説明

光量補正方法、露光用発光装置および画像形成装置

【課題】デジタル補正される場合であっても、各発光素子間の光量のバラツキを原因とする露光ムラの補正を可能とすること。
【解決手段】光量補正方法は、各発光素子に対して所定設定値に対応する駆動信号を印加し、各発光素子の補正前光量を取得する工程(S10)と、各発光素子に対して、目標光量に対する補正前光量の光量ずれを求める第1算出工程(S20)と、各発光素子に対する光量線図と光量ずれとを用いて、駆動信号を設定するための最小単位となる単位設定値の実数倍を示す実数補正値を算出する第2算出工程(S30)と、実数補正値を、該実数補正値を整数値に丸めた第1補正値と、実数補正値から第1補正値を引いた、単位設定値未満となる第2補正値とに分解し(S40)、分解された第2補正値を用いて第1補正値を変更し(S45)、変更された第1補正値によって駆動信号の所定設定値を補正する工程(S50)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量補正方法、露光用発光装置および画像形成装置に関し、特に画像形成装置に利用される光書き込みヘッドの光量を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置では、一様に帯電された感光体上に、露光手段から発せられる光を照射することにより静電潜像を得た後、この静電潜像にトナーを付加して可視化し、記録紙上に転写して定着することによって画像形成が行われる。
こうした露光手段として、微小な発光素子を主走査方向に多数配列した光書き込みヘッドを用いた記録装置が採用されている。特に発光素子としてLEDを用いたものは、LEDプリントヘッド(LED Print Head:LPH) と呼ばれる。
【0003】
ここで、露光手段として光書き込みヘッドを用いた画像形成装置では、各発光素子の光量ムラがそのまま画像の濃度ムラとなって現れてしまうので、各発光素子に対して光量の補正が行われる。
LEDプリントヘッドの光量を補正する技術として、下記特許文献1には、多数のLED素子の補正データに対する光量特性に基づいて予め設定された補正テーブルを用いて補正データを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−147860号公報
【特許文献2】特開平11-245441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、露光光量に対して、駆動信号設定値の補正値を、予め測定した結果に基づいて、テーブルとして設定しておき、一回の光量測定結果を元に、テーブルに照らし合わせて補正値を算出している。しかしながら、駆動信号の設定はデジタル的に制御されるため、この方法では一つの段階内にある光量ムラは補正できず、また二つの段階の境にある素子が並んで存在した場合、元の光量ムラ以上に光量差が生まれてしまう虞があった。
【0006】
上記特許文献2の技術では、特許文献1の技術と同様に補正前の光量を測定し、予め設定しておいたテーブルに基づいて補正値が決定されている。そして、補正後の光量と、補正目標光量との差を、次の素子の補正時に補正すべき光量に加えて補正処理を行う、いわゆる誤差拡散処理を行っている。しかしながら、この方法でも補正は段階的に行われるため、誤差が補正単位量を超えるまでは特許文献1に挙げた課題は存在している。
【0007】
また、露光用発光装置が所定数の発光素子を含む発光素子アレイを並べることによって構成されている場合、製造ばらつき等により、アレイ間で駆動信号の設定値と発光素子の露光光量との関係を示す光量線図は一致しないのが普通である。光量特性に大きな差があるアレイが隣接していた場合、駆動信号に対する光量変化が大きなアレイからもたらされる誤差を駆動信号に対する光量変化が小さなアレイに持ち込んだ場合、目標光量に対して却って光量を上下させる補正が成されてしまったり、逆に駆動信号に対する光量変化が小さなアレイからもたらされる誤差を、駆動信号に対する光量変化が大きなアレイに持ち込んだ場合、駆動信号の補正単位量に満たないため、アレイの境界部で十分な補正が成されなかったりする虞があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、発光素子の光量がデジタル補正される場合であっても、各発光素子間の光量のバラツキを原因とする露光ムラの補正を可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書によって開示される光量補正方法は、複数の発光素子を所定の配列に並べた露光用発光装置において、各発光素子間の光量のバラツキを原因とする露光ムラを補正する光量補正方法であって、前記発光素子を駆動する駆動信号を設定するための設定値の中から所定設定値を選択して、前記各発光素子に対して前記所定設定値に対応する駆動信号を印加し、前記所定設定値に対応する前記各発光素子の補正前光量を取得する取得工程と、前記各発光素子に対して、目標光量に対する前記補正前光量の光量ずれを求める第1算出工程と、前記各発光素子に対する、前記設定値と前記発光素子の露光光量との関係を示す光量線図と、前記光量ずれとを用いて、前記駆動信号を設定するための最小単位となる単位設定値の実数倍を示す実数補正値を算出する第2算出工程と、前記実数補正値を、該実数補正値を整数値に丸めた第1補正値と、前記実数補正値から前記第1補正値を引いた、前記単位設定値未満となる第2補正値とに分解し、分解された前記第2補正値を用いて前記第1補正値を変更し、前記変更された前記第1補正値によって前記駆動信号の前記所定設定値を補正する補正工程とを含む。
【0010】
上記第2算出工程において用いられる前記光量線図は、直線近似を用いて算出されるようにしてもよい。あるいは上記第2算出工程において用いられる前記光量線図は、放物線近似を用いて算出されるようにしてもよい。
【0011】
また、上記補正工程において、一の発光素子の次に他の発光素子において前記実数補正値を前記第1補正値および前記第2補正値に分解する際に、前記一の発光素子の前記第2補正値を前記実数補正値に含ませるようにしてもよい。
【0012】
また、上記光量補正方法において、前記露光用発光装置は、所定数の発光素子を含む少なくとも一個の発光素子アレイによって構成され、前記第2補正値について、前記発光素子アレイ内のアレイ平均値を算出する平均値算出工程と、前記第2補正値の前記アレイ平均値に対して、前記第2補正値の絶対値が0.5以上離れている場合、前記第2補正値の絶対値が前記アレイ平均値に対して0.5以内に収まるように、前記第1補正値に+1あるいは−1して、前記第1補正値を変更し、前記第1補正値の変更に伴う前記実数補正値の変更を打ち消すように、対応する前記第2補正値を変更する、第1変更工程とをさらに含み、前記補正工程は、変更された前記第1補正値によって前記駆動信号の前記所定設定値を補正するようにしてもよい。
【0013】
