説明

光配向用偏光光照射装置

【課題】配向膜に対し均一なエネルギー分布で偏光光を照射できる光配向用偏光光照射装置を提供すること。
【解決手段】連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜51に対し、光配向膜51の搬送方向に沿って光照射部20A.20Bを多段に配置する。多段に配置された各光照射部20A,20Bに、光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる棒状のランプ21と樋状集光鏡22と、複数のワイヤーグリッド偏光素子を上記線状のランプ21の伸びる方向に沿って並べた偏光素子ユニット10,10’を設ける。そして、各段の光照射部の偏光素子間の境界部が、他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜51の搬送方向に対して互い重ならないように、各光照射部20A,20Bを、光配向膜51の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子の配向膜や視野角補償フィルムの配向層などの配向膜の光配向を行なう偏光光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などの配向処理に関し、配向膜に所定の波長の偏光光を照射することにより配向を行なう、光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきている。以下、上記光により配向を行う配向膜や配向層を設けたフィルムのことを総称して光配向膜と呼ぶ。
光配向膜は、液晶パネルの大型化と共に大型化しており、それと共に光配向膜に偏光光を照射する偏光光照射装置も大型化している。
上記光配向膜において、例えば視野角補償フィルムは、帯状で長尺のワークであり、配向処理後、所望の長さに切断し使用する。最近は、パネルの大きさに合わせて大きくなり、幅1500mm以上のものもある。
このような大型の光配向膜に対して光配向を行うために、配向膜の幅に合せた線状の光源(棒状ランプ)を使った装置(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献6)や、配向膜の幅に合せて照射ヘッドを多連化した装置が提案されている(例えば特許文献3)。
【0003】
図12に、棒状ランプを使った偏光光照射装置の構成例を示す。
高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の光配向を行うための波長の光を放射する棒状ランプ21と、ランプ21からの光を反射する断面が楕円形の樋状集光鏡22を備えた光照射部20を、ランプ21の長手方向が、ワーク50上に形成された光配向膜51の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置する。棒状ランプ21の長さは、棒状ランプ21からの光が、光配向膜51の全幅を照射できるように、光配向膜51の幅よりも広くなるものを選択する。
光照射部20には、ワイヤーグリッド偏光素子を組み合わせた偏光素子ユニット10が設けられている。偏光素子ユニット10の構造については、後述する。
棒状ランプ21は、その長手方向が樋状集光鏡22の長手方向と一致するように、また、断面が楕円形の樋状集光鏡22の第1焦点位置に一致するように配置され、ワーク50上に形成された光配向膜51は、樋状集光鏡22の第2焦点位置に配置されている。
ワーク50は例えば長尺の連続ワークであり、送り出しローラR1にロール状に巻かれており、送り出しローラR1から引き出されて搬送され、光照射部20の下を通って巻き取りローラR2に巻き取られる。
【0004】
ワーク50が光照射部の下を搬送されるとき、ワーク50の光配向51に、偏光素子ユニット10により偏光された棒状ランプ21からの光が照射され、光配向処理される。
ワイヤーグリッド偏光素子については、例えば特許文献4や特許文献5に詳細が示されている。
ワイヤーグリッド偏光子は、長さが幅よりもはるかに長い複数の直線状の電気導体(例えばクロムやアルミニウム等の金属線、以下グリッドと呼ぶ)を、石英ガラスなどの基板上に平行に配置形成したものである。電気導体のピッチPは、入射する光の波長以下、望ましくは1/3以下がよい。
電磁波中に上記偏光素子を挿入すると、グリッドの長手方向に平行な偏波(偏光)成分は大部分反射され、直交する偏波(偏光)成分は通過する。
したがって、図12に示す装置においては、光配向膜51に対して、ワーク50の幅方向(ランプ21の長手方向)に沿った偏光光が照射される。
現在、光配向には波長280nm〜320nmの紫外線が用いられる。したがって、光配向用偏光光照射装置に用いるワイヤーグリッド偏光素子は、100nm程度のグリッドを形成する、微細な加工技術が必要である。
そのため、半導体製造に使われる技術を利用して、ガラス基板(ガラスウエハ)上にグリッドを形成し、適度な大きさに切断して用いる。
【0005】
