説明

光電変換装置およびその製造方法ならびに光発電装置

【課題】 高効率な光電変換効率を有する、結晶半導体粒子を用いた光電変換装置を提供すること。
【解決手段】 導電性基板1の一主面に、p型結晶半導体粒子4が多数個、下部を導電性基板1に接合され、隣接するもの同士の間に絶縁体3を介在させるとともに上部を絶縁体3から露出させて配置されて、これらp型結晶半導体粒子4にn型半導体層および透光性導体層6が設けられた光電変換装置であって、p型結晶半導体粒子4下部の導電性基板1との接合部における硼素濃度がp型結晶半導体粒子4の残部の硼素濃度よりも高いことによって、p型結晶半導体粒子4下部の接合部をp+層としてp型キャリアの収集部としBFS効果を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電等に使用される光電変換装置に関し、特に結晶半導体粒子を用いた光電変換装置およびその製造方法ならびに光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な結晶板を用いた光電変換素子は、p型シリコン基板の一主面側にn型半導体領域を形成してpn接合部を形成し、さらにその上に透明電極を全面に形成し、このp型シリコン基板の一主面側の透明電極上と他主面側にそれぞれ電極を形成した構成である。
【0003】
近年、太陽電池の出力を向上させることが強く要求されている。太陽電池の出力向上を図るための一つの対策として、BSF(Back Surface Field)効果の向上が望まれている。この目的のために、p型半導体と裏側の電極との界面にp+層を形成するために用いられるペースト組成物について種々検討されている。
【0004】
例えば、ペースト全体に対する配合比率が60〜90重量%の固形分と、10〜40重量%の有機質ビヒクルとから成り、固形分は、その全体に対する配合比率が85〜98.5重量%の銀粉末と、0.5〜10重量%のアルミニウム粉末と、1〜10重量%のガラスフリットとを含んだものが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、Al粉末と、このAl粉末100重量部に対して0.3〜50重量部のSiと、有機溶剤と、必要に応じて添加される有機結合剤とからなるものが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、アルミニウム粉末と、有機質ビヒクルと、ガラスフリットと、ホウ素粉末、無機ホウ素化合物および有機ホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とを含むものが記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−148447号公報
【特許文献2】特開2001−313402号公報
【特許文献3】特開2003−69056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許文献1〜3に記載されたペーストは、いずれもp型シリコン半導体の基板に対して適用されるものであり、結晶半導体粒子を用いた光電変換装置にそれらのペーストを適用することは、アルミニウム基板に結晶半導体粒子を整列させて溶着させる接合方法では、半導体の基板のように塗布したペーストを共晶させるとともにさらに高温度に加熱してシリコンリッチな共晶にした後に固相成長させる方法が使えないため、できなかった。そのため、結晶半導体粒子を用いた光電変換装置の出力の更なる向上を達成するためにBSF効果を向上させる必要があるが、上記ペースト等を用いてBSF効果を向上させることができていないため、結晶半導体粒子を用いた光電変換装置は光電変換効率が低いという問題があった。
【0008】
従って、本発明は上記従来の技術の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、より高効率な光電変換効率を有する、結晶半導体粒子を用いた光電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光電変換装置は、導電性基板の一主面に、p型結晶半導体粒子が多数個、下部を前記導電性基板に接合され、隣接するもの同士の間に絶縁体を介在させるとともに上部を前記絶縁体から露出させて配置されて、これらp型結晶半導体粒子にn型半導体層および透光性導体層が設けられた光電変換装置であって、前記p型結晶半導体粒子下部の前記導電性基板との接合部における硼素濃度が前記p型結晶半導体粒子の残部の硼素濃度よりも高いことを特徴とする。
