における光源の数を減らす試みが提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【0007】
また、高速化とともに高解像度化を図るため、複数の発光部が2次元配列されている面発光レーザアレイを搭載した光走査装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている光走査装置では、高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の被走査面を主走査方向に沿って光走査する光走査装置であって、第1の発光部及び第2の発光部を有する光源と、前記第1の発光部から射出された光の偏光方向と、前記第2の発光部から射出された光の偏光方向を互いに直交する偏光方向とする偏光調整部材と、前記第1の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第1の光と第2の光に分割し、前記第2の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第3の光と第4の光に分割する光分割素子と、複数の反射面を有し、前記第1の光と前記第3の光が同一の反射面に入射し、前記第2の光と前記第4の光が前記同一の反射面とは異なる同一の反射面に入射し、各光束を偏向する光偏向器と、前記光偏向器で偏向された前記第1の光と前記第3の光を分離する第1の偏光分離素子と、前記光偏向器で偏向された前記第2の光と前記第4の光を分離する第2の偏光分離素子と、を備える光走査装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光走査装置によれば、高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタの概略構成を示す図である。
【図2】図1における光走査装置2010を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における光走査装置2010を説明するための図(その2)である。
【図4】図2における光源ユニットLUを説明するための図である。
【図5】光源ユニットLUにおける光源を説明するための図である。
【図6】偏光調製素子を説明するための図である。
【図7】半導体レーザチップと偏光調製素子の位置関係、及び偏光調製素子の作用を説明するための図である。
【図8】ビームスプリッタを説明するための図(その1)である。
【図9】ビームスプリッタを説明するための図(その2)である。
【図10】偏光分離素子の偏光分離面を説明するための図である。
【図11】ポリゴンミラーの異なる偏向反射面で偏向された2つの光束の光路を説明するための図(その1)である。
【図12】ポリゴンミラーの異なる偏向反射面で偏向された2つの光束の光路を説明するための図(その2)である。
【図13】ポリゴンミラーの異なる偏向反射面で偏向された2つの光束の光路を説明するための図(その3)である。
【図14】走査制御装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】Kステーション及びCステーションで画像形成が行われているときを説明するための図である。
【図16】Yステーション及びMステーションで画像形成が行われているときを説明するための図である。
【図17】偏光調製素子の取り付け方法を説明するための図である。
【図18】偏光調製素子に設けられた遮光部を説明するための図である。
【図19】波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、該透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体層とからなり、2つの領域を有する位相シフト素子を説明するための図である。
【図20】偏光調製素子の変形例を説明するための図である。
【図21】図20の偏光調製素子における、波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、該透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体層とからなり、2つの領域を有する位相シフト素子を説明するための図である。
【図22】図22(A)及び図22(B)は、それぞれ、端面発光型半導体レーザに代えて、面発光レーザアレイが用いられる場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図22(B)に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
【0013】
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
【0014】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0015】
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
【0016】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0017】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0018】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0019】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0020】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