また、上記光量補正方法において、前記露光用発光装置は、第1所定数の発光素子を含む少なくとも一個の発光素子アレイによって構成され、前記発光素子アレイ内の前記第1所定数の発光素子を、前記第1所定数より少ない第2所定数の発光素子を含む複数の発光素子群に区分する区分工程と、各発光素子群において、前記第2補正値の平均値としての群平均値を算出する群平均値算出工程と、各発光素子群において、前記群平均値を、補正を行う発光素子数の前記第2所定数に対する割合とし、前記第2所定数の中から前記割合の発光素子を選択し、選択された発光素子に対して、前記第1補正値に対して+1あるいは−1して、前記第1補正値を変更し、前記第1補正値の変更に伴う前記実数補正値の変更を打ち消すように、対応する前記第2補正値を変更する、第2変更工程と、をさらに含み、前記補正工程は、変更された前記第1補正値によって前記駆動信号の前記所定設定値を補正するようにしてもよい。
【0014】
前記第2変更工程において、前記割合に対して割り付けられた参照テーブルに基づいて、前記割合の発光素子が前記発光素子群の中から選択され、前記第1補正値が変更されるようにしてもよい。あるいは、前記第2変更工程において、前記第2補正値の大きさの序列に基づいて、前記割合の発光素子が前記発光素子群の中から選択され、前記第1補正値が変更されるようにしてもよい。あるいは、前記第2変更工程において、前記割合の発光素子が前記発光素子群の中からランダムに選択され、前記第1補正値が変更されるようにしてもよい。
【0015】
また、前記第1補正値に対して+1あるいは−1する対象となる発光素子を、前記露光用発光装置の発光の動作周期単位毎にずらすようにしてもよい。
【0016】
また、前記補正工程において、一の発光素子群の次に他の発光素子群において、前記第2補正値について発光素子群の群平均値を算出する際に、前記一の発光素子群の前記第2変更工程後の前記群平均値を他の発光素子群の群平均値に含ませるようにしてもよい。
【0017】
また、前記第1変更工程および前記第2変更工程の少なくとも一方の工程を経た上で新たに算出される前記第2補正値に対して誤差拡散を行い、誤差の絶対値が1以上積み上がったら、積み上がった前記誤差を打ち消すように、前記第1補正値に対して+1あるいは−1して前記第1補正値を変更し、前記第1補正値の変更に伴う前記実数補正値の変更を打ち消すように、対応する前記第2補正値を変更する、誤差拡散工程を、さらに含むようにしてもよい。その際、前記光量線図を用いて前記第2補正値を一旦、光量に戻し、光量において誤差拡散を行い、誤差拡散後に再度、誤差拡散された前記光量を、前記光量線図を用いて前記第2補正値に戻すことを含むようにしてもよい。あるいは前記誤差拡散工程において、前記第2補正値に対してそのまま誤差拡散されるようにしてもよい。
【0018】
また、本明細書によって開示される露光用発光装置は、所定の配列に並べられた複数の発光素子を備え、前記複数の発光素子が、上記いずれかの光量補正方法により補正された設定値に対応する駆動信号によって発光される。
【0019】
また、本明細書によって開示される画像形成装置は、感光体と、前記感光体を露光する露光装置とを備える画像形成装置であって、上記露光用発光装置を前記露光装置として備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実際の補正量に対応する実数補正値を、第1補正値と第2補正値とに分解し、分解された第2補正値を用いて第1補正値を変更し、変更された第1補正値によって駆動信号の所定設定値が補正される。すなわち、駆動信号の単位設定値未満となる第2補正値を加味して光量の補正が行われる。そのため、発光素子の光量が駆動信号をデジタル的に制御することによって段階的に補正される場合であっても、各発光素子間の光量のバラツキを原因とする露光ムラの補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態に係るカラープリンタの要部側断面図
【図2】LEDユニットおよびプロセスカートリッジの拡大図
【図3】LEDユニットを露光面側から見た図
【図4】発光制御部及び制御装置のブロック図
【図5】光量補正処理の基本処理を概略的に示すフローチャート
【図6】各発光素子における駆動信号を設定するための設定値と露光光量との関係を示すグラフ
【図7】実施例1の光量補正処理を概略的に示すフローチャート
【図8】実施例2の光量補正処理を概略的に示すフローチャート
【図9】実施例2における発光素子群を示す図
【図10】群平均値と、補正素子数および補正合計値との関係を示すテーブル
【図11】群平均値と、選択素子および補正値との関係を示すテーブル
【図12】第2補正値の大きさの序列に基づく素子選択を説明する図
【図13】第1補正値が変更される発光素子が露光用発光装置の発光の動作周期単位毎にずらされる例を示す図
【図14】実施例3の光量補正処理を概略的に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
一実施形態について図1から図14を参照しつつ説明する。
1.カラープリンタの全体構成
図1は、一実施形態に係る電子写真方式のカラープリンタの要部を概略的に示す側断面図である。カラープリンタ1は、画像形成装置の一例である。カラープリンタ1は、図1に示すように、その本体筐体10内に、用紙Sを供給する給紙部20、給紙された用紙Sに画像を形成する画像形成部30、画像が形成された用紙Sを排出する排紙部90、およびこれらの各部の動作を制御する制御装置100とを備える。
【0023】
なお、以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前側」、紙面に向かって右側を「後側」とし、紙面に向かって奥側を「左側」、紙面に向かって手前側を「右側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。また、画像形成装置はカラープリンタ1に限られず、例えば、モノクロプリンタ、コピー機能およびFAX機能を有する複合機であってもよい。
【0024】
本体筐体10の上部には、開閉自在なアッパーカバー12が設けられている。アッパーカバー12の上面は、本体筐体10から排出された用紙Sを蓄積する排紙トレイ13となっており、下方には露光用発光装置の一例であるLEDユニット40が設けられている。LEDユニット40が有する露光ヘッドとしてのLEDプリントヘッド41の発光は、制御装置100および発光制御部110により制御される(図4参照)。
【0025】
給紙部20は、本体筐体10内の下部に設けられ、本体筐体10に着脱自在に装着される給紙トレイ21と、給紙トレイ21から用紙Sを画像形成部30へ搬送する用紙供給機構22を主に備えている。用紙供給機構22は、給紙トレイ21の前側に設けられ、給紙ローラ23、分離ローラ24を主に備えている。
【0026】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Sが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、搬送経路28を通って後向に方向転換され、画像形成部30に供給される。
