説明

光電変換装置およびその製造方法

【課題】 光電変換効率の高い集積型の光電変換装置を実現する。
【解決手段】 透明絶縁性の基板上に透明電極、光電変換層、裏面電極層が順次積層されてなる光電変換装置であって、光電変換装置は透明電極および光電変換層を分離する第1の分離溝と裏面電極および光電変換層を分離する第2の分離溝を有し、第1および第2の分離溝によりユニットセルに分離され、ユニットセルは透明電極および裏面電極層により電気的に直列に接続されてなる光電変換装置であって、第2の分離溝は、裏面電極を分離する間隙が前記光電変換層を分離する間隙より大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電変換装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換装置として、基板上に、第1導電層、光電変換層、第2導電層が順に積層された光電変換装置が知られている。
光電変換装置では、基板上の光電変換層は溝などで複数の単位セルごとに分割された集積型構造が用いられる。
【0003】
集積型構造では、ある単位セルの第1導電層とその隣の単位セルの第2導電層とが電気的に直列接続される構造が一般的である。
隣り合う単位セルの第1導電層(透明導電層)と第2導電層(裏面電極層)との接続は、光電変換層に形成された溝を通じて行われる。
また、一般にその接続は裏面電極を用いて行われる。
【0004】
光電変換層や電極を分割する溝はレーザビームを照射して、その熱で照射部の光電変換層や電極を除去させるレーザースクライブ法などを用いて形成される。
【0005】
たとえば特許文献1には、裏面電極を用いて集積型光電変換装置はユニットセルが直列接続される構造が示されている。ユニットセルごとに裏面電極層を複数の裏面電極に分離するため、透明基板側からスクライブ用レーザビームを照射して裏面電極分離溝が形成される。このとき光電変換ユニット層の所定領域と同時に裏面電極層の所定領域が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-267613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法によれば、ユニットセルを直列接続した光電変換装置を得ることができるが、光電変換効率に関しては何ら検討されておらず、光電変換効率の高い光電変換装置を得ることができなかった。
【0008】
そこで本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、光電変換効率の高い集積型の光電変換装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、透明絶縁性の基板上に透明電極、光電変換層、裏面電極層が順次積層されてなる光電変換装置であって、光電変換装置は透明電極および光電変換層を分離する第1の分離溝と裏面電極および光電変換層を分離する第2の分離溝を有し、第1および第2の分離溝によりユニットセルに分離され、ユニットセルは透明電極および裏面電極層により電気的に直列に接続されてなる光電変換装置であって、第2の分離溝は、裏面電極を分離する間隙が前記光電変換層を分離する間隙より大きいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明裏面電極を分離する間隙が前記光電変換層を分離する間隙より大きいので光電変換効率の高い光電変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の光電変換装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1の光電変換装置のプロセスフロー示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の光電変換装置のプロセスフロー示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1の光電変換装置の第2の分離溝の上面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の裏面電極オフセット量と変換効率の関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1の裏面電極オフセット量とリーク電流の原因となるセルのシャント抵抗の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は本実施の形態1の光電変換装置の構造の概要を説明する部分断面図である。
本発明の光電変換装置は透明絶縁性のガラス基板1上に透明電極(TCO)2、第1光電変換層3、中間層4、第2光電変換層5、裏面電極層6が順次積層されてなるものである。
透明電極(TCO)2はSnO、ZnOなどを主成分とする透明電極材料で構成されている。第1光電変換層3はたとえば非晶質シリコンからなり、ボロン(B)をドープしたP型アモルファスシリコン膜、ノンドープI型アモルファスシリコン膜、リン(P)をドープしたN型アモルファスシリコン膜をこの順で堆積させて、P−I−N接合を有する。中間層4は光透過性の導電材料、たとえばZnOなどからなる。第2光電変換層5は微結晶シリコンやゲルマニウム含有非晶質シリコンなどの材料からなり、第1光電変換層3と同じくP−I−N接合を有する。裏面電極層6はたとえばAgやAl、それらの合金材料などで形成されている。
本実施の形態では、非晶質シリコンと微結晶シリコンやゲルマニウム含有非晶質シリコンを積層したタンデム型構造の例を示したが、それにとらわれることはなく、一層の光電変換層を有する場合でも、さらに多層であってもよい。
【0013】
本発明の光電変換装置は図1に示すように第1の分離溝7、第2の分離溝8でユニットセルに分離されている。分離されたユニットセルはそれぞれ直列に接続されている。また、第1の分離溝7、第2の分離溝8はユニットセル間を分離するとともに、電気的に相互接続する領域である。
【0014】
これらの分離溝はたとえば、レーザースクライブなどの加工法で形成される。
第1の分離溝7内には裏面電極層6が形成されて、透明電極(TCO)2と電気的に接続する。これによって隣接するユニットセル間が直列接続される。
【0015】
一方、第2の分離溝8は、裏面電極層6をユニットセル間で分離するための溝である。
