説明

光通信ユニットおよび該光通信ユニットの振動速度測定システム

【課題】 振動特性の検査を高い精度をもって実行することができ、さらには互いに離間して配設される部材同士が集光レンズの駆動時に接触することがないような光通信装置における光通信ユニットを提供し、かつ該光通信ユニットを用いた振動速度測定システムを提供すること。
【解決手段】 光通信ユニットは、LDと、光ファイバと、集光レンズと、集光レンズを保持するレンズホルダ、集光レンズをレンズホルダとともに該集光レンズの光軸と直交しかつ互いに直交する二軸に沿って駆動させる駆動手段を有するレンズアクチュエータ構造と、LD、光ファイバ、レンズアクチュエータ構造を一体に保持するハウジングと、を有し、レンズホルダは、第一の軸と直交する一対の第一の側面、第二の軸と直交する一対の第二の側面を持ち、ハウジング外部から少なくとも一つの第一の側面の所定位置および少なくとも一つの第二の側面の所定位置に向かって投光自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ(以下、LDと記す)から照射される光を利用して光通信を行う光通信装置における光通信ユニットおよび該光通信ユニットの振動速度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信装置は、LDで発光し情報による変調を施された光を光ファイバに伝達させる為の装置であり、LD、LDからの光を集光させるレンズ、光ファイバ等が一体形成された光通信ユニットを有する。光ファイバー通信を加入者宅内に引き込む回線終端装置(ONU;Optical Network Unit)として使用される光通信モジュールでは、一般的に、送受信を一本の光ファイバで行う双方向型の通信に対応するため、光通信モジュール内にさらに受光素子や、異なる波長の光を分離するためのWDM(Wavelength Division Multiplex)フィルタ等が備えられる。
【0003】
このような光通信モジュールでは、光路上、LDの直後に配設された集光レンズによって、LDからの光を光ファイバのコアの略中心に集光させる。そして装置全体の個体差や経時変化等の影響を受けることなく、常時LDからの光を光ファイバのコア中心に導くため、該光の光ファイバ上での入射位置を調整することを目的とした構成が種々提案されている。該構成としては、例えば、下記の特許文献1に開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−338795号公報
【0005】
特許文献1に開示される光通信装置では、集光レンズを、光軸に対して直交し、かつ互いに直交する二つの軸方向に(つまり、光軸に対して直交する面内で)微少振動(wobbling)させるとともに、光ファイバのコア内に入射した光の光量を検出する。そして、最も該光量が多い状態をもって、コアの略中心にLDからの光が入射していると判断する。
【0006】
上記のように、レンズ等の光学部材を光軸に対して直交する面内で移動させるアクチュエータの構成は、例えば以下の特許文献2に記載されている。
【0007】
【特許文献2】特開平6−12687号公報
【0008】
一般的に、特許文献2に例示されるアクチュエータでは、製品としての良否判定をする場合、例えばレーザードップラー振動計等を用いて集光レンズの振動特性に関する検査が行われる。レーザードップラー振動計を用いた振動特性の検査では、可動部に照射した検査用レーザ光の戻り光を該振動計で検出することにより振動(移動)速度を測定している。該測定を高精度に実行するためには、該検査用レーザ光は、対象となるアクチュエータにより駆動されるレンズの重心にむけて各移動軸に平行な方向から照射することが必要とされる。しかし、特許文献2に記載のアクチュエータは、上記のように、各移動軸方向の幅が大きい構成であるにも拘わらず、ホルダの四方の面は全てコイルや永久磁石によって被われている。そのため、外部から該ホルダの所定位置、より詳しくはレンズ重心から各移動軸方向に延出した仮想線がホルダと交わる位置に検査用レーザ光を照射することはできず、高い精度をもって振動特性を検査することができなかった。
【0009】
さらに、特許文献2に例示されるアクチュエータは、コイルと永久磁石等離間して配設される部材同士が集光レンズの移動に伴って接触し、互いに破損、損傷するおそれが指摘されており、安全性、長寿命化の観点からさらなる改善が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の諸事情に鑑み、本発明は、振動特性の検査を高い精度をもって実行することができ、さらには互いに離間して配設される部材同士が集光レンズの駆動時に接触することがないような光通信装置における光通信ユニットを提供し、かつ該光通信ユニットを用いた振動速度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本願発明に係る光通信ユニットは、情報により