【0027】
画像形成部30は4つのLEDユニット40K〜40C、4つのプロセスカートリッジ50K〜50C、転写ユニット70、定着ユニット80とを備える。4つのLEDユニット40K,40Y,40M,40C、および4つのプロセスカートリッジ50K,50Y,50M,50Cは、ブラックK、イエローY、マゼンタM、シアンCの4色に対応する。
【0028】
各プロセスカートリッジ50K〜50Cは、アッパーカバー12と給紙部20との間で前後方向に並んで配置され、図2に示すように、ドラムユニット51と、ドラムユニット51に対して着脱自在に装着される現像ユニット61とを含む。プロセスカートリッジ50は、感光体ドラム53を支持している。なお、各プロセスカートリッジ50K〜50Cは、現像ユニット61のトナー収容室66に収容されるトナーの色が相違するのみであり、構成は同一である。
【0029】
ドラムユニット51は、感光体の一例としての感光体ドラム53と、スコロトロン型帯電器54とを含む。
【0030】
現像ユニット61は、現像ローラ63、供給ローラ64、およびトナーを収容するトナー収容室66を有している。現像ユニット61がドラムユニット51に装着され、これにより、図2に示されるように、上方から感光体ドラム53を臨める露光穴55が形成される。露光穴55の下端にLEDプリントヘッド41を保持したLEDユニット40が挿入される。LEDプリントヘッド41の詳細については後述する。
また、本体筐体10内には、各プロセスカートリッジ50を着脱自在に収容するカートリッジドロア15が設けられている。
【0031】
転写ユニット70は、図1に示すように、給紙部20と各プロセスカートリッジ50との間に設けられ、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写ローラ74を含む。
【0032】
駆動ローラ71および従動ローラ72の間に搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、その外側の面が各感光体ドラム53に接している。また、搬送ベルト73の内側には、各感光体ドラム53との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光体ドラム53に対向して4つ配置されている。転写ローラ74には、転写時に転写バイアスが印加される。
【0033】
定着ユニット80は、各プロセスカートリッジ50および転写ユニット70の奥側に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを含む。
【0034】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光体ドラム53の表面(感光面53A)が、スコロトロン型帯電器54により一様に帯電された後、各LEDプリントヘッド41から照射されるLED光により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光体ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0035】
また、トナー収容室66内のトナーが、供給ローラ64の回転により現像ローラ63に供給され担持される。現像ローラ63上に担持されたトナーは、現像ローラ63が感光体ドラム53に対向して接触するときに、感光体ドラム53上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム53上でトナーが選択的に担持されて静電潜像が可視像化され、反転現像によりトナー像が形成される。
【0036】
次に、搬送ベルト73上に供給された用紙Sが各感光体ドラム53と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光体ドラム53上に形成されたトナー像が用紙S上に転写される。そして、用紙Sが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、用紙S上に転写されたトナー像が熱定着される。熱定着された用紙Sは、排紙部90を介して、本体筐体10の外部に排出されて排紙トレイ13に蓄積される。
【0037】
2.LEDプリントヘッドの構成
図3に示すように、LEDプリントヘッド41は、用紙の搬送方向に直交する主走査方向に複数の発光素子Pを配置したものである。具体的には、回路基板CB上に、例えば20個のLEDアレイチップCH1〜CH20が主走査方向に千鳥配置されている。各LEDアレイチップCHは半導体プロセスにより、半導体基板上に、発光素子Pの一例であるLED(発光ダイオード)を複数(本実施形態では256個)形成したものである。なお、各LEDアレイチップCHは、「発光素子アレイ」に相当する。また、各LEDアレイチップCHの出力側にはLEDからの光を集光するマイクロレンズ等のレンズ(図示せず)が設けられている。
【0038】
LEDプリントヘッド41は、後述する発光制御部110により駆動信号が入力されることで発光し、感光体ドラム53を露光する機能を果たす。本実施形態では、LEDプリントヘッド41を構成する各発光素子Pは、LEDアレイチップCH内では主走査方向の走査開始側(例えば、図3の左側)から走査終了側(例えば、図3の右側)へ向けて順次発光され、各LEDアレイチップCH間では同時発光される。
【0039】
なお、LEDプリントヘッド41の構成は、複数のLEDアレイチップCH1〜CH20が主走査方向に千鳥配置されているものに限られない。例えば、LEDプリントヘッド41は、複数のLEDアレイチップCHが主走査方向に一列に配置されたものであってもよいし、一個のLEDアレイチップCHによって構成されてもよい。また、回路基板CBには、LEDドライバが設けられ、発光制御部110により発光信号がLEDドライバに入力され、LEDドライバから各発光素子PにLED駆動信号が印加される構成であってもよい。
【0040】
3.制御装置100と発光制御部110の説明
制御装置100はカラープリンタ1の全体を制御するものであり、CPUなどから構成される演算制御部100AおよびEEPROM100Bを含む。
【0041】
発光制御部110は、制御装置100と協働して、LEDプリントヘッド41の各発光素子Pを発光制御するものである。発光制御部110は、図4に示すようにRAM120、ASIC130、発振回路140を含む。発光制御部110には、4個のLEDプリントヘッド41K,41Y,41M,41Cが共通接続されており、発光制御部110は4個のLEDプリントヘッド41を一括して発光制御する。
【0042】
