説明

光量調節装置及び光学機器

【課題】コンパクトな構成で瞳時分割機能を実現できる光量調節装置を提供する。
【解決手段】光量調節装置7は、光を通過させる固定開口21−aを有する基板21と、光を通過させる可変開口APを形成する第1及び第2の遮光部材22,23と、第1及び第2の遮光部材を基板に対してそれぞれ移動させる第1及び第2のアクチュエータ24,26とを有する。光通過方向視において、第1及び第2のアクチュエータのうち少なくとも一部が、固定開口の中心から該固定開口の直径以下の範囲内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる瞳時分割機能を有する光量調節装置及びこれを備えた交換レンズやカメラ等の光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影光学系の瞳位置において光通過開口を光軸直交方向にシフトさせることで、像面に互いに位置が異なる2つの被写体像を時分割形成し、該2像のずれ量(位相差)に基づいてオートフォーカス(瞳時分割AF)を行う光学機器が知られている。
【0003】
このような瞳時分割を行うために、本来撮影光量を調節するための光量調節装置の遮光羽根を利用する方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1にて開示されている光量調節装置は、2つの遮光部材とこれらをそれぞれ駆動する2つのアクチュエータを有する。各遮光部材には平歯部が形成され、ここに各アクチュエータの出力ギヤが噛み合っている。2つのアクチュエータによって2つの遮光部材を左右方向における同じ方向に移動させることで、該2つの遮光部材により形成された開口が左右方向にシフトされる。また、2つの遮光部材を互いに反対方向に移動させることで、開口の大きさが変化し、光量が調節される。
【特許文献1】特開2004−038114号公報(段落0025〜0027、図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示された光量調節装置では、2つの遮光部材の下方に2つのアクチュエータを単純に並べて配置しただけの構成を有する。このため、光軸方向視(光通過方向視)での装置の面積が大きくなる。したがって、この光量調節装置を搭載する光学機器の小型化が妨げられる。
【0006】
なお、特許文献1にて開示された光量調節装置では、遮光部材とアクチュエータとがギヤ機構で連結されている。このため、作動時に騒音が発生し易い。また、ギヤのバックラッシによって開口のシフト位置にばらつきが生じ易く、位相差の検出精度、つまりはオートフォーカスの精度が悪化するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、コンパクトな構成で瞳時分割機能を実現できる光量調節装置及びこれを備えた光学機器を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての光量調節装置は、光を通過させる固定開口を有する基板と、光を通過させる可変開口を形成する第1及び第2の遮光部材と、第1及び第2の遮光部材を基板に対してそれぞれ移動させる第1及び第2のアクチュエータとを有する。そして、光通過方向視において、第1及び第2のアクチュエータのうち少なくとも一部が、固定開口の中心から該固定開口の直径以下の範囲内に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記光量調節装置を備えた光学機器も本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1及び第2のアクチュエータの配置領域と固定開口との関係を適切に設定することで、コンパクトでありながら瞳時分割機能を有する光量調節装置及びこれを備えたコンパクトな光学機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
図1及び図2には、本発明の実施例1であるビデオカメラの構成を示す。本実施例の光学機器としてのビデオカメラは、物体側から凸凹凸凸の4つのレンズユニットを有する変倍光学系としての撮影光学系を有する。図1はビデオカメラの分解斜視図、図2はその主要な断面図である。
【0013】