変調された光を照射する光源と、該光を伝送する光ファイバと、光源から照射された光を光ファイバに集光させる集光レンズと、集光レンズを保持するレンズホルダ、集光レンズをレンズホルダとともに、該集光レンズの光軸と直交しかつ互いに直交する第一の軸および第二の軸に沿って駆動させる駆動手段を有するレンズアクチュエータ構造と、光源、光ファイバ、レンズアクチュエータ構造を一体に保持するハウジングと、を有し、レンズホルダは、第一の軸と直交する一対の第一の側面、第二の軸と直交する一対の第二の側面を持ち、ハウジング外部から少なくとも一つの第一の側面の所定位置および少なくとも一つの第二の側面の所定位置に向かって投光自在に構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、振動測定時に、検査対象となるレンズを保持するレンズホルダの側面に検査用レーザ光を照射することが可能となる。そのため、レンズの振動特性を高精度に検出することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、上記の所定位置を、第一の側面にあっては、レンズホルダに保持される集光レンズの重心から第一の軸方向に引いた仮想線が該レンズホルダの表面と交わる点とし、第二の側面にあっては、該重心から第二の軸方向に引いた仮想線が該第二の側面と交わる点とすることが好ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、駆動手段は、レンズホルダの各側面から集光レンズの光軸に沿ってずれた位置に配設することができる。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、レンズホルダは、集光レンズの光軸に沿って突出する中空かつ四角柱状の突出部を有し、駆動手段は、互いに対向する位置に配設されたボイスコイルとマグネットの組を四つ有し、ボイスコイルとマグネットは、一方が突出部表面において第一の軸に沿って二つ、第二の軸に沿って二つ固着される。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、保持手段は、一端がレンズホルダに他端がハウジングに取り付けられた、集光レンズの光軸に平行に延出する複数のワイヤとして構成することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、駆動手段は、互いに対向する位置に配設される、ボイスコイルとマグネットの組を四つ有し、ボイスコイルとマグネットは、各々開口部を有しており、各開口部が仮想線上に位置するように配設され、かついずれか一方がレンズホルダの各側面上に固着されるように構成してもよい。
【0018】
この場合、各開口部は、ボイスコイルおよびマグネットの略中央に位置していることが望ましい(請求項7)。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、保持手段は、一端がボイスコイルに、他端がハウジングに、それぞれ取り付けられた、集光レンズの光軸に平行に延出する複数のワイヤとして構成することができる。この場合、ボイスコイルは、ワイヤによって給電される。
【0020】
請求項9に記載の発明によれば、ハウジングは、レンズホルダにより保持される集光レンズの重心に向かって第一の軸に平行な貫通孔を少なくとも一つ有し、かつ集光レンズの重心に向かって第二の軸に平行な貫通孔を少なくとも一つ有することが好ましい。
【0021】
請求項10に記載の発明は、各貫通孔に嵌合され、該貫通孔を封止する封止部材をさらに有することを特徴とする。これにより、ハウジング内が密封され、ゴミ等が内部に入る現象を防止することができる。
【0022】
封止部材は、貫通孔を封止した状態において、端面がハウジングと第一の側面または第二の側面との間に位置するような長さに構成される(請求項11)。より詳しくは、端面は、平面または各側面側に凸となる曲面として構成される(請求項12)。これにより、振動状態にあるレンズホルダは、上記封止部材によって振動を適切に抑制される。つまり、レンズホルダが必要以上に大きく振動することがなくなり、互いに離間して配設される部材同士が接触することによる破損等を有効に防止することができる。なお、光源としては、LDが例示される(請求項13)。
【0023】
また、本発明に係る振動速度測定システムは、請求項1から請求項12のいずれかに記載の光通信ユニットと、集光レンズの振動速度を測定する振動速度測定手段とを有し、振動速度測定手段は、レンズホルダ本体において第一の軸と直交する第一の側面の所定位置に検査光を照射して戻り光を検出することにより、第一の軸方向に関する振動速度を測定し、レンズホルダ本体において第二の軸と直交する第二の側面の所定位置に検査光を照射して戻り光を検出することにより、第二の軸方向に関する振動速度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明に係る光通信ユニットによれば、振動測定時に、検査対象となるレンズを保持するレンズホルダの側面に検査用レーザ光を照射することが可能となる。そのため、レンズの振動特性を高精度に検出することが可能となる。
