説明

光量調節装置及びそれを搭載したカメラ装置

【課題】安価な構成でありながら遮光幕を常に確実に駆動すると共にコストダウンと歩留まり向上に寄与する光量調節装置及びそれを搭載したカメラ装置を提供する。
【解決手段】シャッタ装置21は電極基板25、スペーサ26、遮光幕27及びガラス基板28を積層して構成される。電極基板25には裏面に遮光幕27を駆動する複数の帯状電極29が光学的開口部22と周辺部31を除く全面に形成されている。電極基板25は一般的にプリント基板として用いられるガラスエポキシ基板で構成され特別なプロセスを必要とせず比較的安価に製作することができる。スぺ−サ26は電極基板25とガラス基板28との間に遮光幕27を移動可能に保持する。遮光幕27には予め所定のピッチで電気的に分極されたエレクトレットが施されている。ガラス基板28は電極基板25よりも剛性が高く且つシャッタ装置21全体の平面性を確保するだけの優れた平面性を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
安価な構成で遮光幕を常に確実に駆動すると共にコストダウンと歩留まり向上に寄与する光量調節装置及びそれを搭載したカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学レンズなどを用いて結像させた被写体像をCCD(Charge Coupled Device )などの撮像素子で電気信号に変換し、記録媒体に撮像画像として記録する電子カメラが広く普及している。
【0003】
一般に、カメラには銀塩フィルム用カメラや電子カメラのいずれにおいても、被写体からの光路上の光学的開口部に、被写体からの光量を調節するための絞りや被写体の瞬時の像を捉えるためのシャッタを設けることが必要である。またシャッタの動作は連続撮影に即応できるほど良いことも、つとに知られている。
【0004】
そのようなカメラのシャッタや絞りのような光量調節装置の駆動制御に誘導電荷型アクチュエータを用いる例も提案されている。その光量調節装置としては、1個のステータ(固定子、基板)に対しスライダ(移動子、遮光幕)が1個のものと2個のものがあり、いずれもスライダをシャッタ羽根又は絞り羽根として機能させるべくガラスエポキシ基板上にスライダ駆動用の帯状電極を設けた実施例が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平08−220592号公報([要約]、図1、[0011]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、帯状電極を配設する基板としては、樹脂材料を用いた方が安価に製作することができる。特にガラスエポキシ基板は一般的に回路基板として用いられており、安価な帯状電極基板を製作することができる。
【0006】
しかしながら、シャッタや絞り装置では、遮光幕を高速に駆動する必要があり、そのためには帯状電極基板の平面性が要求されるが、樹脂材料では使用状態、特に高温高湿環境下では、反り等の不具合が発生し、遮光幕の円滑な駆動を妨げる虞れがある。
【0007】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、安価な構成でありながら遮光幕を常に確実に駆動すると共にコストダウンと歩留まり向上に寄与する光量調節装置及びそれを搭載したカメラ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先ず、第1の発明の光量調節装置は、予め所望の間隔で分極された遮光幕と、該遮光幕を駆動するための帯状電極と、光学的開口部を有してお互いの間に遮光幕を移動可能に挟持する第1及び第2の基板と、を有する光量調節装置において、第1の基板は第2の基板より剛性が高いように構成される。
【0009】
この光量調節装置においては、例えば、上記第1の基板、または上記第2の基板のいずれかに、上記遮光幕を駆動するための上記帯状電極を設けて構成される。
また、例えば、上記第1の基板はガラス基板で構成され、上記第2の基板は樹脂基板で構成されている。
【0010】
また、例えば、上記第1の基板はセラミック基板で構成され、上記第2の基板は樹脂基板で構成されている。
また、例えば、上記第1の基板は金属基板で構成され、上記第2の基板は樹脂基板で構成されている。
【0011】
そして、例えば、上記樹脂基板に、上記遮光幕を駆動するための帯状電極を設けて構成される。