これらの図において、物体側から順に、L1は固定の第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することにより変倍を行う第2レンズユニット、L3は固定の第3レンズユニット、L4は光軸方向に移動して焦点調節を行う第4レンズユニットである。
【0014】
また、1は第1レンズユニットL1を保持する前玉鏡筒、2は第2レンズユニットL2を保持するズーム移動枠である。3は第3レンズユニットL3を保持する第3レンズ鏡筒を一体化した固定鏡筒である。4は第4レンズユニットを保持するフォーカス移動枠である。
【0015】
5はCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子6が固定される撮像素子ホルダである。
【0016】
前玉鏡筒1は、固定鏡筒3に対して3本のビスにより前方から結合される。また、撮像素子ホルダ5は、固定鏡筒3に対して3本のビスで後方から結合される。
【0017】
7は光量調節ユニット(光量調節装置)である。該光量調節ユニット7は、2枚の絞り羽根(遮光部材)7a,7bによって光が通過する開口(可変開口)を形成する。光量調節ユニット7は、ガルバノメータ等により構成される第1及び第2の絞りモータ7c,7dによって絞り羽根7a,7bを図中の上下方向(第1の方向)における互いに反対方向に移動させることで、開口径を変化させる機能を有する。光量調節ユニット7は、いわゆるギロチン式の光量調節ユニットである。
【0018】
また、光量調節ユニット7は、第1及び第2の絞りモータ7c,7dによって絞り羽根7a,7bを互いに同じ方向に移動させることで、絞り羽根7a,7bにより形成された開口を、その開口を含む面内で異なる位置に移動させる機能を有する。これらの機能については、後述する。なお、光量調節ユニット7は、撮影光学系の瞳位置又はその近傍に配置されている。
【0019】
図1において、8,9は固定鏡筒3と前玉鏡筒1によりその両端が保持されたガイドバーである。また、10,11は固定鏡筒3と撮像素子ホルダ5によりその両端が保持されたガイドバーである。
【0020】
ズーム移動枠2は、ガイドバー8,9により光軸方向に移動可能に支持されている。また、フォーカス移動枠4は、ガイドバー10,11により光軸方向に移動可能に支持されている。なお、ズーム移動枠2及びフォーカス移動枠4はそれぞれ、光軸方向に特定の長さを有するスリーブ部2a,4aを有し、各スリーブ部にて一方のガイドバーに光軸方向に移動可能に係合する。これにより、各移動枠の光軸方向への倒れが防止される。また、各移動枠はU溝部を有し、このU溝部で他方のガイドバーに係合する。これにより、各移動枠の上記一方のガイドバー回りでの回転が阻止される。
【0021】
12,13はフォトインタラプタにより構成されるズームリセットスイッチとフォーカスリセットスイッチである。これらリセットスイッチ12,13はそれぞれ、ズーム移動枠2及びフォーカス移動枠4に形成された遮光部2b,4bの光軸方向移動による遮光状態と透光状態との切り換わりを光学的に検出する。該リセットスイッチ12,13からの出力変化によって、第2及び第4レンズユニットL2,L4がそれぞれ、その移動量を計測するための基準位置に位置しているか否かを検出することができる。
【0022】
ズームリセットスイッチ12及びフォーカスリセットスイッチ13はそれぞれ、補強板を介してビスにより固定鏡筒3に固定されている。
【0023】
14は第2レンズユニットL2を光軸方向に移動させるアクチュエータとしてのステッピングモータ(以下、ズームモータという)である。15は第4レンズユニットL4を光軸方向に移動するアクチュエータとしてのステッピングモータ(以下、フォーカスモータという)である。
【0024】
ズームモータ14及びフォーカスモータ15の出力軸にはそれぞれ、リードスクリューが形成されている。ズームモータ14及びフォーカスモータ15はそれぞれ、2本のビスと一箇所の引っ掛け部(不図示)により固定鏡筒3に固定される。
【0025】
16,17はラックであり、ズーム及びフォーカス移動枠2,4に取り付けられている。これらラック16,17はそれぞれ、ズームモータ14及びフォーカスモータ15のリードスクリューに噛み合う。ズームモータ14及びフォーカスモータ15が回転すると、ードスクリューの回転力がラック16,17によって光軸方向の駆動力に変換される。これにより、ズーム移動枠2及びフォーカス移動枠4が光軸方向に駆動される。
【0026】