【0025】
さらに、本発明に係る光通信ユニットによれば、検査用レーザ光の導光部として形成されたハウジングの貫通孔を封止する封止部材を用いることにより、ハウジング内を密閉状態とすることができる。従って、粉塵等がハウジング内部に混入するおそれがなくなり、常に高い光伝送効率が保証される。
【0026】
また、上記封止部材を所定長に設定することにより、レンズホルダ(集光レンズ)の振動を抑制する緩衝材としても利用することができる。結果として、互いに離間して配設される部材同士が集光レンズの駆動時に接触することがなくなり、安全性と長寿命化が保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の実施形態のレンズアクチュエータ構造10、LD30、光ファイバ50を有する光通信ユニット100の概略構成を示す斜視図である。光通信ユニット100は、光ファイバー通信を加入者宅内に引き込むONUとして用いられる光通信装置に搭載される。例えば光通信装置は、一本の光ファイバで上り信号として波長1.3μmを送信し、下り信号として1.5μmの信号を受信するように構成された、双方向のWDM伝送に対応した装置である。
【0028】
光通信ユニット100を構成するレンズアクチュエータ構造10、LD30、光ファイバ50は、図1に示すように、一点鎖線で示す基準軸AXが一致するようにハウジングHによって一体形成されている。基準軸AXは、レンズアクチュエータ構造10に取り付けられた集光レンズ1の光軸に一致する。
【0029】
LD30は、図示しない制御部の制御の下、入力された情報に対応した変調を行いつつ、レーザ光を照射する。レンズアクチュエータ構造10は、LD30を対向する側に集光レンズ1を有しており、入射するレーザ光を収束する。光ファイバ50は、レンズアクチュエータ構造10から射出されたレーザ光を外部の装置に伝送する。ここで、光伝送効率を高め、安定した光通信を実現するために、レーザ光は、光ファイバ50の入射側端面50aにおいて、コア中心に入射する必要がある。そこで、光通信ユニット100では、レンズアクチュエータ構造10を用いて集光レンズ1を基準軸AXに対して直交する面内でwobblingさせて光量を検出し、該検出結果に基づいて集光レンズ1を光軸AXに対して直交しかつ互いに直交する二軸に微少移動させてレーザ光の入射側端面50aにおける入射位置の調整を行っている。
【0030】
なお、以下の本文では、集光レンズ1が移動可能な上記二軸をX軸、Y軸という。つまり、基準軸AXに対して直交する面はX−Y面として定義される。
【0031】
以下、図2〜図4を参照しつつレンズアクチュエータ構造10について詳説する。図2は、レンズアクチュエータ構造10の側端面図、図3は、図2におけるA−A線断面図、図4は、図2におけるB−B線断面図である。
【0032】
レンズアクチュエータ構造10は、集光レンズ1、レンズホルダ2、ボイスコイル3、マグネット4、線状のワイヤ5、を有する。レンズホルダ2は、レンズホルダ本体21と突出部22を有する。レンズホルダ本体21は、基準軸AXに直交する面での断面形状が正方形の平行平板状、つまり四角柱形状である。レンズホルダ本体21は、上面21a、底面21b、X軸に直交しY軸に平行な第一側面21x、Y軸に直交しX軸に平行な第二側面21yを有する。なお、本明細書において、側面とは、レンズホルダ2において、基準軸AXとほぼ平行な面をいう。突出部22は、該突出部22の中心軸が基準軸AXと一致するように第二面21b中央から光軸AXに沿って、つまり第二面21bから略直角に突出する。本実施形態の突出部22は、中空の四角柱形状を有している。従って、LD30から照射され集光レンズ1を透過したレーザ光は、突出部22内部の空洞部22aを介して光ファイバ50の入射側端面50aに入射する。
【0033】
より詳しくは、レンズホルダ2において、突出部22の表面22bは、レンズホルダ本体21の側面21x、21yよりも基準軸AX側に位置している。従って、図2に示すように、レンズホルダ2の基準軸AXを含む側断面の形状はT字状となる。
【0034】
ボイスコイル3とマグネット4はレンズホルダ2(および集光レンズ1)をX軸およびY軸の各方向に振動させる駆動機構として機能する。ボイスコイル3は、突出部22の四方の表面22bに固着されている。マグネット4は、各ボイスコイル3に対向するようにハウジングH内部に取り付けられている。本実施形態ではハウジングHは、ヨークとしても機能する。
【0035】
上記のように、ボイスコイル3とマグネット4は、突出部22の周囲に配設される。つまり、ボイスコイル3やマグネット4は、レンズホルダ本体21の底面21bよりも突出部22側に配設される。従って、ハウジングH内においてレンズホルダ本体21の各側面21x、21yは露出した状態にある。