また、例えば、上記第1及び第2の基板は同材質であり、上記第1の基板は上記第2の基板に比べて板厚が厚いように構成してもよい。
【0012】
また、例えば、上記遮光幕を駆動するための上記帯状電極を設けた第3の基板を更に具備するように構成してもよい。この場合、上記第3の基板は、フレキシブル基板であることが好ましい。
【0013】
次に、第2の発明のカメラ装置は、上記光量調節装置を光学系のシャッタ位置又は絞り位置に設けて構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1又は第2の基板のいずれかに、他方に比較し剛性が高い基板を使用するようにするので、遮光幕の円滑な移動に妨げとなる基板の変形を軽減することができ、これにより、安価な構成でありながら遮光幕を常に確実に駆動すると共にコストダウンと歩留まり向上に寄与する光量調節装置及びそれを備えたカメラ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1の光量調節装置としてのシャッタ装置を搭載したデジタルカメラの概略構成を示す図であり、上にデジタルカメラの前面からの外観を示す斜視図を示し、下にデジタルカメラ内部の主要部の配置状態を示す斜視図を示している。
【0017】
図1の上に示すように、デジタルカメラ1は、前面右上隅に撮影レンズ窓2を備え、その左方にストロボ照射窓3を備えている。また、上面の左端部にはレリーズボタン4が設けられている。
【0018】
そして、図1の下に示すように、デジタルカメラ1の内部は、全体の左方ほぼ2/3を占めて、各種の電子部品を搭載した回路基板5からなる制御装置や着脱交換自在な電池6などが配置されている。そして、その右方の全体のほぼ1/3を占める部分には、ユニット化されたレンズ装置7が配設されている。
【0019】
レンズ装置7は、図1の上に示す撮影レンズ窓2から図1の下に示す撮影光軸O1に沿って入射する被写体からの光束を、その撮影光軸O1がほぼ直角に下方に折り曲がるように反射させ、その下方に折り曲げられた後述する第2の光軸O2に沿って、上記の入射光束を、レンズ装置7の下端部に配設されている例えばCCDなどからなる撮像素子まで導いて撮像画像を生成する。
【0020】
尚、図1の下に示すXYZの矢印は、カメラの幅、奥行き、高さの方向を示しており、カメラのY方向の厚さが薄いほどカメラ全体が薄型となり、近年のデジタルカメラへのユーザ志向である小型化・薄型化に適合する構成となる。
【0021】
図2は、図1の下に示すレンズ装置7のA−A´矢視断面をそのデジタルカメラ1の左方から見た図であり、レンズユニット各部の概略の構成を示している。図1の下に示したレンズ装置7の内部には、この図2に示すように上記下方に折り曲げられた第2の光軸O2に沿って、第1の固定鏡枠部8にレンズ群が保持された第1の固定レンのズ部9、第1の移動鏡枠11にレンズ群が保持された第1の移動レンズ部12、第2の移動鏡枠13にレンズ群が保持された第2の移動レンズ部14、第3の移動鏡枠15にレンズが保持された第3の移動レンズ部16、第2の固定鏡枠部17にレンズが保持され第2の固定レンズ部18及びこれらのレンズ部の終端には配置さえた撮像素子19とで構成されている。
【0022】
上記第1の移動レンズ部12及び第2の移動レンズ部14は、このレンズ装置7の光学系の第2の光軸O2に沿って入射する被写体の光束の焦点距離を変化させる、つまりズーム比調節用のために設けられ、第3の移動レンズ部16は、上記の光束が撮像素子19上に結像する焦点調節のために設けられている。そして、上記第1の移動レンズ部12と第2の移動レンズ部14の間には、シャッタ位置(絞り位置でもある)20が設けられている。
【0023】
図3は、図1の下に示したレンズ装置7をデジタルカメラ1の図1の下の背面側から見た拡大斜視図である。図3には、レンズ装置7の右に、レンズ装置7に組み付けられているシャッタ装置を単独に示している。
【0024】
図3に示すように、レンズ装置7には、図2に示したシャッタ位置(絞り位置)20にシャッタ装置21が組み込まれている。シャッタ装置21は、図3の右に示すように、長辺aと短辺bからなる矩形の平らな板状体をなす装置であり、第2の光軸O2の透過路となる光学的開口部22と、この光学的開口部22に長辺a方向に隣接する退避部23を有している。そして、上記の長辺aは図1の下に示すX方向に、短辺bはY方向に沿って配置されている。
【0025】
