説明

光走査装置

【課題】回転軸の一方の方向の寸法を抑えた光走査装置における偏向面駆動部。
【解決手段】第1走査部20と、主走査用に第1走査部20を第1方向に平行な軸周りに回転自在に保持する第2走査部40と、副走査用に第2走査部40を第2方向に平行な軸周りに回転自在に保持するフレーム50を備える。第1走査部20は、入射光の光路を反射により偏向する走査ミラー30と、第2方向に突出した櫛歯で構成された第1櫛歯部を有する。第2走査部40は、第2方向に突出した櫛歯で構成された第2櫛歯部と、第1方向に突出した櫛歯で構成された第3櫛歯部を有する。フレーム50は、第1方向に突出した櫛歯で構成された第4櫛歯部を有する。第1櫛歯部を構成する櫛歯は第2櫛歯部を構成する櫛歯と交互に、第3櫛歯部を構成する櫛歯は第4櫛歯部を構成する櫛歯と交互に配置される。第1、第3櫛歯部、及び走査ミラーは、第1方向に並べられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、特に光走査装置における光源からの光を偏向させる偏向面を含む偏向面駆動部について、偏向面の回転軸の一方の方向の寸法を抑える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの光を偏向させる光走査装置が提案されている。
【0003】
特許文献1は、第1方向に平行な軸周り、及び第1方向に垂直な第2方向に平行な軸周りに回転可能な走査ミラーを含む光走査装置を開示する。
【特許文献1】特開2007−171780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、走査ミラーを回転させるために使用される櫛歯部が、走査ミラーを通り且つ第1方向に平行な線上にも、走査ミラーを通り且つ第2方向に平行な線上にも配置される。このため、光走査装置における第1方向の寸法も、第2方向の寸法も長くなってしまう問題があった。
【0005】
したがって本発明の目的は、回転軸の一方の方向の寸法を抑えた光走査装置における偏向面駆動部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光走査装置における偏光面駆動部は、第1走査部と、主走査と副走査の一方のために、第1走査部を第1方向に平行な軸周りに回転自在に保持する第2走査部と、主走査と副走査の他方のために、第2走査部を第1方向と垂直な第2方向に平行な軸周りに回転自在に保持するフレームとを備え、第1走査部は、入射光の光路を反射または透過により偏向する偏向面と、主走査と副走査の一方に使用され、且つ第2方向に突出した櫛歯で構成された第1櫛歯部とを有し、第2走査部は、第2方向に突出した櫛歯で構成された第2櫛歯部と、主走査と副走査の他方に使用され、且つ第1方向に突出した櫛歯で構成された第3櫛歯部とを有し、フレームは、第1方向に突出した櫛歯で構成された第4櫛歯部を有し、偏向面は、第1走査部の第1方向に平行な軸周りの回転及び第2走査部の第2方向に平行な軸周りの回転により入射光の光路を偏向し、第1櫛歯部を構成する櫛歯は、第2櫛歯部を構成する櫛歯と交互に配置され、第3櫛歯部を構成する櫛歯は、第4櫛歯部を構成する櫛歯と交互に配置され、第1櫛歯部、第3櫛歯部、及び偏向面は、第1方向に並べられる。
【0007】
偏向面駆動部において第1方向に配置される部材は多いため、偏向面駆動部の第1方向の全長は長くなるが、第2方向に配置される部材は少ないため、偏向面駆動部の第2方向の全長を短くすることが可能になる。このため、偏向面を回転させるために使用される櫛歯が、偏向面を通り且つ第1方向に平行な線上にも、偏向面を通り且つ第2方向に平行な線上にも配置される形態に比べて、偏向面駆動部における回転軸方向の一方の寸法を短くすることが可能になり、偏向面駆動部を含む装置(例えば、共焦点光学装置)における任意の方向の寸法を短くすることが可能になる。なお、偏向面は、入射光を反射して光路を偏向する走査ミラーで構成されてもよいし、入射光を透過して光路を偏向する平行透過板で構成されてもよい。また、間に偏向面等を挟んだ状態で第3、第4櫛歯部が配置されるため、間に偏向面等を挟まない状態で第3、第4櫛歯部が配置される形態に比べて、第3櫛歯部と、第2走査部の回転軸との距離が、長くなり、第2走査部の回転トルクを大きくすることが可能になる。
【0008】
好ましくは、第1櫛歯部は、第3櫛歯部よりも、偏向面に近い側に配置される。
【0009】
間に第1櫛歯部などがさらに配置されることにより、第3櫛歯部と、第2走査部の回転軸との距離をさらに長くすることが可能になるため、さらに第2走査部の回転トルクを大きくすることが可能になる。