【0036】
以上のような位置にボイスコイル3とマグネット4を配設するため、レンズアクチュエータ構造10は、各軸方向の幅を小さくすることができる。なお、上記実施形態では、突出部表面22bにはボイスコイル3が固着されているが、マグネット4を突出部表面22bに固着してもよい。
【0037】
各ワイヤ5は、ハウジングH内においてレンズホルダ2をX軸およびY軸の各方向に振動自在に保持するために用いられる保持部材である。レンズアクチュエータ構造10は、図4に示すように基準軸AXと平行に延出し、基準軸AXに対して対称な位置関係にある一対のワイヤを二組、計四本有している。
【0038】
ここで、ワイヤ5のレンズホルダ2に対する支点、つまりレンズホルダ2におけるワイヤ5の取り付け位置は、レンズホルダ2に保持された集光レンズ1が設定通りに安定して振動(wobbling、微少移動を含む)するためには、集光レンズ1近傍に設ける必要がある。そこで、ワイヤ5のレンズホルダ2に対する支点、換言すれば各ワイヤ5の一端の取り付け位置は、全てレンズホルダ本体21に設定される。さらに、各支点間で基準軸AX方向にずれが生じたり、各支点と基準軸AXとの距離が異なったりするとX、Yの各軸方向における振動特性に予期しないばらつきが発生してしまい、駆動制御が複雑になってしまう。そのため、本実施形態では、上記のような位置関係にある一対のワイヤ5を二組使用し、かつ各ワイヤ5がレンズホルダ本体21における基準軸AXと直交する面(ここでは上面21a)に半田6によって取り付けられるように構成される。つまり、図2や図3に示す半田6がレンズホルダ2の支点となる。
【0039】
なお、本実施形態では、レンズホルダ2を保持するためにワイヤ5を四本使用しているが、少なくとも基準軸AXに対して対称な位置関係にある一対のワイヤが一組あれば、レンズホルダ2を振動自在に保持することが可能である。また、X軸方向の振動特性とY軸方向の振動特性を任意に変化させたい場合には、さらにもう一対のワイヤを所定の位置に配設すればよい。例えば、X軸方向の振動特性(振動速度)をY軸方向の振動特性よりも高く(速く)設定したい場合には、各支点がY軸上であってかつ基準軸AXから互いに等距離にあるように一対のワイヤをさらにもう一組使用すればよい。
【0040】
以上が光通信ユニット100内に設けられるレンズアクチュエータ構造10の説明である。次いで、光通信ユニット100を用いた振動速度測定システム110について説明する。図5は、振動速度測定システム110を説明するための図である。振動速度測定システム110は、上述した光通信ユニット100と振動速度測定計70を有する。
【0041】
図1、図5に示すように、ハウジングHには、収納されたレンズアクチュエータ構造10におけるレンズホルダ本体21の各側面21x、21yに対応する位置に貫通孔11が形成されている。本実施形態の貫通孔11は、図5に示すように、X、Yの各軸に沿って基準軸AXから各側面21x、21yに引いた仮想線Lx、Ly上に形成される。(図5中二点鎖線で示す)
【0042】
本実施形態では、振動速度測定計70として、例えばレーザドップラー振動計を想定する。X軸方向の振動特性を検査する場合、振動速度測定計70から仮想線Lx上を基準軸AXに向かってレーザ光を照射する。該レーザ光は、貫通孔11を通り、被検面である側面21xに入射し、反射する。振動速度測定計70は、側面21xからの戻り光を検出することにより、X軸方向の振動速度(振動周波数:Hz)を測定する。
【0043】
また、Y軸方向の振動特性を検査する場合、振動速度測定計70から仮想線Ly上を基準軸AXに向かってレーザ光を照射する。該レーザ光は、貫通孔11を通り、被検面である側面21yに入射し、反射する。振動速度測定計70は、側面21yからの戻り光を検出することにより、Y軸方向の振動速度を測定する。
【0044】
ここで、上記の通り、各貫通孔11は、仮想線Lx、Ly上に形成されている。従って、振動速度測定計70から照射され、各貫通孔11を通ったレーザ光は、各側面21x、21yとX、Yの各軸との交点に入射する。各交点での振動特性は、集光レンズ1の重心でのX軸方向、Y軸方向の振動特性に極めて近似している。結果として、振動速度測定システム110によれば、集光レンズ1の振動特性を高精度で検査することができる。
【0045】
振動特性の検査は、光通信ユニット100の出荷当初のみ行われる。そして、該検査結果に基づいて、接着誤差等の個体差に起因する共振周波数の妥当性や安定性を調べ、検査対象である光通信ユニット100の製品としての良否判定が行われる。
【0046】
振動特性の検査が終了すると、図6や図7に示すように、ハウジングHに形成された各貫通孔11に該貫通孔11の径を略同一径のネジ12を嵌合し、各貫通孔11を封止する。ネジ12は、金属製であっても樹脂製であっても良い。
【0047】