このシャッタ装置21の光学的開口部22を透過する第2の光軸O2の終端すなわちレンズ装置7の下端部には、図2にも示した撮像素子19が配置されている。
図4は、上に上記シャッタ装置21の図3の右とは別な角度から見た斜視図を示し、中央に、その分解斜視図を示し、下に中央のa矢視図を示している。
【0026】
図5は、図4の上に示すシャッタ装置21のB−B´断面拡大矢視図である。
図4及び図5に示すシャッタ装置21は、図4では中央の左下から右上、図5では左から右に示す第2の基板としての電極基板25、スペーサ26、遮光幕27、及び第1の基板としてのガラス基板28を積層して構成されている。
【0027】
上記の電極基板25は、その裏面には、図4の下に示すように、遮光幕27を駆動するための複数の帯状電極29が、光学的開口部22と周辺部31を除く全面に形成されている。
【0028】
スペーサ26は、電極基板25とガラス基板28との間に、遮光幕27を移動可能に保持するために設けられている。
遮光幕27には図では定かに見えないが予め所定のピッチで電気的に分極された後述するエレクトレットが施されている。
【0029】
ガラス基板28は、少なくとも電極基板25の光学的開口部22に対応する位置が透明であり、電極基板25よりも剛性が高く、且つシャッタ装置21全体の平面性を確保するために平面性に優れている材質のものとして用いられている。
【0030】
本実施例では、帯状電極29を有する電極基板25を、一般的にプリント基板として用いられているガラスエポキシ基板で構成している。よって、電極基板25を設ける際に特別なプロセスを必要とせず、比較的安価に製作することができる。
【0031】
但し、ガラスエポキシ基板は、前述したように温度湿度等の影響により反りや曲がりが発生する可能性があり、その場合高速で移動する遮光幕27の移動に悪影響を与える虞れがある。

そこで、ガラスエポキシ基板である電極基板25よりも剛性が高く、且つ平面性の優れたガラス基板28と一体的に構成することにより、剛性、平面性をガラス基板に倣わせて変形による遮光幕27の駆動を妨げることを軽減するようにしている。
【0032】
尚、本実施例では、第1の基板の材質をガラス基板としたが、これに限ることなく、例えばセラミック基板、金属基板等を用いることもできる。但し、セラミック基板や金属基板のように光非透過性の材料を使用する場合は、光線が通過する光学的開口部として電極基板25の光学的開口部22に対応する位置に物理的な貫通孔を設ける必要があることは言うまでもない。
【0033】
また、ここで言う剛性が高いとは、材質による横弾性係数「E」と、形状(厚さ)による断面二次モーメント「I」の積「EI」が大きいことを指している。すなわち、a:形状(厚さ)が同一の場合は横弾性係数が大きい材質であること、b:同材質の場合は厚さ厚い、すなわち断面二次モーメントの値が大きいこと、c:材質及び厚さが異なる場合はときは横弾性係数と断面二次モーメントの積が大きいこと、となる。
【0034】
また、平面性が優れているとは、幾何公差上の平面度が小さく且つ表面粗さ(例えばRmax )の値が小さいことを指している。
ここで、本例におけるシャッタ装置21における遮光幕27を駆動するシャッタ機構の駆動原理を説明する。
【0035】
図6は、本発明のシャッタ装置におけるシャッタ機構の駆動原理を説明する図である。尚、以下の駆動原理の説明では、電極基板25に代えて固定子25と言い、遮光幕27に代えて移動子27と言うことにする。
【0036】
本シャッタ機構は、基本的に固定子25と移動子27とを備え、移動子27は、固定子25に対して図6の上と下に示すように左右方向に移動自在に構成されている。そして、固定子25には、被写体からの光像を撮像素子(図2、図3の撮像素子19参照)に導くための開口部(光学的開口部22)が設けられ、更に、複数の帯状電極29が所定の間隔で並べて形成されている。他方の移動子27は、遮光性を有する部材であり、永久分極された誘電体の部位を備えている。このような移動子27の構成はエレクトレットと呼ばれている。
【0037】
一般に、エレクトレットとは、電気を通しにくい例えばテフロン(登録商標)、ポリプロピレン、マイラーなどの高分子材料を加熱溶融し、これに直流の高電圧を加えながら電極の間で固化させたあとで電極を取り去ると、電極に接していた面が正または負に帯電し、これらの分極(正と負の電気に分かれた状態)が半永久的に保持されているもののことを称する用語である。
【0038】