しかし、半導体製造に使われる装置は、処理することができる基板の大きさが、現状ではφ300mm程度までであり、1枚で大面積のワークに対応できるような大型の偏光素子は製作できない。
そこで、発光長の長い棒状の光源、例えば長さ1500mmの棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプに応じた、大きな偏光素子が必要な場合、前記特許文献2においてはガラス基板から切り出したワイヤーグリッド偏光素子を1個の偏光子とし、この偏光子を複数、グリッドの方向をそろえ、ランプの長手方向に沿って並べ、一つの偏光素子として使用することが提案されている。
しかし、単にワイヤーグリッド偏光素子を並べだけでは、個々のワイヤーグリッド偏光素子の基板である石英ガラスのエッジは微小な欠けや凹凸が生じており、その隙間から、光源からの直射光、即ち無偏光光が漏れ、消光比が悪くなる。また、上記したエッジ付近の欠けが、グリッドの欠損を引き起こし、偏光素子の周辺部においては消光比が悪くなる。
この間題を防ぐために、われわれは偏光素子の突き合わせ部分から無偏光光が漏れないように偏光素子の配列方向の端部に遮光部分を設けることを、特願2004−314056号において提案した。
【0006】
図13は上述した出願の第1の実施例の偏光素子ユニットの構成を示す図であり、図13(a)は、上記偏光素子ユニット10を照射光の光軸方向から見た図、図13(b)は偏光素子ユニット10の側面図、図13(c)は遮光板の取り付け例を示す図である。
図13(a)(b)に示すように、上フレーム2a、下フレーム2bからなるフレーム2内にガラス基板から切り出されたワイヤーグリッド偏光素子1が複数並べて配置されている。
偏光素子1の配列方向端部(境界部分)には、遮光板3が設けられる。
遮光板3は、例えば図13(c)に示すように取り付けられる。すなわち、フレーム2を上フレーム2a、下フレーム2bから構成し、下フレーム2bの上に複数のワイヤーグリッド偏光素子1を並べ、その上から遮光板と一体となった上フレーム2aをかぶせ固定する。
同図においては、偏光素子に形成されたワイヤーグリッドの方向は、ワーク50の搬送方向(ランプ21の長手方向に対して直交する方向)であり、したがって、光配向膜51には、ワーク50の幅方向(ランプ21の長手方向に沿った方向)の偏光光が照射される。
【0007】
光配向膜51に、ワーク50の搬送方向(ランプ21の長手方向に対して直交する方向)に沿った偏光光を照射したい場合は、同図において全てのワイヤーグリッド偏光素子1を90°回転させてフレーム2に配置し、ワイヤーグリッドの方向が、ワーク50の搬送方向(ランプ21の長手方向に対して直交する方向)になるようにすれば良い。
このように、図1に対してワイヤーグリッド偏光素子1を90°回転させて配置した場合においても、上記と同様に、偏光素子の周辺部においては、石英ガラスのエッジの微小な欠けや凹凸や、グリッドの欠損により消光比が悪くなるという問題が生じるため、遮光板3を設ける必要がある。
【0008】
図13に示すように、遮光板3を設けることにより、遮光板3を設けた部分の照度は低下するが、並べて配置した偏光素子1の隙間から無偏光光が漏れることはなくなるので、消光比は低下しない。ただし遮光板3の存在により、遮光板3の直下の照度が低くなり、照度分布が悪化する。
照度分布が悪化すると、配向膜において他よりも低いエネルギーの偏光光で照射される部分が生じる場合がある。配向膜に照射される偏光光のエネルギーが低いと、その配向膜が使用された製品において、液晶の配向を十分に行うことができない場合があり、ディスプレイとして使用される場合は、画面のむらやコントラストの低下といった製品不良の原因となる。
遮光板がないと、照度の低下はないが、ワイヤーグリッド偏光子の周辺部や境界部から無偏光光が透過するので、光配向膜に照射される消光比が悪化する。
消光比が悪化すると、照度が低下した場合と同様に、その配向膜が使用された製品において、液晶の配向を十分に行うことができない場合がある。
【0009】
一方、特許文献3に示される照射ヘッドを多連化して配置した装置においては、光配向膜の幅方向(搬送方向に対して直交方向)に対して、光照射領域が途切れないように、各照射ヘッドからの光照射領域が重なり合うように照射している。
しかし、このような光照射領域が重なり合う部分においては、照度が二つの照射ヘッドからの光の合算になるため、一つの照射ヘッドからの光により照射されている他の領域比べて照度の制御が難しい。そのため他の領域に比べて照度が高くなったり低くなったりして照度分布が悪化する場合があり、上記と同様の問題が生じる。
【特許文献1】特開2004−163881号公報
【特許文献2】特開2004−144884号公報
【特許文献3】特開2002−350858号公報
【特許文献4】特開2002−328234号公報
【特許文献5】特表2003−508813号公報