ネジ12において、レンズホルダ本体21の各側面21x、21yと対向する端面は、各側面21x、21y側に凸となる曲面あるいは平面として構成される。また、ネジ12は、貫通孔11に嵌合した状態において、貫通孔11からハウジングH内部に所定量突出し、上記端面がハウジングHと各側面21x、21y間に位置するような長さを有する。
【0048】
ネジ12は、ハウジング内において、レンズアクチュエータ構造10における集光レンズ1の振動の大きさ(振動幅)を抑制する機能を持つ。つまり、ボイスコイル3とマグネット4の作用によって振動状態にあるレンズホルダ2は、ある程度振動するとレンズホルダ本体21の各側面21x、21yがネジ12に当たり、振動の大きさが抑制される。これにより、ボイスコイル3がマグネット4に当たり予期しない破損、損傷を引き起こすおそれを有効に回避している。
【0049】
また、ネジ12によって各貫通孔11を封止することにより、ハウジングH内部にゴミが混入することを有効に防止している。従って、光通信ユニット100によれば、安定して高い光伝送効率を確保することができる。
【0050】
以上説明した、光通信ユニット100および該ユニット100を用いた振動速度測定システム110は、ユニット自体の小型化に主眼をおいた構成になっている。これに対して、以下に説明する光通信ユニット200および該ユニット200を用いた振動速度測定システム210は、より安定した振動の実現に主眼をおいた構成になっている。
【0051】
図8は、上述した光通信ユニット100の変形例である光通信ユニット200の概略構成を示す側面図である。図9は、光通信ユニット200の基準軸AXと直交する面での断面図、図10は、光通信ユニット200の基準軸AXを含み、Y軸に平行な面での断面図である。図8〜図10に示す光通信ユニット200において、光通信ユニット100と同一部材には同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0052】
光通信ユニット200において、レンズホルダ2は直方体形状を有している。レンズホルダ2の中央部において集光レンズ1が保持されている。そして、レンズホルダ2の各側面21x、21yにボイスコイル3が固着されている。ハウジングHにおけるボイスコイル3の対向位置にはマグネット4が配設されている。なお、光通信ユニット200において、ボイスコイル3とマグネット4は中心が仮想線Lx、Ly上に位置するように配設される。従って、光通信ユニット200では、ボイスコイル3とマグネット4により発生する推力の中心と集光レンズ1の重心(すなわちレンズホルダ2の重心)が一致している。そのため、ぶれの少ない非常に安定したレンズ駆動が可能になる。
【0053】
また、ボイスコイル3とマグネット4は、中央部に開口3’、4’を有する円筒形状として構成される。従って、光通信ユニット200でも、光通信ユニット100と同様に貫通孔11から各側面21x、21y、より詳しくは、各側面21x、21yとX、Yの各軸との交点を望むことができる。そのため光通信ユニット200も、光通信ユニット100を使用する振動速度測定システム110と同様のシステムを使用した場合、振動速度測定計から照射された検査用のレーザ光を、各貫通孔11、開口3’、4’を介して各側面21x、21yとX、Yの各軸との交点に入射させることができる。結果として、集光レンズ1の振動特性を高精度で検査することができる。
【0054】
なお、光通信ユニット200では、ボイスコイル3は、近傍に位置するワイヤ5と電気的に接続されている。そして、各ボイスコイル3は、各ワイヤ5から給電されている。すなわち、光通信ユニット200において、レンズホルダ2を保持するワイヤ5は、ボイスコイル3に対する給電手段としても機能する。
【0055】
また、光通信ユニット200においても、光通信ユニット100と同様に、振動特性の検査後は、ネジ12によって各貫通孔11を封止される。これにより、ハウジング内部の密閉性を確保し、かつ、振動幅を適度に抑制し、部品の破損等を有効に防止している。
【0056】
なお、各光通信ユニット100、200のハウジングHは、図5、図6、図9、図10に示すように、X、Yの各軸方向に沿って二つずつつまり計四つの貫通孔11を形成している。これにより、光通信ユニット100がいずれの姿勢にあっても各軸方向の振動特性の検査を容易に実行可能としている。また四つの貫通孔11にネジ12を嵌合することによって、X、Yの各軸の正および負の双方向における振動幅を有効に抑制できるようにしている。但し、振動特性の検査自体に必要な貫通孔11は、X、Yの各軸方向に一つで足りる。従って、例えばボイスコイル3とマグネット4等駆動部に関するソフトウェア的な制御によって振動幅を制御可能であるならば、ハウジングHにおいて、貫通孔11はX、Yの各軸に対して一つずつ計二つ設ける構成として、ハウジングHの加工工程を簡略化し、光通信ユニット100の製造効率を向上させることも可能である。
【0057】
以上が本発明の実施形態である。本発明にかかるレンズアクチュエータ構造および該構造の振動速度測定システムは、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0058】