また、各LEDプリントヘッド41には、例えば、EEPROM43がそれぞれ設けられている。EEPROM43には、発光制御部110にて、各発光素子Pの発光制御を行うのに必要な発光データが書き込まれている。詳細には、EEPROM43には、以下に説明する光量補正方法によって各発光素子Pに対応して補正された補正データが格納されている。補正データは、各発光素子Pが所定の露光光量PLoを得るような駆動信号を設定するための補正設定値Sを示すデータである(図6参照)。カラープリンタ1の画像形成時において、EEPROM43に格納された各補正設定値Sに基づいて各発光素子Pに対応した駆動信号が生成され、駆動信号によって各発光素子Pが発光される。
【0043】
なお、補正光量データが格納される補正光量データ用メモリは、各LEDプリントヘッド41に設けられるEEPROM43に限られない。例えば、各LEDプリントヘッド41にEEPROM43が設けられなくてもよく、補正光量データ用メモリは、発光制御部110に設けられてもよい。
4.LEDプリントヘッドの光量補正処理
【0044】
次に、図5から図9を参照して、LEDプリントヘッド41の光量補正処理について説明する。図5は、光量補正処理の基本処理を示すフローチャートである。図6は各発光素子における駆動信号を設定するための設定値と露光光量との関係を示すグラフ(光量線図)である。図6において、曲線GLmaxは、露光光量が最大である発光素子Pmaxの光量線図を示し、曲線GLminは、露光光量が最小である発光素子Pminの光量線図を示す。
【0045】
図6において、露光光量PLは、像面付近で受光した発光素子Pの光強度を発光時間で積分したものであり、光強度はLEDに流す電流によって変化する。そのため、露光光量PLの補正は、発光時間を変えるか、LEDに流す電流を変えることで、駆動信号を制御することにより実現される。発光時間、あるいはLEDに流す電流のいずれかを段階的に変えるための変数を設定値Sとする。
【0046】
なお、LEDプリントヘッド41の光量補正を行う理由は以下による。すなわち、通常、LEDプリントヘッド41の各発光素子Pは輝度バラツキを有しており、各発光素子Pを同じ設定値Sで発光させた場合、光量にバラツキが生じる。そして、この光量バラツキを原因とする露光ムラが発生する。すなわち、図6に示されるように、発光素子Pに印加される駆動信号を設定するための設定値Sに対する発光素子Pの光量PLの特性には、各発光素子P間でバラツキがある。そのため、各発光素子Pに対して同一とした所定設定値Soによって各発光素子Pを発光させると、例えば、各発光素子Pのうち発光素子Piに着目した場合、目標光量PLoと発光素子Piの光量PLiとには光量ずれ(PLo−PLi)が生じる。
【0047】
一方、例えば、各発光素子Pのうち発光素子PminあるいはPmaxに着目した場合、目標光量PLoと発光素子Pminの光量PLmin、あるいは目標光量PLoと発光素子Pmaxの光量PLmaxとには、(PLo−PLi)とは異なる光量ずれが生じる。その結果、露光ムラが発生し、画品質に影響を及ぼす。ゆえに、各発光素子P毎に、設定値Sを変えて各発光素子P間の光量PLのバラツキを補正する必要がある。
【0048】
図6では所定設定値Soより小さな設定値Sを選択する事で光量PLが小さくなり、所定設定値Soより大きな設定値Sを選択する事で光量PLが大きくなる。従って、所定設定値Soにて光量PLが目標光量PLoを上回ったときは設定値Soより小さな設定値Sを、所定設定値Soにて光量PLが目標光量PLoを下回ったときは設定値Soより大きな設定値Sを、補正後の設定値Sとして選択することになる。
【0049】
その際、光量補正をアナログ的に行うのは、発光素子数が多いことや、回路の構成上、現実的ではない。そのため、光量補正は段階的に、すなわちデジタル的に行われる。しかも発光素子数が多く、また設定値Sを保存するメモリ容量は有限であるため、段階的補正の階調数はあまり多くは取る事ができない。そこで、本実施形態は、段階的補正の際に生じる補正誤差による光量バラツキを原因とする露光ムラを低減させるものである。
【0050】
光量補正処理は、本実施形態では、カラープリンタ1の製造段階において、所定の補正データ生成装置(図示せず)によって行われる。補正データ生成装置は、例えば、発光制御部110と同様な発光制御部、各発光素子Pからの光を像面付近で受光する受光センサ、受光センサからの受光データを処理し、補正後の設定値S、すなわち補正データを生成するデータ処理部等を含む。光量補正処理によって得られた補正データ(補正設定値S)は、製造時に、EEPROM43に格納される。そして、上記したように、画像形成時、各LEDプリンタヘッド41のEEPROM43の補正データを画像形成装置内のEEPROM100Bに格納し、制御装置100および発光制御部110は、EEPROM100B内の補正データに基づいて駆動信号を生成し、各LEDプリントヘッド41K〜41Cを発光させる。
【0051】
本実施形態においては、設定値Sの階調数は、例えば4ビット、すなわち「0」〜「15」の16段階に制約されているとする。仮に発光時間を駆動信号の駆動条件とした場合、設定した発光時間単位が例えば「4」nsとすると、発光時間の設定範囲は「4」ns×16段で「64」nsとなる。この「4」nsは、駆動信号の単位設定量に相当し、駆動信号を「4」nsだけ変化させる設定値Sの階調1つ分が駆動信号の単位設定値となる。
【0052】
各発光素子Pにおいて、目標光量PLoが得られる条件が図6の線図を用いて求められる。図6においては、設定値(So−3)と設定値(So−2)の間に位置する駆動条件、すなわち所定設定値Soからの設定値Sのずれを表す実数値Ei(図6では、−3<Ei<−2)を用いて、設定値(So+Ei)において発光素子Pは目標光量PLoにて発光することができると読み取れる。しかしながら、設定値Sは段階的にしか選択できないため、図6の場合は、設定値(So−3)か、設定値(So−2)かのいずれかを選択しなければならない。すなわち、図6の光量線図GLiで示される発光特性を示す発光素子Pに対して、目標光量PLoに一致するように補正する事はできない。
【0053】
4−1.光量補正の基本処理
まず、光量補正の基本処理について図5を参照して説明する。
【0054】
本実施形態における光量補正処理は、基本的に図5に示される工程を含む。すなわち、
(A)取得工程(ステップS10)
(B)第1算出工程(ステップS20)
(C)第2算出工程(ステップS30)
(D)補正工程(ステップS40,S45,S50)
【0055】
(A)の取得工程では、例えば、補正データ生成装置の発光制御部の制御によって、所定設定値Soを選択して、各発光素子Pに対して所定設定値Soに対応する駆動信号を印加する。そして、所定設定値Soに対応する補正前光量PLiが、受光センサを介してデータ処理部によって取得される(ステップS10)。
【0056】
また、(B)の第1算出工程では、例えば、補正データ生成装置のデータ処理部によって、各発光素子Pに対して、目標光量PLoに対する補正前光量PLiの光量ずれ(PLo−PLi)が算出される(ステップS20)。ここで「i」は、1〜256までの正の整数で、LEDアレイチップCH内の発光素子Pに対応する。
【0057】
