説明

光電変換素子

【課題】電流−電圧特性が正側と負側で確実に非対称になり、障壁電圧を向上させるダイオード特性を示し、更には発電電力を増大できる光電変換素子を提供する。
【解決手段】光電変換素子1の半導体層11に導電層20を積層し、その上にランダムな周期の周期構造33を多数含む金属ナノ構造30を積層する。一対の電極41,42を導電層20上に互いに離して設ける。一対の電極41,42のうち第1電極41と導電層20との間に極性確定層50を介在させる。好ましくは、極性確定層50を、厚さ1nm未満の絶縁体にて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォトダイオードや太陽電池等に適用される光電変換素子に関し、特にショットキー効果と表面プラズモン効果とを相乗的に利用した光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、表面プラズモン共鳴を利用した光電変換素子が記載されている。素子の金属層の表面に一様な周期の凹凸構造が形成されている。凹凸構造上に半導体層が積層され、更にその上に透明電極が積層されている。金属層の裏面には他の電極が積層されている。素子に光が入射すると、金属層の凹凸構造側の表面の電子が入射光と共鳴して振動し、電流が発生する。
特許文献2に記載の光電変換素子では、表面に2種以上の微粒子を設け、少なくとも2つの波長帯域で表面プラズモン共鳴を起こすようにしている。
【0003】
また、n型Siに厚さ数μm以上のAuを積層したショットキー型の光センサーによって可視光を検出できることが1960年代から知られている。
非特許文献1には、n型SiにCoSiを積層した光センサーによって1μm〜2μmの近赤外光を検出できることが記載されている。
非特許文献2には、p型SiGeにCoSiを積層した光センサーによって1μm〜5μmの赤外光を検出できることが記載されている。
非特許文献3には、p型SiにPtを積層した光センサーによって1μm〜6μmの赤外光を検出できることが記載されている。
非特許文献4には、SiにIrを積層した光センサーによって10μm以下の光を検出できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−073794号公報
【特許文献2】特開2010−021189号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Roca,Elisenda,et al.,Proceedings of SPIE−The International Society for Optical Engineering 2525(2),456(1995)
【非特許文献2】S.Kolondinski,et al.,Proceedings of SPIE−The International Society for Optical Engineering2554,175(1995)
【非特許文献3】J.M.Mooney and J.Silverman,IEEE Trans.Electron DevicesED―32,33―39(1985)
【非特許文献4】B−Y.Tsaur,M.M.Weeks,R.Trubiano and P.W.Pellegrini,IEEE Electron Device Left.9,650−653(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、可視光から赤外光まで及ぶ広帯域に感応する光電変換素子は知られていない。また、何れの光電変換素子においても、キャリアが素子の積層方向(厚さ方向)に流れるものであるため薄型化が容易でない。
【0007】
そこで、半導体層に導電層を積層し、この導電層上に一対の電極を互いに離して配置し、かつ電極間の導電層表面にプラズモン共鳴構造を配置することが考えられる。しかし、一対の電極のうち、どれがアノードになりどれがカソードになるかが不確定であり、電流の向きが定まらない。製造工程で偶発的又は不可避的に混入した汚染物や外乱によって、各電極がアノードにもカソードにもなり得、電流−電圧特性が正側と負側で非対称になる保証がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明に係る光電変換素子は、
n型又はp型の半導体層と、
前記半導体層に積層された導電層と、
前記導電層又は前記半導体層に設けられた第1電極と、
前記第1電極と前記導電層との間に介在された極性確定層と、
前記導電層に設けられた第2電極と、
前記導電層に積層された多数の周期構造を含む金属ナノ構造と、
を備え、前記各周期構造が前記積層の方向に突出する複数の第1凸部からなり、前記第1凸部の配置間隔が前記周期構造に応じて異なることを特徴とする。
【0009】
上記光電変換素子に光が入射すると、半導体層と導電層とのショットキー接合部において光電変換によりフォトキャリアが生成される。かつ、上記ショットキー接合部の近傍の金属ナノ構造によって光電変換の感度を高めることができる。更には、金属ナノ構造によって光電変換可能な入射光の波長領域を広くすることができる。
前記半導体層がn型半導体である場合、フォトキャリアの電子が空乏層の電界によって半導体層の側へ移動する。これに伴って、前記第2電極から導電層に電子が流れ込む。第2電極と導電層との間では電子(電流)がスムーズに流れ得る。導電層に沿って電子が前記第1電極側へ流れる。したがって、前記第1電極がカソードになる。前記第2電極がアノードになる。
前記半導体層がp型半導体である場合、フォトキャリアの正孔が空乏層の電界によって半導体層の側へ移動する。これに伴って、前記第2電極から導電層に正孔が流れ込む。導電層に沿って正孔が前記第1電極の側へ流れる。したがって、前記第1電極がアノードになる。前記第2電極がカソードになる。