【0021】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
【0022】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0023】
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)に基づいて色毎に変調された光束によって、対応する帯電された感光体ドラムの表面をそれぞれ走査する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、この光走査装置2010の詳細構成については後述する。
【0024】
ところで、各感光体ドラムにおける画像情報が書き込まれる走査領域は「有効走査領域」、「画像形成領域」、あるいは「有効画像領域」などと呼ばれている。
【0025】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0026】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0027】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出す。該記録紙は、所定のタイミングで転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出される。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここでカラー画像が転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
【0028】
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0029】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0030】
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
【0031】
この光走査装置2010は、一例として図2及び図3に示されるように、光源ユニットLU、ビームスプリッタ30、2つのシリンドリカルレンズ(121、122)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光分離素子(161、162)、4つの反射ミラー(M1、M2、171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び不図示の走査制御装置を有している。そして、これらは、光学ハウジング2300(図2では図示省略、図3参照)の所定位置に組み付けられている。
【0032】
光学ハウジング2300には、各感光体ドラムに向かう光束が通過するスリット状の4つの射出窓(19a、19b、19c、19d)が設けられている。各射出窓は、それぞれ防塵ガラスで覆われている。
【0033】
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0034】
光源ユニットLUは、一例として図4に示されるように、光源101、該光源101を駆動する光源駆動回路を含む駆動用チップ102、光源101及び駆動用チップ102が実装されている回路基板103、偏光調整部材13、及びコリメートレンズ11などを有している。
【0035】
光源101は、図5に示されるように、1つの半導体レーザチップ101を含んでいる。この半導体レーザチップ101は、2つの発光部(101a、101b)を有する端面発光型半導体レーザを含み、各発光部からは直線偏光が射出される。各発光部から射出される直線偏光の偏光方向(電界ベクトルの振動面)は、ほぼ同じであり、通常は2つの発光部を結ぶ直線と平行である。なお、上記端面発光型半導体レーザに代えて、複数の発光部が2次元的に配列されている面発光レーザアレイを用いても良い。
【0036】
以下では、発光部101aから射出された光束を「光束LB1」といい、発光部101bから射出された光束を「光束LB2」という。図4では、各光束の主光線が示されている。
【0037】
光源101は、Z軸方向に関する2つの発光部の間隔が所定値となるよう、各光束の主光線に平行な軸まわりに回転調整されることがある。この場合、各発光部から射出される直線偏光の偏光方向は、光源101の回転角に依存した方向となり、必ずしもZ軸方向に平行又は直交する方向とはならない。なお、以下では、偏光方向がZ軸方向に平行な直線偏光を「縦偏光」、これと直交する方向の直線偏光を「横偏光」という。
【0038】
偏光調整部材13は、光源101からの光束LB1及び光束LB2の偏光方向を、互いに直交する偏光方向に調整する。
【0039】
偏光調整部材13は、一例として図6に示されるように、半導体レーザチップ101からの光束LB1及び光束LB2に個別に対応した2つの領域(14a、14b)を有する位相シフト素子14を含んでいる。
【0040】
ここでは、一例として図7に示されるように、各発光部からは、縦偏光が射出されるものとする。
【0041】
光源101からの光束LB1は、位相シフト素子14の領域14aに入射し、偏光方向が90度回転した状態で領域14aから射出される。光源101からの光束LB2は、位相シフト素子14の領域14bに入射し、偏光方向を維持したまま領域14bから射出される。
【0042】
なお、偏光調整部材13は、各直線偏光の偏光方向を互いに異なる角度だけ回転させ、互いに直交する偏光方向に調整しても良い。例えば、半導体レーザチップ101から射出される各直線偏光の偏光方向がZ軸方向に対して傾斜している場合に、光束LB1が縦偏光、光束LB2が横偏光となるように各直線偏光の偏光方向を調整しても良い。
【0043】
