説明

光路接合用屈折率制御シート

【課題】光ファイバ−光ファイバ間や光ファイバ−光導波路間等の各種光学部材間における光路を、低損失で、かつ、高い接続安定性を有しつつ接続することが可能な、実用性に優れた光路接合用屈折率制御シートを提供する。
【解決手段】同種または異種の2つの光学部材間に配置されて、2つの光学部材間を光学的に接続する光路接合用屈折率制御シートである。(メタ)アクリル系樹脂を主成分とし、25℃における貯蔵弾性率G’が5×103〜1×106Paであり、かつ、ガラス転移点Tgが15℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光路接合用屈折率制御シート(以下、単に「シート」とも称する)に関し、詳しくは、光ファイバ−光ファイバ間や光ファイバ−光導波路間等の各種光学部材間における光路の接続を低損失で行うことのできる光路接合用屈折率制御シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信技術の発達に伴い、光ファイバ−光ファイバ間や光ファイバ−光導波路間等の各種光学部材間における光路の接続を行う際の接続損失を低減するための技術が種々検討されてきている。この接続損失は、光ファイバや光導波路等の接続端面間に空気の層、即ち、コアと異なる屈折率層が存在することで、フレネル反射が生ずることにより発生するものである。
【0003】
このような問題に対し、例えば、光ファイバ等の間に、光学用マッチングオイルのような液体を充填して接続損失を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2には、ブロックの上面に複数のV溝を有する溝部を設けた光ファイバの突き合わせ接続治具において、少なくとも溝部の両側にV溝に沿って枠を設けることで、光ファイバケーブルの検査の際におけるマッチングオイルの流出の防止を図る技術が開示されている。さらに、特許文献3には、光ファイバを密着した状態で保持し、光学安定性に優れた接続を可能とする光学接続構造を提供することを目的として、互いに対向する光伝送媒体の端面間、または光伝送媒体の端面と光学部品との間に、屈折率整合性を有する固形の粘着性接続部材を単一層の状態で密着して介在させた光学接続構造が開示されている。
【特許文献1】特開平06−092973号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平07−287138号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2005−173575号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のマッチングオイルを用いた技術では、オイル成分中の低分子量シリコーンの揮発により経時的に屈折率が変化してしまう場合があった。また、使用時にマッチングオイルが漏れ出るおそれがあり、液体であるというオイルの性質上汚染を引き起こしやすいなど、種々の問題を有するものであった。さらに、特許文献3に記載されているような固体の接続部材を用いた技術も知られているが、実用性の点で十分なものではなく、より実用性に優れた光路接続手段の開発が望まれていた。
【0005】
そこで本発明の目的は、光ファイバ−光ファイバ間や光ファイバ−光導波路間等の各種光学部材間における光路を、低損失で、かつ、高い接続安定性を有しつつ接続することが可能な、実用性に優れた光路接合用屈折率制御シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の光路接合用屈折率制御シートは、同種または異種の2つの光学部材間に配置されて、該2つの光学部材間を光学的に接続する光路接合用屈折率制御シートであって、(メタ)アクリル系樹脂を主成分とし、25℃における貯蔵弾性率G’が5×103〜1×106Paであり、かつ、ガラス転移点Tgが15℃以下であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の光路接合用屈折率制御シートにおいては、波長850nmの光の透過率を85%以上とすることができる。また、好適には、シートの厚みは5〜50μmの範囲内である。さらに、本発明のシートは、一対の離型フィルムにより挟持されてなるものとすることが好ましい。
【0009】
なお、本発明において光学部材とは、光を伝送して入射または出射させる部材を広く含むものであり、具体的には光ファイバや光導波路、光学素子等が挙げられ、特には、光ファイバおよび光導波路である。また、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成としたことにより、光ファイバ−光ファイバ間や光ファイバ−光導波路間等に配置することで、これら光学部材間における接続損失を低減することができる光路接合用屈折率制御シートを実現することが可能となった。また、本発明のシートは、高い接続安定性を確保することができ、実用性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の光路接合用屈折率制御シートは、光ファイバ−光ファイバ、光ファイバ−光導波路または光導波路−光導波路の各種光学部材間に配置されて、これら2つの光学部材間を光学的に接続するものである。図1に、本発明の光路接合用屈折率制御シート10を光ファイバ1A,1B間に配置した状態の概略図を示す。図示するように、本発明のシート10は、光ファイバ1A,1Bのそれぞれの端部に設けられたコネクタ2A,2B内に配置され、コネクタ2A,2Bをガイドピン3により位置合わせして嵌合することにより、これら光ファイバ1A,1Bの端部がシート10内に進入することで、光ファイバ1A,1B間の接続が行われる。
【0012】
本発明のシート10は、(メタ)アクリル系樹脂を主成分とし、25℃における貯蔵弾性率G’が5×103〜1×106Paであり、かつ、ガラス転移点Tgが15℃以下である点に特徴を有する。かかる構成としたことにより、光ファイバ等の光学部材間に配置して、これら光学部材間に介在させることで、低損失で光学部材間を光学的に接続することができる。また、本発明のシートは、オイルとは異なり定形性を有するとともに、低弾性であるため取り扱いが容易であり、従来のマッチングオイルのような屈折率の変化や周囲の汚染等の問題を生ずることもない。
【0013】