18,19はコイルばねであり、ラック16,17をズーム及びフォーカス移動枠2,4のそれぞれに対して光軸方向一方に向けて片寄せしている。また、コイルばね18,19は、ラック16,17をリードスクリューに噛み合う方向に付勢する機能も有する。
【0027】
図7には、本実施例のビデオカメラの電気的構成を示している。なお、図1及び図2中の構成要素と共通するものには、図1及び図2と同じ符号を付している。
【0028】
225はバリエータである第2レンズユニットL2の光軸方向での位置を検出するためのズームエンコーダである。227は第4レンズユニットL4の光軸方向での位置を検出するためのフォーカスエンコーダである。これらのエンコーダはそれぞれ、ズーム及びフォーカスリセットスイッチ12,13により検出された基準位置からの第2及び第4レンズユニットL2,L4の光軸方向での位置(移動量=駆動パルス数)を検出する。
【0029】
なお、ズームモータ14及びフォーカスモータ15としては、上述したステッピングモータに限らず、DCモータや電気−機械エネルギ変換により振動が励起される振動型モータを用いることもできる。また、第2及び第4レンズユニットL2,L4の位置を検出するために、エンコーダ以外の位置検出器を用いてもよい。
【0030】
226は絞りエンコーダであり、第1及び第2の絞りモータ7c,7dの内部にホール素子(hall element)を配置し、ロータとステータの回転位置関係を検出する方式のもの等を用いることができる。なお、絞り羽根7a,7bには、いわゆる小絞り回折による画質劣化を防止するためにNDフィルタ(図示せず)が貼り付けられている。ただし、NDフィルタを絞り羽根7a,7bとは独立して設け、専用のモータによってNDフィルタを光路に出し入れしてもよい。
【0031】
228はカメラ信号処理回路であり、撮像素子6からの出力に対して増幅処理やガンマ補正処理等を施す。これらの処理を経て生成された映像信号は、不図示のディスプレイに表示されたり、不図示の記録媒体(半導体メモリ、光ディスク、ハードディスク、磁気テープ等)に記録されたりする。
【0032】
また、映像信号のうち輝度信号Yは、AE(自動露出)ゲート229、AF(オートフォーカス)ゲート230及び位相差AF回路250に入力される。AEゲート229及びAFゲート230は、全画面のうち露出決定及びピント合わせのために最適な信号取り出し範囲を設定する。これらのゲート229,230による信号取り出し範囲の大きさは可変であってもよいし、ゲートが複数設けられていてもよい。
【0033】
231はTV−AFに用いられる信号を生成するAF信号処理回路である。AF信号処理回路231は、AFゲート230の数に応じて、映像信号の高周波成分に関する1若しくは複数のAF評価値信号を生成する。
【0034】
位相差AF回路250は、光量調節ユニット7の開口(の中心)が互いに異なる位置に移動したそれぞれの状態で取得した被写体画像(輝度信号)のずれ量、すなわち位相差を算出する。算出した位相差の情報はCPU232に出力される。本実施例のビデオカメラでは、静止画撮影も可能である。そして、TV−AFよりも素早いAF動作が必要な静止画撮影において、この位相差情報を用いた位相差検出方式でのAF(瞳時分割AF)が行われる。但し、動画撮影においても素早いAFが要求される場合には、該位相差情報を用いた瞳時分割AFを行ってもよい。
【0035】
233はズームスイッチであり、ユーザの操作に応じてズーム指令をコントローラとしてのCPU232に出力する。
【0036】
234はズームトラッキングメモリであり、変倍に際して、被写体距離と第2レンズユニットL2の位置に対して合焦を維持するための第4レンズユニットL4の位置情報を記憶する。ズームトラッキングメモリとして、CPU232内のメモリを使用してもよい。
【0037】
ズームスイッチ233が操作されると、CPU232は以下の動作を行う。CPU232はは、ズームトラッキングメモリ234内の位置情報(メモリ位置)に基づき、第2及び第4レンズユニットL2,L4が被写体距離に応じた特定の位置関係を維持するように両レンズユニットL2,L4を移動させる。すなわち、ズームエンコーダ225で得られる第2レンズユニットL2の移動位置と被写体距離に対応するメモリ位置に対して、フォーカスエンコーダ227で得られる第4レンズユニットL4の位置が一致するようにフォーカスモータ15の駆動を制御する。
【0038】
また、TV−AF動作では、CPU232は、AF信号処理回路231からのAF評価値がピーク値を示すように、フォーカスモータ15の駆動を制御する。