【0010】
また、好ましくは、第3櫛歯部は、第1櫛歯部よりも、偏向面に近い側に配置される。
【0011】
第3櫛歯部の短い移動距離で、偏向面を回転させることが出来るため、第3、第4櫛歯部の厚さを薄く、すなわち第3方向の長さを短く出来、偏向面駆動部の厚さを薄くすることが可能になる。
【0012】
本発明に係る光走査装置における偏向面駆動部は、第1走査部と、主走査と副走査の一方のために、第1走査部を第1方向に平行な軸周りに回転自在に保持する第2走査部と、主走査と副走査の他方のために、第2走査部を第1方向と垂直な第2方向に平行な軸周りに回転自在に保持するフレームとを備え、第1走査部は、入射光の光路を反射または透過により偏向する偏向面と、主走査と副走査の一方に使用され、且つ第2方向に突出した櫛歯で構成された第1櫛歯部とを有し、第2走査部は、第2方向に突出した櫛歯で構成された第2櫛歯部と、主走査と副走査の他方に使用され、且つ第1方向に突出した櫛歯で構成された第3櫛歯部とを有し、フレームは、第1方向に突出した櫛歯で構成された第4櫛歯部を有し、偏向面は、第1走査部の第1方向に平行な軸周りの回転及び第2走査部の第2方向に平行な軸周りの回転により入射光の光路を偏向し、第1〜第4櫛歯部、及び偏向面の第1方向に投影した投影面の一部の領域が重なり合う一方、第2方向に投影した投影面はいずれも重なり合わないように、第1〜第4櫛歯部、及び偏向面は配置される。
【0013】
好ましくは、第1櫛歯部を構成する櫛歯は、偏向面の重心を通り、且つ第2方向に平行な線を軸に線対称に配置され、第2櫛歯部を構成する櫛歯は、偏向面の重心を通り、且つ第2方向に平行な線に軸に線対称に配置される。
【0014】
線対称に配置することにより、それぞれの櫛歯群で発生する静電力による回転力が互いにうち消し合う方向に作用するねじれを防ぐ。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、回転軸の一方の方向の寸法を抑えた光走査装置における偏向面駆動部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明にかかる実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における光走査装置8の偏向面駆動部13は、内視鏡装置のスコープ先端部などに設けられた共焦点光学装置1に含まれるものとして説明する。但し、偏向面駆動部13は、他の光走査装置に用いられる形態であってもよい。
【0017】
共焦点光学装置1は、光源(不図示)からの光を伝達する光ファイバケーブル3、光ファイバケーブル3から出射された光を平行光にするコリメータ部(集光光学系)4、対物光学系5、及びコリメータ部4と対物光学系5との間に配置され、被検面S上の集光位置を調整する(集光光学系6からの光を走査する)光走査装置8を備える(図1参照)。
【0018】
なお、方向を説明するために、共焦点光学装置1において光ファイバケーブル3から出射された光の光路、コリメータ部4のレンズの光軸(第1光軸LX1)、及び対物光学系5のレンズの光軸(第2光軸LX2)と平行な水平方向を第1方向x、第1光軸LX1と直交する水平方向を第2方向y、第1方向x、第2方向yと直交する鉛直方向を第3方向zとして説明する。また、対物光学系5は、実際には複数のレンズで構成されるが、図1や図5では、説明の簡素化のため1つのレンズで構成される形態を示す。光ファイバケーブル3から出射された光の光路は、光ファイバケーブル3から出射され、コリメータ部4、光操作装置8、対物光学系5を通って被検面Sに到達する光の軌跡を示す。
【0019】
光ファイバケーブル3はシングルモードファイバであり、端面3aは点光源としてみなすことができ、共焦点ピンホールとして使用される。光ファイバケーブル3、コリメータ部4、光走査装置8、及び対物光学系5は、第1方向xに並べられる。
【0020】
光走査装置8は、プリズム部9と走査部10を有する。プリズム部9と走査部10とは第3方向zに並べられる。プリズム部9は、第2方向yから見てM字の五角形、すなわち五角柱形状の第1プリズム9aと、第2方向yから見て三角形、すなわち三角柱形状の第2プリズム9bを有する(図2参照)。第1プリズム9aと第2プリズム9bとは、ガラスで構成され、第1接触面9cと第2接触面9dで接触する。第1プリズム9aは、一体で構成されてもよいし、三角柱形状のプリズムなどを複数並べて構成されてもよい。第1接触面9cは、コリメータ部4からの光を走査部10に向けて反射する。第2接触面9dは、走査部10で反射した光を、対物光学系5に向けて反射する。