よって、アノードになる電極とカソードになる電極を確定でき、光誘起電流の向きを制御できる。したがって、電流−電圧特性が正側と負側で確実に非対称になり、障壁電圧を向上させるダイオード特性が得られる。
更に、キャリアが前記導電層における前記第1電極と対向する部分に蓄積されることにより、耐電圧性が高まり、光照射時の電流−電圧特性が順方向バイアス側(正側)にシフトする。したがって、光電変換素子の発電電力を増大させることができる。
【0010】
前記極性確定層が、厚さ1nm未満の絶縁体からなる障壁層にて構成されていることが好ましい。これによって、障壁層を挟んで前記導電層と前記第1電極とがコンデンサを構成する。したがって、導電層における前記第1電極と対向する部分にキャリアが蓄積される。前記半導体層がn型半導体である場合は電子が蓄積される。前記半導体層がp型半導体である場合は正孔が蓄積される。これによって、アノードになる電極とカソードになる電極を確実に定めることができる。前記絶縁体の厚さを1nm未満にすることによって、キャリアがトンネル効果等によって障壁層を確実に通過でき、光誘起電流を確実に取り出すことができる。
【0011】
前記極性確定層が、前記半導体層から一体に突出された凸層であり、前記凸層が、前記導電層の第1電極側の端面とショットキー接触し、かつ前記第1電極とオーミック接触していることが好ましい。これによって、凸層と導電層とのショットキー接合部においてキャリアが凸層側ひいては第1電極へ向けて流れるようにできる。よって、アノードになる電極とカソードになる電極を確実に定めることができる。
【0012】
一対の電極が素子の同じ面に配置されるから、素子を薄型化できる。
【0013】
前記導電層を構成する金属成分として例えばCo、Fe、W、Ni、Al、又はTiが挙げられる。これら列記の金属元素は、融点が比較的高く、高温下における機械的性質が優れている。前記導電層は、金属でもよく、金属と半導体の混合物ないしは合金でもよい。金属と半導体の混合物ないしは合金として、例えば金属シリサイドが挙げられる。前記半導体層がシリコンからなる場合、前記導電層が、前記金属成分と前記半導体層の表層部分とが相互に拡散してなる金属シリサイドであってもよい。上記拡散は、例えばアニール処理によって行なうことができる。上記列記の金属(Co、Fe、W、Ni、Al、Ti)はシリサイド化に適している。
【0014】
前記金属ナノ構造に光が入射すると、プラズモン共鳴が起き、これにより、光誘起電場の増大に寄与する。
前記金属ナノ構造は、ナノサイズの金属微粒子、金属板、金属ウィスカー(またはロッド)の集合体であることが好ましい。
前記金属ナノ構造を構成する金属としては、Au、Ag、Pt、Cu、又はPdを用いることが好ましい。これら列記の金属元素は、化学的安定性が比較的高く、素子製造過程における加熱等の影響下でも合金化しにくく、Si等の半導体と化合しにくい。そのため、表面プラズモンを確実に形成できる。
【0015】
前記金属ナノ構造は、前記導電層における前記一対の電極どうし間の部分に設けられていることが好ましく、前記一対の電極どうし間の部分に広く分布していることがより好ましい。
【0016】
前記金属ナノ構造は、例えば次のようにして形成する。前記金属ナノ構造となるべき金属原料を前記導電層上に配置し、アニール処理する。アニール処理の温度条件は、図14に示す様に、400℃〜800℃程度であり、600℃程度が好ましい。前記金属原料の形状ないし性状は、特に限定が無く、薄膜状、小片状、小塊状、粒状、粉体状、コロイド状、ファイバー状、ワイヤー状、ドット状の何れでもよく、その他の形状ないし性状でもよい。前記アニール処理によって、前記金属原料の微粒子が前記導電層の表面に沿って拡散する。拡散によって前記金属原料の微粒子が多段ないしは多重に枝分かれし、例えばフラクタル構造の集合体になる。これによって、前記金属ナノ構造を容易に形成できる。前記金属ナノ構造の表面には、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸が形成されている。前記金属ナノ構造の表面は、積層方向(厚さ方向)に突出する多数の凸部を含み、例えばクラスター状になる。
【0017】
前記電極を前記金属ナノ構造の金属原料として兼用してもよい。前記電極を構成する金属をアニール処理によって前記電極の周辺にクラスター状又はフラクタル状になるよう拡散させてもよい。そうすると、前記電極の近傍に前記金属ナノ構造を形成できる。この場合、前記電極と前記金属ナノ構造とは、互いに同一の金属成分を含む。
【0018】
前記金属ナノ構造において、前記周期構造がランダムな周期を有していることが好ましい。前記周期構造の周期が変化していることが好ましい。すなわち、前記第1凸部の配置間隔が周期構造に応じて異なっていることが好ましい。これにより、周期構造に応じて異なる波長の光に感応するようにできる。したがって、全体として金属ナノ構造が感応可能な波長域を広くすることができる。よって、可視光領域から赤外光領域に及ぶ広帯域に対応可能な光電変換素子を提供できる。
【0019】
第1凸部の配置間隔(周期)は、入射光の波長λの約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、波長λの0.1倍程度がより好ましい。又は第1凸部の配置間隔(周期)は、半導体層と導電層とで作るショットキー素子の感応波長の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましい。前記周期構造は、当該周期構造を構成する第1凸部の周期の約1倍〜10倍程度(特に上記周期の10倍程度)の波長λを有する入射光に対し敏感に感応してプラズモン共鳴を起こし、光誘起電場の増幅に寄与する。半導体層がn型の素子の周期構造の周期(第1凸部の配置間隔)は、半導体層がp型の素子の周期構造の周期(第1凸部の配置間隔)より小さいことが好ましい。半導体層がn型の素子においては、第1凸部の配置間隔(周期)は、約100nm以下であることがより好ましい。これにより、波長が約1μm以下の赤外光域〜可視光域の光に対し良好な感度を持つことができる。半導体層がp型の素子においては、第1凸部の配置間隔(周期)は、約150nm以下であることがより好ましい。これにより、波長が約1μm〜4μmの赤外光に対し良好な感度を持つことができる。