例えば、光通信ユニット100における、レンズホルダ本体21の形状は、断面が正方形の平行平板状であると説明したが、必ずしもこの形状に限定されるものではない。但し、振動速度に関する高精度な測定を実現するためには、該本体21の側面21x、21yにおいて、振動速度測定計からのレーザ光が照射される領域は、X、Yの各軸に対して直交する平面として構成されていることが望ましい。
【0059】
また、製造の容易性に鑑み、光通信ユニット100における突出部22を中空の四角柱形状として構成した。しかし、本発明では、レンズホルダ本体21に保持された集光レンズ1から射出されたレーザ光の光路を確保しつつ、ボイスコイル3(またはマグネット4)を配置、固着できる領域を確保できるのであれば、突出部22は上記のような筒状でなくても良い。
【0060】
さらに、上記実施形態では、レンズアクチュエータ構造は、光通信装置に好適に搭載されることを前提としている。従って、光源としてはLDを用い、光通信ユニットを構成していると説明した。本発明に係るレンズアクチュエータ構造は、光通信装置にのみ使用されるものではなく、例えば光スイッチや可変光減衰器等にも使用することができる。この場合、レンズアクチュエータ構造は、光導波路間に配設されるため、光源は、射出側の光ファイバ等が相当する。
【0061】
なお、上記実施形態では、レーザ光の光ファイバ入射側端面50aにおいてにおける入射位置の調整は、wobblingを用いると説明したが、これはあくまで一例であって他の調整方法を採用することも可能である。例えば、入射側端面50aで反射したレーザ光を、中心がコア中心と光学的に一致する4分割PDで受光し、各分割領域での光量差が所定の関係(例えば均一)となるように集光レンズ1を二軸に移動させることによっても調整は可能である。
【0062】
さらに、上記実施形態では、貫通孔11を封止する封止部材としてネジ12を使用した構成を説明した。ネジ12の形状として説明したことさえ満足していれば、封止部材は、ネジに限定されるものではなく、ピンや線状部材等種々のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態のレンズアクチュエータ構造を有する光通信ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態のレンズアクチュエータ構造の側端面図である。
【図3】実施形態のレンズアクチュエータ構造のA−A線断面図である。
【図4】実施形態のレンズアクチュエータ構造のB−B線断面図である。
【図5】実施形態の振動速度測定システムを説明するための図である。。
【図6】実施形態の光通信ユニットにネジを嵌合した状態を示す図である。
【図7】実施形態の光通信ユニットにネジを嵌合した状態を示す図である。
【図8】実施形態の変形例の光通信ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図9】実施形態の変形例の光通信ユニットの断面図である。
【図10】実施形態の変形例の光通信ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 集光レンズ
2 レンズホルダ
21 レンズホルダ本体
22 突出部
3 ボイスコイル
4 マグネット
5 ワイヤ
6 半田
10 レンズアクチュエータ構造
11 貫通孔
12 ネジ
30 LD
50 光ファイバ
100、200 光通信ユニット
110 振動速度測定システム
H ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報により変調された光を照射する光源と、
前記光を伝送する光ファイバと、
前記光源から照射された前記光を前記光ファイバに集光させる集光レンズと、
前記集光レンズを保持するレンズホルダ、前記集光レンズを前記レンズホルダとともに、該集光レンズの光軸と直交しかつ互いに直交する第一の軸および第二の軸に沿って駆動させる駆動手段、前記レンズホルダを振動自在に保持する保持手段を有するレンズアクチュエータ構造と、
前記光源、前記光ファイバ、前記レンズアクチュエータ構造を一体に保持するハウジングと、を有し、
前記レンズホルダは、前記第一の軸と直交する一対の第一の側面、前記第二の軸と直交する一対の第二の側面を持ち、
前記ハウジング外部から少なくとも一つの前記第一の側面の所定位置および少なくとも一つの前記第二の側面の所定位置に向かって投光自在に構成されていることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信ユニットにおいて、
前記所定位置は、前記第一の側面にあっては、前記レンズホルダに保持される前記集光レンズの重心から前記第一の軸方向に引いた仮想線が該レンズホルダの表面と交わる点であり、前記第二の側面にあっては、前記重心から前記第二の軸方向に引いた仮想線が該第二の側面と交わる点であることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光通信ユニットにおいて、