図4に戻り、コリメートレンズ11は、偏光調整部材13からの光束LB1及び光束LB2の光路上に配置され、各光束を略平行光とする。コリメートレンズ11を通過した光束が、光源ユニットLUから射出される光束である。
【0044】
図2に戻り、ビームスプリッタ30は、光源ユニットLUからの光束LB1及び光束LB2の光路上に配置されている。
【0045】
ビームスプリッタ30は、入射する縦偏光及び横偏光に対して、透過率と反射率が等しく、かつ入射光の偏光状態を維持したままで射出するビーム分割面を有している。すなわち、該ビーム分割面はハーフミラーである。
【0046】
ビームスプリッタ30には、ビーム分割面の法線と入射光の主光線とが含まれる入射面(図8参照)に対して、偏光方向が垂直な光束LB1(縦偏光)、及び平行な光束LB2(横偏光)が入射される(図9参照)。
【0047】
光束LB1及び光束LB2は、ビームスプリッタ30により反射光と透過光とに等しい光強度で分割される。なお、以下では、光束LB1の反射光を「光束LBa」、透過光を「光束LBd」といい、光束LB2の反射光を「光束LBb」、透過光を「光束LBc」という。各光束は、偏光方向が維持されている。すなわち、光束LBa及び光束LBdは縦偏光であり、光束LBb及び光束LBcは横偏光である。
【0048】
なお、ビームスプリッタ30に入射する光の偏光方向が入射面に対して垂直及び平行でない場合、偏光方向を維持するためには、ビーム分割面でのp偏光とs偏光の位相差を正確に0°又は180°に設定する必要があり、ビーム分割面の構造が複雑化するため好ましくない。
【0049】
また、ビームスプリッタ30から射出される各光束は、ポリゴンミラー14における偏向面に対して、偏光方向が垂直な光束(縦偏光)、及び平行な光束(横偏光)となる。この場合、ポリゴンミラー14で偏向された各光束が偏向角によって偏光方向が異なることが防止され、後段での偏光分離に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0050】
シリンドリカルレンズ121は、光束LBa及び光束LBbの光路上に配置され、各光束を反射ミラーM1を介して、ポリゴンミラー14の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
【0051】
シリンドリカルレンズ122は、光束LBc及び光束LBdの光路上に配置され、各光束を反射ミラーM2を介して、ポリゴンミラー14の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
【0052】
各光源とポリゴンミラー14との間に配置されている光学系は、偏向器前光学系と呼ばれている。
【0053】
ポリゴンミラー14は、一例として4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー14は、Z軸方向に平行な軸まわりに等速回転し、シリンドリカルレンズ121からの、光束LBa及び、光束LBb、シリンドリカルレンズ122からの、光束LBc及び、光束LBdを、Z軸に直交する平面内で等角速度的に偏向する。
【0054】
なお、ポリゴンミラー14の偏向反射面で偏向された光束が経時的に形成する光線束面は、「偏向面」と呼ばれている(特開平11−202252号公報参照)。ここでは、偏向面はXY面に平行である。
【0055】
光束LBa及び光束LBbは、ポリゴンミラー14の回転軸の−X側に位置する偏向反射面に入射し、光束LBc及び光束LBdは、該回転軸の+X側に位置する偏向反射面に入射する。
【0056】
Z軸に直交する平面内において、ポリゴンミラー14に入射する際の、光束LBa及び光束LBbと、光束LBc及び光束LBdとのなす角は、略90°である(図2参照)。そこで、光束LBaと光束LBdが、それぞれの対応する感光体ドラムにおける有効走査領域を同時に走査することはない。また同様に、光束LBbと光束LBcが、それぞれの対応する感光体ドラムにおける有効走査領域を同時に走査することはない。
【0057】
光束LBa及び光束LBbはポリゴンミラー14の−X側に偏向され、光束LBc及び光束LBdはポリゴンミラー14の+X側に偏向される。
【0058】
図3に戻り、走査レンズ151は、ポリゴンミラー14の−X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0059】
偏光分離素子161は、走査レンズ151の−X側であって、走査レンズ151を介した光束LBa及び光束LBbの光路上に配置されている。
【0060】
偏光分離素子161は、対応する感光体ドラムの有効走査領域に向かう縦偏光の光を透過させ、横偏光の光を反射する偏光分離素子である(図10参照)。偏光分離素子としては、例えば、特開2010−134411号公報にて開示されているワイヤグーリッド偏光素子を用いることができる。そこで、光束LBaは偏光分離素子161を透過し、光束LBbは偏光分離素子161で反射される。
【0061】
偏光分離素子161を透過した光束LBaは、折り返しミラー18a及び射出窓19aを介して感光体ドラム2030aの表面に導光される。
【0062】
また、偏光分離素子161で反射された光束LBbは、反射ミラー171、折り返しミラー18b及び射出窓19bを介して感光体ドラム2030bの表面に導光される。
【0063】
走査レンズ152は、ポリゴンミラー14の+X側であって、ポリゴンミラー14で偏向された光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0064】
偏光分離素子162は、走査レンズ152の+X側であって、走査レンズ152を介した光束LBc及び光束LBdの光路上に配置されている。
【0065】
偏光分離素子162は、上記偏光分離素子161と同様な偏光分離素子である。そこで、光束LBdは偏光分離素子162を透過し、光束LBcは偏光分離素子162で反射される。