【0039】
さらに、CPU232は、位相差AF回路250から入力された位相差情報に基づいて、被写体に対するデフォーカス量を求め、さらにこのデフォーカス量から第4レンズユニットL4の合焦位置までの駆動量を算出する。そして、第4レンズユニットL4が合焦位置に到達するようにフォーカスモータ15の駆動を制御する。
【0040】
また、CPU232は、AEゲート229を通過した輝度信号Yの平均値が適正露出を得るための値になるように、第1及び第2の絞りモータ7c,7dの駆動を制御して、開口径をコントロールする。
【0041】
次に、本実施例における光量調節ユニット7の構成及び機能について、図3A,図3B及び図4を用いて説明する。
【0042】
図3Aは、光量調節ユニット7を光軸方向に分解して斜め上方から見た図である。
【0043】
21は光量調節ユニット7のベース部材(基板)である。ベース部材21には、固定開口部21−aと、ピン形状部21−b,21−c,21−d,21−eと、円弧穴21−f,21−gと、突起形状部21−h,21−iとが形成されている。
【0044】
22は第1の絞り羽根(図2及び図7に示した7a,7bのうち一方)である。第1の絞り羽根22には、図中の矢印A,B方向への直線往復移動をガイドするための長溝穴22−aと、駆動力を受けるための長穴22−bとが形成されている。
【0045】
23は第2の絞り羽根(図2及び図7に示した7a,7bのうち他方)である。第2の絞り羽根23には、矢印A,B方向への直線往復移動をガイドするための長溝穴23−aと、駆動力を受けるための長穴23−bとが形成されている。
【0046】
24はアクチュエータとしての第1の絞りモータ(図1及び図7に示した7c)である。
【0047】
25は絞りモータ24の回転駆動力を、第1の絞り羽根22に伝達するよう回動するレバー部材である。該レバー部材25の先端部には、連動ピン25−aが形成されている。
【0048】
26はアクチュエータとしての第2の絞りモータ(図1及び図7に示した7d)である。
【0049】
27は第2の絞りモータ26の駆動力を第2の絞り羽根23に伝達するよう回動するレバー部材である。該レバー部材27の先端部には、連動ピン27−aが形成されている。
【0050】
28は第1及び第2の絞り羽根22,23を保持する押さえ板である。該押さえ板28には、ベース部材21(基板)の固定開口部21−aと同じ内径を有する固定開口部28−aと、穴部28−b,28−c,28−d,28−eと、円弧穴28−f,28−gと、曲げ形状部28−h,28−iとが形成されている。曲げ形状部28−h,28−iがベース部材21の突起形状部21−h,21−iに係合することで、押さえ板28がベース部材21に取り付けられる。
【0051】
AXLは該光量調節ユニット7の中心軸であり、撮影光学系内に組み込まれた状態では該撮影光学系の光軸に一致する。また、該中心軸AXLは、固定開口部21−a,28−aの中心を通る軸である。絞り羽根22,23によって形成される開口(可変開口)APが絞りモータ24によって変更されている状態、すなわち光量調節状態では、該可変開口APの中心は中心軸AXL上に設定される。なお、以下の説明においては、中心軸AXLを、便宜上、光量調節ユニット7の光軸と称する。
【0052】
図3Bは、組み立てられた状態の光量調節ユニット7を斜め上方から見た図である。図3Bでは、押さえ板28は省略している。
【0053】
ベース部材21のピン形状部21−b,21−cは、第1の絞り羽根22の長溝穴22−a内に挿入されている。また、第1の絞り羽根22の長穴22−bには、絞りモータ24により回転駆動されるレバー部材25の先端に設けられた連動ピン25−aが、ベース部材21の円弧穴21−fを介して挿入されている。
【0054】
ベース部材21のピン形状部21−d,21−eは、第2の絞り羽根23の長溝穴23−a内に挿入されている。また、第2の絞り羽根23の長穴23−bには、第2の絞りモータ26により回転駆動されるレバー部材27の先端に設けられた連動ピン27−aが、ベース部材21の円弧穴21−gを介して挿入されている。
【0055】
このような構成により、第1及び第2の絞りモータ24,26の回転駆動力をレバー部材25,27を介して第1及び第2の絞り羽根22,23にそれぞれ伝達し、これらを互いに独立して移動させることができる。
【0056】