前記駆動手段は、前記レンズホルダの各側面から前記集光レンズの光軸に沿ってずれた位置に配設されていることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光通信ユニットにおいて、
前記レンズホルダは、前記集光レンズの光軸に沿って突出する中空かつ四角柱状の突出部を有し、
前記駆動手段は、互いに対向する位置に配設されたボイスコイルとマグネットの組を四つ有し、
前記ボイスコイルと前記マグネットは、一方が突出部表面において第一の軸に沿って二つ、第二の軸に沿って二つ固着されることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光通信ユニットにおいて、
前記保持手段は、一端が前記レンズホルダに他端がハウジングに取り付けられた、前記集光レンズの光軸に平行に延出する複数のワイヤであることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項6】
請求項2に記載の光通信ユニットにおいて、
前記駆動手段は、互いに対向する位置に配設される、ボイスコイルとマグネットの組を四つ有し、
前記ボイスコイルと前記マグネットは、各々開口部を有しており、各開口部が前記仮想線上に位置するように配設され、かついずれか一方が前記レンズホルダの各側面上に固着されていることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の光通信ユニットにおいて、
前記各開口部は、前記ボイスコイルおよび前記マグネットの略中央に位置していることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の光通信ユニットにおいて、
前記保持手段は、一端が前記ボイスコイルに、他端がハウジングに、それぞれ取り付けられた、前記集光レンズの光軸に平行に延出する複数のワイヤであり、
前記ボイスコイルは、前記ワイヤによって給電されることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光通信ユニットにおいて、
前記ハウジングは、前記レンズホルダにより保持される前記集光レンズの重心に向かって第一の軸に平行な貫通孔を少なくとも一つ有し、かつ前記集光レンズの重心に向かって第二の軸に平行な貫通孔を少なくとも一つ有することを特徴とする光通信ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の光通信ユニットにおいて、
各貫通孔に嵌合され、該貫通孔を封止する封止部材をさらに有することを特徴とする光通信ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の光通信ユニットにおいて、
前記封止部材は、前記貫通孔を封止した状態において、端面が前記ハウジングと前記第一の側面または前記第二の側面との間に位置するような長さに構成されることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の光通信ユニットにおいて、
前記端面は、平面または前記各側面側に凸となる曲面として構成されることを特徴とする光通信ユニット。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のレンズアクチュエータ構造において、
前記光源はLDであることを特徴とするレンズアクチュエータ構造。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の光通信ユニットと、
前記集光レンズの振動速度を測定する振動速度測定手段とを有し、
前記振動速度測定手段は、前記レンズホルダ本体において前記第一の軸と直交する第一の側面の所定位置に検査光を照射して戻り光を検出することにより、前記第一の軸方向に関する振動速度を測定し、前記レンズホルダ本体において前記第二の軸と直交する第二の側面の所定位置に検査光を照射して戻り光を検出することにより、前記第二の軸方向に関する振動速度を測定することを特徴とする振動速度測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−276157(P2006−276157A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91063(P2005−91063)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月7日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.104 No.507」に発表
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】