【0021】
走査部10は、カバーガラス11、偏向面駆動部13を保持するデバイス保持部15、及び裏面カバー17を有し、略直方体形状の外形を有する。カバーガラス11、デバイス保持部15、及び裏面カバー17は、プリズム部9に近い側から順に、第3方向zに並べられる。デバイス保持部15に保持された偏向面駆動部13をゴミなどの付着から保護するため、プリズム部9と対向する側は、ガラスで構成されたカバーガラス11が接合され、反対側は、シリコンまたはガラスで構成された裏面カバー17が接合される。また、偏向面駆動部13とカバーガラス11との間、及び偏向面駆動部13と裏面カバー17との間には、偏向面駆動部13の第1走査部20の回転や第2走査部40の回転との干渉を防止する空間(第1空間SP1、第2空間SP2)が設けられる。
【0022】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を構成する偏向面駆動部13は、プリズム部9からの光を反射する走査ミラー30を含む第1走査部20、第1走査部20を第1方向xに平行な軸周りに回転自在に保持する第2走査部40、及び第2走査部40を第2方向yに平行な軸周りに回転自在に保持するフレーム50を有する(図3参照)。
【0023】
走査ミラー30は、プリズム部9の第1接触面9cからの反射光を、第2接触面9dに反射する位置で、且つ走査ミラー30の法線が第3方向zと略平行、すなわち走査ミラー30が回転する前の初期状態において走査ミラー30の法線が第3方向zと平行になるように配置される。ただし、第1走査部20と第2走査部40の回転により、第1走査部20の走査ミラー30が傾動し、走査ミラー30の反射面と第3方向zとなす角度が変化する。このため、コリメータ部4、及び第1接触面9cを介して、走査ミラー30に入射した光の反射方向が変わり(偏向され)、第2接触面9d上の走査ミラー30からの反射光が入射する領域、及び対物光学系5における第2接触面9dからの反射光が通過する領域が変わる。これにより、被検面S上(yz平面上)における光の照射位置、すなわち結像位置(観察位置、集光点)が走査される。
【0024】
図2の太実線で示す走査ミラー30は反射面の法線が第3方向zと平行な位置関係(初期状態)を示し、細実線で示す2種類の走査ミラー30’、及び30’’は、初期状態から第2方向yに平行な軸周りに回転し、反射面の法線が第3方向zと平行でない状態を示す。
【0025】
光ファイバケーブル3から出射された光は、コリメータ部4で第1方向xに平行な平行光にされ、プリズム部9の第1接触面9cで第1走査部20の走査ミラー30に向けて反射し、走査ミラー30でプリズム部9の第2接触面9dに向けて反射し、第2接触面9dで対物光学系5に向けて反射し、対物光学系5を介して被検面Sに照射(集光)される。被検面Sにおける反射光(光ファイバケーブル3からの出射光が励起光の場合は励起光に基づく蛍光)は、集光時の光路であって逆方向に辿り、光ファイバケーブル3の端面3aに入射する。光ファイバケーブル3に入射した光は、検出装置(不図示)によって検出され、被検面Sの情報取得に使用される。
【0026】
光ファイバケーブル3から出射され、コリメータ部4で平行光にされた光のうち、第1光軸LX1を通る光が、略円形形状の走査ミラー30の中心(重心)CEに到達するように、コリメータ部4、プリズム部9、及び走査ミラー30の位置関係が設定される。
【0027】
但し、コリメータ部4の外形を構成する円筒を第1方向xから見た第1円C1が、光走査装置8の第1方向xからの包絡円EC(光走査装置8の外形を構成する直方体を第1方向xから見た矩形の頂点を通る外接円)から、はみ出すことが考えられる(図4参照)。この場合、第2方向yから見て、コリメータ部4と光走査装置8とが第3方向zで且つ互いに逆方向に突出する。図1、2では、コリメータ部4が、第3方向zで且つ上方向に突出し、光走査装置8が第3方向zで且つ下方向に突出する状態を示す。そのため、光走査装置8、及びコリメータ部4の外形を包むスコープ先端部の外径は、第1円C1が包絡円ECからはみ出した分だけ包絡円ECよりも大きくする必要がある。かかるスコープ先端部の径方向の寸法を抑えるため、光走査装置8とコリメータ部4との間に、第1方向xと一定の角度をなす平行平面板で構成された光軸調整部7を設けてコリメータ部4から光走査装置8への光の光路を第3方向zに平行移動させ、第1円C1が、包絡円ECからはみ出さないように、第1光軸LX1を第3方向zにずらす形態が望ましい(図5参照)。