【0010】
本発明の光電変換装置の製造方法は、多数個のp型結晶半導体粒子の一部領域をそれぞれ、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板上に加熱溶着して接合するとともに、この接合部に前記硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程と、前記p型結晶半導体粒子の表面に前記接合部を除いてn型半導体部を形成する工程と、隣り合う前記p型結晶半導体粒子間に前記n型半導体部の下部および前記導電性基板を覆い、かつ前記n型半導体部の上部を露出させる絶縁体を形成する工程と、前記絶縁体および前記n型半導体部の上部を覆う透光性導体層を形成する工程と、を順次行なうことを特徴とする。
【0011】
本発明の光電変換装置の製造方法は、多数個のp型結晶半導体粒子の全表面に熱拡散法によりn型半導体部を形成する工程と、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板上に前記p型結晶半導体粒子の多数個をそれぞれ一部領域を加熱溶着して接合するとともに、この接合部に前記硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程と、隣り合う前記p型結晶半導体粒子間に前記n型半導体部の下部および前記導電性基板を覆い、かつ前記n型半導体部の上部を露出させる絶縁体を形成する工程と、前記絶縁体および前記n型半導体部の前記上部を覆う透光性導体層を形成する工程と、を順次行なうことを特徴とする。
【0012】
本発明の光電変換装置の製造方法は好ましくは、前記硼素化合物層は、炭化物、酸化物および塩化物のうちの少なくとも1種の無機硼素化合物から成ることを特徴とする。
【0013】
本発明の光電変換装置の製造方法は好ましくは、前記硼素化合物層は、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリプロポキシボロンおよびトリプトキシボロンのうちの少なくとも1種の有機硼素化合物から成ることを特徴とする。
【0014】
本発明の光発電装置は、上記本発明の構成の光電変換装置を発電手段として用い、該発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光電変換装置によれば、p型結晶半導体粒子下部の導電性基板との接合部における硼素濃度がp型結晶半導体粒子の残部の硼素濃度よりも高いことから、p型結晶半導体粒子下部の導電性基板との接合部がp+層となっているため、p型結晶半導体粒子上部のn型半導体層の積層部であるpn接合部からp+層へp型キャリア(空孔)を効率的に収集することができ、その結果光電変換効率が向上する。
【0016】
本発明の光電変換装置の製造方法によれば、多数個のp型結晶半導体粒子の一部領域をそれぞれ、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板上に加熱溶着して接合するとともに、この接合部に硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程を有することにより、p型結晶半導体粒子下部の導電性基板との接合部における硼素濃度をp型結晶半導体粒子の残部の硼素濃度よりも高くすることができるため、p型結晶半導体粒子下部の導電性基板との接合部がp+層となり、p型結晶半導体粒子上部のn型半導体層の積層部であるpn接合部からp+層へ空孔(p)を効率的に収集することができ、その結果光電変換効率が向上した光電変換装置を得ることができる。
【0017】
また、本発明の光電変換装置の製造方法において好ましくは、硼素化合物層は、炭化物、酸化物および塩化物のうちの少なくとも1種の無機硼素化合物から成ることから、化学的に安定な硼素化合物層を形成でき、結晶半導体粒子を導電性基板に加熱溶着して接合する際に、その接合部内に硼素を安定的に拡散させてドープさせることができる。
【0018】
また、本発明の光電変換装置の製造方法において好ましくは、硼素化合物層は、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリプロポキシボロンおよびトリプトキシボロンのうちの少なくとも1種の有機硼素化合物から成ることから、トリメトキシボロン等の有機硼素化合物はアルコールや水等に含ませて塗布したりスプレーすることによって容易に形成することができる。