本発明のシートの25℃における貯蔵弾性率G’が上記範囲よりも低いと、シート状に形成することができず、また、離型フィルムにより挟持させて作製した際に、使用時に離型フィルムがきれいに剥がれないという問題が生ずる。一方、上記範囲よりも高いと、光ファイバや光導波路等の進入を阻害したり、光軸ずれを起こしやすくなるなどの問題が生ずる。かかる貯蔵弾性率G’は、好適には8×103〜1×105Paの範囲内である。また、本発明のシートのガラス転移点Tgが上記範囲よりも高いと、実用上不具合を生ずるおそれがある。このガラス転移点Tgは、好適には−40〜0℃程度である。
【0014】
さらに、本発明のシートにおいては、巻きぐせやだれを防ぐとともに、ハンドリング性を向上する観点から、損失正接tanδの値が0.2以上、特には0.2〜1.0程度であることが好ましい。
【0015】
本発明のシートは、好適には、波長850nmの光の透過率が85%以上、より好適には、波長1300nmないし1550nmまでの範囲においても透過率が85%以上である。本発明のシートを上記光学部材の接続部に適用することで、いずれの波長の光についても、接続損失を低減することができ、例えば、0.2dB程度に抑えることができる。
【0016】
本発明のシートは、上述したように、(メタ)アクリル系樹脂を主成分とする。かかる(メタ)アクリル系樹脂を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロへキシル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、ラウリル基、ドデシル基、イソミリスチル基、オクタデシル基などのアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、(メタ)アクリル系樹脂としての光学特性を確保するために、(メタ)アクリル系樹脂の主成分であるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、50重量%以上、特には60重量%以上であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートの共重合成分として、カルボキシル基を有する単量体成分を含有することが好ましい。カルボキシル基を有する単量体成分としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
なお、(メタ)アクリル系樹脂中のカルボキシル基を有する単量体成分の含有量は、好適には1〜25重量%、より好適には5〜20重量%程度である。(メタ)アクリル系樹脂中のカルボキシル基を有する単量体成分の含有量が1重量%よりも少ないと、光ファイバ、光導波路等の部材に対する粘着力が不十分となりやすい。一方、25重量%よりも多いと、シートのガラス転移温度Tgが上がりやすく、十分なタック性を得ることができなくなるおそれがある。
【0019】
また、本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂は、上記アルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基を有する単量体成分以外に他の共重合成分を含有してもよく、使用し得る他の共重合成分としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ウラリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系単量体;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシへキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系単量体;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有単量体;酢酸ビニルやスチレンなどのビニル系単量体;ジビニルベンゼンなどのジビニル系単量体;1,4−ブチルジアクリレートや1,6−へキシルジアクリレートなどのジアクリレート系単量体;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フッ化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどのアクリル酸エステル系単量体;トリメトキシシリルプロピルアクリレートなどのアルコキシ基含有単量体;無水マレイン酸や無水イタコン酸などの酸無水物単量体;その他、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0020】
また、カルボキシル基以外の官能基を有する単量体成分を用いることもでき、かかる単量体成分としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−置換(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド系単量体などが挙げられる。
【0021】
アルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基を有する単量体成分と、必要に応じて用いられる他の共重合成分とから、本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂を製造するに際しては、これらの単量体成分を常法により溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの方式で重合させればよい。この重合時には、熱重合開始剤や光重合開始剤が用いられ、その他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などや、これらと還元剤を併用したレドックス系開始剤などが用いられる。
【0022】
重合開始剤のうち、熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−プチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドなどの有機過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロへキサン1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリツク酸)、2,2′−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕などのアゾ系化合物が挙げられる。