上記のシャッタ機構において、帯状電極29に正負の電圧を周期的に印加すると、帯状電極29と移動子27の上記エレクトレットとの間に吸引力又は反発力が発生し、結果的に移動子27が固定子25に対して相対移動する。
【0039】
したがって、移動子27が固定子25の開口部(光学的開口部22)を開放又は遮蔽するように移動可能にすることによってシャッタ機構を構成することができる。図6の上はシャッタが開の状態を示し、図6の下はシャッタが閉の状態を示している。以下、本構成に係るシャッタ機構を「エレクトレットシャッタ」と称することにする。
【0040】
なお、固定子25の開口部(光学的開口部22)は、必ずしも貫通孔のような物理的な開口部とする必要はなく、固定子25を透過部材とし、開口部に相当する位置に帯状電極29が設けられていない透過領域を形成するようにしても良い。
【0041】
図7は、エレクトレットシャッタとその駆動回路を模式的に示す図である。同図は右にエレクトレットシャッタの断面を模式的に示し、左に駆動回路をブロック図で示している。同図に示すように、固定子25に並べられたそれぞれの帯状電極29には、駆動(電圧印加)回路32からの電圧信号線が接続されている。この電圧信号線には4相の電圧信号が印加され、従って、帯状電極29には、4本毎に同一の電圧信号が印加される。図7では、帯状電極29にA、B、C、Dの符号を付してこの電圧信号を区別している。
【0042】
この固定子25の帯状電極29の配設面に対向して移動子27が配置されている。移動子27には、固定子25との対向面に永久分極された上述した誘電体(エレクトレット)33を複数備えている。
【0043】
同図の左に示す駆動回路32では、パルス発生回路34で矩形波列(駆動パルス信号)が生成され、この駆動パルス信号が昇圧回路35と位相器36に供給される。昇圧回路35では、入力した駆動パルス信号を100V程度まで昇圧するとともに、2つの極性を有する電圧信号に分岐して、駆動電極A及びCに供給する。
【0044】
他方、位相器36に入力した駆動パルス信号は、90°位相が遅れた波形となり、その後、昇圧回路35に入力されて、上述と同様の2つの極性を有する電圧信号に分岐されて駆動電極B及びDに供給される。
【0045】
図8は、駆動回路32によって生成されて帯状電極29に印加される電圧信号列を示す図である。帯状電極29の電圧の状態は、期間Tにおけるt1〜t4の4つの状態変化が時間tにおける期間Tごとの経過に対応して繰り返される。
【0046】
図9は、上記のエレクトレットシャッタの動作を更に説明する図である。図9の(1) は図8において各帯状電極29(A,B,C,D)の電圧状態が、図8に示したt1の印加電圧の状態に切り替った直後のエレクトレットと駆動電極との対応関係を示している。
【0047】
エレクトレット33aは、駆動電極Aから反発力を受け、駆動電極Bから吸引力を受ける。また、エレクトレット33bは、駆動電極Cから反発力を受け、駆動電極Dから吸引力を受ける。このため、移動子27は図の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチdだけ移動する。
【0048】
図9の(2) は、上記に続いて図8に示したt2の印加電圧の状態に切り替った直後のエレクトレットと駆動電極との対応関係を示している。エレクトレット33aは、駆動電極Bから反発力を受け、駆動電極Cから吸引力を受ける。また、エレクトレット33bは、駆動電極Dから反発力を受け、駆動電極Aから吸引力を受ける。このため、移動子27は図の右方向に力を受けて、再び1つの駆動電極ピッチdだけ移動する。
【0049】
図9の(3) は、上記に続いて図8に示したt3の印加電圧の状態に切り替った直後のエレクトレットと駆動電極との対応関係を示し、図9の(4) は、図9の(3) に続いて図8に示したt4の印加電圧の状態に切り替った直後のエレクトレットと駆動電極との対応関係を示している。図9の(1) 及び(2) で説明した動作と同様に、移動子27は、1つの駆動電極ピッチdだけ順次移動する。
【0050】
そして、この動作が繰り返されることにより、移動子27は図9の右方向に移動する。なお、移動子27を図9の左方向に移動するためには、帯状電極29に印加する電圧の極性を逆に切り替えればよい。
【0051】
このように、本例の移動子27は、それ自体が半永久的な分極帯電部を備えているので、例えば誘導電荷形アクチュエータのように、電圧印加、電荷蓄電及び静電誘導を繰り返す手数と時間を要することなく、単に駆動電圧の印加だけで移動子を迅速に駆動することができる。