また、(C)の第2算出工程では、データ処理部は、各発光素子Pに対する、駆動信号に対する設定値と発光素子の露光光量との関係を示す光量線図を用いて、光量ずれ(PLo−PLi)に対応する、駆動信号を設定するための最小単位となる単位設定値の実数倍を示す実数値である、設定値Sの実数補正値Eiを算出する(ステップS30)。
【0058】
例えば、図6に示すように、光量線図が曲線GLiによって表される場合、設定値Soを通る縦軸と曲線GLiの交点(PL=PLi)からPL=PLoへ降ろした足から、PL=PLoと曲線GLiの交点への変化を設定値Sの実数補正値Eiとする。
なお、仮に光量線図GLiが直線で近似され、その傾きがtanθで表される場合は、データ処理部は、光量差ΔPL(=PLo−PLi)をtanθによって除算して設定値Sの実数補正値Eiを算出する。
また、仮に光量線図GLiが方物線で近似される場合には、PL=PLoとなる時の二次方程式を解くことで、設定値Sの実数補正値Eiを算出する。
【0059】
また、(D)の補正工程では、データ処理部は、実数補正値Eiを、実数補正値Eiを整数値に丸めた第1補正値Eriと、実数補正値Eiから第1補正値Eriを引いた、単位設定値未満となる第2補正値ΔEiとに分解する(ステップS40)。実数補正値Eiの整数値への丸め方は、四捨五入による方法、小数点以下切捨てによる方法、小数点以下切上げによる方法、などがある。そして、分解された第2補正値ΔEiを用いて第1補正値Eriを変更し(ステップS45)、変更された第1補正値Eriを用いて所定設定値Soを補正する(ステップS50)。
【0060】
すなわち、実数補正値Eiは、下式(1)のように分解される。
Ei=Eri + ΔEi ……(1)
このように、実数補正値Eiを第1補正値Eriおよび第2補正値ΔEiに分解するのは、上記したように、駆動信号の設定値Sはデジタル的(段階的)にしか設定できないためである。
例えば、実数補正値Eiの整数値への丸め方に四捨五入を用い、
Ei=+1.75の場合、Ei=+2−0.25 、つまり、
Eri=+2、ΔEi=−0.25
また、
Ei=−1.75の場合、Ei=−2+0.25 、つまり、
Eri=−2、ΔEi=+0.25
のように分解される。
また、
例えば、実数補正値Eiの整数値への丸め方に小数点以下切捨てを用い、
Ei=+1.75の場合、Ei=+1+0.75 、つまり、
Eri=+1、ΔEi=+0.75
また、
Ei=−1.75の場合、Ei=−1−0.75、つまり、
Eri=−1、ΔEi=−0.75
のように分解される。
【0061】
そして、データ処理部は、分解された第1補正値Eriおよび第2補正値ΔEiを用いて、各発光素子Pについて所定設定値Soを補正する。なお、所定設定値Soの補正の詳細は後述する。
【0062】
そして、駆動信号に対する補正された設定値Sは、上記したように、各LEDプリントヘッド41K〜41Cの各EEPROM43内に格納される。
【0063】
このように、本実施形態では、実際の補正量に対応する実数補正値Eiを、第1補正値Eriと第2補正値ΔEiとに分解し、分解された第2補正値ΔEiを用いて第1補正値Eriを変更し、変更された第1補正値Eriによって駆動信号の所定設定値Soが補正される。すなわち、駆動信号の単位設定値未満となる第2補正値ΔEiを加味して光量PLの補正が行われる。そのため、発光素子Pの光量PLが駆動信号をデジタル的に制御することによって段階的に補正される場合であっても、各発光素子間の光量のバラツキを原因とする露光ムラの補正を行うことができる。すなわち、本実施形態では、単に補正テーブルを利用して光量値を加減して補正するのではなく、補正値Eiに手を加えて補正することに優位性がある。
【0064】
なお、(C)の第2算出工程において、設定値Sの実数補正値Eiを算出する際、直線近似を用いて算出される光量線図や、放物線近似を用いて算出される光量線図を用いる例を示したが、3次以上の近似曲線を用いて算出される光量線図を用いてもよい。いずれの場合でも、用いる近似曲線と、目標光量PLoとの交点を求めることによって、実数補正値Eiを算出することができる。
【0065】
4−2.光量補正処理(実施例1)
次に、光量補正処理の実施例1について図7を参照して説明する。図7は、実施例1における光量補正処理の各処理を概略的に示すフローチャートである。なお、図5に示される処理と同一の処理には同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。また、図7の処理は、全てのLEDアレイチップCH1〜CH20に対して行われ、さらに全てのLEDプリントヘッド41K〜41Cに対して行われる。
【0066】
実施例1では、図5の基本処理に追加してさらに以下の工程が行われる。
(E)初期拡散工程(ステップS35)
(F)平均値算出工程(ステップS120)
(G)第1変更工程(ステップS130)
【0067】
(E)の初期拡散工程では、ステップS10〜ステップS40までの処理が繰り返される際に(ステップS32およびS110の判定:NO)、データ処理部は、一の発光素子Piの次に他の発光素子P(i+1)において実数補正値E(i+1)を第1補正値Er(i+1)および第2補正値ΔE(i+1)に分解する際に、一の発光素子Piの第2補正値ΔEiを実数補正値E(i+1)に含ませる(ステップS35)。
例えば、実数補正値Eiの整数値への丸め方に四捨五入を用い、Ei=1.27で、E(i+1)=1.35の場合、
ステップS35を経たE(i+1)は、E(i+1)=1.35+0.27=1.62となり、新たなE(i+1)は、ステップS40にて
E(i+1)=2 +(−0.38)
のように分解される。
【0068】
このように、第2補正値ΔEiを実数補正値Eiに含ませて新たに分解することにより、駆動信号の単位設定値未満となる第2補正値ΔEiを加味して光量PLの補正を行うことができる。また、補正値誤差である第2補正値ΔEiを拡散させることができる。
【0069】
また、(F)の平均値算出工程では、データ処理部は、第2補正値ΔEiについて、LEDアレイチップCH内のチップ平均値ΔEiaを算出する。なお、チップ平均値は、「アレイ平均値」に相当する(ステップS120)。
【0070】
そして、(G)の第1変更工程において、データ処理部は、チップ平均値ΔEiaに対して、第2補正値ΔEiの絶対値が0.5以上離れている発光素子Pに対して、第2補正値ΔEiの絶対値がチップ平均値ΔEiaに対して0.5以内に収まるように、第1補正値Eriに「+1」あるいは「−1」して、第1補正値を変更する。その際、第2補正値ΔEiは、第1補正値Eriの変更に伴う実数補正値Eiの変更を打ち消すように変更される(ステップS130)。
例えば、本工程直前において、実数補正値Ei=1.48、第1補正値Eri=1、第2補正値ΔEi=0.48、チップ平均値ΔEia=−0.03の場合、第2補正値ΔEiがチップ平均値ΔEiaに対して絶対値が0.5以上離れているので、本工程において、第1補正値Eriに「+1」してEri=2に変更され、この変更に伴う実数補正値Eiの変更を打ち消すために第2補正値はΔEi=−0.52に変更され、