第1及び第2の絞り羽根22,23を互いに反対方向に移動させることで、これらにより形成される可変開口APの径を変化させて光量を調節することができる。また、第1及び第2の絞り羽根22,23を互いに同じ方向に移動させることで、可変開口(例えば、小絞り状態の開口)APを、その開口を含む面内(この後に説明する図4A〜図4Eの紙面内)で左右の異なる位置に移動させることができる。
【0057】
図4A〜図4Eのそれぞれには、図3Bに示す光量調節ユニット7の正面図、側面図及び背面図を示している。図4Aから図4Eへと絞り羽根22,23の状態(可変開口APの状態)が以下のように変化している。
【0058】
図4Aは開放状態、図4Bは小絞り状態(小絞り開口AP′が光軸AXL上)、図4Cはクローズ状態を示す。また、図4Dは小絞り状態(小絞り開口AP′が光軸AXLの左側)、図4Eは小絞り状態(小絞り開口AP′が光軸AXLの右側)を示す。
【0059】
図4A〜図4Cが上述した光量調節状態である。一方、図4D及び図4Eは、小絞り開口AP′の中心が光軸AXLに対して左右に移動量DL,DRだけ移動した、すなわち光軸AXLを挟んだ両側に移動した瞳時分割状態である。
【0060】
ここで、小絞り開口AP′が光軸AXL上から左右に移動した状態で撮像素子6を通じて得られる画像は、前述した瞳時分割AFに用いられる。
【0061】
瞳時分割AFについて以下に詳しく説明する。このAFに対しては、特にCMOSセンサのような高速画像処理が可能な撮像素子を用いることが有効である。
【0062】
通常のビデオ出力では、1画像の出力は、NTSC方式で60分の1秒である。本実施例の撮像素子6としてのCMOSセンサは高速読み出しが可能であり、1回の画像出力の間に複数回の画像を取り込むことも可能である。例えば、60分の1秒の間に6つの画像を順次取り込むことができる。
【0063】
この場合の6つの画像のうちの1つとして、60分の1秒を6分の1した時間の間に、小絞り開口AP′を光軸AXLに対して移動量DLだけ左側に移動させて第1の位相差検出用画像を取り込む。さらに、上記6つの画像のうちの他の1つとして、60分の1秒を6分の1した時間の間に、小絞り開口AP′を光軸AXLに対して移動量DRだけ右側に移動させて第2の位相差検出用画像を取り込む。
【0064】
他の4つの画像は、小絞り開口AP′を光軸AXL上に位置させて取り込み、これら4つの画像を合成して出力画像とする。
【0065】
小絞り開口AP′が光軸AXLに対して左右にシフトした状態では、瞳位置での被写体光束の中心が光軸AXLに対してずれているので、被写体に対して非合焦状態では、2つの位相差検出用画像に非合焦の度合いに応じたずれが生ずる。
【0066】
したがって、位相差AF回路250によって2つの位相差検出用画像のずれ量(位相差)を求めることで、CPU232では、該ずれ量からデフォーカス量を計算することができる。そして、CPU232は、そのデフォーカス量に基づいて第4レンズユニットL4(フォーカスモータ15)をコントロールすることにより、合焦を得ることができる。特に、撮像素子6としてCMOSセンサを用いることで、高速で高性能なAFを実現できる。
【0067】
ここで、図4Aを用いて、光量調節ユニット7における第1及び第2の絞りモータ24,26の配置条件について説明する。ここでは、図4Aに示すように、光量調節ユニット7を光軸方向から見たとき、言い換えれば、光量調節ユニット7の開口を光が通過する方向から見たときの第1及び第2の絞りモータ24,26の配置について説明する。
【0068】
なお、本実施例の光量調節ユニット7において、第1及び第2の絞りモータ24,26は、光軸AXLに対して対称な位置に配置されている。ただし、レバー部材25,27は光軸AXLが通る固定開口部21−aの中心Oに対して点対称となるように配置されている。
【0069】
1)まず、第1及び第2の絞りモータ24,26のうち少なくとも一部は、固定開口部21−aの中心Oから該固定開口21−aの直径(=2×半径R)以下の範囲内に配置されている。言い換えれば、固定開口部21−aの各絞りモータ側の端部から各絞りモータの固定開口部21−a側の端部までの寸法aが、固定開口21−aの半径R以下(a≦R)である。図4Aに示すように、a<Rの関係にあればより好ましい。
【0070】
2)また、第1及び第2の絞りモータ24,26は、固定開口部21−aの中心Oから該固定開口部21−aの直径の2倍(=2×2×半径R)の範囲内に配置されている。本実施例では、図4Aに示すように、レバー部材25,27までこの範囲内で回動するように配置されているが、少なくとも第1及び第2の絞りモータ24,26がこの範囲内にあればよい。