【実施例2】
【0052】
図10は、上に、実施例2としてのシャッタ装置の斜視図を示し、中央に、その分解斜視図を示し、下に、中央のb矢視図を示している。このシャッタ装置が組み込まれるレンズ装置は図1の下、図2及び図3に示したレンズ装置7と同様である。
【0053】
図11は、図10の上に示すシャッタ装置21´のC−C´断面拡大矢視図である。なお、図10及び図11において、図4と同一構成部分には図4と同一の番号を付与して示している。
【0054】
図10及び図11に示すシャッタ装置21´は、図10では中央の左下から右上、図11では左から右に示す第2の基板としての帯状電極29を有する電極基板25、スペーサ26、エレクトレットが施された遮光幕27、及び電極基板25と同材質で電極基板25よりも厚い第1の基板としての厚め基板28´を積層して構成されている。
【0055】
厚め基板28´は、電極基板25と同材質の不透明基板であるので、電極基板25の光学的開口部22に対応する位置に、電極基板25と同様に物理的貫通孔からなる光学的開口部37が形成されている。
【0056】
また、厚め基板28´は、電極基板25と同材質ではあるが、この厚め基板28´の厚さd1は、電極基板25の厚さd2よりも厚いので、すなわちd1>d2であるので、厚め基板28´は電極基板25よりも剛性が高く、このような構成とするにより、光量調節装置全体としての剛性が高まり、平面性に優れた変形の少ない基板構成を得ることができる。
【実施例3】
【0057】
図12は、上に、実施例3としてのシャッタ装置の斜視図を示し、中央に、その分解斜視図を示し、下に、中央のc矢視図を示している。このシャッタ装置が組み込まれるレンズ装置は図1の下、図2及び図3に示したレンズ装置7と同様である。
【0058】
図13は、図12の上に示すシャッタ装置21″のD−D´断面拡大矢視図である。なお、図12及び図13において、図4と同一構成部分には図4と同一の番号を付与して示している。
【0059】
図12及び図13に示すように、シャッタ装置21″は、図12では中央の左下から右上、図13では左から右に示す第2の基板としての帯状電極29を有する電極基板25、押さえ枠38、エレクトレットが施された遮光幕27、及び第1の基板としてガラス基板28を積層して構成されている。
【0060】
押さえ枠38には、帯状電極29の光学的開口部22に対応する位置に物理的貫通孔からなる光学的開口部39を有し、遮光幕27との対向面41の周囲には枠縁段差部42が形成されて、この枠縁段差部42と上記の対向面41とガラス基板28とによる遮光幕室43が形成されている。
【0061】
押さえ枠38は、遮光幕室43内において遮光幕27を、光学的開口部22及び39から退避する位置と、光学的開口部22及び39を覆う位置との間を移動可能に、ガラス基板28とで挟持している。
【0062】
本実施例では、帯状電極29を有する電極基板25を、一般的にプリント基板として用いられているガラスエポキシ基板で構成しているため、帯状電極29を設ける際に特別なプロセスを必要とせず、したがって比較的安価に製作することができる。
【0063】
もっとも、ガラスエポキシ基板は、前述したように温度湿度等の影響により反りや曲がりを発生し易いため、そうなると高速で移動する遮光幕27の移動に悪影響を与える可能性があるが、本実施例では、押さえ枠38とガラス基板28とにより遮光幕室43を形成し、この遮光幕室内43で遮光幕27を移動可能に挟持していることから、電極基板25の反りや曲がり等による遮光幕27の移動への悪影響を防止することができる。
【実施例4】
【0064】
図14は、左上に、実施例4としてのシャッタ装置の斜視図を示し、左下から右上に、その分解斜視図を示し、右下に、分解斜視図のd矢視図を示している。本実施例は、2枚の遮光幕により光学的開口を任意の大きさに制御することができるシャッタ装置の構成を示している。
【0065】
図15は、図14の左上に示すシャッタ装置のE−E´断面拡大矢視図である。図14及び図15に示すように、このシャッタ装置45は、第1の電極基板46、第1の押さえ枠47、第1の遮光幕48、中央基板49、第2の遮光幕51、第2の押さえ枠52、及び第2の電極基板53を積層して構成されている。
【0066】
第1の電極基板46は、長手方向の中央よりやや一方に片寄る位置に設けられた光学的開口部54、その光学的開口部54を除く上下の位置と遮光幕退避位置とに形成された複数本の帯状電極55、及び2つの対角部の近傍にそれぞれ穿設された位置決め孔56を備えている。第2の電極基板53の構成も同様である。