【0028】
また、走査ミラー30が回転しない初期状態において、走査ミラー30の中心CEで反射した光が、プリズム部9の第2接触面9dで反射して、第2光軸LX2を通るように、対物光学系5、プリズム部9、及び走査ミラー30の位置関係が設定される。図1は、第1光軸LX1を通る光が、走査ミラー30の中心CEで反射し、第2光軸LX2を通る状態を点線で示す。
【0029】
但し、対物光学系5の外形を構成する円筒を第1方向xから見た第2円C2が、包絡円ECから、はみ出すことが考えられる(図4参照)。この場合、第2方向yから見て、対物光学系5と光走査装置8とが第3方向zで且つ互いに逆方向に突出する。図1、2では、対物光学系5が、第3方向zで且つ上方向に突出し、光走査装置8が第3方向zで且つ下方向に突出する状態を示す。そのため、光走査装置8、及び対物光学系5の外径を包むスコープ先端部の外径は、第2円C2が包絡円ECからはみ出した分だけ包絡円ECよりも大きくする必要がある。かかるスコープ先端部の径方向の寸法を抑えるため、光走査装置8と対物光学系5との間に、第1方向xと一定の角度をなす平行平面板で構成された光軸調整部(不図示)を設けて光走査装置8から対物光学系5への光の光路を第3方向zに平行移動させ、第2円C2が、包絡円ECからはみ出ないように、第2光軸LX2を第3方向zにずらす形態が望ましい。
【0030】
また、光軸調整部を設ける代わりに、対物光学系5を構成するレンズの有効径を大きくし、第2光軸LXを第3方向zにずらし、該レンズを第2接触面9dからの反射光が通過しない部分が欠落した状態で形成することにより、第2円C2が、包絡円ECからはみ出ないようにする形態であってもよい(図5参照)。具体的には、走査ミラー30が、第3方向zに垂直な初期状態において、第1光軸LX1を通る光の、第1接触面9c、走査ミラー30、及び第2接触面9dを介して、対物光学系5に到達する位置が、第2光軸LX2に対してずれるように、対物光学系5などの位置関係を設定する。図5は、第1光軸LX1を通る光が、走査ミラー30の中心CEで反射し、第2光軸LX2からずれた位置で対物光学系5に到達する状態を点線で示す。図5における、対物光学系5を構成するレンズは、実線で示された部分で形成され、点線で示された部分が、第2接触面9dからの反射光が通過しない部分として取り除かれ、実際のレンズとして形成されていない状態を示す。
【0031】
プリズム部9の第2接触面9dにおいて、走査ミラー30で反射した光が到達する領域を十分に確保するため、プリズム部9の第1接触面9cからの反射光のうち、第1光軸LX1を通る光が、走査ミラー30に到達する位置(走査ミラー30の中心CE)は、第1接触面9cと第2接触面9dとが接触する位置CPに比べて第1方向xで対物光学系5側に配置される。走査ミラー30から第2接触面9dに到達する光の領域は、走査ミラー30の回転位置により変動するが、走査ミラー30を対物光学系5側に近く配置することにより、遠くに配置する形態に比べて、第2接触面9dにおける走査ミラー30からの光が到達する領域を広くすることが可能になる。
【0032】
次に、偏向面駆動部13の詳細について説明する(図3、図6参照)。第1走査部20は、主走査腕部22、主走査第1櫛歯部(第1櫛歯部)23、第1トーションバネ25、及び走査ミラー30を有する。第2走査部40は、副走査フレーム41、主走査第2櫛歯部(第2櫛歯部)43、副走査第1櫛歯部(第3櫛歯部)44、及び第2トーションバネ45を有する。フレーム50は、保持フレーム51、及び副走査第2櫛歯部(第4櫛歯部)54を有する。
【0033】
主走査第1櫛歯部23と主走査第2櫛歯部43とは、主走査アクチュエータを構成し、走査ミラー30を第1方向xに平行な軸周りに回転させる(主走査)。副走査第1櫛歯部44と副走査第2櫛歯部54とは、副走査アクチュエータを構成し、走査ミラー30を第2方向yに平行な軸周りに回転させる(副走査)。
【0034】
第1走査部20は、第3方向zからみて、副走査フレーム41の内側に配置される。主走査腕部22は、走査ミラー30(または走査ミラー30の円周を囲む主走査フレーム(不図示))から第1方向xで且つ外側方向に突出する部材であり、走査ミラー30の中心(重心)CEを通り第1方向xに平行な線上に配置される。主走査第1櫛歯部23を構成する櫛歯は、主走査腕部22から第2方向yで且つ外側方向に突出し、副走査フレーム41から第2方向yで且つ内側方向に突出した主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯と第1方向xに交互に配置される。