Ei=2 +(−0.52)となる。
そして、変更された第1補正値Eriによって、所定設定値Soが「So+Eri」に補正される(ステップS50A)。
【0071】
なお、ステップS130〜ステップS50Aまでの処理は、LEDアレイチップCH内の全ての発光素子P1〜P256に対する補正が終了するまで(ステップS150の判定:YES)、繰り返される。
【0072】
このように、実施例1では、第2補正値ΔEiを用いてチップ平均値ΔEiaを算出し、チップ平均値ΔEiaを用いて第1補正値Eriを変更することによって、LEDアレイチップ単位での光量補正、すなわち、マクロ的な光量補正ができる。そのため、マクロな印字濃淡差を認識しづらくでき、それによって、印字画像品質を向上できる。
【0073】
4−3.光量補正処理(実施例2)
次に、光量補正処理の実施例2について図8〜図13を参照して説明する。図8は、実施例2における光量補正処理の各処理を概略的に示すフローチャートである。図9は、発光素子群を示す図である。
【0074】
実施例2の図8の処理は、図7に示される実施例1のステップS10からステップS40の処理後、図7のステップS110において、アレイチップ内の全発光素子に対する分解が終了したと判定されたこと(ステップS110:YES)に引き続き実行される。その際、実施例2では、図7のステップS30の処理後、ステップS32およびステップS35の処理は行われず、ステップS40の処理が行われる。また、図8の処理は、全てのLEDアレイチップCH1〜CH20に対して行われ、さらに全てのLEDプリントヘッド41K〜41Cに対して行われる。
【0075】
実施例2では、図5の基本処理に追加して、主に以下の工程が行われる。
(H)区分工程(ステップS220)
(I)第1群平均値算出工程(ステップS230)
(J)群拡散工程(ステップS235)
(K)第2変更工程(ステップS240、S250)
(L)第2群平均値算出工程(ステップS255)
【0076】
LEDアレイチップCH1内の全ての発光素子Pに対する分解が終了した場合(ステップS110:YES)、データ処理部は、(H)の区分工程において、LEDアレイチップCH1内の第1所定数の発光素子Pを、第1所定数より小さい第2所定数の発光素子を含む複数の発光素子群GRに区分する。実施例2においては、例えば、図9に示されるように、256個(第1所定数に相当)の発光素子Pを、16個(第2所定数に相当)の発光素子Pを含む16個の発光素子群GR1〜GR16に区分する。なお、LEDアレイチップCH2〜CH20に関しても、同様に16個の発光素子Pを含む16個の発光素子群GR1〜GR16に区分される。
【0077】
そして、各発光素子群GR1〜GR16に対して、順に(I)から(L)を適用していく。まず、(I)の第1群平均値算出工程においては、第2補正値ΔEiについて、発光素子群の第1群平均値ΔEiga1を算出する。
【0078】
次いで、第1群平均値ΔEiga1が算出された発光素子群が最初の発光素子群GR1でない場合(ステップS232:NO)、(J)の群拡散工程が行われる。群拡散工程においては、一の発光素子群GRiの次の他の発光素子群GR(i+1)において、第2補正値ΔEiについて発光素子群の群平均値を算出する際に、一の発光素子群GRiの第2変更工程後の群平均値を、他の発光素子群GR(i+1)の群平均値に含ませる。
すなわち、群拡散工程では、後述するステップS255で算出されたGRiの第2群平均値ΔEiga2(第2変更工程後の群平均値)が、GR(i+1)の第1群平均値ΔEiga1(他の発光素子群の群平均値)に含められる。例えば、GRiの第2群平均値ΔEiga2が−0.03、GR(i+1)の第1群平均値ΔEiga1が−0.13の時、GR(i+1)の第1群平均値ΔEiga1は−0.13−0.03=−0.16とされる。このような群拡散工程によって、発光素子群GR間において補正値誤差を拡散させることができる。
【0079】
次いで(K)の第2変更工程において、データ処理部は、各発光素子群GR1〜GR16において、第1群平均値ΔEiga1を、補正を行う発光素子数の第2所定数に対する割合とする。そして、発光素子群の中からその割合の発光素子Pを選択し、選択された発光素子Pの第1補正値Eriに対して「+1」あるいは「−1」して、第1補正値Eriを変更する。そして、第1補正値Eriの変更に伴う実数補正値Eiの変更を打ち消すように、対応する第2補正値ΔEiを変更する。例えば、第1群平均値ΔEiga1=0.22の場合、
16(第2所定数)*0.22=3.52となり、
「3.52」の小数点以下切捨てると「3」となる。
そのため、16個の群内発光素子Pの中から3個の発光素子Pを選択する(図10参照)。
【0080】
そして、選択された発光素子Pの第1補正値Eriに対して「+1」あるいは「−1」する。例えば、第1群平均値ΔEiga1が正で、群内において実数補正値に対して第1補正値が平均して不足している場合は、「+1」し、例えば、第1群平均値ΔEiga1が負で、群内において実数補正値に対して第1補正値が平均して大き過ぎる場合は、「−1」する。図10のテーブルは、群平均値ΔEiga1と、変更対象として選択される発光素子数と、群内の補正の合計値との関係を示す。
【0081】
次いで、(L)の第2群平均値算出工程において、データ処理部は、(K)の第2変更工程において変更された第2補正値ΔEiについて、発光素子群GRの第2群平均値ΔEiga2を算出する。第2群平均値ΔEiga2は、上記したように、ステップS235の群拡散工程、第1群平均値ΔEiga1を拡散させるために使用される。
【0082】
そして、ステップS250の第2変更工程において変更された第1補正値Eriによって所定設定値Soが「So+Eri」に補正される(ステップS50B)。なお、ステップS230〜ステップS50Bまでの処理は、全ての群GR1〜GR16に対する補正が終了するまで(ステップS260の判定:YES)、繰り返される。
【0083】
このように、実施例2では、第2補正値ΔEiを用いて群平均値ΔEiga1あるいはΔEiga2を算出し、群平均値ΔEigaを用いて第1補正値Eriを変更することによって、発光素子群単位の微小な範囲の印字濃淡差を認識しづらくでき、それによって、印字画像品質を向上できる。なお、群の大きさが大きくなるほど群間の印字濃淡自身が、よりマクロな印字濃淡を示すようになるため、群に含まれる発光素子の数は実際の印字品質を官能的に評価することで適切に選択される。
【0084】
なお、ステップS240において第2所定数の中から第1群平均値ΔEiga1で示される割合の発光素子Pを選択する選択方法としては、例えば、該割合に対して割り付けられた参照テーブルに基づいて、該割合の発光素子が選択されるようにしてもよい。この場合、発光素子の選択の際に、単に参照テーブルを参照するだけなので、選択処理を迅速に行える。