【0067】
第1及び第2の押さえ枠47及び52は、それぞれ第1及び第2の電極基板46及び53の光学的開口部54に対応する位置に光学的開口部57を備え、第1及び第2の電極基板46及び53に対向する面の第1及び第2の電極基板46及び53の位置決め孔56に対応する位置に位置決め突起58を備えている。ただし、図14の第2の押さえ枠52では、第2の電極基板53に対向する面が図の向う側面となっているので位置決め突起58は図の陰になって見えない。
【0068】
また、 第1及び第2の押さえ枠47及び52は、それぞれ中央基板49との対向面59の周囲に枠縁段差部61が形成されている。ただし、図14の第1の押さえ枠47では、中央基板49との対向面が図の向う側面となっているので対向面59及び枠縁段差部61は図の陰になって見えない。
【0069】
上記対向面59、枠縁段差部61、及び中央基板49によって、シャッタ装置45には図15に示すように2つの遮光幕室62が形成され、この2つの遮光幕室62に、それぞれ第1及び第2の遮光幕48及び51が移動可能に収容される。第1及び第2の遮光幕48及び51には、それぞれエレクトレットが施されている。
【0070】
上記のように形成されている第1の押さえ枠47の位置決め突起58に第1の電極基板46の位置決め孔56を嵌合させることにより、第1の押さえ枠47に対して簡単に第1の電極基板46の位置を合わせることができる。同様に第2の押さえ枠52の位置決め突起58(図では陰になって見えない)に第2の電極基板53の位置決め孔56を嵌合させることにより、第2の押さえ枠52に対して簡単に第2の電極基板53の位置を合わせることができる。
【0071】
これら第1及び第2の押さえ枠47及び52とで上述したように遮光幕室62を形成する中央基板49は、その中央に光学的開口部63が形成されている。そして、第1の基板46及び押さえ枠47並びに第2の基板53及び押さえ枠52は、それぞれ長手方向の長さが中央基板49よりも短く構成されており、それらの光学的開口部54及び57は、第1の基板46及び押さえ枠47では長手方向の図の右方に片寄っており、第2の基板53及び押さえ枠52では長手方向の図の左方に片寄っている。
【0072】
したがって、これらの光学的開口部63、54及び57の中心が一致するように上位の各部材を積層して図14の左上に示すようにシャッタ装置45を完成させると、第1の基板46及び押さえ枠47は、中央基板49に対して左方の端部で一致し、中央基板49の右方に非係合面を形成する。また、第2の基板53及び押さえ枠52は、中央基板49に対して右方の端部で一致し、中央基板49の左方に非係合面を形成するように配置されている。
【0073】
これは、電極基板及び押さえ枠を形成する部材の使用量を極力節減するために、図14の左下及び右上に示すように、第1の基板46及び第2の基板53共に、遮光幕48と51が光学的開口部54を覆う位置と退避する位置に移動する部分を備えているが、遮光幕48又は51の非移動位置(帯状電極55が配設されていない位置)となる余剰な部分は、2つのうちの一方の位置決め孔56が形成されている部分以外には無い構成としている。
【実施例5】
【0074】
図16は、実施例5としてのシャッタ装置が搭載されるカメラ本体とその交換レンズの正面図である。図16の上に示すカメラ本体64は、交換レンズ取り付け部65から図16の下に示す交換レンズ66を取り外してレンズ背後に在る内部構成を示している。
【0075】
図16の上に示す内部構成において、焦点面の被写体側近傍に本発明の実施例4としてのシャッタ装置を応用したフォーカルプレーンシャッタ装置67が組み込まれている。図16の上に示す図では、フォーカルプレーンシャッタ装置67の中央部分が見えている。
【0076】
尚、図16の上に示す図では、フォーカルプレーンシャッタ装置67を図示しやすくするために、本来はその手前に配置されているクイックリターンミラーの図示を省略している。このカメラ本体64は、図の左側に電池室を兼ねた握り部68があり、その上面部にシャッタボタン69を備えている。
【0077】
図17は、左上に上記のフォーカルプレーンシャッタ装置67の斜視図を示し、左下から右上にその分解斜視図を示している。図17に示すように、フォーカルプレーンシャッタ装置67は、フレキシブル基板前部71−1、第1の押さえ枠72、第1の遮光幕73、中央基板74、第2の遮光幕75、第2の押さえ枠76及びフレキシブル基板前部71−2が積層されて構成される。