【0023】
また、光重合開始剤としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α′−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)−フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系開始剤;ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系開始剤;ベンジルメチルケタールなどのケタール系開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系開始剤;チオキサンソン、2−クロロチオキサン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジシクロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系開始剤などが挙げられ、その他、カンフアーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなども使用することができる。
【0024】
これら重合開始剤の使用量には特に制限はないが、用いる単量体成分に対し、通常0.001〜5重量%程度とすることが好ましい。
【0025】
このようにして得られる本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂は、その重量平均分子量が10万〜200万であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が10万未満であると、120℃以上の耐熱性に劣り、200万を超えると、合成に非常に時間がかかる上に、溶液の粘度が非常に高くなり、塗工性等の生産性に劣るものとなる。
【0026】
本発明のシートには、(メタ)アクリル系樹脂に加えて、架橋剤として、エポキシ化合物を添加してもよい。架橋剤を添加することにより耐熱性は向上するが、添加量が多すぎると弾性率が高くなり、光ファイバ等の進入を阻害するおそれがある。本発明に用いることのできるエポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。かかるエポキシ系架橋剤の添加量は、(メタ)アクリル系樹脂中のカルボキシル基を有する単量体成分に対して10重量%以下であることが好ましい。
【0027】
また、本発明においては、エポキシ系架橋剤以外の架橋剤を含有させてもよく、その他の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート系架橋剤;メラミン樹脂系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;アミノ樹脂系架橋剤などが挙げられる。これら他の架橋剤の含有量は、上記エポキシ系架橋剤との合計で(メタ)アクリル系樹脂に対して10重量%以下であることが好ましい。
【0028】
本発明のシートは、接続される光ファイバ、光導波路等における光の伝送経路となるコアと略同等の屈折率を有することが必要であり、この屈折率は、(メタ)アクリル樹脂の構造により大まかに決まるが、より精密な屈折率調整のために、ガラスビーズなどの添加物を適宜添加することもできる。また、架橋剤として用いるトリレンジイソシアネート等の添加量を変えることによっても、シートの屈折率をより精密に調整することが可能である。本発明においては、このようにして、所望の屈折率(光導波路等におけるコアと略同等の屈折率)を容易かつ安定的に得ることができる。
【0029】
本発明のシートには、さらに、上記貯蔵弾性率、tanδ、光透過率等の条件を損なわない範囲内で、その他、紫外線吸収剤、導電性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維などの添加剤等を適宜配合することが可能である。
【0030】
本発明のシートを作製する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記シートの主成分としての(メタ)アクリル系樹脂等をトルエンや酢酸エチルなどの適宜の有機溶剤に溶解または分散させて、10〜40重量%程度の溶液を調製し、これに所望に応じ架橋剤等を添加して攪拌し、流延方式や塗工方式などにより基材フィルムまたは離型フィルム上に塗布して乾燥すればよい。本発明のシートの厚みは、所望に応じ適宜決定することが可能であるが、5〜50μmの範囲内程度とすることができる。
【0031】
また、本発明のシートは、取り扱い上の便宜のために、一対の離型フィルムにより挟持した形態で製品とすることができ、この場合、使用時には離型フィルムを剥がして用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
なお、以下において、弾性率およびTgは、HAAKE製 レオストレスRS−300にて、測定用に別途作製した厚み100μmの粘着シートを用いて測定した。測定条件は、φ20mmパラレルプレート/1Hz/γ=1%とし、昇温速度を8℃/minとして、tanδの極大値をガラス転移点Tgとした。
【0033】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却機、温度計および窒素導入機を備えた反応装置に、2−エチルヘキシルアクリレート70重量部、メチルメタクリレート25重量部、メタクリル酸5重量部、トルエン100重量部およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05重量部を投入して、70℃10時間反応させ、Tgが−35℃、重量平均分子量が70万のポリマー溶液を合成し、それに酢酸エチルを加えて、固形分濃度を40%とした。
【0034】
上記溶液にトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル0.1重量部を加え攪拌し、離型フィルムNO.23(藤森工業(株)製)上に製膜塗工して、離型フィルムNO.33(藤森工業(株)製)を貼り合わせることにより、離型フィルムに挟持された粘着シートを得た。粘着シートの厚みは20μmであった。
【0035】