図11に参照テーブルの一例を示す。図11に示されるように、例えば、第1群平均値ΔEiga1が「0.22」である場合、素子並び「3」、「8」、「14」の3個の発光素子Pが選択され、選択された発光素子Pに対応する第1補正値Eriがそれぞれ「+1」される。
【0085】
あるいは、第2補正値ΔEiの大きさの序列に基づいて、上記割合の発光素子が選択されるようにしてもよい。この場合、誤差の大きな発光素子Pを選択して補正できるため、効果的に発光素子単位の濃淡差を抑制できる。
図12は、第2補正値ΔEiの大きさの序列に基づいて発光素子が選択される場合を説明する図である。図12には、(1)群平均値ΔEigaが負で光量を低減させたい場合の一例と、(2)群平均値ΔEigaが正で光量を増加させたい場合の一例が示される。
【0086】
序列番号は、例えば、図12に示されるように、群平均値ΔEigaの小さい方から大きい方に向けて付けられる。(1)の場合、群平均値ΔEigaは「−0.14」であるため、図10のテーブルから選択素子数は、2個となる。そして、序列番号の小さい方から、素子並び「9」、「3」の2個の発光素子Pが選択され、選択された各発光素子Pの第1補正値Eriが「−1」される。
一方、(2)の場合、群平均値ΔEigaは「0.20」であるため、図10のテーブルから選択素子数は、3個となる。そして、この場合、序列番号の大きい方から、素子並び「12」「13」「6」の発光素子Pが選択され、選択された発光素子Pの第1補正値Eriが「+1」される。
【0087】
あるいは、群内の発光素子の中からランダムに上記割合の発光素子が選択されるようにしてもよい。この場合、補正の偏りを抑制できる。
【0088】
また、実施例2において、第1補正値Eriに対して「+1」あるいは「−1」する対象となる発光素子Pを、露光用発光装置の発光の動作周期単位毎にずらすようにしてもよい。この場合、補正される発光素子が固定されないため、微細な縦線の発生が抑制される。
例えば、図13に示されるように、発光の動作周期を、例えば、一ライン露光走査に要する時間である走査ライン周期とし、補正する発光素子Pを走査ライン周期毎に3個ずらすようにしてもよい。すなわち、図13では、第1走査ラインでは、素子並び「9」の発光素子Pの第1補正値Eriが「+1」され、第2走査ラインでは、素子並び「12」の発光素子Pの第1補正値Eriが「+1」される。
【0089】
4−4.光量補正処理(実施例3)
次に、光量補正処理の実施例3について図14を参照して説明する。図14は、実施例3における光量補正処理の各処理を概略的に示すフローチャートである。
【0090】
実施例3の図14の処理は、図7に示される実施例1のステップS10からステップS50Aの処理後、図7のステップS150において、アレイチップ内の全発光素子に対する補正が終了したと判定されたこと(ステップS150:YES)に引き続き実行される。その際、実施例3では、実施例2と同様に、図7のステップS30の処理後、ステップS32およびステップS35の処理は行われず、ステップS40の処理が行われる。
【0091】
また、図14に示す実施例3のステップS220からステップS260までの処理は、図8に示す実施例2の処理の処理と同一のため、その説明を省略する。なお、実施例3では、実施例2のステップS230の処理後、ステップS232およびステップS235の処理は行われず、ステップS240の処理が行われる。また、実施例2のステップS250の処理後、ステップS255の処理は行われず、ステップS50Bの処理が行われる。
【0092】
さて、実施例3では、ステップS260において、全ての群に対する補正が終了したと判定されたこと(ステップS260:YES)に引き続き、以下の工程が行われる。
(M)誤差拡散工程(ステップS300〜S50C)
誤差拡散工程においては、データ処理部は、第1変更工程(ステップS130)および第2変更工程(ステップS250)を経た上で新たに算出される第2補正値ΔEiに対して誤差拡散を行う。また、図14の処理はLEDプリンタヘッド41内の全ての発光素子Pに対して行われ、さらに全てのLEDプリンタヘッド41K〜41Cに対して行われる。
【0093】
誤差拡散工程では、まず、一番最初の発光素子は処理を省略される。2番目の発光素子から処理は開始され(ステップS300)、データ処理部は、前の発光素子Pの第2補正値ΔEi(誤差)を、今回の第2補正値ΔEiに含める(ステップS310)。次いで、ステップS310の処理によって、第2補正値ΔEiが「+1」以上あるいは「−1」以下だけ積み上がったら、すなわち、第2補正値ΔEiの絶対値が1以上となった場合(ステップS320:YES)、積み上がった誤差を打ち消すように、第1補正値Eriに対して「+1」あるいは「−1」して第1補正値Eriを変更し、第1補正値Eriの変更に伴う実数補正値Eiの変更を打ち消すように、対応する第2補正値ΔEiを変更する(ステップS330)。そして、変更された第1補正値Eriを用いて、更に設定値Sを補正する(ステップS50C)。誤差拡散工程は、LEDプリンタヘッド41の全ての発光素子Pに対する補正が行われるまで(ステップS340:YES)、繰り返される。
【0094】
なお、誤差拡散を行う際に、光量線図を用いて第2補正値ΔEiを一旦光量Piに戻し、光量Piにおいて誤差拡散を行い、誤差拡散後に再度、誤差拡散された光量Piを光量線図を用いて第2補正値ΔEiに戻すようにしてもよい。この場合、第2補正値に対して誤差拡散を行うことによって、誤差をさらに低減させることができる。その際、光量において誤差拡散を行うことにより正確な補正を行うことができる。
【0095】
あるいは、上記のように、第2補正値ΔEiに対してそのまま誤差拡散を行ってもよい。この場合、第2補正値を一旦、光量に戻す場合と比べて、誤差拡散処理を迅速に行うことができる。
このように、実施例3では、第2補正値に対して誤差拡散を行うことによって、誤差をさらに低減させることができる。
【0096】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
(1)発光素子PはLEDに限られず、発光素子Pは、例えば、有機ELであってもよい。あるいは、露光用発光装置として、液晶シャッタを用いたプリンタヘッドであってもよい。その場合、発光素子Pは露光用光源と露光用光源からの光を1ドットに相当する大きさのシャッタを開閉し明減する発光ユニットと考える事ができる。また、その時の設定値は、シャッタの開閉時間を駆動信号の補正対象とする。
【符号の説明】
【0098】
1…プリンタ、30…画像形成ユニット、40…LEDユニット、41…LEDプリントヘッド、100…制御装置、110…発光制御部、CH…LEDアレイチップ、GR…発光素子群、P…発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を所定の配列に並べた露光用発光装置において、各発光素子間の光量のバラツキを原因とする露光ムラを補正する光量補正方法であって、