【0071】
3)そして、第1及び第2の絞りモータ24,26は、図4Aに示すように、可変開口APを開放状態とする位置に移動した第1及び第2の遮光部材22,23にそれぞれ重なる領域に配置されている。
【0072】
以上の配置条件を満たすことで、各絞りモータをベース部材21の固定開口部21−aに近い領域に、ベース部材21からはみ出ないように配置することができる。したがって、2つの絞りモータ24,26を有しながらも、光軸方向視(光通過方向視)において面積が小さいコンパクトな光量調節ユニット7を実現できる。なお、この場合、各絞りモータの外周面における固定開口部21−a側の領域で光束が不要な反射をしないように、該領域に反射防止処理(反射防止塗料の塗布)をしてもよい。
【0073】
また、上記配置条件を満たす範囲で、両絞りモータ24,26を光軸AXLに対して非対称となるように配置してもよい。また、2つのレバー部材25,27を光量調節ユニットの一方(図4Aでいう上側又は下側)に配置してもよい。
【0074】
また、本実施例の光量調節ユニットでは、絞り部材と絞りモータの駆動力を伝達するレバー部材とを、ピンと長穴による係合により連結しているので、ギヤを用いる場合に比べて動作音が小さく、かつ絞り羽根の位置決め精度を高くすることができる。このため、瞳時分割状態で形成される開口の位置誤差を少なくすることができる。したがって、高精度な瞳時分割AFを行うことができる。
【実施例2】
【0075】
図5A、図5B及び図6には、本発明の実施例2である光量調節ユニットを示している。この光量調節ユニット7′は、実施例1にて説明したビデオカメラに搭載される。図5Aは、光量調節ユニットを光軸方向に分解し、斜め上方から見た図である。
【0076】
31は光量調節ユニット7′のベース部材である。該ベース部材31には、開放開口部31−aと、溝形状部31−b,31−cと、突起形状部31−h,31−iとが形成されている。
【0077】
32は第1の絞り羽根で、図中の矢印A,B方向への直線往復駆動力を受けるための穴32−a,32−bが形成されている。
【0078】
33は第2の絞り羽根で、矢印A,B方向への直線往復駆動力を受けるための穴33−a,33−bが形成されている。
【0079】
34はピエゾ素子等で構成された振動部材としての第1の振動子である。該第1の振動子34は、周波電圧(パルス電圧等)が印加されることで振動が励起される。このため、第1の振動子34に、接触部材としての第1のスライダ35を接触させることで、該第1のスライダ35を矢印A,B方向に駆動することができる。
【0080】
第1のスライダ35に形成されたピン部35−a,35−bは、第1の絞り羽根32の穴32−a,32−bに挿入される。これにより、第1の絞り羽根32を第1のスライダ35とともに矢印A,B方向の駆動することができる。なお、第1のスライダ35はマグネットにより形成されており、第1の振動子34に磁気吸着することで、第1のスライダ35と第1の振動子34間の適切な接触圧が確保される。
【0081】
第1の振動子34及び第1のスライダ35により、第1の振動型リニアアクチュエータが構成される。
【0082】
36はピエゾ素子等で構成された振動部材としての第2の振動子である。該第2の振動子36は、周波電圧(パルス電圧等)が印加されることで振動が励起される。このため、第2の振動子36に、接触部材としての第2のスライダ37を接触させることで、該第2のスライダ37を矢印A,B方向の駆動することができる。
【0083】
第2のスライダ37に形成されたピン部37−a,37−bは、第2の絞り羽根33の穴33−a,33−bに挿入される。これにより、第2の絞り羽根33を第2のスライダ37とともに矢印A,B方向に駆動することができる。なお、第2のスライダ37はマグネットにより形成されており、第2の振動子36に磁気吸着することで、第2のスライダ37と第2の振動子36間の適切な接触圧が確保される。
【0084】
第2の振動子36及び第2のスライダ37により、第2の振動型リニアアクチュエータが構成される。
【0085】
38は絞り羽根32,33を保持するための押さえ板であり、ベース部材31の開放開口部31−aと同じ内径を有する開放開口部38−aが形成されている。また、押さえ板38には、曲げ形状部38−h,38−iが形成されている。該曲げ形状部38−h,38−iをベース部材31の突起形状部31−h,31−iに係合させることで、押さえ板38をベース部材31に取り付けることができる。