【特許文献6】特開2004−177904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように1枚で大面積のワークに対応できるような大型のワイヤグリッド偏光素子は製作できず、大面積のワークに光を照射する場合は、複数の偏光素子を並べて使用せざるを得ない。そこで、前記したように境界部分に遮光板を設けて消光比の低下を防いでいるが、偏光素子間に境界部が生じ、この境界部の照度が低下し、照度分布が悪化するといった問題が生ずる。
同様に、蒸着膜を蒸着させた偏光素子や、ガラス板をブリュースタ角で傾けた偏光素子の場合も、製作できる大きさには限界があり、一枚の偏光素子で大面積のワークに対応できる大型のものは製作できない。
そこで、例えば前記特許文献3に示すように、照射ヘッドを多連化して複数の偏光素子を並べて使用することになるが、この場合も各照射ヘッドに設けれられた偏光素子による偏光光の間には境界部が生じており、この部分の照度が他の領域に比べて照度が高くなったり低くなったりして照度分布が悪化するため照射エネルギー分布が悪化するといった問題がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、大型の配向膜に対して偏光光を照射し光配向を行なう偏光光照射装置において、配向膜に対し均一なエネルギー分布で偏光光を照射できる光配向用偏光光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を本発明においては、次のように解決する。
(1)連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し、光配向膜の搬送方向に沿って光照射部を多段に配置する。
多段に配置された各光照射部に、光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる線状の光源と、複数のワイヤーグリッド偏光素子を上記線状の光源の伸びる方向に沿って並べた偏光素子ユニットを設ける。
そして、各段の光照射部の偏光素子間の境界部が、他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないように、各段に配置された各光照射部を、光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置する。
(2)連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し、光配向膜の搬送方向に沿って光照射部を多段に配置する。
上記多段に配置された各光照射部は、光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に多連に並べられた光照射ユニット群から構成され、各光照射ユニットに、複数の光照射ユニットをガラスの放電容器内に一対の電極が対向配置されたランプと、ランプからの光を反射する反射ミラーと、該反射ミラーにより反射された光を偏光する偏光手段とを設け、上記ランプを上記一対の電極を結ぶ線である管軸が上記反射ミラーの光軸と平行になるように配置する。
そして、各段の光照射部の偏光手段の境界部が、他の段の光照射部の偏光手段の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互いに重ならないように、各段に配置された光照射部を、光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、光照射部を光配向膜の搬送方向に対して多段に配置し、各段に配置された光照射部のワイヤーグリッド偏光素子あるいは偏光手段の境界部が、他の段の光照射部の偏光素子あるいは偏光手段の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互いに重ならないように、各段に配置された光照射部を光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置したので、光配向膜全体に均一なエネルギー分布で偏光光を照射することができる。
すなわち、偏光素子(手段)の境界部に対応した光配向膜上の照度は低く(あるいは高く)なるが、各段の光照射部の偏光素子(手段)の境界部は、光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されており、多段の光照射部から光配向膜上に順次光を照射することにより、光配向膜上の照度分布は積算され、結果として光配向膜全体は均一なUVエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。
したがって、光配向膜において、照射される偏光光のエネルギーが不足する部分が生じるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に本発明の第1の実施例の偏光光照射装置の構成を示す。
光照射部20A,20Bには、線状の光源である、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の棒状のランプ21と、ランプ21からの光を反射する断面が楕円形の樋状集光鏡22が内蔵されている。