前記発光素子を駆動する駆動信号を設定するための設定値の中から所定設定値を選択して、前記各発光素子に対して前記所定設定値に対応する駆動信号を印加し、前記所定設定値に対応する前記各発光素子の補正前光量を取得する取得工程と、
前記各発光素子に対して、目標光量に対する前記補正前光量の光量ずれを求める第1算出工程と、
前記各発光素子に対する、前記設定値と前記発光素子の露光光量との関係を示す光量線図と、前記光量ずれとを用いて、前記駆動信号を設定するための最小単位となる単位設定値の実数倍を示す実数補正値を算出する第2算出工程と、
前記実数補正値を、該実数補正値を整数値に丸めた第1補正値と、前記実数補正値から前記第1補正値を引いた、前記単位設定値未満となる第2補正値とに分解し、分解された前記第2補正値を用いて前記第1補正値を変更し、前記変更された前記第1補正値によって前記駆動信号の前記所定設定値を補正する補正工程と、
を含む光量補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光量補正方法において、
前記第2算出工程において用いられる前記光量線図は、直線近似を用いて算出される、光量補正方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光量補正方法において、
前記第2算出工程において用いられる前記光量線図は、放物線近似を用いて算出される、光量補正方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光量補正方法において、
前記補正工程において、一の発光素子の次に他の発光素子において前記実数補正値を前記第1補正値および前記第2補正値に分解する際に、前記一の発光素子の前記第2補正値を前記実数補正値に含ませる、光量補正方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光量補正方法において、
前記露光用発光装置は、所定数の発光素子を含む少なくとも一個の発光素子アレイによって構成され、
前記第2補正値について、前記発光素子アレイ内のアレイ平均値を算出する平均値算出工程と、
前記第2補正値の前記アレイ平均値に対して、前記第2補正値の絶対値が0.5以上離れている場合、前記第2補正値の絶対値が前記アレイ平均値に対して0.5以内に収まるように、前記第1補正値に+1あるいは−1して、前記第1補正値を変更し、前記第1補正値の変更に伴う前記実数補正値の変更を打ち消すように、対応する前記第2補正値を変更する、第1変更工程と、
をさらに含み、
前記補正工程は、変更された前記第1補正値によって前記駆動信号の前記所定設定値を補正する、光量補正方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光量補正方法において、
前記露光用発光装置は、第1所定数の発光素子を含む少なくとも一個の発光素子アレイによって構成され、
前記発光素子アレイ内の前記第1所定数の発光素子を、前記第1所定数より少ない第2所定数の発光素子を含む複数の発光素子群に区分する区分工程と、
各発光素子群において、前記第2補正値の平均値としての群平均値を算出する群平均値算出工程と、
各発光素子群において、前記群平均値を、補正を行う発光素子数の前記第2所定数に対する割合とし、前記第2所定数の中から前記割合の発光素子を選択し、選択された発光素子に対して、前記第1補正値に対して+1あるいは−1して、前記第1補正値を変更し、前記第1補正値の変更に伴う前記実数補正値の変更を打ち消すように、対応する前記第2補正値を変更する、第2変更工程と、
をさらに含み、
前記補正工程は、変更された前記第1補正値によって前記駆動信号の前記所定設定値を補正する、光量補正方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光量補正方法において、
前記第2変更工程において、前記割合に対して割り付けられた参照テーブルに基づいて、前記割合の発光素子が前記発光素子群の中から選択され、前記第1補正値が変更される、光量補正方法。
【請求項8】
請求項6に記載の光量補正方法において、
前記第2変更工程において、前記第2補正値の大きさの序列に基づいて、前記割合の発光素子が前記発光素子群の中から選択され、前記第1補正値が変更される、光量補正方法。
【請求項9】
請求項6に記載の光量補正方法において、
前記第2変更工程において、前記割合の発光素子が前記発光素子群の中からランダムに選択され、前記第1補正値が変更される、光量補正方法。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の光量補正方法において、
前記第1補正値に対して+1あるいは−1する対象となる発光素子を、前記露光用発光装置の発光の動作周期単位毎にずらす、光量補正方法。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の光量補正方法において、
前記補正工程において、一の発光素子群の次に他の発光素子群において、前記第2補正値について発光素子群の群平均値を算出する際に、前記一の発光素子群の前記第2変更工程後の前記群平均値を他の発光素子群の群平均値に含ませる、光量補正方法。
【請求項12】
請求項5から請求項11のいずれか一項に記載の光量補正方法において、
前記第1変更工程および前記第2変更工程の少なくとも一方の工程を経た上で新たに算出される前記第2補正値に対して誤差拡散を行い、誤差の絶対値が1以上積み上がったら、積み上がった前記誤差を打ち消すように、前記第1補正値に対して+1あるいは−1して前記第1補正値を変更し、前記第1補正値の変更に伴う前記実数補正値の変更を打ち消すように、対応する前記第2補正値を変更する、誤差拡散工程を、さらに含む、光量補正方法。
【請求項13】
請求項12に記載の光量補正方法において、
前記誤差拡散工程は、前記光量線図を用いて前記第2補正値を一旦、光量に戻し、光量において誤差拡散を行い、誤差拡散後に再度、誤差拡散された前記光量を、前記光量線図を用いて前記第2補正値に戻すことを含む、光量補正方法。
【請求項14】
請求項12に記載の光量補正方法において、
前記誤差拡散工程において、前記第2補正値に対してそのまま誤差拡散される、光量補正方法。
【請求項15】
所定の配列に並べられた複数の発光素子を備え、前記複数の発光素子が、請求項1から請求項14のいずれか一項の光量補正方法により補正された設定値に対応する駆動信号によって発光される、露光用発光装置。
【請求項16】
感光体と、前記感光体を露光する露光装置とを備える画像形成装置であって、
請求項15に記載の露光用発光装置を前記露光装置として備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−71367(P2013−71367A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213034(P2011−213034)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】