第1凸部の突出高さは、約10nm〜20nm程度であることが好ましい。
【0020】
前記周期構造の少なくとも1つが、ある波長範囲内(好ましくは可視光域から赤外光域)の任意の波長の約0.1倍〜1倍の大きさ(特に0.1倍程度の大きさ)の配置間隔を有することが好ましい。これによって、入射光が上記波長範囲内に含まれていれば、金属ナノ構造の少なくとも1つの周期構造がその入射光に対し感度を持つようにできる。
【0021】
前記金属ナノ構造が、前記第1凸部より大きく突出する複数の第2凸部を更に含み、これら第2凸部が互いに分散し、かつ各第2凸部が、前記周期構造の何れか1つと重なって又は近接して配置されていることが好ましい。
前記金属ナノ構造に光が入射すると、前記第2凸部の周囲に近接場光が発生する。この近接場光と上記周期構造によるプラズモン共鳴との相乗効果によって、光誘起電場を感度良く増幅させて出力できる(K.Kobayashi,et.al.,Progress in Nano−Electro−Optecs I.ed.M.Ohtsu,p.119(Sptinger−Verlag,Berlin,2003)参照)。入射光が微弱であっても、光起電力を高感度に発生させることができる。
【0022】
前記第2凸部の突出高さは、約50nm〜200nm程度であることが好ましい。
前記第2凸部の分散間隔(隣り合う第2凸部どうしの離間距離)は、入射光の波長より大きいことが好ましく、半導体層と導電層とで作るショットキー素子の感応波長より大きいことが好ましい。
半導体層がn型である素子の第2凸部の分散間隔が、半導体層がp型である素子の第2凸部の分散間隔より小さいことが好ましい。例えば、半導体層がn型の場合、前記第2凸部の分散間隔は、1μm以上であることが好ましく、約2μm〜3μm程度であることがより好ましい。半導体層がp型の場合、前記第2凸部の分散間隔は、約3μm〜5μm程度であることが好ましい。これにより、隣り合う第2凸部どうしが干渉して電場を弱めてしまうのを回避できる。
前記第2凸部の分散間隔の上限は、n型の場合、3μm〜5μm程度であることが好ましく、p型の場合、5μm〜6μm程度であることが好ましい。これによって、第2凸部の存在密度を確保でき、第2凸部との相互作用を生じ得る周期構造の数を確保でき、感応帯域を確実に広くできる。
【0023】
前記金属ナノ構造に炭素化合物等の絶縁体が混在し、M−I−M構造が形成されていてもよい。
【0024】
前記光電変換素子の表面に紫外域又は赤外域に感度を持つ半導体からなるナノ構造体を更に設けてもよい。特に、前記半導体層がn型半導体である場合、前記光電変換素子の表面に、紫外域に感度を持つ半導体からなるナノ構造体を設けることが好ましい。紫外域に感度を持つ半導体とは、波長が例えば0.4μm以下の紫外光が照射されるとキャリアが励起される性質を有する半導体を言い、例えばn型半導体である酸化亜鉛(ZnO)が挙げられ、その他、n型の窒化ガリウム(n−GaN)等が挙げられる。前記半導体層がp型半導体である場合、前記光電変換素子の表面に、赤外域に感度を持つ半導体からなるナノ構造体を設けることが好ましい。赤外域に感度を持つ半導体とは、波長が例えば0.7μm以上の赤外光が照射されるとキャリアが励起される性質を有する半導体を言い、例えばp型の窒化ガリウム(p−GaN)や炭素等が挙げられる。ナノ構造体として、例えばナノワイヤ、ナノチューブ、ナノニードル、ナノロッド等が挙げられる。前記ナノ構造体によって、光電変換の感度を高めることができる。前記ナノ構造体が紫外域に感度を持つ半導体からなる場合、紫外域の入射光に対する光電変換感度を高めることができる。前記ナノ構造体が赤外域に感度を持つ半導体からなる場合、赤外域の入射光に対する光電変換感度を高めることができる。ナノ構造体をナノワイヤ、ナノチューブ等にて構成することにより、量子効率を高めることができ、ひいては光電変換素子の感度を確実に高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光電変換素子のアノードになる電極とカソードになる電極を確実に決定でき、非対称のダイオード特性を得ることができる。更には、光電変換素子の発電電力を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電変換素子の概略構造を示す断面図である。
【図2】上記光電変換素子の等価回路図である。
【図3】上記光電変換素子の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光電変換素子の概略構造を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る光電変換素子の概略構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る光電変換素子の概略構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る光電変換素子の概略構造を示す断面図である。
【図8(a)】実施例1における金属ナノ構造の表面の一箇所をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した画像である。
【図8(b)】実施例1における金属ナノ構造の表面の、図8(a)とは異なる箇所をSEMで観察した画像である。
【図9】実施例1における金属ナノ構造の表面構造をAFM(原子間力顕微鏡)にて観察した立体画像である。
【図10】図9の立体画像の解説図である。
【図11】波長感度特性グラフ(兵庫県立大理学部 高木芳弘 教授の協力)である。