光照射部20A,20Bは、ランプ21の長手方向が、ワーク50上に形成された光配向膜51の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置されている。
棒状ランプ21は、その長手方向が樋状集光鏡22の長手方向と一致するように、また、断面のほぼ中心部が楕円形の樋状集光鏡22の第1焦点位置に一致するように配置され、ワーク50上に形成された光配向膜51は、樋状集光鏡22の第2焦点位置に配置されている。
ワーク50は例えば長尺の連続ワークであり、不図示の送り出しローラにロール状に巻かれており、送り出しローラから引き出されて搬送され、光照射部20A,20Bの下を通って不図示の巻き取りローラに巻き取られる。
光照射部20A,20Bの光出射側には、図13に示したワイヤーグリッド偏光素子ユニット10,10’が設けられている。前述したように、ワイヤーグリッド偏光素子ユニット10,10’には、偏光素子1の配列方向端部(境界部分)には、遮光板3が設けられている。
【0014】
なお、以下では、線状の光源として棒状ランプを例にして説明するが、近年は、紫外光を放射するLEDやLDも実用化されており、このようなLEDまたはLDを直線状に並べて配置し線状光源としても良い。なおその場合は、LEDまたはLDを並べる方向がランプの長手方向に相当する。
また、現在光配向膜の材料としては、波長260nm±20nmの光で配向されるもの、280nm〜330nmの光で配向されるもの、365nmの光で配向されるものなどが知られており、光源の種類は必要せされる波長に応じて適宜選択する。
【0015】
光照射部20A,20Bのランプ21の長手方向の両側には、ブロック23が取り付けられ、このブロック23を介して支柱24が取り付けられている。光配向膜51が形成されたワーク50は、上記2本の支柱の24間を搬送される。
このような偏光光を出射する光照射部20A,20Bを、複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設ける。図1は光照射部20A,20Bを2段に並べた場合を示し、以下2段の場合を例にして説明するが、3段以上設けても良い。
ここで、各段に配置された各光照射部20A,20Bは、各段の光照射部20A,20Bの偏光素子1の間の境界部(遮光板3の設けられている部分)が、他の段の光照射部の偏光素子1の境界部と、光配向膜51の搬送方向に対して互い重ならないように、搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されている。
すなわち、図2に示すように、2段に設けた光照射部20Aと20Bのワイヤーグリッド偏光素子ユニット10,10’の遮光板3が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置される。光照射部を3段以上設ける場合も同様に、遮光板3が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置される。
なお、図1では光照射部20A,20Bにそれぞれ5枚と6枚のワイヤーグリッド偏光素子を設けた場合を示しているが、図2では8枚のワイヤーグリッド偏光素子からなるワイヤーグリッド偏光素子ユニットを用いた場合を示している。
【0016】
次に図1に示した装置の動作について説明する。
ワーク50が搬送されると、光配向膜51は、まず、光照射部20Bからの偏光光が照射され、次に光照射部20Aからの偏光光が照射される。
光照射部20Bの偏光素子ユニット10’に並べられた複数のワイヤーグリッド偏光子1の境界には、遮光板3が設けられており、したがって、遮光板3の直下を搬送される光配向膜51の部分には、図2の(a)に示すように照度の低い偏光光が照射される。
光照射部20Aの偏光素子ユニット10に並べられた複数のワイヤーグリッド偏光子1の境界にも、遮光板3が設けられており、したがって、遮光板3の直下を搬送される光配向膜51の部分には、図2(b)に示すように照度の低い偏光光が照射される。
しかし、偏光素子ユニット10’と10の遮光板3の位置が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置されているので、光照射部20Bによる偏光光照射において低い照度で照射された部分は、次の光照射部20Aによる偏光光照射において高い照度で照射され、また、光照射部20Aによる偏光光照射において低い照度で照射される部分は、先に光照射部20Bによる偏光光照射において高い照度で照射されている。
したがって、光照射部20Aと20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向膜51は、図2(c)に示すように両者の照度分布が積算され、結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。このことにより、光配向膜51において、照射される偏光光のエネルギーが不足する部分が生じるのを防ぐことができる。