【0019】
本発明の光発電装置は、上記本発明の構成の光電変換装置を発電手段として用い、該発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことから、光電変換効率の高い光電変換装置を用いているため、光発電装置の発電効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の光電変換装置について以下に詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の光電変換装置である太陽電池の例を示す断面図であり、1はアルミニウム等から成る導電性基板、2は導電性基板1の表面に形成されたアルミニウム合金層であり、このアルミニウム合金層2はアルミニウム(Al)と珪素(Si)との合金から成るとともに硼素(B)を含有する。3は絶縁体(絶縁層)、4はp型結晶半導体粒子、5はn型半導体層、6は透光性導電層である。
【0022】
本発明における導電性基板1は好ましくは、硼素を含有するアルミニウムから成るか、またはアルミニウム等から成る基板表面に硼素を含有するアルミニウム層を形成して成る複合材料から構成される。導電性基板1において、硼素はアルミニウム中に50乃至300ppm含有されていることが好まし。300ppmより多いと、硼素を含むアルミニウムの溶融温度が急激に上昇し、導電性基板1を作製するための材料の溶解が困難になる。また、50ppm未満では、導電性基板1が硼素を含有することによる効果が低減される。すなわち、p型結晶半導体粒子4の下部の接合部がp+層となりにくくなり、p+層を有することの効果が低減されてしまう。
【0023】
導電性基板1が複合材料から成る場合、下地の導電性基板としては、アルミニウムの融点以上の融点を有する金属やセラミックスであればよく、例えば鉄(Fe),ニッケル(Ni),ステンレススチール(SUS),Fe−Ni合金,Fe−Ni−Co合金等の低熱膨張合金、酸化アルミニウム(Al)質焼結体等のセラミックスが用いられる。なお、この複合材料における表層のアルミニウム層の厚みは、多数のp型結晶半導体粒子4を導電性基板1上に均一に接合するとともに接合部にアルミニウムを拡散させるのに必要なアルミニウム量を考慮して、0.01mm(10μm)以上が好ましい。
【0024】
また、本発明において好ましくは、導電性基板1に硼素(B)を含有させることにより、p型結晶半導体粒子4を導電性基板1に加熱溶着した際に、導電性基板1中の硼素がp型結晶半導体粒子4内に拡散し、例えば導電性基板1(下部電極)側にアルミニウムと硼素とシリコン(p型結晶半導体粒子4の主成分)の三元系によるp+層が形成され、そのp+層がp型キャリアの収集効率をより向上させるように作用し、光電変換効率が向上する。
【0025】
本発明において、導電性基板1表面に、アルミニウムおよび珪素を主成分とし硼素を含有する合金層であるアルミニウム合金層2を形成する場合、アルミニウム合金層2と導電性基板1との境界に、アルミニウム合金層2の生成を制御するためのバリア層として、中間層(図示せず)を設けることも可能である。このような中間層としては、例えばニッケル(Ni)等を用いることが可能であり、その厚みは0.001mm(1μm)以上が好ましい。また、導電性基板1が複合材料の場合、熱負荷等により発生する導電性基板1の反りを抑える目的で、p型結晶半導体粒子4を配設する一主面と反対側の他主面の一部もしくは全面に、アルミニウム層を形成することも可能である。
【0026】
絶縁体3は、正極と負極とを電気的に分離絶縁するための絶縁材料からなる。絶縁体3は、例えば酸化珪素(SiO),酸化アルミニウム(Al),酸化鉛(PbO),酸化硼素(B),酸化亜鉛(ZnO)等を成分とするガラス、耐熱性高分子材料、耐熱性高分子材料と無機フィラーとの混合体、珪素を含有する有機無機複合材料、珪素を含有する有機無機複合材料と無機フィラーとの混合体、または有機材料等からなる。絶縁体3は、p型結晶半導体粒子4間に介在するようにアルミニウム合金層2の表面に層状に形成され、その好適な厚みは絶縁体3の絶縁抵抗により異なるが、絶縁体3が耐熱高分子材料から成る場合、0.001mm(1μm)以上であることが好ましい。
【0027】