【0066】
偏光分離素子162を透過した光束LBdは、折り返しミラー18d及び射出窓19dを介して感光体ドラム2030dの表面に導光される。
【0067】
また、偏光分離素子162で反射された光束LBcは、反射ミラー172、折り返しミラー18c及び射出窓19cを介して感光体ドラム2030cの表面に導光される。
【0068】
各感光体ドラム上の光スポットは、ポリゴンミラー14の回転に伴って感光体ドラムの長手方向に移動する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が「副走査方向」である。
【0069】
走査レンズ151と偏光分離素子161と折り返しミラー18aは、「Kステーション」の走査光学系である。また、走査レンズ151と偏光分離素子161と反射ミラー171と折り返しミラー18bは、「Cステーション」の走査光学系である。
【0070】
このように、走査レンズ151と偏光分離素子161は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
【0071】
走査レンズ152と偏光分離素子162と反射ミラー172と折り返しミラー18cは、「Mステーション」の走査光学系である。また、走査レンズ152と偏光分離素子162と折り返しミラー18dは、「Yステーション」の走査光学系である。
【0072】
このように、走査レンズ152と偏光分離素子162は、2つの画像形成ステーションで共用されている。
【0073】
ここでは、ポリゴンミラー14における偏向反射面の数が4面であり、反射ミラーM1を介した光束(光束LBa、光束LBb)と反射ミラーM2を介した光束(光束LBc、光束LBd)は、互いに異なる偏向反射面に入射する。そして、ポリゴンミラー14に入射する反射ミラーM1を介した光束と反射ミラーM2を介した光束とのなす角が、平面視において、略90°となるように設定されている。
【0074】
そこで、光束LBaと光束LBd、及び光束LBbと光束LBcが、それぞれの対応する感光体ドラムにおける有効走査領域を同時に走査することはない。
【0075】
例えば、図11に示されるように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける書き込み開始位置に向かう時、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、感光体ドラム2030dにおける書き込み終了位置よりも+Y側の位置に向かう。
【0076】
また、図12に示されるように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域の中央(像高0)位置に向かう時、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、+Y方向に向かう。
【0077】
そして、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域の中央(像高0)位置を越えると、光束LBdを反射するポリゴンミラー14の偏向反射面が切り替わり、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdの向かう方向は、+Y方向から−Y方向に切り替わる。
【0078】
そして、図13に示されるように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域の書き込み終了位置に向かう時、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、感光体ドラム2030dにおける書き込み開始位置よりも−Y側の位置に向かう。
【0079】
このように、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaが、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdは、感光体ドラム2030dにおける有効走査領域内には向かわない。
【0080】
逆に、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBdが、感光体ドラム2030dにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBaは、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域内には向かわない。
【0081】
同様に、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBbが、感光体ドラム2030bにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBcは、感光体ドラム2030cにおける有効走査領域内には向かわない。
【0082】
また、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBcが、感光体ドラム2030cにおける有効走査領域を走査している時には、ポリゴンミラー14の偏向反射面で反射された光束LBbは、感光体ドラム2030bにおける有効走査領域内には向かわない。
【0083】
そこで、光束LBaが感光体ドラム2030aにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB1は、ブラックの画像情報に応じて変調され、光束LBdが感光体ドラム2030dにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB1は、イエローの画像情報に応じて変調される。
【0084】