【0017】
ワーク50は、ロールに巻かれた長尺帯状のワークであってもよいし、また、光配向膜51が形成された例えば液晶パネルの大きさに整形された矩形状のワークであってもよい。
ワーク50が矩形状の場合、ワーク50は図示しないワークステージ上に載置され、光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながらワークステージを直線移動させて、光配向膜の光配向処理をする。
なお、ワーク50の光配向膜51に偏光光を照射し、光配向処理を行なう際、偏光光を照射しながらワーク50を連続的に移動させてもよいし、ワークを間歇的に移動させながら偏光光を照射してもよい。
ワーク50を間歇的に移動させる場合には、例えば、ワーク50を一定量移動させた後、ワーク50を停止させて偏光光を照射し、ついで偏光光の照射を停止してワークを一定量移動させた後、ワークを停止させて偏光光を照射する動作を繰り返す。
また、一方向だけでなくワーク50を往復移動させて、例えば光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにしても良い。
さらに、ワークステージを移動させる代わりに、ワーク50上で光照射部20A,20Bを移動させてワーク50の光配向処理を行ってもよい。
【0018】
次に偏光素子ユニットの遮光板3の位置が、ワークの搬送方向に対して重ならないようにずらして配置した光照射装置を用いて、エネルギー分布均一化の効果を調べた実験結果を示す。
図3は、ワークの搬送方向に多段に並べて配置した光照射部の、ワイヤーグリッド偏光素子ユニットの並べ方を示す図である。
図3に示すように光照射部は、光照射部1〜4の4台あり、ワークの搬送方向に沿って並べられている。同図に示されるように、各光照射部のワイヤーグリッド偏光素子ユニットの遮光板3は、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置されている。
このようなワイヤーグリッド偏光素子ユニットの配置において、光照射部(ワイヤーグリッド偏光素子ユニット)が1段のみ、光照射部(ワイヤーグリッド偏光素子ユニット)が2段、光照射部(ワイヤーグリッド偏光素子ユニット)が4段の、各場合に関するUVエネルギー(平均照度)分布を測定した。ここで平均照度とは、ワークを搬送方向に移動させたときの平均的な照度のことをいう。
【0019】
図4〜図6にその結果を示す。図4は、光照射部として図3の光照射部1のみを使用した場合である。
縦軸は光配向膜に照射されるUVエネルギー(単位mJ/cm2 )であり、横軸はワークの中心から幅方向の距離(単位mm)であり、図5,6も同様である。
図4に示すように、光照射部1のみでは、遮光部により照度分布が生じ、下記式で光照射領域のエネルギー分布を計算すると、±8.5%であった。
エネルギー分布(±%)={(エネルギー最大値−エネルギー最小値)/(エネルギー最大値+エネルギー最小値)}×100
図5は、光照射部として図3の光照射部1と光照射部2の2段を使用した場合である。同図下のほうのグラフは、光照射部1と光照射部2のそれぞれでのエネルギー分布であり、エネルギー分布は上式より±8%〜10%程度であるが、両方が重ね合わされて照射されると、照射されるUVエネルギーが倍になるとともに、一方の光照射部の照度の低い部分が他方の光照射部の照度の高い部分で打ち消され、上のほうに示されるグラフのように、エネルギー分布は±2.8%に改善された。
図6は、光照射部として図3の光照射部1から光照射部4までの4段を全て使用した場合である。同図下のほうのグラフは、光照射部1から光照射部4のそれぞれのエネルギー分布であり、エネルギー分布は上式より±8%〜10%程度であるが、すべてが重ね合わされて照射されると、照射されるUVエネルギーが4倍になるとともに、各光照射部の照度分布の凹凸が相殺され、上のほうに示されるグラフのように、エネルギー分布は±1.5%に改善された。
【0020】
図7に本発明の第2の実施例の偏光光照射装置の構成を示す。
図1の実施例では、棒状ランプ21と樋状集光鏡22を用いて光照射部を構成したが、上記棒状ランプ21と樋状集光鏡22に換えて図7に示すように、複数のランプ31と反射ミラー32を用いて光照射部30A,30Bを構成してもよい。
各光照射部30A,30B内には、ガラスの放電容器内に一対の電極が対向配置された、例えば超高圧水銀ランプやキセノン水銀ランプ等の点光源ランプ31と、ランプ31からの光を反射する反射ミラー32と、該反射ミラー32により反射された光を偏光する偏光素子11とが設けられ、ランプ31は一対の電極を結ぶ線である管軸が反射ミラーの光軸と平行になるように配置されている。
上記偏光素子11としては、例えば偏光素子1をランプの配列方向と同じ方向に複数並べた、前記図13に示したワイヤーグリッド偏光素子を用いることができ、隣り合う偏光素子1の端部には境界部を有する。