【0086】
図5Bは、組み立てられた状態の光量調節ユニット7′を斜め上方から見た図である。図5Bにおいて、押さえ板38は省略されている。
【0087】
このような構成により、第1及び第2の振動型リニアアクチュエータの駆動力を第1及び第2の絞り羽根32,33にそれぞれ伝達し、これらを互いに独立して移動させることができる。
【0088】
第1及び第2の絞り羽根32,33を互いに反対方向に移動させることで、これらにより形成される可変開口APの径を変化させて光量を調節することができる。また、第1及び第2の絞り羽根32,33を互いに同じ方向に移動させることで、可変開口(例えば、小絞り状態の開口)APを、その開口を含む面内(この後に説明する図6A〜図6Eの紙面内)で左右の異なる位置に移動させることができる。
【0089】
図6A〜図6Eのそれぞれには、図5Bに示す光量調節ユニット7′の正面図、側面図及び背面図を示している。図6Aから図6Eへと絞り羽根32,33の状態(可変開口APの状態)が以下のように変化している。
【0090】
図6Aは開放状態、図6Bは小絞り状態(小絞り開口AP′が光軸AXL上)、図6Cはクローズ状態を示す。また、図6Dは小絞り状態(小絞り開口AP′が光軸AXLの左側)、図6Eは小絞り状態(小絞り開口AP′が光軸AXLの右側)を示す。
【0091】
図6A〜図6Cが上述した光量調節状態である。一方、図6D及び図6Eは、小絞り開口AP′の中心が光軸AXLに対して左右に移動量DL,DRだけ移動した、すなわち光軸AXLを挟んだ両側に移動した瞳時分割状態である。
【0092】
本実施例でも、小絞り開口AP′が光軸AXL上から左右に移動した状態で撮像素子6を通じて得られる画像は、前述した瞳時分割AFに用いられる。
【0093】
ここで、図6Aを用いて、光量調節ユニット7′における第1及び第2の振動型リニアアクチュエータの配置について説明する。ここでは、図6Aに示すように、光量調節ユニット7′を光軸方向から見たとき、言い換えれば、光量調節ユニット7′の開口を光が通過する方向から見たときの第1及び第2の振動型アクチュエータの配置について説明する。
【0094】
なお、本実施例の光量調節ユニット7′において、第1及び第2の振動型リニアアクチュエータは、光軸AXLが通る固定開口21−aの中心Oに対して点対称な位置に配置されている。
【0095】
本実施例でも、実施例1で説明した1)〜3)と同じ配置条件を満たす。この場合、実施例1での説明のうち「絞りモータ」を、「振動子及びスライダにより構成された振動型アクチュエータ」と読み替えればよい。
【0096】
本実施例によれば、絞り羽根32,33の駆動源として振動型リニアアクチュエータを用いたことで、モータを用いる実施例1に比べて、光軸方向視及び側面視において凸形状が少なく、よりコンパクトな光量調節ユニットを実現することができる。
【0097】
また、振動型リニアアクチュエータを用いたことで、ギヤでモータ駆動力を絞り羽根に伝達する場合に比べて、動作音を小さくし、かつ瞳時分割用の開口の位置を精度良くコントロールすることができる。したがって、高精度な瞳時分割AFを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施例1であるビデオカメラの分解斜視図。
【図2】実施例1のビデオカメラの断面図。
【図3A】実施例1のビデオカメラに搭載される光量調節ユニットの分解斜視図。
【図3B】実施例1の光量調節ユニットの組み立て状態を示す斜視図。
【図4A】実施例1の光量調節ユニット(開放状態)の正面図、側面図及び背面図。
【図4B】実施例1の光量調節ユニット(小絞り状態)の正面図、側面図及び背面図。
【図4C】実施例1の光量調節ユニット(クローズ状態)の正面図、側面図及び背面図。
【図4D】実施例1の光量調節ユニット(左に瞳移動)の正面図、側面図及び背面図。
【図4E】実施例1の光量調節ユニット(右に瞳移動)の正面図、側面図及び背面図。
【図5A】本発明の実施例2であるビデオカメラに搭載される光量調節ユニットの分解斜視図。
【図5B】実施例2の光量調節ユニットの組み立て状態を示す斜視図。
【図6A】実施例2の光量調節ユニット(開放状態)の正面図、側面図及び背面図。
【図6B】実施例2の光量調節ユニット(小絞り状態)の正面図、側面図及び背面図。