同様に、光束LBbが感光体ドラム2030bにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB2は、シアンの画像情報に応じて変調され、光束LBcが感光体ドラム2030cにおける有効走査領域を走査するタイミングでは、光束LB2は、マゼンタの画像情報に応じて変調される。
【0085】
なお、ポリゴンミラー14に入射する反射ミラーM1を介した光束と反射ミラーM2を介した光束とのなす角は、平面視において、90°から少しずれていても良い。
【0086】
次に、各感光体ドラムに潜像を形成する際の走査制御装置の動作について図14のタイミングチャートを用いて説明する。
【0087】
(1)不図示の同期検知センサが光を検知し、該同期検知センサから出力される同期検知信号がハイレベルからローレベルに変化すると、タイマのカウント値を0リセットする。
(2)APC(Auto Power Control)を行う。
(3)タイマのカウント値がtBになると、ブラックの画像情報に応じて変調された光束が発光部101aから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030aにおける有効走査領域が光束LBaによって走査される(図15参照)。同様にタイマのカウント値がtCになると、シアンの画像情報に応じて変調された光束が発光部101bから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030bにおける有効走査領域が光束LBbによって走査される(図15参照)。
【0088】
理想的にはtBとtCは等しい値をとるが、温度分布等により色ずれが発生することがある。その場合には、tBとtCは異なる値に設定されることがある。
【0089】
(4)次に、同期検知信号が、ハイレベルからローレベルに変化すると、タイマのカウント値を0リセットする。
(5)APCを行う。
(6)タイマのカウント値がtYになると、イエローの画像情報に応じて変調された光束が発光部101aから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030dにおける有効走査領域が光束LBdによって走査される(図16参照)。同様にタイマのカウント値がtMになると、マゼンタの画像情報に応じて変調された光束が発光部101bから射出されるように、光源101の光源駆動回路を制御する。これによって、感光体ドラム2030cにおける有効走査領域が光束LBcによって走査される(図16参照)。
【0090】
理想的にはtYとtMは等しい値をとるが、温度分布等により色ずれが発生することがある。その場合は、tYとtMは異なる値に設定されることがある。
【0091】
以降、上記(1)〜(6)の動作を繰り返し行う。
【0092】
これによって、単一の光源101で4つの感光体ドラムに対する書込を行うことができる。ところで、tB、tC、tY及びtMは、予め光走査装置毎に適切な値が求められ、走査制御装置のメモリに格納されている。
【0093】
なお、図14では光源から射出される光束の光量(以下では、「射出光量」と略述する)を一定としているが、実際には、各光学素子の透過率及び反射率が相対的に異なるため、感光体ドラム毎に到達する光束の光量が異なることがある。この場合には、各感光体ドラムに到達する光束の光量がほぼ同じになるように、走査対象の感光体ドラム毎に射出光量を調整しても良い。
【0094】
また、ここでは、ブラック、イエロー、シアン及びマゼンタに対応した各走査光がそれぞれ1つの光束からなる場合について説明したが、各走査光がそれぞれ複数の光束からなっても良い。
【0095】
次に、上記偏光調整部材13について説明する。
【0096】
偏光調整部材13の位相シフト素子14では、領域14aの進相軸方向と領域14bの進相軸方向が、互いに異なる角度に設定されている。
【0097】
該位相シフト素子14での位相シフト量は、光束の波長の1/2に相当する量であり、該位相シフト素子14はいわゆる半波長素子である。
【0098】
この場合、領域14aの進相軸方向と領域14bの進相軸方向とのなす角度を45度に設定することで、入射する光束の偏光方向がいかなる方向を向いていても、領域14aから射出される光束及び領域14bから射出される偏光方向が、確実に直交するように調整できる。
【0099】
特に、領域14aの進相軸方向を、該領域14aから射出される光の偏光方向が主走査対応方向に直交する方向となる方向とし、領域14bの進相軸方向を、該領域14bから射出される光の偏光方向が主走査対応方向に平行な方向となる方向としている。これにより、各偏光分離素子での光束分離が容易になる。
【0100】
例えば、各発光部から射出される光の偏光方向がZ軸方向に対して角度φ(0°<φ<90°)だけ傾斜しており、偏光調整部材13から射出される光束LB1を縦偏光とし、光束LB2を横偏光とする場合、領域14aの進相軸の角度をφ/2、領域14bの進相軸の角度を(90+φ)/2に設定すれば良い。
【0101】
ところで、各発光部から射出される光束は発散光束であり、その発散角は面発光レーザアレイの場合、一般的には半値全幅で10°前後である。また、2つの発光部の間隔(中心間距離)としては、50μm前後が一般的である。この場合、発光部から位相シフト素子14までの距離は、285μm(=50(μm)/2/tan(10°/2))以内とすれば良い。この間隔をDとすると、図17に示されるように、各発光部と位相シフト素子までの距離がDとなるように、光源101の半導体レーザチップ101側の面からスペーサ介して偏光調整部材13を接着すれば良い。
【0102】
スペーサを介した張り合わせは、液晶素子で多く取り入れている技術であり、一例として以下のように行うことができる。
【0103】
先ず、スペーサとして硬化前の紫外線硬化型の接着剤を、位相シフト素子が接着される前の光源101の複数個所に、ディスペンサ等用いて滴下する。