上記各ランプ31、反射ミラー32は、図7に示すように隣合うランプから出射した光が、被照射面(ワーク上)で重ならないように配置され、各ランプ31から出射する光により、ワーク50の搬送方向に対して直交する方向に延びた光照射領域が形成されている。このため、偏光素子11の境界部の直下の部分の照度は低下する。
光照射ユニット30A,30Bは、図1に示したものと同様、ブロック23を介して支柱24が取り付けられている。光配向膜51が形成されたワーク50は、上記2本の支柱の24間を搬送される。
このように構成された光照射部30A,30Bを、複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設ける。図7は光照射部を2段に並べた場合を示しているが、3段以上設けても良い。
【0021】
上記したように、各光照射部30A,30Bにおいては、偏光素子11の境界部の直下の部分の照度が低下し、照度分布が悪化する。
そこで、本実施例においても前記第1の実施例と同様、各段に配置された各光照射部30A,30Bを、各段の光照射部30A,30Bの偏光素子11の境界部が、他の段の光照射部の偏光素子11の境界部と、光配向膜51の搬送方向に対して互い重ならないように(一直線状に並ばないように)、搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置する。 図7の例では、光照射部30Aにはランプ31が4灯設けられているが、光照射部30Bには、光照射部30Aのランプ31の境界部にランプ31が配置されるように、ランプ31が5灯設けられている。
光照射部を3段以上設ける場合も同様に、光照射ユニットの境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置する。
このような配置とすることにより、前記第1の実施例と同様、光照射部30A,30Bによる偏光光照射において低い照度で照射された部分は、他の段の光照射部30B,30Aによる偏光光照射において高い照度で照射され、両者の照度分布が積算され、結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。
【0022】
図8に本発明の第3の実施例の偏光光照射装置の構成を示す。
本実施例は光照射部をランプと反射ミラーと偏光素子を有する複数の光照射ユニットから構成したものである。
図8に示すように、光照射部40A,40Bは、複数の光照射ユニット41を、ワーク50の搬送方向に対して直交する方向に多連に並べて構成したものであり、各光照射ユニット41内には、ガラスの放電容器内に一対の電極が対向配置された、例えば超高圧水銀ランプやキセノン水銀ランプ等の点光源ランプ42と、ランプからの光を反射する反射ミラー43と、該反射ミラー43により反射された光を偏光する偏光素子12とが設けられ、ランプ42は一対の電極を結ぶ線である管軸が反射ミラー43の光軸と平行になるように配置されている。図8では偏光素子12として、前記したワイヤーグリッド偏光素子を用いた場合を示しているが、後述するように蒸着多層膜を利用したものや、ガラス板をブリュースタ角に配置したものを用いることもできる。
光照射部40A,40Bの光照射ユニット41は、図8に示すように各光照射ユニット41出射した光が、被照射面(ワーク上)で重ならないように配置され、各ランプ31から出射する光により、ワークの搬送方向に対して直交する方向に延びた光照射領域が形成されている。このため、各偏光素子12の境界部(すなわち、隣合う光照射ユニット41の境界部)の直下の部分の照度は低下する。
光照射ユニット41は支持体25により連結され、その両側には、ブロック23が取り付けられ、このブロック23を介して支柱24が取り付けられている。光配向膜51が形成されたワーク50は、上記2本の支柱の24間を搬送される。
【0023】
上記のように構成された光照射部40A,40Bを、複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設ける。図8は光照射部を2段に並べた場合を示し、以下2段の場合を例にして説明するが、3段以上設けても良い。
上記したように、各光照射部40A,40Bにおいては、偏光素子12の境界部の直下の部分の照度が低下し、照度分布が悪化する。
そこで、本実施例においても前記第1,2の実施例と同様、光照射部40Aと40Bにおいて、各光照射ユニット41の偏光素子12間に存在する境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置する。
そのために、図8においては、光照射部40Aの光照射ユニット41は4連であるが、光照射部40Bの光照射ユニット41は5連とし、光照射部40Aの偏光素子12の境界部分に、光照射部40Bの光照射ユニット41が入るようにしている。
光照射部を3段以上設ける場合も同様に、光照射土ニットの境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置する。