【0078】
尚、フレキシブル基板の前部71−1と後部71−2は連続している基板であり、図17の左上に示すように、内部に積層される他の部材の長手方向の一方の端部(図では左上側の端部)を前側から後側に回り込むようにして最前部と最後部に積層されている。
【0079】
フレキシブル基板前部71−1には第1の遮光幕73を駆動するための第1の帯状電極77が配設され、中央部には光学的開口部78が形成されている。同様にフレキシブル基板後部71−2には第2の遮光幕75を駆動するための第2の帯状電極79が配設され、中央部には光学的開口部81が形成されている。
【0080】
第1及び第2の押さえ枠72及び76は、それぞれ中央基板74との対向面82の周囲に枠縁段差部83が形成されている。ただし、図17の第1の押さえ枠72では、中央基板74との対向面が図の向う側面となっているので対向面82及び枠縁段差部83は図の陰になって見えない。
【0081】
この場合も上記対向面82、枠縁段差部83、及び中央基板74によって、このフォーカルプレーンシャッタ装置67には、図15に示した遮光幕室62と同様の2つの遮光幕室が形成され、この2つの遮光幕室にそれぞれ第1及び第2の遮光幕73及び75が移動可能に収容される。第1及び第2の遮光幕73及び75には、それぞれエレクトレットが施されている。
【0082】
本実施例では、上述したように第1及び第2の遮光幕73及び75を駆動するための電極基板を、フレキシブル基板前部71−1と後部71−2から成る一連のフレキシブル基板で構成していることより、電極基板を1枚のフレキシブル基板で製作することができると共に、駆動回路との接続部71−3も電極基板と一体的に構成でき、したがって、部品点数の削減、組み立て性の向上に寄与することができる。
【0083】
尚、本例の場合も、上述した実施例4のように、第1及び第2の押さえ枠72及び76に位置決め突起を形成し、フレキシブル基板側に位置決め孔を設けて、両者を組み合わせるようにすると、更に組み立て性が向上するのは言うまでもない。
【0084】
また、本例の中央基板74はセラミック基板であるので、剛性及び平面性を十分に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1の光量調節装置としてのシャッタ装置を搭載したデジタルカメラの概略構成を示す外観斜視図、及び主要部の配置状態を示す斜視図である。
【図2】図1の下に示すレンズ装置のA−A´矢視断面をそのデジタルカメラの左方から見た図であり、レンズユニット各部の概略の構成を示す図である。
【図3】レンズ装置をデジタルカメラの背面側から見た拡大斜視図、及びレンズ装置に組み付けられているシャッタ装置を単独に示す図である。
【図4】シャッタ装置の図3の右とは別な角度から見た斜視図、その分解斜視図、及び分解斜視図のa矢視図である。
【図5】図4の上に示すシャッタ装置のB−B´断面拡大矢視図である。
【図6】本発明のシャッタ装置のシャッタ機構の駆動原理を説明する図である。
【図7】本発明のシャッタ装置に係わるエレクトレットシャッタとその駆動回路を模式的に示す図である。
【図8】エレクトレットシャッタの駆動回路によって生成されて駆動電極に印加される電圧信号列を示す図である。
【図9】エレクトレットシャッタの動作を更に説明する図である。
【図10】実施例2としてのシャッタ装置の斜視図、分解斜視図、及び分解斜視図のb矢視図である。
【図11】図10の上に示すシャッタ装置のC−C´断面拡大矢視図である。
【図12】実施例3としてのシャッタ装置の斜視図、分解斜視図、及び分解斜視図のc矢視図である。
【図13】図12の上に示すシャッタ装置のD−D´断面拡大矢視図である。
【図14】実施例3の変形例としての2枚の遮光幕により光学的開口を任意の大きさに制御することができるシャッタ装置の構成を示す図である。
【図15】図14の左上に示すシャッタ装置のE−E´断面拡大矢視図である。
【図16】実施例5としてのシャッタ装置(フォーカルプレーンシャッタ装置)が搭載されるカメラ本体とその交換レンズの正面図である。
【図17】フォーカルプレーンシャッタ装置の斜視図及び分解斜視図を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 デジタルカメラ
2 撮影レンズ窓
3 ストロボ照射窓
4 レリーズボタン
5 回路基板