p型結晶半導体粒子4は、珪素にp型を呈する硼素,アルミニウム,ガリウム(Ga)等が微量元素として含まれているものである。p型結晶半導体粒子4の粒径としては、0.1〜0.6mmがよい。0.6mmを超えると、従来型の結晶板系の光電変換素子の珪素使用量と変わらなくなり、p型結晶半導体粒子4を用いて珪素使用量を抑えることのメリットが小さくなる。一方、0.1mmよりも小さいと、p型結晶半導体粒子4に吸収されずに透過する光が増大するため光エネルギーのロスが大きくなり、光電変換効率が低下する傾向がある。また、p型結晶半導体粒子4の形状としては、球状、回転楕円体、多角立体状、多角立体状の角部が丸められたもの等の種々の形状であってよい。
【0028】
n型半導体部としてのn型半導体層5は、例えば珪素(Si)から成り、熱拡散法、気相成長法等により、例えばシラン化合物の気相にn型を呈するリン系化合物等の気相を微量導入して形成する。n型半導体層5の厚みは10nm以上が好ましく、膜質としては結晶質、非晶質、または結晶質と非晶質とが混在するもののいずれでもよいが、光透過率を考慮すると結晶質または結晶質と非晶質とが混在するものがよい。
【0029】
さらに、n型半導体層5は、p型結晶半導体粒子4の表面形状に沿って形成されることが好ましい。これにより、p型結晶半導体粒子4は凸形の曲面状の表面を有することから、p型結晶半導体粒子4とn型半導体層5との間で形成されるpn接合の面積を広くすることができ、p型結晶半導体粒子4において光電変換により発生した電子を効率よく収集することができる。
【0030】
なお、p型結晶半導体粒子4のn型半導体部として、p型結晶半導体粒子4の表面部にn型を呈するリン(P),砒素(As)等が微量含まれている領域が層状形成されたものを用いる場合、この層状の領域をn型半導体層5として、この上に直接、透光性導電層6を形成してもよい。
【0031】
透光性導電層6は、スパッタリング法や気相成長法の薄膜形成方法、あるいは塗布焼成法等によって形成され、酸化錫(SnO),酸化インジウム(In),酸化亜鉛(ZnO),酸化チタン(TiO),ITO等から選ばれる1種または複数種のものから成る酸化物系膜、またはチタン(Ti),白金(Pt),金(Au)等から選ばれる1種または複数種のものから成る金属系膜によって形成される。
【0032】
なお、このような透光生導電層6は透明であることが必要であり、p型結晶半導体粒子4がない部分で入射光の一部が透光性導電層6を透過し、下部の導電性基板1で反射してp型結晶半導体粒子4に照射されることで、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よくp型結晶半導体粒子4に照射させることが可能となる。
【0033】
透光性導電層6上には保護層(図示せず)を形成してもよい。このような保護層としては、透光性でかつ誘電体の特性を持つものを用いるのがよく、例えば酸化珪素(SiO),酸化セシウム(CsO),酸化アルミニウム(Al),窒化珪素(Si),酸化チタン(TiO),酸化タンタル(Ta),酸化イットリウム(Y)等を、単一組成または複数組成で、単層または複数層を組み合わせて、CVD法やPVD法等により形成すればよい。この保護層は、光の入射面に配置されているために透光性が必要であり、また光電変換により得られた電流のリーク防止のために誘電体であることが必要である。さらに、この保護層は、厚みを最適化すれば、反射防止膜としての機能も付与することができる。
【0034】
また、直列抵抗値を低くするために、n型半導体層5または透光性導電層6の上に一定間隔のフィンガー電極およびバスバー電極からなるパターン電極(図示せず)を設け、光電変換の変換効率を向上させることも可能である。
【0035】
次に、本発明の光電変換装置について実施の形態の他の例を以下に詳細に説明する。
【0036】
図2は、本発明の光電変換装置の製造方法により製造される光電変換装置である太陽電池の例を示す断面図であり、1は導電性基板、2’は導電性基板1の表面に形成されたアルミニウム層であり、この例ではアルミニウム層2’はアルミニウムと珪素との合金層から成る。3は絶縁体、4はp型結晶半導体粒子、5はn型半導体層、6は透光性導電層である。このアルミニウム層2’は、上記のアルミニウム層2と異なり、硼素を含有していない。また、絶縁体3、p型結晶半導体粒子4、n型半導体層5、透光性導電層6は、上述したものと同じである。
【0037】