このような配置とすることにより、前記第1の実施例と同様、光照射部40A,40Bによる偏光光照射において低い照度で照射された部分は、他の段の光照射部40B,40Aによる偏光光照射において高い照度で照射され、両者の照度分布が積算され、結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。
【0024】
図9〜図11は偏光素子として蒸着多層膜を利用した偏光素子、あるいはガラス板をブリュースタ角に配置した偏光素子を用いた場合の光照射装置の構成例を示す図であり、本発明を上記偏光素子を用いたものに適用しても同様の効果を得ることができる。
図9は蒸着多層膜を用いた偏光素子を用いた光照射部40の構成例を示す図である。
図9(a)は、上記光照射部40を構成する各光照射ユニット41の構成例を示し、同図(b)はこのユニットを複数並べて構成した光照射部40の構成例を示す。
なお、図9(b)において各光照射ユニット41は、図9(a)のA方向が紙面手前になるように並べられている。また、同図では光照射ユニット41を2台並べた場合を示しているが、必要に応じて複数台の光照射ユニットを並べて配置することができる。以下の図10、図11についても同様に複数台の光照射ユニットを並べて配置することができる。
図9(a)に示すように、各光照射ユニット41は、ランプ42と該ランプ42の光を集光する反射ミラー43と、反射ミラー43で集光された光を反射する平面鏡44と、インテグレータレンズ45と、コリメータミラー46と、蒸着膜を蒸着させた蒸着膜偏光素子13から構成される。インテグレータレンズ45から出た光はコリメータミラー46により平行光とされ蒸着膜偏光素子13に入射し、偏光光として図示しないワークに入射する。 大型の光配向膜に対して光配向を行うには、上記図9(a)に示した光照射ユニット41を図9(b)に示すように多連に並べて光照射装置40を構成する。この場合同図に示すように、隣り合う光照射ユニット41の光照射領域が光照射面(ワーク上)で重ならないようにすると、偏光素子の境界部の照度は低下する。
そこで、前記図8に示したように、光照射部40を複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設け、各光照射ユニット41の偏光素子13間に存在する境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないようにずらして配置する。
これにより、前記したように均一な照度分布で偏光光を照射することができる。
【0025】
図10は偏光素子としてガラス板をブリュースタ角傾けて配置した偏光素子14(パイル偏光素子という)を用いた場合の光照射部40の構成例を示す図であり、各光照射ユニット41の構成は図9(a)において蒸着膜偏光素子13をパイル偏光素子14としたものと同じである。
この場合も、隣り合う光照射ユニット41の光照射領域が光照射面(ワーク上)で重ならないようにすると、偏光素子14の境界部の照度は低下する。
そこで、前記図8に示したように、光照射部40を複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設け、各光照射ユニット41の偏光素子13間に存在する境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置する。
これにより、前記したように均一な照度分布で偏光光を照射することができる。
【0026】
図11は、図9においてコリメータミラー46に換えて平面鏡47を用いた場合の構成を示す。図11(a)は図9(a)と同様、光照射ユニット41の構成例を示し、図11(b)は光照射ユニット41を多連に並べて構成した光照射部の構成例を示しており、前記図9と同一のものには同一の符号を付している。
この場合には、偏光素子12に平行光ではなく広がる光が入射する。この場合も同図に示すように隣り合う光照射ユニット41の光照射領域が光照射面(ワーク上)で重ならないようにすると、偏光素子の境界部の照度は低下するが、前記図8に示したように光照射部40を複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設け、偏光素子13間に存在する境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないようにずらして配置することで、前記したように均一なエネルギー分布で偏光光を照射することができる。
なお、前記特許文献3に示されるように、隣合う偏光光照射ユニットからでる偏光光の照射領域がワーク上で重なるようにすることもできるが、この場合はその重なった部分か明るくなり、同様に照度分布が悪化する。したがってこの場合も、図8に示すように光照射部40を複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設け、偏光素子13間に存在する境界部分が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置することで、均一なエネルギー分布で偏光光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例の偏光光照射装置の構成を示す図である。