【0104】
そして、領域14aが発光部101aに対向し、領域14bが発光部101bに対向するように、位相シフト素子14の位置合わせを行いながら、各発光部と位相シフト素子14との距離がDとなるように、偏光調整部材13を半導体レーザチップ101に近接させる。
【0105】
その後、紫外線を照射して接着剤を硬化させる。
【0106】
発光部からの光束のうち、半値全幅より外側の発散光が隣接する領域に入射し、ノイズ光(ゴースト光)として振舞うおそれがある。この場合、一例として図18に示されるように、位相シフト素子14における2つの領域の境界に遮光部を設けても良い。
【0107】
位相シフト素子14は、図19に示されるように、波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、前記透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体層よりなり、領域14aと領域14bとで傾斜面の稜線方向が異なっている。
【0108】
この場合、例えば、稜線方向に平行な方向が遅相軸方向、稜線方向に直交する方向が進相軸方向となるように膜設計をすることができる。具体的には、領域14aでの傾斜面の稜線方向と領域14bでの傾斜面の稜線方向とのなす角度を45°に設定し、稜線方向に平行な偏光成分と稜線方向に直交する偏光成分とで半波長の位相差が発生するように誘電体層を形成すれば良い。
【0109】
また、位相シフト素子14での位相シフト量が、光束の波長の1/4に相当する量であっても良い。この位相シフト素子は、いわゆる1/4波長素子である。
【0110】
この場合、一例として図20に示されるように、偏光調整部材13は、光束LB1及び光束LB2に個別に対応した2つの領域(141a、141b)を有する1/4波長素子141と、領域分割されていない1/4波長素子142とを組み合わせて構成される。
【0111】
例えば、各発光部から射出される光の偏光方向がZ軸方向に対して角度φ(0°<φ<90°)だけ傾斜しているとき、1/4波長素子141の領域141aの進相軸方向をφ+45°、領域141bの進相軸方向をφ−45°に設定する。これにより、1/4波長素子141を通過した光束LB1は右回り円偏光に、光束LB2は左回り円偏光に変換される。
【0112】
そして、1/4波長素子142の進相軸方向をZ軸方向に対して−45°傾斜した方向に設定することにより、偏光調整部材13から射出される光束LB1を縦偏光とし、光束LB2を横偏光とすることができる。
【0113】
1/4波長素子141の各領域の進相軸方向を、光源から射出される光の偏光方向に合せて設計・配置し、1/4波長素子142の進相軸方向を、光走査装置で扱う偏光方向に合せて設計・配置することで、光源が回転調整された場合でも、その回転角に対応した位相シフト素子を準備する必要がなく、設計変更への対応性に優れている。
【0114】
この場合、図21に示されるように、領域141aでの傾斜面の稜線方向と領域141bでの傾斜面の稜線方向とのなす角度を90°に設定し、稜線方向に平行な偏光成分と稜線方向に直交する偏光成分とで1/4波長の位相差が発生するように誘電体層を形成すれば良い。この場合、1/4波長素子141の各領域に稜線方向との角度が±45°である直線偏光を入射することで、領域141a及び領域141bで互いに回転方向の異なる円偏光を得ることができる。
【0115】
各1/4波長素子では、誘電体材料の屈折率と膜厚とで位相を調整することができる。
【0116】
図22(A)及び図22(B)には、端面発光型半導体レーザに代えて、複数の発光部が2次元的に配列されている面発光レーザアレイが用いられた場合が示されている。
【0117】
この場合、位相シフト素子は、複数の発光部に個別に対応する複数の領域を有している。また、位相シフト素子は、発光部との間隔を容易に所望の間隔とするため、光の射出方向からみたとき、その外形の大きさは、取り出し電極で囲まれる領域に含まれる大きさであることが好ましい。
【0118】
面発光レーザアレイと位相シフト素子の接着は、一例として以下のようにして行うことができる。
【0119】
(a)スペーサとしての硬化前の紫外線硬化型の接着剤を、面発光レーザアレイの複数個所に、ディスペンサ等用いて滴下する(図22(A)では4箇所)。
(b)位相シフト素子を、各発光部と対応する複数の領域の位置合わせを行いながら、各発光部と位相シフト素子との距離が前記Dとなるように、偏光調整部材を面発光レーザアレイに近接させる。
(c)紫外線を照射し、接着剤を硬化させる。
【0120】
複数の発光部から射出された各光束は、それぞれ位相シフト素子の対応する領域を通過し、所定の偏光方向となるように調整される。例えば、発光部の数が32個であれば、16個ずつ縦偏光と横偏光に調整される。この場合、ステーション毎に16ビームによるマルチビーム書込みが可能となる。
【0121】
ところで、面発光レーザアレイでは、各発光部に設けられた金属微小開口の形状によって、射出される光束の偏光方向を調整することが可能である。この技術としては、例えば「金属微小ホールアレイを用いた表面プラズモン面発光レーザ」,大西,谷川,上田,上田,O plus E,Vol.29,No.4,(2007)に開示されている。
【0122】
この場合、一の発光部から射出される光束の偏光方向と他の発光部から射出される光束の偏光方向とが直交するように、各発光部の金属微小開口の形状を設定すれば、位相シフト素子を個別に設ける必要がなくなり、小型で信頼性の高い光源を低コストで実現することができる。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、光源ユニットLU、ビームスプリッタ30、2つのシリンドリカルレンズ(121、122)、ポリゴンミラー14、2つの走査レンズ(151、152)、2つの偏光分離素子(161、162)、4つの反射ミラー(M1、M2、171、172)、4つの折り返しミラー(18a、18b、18c、18d)、及び走査制御装置を有している。