【0035】
主走査第1櫛歯部23は、走査ミラー30を、第1方向xで挟む位置関係に対称配置される。同様に、主走査第2櫛歯部43も、走査ミラー30を、第1方向xで挟む位置関係に対称配置される。具体的には、主走査第1櫛歯部23は、第1方向xの一方に配置された櫛歯群と、他方に配置された櫛歯群で構成され、両櫛歯群を構成する櫛歯が、走査ミラー30を第1方向xで挟む位置関係で、且つ走査ミラー30の中心CEを通り第2方向yに平行な線を軸に線対称に配置される。主走査第2櫛歯部43も、第1方向xの一方に配置された櫛歯群と、他方に配置された櫛歯群で構成され、両櫛歯群を構成する櫛歯が、走査ミラー30を第1方向xで挟む位置関係で、且つ走査ミラー30の中心CEを通り第2方向yに平行な線を軸に線対称に配置される。線対称に配置することにより、それぞれの櫛歯群で発生する静電力による回転力が互いにうち消し合う方向に作用するねじれを防ぐ。
【0036】
主走査第1櫛歯部23を構成する櫛歯のうち、第1方向xで且つ外側に配置された第2方向yの一方の櫛歯23a1は、隣接する主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯よりも第3方向zでカバーガラス11側に配置され、第2方向yの他方の櫛歯23a2は、隣接する主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯よりも第3方向zで裏面カバー17側に配置される。主走査第1櫛歯部23を構成し第1方向xで且つ外側に配置された櫛歯23a1、23a2と、これらと隣接する主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯との間に電位差が発生すると、これらの櫛歯が近づくように静電力が働き、第1走査部20が第1トーションバネ25の軸(主走査腕部22)周り、すなわち第1方向xに平行な軸周りの一方の方向に回転する(図3、図6、図7参照)。
【0037】
主走査第1櫛歯部23を構成する櫛歯のうち、第3方向zで且つ内側に配置された第2方向yの一方の櫛歯23b1は、隣接する主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯よりも第3方向zで裏面カバー17側に配置され、第2方向yの他方の櫛歯23b2は、隣接する主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯よりも第3方向zでカバーガラス11側に配置される。主走査第1櫛歯部23を構成し第1方向xで且つ内側に配置された櫛歯23b1、23b2と、これらと隣接する主走査第2櫛歯部43を構成する櫛歯との間に電位差が発生すると、これらの櫛歯が近づくように静電力が働き、第1走査部20が第1トーションバネ25の軸(主走査腕部22)周り、すなわち第1方向xに平行な軸周りの他方の方向に回転する(図3、図6、図8参照)。
【0038】
この第1方向xに平行な軸周りの回転により、走査ミラー30において偏向(反射)される方向が第2方向yに変動し、被検面Sの集光点位置が第2方向yに移動せしめられる。第1走査部20の第1方向xに平行な軸周りの回転のための電圧駆動は、共振振動で行われる。
【0039】
副走査フレーム41は、第3方向zから見て、保持フレーム51の内側に配置される(図3参照)。副走査第1櫛歯部44を構成する櫛歯は、副走査フレーム41から第1方向xで且つ外側方向に突出し、保持フレーム51から第1方向xで且つ内側方向に突出した副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯と第2方向yに交互に配置される。
【0040】
副走査第1櫛歯部44および副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯は、副走査フレーム41の第2方向yにおける幅寸法全体に渡って等間隔に設けられる。主走査第1櫛歯部23や主走査第2櫛歯部43を第1方向xに投影した際の第1投影面230、走査ミラー30を第1方向xに投影した際の第2投影面330、及び副走査第1櫛歯部44や副走査第2櫛歯部54を第1方向xへ投影した際の第3投影面440が、少なくとも一部の領域で重なり合う一方、第2方向yに投影した投影面はいずれも重なり合わないように、主走査第1櫛歯部23、走査ミラー30、主走査第2櫛歯部43、副走査第1櫛歯部44、及び副走査第2櫛歯部54が配置される(図10参照)。
【0041】