【図2】偏光素子ユニットの配置とエネルギー分布を示す図である。
【図3】ワークの搬送方向に多段に並べて配置した光照射部の、ワイヤーグリッド偏光素子ユニットの並べ方を示す図である。
【図4】光照射部が一段の場合のエネルギー分布を示す図である。
【図5】光照射部が二段の場合のエネルギー分布を示す図である。
【図6】光照射部が四段の場合のエネルギー分布を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例の偏光光照射装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施例の偏光光照射装置の構成を示す図である。
【図9】蒸着多層膜を用いた偏光素子を用いた光照射部の構成例を示す図である。
【図10】偏光素子としてガラス板をブリュースタ角傾けて配置した偏光素子を用いた光照射部の構成例を示す図である。
【図11】図9において、コリメータミラーに換えて平面鏡を用いた光照射部の構成例を示す図である。
【図12】棒状ランプを使った偏光光照射装置の構成例を示す図である。
【図13】偏光素子ユニットの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ワイヤーグリッド偏光素子
3 遮光板
10,10’ 偏光素子ユニット
11 偏光素子
12 偏光素子
13 偏光素子(多層蒸着膜を利用したもの)
14 偏光素子(ガラス板をブリュースタ角で配置したもの)
20A,20B 光照射部
21 棒状のランプ
22 樋状集光鏡
23 ブロック
24 支柱
50 ワーク
51 光配向膜
30A,30B 光照射部
31 ランプ
32 反射ミラー
40A,40B 光照射部
41 光照射ユニット
42 ランプ
43 反射ミラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し、光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が多段に配置され、多段に配置された各光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向を行う偏光光照射装置であって、
上記多段に配置された各光照射部は、
光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に伸びる線状の光源と、
上記線状の光源の伸びる方向に沿って複数のワイヤーグリッド偏光素子が並べられ、該並べられたワイヤーグリッド偏光素子の間に境界部が生じている偏光素子ユニットを有しており、
各段に配置された各光照射部は、各段の光照射部の上記偏光素子の間の境界部が、他の段の光照射部の偏光素子の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互い重ならないように、光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されている
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項2】
連続または間歇的に直線状に搬送される光配向膜に対し、光配向膜の搬送方向に沿って光照射部が多段に配置され、多段に配置された各光照射部から上記光配向膜に偏光光を照射して光配向する偏光光照射装置であって、
上記多段に配置された各光照射部は、光配向膜の搬送方向に対して直交する方向に多連に並べられた光照射ユニット群から構成され、
上記各光照射ユニットは、複数の光照射ユニットをガラスの放電容器内に一対の電極が対向配置されたランプと、ランプからの光を反射する反射ミラーと、該反射ミラーにより反射された光を偏光する偏光手段とを備え、上記ランプは上記一対の電極を結ぶ線である管軸が上記反射ミラーの光軸と平行になるように配置されたものであり、
各光照射部を構成する隣り合う光照射ユニットに設けられた各偏光手段の間には境界部が生じており、
各段に配置された光照射部は、各段の光照射部の上記偏光手段の境界部が、他の段の光照射部の偏光手段の境界部と光配向膜の搬送方向に対して互いに重ならないように、光配向膜の搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されている
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−114647(P2007−114647A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308117(P2005−308117)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】