得られた粘着シートの屈折率は、波長841nmにてn=1.465であり(METRICON製プリズムカプラ:モデル2010、841nmレーザーにて測定)、25℃における貯蔵弾性率G’は2.0×104Pa、tanδは0.32であった。また、波長850nmの光透過率を、日本分光(株)製 V−570を用いて、リファレンスにポリカーボネート(PC)フィルム(帝人(株)製 ピュアエース,厚み70μm)を用い、粘着シートをこのPCフィルムに貼り合わせて測定したところ、99%であった。
【0036】
この粘着シートの接続損失の測定を、JIS S 6823に準じた方法で、コア径50μm、クラッド径125μmの光ファイバを用いて実施した。この光ファイバをファイバカッターでカットし、再度バットジョイントして測定したところ、接続損失0.3dBであり、光ファイバのカット面間を30μmほど離すと、1.2dBであった。次いで、このカット面間に上記粘着シートを挟み込んで測定を行ったところ、接続損失は0.2dB程度であり、常に0.3dB未満となった。このときの光ファイバのカット面間の距離は、約10μmであった。また、その接合したファイバをそのままの状態で80℃100時間放置後測定したところ、接続損失は0.3dB未満であった。
【0037】
また、上記と同様にして合成し、酢酸エチルを加えたポリマー溶液(Tg:−35℃,重量平均分子量:70万,固形分濃度:40%)に、さらに、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル0.1重量部を加えて攪拌し、離型フィルムNO.23(藤森工業(株)製)上に製膜塗工して、厚み5μmの粘着シートを得、この粘着シート2枚を、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製 HPE,厚み25μm)の両側に夫々貼り合わせることで、基材を有するシートを得た。このシートはよりハンドリング性に優れるものであり、この粘着シートの接続損失の測定を上記と同様にして行ったところ、全測定にわたり、接続損失は0.3dB未満であった。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様の反応装置に、エチルアクリレート80重量部、メチルアクリレート18重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート2重量部、AIBN 0.2重量部、トルエン120重量部を投入して、70℃8時間反応させ、Tgが−15℃、重量平均分子量が15万のポリマー溶液を合成し、それに酢酸エチルを加えて、固形分濃度を40%とした。
【0039】
上記溶液にトリレンジイソシアネート0.5重量部を加え攪拌し、離型フィルムNO.23(藤森工業(株)製)上に製膜塗工して、離型フィルムNO.33(藤森工業(株)製)を貼り合わせることにより、離型フィルムに挟持された粘着シートを得た。粘着シートの厚みは25μmであった。
【0040】
実施例1と同様にして測定した、この粘着シートの屈折率は、波長841nmにてn=1.470であり、25℃における貯蔵弾性率G’は3.0×104Pa、tanδは0.4であった。また、波長850nmの光透過率は99%であった。さらに、この粘着シートの接続損失の測定を実施例1と同様にして行ったところ、全測定にわたり、接続損失は0.2dB未満であった。
【0041】
(比較例1)
実施例1と同様の反応装置に、ブチルアクリレート45重量部、メチルメタクリレート50重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部、AIBN 0.2重量部、トルエン100重量部を投入して、70℃8時間反応させ、Tgが35℃、重量平均分子量が12万のポリマー溶液を合成し、それに酢酸エチルを加えて、固形分濃度を40%とした。
【0042】
上記溶液にトリレンジイソシアネート0.5重量部を加え攪拌し、離型フィルムNO.23(藤森工業(株)製)上に製膜塗工して、離型フィルムNO.33(藤森工業(株)製)を貼り合わせることにより、離型フィルムに挟持された粘着シートを得た。粘着シートの厚みは30μmであった。
【0043】
実施例1と同様にして測定した、この粘着シートの屈折率は、波長841nmにてn=1.469であり、25℃における貯蔵弾性率G’は2×106Pa、tanδは0.15であった。また、波長850nmの光透過率は99%であった。さらに、この粘着シートの接続損失の測定を実施例1と同様にして行ったところ、光ファイバにおいては容易に挿入できず、全測定にわたり、接続損失は1.0dBを超える高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の光路接合用屈折率制御シートを光ファイバ間に配置した状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1A,1B 光ファイバ
2A,2B コネクタ
3 ガイドピン
10 光路接合用屈折率制御シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種または異種の2つの光学部材間に配置されて、該2つの光学部材間を光学的に接続する光路接合用屈折率制御シートであって、(メタ)アクリル系樹脂を主成分とし、25℃における貯蔵弾性率G’が5×103〜1×106Paであり、かつ、ガラス転移点Tgが15℃以下であることを特徴とする光路接合用屈折率制御シート。
【請求項2】
波長850nmの光の透過率が85%以上である請求項1記載の光路接合用屈折率制御シート。
【請求項3】
厚みが5〜50μmの範囲内である請求項1または2記載の光路接合用屈折率制御シート。
【請求項4】
一対の離型フィルムにより挟持されてなる請求項1〜3のうちいずれか一項記載の光路接合用屈折率制御シート。
【請求項5】
前記光学部材が光ファイバおよび光導波路のうちから選ばれる請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光路接合用屈折率制御シート。

【図1】
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【公開番号】特開2007−132983(P2007−132983A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323378(P2005−323378)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】