また、図2に例においても、導電性基板1が硼素を含有することにより、結晶半導体粒子4を導電性基板1に加熱溶着した際に、導電性基板1中の硼素がp型結晶半導体粒子4内に拡散し、p型結晶半導体粒子4の導電性基板1(下部電極)との接合部にアルミニウムと硼素とシリコンの三元系によるp+層が形成される。そのp+層がp型キャリアの収集効率をより向上させるように作用し、光電変換効率が向上する。
【0038】
次に、本発明の光電変換装置の製造方法を工程順に説明する。
【0039】
まず、表面にアルミニウム層2を有する導電性基板1の表面上に、すなわちアルミニウム層2の表面上に、硼素粉末、無機硼素化合物および有機硼素化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を、硼素換算で0.1×10−5〜1×10−5g/cmの硼素化合物層を形成する。
【0040】
無機硼素化合物は、炭化物,酸化物(硼酸等),塩化物,臭化物,沃化物,弗化物および窒化物から選ばれた少なくとも1種からなり、特に炭化物、酸化物および塩化物のうちの少なくとも1種の無機硼素化合物から成ることがよく、この場合化学的に安定な硼素化合物層を形成でき、p型結晶半導体粒子4を導電性基板1に加熱溶着して接合する際に、その接合部内に硼素を安定的に拡散させてドープさせることができる。
【0041】
有機硼素化合物は、トリメトキシボロン,トリエトキシボロン,トリプロポキシボロンおよびトリプトキシボロンからなる群から選ばれた少なくとも1種からなるのがよい。この場合、トリメトキシボロン等の有機硼素化合物はアルコールや水等に含ませて塗布したりスプレーすることによって容易に形成することができる。
【0042】
硼素化合物層は、例えば硼素粉末、無機硼素化合物や有機硼素化合物をアルコールや水等に溶かした溶液とし、スピンコート等で塗布し、乾燥させて形成する。
【0043】
次に、硼素化合物層上にp型結晶半導体粒子4を多数個配列し、これを例えば460〜660℃で1〜20分加熱してp型結晶半導体粒子4を導電性基板1に溶着させる。これにより、溶着部分である接合部にアルミニウムと珪素を主成分とする合金層(共晶部)が形成される。この溶着時に、導電性基板1内のアルミニウムと硼素化合物層の硼素とがp型結晶半導体粒子4内部に拡散し、また、p型結晶半導体粒子4内部で導電性基板1側にアルミニウムおよび硼素が多く含有するように分布することにより、p型結晶半導体粒子4の導電性基板1(下部電極)側にp+層が形成され、そのp+層がp型キャリアの収集効率をより向上させるように作用し、光電変換効率が向上する。
【0044】
上記の通り、p型結晶半導体粒子4を導電性基板1に溶着させる際の加熱温度は460〜660℃が好ましい。460℃未満では、アルミニウムと珪素との合金生成反応が起こらず、溶着されにくい。また、660℃を超えると、アルミニウムの融点以上となり、導電性基板1の溶融、変形等が生じて、導電性基板1としての機能を果たさなくなる。
【0045】
そして、上記の通り、多数個のp型結晶半導体粒子4の一部領域をそれぞれ、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板1上に加熱溶着して接合するとともに、この接合部に硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程を経た後に、p型結晶半導体粒子4の表面に接合部を除いてn型半導体部(n型半導体5)を形成する工程と、隣り合うp型結晶半導体粒子4間にn型半導体部の下部および導電性基板1を覆い、かつn型半導体部の上部を露出させる絶縁体3を形成する工程と、絶縁体3およびn型半導体部の上部を覆う透光性導体層6を形成する工程と、を順次行なう。
【0046】
または、以下の製造方法によっても本発明の光電変換装置を製造することができる。すなわち、多数個のp型結晶半導体粒子4の全表面に熱拡散法によりn型半導体部を形成する工程と、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板1上にp型結晶半導体粒子4の多数個をそれぞれ一部領域を加熱溶着して接合するとともに、この接合部に硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程と、隣り合うp型結晶半導体粒子4間にn型半導体部の下部および導電性基板1を覆い、かつn型半導体部の上部を露出させる絶縁体3を形成する工程と、絶縁体3およびn型半導体部の上部を覆う透光性導体層6を形成する工程と、を順次行なう。
【実施例1】
【0047】
本発明の光電変換装置の実施例を以下に説明する。