本実施の形態では、第2の分離溝8における裏面電極層6のエッジと第1光電変換層3、中間層4、第2光電変換層5の側面との間に距離(オフセット)を設け、裏面電極層6の開口部は第1光電変換層3、中間層4、第2光電変換層5の開口部より大きい。
【0016】
次に、本実施の形態の光電変換装置の形成方法について説明する。
図2は本実施の形態の光電変換装置を形成する工程のうち裏面電極層を形成する工程までを示すフロー図である。図2(a)は光電変換装置のうちガラス基板1上に透明電極(TCO)2、第1光電変換層3、中間層4、第2光電変換層5を順次積層した状況を示している。ここで図2(b)のようにレーザを基板1側から照射し、第1光電変換層3、中間層4、第2光電変換層5に第1の分離溝7を形成する。
次に図2(c)に示すように全面に裏面電極層6を形成する。
【0017】
図3は第2の分離溝を形成する工程を示すフロー図である。図3(a)に示すようにレーザーを基板と反対側から照射し、裏面電極層6に第2の分離溝8を形成する。このとき、下の光電変換層5の一部にも溝が形成されてもよいが、少なくとも一部の光電変換層5が残るようにレーザーパワーを調整する。とくにタンデム型の光電変換層においては厚み方向で中間層の高さ付近に低抵抗層があるので、この時点で低抵抗層領域が露出しないように、少なくとも中間層より上まで光電変換層が残るようにすることが望ましい。
【0018】
レーザ照射は、Agからなる0.2〜0.3μ厚の裏面電極層6を加工する条件として下記の条件で行った。
レーザ照射条件:波長 532nm (YAGの2倍波)
繰り返し周波数 20kHz、レーザパターン径 60μm、照射パワー 0.15W
ビーム送り速度 160mm/sec
なお、これは一例であって裏面電極の厚みや材料により適切な条件を選べばよい。
【0019】
次いで図3(b)に示すように透明電極(TCO)2、第1光電変換層3、中間層4、第2光電変換層5に裏面電極層6に形成した第2の分離溝8の幅より狭い第2の分離溝8を形成する。
この際、レーザを基板1側から照射する。
【0020】
レーザー照射は、光電変換層がシリコンを主成分とする材料からなり厚みが3ミクロン程度の場合で下記の条件で行った。
レーザ照射条件:波長 532nm (YAGの2倍波)
繰り返し周波数 20kHz、レーザパターン径 50μm、照射パワー 0.2W
ビーム送り速度 800mm/sec
なお、これは一例であって光電変換層の厚みや材料により適切な条件を選べばよい。
このとき、透明電極(TCO)2には溝は形成されない。また、透明電極(TCO)2にダメージが生じないように、レーザー照射のオーバラップが小さくなるような送り速度で加工するとよい。
【0021】
図4は形成された第2の分離溝8を裏面電極側から見た上面図である。
光電変換層をパターニングするより径が広く、レーザパワーが弱いレーザで裏面電極をパターニングする。また、裏面電極スクライブの送り速度は、スクライブパターンが直線的になるような送り速度にしたのでこの図4のようにオフセット9が形成される。
【0022】
図5は裏面電極オフセット量と変換効率の関係を示す図である。
裏面電極層のエッジと光電変換層の側面位置とが一致するオフセット量ゼロよりも、オフセットが5ミクロン以上あるほうが効率が向上する。5ミクロン以上では飽和する傾向がある。なお、あまりオフセット量を大きくすると、たとえば100ミクロンなどとすると、裏面電極層による光電変換層側に光を反射効果が小さくなるので、かえって効率が低下することが考えられる。
この原因を探るために、裏面電極オフセット量とリーク電流の原因となるセルのシャント抵抗の関係を測定した。図6は裏面電極オフセット量とリーク電流の原因となるセルのシャント抵抗の関係を示す特性図である。裏面電極オフセット量5μmまではオフセット量の増大にシャント抵抗が増大し、それ以上では、飽和傾向であり、変換効率と相関が高い。従って、適切なオフセット量によりシャント抵抗が増加するのでリーク電流が減少して、変換効率が向上すると考えられる。
【0023】
以上のように本発明の裏面電極のエッジの位置は裏面電極分離溝の光電変換層の側面の位置との間にオフセット距離を有するので変換効率の高い集積型の光電変換装置を実現することができる。
また、裏面電極に裏面電極からレーザーを照射してレーザースクライブで分離溝を形成したのちに、その分離溝内の光電変換層をガラス基板側からレーザーを照射してレーザースクライブで分離溝を形成するので、変換効率の高い集積型の光電変換装置を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ガラス基板、2 透明導電(TCO)、3 第1光電変換層、4 中間層、5 第2光電変換層、6 裏面電極、7 第1の分離溝、8 第2の分離溝、9 オフセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁性の基板上に透明電極、光電変換層、裏面電極層が順次積層されてなる光電変換装置であって、
前記光電変換装置は前期透明電極および前記光電変換層を分離する第1の分離溝と前記裏面電極および前記光電変換層を分離する第2の分離溝を有し、前記第1および第2の分離溝によりユニットセルに分離され、前記ユニットセルは前記透明電極および前記裏面電極層により電気的に直列に接続されてなる光電変換装置であって、
前記第2の分離溝は、前記裏面電極を分離する間隙が前記光電変換層を分離する間隙より大きいことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
第2の分離溝の裏面電極を分離する間隙のエッジは光電変換層を分離する間隙のエッジより5ミクロン以上オフセットを有することを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光電変換装置の製造方法であって、
第2の分離溝を形成する工程が、裏面電極側から裏面電極にレーザーを照射してレーザースクライブで前記裏面電極に分離溝を形成した後に、ガラス基板側から光電変換層にレーザーを照射してレーザースクライブで前記光電変換層に分離溝を形成する工程であることを特徴とする光電変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−40462(P2011−40462A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184397(P2009−184397)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】