【図12】応答速度特性グラフ(兵庫県立大理学部 高木芳弘 教授の協力)である。
【図13】波長−太陽放射スペクトルのグラフである。
【図14】アニーリング温度特性グラフである。
【図15】表面周期構造のフーリエ分解スペクトル(模式図)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電変換素子1を示したものである。光電変換素子1は、半導体層11と、導電層20と、金属ナノ構造30と、一対の電極41,42を備えている。半導体層11上に導電層20が積層されている。導電層20上に金属ナノ構造30が積層されている。かつ、導電層20に一対の電極41,42が設けられている。第1電極41と導電層20の間に極性確定層50が介在されている。図2は、光電変換素子1の等価回路図である。光電変換素子1は、ダイオードとコンデンサ及びバイアスによりリーク電流が変化する可変抵抗を含む構造になっている。
以下、光電変換素子1の構造を詳述する。
【0028】
図1に示すように、半導体層11は、シリコン(Si)にて構成されているが、これに限られず、Ge、GaAs等の他の半導体にて構成されていてもよい。半導体層11には、P(リン)等のn型不純物がドープされている。半導体層11は、n型半導体を構成している。
【0029】
図1に示すように、半導体層11は、光電変換素子1の基板を兼ねている。半導体層11は、シリコン基板にて構成されている。シリコン基板にn型不純物がドープされている。シリコン基板として、シリコンウェハ等を用いることができる。シリコン基板によって、光電変換素子1の保形性及び機械的剛性が確保されている。基板が半導体層11とは別途に設けられていてもよい。例えば、ガラスや樹脂フィルムからなる基板にn型半導体層11が被膜されていてもよい。上記別途の基板の表面にCVD等によってn型半導体層11を成膜してもよい。
【0030】
導電層20は、半導体層11の表面(図1において上面)の全体を覆っている。導電層20は、金属シリサイドにて構成され、導電性を有している。半導体層11の表層のシリコンが自己組織化し、導電層12のシリコン成分を構成している。導電層20を構成する金属成分としては、Co、Fe、W、Ni、Al、Ti等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ここでは、導電層20を構成する金属成分として、Coが用いられている。導電層20がCoSixにて構成され、好ましくはCoSiにて構成されている。これにより、導電層20と半導体層11との間に良好なショットキー界面が形成されている。導電層20が、金属成分のみにて構成されていてもよい。導電層20の厚さは、数nm〜数十nm程度であり、好ましくは数nm程度である。
図面の導電層20の厚さは、半導体層11、電極41,42、金属ナノ構造30等の厚さに対して誇張されている。
【0031】
導電層20の表面(図1において上面)に金属ナノ構造30が設けられている。金属ナノ構造30は、導電層20の表面に広く分布している。ここでは、金属ナノ構造30は、導電層20の表面における一対の電極41,42どうしの間の部分(以下「電極間部分」と称す)に配置されており、より好ましくは上記電極間部分の全体に分布している。金属ナノ構造30は、導電層20の一部分にだけ積層されていてもよい。例えば、金属ナノ構造30が、導電層20の電極41又は42の近傍部分にだけ設けられていてもよい。
【0032】
金属ナノ構造30は、Au、Ag、Pt、Cu、Pd等の金属を主成分として構成されている。ここでは、金属ナノ構造30を構成する金属として、Auが用いられている。金属ナノ構造30は、Auリッチの構造物である。金属ナノ構造30を構成する金属に炭素化合物等の絶縁体が混在していてもよく、金属ナノ構造30が金属−絶縁体−金属(M−I−M:metal−insulator−metal)構造になっていてもよい。
【0033】
金属ナノ構造30の表面には、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸が形成されている。詳述すると、金属ナノ構造30は、Auのナノ微粒子がクラスター状又はフラクタル状に集合した構造になっている(図9及び図10参照)。金属ナノ構造30のAuナノ微粒子の集合体は、素子1の厚さ方向ないしは積層方向(上方)に突出する多数の凸部を含む。これら凸部がクラスター状に集合している。或いは、Auナノ粒子の集合体が多重に枝分かれするよう拡散したフラクタル構造になっている。金属ナノ構造30は、多数の第1凸部31と、第2凸部32を含む。上記多数の凸部の一部が第1凸部31を構成し、他の一部が第2凸部32を構成している。
【0034】
金属ナノ構造30は、少なくとも1つの周期構造30を有し、好ましくは複数ないしは多数ないしは無数の周期構造33を有している。金属ナノ構造30の上記多数の凸部における隣り合う複数の凸部31,31…によって1つの周期構造33が構成されている。各周期構造33を構成する第1凸部31,31…どうしは、素子1の面方向(積層方向と直交する方向)に沿ってある間隔(周期)で配列されている。周期構造33に応じて第1凸部31の配置間隔(周期)が異なっている。これら周期構造33における第1凸部31の配置間隔(周期)は、数十nmから数μm程度が好ましく、約40nm〜100nm程度がより好ましい。この配置間隔(周期)は、入射光Lの波長の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましく、約0.1倍程度がより好ましい。更に、上記配置間隔(周期)は、n型半導体層10と導電層40とからなるショットキー素子の感応波長(可視光域から赤外光域)の約0.1倍〜1倍程度であることが好ましい。金属ナノ構造30は、上記ショットキー素子の感応域内の任意の波長の約0.1倍〜1倍の大きさの配置間隔を有する周期構造を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0035】