【0048】
硼素の含有量を種々変えたアルミニウム質の導電性基板1を、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で脱脂した後に硝酸(HNO)水溶液で中和して表面を清浄化した。次に、弗酸(HF)水溶液で表面酸化層を除去した直径約0.5mmのp型結晶シリコン粒子を導電性基板1上に多数個配列して、600〜630℃の温度で1〜10分加熱してp型結晶シリコン粒子の下部を導電性基板1に拡散接合させた。
【0049】
次に、絶縁体3としてポリイミドを用いてp型結晶シリコン粒子間に約100μmの厚みになるように塗布し、200℃で30分乾燥させた後、350℃で1時間焼成し、層状の絶縁体3を形成した。
【0050】
次に、シランガスと微量のリン化合物からなる混合ガスを用いたプラズマCVD法によって、p型シリコン粒子と絶縁体3上に結晶質と非晶質の混晶から成るn型シリコン層を約15nmの厚みに成膜し、さらにその上にスパッタリング法により厚み85nmのITO層(透光性導体層)を形成し、導電性基板1中の硼素濃度が異なる7種の光電変換装置を作製した。それらの光電変換装置について、光電変換効率をAM(Air Mass)1.5の条件でソーラーシミュレーターによって測定した結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
表1より、導電性基板1中に硼素が含まれる光電変換装置(サンプルNo.2〜5)については、高い光電変換率が得られた。そして、それらの高い光電変換効率が得られた光電変換装置(サンプルNo.2〜5)のp型シリコン粒子について、その内部の硼素濃度をSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)によって分析したところ、硼素およびアルミニウムがp型結晶シリコン粒子の導電性基板1との接合部に拡散していることが確認され、BSF効果の向上が確認された。
【0052】
逆に、導電性基板1中に硼素が含まれない光電変換装置(サンプルNo.1)については、光電変換効率が低く、p型シリコン粒子内部のSIMS分析でも、硼素およびアルミニウムの拡散が確認できず、BSF効果が得られていないことが確認された。
【0053】
p+によるBSF効果がみられるサンプルNo.2〜5の接合部に含まれる硼素は、シリコン粒子にもともと含まれる硼素量の少なくとも150倍以上であることが好ましいことがわかる。
【0054】
また、導電性基板1中の硼素濃度が300ppmより多い光電変換装置(サンプルNo.6,7)については、共晶組成以上の硼素が硼化アルミニウム(AlB)として導電性基板1内に析出してしまい、組成的に均一な導電性基板1の作製が出来なかったため、光電変換素子化(セル化)を断念した。
【0055】
また、導電性基板1中の硼素濃度が50ppm以下の光電変換装置(サンプルNo.2)は、本発明のBFS効果は低下した。
【実施例2】
【0056】
表面を水酸化ナトリウム水溶液で脱脂した後に硝酸水溶液で中和して表面を清浄化したアルミニウム質の導電性基板1に、硼素濃度を種々変えた硼酸溶液を塗布し乾燥させることによって、単位面積当たりの硼素量の異なる硼素化合物層を有する導電性基板1を作製した。その硼素化合物層上に、弗酸水溶液で表面酸化層を除去した直径約0.5mmのp型シリコン粒子を多数個配列して、600〜630℃の温度で1〜10分加熱して、p型シリコン粒子の下部を導電性基板1に拡散接合させた。
【0057】
次に、絶縁体3としてポリイミドを用いてp型シリコン粒子間に約100μmの厚みになるように塗布し、200℃で30分乾燥させた後、350℃で1時間焼成し、層状の絶縁体3を形成した。
【0058】
次に、シランガスと微量のリン化合物からなる混合ガスを用いたプラズマCVD法でp型シリコン粒子と絶縁体3上に、結晶質と非晶質の混晶から成るn型シリコン層を約15μmの厚みに成膜し、さらにその上にスパッタリング法により厚み85nmのITO層(透光性導体層)を形成して、硼素化合物層中の硼素濃度が異なる7種の光電変換装置を作製した。それらの光電変換装置について、光電変換効率をAM1.5の条件でソーラーシミュレーターによって測定した結果を表2に示す。
【表2】

【0059】
表2より、硼素換算で0.1×10−5〜1×10−5g/cmの硼素量の硼素化合物層(サンプルNo.3〜6)を形成することにより、高い光電変換率のものが得られた。そして、それらの高い光電変換効率であったp型シリコン粒子について、内部の硼素濃度をSIMS分析で確認したところ、導電性基板1側に高濃度に分布していることが確認された。