【0124】
光源ユニットLUは、光源101、駆動用チップ102、回路基板103、偏光調整部材13、及びコリメートレンズ11などを有している。
【0125】
偏光調整部材13は、半導体レーザチップ101の発光部101aから射出された光束LB1に対向する領域14aと、発光部101bから射出された光束LB2に対向する領域14bとを有する位相シフト素子14を含み、光束LB1及び光束LB2の偏光方向を、互いに直交する偏光方向に調整する。
【0126】
これにより、偏光分離素子161は、光束LBaと光束LBbを正しく分離することができる。また、偏光分離素子162は、光束LBcと光束LBdを正しく分離することができる。
【0127】
そこで、光走査装置2010は、高コスト化及び走査精度の低下を招くことなく、小型化を図ることができる。
【0128】
そして、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、その結果として、画像品質を低下させることなく、小型化を図ることができる。
【0129】
また、上記実施形態では、トナー像が感光体ドラムから転写ベルトを介して記録紙に転写される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トナー像が記録紙に直接転写されても良い。
【0130】
また、像担持体としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により可視画像を直接、像担持体に形成することができる。
【0131】
また、上記実施形態では、光走査装置がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。
【符号の説明】
【0132】
101…光源、102…駆動用チップ、103…回路基板、11…コリメートレンズ、121,122…シリンドリカルレンズ、13…偏光調整部材、14…位相シフト素子、14a,14b…領域、14…ポリゴンミラー(光偏向器)、151,152…走査レンズ(走査光学系の一部)、161…偏光分離素子(第1の偏光分離素子)、162…偏光分離素子(第2の偏光分離素子)、171,172…反射ミラー(走査光学系の一部)、18a,18b,18c,18d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、19a〜19d…射出窓、30…ビームスプリッタ、101…半導体レーザチップ、101a,101b…発光部、2000…カラープリンタ(画像形成装置)、2030a〜2030d…感光体ドラム(像担持体)、2010…光走査装置、LU…光源ユニット、M1,M2…反射ミラー。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2009−139639号公報
【特許文献2】特開2006−284822号公報
【特許文献3】特開2006−350167号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被走査面を主走査方向に沿って光走査する光走査装置であって、
第1の発光部及び第2の発光部を有する光源と、
前記第1の発光部から射出された光の偏光方向と、前記第2の発光部から射出された光の偏光方向を互いに直交する偏光方向とする偏光調整部材と、
前記第1の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第1の光と第2の光に分割し、前記第2の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第3の光と第4の光に分割する光分割素子と、
複数の反射面を有し、前記第1の光と前記第3の光が同一の反射面に入射し、前記第2の光と前記第4の光が前記同一の反射面とは異なる同一の反射面に入射し、各光束を偏向する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向された前記第1の光と前記第3の光を分離する第1の偏光分離素子と、
前記光偏向器で偏向された前記第2の光と前記第4の光を分離する第2の偏光分離素子と、を備える光走査装置。
【請求項2】
前記偏光調整部材は、前記第1の発光部から射出された光が入射する第1の領域と、前記第2の発光部から射出された光が入射する第2の領域を有する位相シフト素子を含み、
前記第1の領域の進相軸方向と、前記第2の領域の進相軸方向とが、互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記位相シフト素子は、半波長の位相差を発生させ、
前記第1の領域の進相軸方向と前記第2の領域の進相軸方向とのなす角度が45度であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1の領域の進相軸方向は、前記第1の領域から射出される光の偏光方向が前記主走査方向に直交する方向となる方向であり、
前記第2の領域の進相軸方向は、前記第2の領域から射出される光の偏光方向が前記主走査方向に平行な方向となる方向であることを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記位相シフト素子は、波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、該透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体材料よりなり、前記第1の領域と前記第2の領域とで前記傾斜面の稜線方向が異なることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光源は、面発光レーザアレイを含み、