副走査第1櫛歯部44は、走査ミラー30を、第1方向xで挟む位置関係に配置される。同様に、副走査第2櫛歯部54も、走査ミラー30を、第1方向xで挟む位置関係に配置される。具体的には、副走査第1櫛歯部44は、第1方向xの一方に配置された櫛歯群と、他方に配置された櫛歯群で構成され、両櫛歯群が、走査ミラー30を第1方向xで挟む。副走査第2櫛歯部54も、第1方向xの一方に配置された櫛歯群と、他方に配置された櫛歯群で構成され、両櫛歯群が、走査ミラー30を第1方向xで挟む。また、副走査第1櫛歯部44の両櫛歯群は、主走査第1櫛歯部23、及び主走査第2櫛歯部43を、第1方向xで挟む位置関係に配置される。同様に、副走査第2櫛歯部54の両櫛歯群も、主走査第1櫛歯部23、及び主走査第2櫛歯部43を、第1方向xで挟む位置関係に配置される。従って、走査ミラー30、主走査第1櫛歯部23、主走査第2櫛歯部43、副走査第1櫛歯部44、及び副走査第2櫛歯部54は、第1方向xに並べられた状態で配置される。
【0042】
副走査第1櫛歯部44を構成する櫛歯のうち、第2方向yで且つ外側に配置された第1方向xの一方の櫛歯は、隣接する副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯よりも第3方向zでカバーガラス11側に配置され、第1方向xの他方の櫛歯は、隣接する副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯よりも第3方向zで裏面カバー17側に配置される。副走査第1櫛歯部44を構成し第2方向yで且つ外側に配置された櫛歯と、これらと隣接する副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯との間に電位差が発生すると、これらの櫛歯が近づくように静電力が働き、第2走査部40、第1走査部20が第2トーションバネ45の軸周り、すなわち第2方向yに平行な軸周りの一方の方向に回転する。
【0043】
副走査第1櫛歯部44を構成する櫛歯のうち、第2方向yで且つ内側に配置された第1方向xの一方の櫛歯は、隣接する副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯よりも第3方向zで裏面カバー17側に配置され、第1方向xの他方の櫛歯は、隣接する副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯よりも第3方向zでカバーガラス11側に配置される。副走査第1櫛歯部44を構成し第2方向yで且つ内側に配置された櫛歯と、これらと隣接する副走査第2櫛歯部54を構成する櫛歯との間に電位差が発生すると、これらの櫛歯が近づくように静電力が働き、第2走査部40、第1走査部20が第2トーションバネ45の軸周り、すなわち第2方向yに平行な軸周りの他方の方向に回転する。
【0044】
この第2方向yに平行な軸周りの回転により、走査ミラー30において偏向(反射)される方向が第1方向xに変動し、被検面Sの集光点位置が第3方向zに移動せしめられる。第2走査部40の第2方向yに平行な軸周りの回転のための電圧駆動は、DC駆動により行われる。
【0045】
第1トーションバネ25は、主走査腕部22の第1方向xの端部から第1方向xで且つ外側方向に突出し、副走査フレーム41の内側と接続される。第2トーションバネ45は、副走査フレーム41から第2方向yで且つ外側方向に突出し、保持フレーム51の内側と接続される。また、第2トーションバネ45は、走査ミラー30においてプリズム部9からの反射光が照射される領域の略中心(走査ミラー30の中心CE近傍)を通り第2方向yに平行な線上に配置される。第1トーションバネ25、及び第2トーションバネ45は、第3方向zから見て、S字形状を有し、これにより単位実装面積当たりのねじりバネ定数を低減している。第1走査部20は、共振駆動で比較的早く動かされるため、比較的小さいバネ定数のものが使用され、第2走査部40は、DC駆動で比較的遅く動かされるため、比較的大きいバネ定数のものが使用される。
【0046】
本実施形態では、偏向面駆動部13の走査ミラー30の反射面は、回転する前の初期状態において、共焦点ピンホールとして、光ファイバケーブル3の端面3aから出射される光の第1光軸LX1に垂直な面と直交する位置に配置される。このため、2つの走査ミラーを略平行に配置する形態に比べて、共焦点光学装置1の径方向の寸法、すなわち共焦点光学装置1を含むスコープ先端部の径方向の寸法を抑えることが可能になる。
【0047】