【0060】
p+によるBSF効果がみられるサンプルNo.2〜7の接合部に含まれる硼素は、シリコン粒子にもともと含まれる硼素量の少なくとも50倍以上であることが好ましいことがわかる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の光電変換装置についての実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の光電変換装置についての実施の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1:導電性基板
2:硼素を含有したアルミニウム合金層
2’:アルミニウム合金層
3:絶縁体
4:p型結晶半導体粒子
5:n型半導体層
6:透光性導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板の一主面に、p型結晶半導体粒子が多数個、下部を前記導電性基板に接合され、隣接するもの同士の間に絶縁体を介在させるとともに上部を前記絶縁体から露出させて配置されて、これらp型結晶半導体粒子にn型半導体層および透光性導体層が設けられた光電変換装置であって、前記p型結晶半導体粒子下部の前記導電性基板との接合部における硼素濃度が前記p型結晶半導体粒子の残部の硼素濃度よりも高いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
多数個のp型結晶半導体粒子の一部領域をそれぞれ、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板上に加熱溶着して接合するとともに、この接合部に前記硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程と、前記p型結晶半導体粒子の表面に前記接合部を除いてn型半導体部を形成する工程と、隣り合う前記p型結晶半導体粒子間に前記n型半導体部の下部および前記導電性基板を覆い、かつ前記n型半導体部の上部を露出させる絶縁体を形成する工程と、前記絶縁体および前記n型半導体部の上部を覆う透光性導体層を形成する工程と、を順次行なうことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
多数個のp型結晶半導体粒子の全表面に熱拡散法によりn型半導体部を形成する工程と、表面に硼素化合物層が形成された導電性基板上に前記p型結晶半導体粒子の多数個をそれぞれ一部領域を加熱溶着して接合するとともに、この接合部に前記硼素化合物層中の硼素を拡散させる工程と、隣り合う前記p型結晶半導体粒子間に前記n型半導体部の下部および前記導電性基板を覆い、かつ前記n型半導体部の上部を露出させる絶縁体を形成する工程と、前記絶縁体および前記n型半導体部の前記上部を覆う透光性導体層を形成する工程と、を順次行なうことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
前記硼素化合物層は、炭化物、酸化物および塩化物のうちの少なくとも1種の無機硼素化合物から成ることを特徴とする請求項2または請求項3記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
前記硼素化合物層は、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリプロポキシボロンおよびトリプトキシボロンのうちの少なくとも1種の有機硼素化合物から成ることを特徴とする請求項2または請求項3記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の光電変換装置を発電手段として用い、該発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことを特徴とする光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−147685(P2006−147685A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332931(P2004−332931)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】