更に、金属ナノ構造30には、複数の第2凸部32が分散して配置されている。各第2凸部32は、何れかの周期構造33と重なるように配置されている。又は、各第2凸部32は、何れかの周期構造33に近接して配置されている。第2凸部32は、第1凸部31より突出高さが大きく、第1凸部31より尖り度(突出高さと底部の幅の比)が大きい。第2凸部32の突出高さは、約50nm〜200nm程度であることが好ましい。第2凸部32どうしの分散間隔は、入射光の波長より大きいことが好ましく、例えば1μm以上であることが好ましく、約2μm〜3μm程度であることが好ましい。第2凸部32どうしの分散間隔の上限は、3μm〜5μm程度であることが好ましい。
【0036】
一対の電極41,42は、導電層20上の互いに離れた位置に配置されている。ここでは、第1電極41が、導電層20の上面の一端部(図1において右)に配置されている。第2電極42が、導電層20の上面の他端部(図1において左)に配置されている。電極41,42の配置は、上記に限られず、例えば電極41,42の一方が素子1の中央部に配置され、他方が素子1の四隅(周辺部)に配置されていてもよい。
【0037】
電極41,42は、Au、Ag、Pt、Cu、Pd等の金属にて構成されている。ここでは、電極41,42を構成する金属として、Auが用いられている。したがって、電極41,42は、金属ナノ構造30を構成する金属成分と同じ金属成分にて構成されている。
金属ナノ構造30を構成する金属成分と電極41,42を構成する金属成分とが、互いに異なっていてもよい。2つの電極41,42が互いに異なる金属成分にて構成されていてもよい。
【0038】
第1電極41と導電層20との間には、極性確定層として障壁層50が設けられている。障壁層50は、アルミナ、SiO、SiN、炭素化合物(例えば樹脂)等の絶縁体にて構成されている。障壁層50の厚さは、トンネル効果を生じ得る程度に十分小さい。例えば、障壁層50の厚さは、オングストロームオーダーすなわち1nm未満である。図面において、障壁層50の厚さは、導電層20や金属ナノ構造30等の厚さに対し誇張されている。第1電極41と導電層20とが、障壁層50を挟んで対峙することによって、コンデンサを構成している。
【0039】
第2電極42と導電層20は、直接的に接触している。好ましくは、第2電極42は、導電層20にオーミック接触している。
【0040】
光電変換素子1の製造方法を説明する。
[導電層原料被膜工程]
Pドープのn型シリコン基板11を用意する。基板11上に導電層20の原料成分であるCoを成膜する。Co成膜方法として、スパッタリングや蒸着等のPVD(Physical Vapour Deposition)を採用できる。PVDに限られず、スピンコート等の他の成膜方法にてCoを被膜してもよい。
【0041】
[障壁配置工程]
上記Co膜上の第1電極41が配置されるべき位置に、オングストロームオーダーの厚さの絶縁体(例えばアルミナ)からなる障壁層50を配置する。障壁層50の配置は、CVD等の種々の成膜方法にて行なうことができる。
【0042】
[電極配置工程]
上記障壁層50上に第1電極41となるAuを設ける。また、Co膜上の第2電極42が配置されるべき位置に第2電極42となるAuを設ける。電極41,42用のAuの配置は、スパッタリング、蒸着等の種々の成膜方法にて行なうことができる。
【0043】
[金属ナノ構造原料配置工程]
更に、上記Co膜上の電極41,42間の部分に金属ナノ構造30となる金属原料(Au)を配置する。上記金属原料(Au)の形状ないし性状は、特に限定が無く、薄膜状、小片状、小塊状、粒状、粉体状、コロイド状、ファイバー状、ワイヤー状、ドット状等の何れでもよく、その他の形状ないし性状でもよい。上記金属原料(Au)が薄膜状である場合、例えばスパッタリングや蒸着等のPVDによって成膜することができる。上記電極41,42となるAuの一部を、後記の拡散工程において電極間部分に拡散させて金属ナノ構造30とすることもでき、その場合、金属ナノ構造原料配置工程を省略してもよい。
【0044】
[拡散工程]
次に、基板11をアニール処理槽に入れ、アニール処理を行なう。アニール処理の温度条件は、図14に示される様に、400℃〜800℃程度が好ましく、600℃程度がより好ましい。アニール処理は、可及的に100%の不活性ガス雰囲気にて行なう。アニール処理用の不活性ガスとして、He、Ar、Ne等の希ガスを用いることができ、その他、Nを用いてもよい。アニール処理の圧力条件は、大気圧近傍であり、例えば大気圧より数Pa程度低圧である。
【0045】
上記アニール処理によって、基板11の表面部分を構成するSiにCoが拡散する。これにより、Si基板11の表面部分を自己組織化してなるCoSixの導電層20が形成され、半導体層11あるいは12と導電層20を確実にショットキー接合させ、同時に、導電層20のシリサイド形成、並びに電極42と導電層20のオーミック形成をさせることができる。
【0046】
更に、上記アニール処理によって、導電層20上に配置したAuの微粒子が、導電層20の表面に沿ってクラスター又はフラクタルを形成するよう拡散する。すなわち、Au微粒子が多重に枝分かれするよう拡散し、フラクタル構造の集合体になる。集合体の表面は、サブミクロンないしはナノオーダーの凹凸を有し、クラスター状になる。これにより、金属ナノ構造30を自然形成できる。
拡散工程は、アニール処理以外の方法で行なってもよい。
【0047】
上記光電変換素子1の動作を説明する。
光電変換素子1の一端部(図1において右)では、導電層20と第1電極41が障壁層50を挟んでコンデンサを構成する。他端部(図1において左)の第2電極42と導電層20との間では電流がスムーズに流れ得る。