また、偏向面駆動部13において第1方向xに配置される部材は多いため、偏向面駆動部13の第1方向xの全長は長くなるが、第2方向yに配置される部材は少ないため、偏向面駆動部13の第2方向yの全長を短くすることが可能になる。スコープ先端部の直径サイズに影響を与える、第2方向yや第3方向zの長さを抑えることが可能になるため、スコープ先端部の大径化を抑えることが可能になる。このため、走査ミラー30を回転させるために使用される櫛歯が、走査ミラー30を通り且つ第1方向xに平行な線上にも、走査ミラー30を通り且つ第2方向yに平行な線上にも配置される形態に比べて、偏向面駆動部における回転軸方向の一方の寸法を短くすることが可能になり、偏向面駆動部13を含む共焦点光学装置1における任意の方向(ここでは第2方向y、及び第3方向z)の寸法を短くすることが可能になる。
【0048】
また、間に走査ミラー30等を挟んだ状態で副走査第1櫛歯部44、及び副走査第2櫛歯部54が配置されるため、間に走査ミラー30等を挟まない状態で副走査第1櫛歯部44等が配置される形態に比べて、副走査第1櫛歯部44と、第2トーションバネ45との第1方向xの距離が、長くなり、副走査アクチュエータの回転トルクを大きくすることが可能になる。
【0049】
なお、主走査第1櫛歯部23、及び主走査第2櫛歯部43が、副走査第1櫛歯部44や副走査第2櫛歯部54を、第1方向xで挟む位置関係(副走査第1櫛歯部44や副走査第2櫛歯部54が、主走査第1櫛歯部23や主走査第2櫛歯部43に比べて、走査ミラー30に近い位置関係)に配置される形態であってもよい(図9参照)。この場合においても、主走査第1櫛歯部23や主走査第2櫛歯部43を第1方向xに投影した際の投影面、走査ミラー30を第1方向xに投影した際の投影面、及び副走査第1櫛歯部44や副走査第2櫛歯部54を第1方向xに投影した際の投影面が、少なくとも一部の領域で重なり合う一方、第2方向yに投影した投影面はいずれも重なり合わないように、主走査第1櫛歯部23、走査ミラー30、主走査第2櫛歯部43、副走査第1櫛歯部44、及び副走査第2櫛歯部54が配置される。また、副走査第1櫛歯部44と、第2トーションバネ45との第1方向xの距離は、図3の形態に比べると短くなるため副走査アクチュエータの回転トルクは小さくなるが、副走査第1櫛歯部44の短い移動距離(副走査第1櫛歯部44が回転により描く弧の長さ)で、走査ミラー30を回転させることが出来るため、副走査第1櫛歯部44、及び副走査第2櫛歯部54の厚さを薄く、すなわち第3方向zの長さを短く出来るため、偏向面駆動部13の厚さを薄くすることが可能になる。
【0050】
また、プリズム部9は、第1プリズム9aと、第2プリズム9bとで構成される形態を説明したが、いずれか一方を省略する形態であってもよい。
【0051】
また、走査部10の第3方向zの長さを短くすることで、光走査装置8の第1方向xから見た包絡円の径方向の寸法を抑えることが出来るため、カバーガラス11や、裏面カバー17の厚さ(第3方向zの長さ)は出来るだけ薄い方が望ましい。また、カバーガラス11を省略して、デバイス保持部15が直接第1プリズム9aに接合される形態であってもよい。
【0052】
また、偏向面が、光源(光ファイバケーブル3)からの入射光を反射して光路を偏向する走査ミラー30で構成される形態を説明したが、入射光を透過して光路を偏向する平行透過板で構成される形態であってもよい。
【0053】
また、第1走査部20が主走査に用いられ、第2走査部40が副走査に用いられる形態を説明したが、逆の形態、すなわち第1走査部20が副走査に用いられ、第2走査部40が主走査に用いられる形態であってもよい。この場合は、第1走査部20の電圧駆動はDC駆動で行われ、第2走査部40の電圧駆動は共振駆動で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態における共焦点光学装置の第2方向からみた構成図(側面図)である。
【図2】光走査装置を第2方向からみた構成図(側面図)である。
【図3】偏向面駆動部を第3方向からみた構成図である。
【図4】図1のA−A線における断面図である。
【図5】光走査装置と、コリメータ部との間に、光軸調整部が設けられた形態における共焦点光学装置の第2方向からみた構成図(側面図)である。
【図6】第1走査部を第3方向からみた構成図である。
【図7】図3のB−B線における断面図である。
【図8】図3のC−C線における断面図である。
【図9】主走査第1櫛歯部が、副走査第1櫛歯部を第1方向で挟む形態における偏向面駆動部を第3方向からみた構成図である。
【図10】第1〜第3投影面の位置関係(重なり合い)を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 共焦点光学装置