6 電池
7 レンズ装置
8 第1の固定鏡枠部
9 第1の固定レンのズ部
O1 撮影光軸
O2 第2の光軸
11 第1の移動鏡枠
12 第1の移動レンズ部
13 第2の移動鏡枠
14 第2の移動レンズ部
15 第3の移動鏡枠
16 第3の移動レンズ部
16 第2の固定鏡枠部
18 第2の固定レンズ部
19 撮像素子
20 シャッタ位置(絞り位置)
21 シャッタ装置
22 光学的開口部
23 退避部
25 電極基板(第1の基板)
26 スペーサ
27 遮光幕
28 ガラス基板(第2の基板)
28´ 厚め基板(第2の基板)
29 帯状電極
31 周辺部
32 駆動回路
33 誘電体(エレクトレット)
34 パルス発生回路
35 昇圧回路
36 位相器
37 光学的開口部
38 押さえ枠
39 光学的開口部
41 対向面
42 枠縁段差部
43 遮光幕室
45 シャッタ装置
46 第1の電極基板
47 第1の押さえ枠
48 第1の遮光幕
49 中央基板
51 第2の遮光幕
52 第2の押さえ枠
53 第2の電極基板
54 光学的開口部
55 帯状電極
56 位置決め孔
57 光学的開口部
58 位置決め突起
59 中央基板との対向面
61 枠縁段差部
62 遮光幕室
63 光学的開口部
64 カメラ本体
65 交換レンズ取り付け部
66 交換レンズ
67 フォーカルプレーンシャッタ装置
68 握り部
69 シャッタボタン
71−1 フレキシブル基板前部
71−2 フレキシブル基板前部
71−3 駆動回路との接続部
72 第1の押さえ枠
73 第1の遮光幕
74 中央基板
75 第2の遮光幕
76 第2の押さえ枠
77 第1の帯状電極
78 光学的開口部
79 第2の帯状電極
81 光学的開口部
82 中央基板との対向面
83 枠縁段差部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め所望の間隔で分極された遮光幕と、該遮光幕を駆動するための帯状電極と、光学的開口部を有してお互いの間に遮光幕を移動可能に挟持する第1及び第2の基板と、を有する光量調節装置において、
第1の基板は第2の基板より剛性が高いことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記第1の基板、または前記第2の基板のいずれかに、前記遮光幕を駆動するための前記帯状電極を設けたことを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記第1の基板はガラス基板で構成され、前記第2の基板は樹脂基板で構成されていることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記第1の基板はセラミック基板で構成され、前記第2の基板は樹脂基板で構成されていることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記第1の基板は金属基板で構成され、前記第2の基板は樹脂基板で構成されていることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記樹脂基板に、前記遮光幕を駆動するための帯状電極を設けたことを特徴とする請求項3、4又は5記載の光量調節装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の基板は同材質であり、前記第1の基板は前記第2の基板に比べて板厚が厚いことを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項8】
前記遮光幕を駆動するための前記帯状電極を設けた第3の基板を更に具備したことを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項9】
前記第3の基板は、フレキシブル基板であることを特徴とする請求項9記載の光量調節装置。
【請求項10】
請求1記載の光量調節装置を光学系のシャッタ位置又は絞り位置に設けたことを特徴とするカメラ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−38884(P2006−38884A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213831(P2004−213831)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】