上記の光電変換素子1に可視領域〜赤外領域の波長(具体的には波長約0.4μm〜2μm程度)の光が入射すると、n−Si層11におけるCoSix層20とのショットキー接合部で光電変換によりフォトキャリアが発生する。さらに、上記ショットキー接合部の近傍の金属ナノ構造30によって、光電変換の感度を高めることができる。かつ、金属ナノ構造30によって、光電変換可能な光の波長域を拡大できる。
【0048】
上記ショットキー接合部で生成されたフォトキャリアの電子は、空乏層の電界によってn−Si層11側へ移動する。これに伴って、第2電極42から導電層20に電子が流れ込む。導電層20に沿って電子が第1電極41側へ流れる。導電層20における第1電極41と対向する部分には電子が蓄積される。この電子は、トンネル効果により障壁層50を潜り抜け、第1電極41に移動することができる。これにより、光誘起電流を取り出すことができる。したがって、第1電極41がカソードになる。第2電極42がアノードになる。このようにして、アノードになる電極42とカソードになる電極41を確定でき、光誘起電流の向きを制御できる。よって、図3に示すように、電流−電圧特性を正側と負側で確実に非対称にでき、障壁電圧を向上させるダイオード特性を得ることができる。
【0049】
更に、導電層20における第1電極41と対向する部分に電子が蓄積されるため、耐電圧性が高まり、図3の実線に示すように、光照射時の電圧−電流特性が順バイアス側(正側)にシフトする。これにより、図3において斜線部の面積に対応する出力電力を大きくすることができる。
【0050】
光誘起電場が素子1の表面に沿って形成されるため、キャリアが素子1の表面に沿って加速され、化合物半導体レベルの高速で移動できる。したがって、図11及び図12に示される様に、超高速イメージングセンサーや、GHz〜THz帯の光変調波に対応可能な光検出センサーを実現できる。光電変換素子1は、薄膜型であるため、CCDセンサアレーとして用いることもできる。
【0051】
金属ナノ構造30の作用を詳述する。金属ナノ構造30を構成するAuナノ微粒子の表面にはプラズモンが局在する。この表面プラズモンと入射光が共鳴し、大きな電場が発生する。金属ナノ構造30の周期構造33は、その周期(第1凸部31の配置間隔)に応じた波長の入射光に対する光電変換の感度を高める。すなわち、周期構造33は、その周期の約1倍〜10倍程度、特に約10倍の波長の入射光に対し敏感に感応してプラズモン共鳴を起こす。第1凸部31の周期は周期構造33に応じて異なるから、金属ナノ構造30が感応可能な波長域を広くすることができる。更に、第2凸部32の周囲に近接場光が発生する。この近接場光と上記周期構造33によるプラズモン共鳴との相乗効果によって、大きな光誘起電場を発生させることができる。これによって、可視光領域から赤外光領域に及ぶ広帯域の光感応する光電変換素子1を提供できる。図11に示されるグラフに示される様に、入射光が微弱であっても、光起電力を高感度に発生させることができる。第2凸部32の分散間隔を入射光の波長(可視光域〜赤外光域)より大きくし、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm〜3μmとすることによって、隣接する第2凸部32,32どうしが干渉して電場を弱めるのを回避できる。第2凸部32の分散間隔の上限を3μm〜5μmとすることによって、第2凸部32の存在密度を高く維持でき、第2凸部32との相互作用を生じ得る周期構造33の数を確保でき、感応帯域を確実に広くできる。よって、可視光領域から赤外光領域に及ぶ広帯域に対応可能な光電変換素子1を提供できる。
【0052】
従って、光電変換素子1を光検出センサーとして用いる場合、優れた感度特性を有し、かつ広帯域の光を検出できる。
光電変換素子1を太陽電池として用いる場合、幅広い帯域の太陽光を光電変換して電力に利用できる。図13に示される様に、晴天時はもちろん、曇天時においても十分に大きな電力を得ることができる。更に、日没後においても、大気中に散乱する赤外光を光電変換して電力を得ることができる。赤外光を吸収することにより赤外光の熱変換を防止でき、地球温暖化対策の手段としても期待できる。
一対の電極41,42が素子1の同じ面(上面)に配置されているため、光電変換素子1を薄型化できる。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する内容に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態に係る光電変換素子1Aは、第1実施形態のn型半導体層11に代えて、p型半導体層12を備えている。p型半導体層12は、例えばB(ボロン)等のp型不純物がドープされたp型シリコンにて構成されている。p型半導体層12が、基板を兼ねている点等は、第1実施形態と同様である。
【0054】
p型素子1Aの周期構造33における第1凸部31の配置間隔(周期)は、n型素子1のそれよりもやや大きいことが好ましく、波長の1/10程度に相当する、例えば約60nm〜150nm程度がより好ましい。p型素子1Aの周期構造33における第2凸部32の分散間隔は、n型素子1のそれよりもやや大きいことが好ましく、例えば約3μm〜5μm程度であることが好ましく、上限は5μm〜6μm程度であることが好ましい。
【0055】
p型の光電変換素子1Aは、n型の光電変換素子1よりも長波長の赤外光領域(具体的には波長約1μm〜4μm程度)に感度を持つ。この感度帯の光が光電変換素子1Aに入射すると、p−Si層12におけるCoSix層20とのショットキー接合部で光電変換によりフォトキャリアが発生する。このフォトキャリアのうち正孔が空乏層の電界によってp−Si層12側へ移動する。これに伴って、第2電極42から導電層20に正孔が流れ込む。導電層20に沿って正孔が第1電極41側へ流れる。導電層20における第1電極41と対向する部分には正孔が蓄積される。この正孔は、トンネル効果により障壁層50を潜り抜け、第1電極41に移動することができる。これにより、光誘起電流を取り出すことができる。したがって、第1電極41がアノードになる。第2電極がカソードになる。このようにして、アノードになる電極41とカソードになる電極42を確定でき、光誘起電流の向きを制御できる。よって、電流−電圧特性を正側と負側で確実に非対称にでき、障壁電圧を向上させるダイオード特性を得ることができる。