3 光ファイバケーブル
3a 端面
4 コリメータ部
5 対物光学系
7 光軸調整部
8 光走査装置
9 プリズム部
9a 第1プリズム
9b 第2プリズム
9c、9d 第1、第2接触面
10 走査部
11 カバーガラス
13 偏向面駆動部
15 デバイス保持部
17 裏面カバー
20 第1走査部
21 主走査フレーム
22 主走査腕部
23 主走査第1櫛歯部
25 第1トーションバネ
30 走査ミラー
40 第2走査部
41 副走査フレーム
43 主走査第2櫛歯部
44 副走査第1櫛歯部
45 第2トーションバネ
50 フレーム
51 保持フレーム
54 副走査第2櫛歯部
LX1 第1光軸
LX2 第2光軸
S 被検面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1走査部と、
主走査と副走査の一方のために、前記第1走査部を第1方向に平行な軸周りに回転自在に保持する第2走査部と、
前記主走査と前記副走査の他方のために、前記第2走査部を前記第1方向と垂直な第2方向に平行な軸周りに回転自在に保持するフレームとを備え、
前記第1走査部は、入射光の光路を反射または透過により偏向する偏向面と、前記主走査と前記副走査の一方に使用され、且つ前記第2方向に突出した櫛歯で構成された第1櫛歯部とを有し、
前記第2走査部は、前記第2方向に突出した櫛歯で構成された第2櫛歯部と、前記主走査と前記副走査の他方に使用され、且つ前記第1方向に突出した櫛歯で構成された第3櫛歯部とを有し、
前記フレームは、前記第1方向に突出した櫛歯で構成された第4櫛歯部を有し、
前記偏向面は、前記第1走査部の前記第1方向に平行な軸周りの回転及び前記第2走査部の前記第2方向に平行な軸周りの回転により前記入射光の光路を偏向し、
前記第1櫛歯部を構成する櫛歯は、前記第2櫛歯部を構成する櫛歯と交互に配置され、
前記第3櫛歯部を構成する櫛歯は、前記第4櫛歯部を構成する櫛歯と交互に配置され、
前記第1櫛歯部、前記第3櫛歯部、及び前記偏向面は、前記第1方向に並べられることを特徴とする光走査装置における偏向面駆動部。
【請求項2】
前記第1櫛歯部は、前記第3櫛歯部よりも、前記偏向面に近い側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の偏向面駆動部。
【請求項3】
前記第3櫛歯部は、前記第1櫛歯部よりも、前記偏向面に近い側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の偏向面駆動部。
【請求項4】
第1走査部と、
主走査と副走査の一方のために、前記第1走査部を第1方向に平行な軸周りに回転自在に保持する第2走査部と、
前記主走査と前記副走査の他方のために、前記第2走査部を前記第1方向と垂直な第2方向に平行な軸周りに回転自在に保持するフレームとを備え、
前記第1走査部は、入射光の光路を反射または透過により偏向する偏向面と、前記主走査と前記副走査の一方に使用され、且つ前記第2方向に突出した櫛歯で構成された第1櫛歯部とを有し、
前記第2走査部は、前記第2方向に突出した櫛歯で構成された第2櫛歯部と、前記主走査と前記副走査の他方に使用され、且つ前記第1方向に突出した櫛歯で構成された第3櫛歯部とを有し、
前記フレームは、前記第1方向に突出した櫛歯で構成された第4櫛歯部を有し、
前記偏向面は、前記第1走査部の前記第1方向に平行な軸周りの回転及び前記第2走査部の前記第2方向に平行な軸周りの回転により前記入射光の光路を偏向し、
前記第1〜第4櫛歯部、及び前記偏向面の前記第1方向に投影した投影面の一部の領域が重なり合う一方、前記第2方向に投影した投影面はいずれも重なり合わないように、前記第1〜第4櫛歯部、及び前記偏向面は配置されることを特徴とする光走査装置における偏向面駆動部。
【請求項5】
前記第1櫛歯部を構成する櫛歯は、前記偏向面の重心を通り、且つ前記第2方向に平行な線を軸に線対称に配置され、
前記第2櫛歯部を構成する櫛歯は、前記偏向面の重心を通り、且つ前記線に軸に線対称に配置されることを特徴とする請求項4に記載の偏向面駆動部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−44214(P2010−44214A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208150(P2008−208150)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】