【図6C】実施例2の光量調節ユニット(クローズ状態)の正面図、側面図及び背面図。
【図6D】実施例2の光量調節ユニット(左に瞳移動)の正面図、側面図及び背面図。
【図6E】実施例2の光量調節ユニット(右に瞳移動)の正面図、側面図及び背面図。
【図7】実施例1のビデオカメラの電気回路構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0099】
L1 第1レンズユニット
L2 第2レンズユニット
L3 第3レンズユニット
L4 第4レンズユニット
1 前玉鏡筒
2 ズーム移動枠
3 固定鏡筒
4 フォーカス移動枠
6 撮像素子
7,7′光量調節ユニット
7a,7b,22,23,32,33 絞り羽根
7c,7d,24,26 絞りモータ
14 ズームモータ
15 フォーカスモータ
21 ベース部材
25,27 レバー部材
34,36 振動子
35,37 スライダ
35−a、35−b 連動ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通過させる固定開口を有する基板と、
光を通過させる可変開口を形成する第1及び第2の遮光部材と、
前記第1及び第2の遮光部材を前記基板に対してそれぞれ移動させる第1及び第2のアクチュエータとを有し、
光通過方向視において、前記第1及び第2のアクチュエータのうち少なくとも一部が、前記固定開口の中心から該固定開口の直径以下の範囲内に配置されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記光通過方向視において、前記第1及び第2のアクチュエータは、前記固定開口の中心から該固定開口の直径の2倍の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記光通過方向視において、前記第1及び第2のアクチュエータは、前記固定開口を挟んだ両側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記光通過方向視において、前記第1及び第2のアクチュエータは、前記可変開口が開放状態になるように移動した前記第1及び第2の遮光部材に重なる領域に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のアクチュエータはそれぞれ、電気−機械エネルギ変換により振動が励起される振動部材と、該振動部材に接触する接触部材とを有する振動型アクチュエータであり、
前記振動部材及び前記接触部材のうち一方が前記基板又は該基板と一体の部材に取り付けられ、他方が前記遮光部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光量調節装置。
【請求項6】
第1及び第2のアクチュエータは、前記可変開口の中心が前記固定開口の中心を挟んだ一方の側と他方の側とに移動するように前記第1及び第2の遮光部材を移動させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の光学機器。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載の光量調節装置を有することを特徴とする光学機器。
【請求項8】
請求項6に記載の光量調節装置を備え、
前記可変開口の中心が前記固定開口の中心を挟んだ一方の側と他方の側とに移動した状態でそれぞれ被写体画像を取得し、該被写体画像を用いてフォーカス制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の光学機器。


【図3A】
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【図5A】
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【図1】
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【図2】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−122712(P2008−122712A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307057(P2006−307057)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】