【0056】
図5は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態は、n型半導体層11を有する光電変換素子1(第1実施形態)の変形例に係る。n型半導体層11を有する光電変換素子1の表面(図5において上面)にn型半導体ナノ構造体61が設けられている。n型半導体ナノ構造体61は、酸化亜鉛のナノワイヤーにて構成している。この場合の酸化亜鉛は、n型半導体である。ナノ構造体61は、光電変換素子1の表面に突き立てられるように設けられている。ここでは、ナノ構造体61は、金属ナノ構造体30から突出されているが、金属ナノ構造体30が導電層20の一部分だけに被膜されている場合、金属ナノ構造体30が被膜されていない部分については、ナノ構造体61が導電層20から突出されていてもよい。ナノワイヤーは、CVD、PVD、ゾルゲル法等によって形成できる。ナノ構造体61は、ナノワイヤーに限られず、ナノニードルでもよく、ナノチューブでもよく、ナノロッドでもよい。
【0057】
酸化亜鉛ナノ構造体61によって、比較的短い波長(紫外光〜可視光)の入射光に対する光電変換感度を高めることができる。具体的には、約0.4μm未満の紫外光域から1μm程度の可視光域までの光に対し、感度を向上させることができる。ナノ構造体61をナノワイヤーにて構成することによって量子効率を高めることができ、ひいては光電変換素子1の感度を確実に高めることができる。
【0058】
図6は、本発明の第4実施形態を示したものである。第4実施形態は、p型半導体層12を有する光電変換素子1A(第2実施形態)の変形例に係る。p型半導体層12を有する光電変換素子1Aの表面(図6において上面)にp型半導体ナノ構造体62が設けられている。p型半導体ナノ構造体62は、カーボンナノチューブにて構成され、光電変換素子1Aの表面に突き立てられるように設けられている。ここでは、p型半導体ナノ構造体62は、金属ナノ構造体30から突出されているが、金属ナノ構造体30が導電層20の一部分だけに被膜されている場合、金属ナノ構造体30が被膜されていない部分については、ナノ構造体62が導電層20から突出されていてもよい。カーボンナノチューブは、CVD、PVD、ゾルゲル法等によって形成できる。ナノ構造体62は、ナノチューブに限られず、ナノワイヤーでもよく、ナノニードルでもよく、ナノロッドでもよい。
【0059】
炭素ナノ構造体62によって、赤外光に対する光電変換感度を高めることができる。具体的には、2μm程度から約4μm強の赤外光に対し、感度を向上させることができる。ナノ構造体62をカーボンナノチューブにて構成することによって量子効率を高めることができ、ひいては光電変換素子1Aの感度を確実に高めることができる。
【0060】
図7は、本発明の第5実施形態を示したものである。第5実施形態は、極性確定層の変形例に係る。n型光電変換素子1には、極性確定層として、既述の障壁層50に代えて凸層51が設けられている。凸層51は、n型半導体層11と一体に形成されている。半導体層11の表面(上面)の第1電極41寄りの部分が突出され、この突出部が凸層51を構成している。凸層51の突出高さは、導電層20の厚さと同程度であり、例えば約1nm〜10nm程度であり、好ましくは数nm程度である。凸層51の幅寸法(図7において左右の寸法)は、例えば0.数mm〜数mmであり、好ましくは約1mm程度である。図7において、凸層51の突出高さ(上下寸法)は、幅(左右寸法)に対して誇張されている。
【0061】
凸層51の一側面(図7において左側面)が、導電層20の端面とショットキー接触している。凸層51の他側面(図7において右側面)が、第1電極41とオーミック接触している。金属ナノ構造30が、導電層20から凸層51の上面に跨るように形成されている。金属ナノ構造30は、凸層51の上面だけに設けられていてもよい。或いは、金属ナノ構造30が、導電層20の上面にだけ設けられていてもよい。
【0062】
第5実施形態のn型光電変換素子1に光が入射すると、導電層20の底部と半導体層11との間のショットキー接合部でフォトキャリアが生成されるのに加えて、導電層20の右端部と凸層51とのショットキー接触部においてもフォトキャリアが生成される。このキャリアの電子が、導電層20と凸層51との間の空乏層電界によって凸層51側ひいては第1電極41へ流れる。したがって、第1電極41を確実にカソードにすることができる。第2電極42を確実にアノードにすることができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、障壁層50は、絶縁体に限られず、半導体でもよい。障壁層50は、導電層20と第1電極41の間の少なくとも一部分に介在されていればよく、必ずしも導電層20と電極41の間の全体に介在されている必要はない。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第3実施形態において、n型半導体ナノ構造体61に代えて、p型半導体ナノ構造体62を素子1の表面に設けてもよい。第4実施形態において、p型半導体ナノ構造体62に代えて、n型半導体ナノ構造体61を素子1Aの表面に設けてもよい。第3、第4実施形態において、n型半導体ナノ構造体61及びp型半導体ナノ構造体62を素子1又は1Aの表面に混在させて設けてもよい。n型半導体ナノ構造体61として、酸化亜鉛に代えて、n型のGaN等を用いてもよい。p型半導体ナノ構造体62として、カーボンに代えて、p型のGaN等を用いてもよい。第5実施形態(図7)の極性確定構造を、第2〜第4実施形態(図4〜図6)に適用してもよい。p型光電変換素子1Aにおいて、障壁層50に代えて凸層51を設けると、導電層20と凸層51との間で生成された正孔が凸層51側ひいては第1電極41へ流れる。したがって、第1電極41をアノードでき、第2電極42をカソードにすることができる。