前記位相シフト素子は、前記面発光レーザアレイの射出面との間に空隙が設けられた状態で前記面発光レーザアレイに接着されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記偏光調整部材は、前記第1の発光部から射出された光が入射する第1の領域と、前記第2の発光部から射出された光が入射する第2の領域を有する第1の位相シフト素子と、該第1の位相シフト素子を通過した光が入射され領域分割されていない第2の位相シフト素子とを含み、
前記第1の領域の進相軸方向は、前記第1の領域から射出される光が円偏光となる方向であり、前記第2の領域の進相軸方向は、前記第2の領域から射出される光が前記第1の領域から射出される円偏光とは反対回りの円偏光となる方向であり、
前記第2の位相シフト素子の進相軸方向は、前記第1の領域を通過した光が前記主走査方向に直交する方向の直線偏光となるとともに、前記第2の領域を通過した光が前記主走査方向に平行な方向の直線偏光となる方向であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項8】
複数の像担持体と、
前記複数の像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する請求項1〜7のいずれか一項に記載の光走査装置と、を備える画像形成装置。
【請求項1】
複数の被走査面を主走査方向に沿って光走査する光走査装置であって、
第1の発光部及び第2の発光部を有する光源と、
前記第1の発光部から射出された光の偏光方向と、前記第2の発光部から射出された光の偏光方向を互いに直交する偏光方向とする偏光調整部材と、
前記第1の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第1の光と第2の光に分割し、前記第2の発光部から射出された光をその偏光状態を維持したまま第3の光と第4の光に分割する光分割素子と、
複数の反射面を有し、前記第1の光と前記第3の光が同一の反射面に入射し、前記第2の光と前記第4の光が前記同一の反射面とは異なる同一の反射面に入射し、各光束を偏向する光偏向器と、
前記光偏向器で偏向された前記第1の光と前記第3の光を分離する第1の偏光分離素子と、
前記光偏向器で偏向された前記第2の光と前記第4の光を分離する第2の偏光分離素子と、を備える光走査装置。
【請求項2】
前記偏光調整部材は、前記第1の発光部から射出された光が入射する第1の領域と、前記第2の発光部から射出された光が入射する第2の領域を有する位相シフト素子を含み、
前記第1の領域の進相軸方向と、前記第2の領域の進相軸方向とが、互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記位相シフト素子は、半波長の位相差を発生させ、
前記第1の領域の進相軸方向と前記第2の領域の進相軸方向とのなす角度が45度であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1の領域の進相軸方向は、前記第1の領域から射出される光の偏光方向が前記主走査方向に直交する方向となる方向であり、
前記第2の領域の進相軸方向は、前記第2の領域から射出される光の偏光方向が前記主走査方向に平行な方向となる方向であることを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記位相シフト素子は、波長以下の周期で形成された傾斜面を有する透明基材と、該透明基材の傾斜面上に積層された複数の誘電体材料よりなり、前記第1の領域と前記第2の領域とで前記傾斜面の稜線方向が異なることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光源は、面発光レーザアレイを含み、
前記位相シフト素子は、前記面発光レーザアレイの射出面との間に空隙が設けられた状態で前記面発光レーザアレイに接着されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記偏光調整部材は、前記第1の発光部から射出された光が入射する第1の領域と、前記第2の発光部から射出された光が入射する第2の領域を有する第1の位相シフト素子と、該第1の位相シフト素子を通過した光が入射され領域分割されていない第2の位相シフト素子とを含み、
前記第1の領域の進相軸方向は、前記第1の領域から射出される光が円偏光となる方向であり、前記第2の領域の進相軸方向は、前記第2の領域から射出される光が前記第1の領域から射出される円偏光とは反対回りの円偏光となる方向であり、
前記第2の位相シフト素子の進相軸方向は、前記第1の領域を通過した光が前記主走査方向に直交する方向の直線偏光となるとともに、前記第2の領域を通過した光が前記主走査方向に平行な方向の直線偏光となる方向であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項8】
複数の像担持体と、
前記複数の像担持体に対して画像情報に応じて変調された光を走査する請求項1〜7のいずれか一項に記載の光走査装置と、を備える画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【公開番号】特開2013−68698(P2013−68698A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205720(P2011−205720)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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