導電層20を構成する金属成分は、Coに限られず、Fe、W、Ni、Al、Ti等であってもよい。
金属ナノ構造30を構成する金属成分は、Auに限られず、Ag、Pt、Cu、Pd等であってもよい。
光電変換素子1,1Aの製造工程は、適宜、順序の入れ替え、ないしは変更を行なってもよい。
【実施例1】
【0064】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
実施例1では、金属ナノ構造の作製及び観察を行った。金属ナノ構造は、次のようにして作製した。
ほぼ正方形のn型Si基板の表面全体にCo膜をスパッタリングにて成膜した。Co膜の厚さは8nmとした。
次に、5分間有機洗浄した後、マスク印刷を行ってCo膜の表面の四隅と中央に厚さAu膜をスパッタリングで成膜した。Au膜の厚さは、約10nmであった、
次に、アニール処理を行った。アニール処理の雰囲気ガスは、He100%とした。アニール温度は600℃であった。アニール処理時間は3分とした。
アニール処理によって、n型Si基板の表層部分にCoが拡散してCoSixが形成された。
【0065】
上記Au膜の近傍の2つの場所をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した。図8(a)及び(b)が、その画像である。Au膜の微粒子がCoSix膜の表面に沿って拡散し、Au膜の周囲に金属ナノ構造が自然形成されたことが確認された。金属ナノ構造の形態は、場所に応じて異なっていた。同図(b)に示すように、金属ナノ構造には、場所によってフラクタル構造が形成されていた。
【0066】
上記金属ナノ構造の幾つかの地点にレーザー光(波長635nm)を照射し、ゼロバイアスでの光誘起電流が最大になった地点の表面構造をAFM(原子間力顕微鏡)にて立体的に観察した。
図9がその画像である。図10は、図9の画像を模写し、解説したものである。
金属ナノ構造の表面にはサブオーダーないしはナノオーダーの凹凸が形成されており、クラスター構造ないしはフラクタル構造が確認された。更に、上記凹凸形状の中に、多数の周期構造33と、多数の第2凸部32が確認された。各周期構造33は、複数の第1凸部31を含み、これら第1凸部31が周期構造33に応じたランダムな周期(配置間隔)で配列されていた。周期構造33の周期は、おおよそ100nm以下であった。各第1凸部31の突出高さは約10nm〜20nm程度であった。各第2凸部32は、ある周期構造33と重なって配置されているか、又は周期構造33の近傍に配置されていた。第2凸部32の突出高さは、第1凸部31より突出高さより大きく、約50nm〜200nm程度であった。第2凸部32の分散の周期間隔は、おおよそ2μm〜3μm程度であった。(図15参照)
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば光センサーや太陽電池に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,1A 光電変換素子
11 n型半導体層
12 p型半導体層
20 導電層
30 金属ナノ構造
31 第1凸部
32 第2凸部
33 周期構造
41 第1電極
42 第2電極
50 障壁層(極性確定層)
51 凸層(極性確定層)
61 ZnOナノワイヤー(n型の半導体ナノ構造体)
62 カーボンナノチューブ(p型の半導体ナノ構造体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型又はp型の半導体層と、
前記半導体層に積層された導電層と、
前記導電層又は前記半導体層に設けられた第1電極と、
前記第1電極と前記導電層との間に介在された極性確定層と、
前記導電層に設けられた第2電極と、
前記導電層に積層された多数の周期構造を含む金属ナノ構造と、
を備え、前記各周期構造が前記積層の方向に突出する複数の第1凸部からなり、前記第1凸部の配置間隔が前記周期構造に応じて異なることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記極性確定層が、厚さ1nm未満の絶縁体にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
図15に示す様に、前記周期構造の少なくとも1つが、可視光域から赤外光域のある波長範囲内の任意の波長の0.1倍〜1倍の大きさの配置間隔を有することを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記金属ナノ構造が、前記第1凸部より大きく突出する複数の第2凸部を更に含み、これら第2凸部が互いに分散し、かつ各第2凸部が、前記周期構造の何れか1つと重なって又は近接して配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光電変換素子。(図15参照。)
【請求項5】
更に、表面に紫外域又は赤外域に感度を持つ半導体からなるナノ構造体を設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記ナノ構造体が、ナノワイヤー、ナノチューブ、ナノニードル、又はナノロッドであることを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−106025(P2013−106025A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264084(P2011−264084)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(513023000)株式会社リン ソレーション (3)
【Fターム(参考)】